(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6644321
(24)【登録日】2020年1月10日
(45)【発行日】2020年2月12日
(54)【発明の名称】印刷治具
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20200130BHJP
B05C 5/00 20060101ALI20200130BHJP
B05C 13/02 20060101ALI20200130BHJP
B05C 9/12 20060101ALI20200130BHJP
【FI】
B41J2/01 109
B41J2/01 129
B41J2/01 305
B05C5/00 101
B05C13/02
B05C9/12
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2019-108826(P2019-108826)
(22)【出願日】2019年6月11日
【審査請求日】2019年7月18日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】394016058
【氏名又は名称】株式会社 ウィンクラス
(74)【代理人】
【識別番号】100185270
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 貴史
(72)【発明者】
【氏名】飯岡 勝政
(72)【発明者】
【氏名】黒須 美幸
(72)【発明者】
【氏名】田南 健治
【審査官】
長田 守夫
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−035562(JP,A)
【文献】
特開2014−051039(JP,A)
【文献】
特表2010−534582(JP,A)
【文献】
特開2005−088390(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2018/0171167(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01−2/215
B05C 5/00
B05C 9/12
B05C 13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
立体的な被印刷体に対してUVインクジェット印刷を行う際に、前記被印刷体を並列的に固定し、位置決めするための印刷治具であって、
前記被印刷体を嵌め込んで固定するための複数個の開口が形成された被印刷体固定板と、前記被印刷体固定板の裏面側に突出するように前記被印刷体固定板の裏面に取り付けられた、前記被印刷体固定板の高さを嵩上げするための脚と、を備え、
前記被印刷体固定板の下部に前記被印刷体を突出させるための逃がし空間が形成されており、
前記被印刷体固定板が矩形状に形成され、前記脚が前記被印刷体固定板の四辺に沿って配置され、
前記被印刷体固定板は複数個の前記開口が行列状に形成され、
前記脚が隣接する行または隣接する列の間で、かつ、前記被印刷体固定板の四辺のいずれかと平行するように配置されていることを特徴とする印刷治具。
【請求項2】
前記脚の高さは、前記被印刷体を印刷時姿勢に配置した際に、前記被印刷体の印刷対象箇所が前記被印刷体固定板の表面から露出する高さに形成されている請求項1に記載の印刷治具。
【請求項3】
前記脚の高さは、前記被印刷体を印刷時姿勢に配置した際に、前記被印刷体の印刷対象面が前記被印刷体固定板の表面と一致する高さに形成されている請求項1に記載の印刷治具。
【請求項4】
前記被印刷体固定板の各々の開口は、前記被印刷体の印刷時姿勢を上方から平面視した外形に対応する形状に形成されている請求項1から3までのいずれか一項に記載の印刷治具。
【請求項5】
立体的な被印刷体に対してUVインクジェット印刷を行う際に、前記被印刷体を並列的に固定し、位置決めするための印刷治具であり、外形が円錐状又は円錐台状の被印刷体の円錐面に対してUVインクジェット印刷を行う際に、前記被印刷体を並列的に固定し、位置決めするための印刷治具であって、
前記被印刷体を嵌め込んで固定するための複数個の開口が形成された被印刷体固定板と、前記被印刷体固定板の裏面側に突出するように前記被印刷体固定板の裏面に取り付けられた、前記被印刷体固定板の高さを嵩上げするための脚と、を備え、
前記被印刷体固定板の下部に前記被印刷体を突出させるための逃がし空間が形成されており、
前記被印刷体固定板と平行するように前記脚の下端側に配置する底板を更に備え、
