(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記した従来技術のマグネットフィルタでは、液体から磁性体を除去する性能を高めるために改善すべき問題点があった。
具体的には、
図10に示すように、従来技術のマグネットフィルタ101では、マグネット103に捕集された磁性体50が、後続して流れる液体と接触することによりマグネット103から剥がされてしまい、再度液体に混入して押し流されてしまうことがあった。これにより、マグネットフィルタ101の磁性体50を吸着して除去する性能が低下してしまう。
【0006】
特に、粘性が高い液体の場合、高圧力を加えて液体が押し流されているので、マグネットの側面近傍に吸着された磁性体は、高圧力で押し流されている液体によって強く押されてマグネットの後流側に集まり易く、マグネットから剥離し易い。
【0007】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、マグネットに吸着した磁性体の剥がれが少なく、液体に混入している磁性体を高性能に選別除去することが可能なマグネットフィルタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のマグネットフィルタは、液体の流入口とそれに対向する位置に流出口が形成されているケーシングと、前記ケーシングの内部に
設けられ前記液体の流れに
直交するよう
延在しており前記液体に混入している磁性体を吸着するバーマグネットと、を有し、前記ケーシングの内部には、前記バーマグネットの後流側に前記液体の流れを妨げる流通阻害部材が設けられて
おり、前記流通阻害部材は、前記バーマグネットに沿って延在しており、前記流通阻害部材の両側方には、前記液体が流通可能な流路が形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明のマグネットフィルタによれば、液体の流入口とそれに対向する位置に流出口が形成されているケーシングと、ケーシングの内部に液体の流れに交差するよう配設されて液体に混入している磁性体を吸着するバーマグネットと、を有し、ケーシングの内部には、バーマグネットの後流側に液体の流れを妨げる流通阻害部材が設けられている。このようにバーマグネットの後流側に流通阻害部材が設けられることにより、液体の流れに好適な滞留が生じると共に、バーマグネットに吸着された磁性体がバーマグネットの後流側に押されて剥がされてしまうことを流通阻害部材によって防ぐことができる。その結果、バーマグネットに吸着された磁性体の剥がれが少なくなり、バーマグネットの磁性体吸着性能を高めることができる。よって、マグネットフィルタの磁性体選別能力を向上させることができる。
【0010】
また、本発明のマグネットフィルタによれば、前記ケーシングには、対向する一対の開口部が形成されており、一対の前記開口部には、それぞれ取り外し可能な蓋体が設けられ、一方の前記蓋体に前記バーマグネットが固定され、他方の前記蓋体に前記流通阻害部材が固定されていても良い。これにより、ケーシングの開口部から蓋体を取り外して、ケーシングの内部、バーマグネット及び流通阻害部材の洗浄等を容易に行うことができる。
【0011】
また、本発明のマグネットフィルタによれば、前記バーマグネットは、互いに平行して延在するよう複数本設けられ、前記流通阻害部材は、複数本の前記バーマグネットの後流側にそれぞれ設けられ、前記ケーシングの前方側に配置された前記バーマグネットの前記流通阻害部材は、前記流通阻害部材の左右方向の中心から前記ケーシングの左右方向の中心までの距離が前記バーマグネットの中心軸から前記ケーシングの左右方向の中心までの距離と等しくなるよう設けられ、前記ケーシングの後方側に配置された前記バーマグネットの前記流通阻害部材は、前記流通阻害部材の左右方向の中心から前記ケーシングの左右方向の中心までの距離が前記バーマグネットの中心軸から前記ケーシングの左右方向の中心までの距離よりも短くなるよう設けられていても良い。これにより、ケーシング内部の前方側及び後方側に配置された各バーマグネットにおいて、液体の滞留を好適な状態にしてバーマグネットによる磁性体吸着性能を高めることができる。
【0012】
