特許第6644336号(P6644336)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ シャープ株式会社の特許一覧 ▶ 国立大学法人豊橋技術科学大学の特許一覧

<>
  • 特許6644336-イオン濃度センサ 図000002
  • 特許6644336-イオン濃度センサ 図000003
  • 特許6644336-イオン濃度センサ 図000004
  • 特許6644336-イオン濃度センサ 図000005
  • 特許6644336-イオン濃度センサ 図000006
  • 特許6644336-イオン濃度センサ 図000007
  • 特許6644336-イオン濃度センサ 図000008
  • 特許6644336-イオン濃度センサ 図000009
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6644336
(24)【登録日】2020年1月10日
(45)【発行日】2020年2月12日
(54)【発明の名称】イオン濃度センサ
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/414 20060101AFI20200130BHJP
【FI】
   G01N27/414 301V
   G01N27/414 301R
【請求項の数】7
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2018-147949(P2018-147949)
(22)【出願日】2018年8月6日
(62)【分割の表示】特願2015-244575(P2015-244575)の分割
【原出願日】2015年12月15日
(65)【公開番号】特開2018-165728(P2018-165728A)
(43)【公開日】2018年10月25日
【審査請求日】2018年8月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】304027349
【氏名又は名称】国立大学法人豊橋技術科学大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】永井 謙一
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 聡
(72)【発明者】
【氏名】澤田 和明
【審査官】 櫃本 研太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭54−080193(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0264467(US,A1)
【文献】 特開2005−207797(JP,A)
【文献】 特開2014−115125(JP,A)
【文献】 特表2013−516613(JP,A)
【文献】 特開2013−011482(JP,A)
【文献】 特許第6447925(JP,B2)
【文献】 特表2010−525360(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/414
G01N 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコン基板と、
前記シリコン基板の一方の面に検体と接するセンシング面を有し、前記検体のイオンに感応するセンシング部とを備え、
前記シリコン基板における前記センシング面と反対の面に、前記センシング部が感応したイオンの量に応じた信号を読み出して転送するトランジスタを備え
前記シリコン基板の前記トランジスタを備える面を第1面とし、
前記シリコン基板の前記センシング面が存在する面を第2面とし、
前記トランジスタは、前記第2面において感応したイオンの量に応じて増減した、前記第1面から注入された電荷を、前記第2面から前記第1面に、前記センシング部が感応したイオンの量に応じた信号として転送することを特徴とするイオン濃度センサ。
【請求項2】
前記シリコン基板が、
前記トランジスタから転送されるアナログの信号をデジタルに変換するアナログ/デジタル変換回路を更に備えることを特徴とする請求項1に記載のイオン濃度センサ。
【請求項3】
支持基板上に、前記シリコン基板と、
前記トランジスタから転送されるアナログの信号を、前記アナログ/デジタル変換回路に伝送する配線が4層以上の層構造に形成される多層配線層を備えていることを特徴とする請求項2に記載のイオン濃度センサ。
【請求項4】
前記センシング部は、壁によって複数に区分されていることを特徴とする請求項1に記載のイオン濃度センサ。
【請求項5】
前記センシング部は、行列状に配置され、
前記シリコン基板には、前記センシング部を列単位で選択する垂直選択回路と、当該垂直選択回路によって選択された前記センシング部から出力された前記信号を行単位で順次出力する水平選択回路とがさらに形成されていることを特徴とする請求項4に記載のイオン濃度センサ。
【請求項6】