前記底板の表面には、前記底板の表面から突出し、前記被印刷体の小径部側を持ち上げるための被印刷体支持台が設置されており、
前記被印刷体支持台は、前記底板の表面のうち前記被印刷体固定板と前記底板を位置合わせした際に前記被印刷体固定板の前記開口を通じて視認可能な領域に配置され、
前記被印刷体支持台の高さは、前記被印刷体支持台に前記被印刷体を載置した際に前記被印刷体の円錐母線が前記被印刷体固定板と平行となる高さに形成されている印刷治具。
【請求項6】
前記底板の表面には、前記底板の表面から突出し、前記被印刷体を印刷時姿勢のままずれないように固定するためのズレ防止ブロックが設置されており、
前記ズレ防止ブロックは、前記底板の表面のうち前記被印刷体の印刷時姿勢における前記被印刷体の大径側端部に相当する位置に配置されている請求項5に記載の印刷治具。
【請求項7】
前記ズレ防止ブロックが、前記底板の表面のうち前記被印刷体の印刷時姿勢における前記被印刷体の両側部に相当する位置に更に配置されている請求項6に記載の印刷治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、立体的な被印刷体に対してUVインクジェット印刷を行う際に、前記被印刷体を並列的に固定し、位置決めするための印刷治具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、立体的な被印刷体に対してUVインクジェット印刷を行う印刷方法が知られている。インクジェット印刷では、印刷ヘッドを主走査方向及び副走査方向に移動させながら印刷を行う。このため、前記印刷方法では立体的な被印刷体を並列的に固定し、位置決めするための印刷治具が用いられている。
【0003】
例えば、ヘッドフォンのヘッドバンドに対して絵柄をUVインクジェット印刷する際に用いられる治具が提案されている(特許文献1)。この治具には、ヘッドフォンのヘッドバンドの両端部を差し込むスリットが形成されており、スリットにヘッドバンドの両端部を差し込むことで、湾曲したヘッドバンドに対して負荷をかけ、ヘッドバンドを伸長させた状態で固定することができるように構成されている。
【0004】
また、本発明者等も、被印刷体の少なくとも一部を嵌入する載置凹部が形成された治具を用いてUVインクジェット印刷を行う印刷方法を提案している(特許文献2)。この治具は、被印刷体の少なくとも一部を治具の載置凹部に嵌入させることで、被印刷体の正確な位置決めを行うことができるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013―107061号公報
【特許文献2】特許第6433106号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載されている治具は、ヘッドフォンのヘッドバンド等の樹脂製の湾曲部を有する被印刷体に印刷を行うことを目的としている。従って、他の形状を有する被印刷体の印刷に適用することができるものではないという問題があった。
【0007】
また、特許文献2に記載されている治具は、例えば樹脂板の表面に載置凹部を形成する等の方法で作製される。このため、形成可能な載置凹部の深さは樹脂板の厚さに依存し、深さのある載置凹部を形成することは困難であった。即ち、特許文献2に記載の治具は比較的厚みが薄い板状の被印刷体を嵌め込んで固定するには向いているが、比較的厚みが大きい被印刷体を嵌め込んで固定するには不向きであるという問題があった。
【0008】
本発明は、前記のような従来技術が有する課題を解決するものである。即ち、本発明は、比較的厚みがある被印刷体でも嵌め込んで固定することができ、被印刷体を正確に位置決めすることができる印刷治具を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、前記従来技術の課題を解決すべく鋭意検討を重ねた。そして、被印刷体を嵌め込んで固定するための複数個の開口が形成された被印刷体固定板に脚を取り付け、前記被印刷体固定板の下側に被印刷体の厚みを逃がすことにより、前記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。即ち、前記課題は以下に示す本発明によって解決される。
【0010】
本発明の印刷治具は、立体的な被印刷体に対してUVインクジェット印刷を行う際に、前記被印刷体を並列的に固定し、位置決めするための印刷治具であって、前記被印刷体を嵌め込んで固定するための複数個の開口が形成された被印刷体固定板と、前記被印刷体固定板の裏面側に突出するように前記被印刷体固定板の裏面に取り付けられた、前記被印刷体固定板の高さを嵩上げするための脚と、を備え、前記被印刷体固定板の下部に前記被印刷体を突出させるための逃がし空間が形成されていることを特徴とする。