また、本発明のマグネットフィルタによれば、前記バーマグネットは、互いに平行して延在するよう複数本設けられ、前記流通阻害部材は、前記バーマグネット側を向く平面部を有し複数本の前記バーマグネットの後流側にそれぞれ設けられ、前記ケーシングの前方側に配置された前記バーマグネットの前記流通阻害部材は、前記平面部が前方を向くように設けられ、前記ケーシングの後方側に配置された前記バーマグネットの前記流通阻害部材は、前記平面部が斜め側方を向くように傾斜して設けられていても良い。これにより、ケーシング内部の前方側及び後方側に配置された各バーマグネットにおいて、バーマグネットの前方の周面近傍から左右両側の周面近傍への流体の流れを良好に確保しつつ流通阻害部材によって後流側の流れを押さえて磁性体の剥離を防止することができる。よって、流体から磁性体を選別除去する優れた性能が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態に係るマグネットフィルタを図面に基づき詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態に係るマグネットフィルタ1の概略構成を示す正面図であり、
図2は、マグネットフィルタ1の概略構成を示す正面断面図である。
図3は、マグネットフィルタ1の概略構成を示す平面図である。
【0015】
マグネットフィルタ1は、各種食品や医薬等の液体に含まれている鉄等の磁性体異物を除去するための装置であり、
図1ないし
図3に示すように、液体の配管に接続されるケーシング2と、ケーシング2の内部に設けられたバーマグネット3と、を有する。
【0016】
ケーシング2は、バーマグネット3が配設される液体の流路を構成する部材であり、オーステナイト系ステンレス鋼材等から形成されている。ケーシング2は、略上下方向に延在する略円筒状のケーシング本体10を有し、ケーシング本体10の軸方向の両端には、対向する一対の開口部である上開口部11と下開口部14が形成されている。
【0017】
ケーシング本体10の軸方向上方の端部には、上開口部11をふさぐ蓋体である上蓋30が着脱自在に取り付けられ、ケーシング本体10の軸方向下方の端部には、下開口部14をふさぐ蓋体である下蓋35が着脱自在に取り付けられている。
【0018】
具体的には、上蓋30は、略円盤状に形成されており、上蓋30のケーシング本体10側には、ケーシング本体10の上開口部11の内周面に嵌め合わされる嵌合部31が形成されている。そして、上蓋30は、嵌合部31がケーシング本体10の上開口部11に嵌合してケーシング本体10に取り付けられる。なお、上蓋30とケーシング本体10との接面には、図示しないOリング等のシール部材が設けられても良い。
【0019】
また、ケーシング本体10の上端近傍の外周には、上蓋30を固定するためのクランプ状の固定具32に係合する上フランジ部12が形成されている。ケーシング本体10の上開口部11をふさぐように嵌合部31が嵌められた上蓋30は、その外周近傍と上フランジ部12を上下から押さえるように嵌められる固定具32によって着脱自在に固定されている。
【0020】
下蓋35についても上蓋30と略同等に構成されケーシング本体10に取り付けられている。即ち、下蓋35は、略円盤状に形成されており、下蓋35のケーシング本体10側には、ケーシング本体10の下開口部14の内周面に嵌め合わされる嵌合部36が形成されている。そして、下蓋35の嵌合部36がケーシング本体10の下開口部14に嵌合して、ケーシング本体10に下蓋35が取り付けられる。なお、下蓋35とケーシング本体10との接面には、図示しないOリング等のシール部材が設けられても良い。
【0021】
また、ケーシング本体10の下端近傍の外周には、クランプ状の固定具37に係合する下フランジ部15が形成されている。下蓋35は、ケーシング本体10の下開口部14をふさぐように嵌められ、下蓋35の外周近傍と下フランジ部15を上下から押さえるように固定具37が嵌められる。これにより、下蓋35が着脱自在に固定される。
【0022】
上蓋30の上面、即ちケーシング本体10の反対側となる外面には、略円柱状の棒状体を略コ字状に曲折して形成された把手部34が、その両端部を上蓋30に固定するように取り付けられている。把手部34が設けられていることにより、上蓋30の取り付けや取り外しの際に、作業者は把手部34を持って上蓋30を支えることができ、作業を容易に行うことができる。なお、図示を省略するが、下蓋35についても、それを支えて着脱作業を容易にするための把手部等が設けられていても良い。
