(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
たとえば、家庭用電源では使用することのできる電流量はブレーカーにより規定されるため、これら電気機器を最大出力で動作させるには、電流値を検出し、これら電気機器の電流値の和がブレーカーの最大電流値を超えることのないように制御する必要がある。このとき、カレントトランスにより検出される電流値に誤差があると、安全を見込んで低めの合計電流値で電気機器を作動させざるを得ない。このため、カレントトランスにより正確な電流値検出を行ない、ブレーカーの最大電流値を超えることなくぎりぎりの範囲で電気機器の出力を最大まで高めることが求められている。
【0007】
しかしながら、特許文献1の
図1や
図2に示すカレントトランスでは、I型コアがなくE型コアの脚部先端は開放しているから、脚部間の漏れ磁束が大きくなり、磁気飽和が早くなる。その結果、1次電流を大きくしていくと、2次出力電圧のドロップが大きくなるため、コアのサイズを大きくする必要があった。
【0008】
また、E型コアとI型コア間に形成されるギャップの間隔を調整することで、出力電圧も調整することができるが、当該カレントトランスでは、ギャップがないから出力電圧の調整を行なうことができない。さらには、コアの材料磁気特性ばらつきやコアを熱処理する焼鈍工程における温度ばらつきを考慮すると、2次出力電圧の公差を大きく設定する必要があった(たとえば実力値±3%〜5%)。
【0009】
本発明の目的は、温度特性にすぐれ、ギャップ調整により出力電圧を高精度に調整し、公差を小さくできるカレントトランス及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るカレントトランス用コア部品は、
電磁鋼板から形成され、略平行に延びる3本の脚部と、前記脚部の端部を繋ぐ繋ぎ部と、を有するE型コアと、
電磁鋼板から形成され、前記繋ぎ部と略同じ長さのI型コアと、
を具え、
前記E型コアの前記繋ぎ部上に前記I型コアを重ねて一体化している。
【0011】
また、本発明に係るカレントトランスは、
貫通した中空部を有し、1次側コイルと2次側コイルを巻線した樹脂製のボビンと、
前記ボビンの前記中空部に、電磁鋼板から形成され、略平行に延びる3本の脚部と、前記脚部の端部を繋ぐ繋ぎ部とを有するE型コアの中央の脚部を交互に逆向きに積層し、積層された前記E型コアの前記繋ぎ部間に電磁鋼板から形成され、前記繋ぎ部と略同じ長さのI型コアが配置されたコアと、
を具える、カレントトランスであって、
前記コアは、請求項1に記載のカレントトランス用コア部品を、前記ボビンの前記中空部に第1方向と前記第1方向に対向する第2方向から交互に差し込んで積層したものである。
【0012】
前記カレントトランス用コア部品は、前記ボビンの前記中空部に第1方向と前記第1方向に対向する第2方向から交互に且つ表裏を逆向きにして積層して形成することができる。
【0013】
前記ボビンの中空部にて積層された前記カレントトランス用コア部品は、互いに一体化した構成とすることができる。
【0014】
前記ボビンの前記中空部に前記第1方向から差し込まれた前記カレントトランス用コア部品どうしは積層状態にて互いに一体化され、
前記ボビンの前記中空部に前記第2方向から差し込まれた前記カレントトランス用コア部品どうしは積層状態にて互いに一体化されている構成とすることができる。
【0015】
また、本発明に係るカレントトランスの製造方法は、
電磁鋼板から形成され略平行に延びる3本の脚部と、前記脚部の端部を繋ぐ繋ぎ部とを有するE型コアと、電磁鋼板から形成され前記繋ぎ部と略同じ長さのI型コアについて、前記E型コアの前記繋ぎ部上に前記I型コアを重ねて一体化したカレントトランス用コア部品を準備するカレントトランス用コア部品準備ステップ、
貫通した中空部を有し、1次側コイルと2次側コイルを巻線した樹脂製のボビンを準備するボビン準備ステップと、
前記カレントトランス用コア部品の前記E型コアの中央の前記脚部を、前記ボビンの前記中空部に第1方向と前記第1方向に対向する第2方向から交互に差し込んで積層する積層ステップ、