【0011】
本発明の印刷治具は、
前記脚の高さは、前記被印刷体を印刷時姿勢に配置した際に、前記被印刷体の印刷対象箇所が前記被印刷体固定板の表面から露出する高さに形成されていること;
前記脚の高さは、前記被印刷体を印刷時姿勢に配置した際に、前記被印刷体の印刷対象面が前記被印刷体固定板の表面と一致する高さに形成されていること;
前記被印刷体固定板の各々の開口は、前記被印刷体の印刷時姿勢を上方から平面視した外形に対応する形状に形成されていること;
前記被印刷体固定板が矩形状に形成され、前記脚が前記被印刷体固定板の四辺に沿って配置されていること;
前記被印刷体固定板は複数個の前記開口が行列状に形成され、前記脚が隣接する行または隣接する列の間で、かつ、前記被印刷体固定板の四辺のいずれかと平行するように配置されていること;
が好ましい。
【0012】
また、本発明の印刷治具は、
外形が円錐状又は円錐台状の被印刷体の円錐面に対してUVインクジェット印刷を行う際に、前記被印刷体を並列的に固定し、位置決めするための印刷治具であって、前記被印刷体固定板と平行するように前記脚の下端側に配置する底板を更に備え、前記底板の表面には、前記底板の表面から突出し、前記被印刷体の小径部側を持ち上げるための被印刷体支持台が設置されており、前記被印刷体支持台は、前記底板の表面のうち前記被印刷体固定板と前記底板を位置合わせした際に前記被印刷体固定板の前記開口を通じて視認可能な領域に配置され、前記被印刷体支持台の高さは、前記被印刷体支持台に前記被印刷体を載置した際に前記被印刷体の円錐母線が前記被印刷体固定板と平行となる高さに形成されていること;
前記底板の表面には、前記底板の表面から突出し、前記被印刷体を印刷時姿勢のままずれないように固定するためのズレ防止ブロックが設置されており、前記ズレ防止ブロックは、前記底板の表面のうち前記被印刷体の印刷時姿勢における前記被印刷体の大径側端部に相当する位置に配置されていること;
前記ズレ防止ブロックが、前記底板の表面のうち前記被印刷体の印刷時姿勢における前記被印刷体の両側部に相当する位置に更に配置されていること;
が好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の印刷治具は、比較的厚みがある被印刷体でも嵌め込んで固定することができ、被印刷体を正確に位置決めすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の印刷治具の一の実施形態を模式的に示す平面図である。
【
図2】
図1に示す印刷治具を模式的に示す底面図である。
【
図3】
図1に示す印刷治具を模式的に示すA−A’端面図である。
【
図4】
図3に示す印刷治具の使用方法を模式的に示す工程図である。
【
図5】
図3に示す印刷治具の使用方法を模式的に示す工程図である。
【
図6】
図3に示す印刷治具の使用方法を模式的に示す工程図である。
【
図7】本発明の印刷治具の構成要素である底板の一の実施形態を模式的に示す平面図である。
【
図8】
図7に示す底板を模式的に示すB−B’端面図である。
【
図9】
図8に示す底板の使用状態を模式的に示す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、発明を実施するための形態について、図面を参照しながらさらに具体的に説明する。但し、本発明は図面に示された形態のみに限定されるものではない。
【0016】
[1]第一の実施形態:
図1乃至
図3は本発明の印刷治具の一の実施形態を模式的に示す図であり、
図1は平面図、
図2は底面図、
図3は
図1に示す印刷治具のA−A’端面図である。
【0017】
本発明の印刷治具は、立体的な被印刷体に対してUVインクジェット印刷を行う際に、前記被印刷体を並列的に固定し、位置決めするための印刷治具である。
【0018】
図1乃至
図3に示す印刷治具1は、被印刷体を嵌め込んで固定するための複数個の開口2が形成された被印刷体固定板4と、被印刷体固定板4の裏面側に突出するように被印刷体固定板4の裏面に取り付けられた、被印刷体固定板4の高さを嵩上げするための脚8と、を備えている。そして、被印刷体固定板4の下部に被印刷体を突出させるための逃がし空間14が形成されている。
【0019】