【0023】
ケーシング本体10の側周面には、略対向する位置に、液体がケーシング本体10内に流入する略円形状の開口である流入口20と、液体が流出する略円形状の開口である流出口25と、が形成されている。
【0024】
流入口20には、ケーシング本体10内に流入する液体が流れる略円筒状の流入パイプ21が接続されている。なお、流入パイプ21は、ケーシング本体10側と外端部側とで流路断面径が異なるようテーパ状に形成されていても良い。
【0025】
流入パイプ21の外端部には、流入パイプ21を液体の配管に接続するためのフランジ22が設けられている。フランジ22の形態は特に限定されるものではなく、流入パイプ21と液体の配管との接続が可能な他の配管継手が利用されても良い。
【0026】
流出口25には、ケーシング本体10内から流出する液体が流れる略円筒状の流出パイプ26が接続されている。なお、流出パイプ26は、ケーシング本体10側と外端部側とで流路断面径が異なるようテーパ状に形成されていても良い。
【0027】
流出パイプ26の外端部には、流出パイプ26と流出側の液体の配管とを接続するためのフランジ27が設けられている。なお、フランジ27に代えて、流出パイプ26と液体の配管との接続が可能な他の配管継手が利用されても良い。
【0028】
ケーシング2の内部には、液体に混入している磁性体を吸着する複数本のバーマグネット3が配設されている。バーマグネット3は、オーステナイト系ステンレス鋼材等から形成された有底円筒状のマグネットケース33を有し、その内部には、図示を省略するが、例えば、ネオジウム磁石等の永久磁石である複数の円柱状マグネットが配設されている。円柱状マグネットの外径は、マグネットケース33の内径と略同一であり、隣り合う円柱状マグネットは、互いに磁極が反発するように軟鉄性ヨークを介して配置されている。
【0029】
バーマグネット3は、ケーシング2の内部を流れる液体の流れに交差するよう配設されている。具体的には、バーマグネット3の中心軸は、略円筒状のケーシング本体10の中心軸と略平行に延在しており、複数本のバーマグネット3は、互いに略平行になるよう配設されている。
【0030】
ケーシング2の内部には、各バーマグネット3の後流側に流通阻害部材としての邪魔板4が設けられている。邪魔板4は、略板状の形態をなし、平面部である一主面がバーマグネット3側を向き、バーマグネット3の軸方向に延在するよう設けられている。
【0031】
邪魔板4は、バーマグネット3の後流側に液体流れの好適な滞留を生じさせて、バーマグネット3に吸着された磁性体が液体の流れによって後流側に押されて剥がされてしまうことを防止するための部材である。
【0032】
図4は、バーマグネット3及び邪魔板4の配置を示す平面図である。
図4に示すように、本実施形態では、ケーシング2の内部に5本のバーマグネット3が配設される例を示している。即ち、1本のバーマグネット3が、略円筒状のケーシング本体10の中心軸と略同軸に配設されており、4本のバーマグネット3が、ケーシング本体10の中心軸を中心として円形状に等間隔に配設されている。そして、5本のバーマグネット3のそれぞれの後流側には、一主面がバーマグネット3側を向く邪魔板4が配設されている。
【0033】
このように、それぞれのバーマグネット3の後流側に邪魔板4が設けられることにより、バーマグネット3に吸着された磁性体がバーマグネット3の後流側に押されて剥がされてしまうことを防止することができる。即ち、邪魔板4によって、バーマグネット3に吸着した磁性体の剥がれが少なくなり、バーマグネット3の磁性体吸着性能を高めることができ、マグネットフィルタ1の磁性体選別能力を向上させることができる。
【0034】
ここで、邪魔板4は、バーマグネット3に接合されていても良いし、所定の離間寸法L1でバーマグネット3から離間していても良い。バーマグネット3と邪魔板4との離間寸法L1は、例えば、0mmから10mm、好ましくは、0mmから5mm、更に好ましくは、0mmから2mmである。本実施形態では、当該離間寸法L1を約1mmとしている。
【0035】