前記積層されたカレントトランス用コア部品を一体化する一体化ステップ、
とを含んでいる。
【0016】
前記積層ステップの後、前記一体化ステップの前に、
前記積層されたカレントトランス用コア部品を、前記第1方向及び/又は前記第2方向から押圧して、前記第1方向から差し込まれた前記カレントトランス用コア部品の前記E型コアの前記脚部の先端と、前記第2方向から差し込まれた前記カレントトランス用コア部品の前記I型コアの端縁との間に形成されるギャップ、及び、前記第2方向から差し込まれた前記カレントトランス用コア部品の前記E型コアの脚部の先端と、前記第1方向から差し込まれた前記カレントトランス用コア部品の前記I型コアの端縁との間に形成されるギャップを調整するギャップ調整ステップ、
を含んでいることが望ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明のカレントトランス用コア部品は、予めE型コアとI型コアを重ねて一体化しているから取り扱いが容易であり、カレントトランスのボビンに容易に差し込むことができる。
【0018】
また、本発明のカレントトランスは、ボビンに第1方向から差し込まれたカレントトランス用コア部品のE型コアと第2方向から差し込まれたカレントトランス用コア部品のI型コアの端縁との間に形成されるギャップ、及び、第2方向から差し込まれたカレントトランス用コア部品のE型コアと第1方向から差し込まれたカレントトランス用コア部品のI型コアの端縁との間に形成されるギャップの間隔を調整することができる。ギャップ調整が可能なことで、カレントトランスの出力電圧を高精度に調整することができ、また、公差を可及的に小さくすることができる。
【0019】
本発明のカレントトランスの製造方法によれば、カレントトランス用コア部品は、E型コアとI型コアを一体化している。従って、当該カレントトランス用コア部品をボビンの中空部に第1方向及び第2方向から差し込み、カレントトランス用コア部品どうしを一体化することでカレントトランスを製造することができ、製造効率を高めることができる。
【0020】
さらに、本発明のカレントトランスの製造方法によれば、ボビンに第1方向から差し込まれたカレントトランス用コア部品のE型コアと第2方向から差し込まれたカレントトランス用コア部品のI型コアの端縁との間に形成されるギャップ、及び、第2方向から差し込まれたカレントトランス用コア部品のE型コアと第1方向から差し込まれたカレントトランス用コア部品のI型コアの端縁との間に形成されるギャップの間隔を調整することができる。ギャップ調整が可能なことで、カレントトランスの出力電圧を高精度に調整することができ、また、公差を可及的に小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係るカレントトランスの斜視図である。
【
図2】
図2は、本発明のカレントトランス用コア部品の分解斜視図である。
【
図3】
図3は、E型コアとI型コアをカシメにより一体化したカレントトランス用コア部品の(a)斜視図、(b)断面図である。
【
図4】
図4は、E型コアとI型コアをカシメにより一体化したカレントトランス用コア部品であって、パイロット孔なしの実施形態の斜視図である。
【
図5】
図5は、E型コアとI型コアを溶接により一体化したカレントトランス用コア部品の斜視図であって、(a)は端縁、(b)は側面に溶接を施した実施形態である。
【
図6】
図6は、カレントトランス用コア部品をカレントトランスに組み込んだ際に、磁束密度の低い領域を示す平面図である。
【
図7】
図7は、1次側コイル及び2次側コイルを巻線したボビンに、カレントトランス用コア部品を差し込む工程を示す側面図である。
【
図8】
図8は、同ボビンに、カレントトランス用コア部品を差し込む工程を示す縦断面図である。
【
図9】
図9は、すべてのカレントトランス用コア部品をボビンに差し込み、第1方向から差し込まれたカレントトランス用コア部品どうし、第2方向から差し込まれたカレントトランス用コア部品どうしをそれぞれ溶接により一体化した状態を示す側面図である。