このように、被印刷体固定板4を脚8によって嵩上げすることで、被印刷体固定板4の下部に被印刷体を突出させるための逃がし空間14を形成することができる。従って、比較的厚みがある被印刷体でも嵌め込んで固定することができ、被印刷体を正確に位置決めすることができる。
【0020】
被印刷体固定板4の各々の開口2は、被印刷体の印刷時姿勢を上方から平面視した外形に対応する形状に形成されている。このような構成により、被印刷体固定板4の開口2に被印刷体を嵌め込んで固定することができる。
【0021】
「印刷時姿勢」とは、印刷時における被印刷体の姿勢を意味する。印刷時姿勢においては、被印刷体の表面の一部である印刷対象箇所が上方に向けられ、被印刷体固定板4の開口2から印刷対応箇所が露出する状態となる。
【0022】
開口2と被印刷体の外形との間には、0.02mm程度(0.01mmから0.1mm)のクリアランスが設けられている。このクリアランスを設けることで、開口2への被印刷体の嵌め込みが容易になるとともに、被印刷体の位置ズレによる印刷ズレの発生を防止することができる。
【0023】
被印刷体固定板4の厚さは10mmである。被印刷体固定板4の厚さを0.1mmから50mmとすることで被印刷体を嵌め込んだ際に被印刷体を確実に固定することができ、被印刷体の正確な位置決めが可能となる。
【0024】
被印刷体固定板4はアクリル樹脂からなるアクリル板である。被印刷体固定板4の材質は特に限定されず、アクリル樹脂以外の樹脂からなるものであってもよい。
【0025】
被印刷体固定板4は矩形状に形成されている。被印刷体固定板4を矩形状とすることで、印刷治具1を所定の印刷位置にセットし、位置合わせを行うことが容易となる。
【0026】
被印刷体固定板4は複数個の開口2が3行×4列の行列状に形成されている。UVインクジェット印刷を行うインクジェットプリンタは印刷対象箇所に対して、印刷ヘッドを主走査方向及び副走査方向に移動させながら印刷を行う。従って、多数の被印刷体に対して印刷を行う場合には、開口2を行列状に配置することが好ましい。
【0027】
脚8は板状(直方体状)に構成されている。そして、脚8は矩形状に構成された被印刷体固定板4の四辺に沿って(即ち、被印刷体固定板4の外縁に沿って枠状に)配置されている。脚は板状に限られるものではなく、例えば、被印刷体固定板の裏面から棒状の脚を突出させるような構成であってもよい。但し、図示のように脚8を板状とし、被印刷体固定板4の四辺に沿って配置した方が被印刷体固定板4の撓みや捻じれを抑制することができ、被印刷体を正確に位置決めすることができる。
【0028】
また、被印刷体固定板が複数個の前記開口が行列状に形成されている場合には、脚が隣接する行または隣接する列の間で、かつ、前記被印刷体固定板の四辺のいずれかと平行するように配置されていることが好ましい。印刷治具1においては、脚10は3行×4列の行列状に配置された複数個の開口2の隣接する行の間で、かつ、矩形状の被印刷体固定板4の二辺と平行するように配置されている。このような構成は、脚8を被印刷体固定板4の外縁に沿って枠状に配置するのみの構成より、更に被印刷体固定板4の撓みや捻じれを抑制することができる。従って、被印刷体を正確に位置決めする効果が高い点において好ましい。
【0029】
図4乃至
図6は
図1乃至
図3に示す印刷治具1の使用方法を示す模式図である。いずれの図も
図3と同様に
図1のA―A’端面に対応する端面を示す図面である。
【0030】
印刷治具1は以下のようにして使用する。まず、印刷治具1を裏返し、被印刷体固定板4の裏面を露出させる(
図4)。次に、被印刷体固定板4の開口2に被印刷体12を嵌め込む(
図5)。この際、被印刷体12の印刷対象箇所が開口2から露出するように被印刷体12を嵌め込む。更に、開口2に嵌め込まれた被印刷体12の小径側を粘着テープで動かないように固定する。被印刷体12がセットされた印刷治具1を裏返して被印刷体固定板4の表面を露出させる(
図6)。この状態で、印刷治具1を印刷装置(UVインクジェットプリンタ)のステージ16上に載置し、ストッパ18に突き当てて所定の位置に位置合わせし、被印刷体12に対して印刷を行う。
【0031】
被印刷体12としては、外形が円錐台状の構造体を用いている。この構造体は大径側が開口され、小径側が有底の中空体、具体的にはコップである。印刷対象箇所は被印刷体12の円錐面の一部に施された凹凸模様の面であり、被印刷体12の印刷時姿勢は円錐台状の構造体を横に倒した姿勢である。
【0032】
脚8,10の高さは、被印刷体12を印刷時姿勢に配置した際に、被印刷体12の印刷対象箇所が被印刷体固定板4の表面から露出する高さに形成されている。特に