このようにバーマグネット3と邪魔板4とを接合する、若しくは、バーマグネット3と邪魔板4との間隔を好適な値とすることにより、バーマグネット3の後流側における液体の滞留を磁性体の剥離防止に好適な状態にすることができる。
【0036】
また、邪魔板4の幅W1は、バーマグネット3の外径D1を基準として50%から150%、好ましくは、80%から120%の寸法である。例えば、ケーシング本体10の内径d2が約φ106mmであり、バーマグネット3の外径D1が約φ25mmである場合、邪魔板4の幅W1は、バーマグネット3の外径D1の約87%に相当する約20mmである。
【0037】
このように邪魔板4の幅W1がバーマグネット3の外径D1を基準として所定の寸法範囲内に形成されることにより、ケーシング2の内部に液体が流通するための好適な流路面積を確保しつつ、各バーマグネット3の後流側において液体流れに対して好適な滞留空間を形成することができる。よって、液体に押されてバーマグネット3から磁性体が剥離してしまうことを効率的に抑えることができる。
【0038】
ケーシング2の前方側、即ち流入口20側、に配置されたバーマグネット3の邪魔板4は、邪魔板4の左右方向の中心からケーシング2の左右方向の中心までの距離L4が、バーマグネット3の中心軸からケーシング2の左右方向の中心までの距離L5と等しくなるよう設けられている。
【0039】
これに対して、ケーシング2の後方側、即ち流出口25側、に配置されたバーマグネット3の邪魔板4は、邪魔板4の左右方向の中心からケーシング2の左右方向の中心までの距離L6が、バーマグネット3の中心軸からケーシング2の左右方向の中心までの距離L7よりも短くなるよう設けられている。即ち、後方側では、邪魔板4の方がバーマグネット3よりもケーシング2の左右方向の中心に近い。
【0040】
ケーシング2の前方側、即ち流入口20側、に配置されたバーマグネット3の邪魔板4は、一主面が前方を向くように設けられている。これに対して、ケーシング2の後方側、即ち流出口25側、に配置されたバーマグネット3の邪魔板4は、一主面がケーシング2の斜め側方を向くように傾斜して設けられている。
【0041】
詳しくは、ケーシング2の前方側及び中心近傍に配置された3本のバーマグネット3の後流側にそれぞれ設けられた邪魔板4は、一主面が略同じくケーシング2の前方を向いている。これに対して、ケーシング2の後方側に配置された2本のバーマグネット3の後流側の邪魔板4は、それぞれ一主面がケーシング2の前方から外周側に約45度傾いた方向を向いている。
【0042】
このように、ケーシング2の後方側の邪魔板4が斜め側方を向くように傾斜して設けられることにより、邪魔板4とケーシング本体10の内周面との間に好適な流体流路を形成することができる。
【0043】
その結果、ケーシング2内部の前方側及び後方側に配置された各バーマグネット3において、バーマグネット3の前方の周面近傍から左右両側の内周面近傍への流体の流れを良好に確保することができる。そして、邪魔板4によって各バーマグネット3の後流側の流れを押さえて磁性体の剥離を防止することができる。よって、流体から磁性体を選別除去する優れた性能が得られる。
【0044】
図5は、マグネットフィルタ1のバーマグネット3及び邪魔板4の配置を示す正面図である。
図5に示すように、バーマグネット3は、その上端近傍が上蓋30に固定されている。これにより、バーマグネット3を上蓋30と共にケーシング本体10から容易に取り外すことができる。
【0045】
他方、邪魔板4は、下蓋35に固定されている。詳しくは、邪魔板4の一端近傍には、板状体を略90度曲折するように固定部38が形成されており、その固定部38が下蓋35の内面に、例えば、溶接等によって固定されている。このように、邪魔板4が下蓋35に固定されていることにより、邪魔板4を下蓋35と共に容易に取り外すことができる。なお、邪魔板4の端部近傍に略90度曲折する固定部38が形成されておらず、邪魔板4の一端部がそのままの形状で下蓋35に固定されていても良い。
【0046】
上記のように、上蓋30にバーマグネット3が固定され、下蓋35に邪魔板4が固定されていることにより、ケーシング本体10の上開口部11及び下開口部14から上蓋30及び下蓋35を取り外して、ケーシング2の内部、バーマグネット3及び邪魔板4の洗浄等を容易に行うことができる。
【0047】
