【実施例】
【0017】
図1、
図2に示すトラクタは走行車体1の前後部に前輪2,2と後輪3,3を備え、車体1前部のボンネット22内に搭載したエンジン5の回転動力を静圧式無段変速装置(HST)34とミッションケース4内の変速装置によって適宜減速して、これらの前輪2,2と後輪3,3に伝えるように構成している。
【0018】
車体1の中央のハンドルポスト6にはステアリングハンドル7が支持され、その後方には座席9が設けられている。
【0019】
また、ステアリングハンドル7の下方には車体1の進行方向を前後方向に切り換える前後進レバー10が設けられている。この前後進レバー10を前側に移動させると車体1は前進し、後方へ移動させると後進する。またハンドルポスト6を挟んで前後進レバー10の反対側にはエンジン回転数を変更するスロットルレバー11が設けられ、またステップフロア13の右コーナー部にはアクセルペダル15と左右のブレーキペダル16,17が、フロア13の左コーナー部にはクラッチペダル14がそれぞれ配置されている。前後進レバー10の前側には緊急停止スイッチ12を設ける。
【0020】
前記アクセルペダル15は、基本的には路上走行時に使用し、その踏み込み量に応じてエンジン回転数が上昇すると共に、アクセルペダル15の踏み込み量をアクセルペダルポテンショが検出し、このアクセルペダルポテンショの検出値に応じてHST34のトラニオン軸の回動角度を変更させることができる。該トラニオン軸の回動角度により斜板の傾斜角度を変化させてHSTの出力回転を無段状に変更させることができる。
【0021】
前記スロットルレバー11はエンジン回転数を変更するもので、作業走行時に使用し、操作した位置で手を離してもその位置が保持される構成である。
【0022】
また、操縦席9の左側にHST34の変速を行う主変速レバー20とミッションケース4内の変速位置を低速、中速、高速及び中立のいずれかの位置に選択できる副変速レバー21が配置され、その側部に機体後部に装着した作業機(モーア、ロータリ、除雪機等)のPTO軸19の入り切りと変速を行うPTO変速レバー23が設けられている。また、車体1の後方には作業機30を連結する作業機リンク18が設けられている。
【0023】
操縦席9の右側には作業機30の昇降を行うポジションレバー24と耕深調整レバー25等を配置する。
【0024】
機体後部の作業機リンク18にはロータリ作業機30の機枠フレーム26を枢着し、ミッションケース4の上部に設ける作業機昇降シリンダ48(
図4)で上下に回動するリフトアーム27と機枠フレーム26を連結リンク28で連結する。リフトアーム27の回動角度をリフトアークセンサ27Sで検出する。
【0025】
ロータリ作業機30は、PTO軸19の駆動回転で耕耘爪29を回転して圃場を耕起するもので、耕耘軸に横配列した複数の耕耘爪29の上部を上カバー35で覆い、左右側部のサイドカバー31aと後側のバックカバー31bからなるロータリカバー31を上カバー35に枢支軸32で枢支している。バックカバー31bの下端は圃場面に接地して後方への土飛散を防いでいる。また、ロータリカバー31の上下回動を枢支軸32の近くに設けるカバー回動角センサ33で検出する。34はロータリカバー31の回動速度を緩やかにするダンパである。
【0026】
図3でエンジン5から前輪2,2と後輪3,3及びPTO軸19への動力伝動機構を説明する。
【0027】
エンジン5の回転動力はHST入力軸37からHST34に伝達される。また、HST入力軸37から導入された動力により油圧ポンプ34aを作動させて、油圧ポンプ34aに設けられた斜板の傾斜角度に応じた圧油を油圧閉回路34bから油圧モータ34cに供給し、該油圧モータ34cにより走行出力軸38を駆動させて噛合式の変速装置39へ動力を伝達し、変速軸40の回転がデフ装置41を介して後輪3が駆動される。
【0028】
一方、HST入力軸37から容量可変式の油圧ポンプ34aに入力された動力はポンプ出力軸42から湿式多板クラッチであるPTO油圧クラッチ43を経由してPTO中間軸44に連結したPTO変速装置45に伝達され、PTO軸19に動力伝達される。
【0029】
また、変速装置39から分岐して伝動される前輪出力軸46の回転で前輪増速装置47を介して前輪2が駆動される。
【0030】
図4には、自動制御のブロック図を示し、制御信号の流れは次の如くする。
【0031】
本実施例のトラクタに内蔵されている制御装置50の入力側には、リフトアームセンサ27Sからリフトアーム27の回動角度がロータリ作業機30の上昇位置として入力し、カバー回動角センサ33からロータリカバー31の回動角度が入力し、主変速レバー位置センサ20Sと副変速レバー位置センサ21SとPTO変速レバー位置センサ23Sからそれぞれの変速位置が入力し、車速センサ49から走行速度が入力し、GPS受信機54からトラクタの地図上位置が入力し、トラニオン位置検出センサ55からHST34のトラニオン位置が入力し、耕深制御モード切換スイッチ51と作業モード切換スイッチ52とPTO接続モードスイッチ53からそれぞれの切換位置が入力する。