前記センシング部は、窒化シリコン膜、酸化アルミニウム膜または酸化タンタル膜によって形成されていることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のイオン濃度センサ。
【請求項7】
前記センシング部の表面における電位レベルの変化に伴う、前記トランジスタにおけるチャネル電位レベル変化量を検出することを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載のイオン濃度センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検体のイオン濃度を検出するイオン濃度センサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のFET型のイオン濃度センサ、例えば水素イオン濃度を検出するイオンセンシティブFET(ISFET:Ion Sensitive Field Effect Transistor)には、感度が低い、時間的に出力が変化するといった問題がある。このような問題を解決するため、例えば、特許文献1〜4に開示されているように、センシング部の表面電位レベルの変化に伴うチャネルの電位レベルの変化量を検出するFET型イオンセンサが提案されている。
【0003】
一般に、上記のセンシング部の表面は窒化シリコン膜で覆われている。このようなセンシング部は、窒化シリコン膜表面のダングリングボンドと水素イオンとが作用して半導体基板表面に電位変動を引き起こすことを利用して水素イオン濃度を検知する。上記の特許文献1〜4に開示された各FET型イオンセンサは、水素イオン濃度に応じた電位変化量をアナログ信号として外部に出力する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4195859号公報(2008年12月17日発行)
【特許文献2】特開2002−98667号公報(2002年4月5日公開)
【特許文献3】特開2007−278760号公報(2007年10月25日公開)
【特許文献4】特許第4231560号公報(2008年12月17日発行)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような従来のFET型イオンセンサの製造においては、センシング部が窒化シリコン膜を感応膜として備えるために、最終段階で窒化シリコン膜の表面を露出させる必要があった。窒化シリコン膜の表面を露出させるには、窒化シリコン膜における上端面に配線を配置せず、かつ窒化シリコン膜上の他の絶縁膜(例えば酸化シリコン膜)を安定的にエッチングすることができる膜厚に形成すること、つまり極力薄く形成することが必要であった。
【0006】
ところで、実用の観点から、FET型センサを、AD変換器、デジタル回路等からなる回路部と共に同一のチップ上に形成したシステムオンチップとして提供することが望まれる。このようなシステムオンチップでは、チップの同一面上に、センシング部がアレイ状に配列されたイオンセンシングアレイと、回路部とを形成するために、イオンセンシングアレイが形成される領域外に、回路部を構成する基本構成素子(フリップフロップ、インバータ、キャパシタ等)を設置して、イオンセンシングアレイと回路部とを相互に接続する必要がある。
【0007】
その接続には、イオンセンシングアレイと回路部とを接続する配線を複数層に形成した多層配線構造が不可欠である。イオンセンサがアナログ信号を出力する場合、2層以下の配線構造で対応が可能である。しかしながら、イオンセンサがアナログ信号を出力する場合、4層〜6層の配線構造が必要となる。
【0008】
これに対し、従来のFET型イオンセンサでは、上記のような窒化シリコン膜の表面を露出させる構造を有することにより、イオンセンシングアレイの周囲に多層配線構造が形成されることになる。特に、デジタル信号を出力するイオンセンサでは、多層配線構造を厚く形成する必要があり、イオンセンシングアレイの周囲にそのような厚い多層配線構造を形成することは好ましくない。また、製造プロセス上の制約が生じることから、イオン感応膜として、窒化シリコン膜しか形成することができない。
【0009】
本発明は、前記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、イオン濃度センサのシステムオンチップ化を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係るイオン濃度センサは、シリコン基板と、前記シリコン基板の一方の面に検体と接するセンシング面を有し、前記検体のイオンに感応するセンシング部とを備え、前記シリコン基板における前記センシング面と反対の面に、前記センシング部が感応したイオンの量に応じた信号を読み出して転送するトランジスタを備え、前記シリコン基板の前記トランジスタを備える面を第1面とし、前記シリコン基板の前記センシング面が存在する面を第2面とし、前記トランジスタは、前記第2面において感応したイオンの量に応じて増減した、前記第1面から注入された電荷を、前記第2面から前記第1面に、前記センシング部が感応したイオンの量に応じた信号として転送する