上蓋30の内面と邪魔板4の端部とは、隙間なく接触していても良い。また、上蓋30の内面と邪魔板4との間には、液体が流通可能な間隙が設けられていても良い。上蓋30と邪魔板4との離間寸法L2は、例えば、0mmから5mmである。本実施形態では、当該離間寸法L2を約1mmとしている。
【0048】
また、下蓋35の内面とバーマグネット3との間には、液体が流通可能な間隙が設けられている。下蓋35とバーマグネット3との離間寸法L3は、例えば、0.1mmから2mm、好ましくは、0.1mmから1.2mmである。本実施形態では、当該離間寸法L3を約1mmとしている。
【0049】
上記のように上蓋30と邪魔板4との間、及び下蓋35とバーマグネット3との間に間隙が設けられることにより、液体の滞留を好適な状態にしてバーマグネット3による磁性体吸着性能を高めることができる。また、磁性体による上蓋30と邪魔板4の固着、及び下蓋35とバーマグネット3の固着を防止することができ、バーマグネット3及び邪魔板4の取り外し洗浄を容易に行うことができる。
【0050】
次に、
図6ないし
図9を参照して、マグネットフィルタ1の効果を確認した性能試験結果について詳細に説明する。
[実施例]
【0051】
図6は、マグネットフィルタ1の性能試験における設置を示す図である。
図6に示すように、本実施形態に係るマグネットフィルタ1を準備し、その後流側に邪魔板4を有しないマグネットフィルタ101を連結して2連にしたマグネットフィルタライン60を作成した。
マグネットフィルタ1は、5本のバーマグネット3を有し、各バーマグネット3の後流側には邪魔板4が設けられている。
【0052】
図4ないし
図6を参照して、ケーシング本体10の内径d2は約φ106mm、バーマグネット3が配置されるケーシング2の内部高さH1は約67mm、バーマグネット3の外径D1は約φ25mm、邪魔板4の幅W1は約20mmである。
【0053】
バーマグネット3と邪魔板4との離間寸法L1は約1mm、上蓋30と邪魔板4との離間寸法L2は約1mm、下蓋35とバーマグネット3との離間寸法L3は約1mmとしている。
【0054】
図6を参照して、マグネットフィルタ1の後流側に連結されたマグネットフィルタ101は、邪魔板4を有しない。マグネットフィルタ101のその他の構成については、上述のマグネットフィルタ1と同様である。
【0055】
邪魔板4を有する本発明のマグネットフィルタ1と、邪魔板4を有しないマグネットフィルタ101と、を連結して2連にしたマグネットフィルタライン60を調味味噌製品ラインの調理味噌製品が流れる配管に取り付け、製品を一定時間流した。
【0056】
そして、バーマグネット3、103の表面に捕集された磁性体の異物をテープで吸着し、そのテープに貼付された磁性体の異物をマイクロスコープで測定して磁性体の異物が吸着している箇所の面積比率を数値化し、磁性体の捕集量を評価した。
[比較例]
【0057】
図7は、比較例としての従来技術のマグネットフィルタ101の性能試験における設置を示す図である。
図7に示すように、比較例として、邪魔板4を有しないマグネットフィルタ101を2連につないだマグネットフィルタライン160を作成した。
【0058】
この邪魔板4を有しないマグネットフィルタ101を2連にしたマグネットフィルタライン160を、
図6に示す上記実施例のマグネットフィルタライン60と同様に、調味味噌製品ラインに取り付けて調味味噌製品を一定時間流した。そして、バーマグネット103の表面に捕集された磁性体の異物をテープで吸着し、そのテープに貼付された磁性体の異物をマイクロスコープで測定して、磁性体の異物が吸着している箇所の面積比率を求めた。
【0059】
図8は、本発明の実施例に係るマグネットフィルタライン60と従来技術のマグネットフィルタライン160を比較する性能試験結果を示す図であり、捕集された磁性体の面積比率をマイクロスコープによって測定した結果を示している。
【0060】
図6ないし
図8を参照して、本発明の実施例としてのマグネットフィルタライン60で捕集された磁性体の面積比率の合計は、1.47%であり、比較例のマグネットフィルタライン160で捕集された磁性体の面積比率の合計は、0.60%であった。よって、本発明の実施例のマグネットフィルタライン60は、比較例のマグネットフィルタライン160と比較して2.5倍の磁性体を捕集できたことがわかる。