図6に示すように、脚8,10の高さが、被印刷体12を印刷時姿勢に配置した際に、被印刷体12の印刷対象面が被印刷体固定板4の表面と一致する高さに形成されていることが好ましい。脚8,10の高さは被印刷体12の外形を考慮し、適宜設定すればよい。
【0033】
[2]第二の実施形態:
図7及び
図8は、本発明の印刷治具の構成要素である底板の一の実施形態を模式的に示す図であり、
図7は平面図、
図8は
図7に示す底板のB−B’端面図である。
【0034】
本発明の印刷治具は、印刷治具(被印刷体固定板及び脚)に加えて、底板を更に備えた形態であってもよい。この実施形態は、外形が円錐状又は円錐台状の被印刷体の円錐面に対してUVインクジェット印刷を行う際に、前記被印刷体を並列的に固定し、位置決めするための印刷治具である。
【0035】
図7及び
図8に示す底板20は、
図1乃至
図3に示す印刷治具1(被印刷体固定板4及び脚8)と組み合わせて用いられる。底板20は、
図1乃至
図3に示す被印刷体固定板4と平行するように脚8,10の下端側に配置する部材である。
【0036】
図7及び
図8に示す底板20の表面には、底板20の表面から突出し、被印刷体の小径部側を持ち上げるための被印刷体支持台22が設置されている。被印刷体支持台22は外形が円錐状又は円錐台状の被印刷体の小径側を持ち上げ、被印刷体を傾斜させた状態で保持するための部材である。外形が円錐状又は円錐台状の被印刷体を印刷する際に被印刷体支持台22を用いると、印刷ヘッドに対して傾斜している円錐面を印刷ヘッドに対して正対させることができる。従って、立体形状から平面化した二次元データへの変換する際に面の傾斜を考慮する必要がなくなり、データの変換が簡素化され、印刷ズレを効果的に抑止することができる。
【0037】
被印刷体支持台22は、底板20の表面のうち被印刷体固定板と底板20を位置合わせした際に被印刷体固定板の開口を通じて視認可能な領域(視認可能領域24)に配置されている。その領域に被印刷体支持台22を配置することで、被印刷体を持ち上げることができる。被印刷体の小径側を持ち上げるという目的から、被印刷体支持台22は視認可能領域24の被印刷体の大径側に相当する領域ではなく、被印刷体の小径側に相当する領域に配置されている。
【0038】
被印刷体支持台22の高さは、被印刷体支持台22に被印刷体を載置した際に被印刷体の円錐母線(即ち、印刷時姿勢における被印刷体の頂部)が被印刷体固定板と平行となる高さに形成されている。被印刷体の形状が決まれば、被印刷体支持台22の配置位置と高さを調整することで、被印刷体固定板と被印刷体の円錐母線とを平行する位置に配置することができる。
【0039】
被印刷体支持台22は、直方体状に構成されている。但し、被印刷体を持ち上げて支えることが可能である限り、被印刷体支持台の形状は直方体状に限定されない。
【0040】
底板20の表面には、被印刷体支持台22に加えて、底板20の表面から突出し、被印刷体を印刷時姿勢のままずれないように固定するためのズレ防止ブロック26が設置されている。ズレ防止ブロック26は、底板20の表面のうち被印刷体の印刷時姿勢における被印刷体の大径側端部に相当する位置に配置されている。この実施形態では被印刷体支持台22により被印刷体を傾斜させた姿勢で保持する必要がある。従って、被印刷体の大径側端部が滑って位置ずれを起こさないようにズレ防止ブロック26を配置することが好ましい。
【0041】
底板20においては、ズレ防止ブロック28が、底板20の表面のうち被印刷体の印刷時姿勢における被印刷体の両側部に相当する位置に更に配置されている。ズレ防止ブロック28を配置することで、被印刷体の側方への位置ずれや転がりを防止することができる。
【0042】
ズレ防止ブロック26,28は、直方体状に構成されている。但し、被印刷体の位置ずれを防止しうる限り、ズレ防止ブロックの形状は直方体状に限定されない。また、ズレ防止ブロックの高さも被印刷体の位置ずれ防止という効果を奏する限り、適宜設定することができる。
【0043】
このように、印刷治具1を被印刷体固定板4と脚8とから構成すると、脚8の高さを調整することで、被印刷体固定板4の厚さに拘らず被印刷体を収めるスペースを確保することができる。従って、比較的厚みが大きい被印刷体でも嵌め込んで固定することができ、被印刷体を正確に位置決めすることができる。
【0044】
図9は
図1乃至
図3に示す印刷治具1の使用状態を示す模式図である。
図9は
図8と同様に
図7のB―B’端面に対応する端面を示す図面である。
【0045】
図9は
図7及び