【発明の効果】
【0011】
本発明の一態様によれば、イオン濃度センサのシステムオンチップ化を実現することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態1に係るイオンセンサの構成を示す平面図である。
図2】(a)は上記イオンセンサのイオンセンシングアレイにおけるセルの一部の構成を示す等価回路図であり、(b)は上記イオンセンサにおけるイオンセンシングアレイの他のセルの構成を示す等価回路図である。
図3】上記イオンセンサのイオンセンシングアレイにおけるセルの構成を示す縦断面図である。
図4】上記イオンセンサにおけるイオンセンシングアレイと周辺回路部との構成を示す縦断面図である。
図5】比較例のイオンセンサのイオンセンシングアレイにおけるセルの構成を示す縦断面図である。
図6】本発明の実施形態2に係るイオンセンサのイオンセンシングアレイにおけるセルのセンシング部の構成を示す縦断面図である。
図7】本発明の実施形態2に係るイオンセンサにおけるイオンセンシングアレイと周辺回路部との構成を示す縦断面図である。
図8】(a)および(b)は本発明の実施形態3に係るイオンセンサにおけるセルの仕切構造を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
〔実施形態1〕
本発明の実施形態1について図1図5を用いて説明すれば、以下のとおりである。
【0014】
〈イオンセンサ100の構成〉
図1は、実施形態1に係るイオンセンサ100の構成を示す平面図である。
【0015】
図1に示すように、イオンセンサ100(イオン濃度センサ)は、イオンセンシングアレイ1と、垂直選択回路2と、CDS(correlated double sampling:相関二重サンプリング)回路3と、水平選択回路4と、AGC(Automatic Gain Control)回路5と、A/D変換回路6(アナログ/デジタル変換回路)と、デジタルアンプ7と、タイミングジェネレータ(図中、「TG:Timing Generator」にて示す)8とを少なくとも備え、これらが同一の支持基板9(チップ)上に形成されている。
【0016】
イオンセンシングアレイ1は、2次元アレイ状(行列状)に配列された多数のCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)型のセル10(センシング部)を備えている。イオンセンシングアレイ1において、各行のセル10を選択する複数のアドレス線が行単位で配置され、各列のセル10を選択する複数の垂直信号線が列単位で配置されている。また、セル10は、イオンに感応するために、その表面層に、窒化シリコン(Si)からなる窒化シリコン膜、酸化アルミニウム(Al)からなる酸化アルミニウム膜、または酸化タンタル(Ta)からなる酸化タンタル膜を有している。セル10は、これらの膜の表面ダングリングボンドの増減に応じたダイオードポテンシャル変動から水素イオンを定量的に検出する。また、イオンセンサ100は、セル10の表面における電位レベルの変化に伴うチャネル電位レベル変化量を検出するX−Yアドレス型イオンセンサである。
【0017】
垂直選択回路2は、セル10を列単位で順に選択するように、上記の垂直信号線とCDS回路3との間を接続または切り離すトランジスタ(図2の(a)に示す後述のアドレストランジスタTd)をON/OFFさせる選択信号(アドレス信号)を出力する。
【0018】
CDS回路3は、垂直選択回路2によって選択された各セル10から出力されたセル信号の信号レベルを保持する第1サンプル&ホールド(sample and hold)回路と、セル信号のゼロレベルを保持する第2サンプル&ホールド回路と、減算器とを有している。CDS回路3は、減算器により、第1サンプル&ホールドからの信号レベルより第2サンプル&ホールド回路からの0レベルを減算することで、セル毎の固定パターンノイズを除去する。
【0019】
水平選択回路4は、CDS回路3によって固定パターンノイズが除去されたセル信号を行単位で順に取り出す回路である。
【0020】
AGC回路5は、水平選択回路4から出力されたセル信号を適切なゲインで増幅する回路である。
【0021】
A/D変換回路6は、AGC回路5から出力されたアナログの信号をデジタルに変換する回路である。
【0022】
デジタルアンプ7は、A/D変換回路6から出力されたデジタル信号を適切に増幅する増幅器である。
【0023】
タイミングジェネレータ8は、垂直選択回路2、CDS回路3、水平選択回路4、AGC回路5、A/D変換回路6およびデジタルアンプ7の各動作の基準となる各種のタイミング信号を発生する回路である。
【0024】
〈第1セルの回路構成〉
図2の(a)は、イオンセンサ100におけるイオンセンシングアレイ1のセル10A(第1セル)の構成を示す等価回路図である。
【0025】