【0032】
制御装置50からの制御信号出力は、HST操作バルブ34Vの前進側ソレノイド34FSと後進側ソレノイド34BSに制御信号が出力され、トラニオン軸操作シリンダ34Sが制御される。
【0033】
また、作業機昇降バルブ30Vのメイン上昇ソレノイド30USとメイン下降ソレノイド30DSに制御信号が出力され、作業機昇降シリンダ48が制御される。
【0034】
さらに、PTOクラッチソレノイド43Sに制御信号が出力し、PTO油圧クラッチ43がオン・オフ制御される。
【0035】
図5は、作業モード切換スイッチ52を示し、路上走行と4WDとこだわり作業と耕耘作業と土寄せ作業に切換え出来るようにしている。
【0036】
路上走行では、ロータリ作業機30を最上昇させて高速で走行するが、4WDやこだわり作業や耕耘作業においては、耕深制御モード切換スイッチ51を耕深制御モードに切り換えている条件で、ロータリ作業機30を降下させて耕耘爪29を回転するが、旋回や短距離移動の際には、ロータリ作業機30を上昇させる。ロータリ作業機30が上昇していくと、まず耕耘爪29が圃場面から浮き上がるので、この浮き上がりをロータリカバー31の回動を検出するカバー回動角センサ33で検出して、耕耘爪29が圃場面から浮き上がる状態になってロータリカバー31の下方回動が止まるのを検出すると、PTOクラッチソレノイド43SにPTO油圧クラッチ43を切るように制御出力することでPTO軸19の駆動を停止し、耕耘爪29の回転を停止して、耕耘爪29に付着した泥土を圃場に撒き散らさないようにする。
【0037】
さらに、ロータリ作業機30を上昇すると、リフトアーム27の回動をリフトアームセンサ27Sで検出して、所定角度以上に上昇するとPTOクラッチソレノイド43Sに再びPTO油圧クラッチ43を切る制御を出力するが、既に切っている場合はそのままで、ロータリカバー31を固定していたりカバー回動角センサ33が故障していたりすると、PTO油圧クラッチ43を切る制御が有効になる。
【0038】
作業モード切換スイッチ52を土寄せに切り換えている場合には、前記のリフトアーム27の上昇回動でPTO油圧クラッチ43を切る角度よりも大きく回動した第二検出位置でPTO油圧クラッチ43を切るようにすることで、耕耘爪29を高い位置で回転させる土寄せ作業を可能にしている。
【0039】
旋回や短距離移動が終わってロータリ作業機30を降下する場合には、リフトアームセンサ27Sで耕耘爪29が接地する直前の所定角度を検出すると、PTO油圧クラッチ43を入りに切り換えて耕耘爪29の駆動を開始することで、耕耘を直ちに開始する。また、耕深制御モード切換スイッチ51を代掻きモードにしている場合には、カバー回動角センサ33がロータリカバー31の接地を検出して耕耘爪29の駆動を開始することで泥跳ねを少なく出来る。
【0040】
PTO油圧クラッチ43を入りに切り換えるタイミングは、変速レバー位置センサ20Sの変速位置或いは車速センサ49を見て速い変速位置或いは速い速度であれば早く、遅い変速位置或いは遅い速度であれば遅くする。なお、車速はトラニオン位置検出センサ55のトラニオン位置で判断するようにしても良い。
【0041】
また、PTO変速レバー位置センサ23Sが逆転位置を検出すると、PTO油圧クラッチ43を入りに切り換えるタイミングを通常よりも速くすることで、盛り上がった土を均す土寄せ作業が良好に行える。
【0042】
副変速レバー位置センサ21Sが高速位置で共に/或いは作業モード切換スイッチ52が路上走行で車速センサ49が高速走行を示している場合には路上走行を行っているので、リフトアーム27の角度がどのような角度であってもPTO油圧クラッチ43を入りにしない。しかし、この場合でもリフトアーム27が所定角度以下でPTO接続モードスイッチ53をオンすると、PTO油圧クラッチ43を入りに出来るようにする。
【0043】
また、PTO接続モードスイッチ53をオンするとエンジン5を停止するまでPTO油圧クラッチ43の入りが保持されるようにする。この場合にエンジン5を再始動してPTO接続モードスイッチ53をオンするとPTO油圧クラッチ43が入りになるようにする。
【0044】
また、GPS受信機54で検出するトラクタの地図上位置が圃場以外或いはGPS受信機54で計測する移動速度が高速では、PTO油圧クラッチ43を入りに出来ないようにしても良い。この場合でも、整備点検のためにPTO油圧クラッチ43を入りに出来るスイッチを設けると良い。