【
図10】
図10は、第1方向から差し込まれて一体化したカレントトランス用コア部品と、第2方向から差し込まれて一体化したカレントトランス用コア部品との間に形成されるギャップを調整する工程を示す側面図である。
【
図11】
図11は、ギャップ調整の後、第1方向から差し込まれて一体化したカレントトランス用コア部品と、第2方向から差し込まれて一体化したカレントトランス用コア部品をスポット溶接により一体化した状態を示す側面図である。
【
図12】
図12は、第1方向から差し込まれたカレントトランス用コア部品と、第2方向から差し込まれたカレントトランス用コア部品をギャップ調整の後、まとめて一体化した実施形態を示す側面図である。
【
図13】
図13は、カレントトランス用コア部品を積層する際の表裏重ね順を変えた実施形態を示す側面図である。
【
図14】
図14は、ギャップを挟んで対向するE型コアとI型コア(何れもプレス抜き加工により製造)の突合せ部分の拡大図であって、(a)は剪断面どうし、破断面どうしを突き合わせた実施形態、(b)は剪断面と破断面を突き合わせた実施形態を示している。
【
図15】
図15は、第1方向から挿入されるカレントトランス用コア部品、第2方向から挿入されるカレントトランス用コア部品を夫々予めブロック化してボビンに差し込むカレントトランスの製造形態を示す斜視図である。
【
図16】
図16は、本発明の一実施形態に係るカレントトランスモジュールの分解図である。
【
図17】
図17は、カレントトランスモジュールの斜視図である。
【
図18】
図18は、カレントトランスモジュールの断面図である。
【
図21】
図21は、実施例におけるカレントトランス出力電圧測定回路の回路図である。
【
図22】
図22は、比較例1のカレントトランスの斜視図である。
【
図23】
図23は、比較例2のカレントトランスの斜視図である。
【
図24】
図24は、比較例3のカレントトランスの斜視図である。
【
図25】
図25は、発明例の−25℃、25℃及び80℃の出力電圧特性を示すグラフ(実施例1)である。
【
図26】
図26は、発明例、比較例1及び比較例2の出力電圧特性を比較するグラフ(実施例2)である。
【
図27】
図27は、比較例3の−25℃、25℃及び80℃の出力電圧特性を示すグラフ(実施例3)である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の一実施形態に係るカレントトランス用コア部品31(以下「コア部品」と称する)、カレントトランス10及びカレントトランスモジュール12について図面を参照しながら説明を行なう。
【0023】
図1は、本発明の一実施形態に係るカレントトランス10の斜視図である。図に示すように、カレントトランス10は、1次側コイル26と2次側コイル27が巻回された樹脂製のボビン20に、1次側コイル26及び2次側コイル27の共通の磁路を形成するコア30を装着して構成される。図示の実施形態では、1次側コイル26は、U字状の巻線部材であり、2次側コイル27はボビン20に巻回された細巻線部材であって外周をテープで保護している。
【0024】
コア30は、複数のコア部品31を積層して構成される。
図2は、コア30を構成する1つのコア部品31の分解斜視図である。コア部品31は、図に示すように、E型コア40とI型コア50から構成することができる。E型コア40及びI型コア50は、ケイ素鋼板等の電磁鋼板をプレス抜き加工することで得ることができる。たとえば電磁鋼板は薄板帯状のものを採用できる。
【0025】
E型コア40は、略平行に延びる3本の略矩形形状の脚部41,42,41とこれら脚部41,42,41の一端を繋ぐ略矩形形状の繋ぎ部43を具える。繋ぎ部43の幅寸法43aは漏れ磁束を抑制するため脚部41の幅寸法41aよりも長い寸法にすることが望ましい。また、I型コア50は、繋ぎ部43と略同じ大きさの略矩形形状とすることができる。E型コア40及びI型コア50には、位置決め用のパイロット孔44,51を形成しておくことが望ましい。さらに、I型コア50をE型コア40へ位置合わせして重ね易くするために、I型コア50は、長手方向の寸法をE型コア40の繋ぎ部43の長手方向の寸法よりも0.1mm〜0.3mm小さくすることが望ましい。