図2の(a)に示すように、セル10Aは、イオンセンシング素子としてセンシングキャパシタCsを有している。また、セル10Aは、能動素子として、電荷注入制御トランジスタTcと、転送トランジスタTtと、増幅トランジスタTaと、アドレストランジスタTd、リセットトランジスタTrとを有している。これらのトランジスタは、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)である。
【0026】
また、セル10Aは参照電極Erを有している。参照電極Erは、基準電位を与える電極であり、一般的には銀―塩化銀電極が用いられる。また、参照電極Erの電位は25℃において+0.222Vである。参照電極Erの電位を基準として、検体OJTのイオン化によるイオン感応膜電位が生じる。
【0027】
電荷注入制御トランジスタTcのゲートには、電荷注入制御信号CNTcが入力され、電荷注入制御トランジスタTcのソースには、電荷が注入される。電荷注入制御トランジスタTcのドレインは、センシングキャパシタCsの一端(カソード)および転送トランジスタTtのソースに接続されている。センシングキャパシタCsの他端(アノード)は接地されている。センシングキャパシタCs上には、検体OJTが配置される。
【0028】
転送トランジスタTtのドレインは、増幅トランジスタTaのゲートおよびリセットトランジスタTrのソースに接続されている。増幅トランジスタTaのゲートは、フローティングディフュージョン部FDを形成している。転送トランジスタTtのゲートには、転送制御信号CNTtが入力される。リセットトランジスタTrのゲートには、リセット信号Rが入力される。増幅トランジスタTaおよびリセットトランジスタTrのドレインには、共に電源電圧Vddが印加される。増幅トランジスタTaのソースには、垂直信号線VLが接続されている。アドレストランジスタTdは、垂直信号線VLにおいて直列に配置されている。アドレストランジスタTdのゲートには、前述のアドレス信号ADDが入力される。アドレストランジスタTdのソースは、CDS回路3の入力端に接続されている。また、垂直信号線VLの終端部には定電流源Sが設けられている。
【0029】
〈第2セルの回路構成〉
図2の(b)は、イオンセンサ100におけるイオンセンシングアレイ1の他のセル10B(第2セル)の構成を示す等価回路図である。
【0030】
図2の(b)に示すように、セル10Bは、セル10Aから電荷注入トランジスタTcが省略される構成である。このように構成されるセル10Bでは、リセットトランジスタTrが電荷を注入することがセル10Aと異なる。
【0031】
〈セルの断面構造〉
図3は、イオンセンサ100のイオンセンシングアレイ1におけるセル10の一部の構成を示す縦断面図である。
【0032】
図3に示すように、セル10は、シリコン基板11(半導体層)と、SiO膜12と、表面膜13とを有している。
【0033】
p型シリコンからなるシリコン基板11の一方の面上にはSiO膜12が形成され、さらにSiO膜12上に表面膜13が形成されている。シリコン基板11は、シリコンウェハをCMP(Chemical Mechanical Polishing)によって研磨することにより、1〜10μm程度のシリコン層として形成されている。表面膜13は、Si、Al
、またはTaからなる。SiO膜12および表面膜13により、イオンセンシング面が形成されている。
【0034】
シリコン基板11の他方の面上には、リセットゲート14と、転送ゲート15と、電荷注入制御ゲート16と、図示しないアドレスゲートが形成されている。リセットゲート14は、リセットトランジスタTrのゲートである。転送ゲート15は、転送トランジスタTtのゲートである。電荷注入制御ゲート16は、電荷注入制御トランジスタTcのゲートである。アドレスゲートは、アドレストランジスタTdのゲートである。また、シリコン基板11においては、リセットゲート14と転送ゲート15との間の領域に、フローティングディフュージョン部FDを形成するn拡散領域11aが形成されている。シリコン基板11においては、リセットトランジスタTrのドレインとなるn拡散領域11bと、電荷注入制御トランジスタTcのドレインとなるn拡散領域11cとが形成されている。
【0035】
このように、センシング部において、シリコン基板11の一方側の面(第2面)にイオンセンシング面が形成され、シリコン基板11のイオンセンシング面と反対側の面(第1面)にリセットゲート14と、転送ゲート15と、電荷注入制御ゲート16とが形成されている。
【0036】
〈セルの動作〉
セル10Aの動作について説明する。
【0037】
電荷注入制御トランジスタTcは、アクティブの電荷注入制御信号CNTcがゲートに入力されることでONすると、センシングキャパシタCsに電荷を注入する。イオンセンシング面に検体が接触すると、センシングキャパシタCs、すなわちシリコン基板11におけるp型シリコン領域は、検体OJTについて検出すべき水素イオンの量に応じたポテンシャル変動を生じる。転送トランジスタTtは、センシングキャパシタCsに蓄積された電荷をフローティングディフュージョン部FDに転送すると、増幅トランジスタTaは転送された電荷の電荷量を電圧に変換する。これにより、ポテンシャル変動によって増減する電荷量が電圧として検出される。すなわち、イオン量に応じた信号が読み出される。