図8に示す底板20と、
図1乃至
図3に示す印刷治具1(被印刷体固定板4及び脚8)とを組み合わせて用いた状態を示している。
【0046】
図9に示すように、被印刷体固定板4の開口2に、外形が円錐台状の被印刷体12を嵌め込む。この際、被印刷体12の印刷対象箇所が開口2から露出するように被印刷体12を嵌め込む。
【0047】
被印刷体12は、円錐台の小径部側を被印刷体支持台22により持ち上げられている。そして、円錐台の大径部側端部はズレ防止ブロック26により傾斜された印刷時姿勢のままずれないように固定されている。更に、円錐台の両側部は図示されないズレ防止ブロックにより側方に位置ずれしたり、転がったりしないよう固定されている。
【0048】
この状態で、印刷治具1を印刷装置(UVインクジェットプリンタ)のステージ16上に載置し、ストッパ18に突き当てて所定の位置に位置合わせし、被印刷体12に対して印刷を行う。
【0049】
[3]UVインクジェット印刷:
UVインクジェット印刷は従来公知の方法により行えばよく、その方法は特に限定されない。例えば、以下のような工程により行うことができる。
【0050】
まず、被印刷体の立体形状、その表面に形成された凹凸模様等の立体形状等を印刷層の層厚のムラを考慮して、被印刷体および印刷対象箇所である立体面の立体形状を平面化した二次元データに変換する(解析工程)。このデータ変換は印刷装置(UVインクジェットプリンタ)の制御部により行うことができる。このデータ変換により、被印刷体の印刷対象箇所を単純に平面視した形状ではなく、印刷層の層厚のムラを考慮し、平面視形状を歪ませた形状を示す二次元データを得る。
【0051】
次に、前記二次元データに基づいて、被印刷体の印刷対象箇所にUVインクジェットプリンタを用いてプライマーを印刷し、プライマー層を形成する(プライマー層形成工程)。プライマー層の形成材料としては、例えばトルエン、キシレン及びエチルベンゼンの混合物を用いることができる。通常、、プライマー層の層厚は5〜10μmである。
【0052】
更に、前記二次元データに基づいて、被印刷体の印刷対象箇所に形成されたプライマー層の表面に、UV硬化型白色インクを印刷し、UV照射し、白色インク層を硬化させることで硬化白色インク層を形成する(白引き工程)。
【0053】
UV硬化型白色インクとしては、UV硬化性を有する既知の白色インクを好適に用いることができる。UV照射はLED光源等を用い、室温条件下、数ミリ秒〜数秒の間、UVを照射することにより行うことができる。
【0054】
最後に、前記二次元データに基づいて、被印刷体の印刷対象箇所に形成された硬化白色インク層の表面に、UV硬化型カラーインクを印刷し、カラーインク層を硬化させることで硬化カラーインク層を形成する(カラー印刷工程)。
【0055】
UV硬化型カラーインクとしては、UV硬化性を有する既知のカラーインクを好適に用いることができる。カラーインクとして、イエロー、マゼンタ、シアン及びブラックのUV硬化インクを用いることが好ましい。これにより、高精度のフルカラー印刷を行うことが可能となる。UV照射はLED光源等を用い、室温条件下、数ミリ秒〜数秒の間、UVを照射することにより行うことができる。
【0056】
このような印刷方法においては、被印刷体および印刷対象箇所である立体面の立体形状に加えて、被印刷体の印刷対象箇所の位置が考慮されるため、被印刷体、ひいては印刷対象箇所の正確な位置決めが極めて重要となる。本発明の印刷治具は、被印刷体を正確に位置決めすることができるので、前記印刷方法に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0057】
1 印刷治具
2 開口
4 被印刷体固定板
6 裏面
8,10 脚
12 被印刷体
14 逃がし空間
16 ステージ
18 ストッパ
20 底板
22 被印刷体支持台
24 視認可能領域
26,28 ズレ防止ブロック
【要約】
【課題】比較的厚みがある被印刷体でも嵌め込んで固定することができ、被印刷体を正確に位置決めすることができる印刷治具を提供する。
【解決手段】立体的な被印刷体12に対してUVインクジェット印刷を行う際に、被印刷体12を並列的に固定し、位置決めするための印刷治具1である。被印刷体12を嵌め込んで固定するための複数個の開口2が形成された被印刷体固定板4と、被印刷体固定板4の裏面側に突出するように被印刷体固定板4の裏面に取り付けられた、被印刷体固定板4の高さを嵩上げするための脚8と、を備え、被印刷体固定板4の下部に被印刷体を突出させるための逃がし空間14が形成されている。
【選択図】
図6