【0026】
E型コア40とI型コア50は、E型コア40の繋ぎ部43にI型コア50を重ねて一体化することでコア部品31を形成する。一体化は、たとえば
図3及び
図4に示すカシメ34や、
図5に示す溶接35、図示しない接着を例示できる。
【0027】
カシメ34によりE型コア40とI型コア50を一体化する場合、
図2に示すようにE型コア40又はI型コア50の一方に予めカシメ孔45、他方にダボ52を形成しておき、
図3(a)及び
図3(b)に示すようにE型コア40とI型コア50を重ねてカシメ孔45とダボ52を位置合わせしてカシメ34を行なえばよい。カシメ孔45はE型コア40やI型コア50をプレス抜き加工する際に同時に形成できる。カシメ孔45を形成した際に、コア30の強度低下や変形を抑えるために、カシメ孔45は面積の大きいE型コア40に形成することが望ましい。
【0028】
また、溶接35によりE型コア40とI型コア50を一体化する場合、
図5(a)に示すようにE型コア40の繋ぎ部43の外側端縁とI型コア50の外側端縁に跨がるように溶接を施せばよい。また、
図5(b)に示すようにE型コア40の繋ぎ部43の両端とI型コア50の両端に跨がるように溶接35を施してもよい。溶接35は、レーザー溶接、レーザー溶接、抵抗溶接(以下の説明による溶接も同じ)を例示できるがこれに限定されるものではない。
【0029】
E型コア40とI型コア50を上記した溶接35により一体化する場合、溶接部分及びその近傍は磁気特性が低下する虞がある。このため、溶接35は、
図6に示すように、コア部品31中でも磁束密度の低い領域46、すなわち、E型コア40とI型コア50の外側端縁近傍の角部及び中央部に実施することが望ましい。当該領域46は、磁路中でも磁束密度が低い領域であるから磁気特性が多少低下しても性能への影響は抑えられる。
【0030】
図3乃至
図5に示すようにE型コア40とI型コア50を一体化してなるコア部品31を複数準備し(カレントトランス用コア部品準備ステップ)、コア部品31はボビン20に装着される。ボビン20はたとえば
図7に示すようにU字状の1次側コイル26と外周をテープ27bで保護した2次側コイル27が巻回されており、ボビン20にはこれらコイル26,27と直行する向きの中空部21が貫通形成されたものを準備する(ボビン準備ステップ)。
【0031】
然して、
図7及び
図8に示すように、コア部品31は、ボビン20の中空部21に順次中央の脚部42を差し込んで積層していく。具体的には、図に示すように、コア部品31,31は、中空部21に交互に逆向きに差し込んでいく。たとえば、
図7及び
図8において紙面左から右に向かう方向を第1方向、第1方向と対向する右から左に向かう方向を第2方向としたときに、まず、1枚目のコア部品31は、I型コア50を上向きとし、第1方向からE型コア40の脚部41,42,41をボビン20側に向けて、中央の脚部42が中空部21に挿入されるようにボビン20に接近させ、中央の脚部42を中空部21に差し込む。続いて、2枚目のコア部品31は、I型コア50を下向きとし、第2方向からE型コア40の脚部41,42,41をボビン20側に向けて、中央の脚部42が中空部21に挿入されるようにボビン20に接近させ、中央の脚部42を中空部21に差し込み、1枚目のコア部品31の脚部41,42,41と2枚目のコア部品31の脚部41,42,41を重ねる。なお、以下では、第1方向から差し込まれるコア部品を第1コア部品31a、第2方向から差し込まれるコア部品を第2コア部品31bと称する。そして、再度第1方向から第1コア部品31a、第2方向から第2コア部品31bを差し込んでいくことで、
図9に示すように第1コア部品31aと第2コア部品31bが脚部41,42(42は図示せず)を重ねた状態で積層される(積層ステップ)。
【0032】
これによりカレントトランス10を得ることができるが、この状態ではまだ第1コア部品31a、第2コア部品31bは固定等されておらず、中空部21に差し込まれたままである。従って、積層された第1コア部品31a、第2コア部品31bがばらけないように