【0061】
また、本発明の実施例に係るマグネットフィルタライン60において、前側に配置されたマグネットフィルタ1では、捕集された磁性体の面積比率が1.38%であった。これに対して、比較例のマグネットフィルタライン160における前側のマグネットフィルタ101では、捕集された磁性体の面積比率が0.16%であった。これを比較すると、本発明の実施例に係るマグネットフィルタ1において捕集された磁性体の面積比率は、比較例である従来技術のマグネットフィルタ101の8.6倍である。
【0062】
また、本発明の実施例に係るマグネットフィルタライン60において、後側に配置された従来技術のマグネットフィルタ101で捕集された磁性体の面積比率は、0.09%であった。これに対して、比較例のマグネットフィルタライン160において、後側に配置されたマグネットフィルタ101では、捕集された磁性体の面積比率が0.44%であった。
【0063】
このように、後側のマグネットフィルタ101において磁性体の捕集量に差異が生じたのは、前側に配置された本発明の実施例に係るマグネットフィルタ1と従来技術のマグネットフィルタ101とは磁性体の捕集性能に差があるため、後側のマグネットフィルタ101に流入する液体に混入している磁性体量に差異が生じたためと推察される。
【0064】
即ち、本発明の実施例では、前側に配置されたマグネットフィルタ1の磁性体捕集性能が高く、前側における磁性体の捕集量が多かったために、後側のマグネットフィルタ101に流入する磁性体量が少なくなり、後側における磁性体の捕集量が少なくなっている。
【0065】
なお、比較例のマグネットフィルタライン160において、前側に配置されたマグネットフィルタ101よりも後側に配置されたマグネットフィルタ101の方が捕集された磁性体の面積比率が高くなっている。これは、液体中の磁性体が前側のマグネットフィルタ101のマグネット103近傍を流れることにより、磁性が強くなり、後側のマグネットフィルタ101への吸着力が高められることによると考えられる。
【0066】
図9は、本発明の実施形態に係るバーマグネット3による磁性体50の捕集を模式的に示す図である。
図9を参照して、マグネットフィルタ1によれば、バーマグネット3の後流部に邪魔板4が設けられているので、バーマグネット3に捕集された磁性体50が液体の流れによってバーマグネット3の後流側に押されて剥がされ難い。そのため、本実施形態に係るマグネットフィルタ1は、優れた磁性体捕集性能を有し、
図8の性能試験結果に示す如く、従来技術のマグネットフィルタ101に比べて多くの磁性体50を液体から捕集することができる。
【0067】
以上説明の如く、本実施形態に係るマグネットフィルタ1によれば、流通阻害部材としての邪魔板4によってバーマグネット3の磁性体吸着性能を高めることができ、マグネットフィルタ1の磁性体選別能力を向上させることができる。
【0068】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。図示を省略するが、例えば、流通阻害部材としての邪魔板4は、山形鋼のように断面が略L字状に形成されていても良いし、溝形鋼のように断面が略コ字状に形成されていても良い。また、流通阻害部材としては、略板状の邪魔板4の他にも、断面が略円形状または略楕円形状に形成された略円柱状、略楕円柱状、略円管状、略楕円管状等の部材であっても良い。また、流通阻害部材は、バーマグネット3側を向く平面部を有する、略三角柱状、略四角柱状、その他の多角柱形状に形成された部材であっても良い。
その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の変更実施が可能である。
【解決手段】液体の流入口20とそれに対向する位置に流出口25が形成されているケーシング2と、ケーシング2の内部に液体の流れに交差するよう配設されて液体に混入している磁性体を吸着するバーマグネット3と、を有し、ケーシング2の内部には、バーマグネット3の後流側に流通阻害部材としての邪魔板4が設けられている。これにより、液体の流れに好適な滞留が生じると共に、バーマグネット3に吸着された磁性体がバーマグネット3の後流側に押されて剥がされてしまうことを防ぐことができ、マグネットフィルタ1の磁性体選別能力が向上する。