図9に示す如く、端縁を揃えて第1コア部品31aどうし、第2コア部品31bどうしをそれぞれ一体化することが望ましい(一体化ステップ)。一体化は、たとえば
図9に符号36で示すように溶接とすることができる。溶接36は、レーザー溶接、抵抗溶接を例示できる。なお、カシメや接着等により一体化しても構わない。溶接36を行なう場合、
図6にて説明した磁束密度の低い領域46に実施することが望ましい。
【0033】
上記により第1コア部品31aどうし、第2コア部品31bどうしを一体化したカレントトランス10について、第1コア部品31aの脚部41,42,41の先端と、第2コア部品31bのI型コア50の内側端縁との間にギャップ60が形成されている。また、第2コア部品31bの脚部41,42,41の先端と、第1コア部品31aのI型コア50の内側端縁との間にギャップ60が形成されている。このギャップ60は、第1コア部品31aと第2コア部品31bを第1方向、第2方向から押し込むことで間隔を調整することができる(ギャップ調整ステップ)。
【0034】
ギャップ60の調整は、
図9及び
図10に矢印で示すように、カレントトランス10の出力電圧特性を参照しながら、第1コア部品31a、第2コア部品31bを夫々第1方向、第2方向から押し込むとで行なうことができる。これにより、コアの材料磁気特性ばらつきや、コアを熱処理する焼鈍工程における温度ばらつきが発生しても、ギャップ60の調整を行なうことで、カレントトランス10の出力電圧を高精度に調整することができ、また、公差を可及的に小さくすることができる。本発明によれば、公差は実力値で±1%以下、好適には±0.5%以下とすることができる。たとえば、ギャップ60は0.1mm〜0.4mm、好適には0.2mm程度とすることができる。
【0035】
そして、ギャップ60の調整が完了した後、
図1及び
図11に示すように、第1コア部品31aと第2コア部品31bは、外側に位置する脚部41,41の重なった位置で溶接37等により一体化する(一体化ステップ)。これにより、第1コア部品31aと第2コア部品31bは一体化され、一旦調整されたギャップ60が広狭変化することも防止できる。なお、第1コア部品31aどうし、第2コア部品31bどうしは先に一体化されているから、第1コア部品31aと第2コア部品31bの一体化のための溶接37は、1又は複数箇所のスポット溶接で済む。従って、溶接37によりコア部品31a,31bの磁気特性に影響が及ぶことはほとんどない。
【0036】
本発明のカレントトランス10は、第1コア部品31a、第2コア部品31bはワニスや接着剤、樹脂を用いることなく一体化できるから、これらによる熱膨張・熱収縮の影響を受けない。従って、温度特性にすぐれたカレントトランス10を提供できる。
【0037】
なお、上記では、第1コア部品31aどうし、第2コア部品31bどうしをそれぞれ一体化した後、ギャップ60の調整を行ない、第1コア部品31aと第2コア部品31bの一体化を行なっている。しかしながら、たとえば、
図9の溶接36を省略し、第1コア部品31aどうし、第2コア部品31bどうしを一体化せずに、ギャップ60の調整を行なってもよい。この場合、ギャップ60の調整の後、
図12に示すように第1コア部品31aと第2コア部品31bの外側に位置する脚部41,41の重なった位置を線溶接38すればよい。これにより、カレントトランス10の製造工程の簡略化を図ることができる。
【0038】
本発明では、
図11および
図12に示すように、第1コア部品31aと第2コア部品31bは、E型コア40の脚部41の略中央部分で溶接37,38している。このため、線膨張の長さが半分に抑制され、かつ溶接部37,38を起点に第1コア部品31aと第2コア部品31bが同じ方向に線膨張するので、ギャップ60はほぼ変化しない。また、
図11の溶接部36と37、
図12の溶接部38は、第1コア部品31aと第2コア部品31bの積層方向と略平行に形成されているため、これら溶接部の熱による線膨張はギャップ60の寸法には影響しない。
【0039】
また、上記では、第1コア部品31aはすべてI型コア50を上向き、第2コア部品31bはすべて下向きとして積層しているが、たとえば、
図13に示すように、第1コア部品31aと第2コア部品31bが対になっていれば、表裏は交互に、或いは、複数対毎に、さらにはランダムに変えても構わない。これにより、プレス抜き加工によりE型コア40、I型コア50を製造した場合のバリ73やだれ70(
図14参照)などによる厚さのばらつきを均等化することができる。
【0040】
図14(a)及び
図14(b)は、第1コア部品31aのE型コア40の脚部41,42,41の先端と、第2コア部品31bのI型コア50の内側端面との突合せ部分の拡大図である。プレス抜き加工によりE型コア40、I型コア50を製造した場合、
図14に示すように、E型コア40とI型コア50の端面は、角部が丸みを帯びてなめらかなだれ70、剪断により板厚方向に筋状痕が形成された剪断面71、材料がむしり取られたごとく凹凸の激しい破断面72、端面から抜き方向に飛び出したギザギザ状のバリ73が形成されている。そして、
図14(a)に示すようにE型コア40とI型コア50を、剪断面71,71どうし、破断面72,72どうしが対向するよう配置し、破断面72,72どうしを突き合わせると、破断面72,72は接触するが、剪断面71,71間にはギャップが残る。このため、ギャップの調整幅が小さくなり、出力電圧の調整幅も狭くなる。そこで、E型コア40とI型コア50どうしを突き合わせる場合には、
図14(b)に示すように、E型コア40とI型コア50は、剪断面71と破断面72が対向するように配置することが望ましい。これにより、ギャップ60を小さくすることができるため、ギャップ60の調整幅を広げて出力電圧の調整幅を広げ、容易に調整することが可能である。
【0041】
<異なる実施形態>
上記実施形態では、第1コア部品31a、第2コア部品31bを1枚ずつ中空部21に挿入している。しかしながら、たとえば、
図15に示すように、第1コア部品31aを予め積層して溶接やカシメにより一体化した第1コア部品ブロック32a、第2コア部品31bを予め積層して溶接やカシメにより一体化した第2コア部品ブロック32bを夫々作成し、ボビン20に装着する際に、第1コア部品31a,31aの脚部41,41間に第2コア部品31bの脚部41、第2コア部品31b、31bの脚部41,41間に第1コア部品31aの脚部41が侵入するよう噛み合わせてもよい。これにより、コア部品31a,31bはボビン20で1枚ずつ積層する必要はないから製造工程を可及的に簡便化することができる。
【0042】
上記により得られたカレントトランス10は、たとえばケーシング80に収容してカレントトランスモジュール12として使用することができる。
図16は、カレントトランス10と、これを収容するケーシング80の分解斜視図、
図17は、カレントトランス10の斜視図、
図18はカレントトランス10の縦断面図である。図に示すように、ケーシング80は、上ケース81と下ケース85から形成している。上ケース81は、コア30及びボビン20を収容する下面の開口した筺体形状であって、下ケース85は、ボビン20が載置されると共に上ケース81の下面を塞ぐ板状形状とすることができる。
図19に上ケース81の底面図、
図20に下ケース85の平面図を示す。
【0043】
下ケース85には、1次側コイル26の端子線26a、26aと2次側コイル27の端子線27a,27aがそれぞれ延出される挿通孔86a,86bが形成されており、
図16及び
図18に示すように、挿通孔86a,86bに各端子線26a,26bを挿入し、ボビン20を下ケース85に位置決めした状態で上ケース81を嵌めることでカレントトランスモジュール12を得ることができる。得られたカレントトランスモジュール12を
図17に示す。
【0044】
なお、カレントトランスモジュール12を作成した後、個々に出力電圧特性を測定し、得られた特性データを
図17に示すように上ケース81にデータマトリックス89として印刷或いはシール付けすることができる。これにより、カレントトランスモジュール12を交流機器に採用する際に、データマトリックス89を読み取って対応する特性データに基づき制御上で特性調整を行なうことができる。これにより、より高精度の出力電圧特性を達成できる。
【0045】
上記カレントトランス10とケーシング80との組み合わせにおいて、カレントトランスモジュール12には、小型化の要請がある。カレントトランスモジュール12の小型化を図るには、カレントトランス10の小型化が求められる。カレントトランス10の小型化するには、
図16、
図18に示すように、ボビン20に設けられる1次側コイル26と2次側コイル27との間を絶縁する上側絶縁壁22と下側絶縁壁24の突出高さを低くすることが望まれる。しかしながら、1次側コイル26と2次側コイル27との絶縁を図るために、絶縁の沿面距離(絶縁物の表面に沿って測定した最短距離)を確保する必要がある。
【0046】
そこで、本発明では、
図16及び
図18に示すように、ボビン20は、1次側コイル26と2次側コイル27との間に設けられた上側絶縁壁22と1次側コイル26との間に上側凹み23を形成し、他方、上ケース81には、
図18及び
図19に示すように上側凹み23に嵌合する上側凸部83を形成している。
【0047】
そして、カレントトランス10を上ケース81に収容したときに、上側凹み23に上側凸部83が嵌合し、絶縁壁となって1次側コイル26と2次側コイル27の絶縁の沿面距離を長く稼げるようにしている。また、上側凹み23に上側凸部83が嵌合することで、ボビン20を上ケース81に位置決めできる。
【0048】
さらに、上ケース81の上面内側には、1次側コイル26の抜けを抑える当たり部82として、1次側コイル26の外形に沿う凹みを形成している。この当たり部82はカレントトランスモジュール12をプリント配線板などに実装する際に、1次側コイル26が浮き上がることを防止する。
【0049】
また、ボビン20は、
図18に示すように、1次側コイル26と2次側コイル27との間に設けられた下側絶縁壁24と1次側コイル26との間に下側凹み25を形成し、他方、
図16、
図18及び
図19に示すように、下ケース85には下側凹み25に嵌合する下側凸部87を形成している。
【0050】
そして、カレントトランス10を下ケース85に載置したときに、下側凹み25に下側凸部87が嵌合し、絶縁壁となって1次側コイル26と2次側コイル27の絶縁の沿面距離を長く稼げるようにしている。
【0051】
これにより、1次側コイル26と2次側コイル27の沿面距離を確保しながら、ボビン20の絶縁壁22,24を低くしてカレントトランス10及びカレントトランスモジュール12の小型化を達成できる。また、下側凹み25に下側凸部87が嵌合することで、ボビン20を下ケース85に位置決めできる。
【0052】
また、下ケース85には、ボビン20の下面を支える段部88を設け、下ケース85にボビン20が当接さたときにボビン20の下面を段部88に当てて、ボビン20がケーシング80内で傾くことなく保持されるようにすることが望ましい。
【0053】
さらに、本発明のカレントトランス10では、出力電圧特性を参照しながらギャップ60の調整を行なっているから、ギャップ60の広狭により、コア30はボビン20に対して脚部41の長手方向に遊びを有することになり、中空部21の貫通方向にスライドしてガタが発生することがある。このため、カレントトランスモジュール12では、コア30をボビン20に対して位置決めすることが望まれる。
【0054】
ボビン20は、上述のとおり、上側凹み23と上側凸部83との嵌合、下側凹み25と下側凸部87の嵌合によりケーシング80に位置決めされている。従って、ケーシング80に対してコア30も位置決めできれば、コア30とボビン20も相対的に位置決めできる。そこで、本実施形態では、
図18に示すように、ケーシング80に対してコア30を位置決めできる構造を採用した。具体的には、上ケース81は、ボビン20を位置決めした状態で、一方の内面84がコア30に当接し、ボビン20と上ケース81の内面84によってE型コア40の繋ぎ部43及びI型コア50を挟むようにしている。これにより、本発明のカレントトランスモジュール12は、コア30がボビン20に押し付けられるから、コア30とボビン20を位置決めでき、ガタの発生を抑えることができる。
【0055】
上記説明は、本発明を説明するためのものであって、特許請求の範囲に記載の発明を限定し、或いは範囲を限縮するように解すべきではない。また、本発明の各部構成は、上記実施例に限らず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能であることは勿論である。
【実施例】
【0056】
図21に示す出力電圧測定回路90にカレントトランス10を組み込んで出力電圧特性を測定した。出力電圧測定回路90は、カレントトランス10の1次側コイル26を電流計91と直列接続された交流電源92に接続し、他方、2次側コイル27は、抵抗93と並列に電圧計94に接続した。発明例として、
図1に示すカレントトランス10を採用した。
【0057】
なお、比較のために、特許文献1の
図1に示すI型コアを省略したE型コア40のみのカレントトランス100を比較例1(
図22)、特許文献1の
図6に示すE型コア40とI型コア50をワニス等で一体化したカレントトランス101を比較例2(
図23)、さらに、E型コア40を縦に重ねてブロック状とし、I型コア50も縦に重ねてブロック状とし、E型コア40のブロック103とI型コア50のブロック104を突き合わせてワニスで固着したカレントトランス102を比較例3(
図24)として作成した。
【実施例1】
【0058】
発明例のカレントトランス10について、−25℃、25℃、80℃の温度雰囲気において、入力電流(A)を変化させ、出力電圧(V)を測定した。結果を
図25に示す。
図25を参照すると、本発明のカレントトランス10は、入力電流に対して各温度雰囲気において出力電圧は比例関係にあり、温度特性にすぐれることがわかる。これは、予めカシメや溶接により一体化されたE型コア40とI型コア50を、第1方向と第2方向から差し込み溶接により一体化してカレントトランス10を形成したことで、コア30の一体化のために熱膨張・熱収縮を受け易いワニス、接着剤、樹脂などを使用していないからであり、これにより、熱膨張・熱収縮の影響を可及的に低減できたものである。
【実施例2】
【0059】
発明例のカレントトランス10(
図1)、比較例1のカレントトランス100(
図22)、比較例2のカレントトランス101(
図23)について、25℃の温度雰囲気において、出力電圧特性を測定した。結果を
図26に示す。
図26を参照すると、発明例は、入力電流に対する出力電圧はほぼ直線状の比例関係にある。しかしながら、比較例1は大電流側で出力電圧が低下している。また、比較例1は、E型コア40の脚部先端が開放しているため、脚部間の漏れ磁束が大きくなり、磁気飽和が早くなる問題もある。これを解消するには比較例1はコアのサイズを大きくする必要もある。比較例2は、E型コア40とI型コア50をワニスで固定する必要があり、これらの位置ずれによりとくに大電流側で出力電圧が低下していることがわかる。
【実施例3】
【0060】
比較例3のカレントトランス102(
図24)について、実施例1と同様に、−25℃、25℃、80℃の温度雰囲気において、出力電圧特性を測定した。結果を
図27に示す。
図27を参照すると、比較例3のカレントトランス102は、温度変化により出力電圧特性にばらつきがあることがわかる。これは、温度変化により、コア30を固定するワニスが熱膨張・熱収縮し、コア30が線膨張してE型コア40のブロック103とI型コア50のブロック104との間のギャップが変化したためである。
【0061】
上記実施例1乃至実施例3より、発明例のカレントトランス10は、比較例に比して、極めて温度特性にすぐれることがわかる。
【解決手段】カレントトランス用コア部品31は、電磁鋼板から形成され、略平行に延びる3本の脚部41、42、41と、脚部の端部を繋ぐ繋ぎ部と、を有するE型コア40と、電磁鋼板から形成され、繋ぎ部と略同じ長さのI型コア50と、を具え、E型コア40の繋ぎ部上にI型コア50を重ねて一体化している。