【0038】
アドレストランジスタTdが、ゲートにアドレス信号ADDを与えられることでONすると、セル10が選択される。これにより、増幅トランジスタTaで変換された電圧は、垂直信号線VLを介してCDS回路3に伝達される。
【0039】
リセットトランジスタTrは、ゲートにリセット信号Rが与えられることでフローティングディフュージョン部FDの電位を電源電圧Vddにリセットする。
【0040】
〈多層配線構造〉
図4は、イオンセンサ100におけるイオンセンシングアレイ1と周辺回路部との構成を示す縦断面図である。なお、図4は、図3に示すリセットゲート14、転送ゲート15および電荷注入制御ゲート16のうち、転送ゲート15のみが現れる断面構造を示している。
【0041】
図4に示すように、イオンセンサ100は、支持基板9上に、多層配線層17が形成され、さらに多層配線層17上に、上述のシリコン基板11が形成されている。多層配線層17は、複数の金属配線18を含んでおり、階層状に配置される金属配線18の間を層状に満たす配線間材料(SiO)によって形成されている。多層配線層17において、金属配線18は、デジタル信号を伝送するために、複数の層(3層以上)に分けて形成されており、一部の金属配線18が各層間で電気的に接続されている。また、金属配線18は、AlまたはCuによって形成されている。
【0042】
シリコン基板11上には、上述のように、SiO膜12と表面膜13とが形成されている。また、表面膜13の表面がイオンセンシングアレイ1において検体を接触させるイオンセンシング面1a(センシング面)を形成している。
【0043】
イオンセンサ100は、イオンセンシングアレイ1と、周辺回路部21とに区分される。周辺回路部21は、上述の垂直選択回路2、CDS回路3、水平選択回路4、AGC回路5、A/D変換回路6、デジタルアンプ7およびタイミングジェネレータ8を含む部分である。
【0044】
イオンセンシングアレイ1において、リセットゲート14、転送ゲート15、電荷注入制御ゲート16およびアドレスゲート(図示せず)は、多層配線層17におけるシリコン基板11側の表面(第1面)に現れるように形成されている。図4は、転送ゲート15のみが現れる構造を示している。
【0045】
多層配線層17における最上層の金属配線18の一部は、リセットゲート14、転送ゲート15、電荷注入制御ゲート16およびアドレスゲートに接続されており、各ゲートに、それぞれ対応する信号を与えている。また、シリコン基板11におけるイオンセンシングアレイ1の領域は、画素分割部19によってセル単位に区切られている。
【0046】
シリコン基板11における周辺回路部21の領域には、nウェル領域11dと、pウェル領域11eとが隣接して形成されている。nウェル領域11dには、対をなす2つのp拡散領域が多数組形成され、pウェル領域11eには、対をなす2つのn拡散領域が多数組形成されている。対をなす2つのp拡散領域および対をなす2つのn拡散領域については、多層配線層17におけるシリコン基板11側の表面に現れるようにゲートが形成されている。これらのゲートは、多層配線層17における最上層の金属配線18の一部に接続されている。
【0047】
上記のようにして、シリコン基板11にトランジスタ(pMOSトランジスタおよびnMOSトランジスタ)が形成される。周辺回路部21において、pMOSトランジスタが形成される部分はpMOS部21aであり、nMOSトランジスタが形成される部分はnMOS部21bである。多数のpMOS部21aおよびnMOS部21bを適宜組み合わせることにより、垂直選択回路2、CDS回路3、水平選択回路4、AGC回路5、A/D変換回路6、デジタルアンプ7、イミングジェネレータ8などが形成される。
【0048】
周辺回路部21において、表面膜13上には、保護膜23が形成されている。保護膜23は、表面膜13と同様、Si、Al、またはTaからなる。
【0049】
〈比較例〉
ここで、本実施形態の比較例について説明する。図5は、本実施形態の比較例に係るイオンセンサのイオンセンシングアレイにおけるセルの構成を示す縦断面図である。
【0050】
図5に示すように、比較例に係るセル30は、シリコン基板31上にSiO膜32が形成されている。また、SiO膜32上には、検体OJTが配置されるイオンセンシング面の周囲に、リセットゲート34と、転送ゲート35と、電荷注入制御ゲート36とが形成されている。リセットゲート34と、転送ゲート35と、電荷注入制御ゲート36とは、それぞれ、上述のリセットゲート14と、転送ゲート15と、電荷注入制御ゲート16と同等の機能を有している。
【0051】
このように構成されるセル30は、リセットゲート34と、転送ゲート35と、電荷注入制御ゲート36と、イオンセンシング面とが、シリコン基板31上の同一の面に形成されている。このため、セル30の面積が大きくなる。
【0052】
〈イオンセンサ100による効果〉
イオンセンサ100は、セル10の表面における電位レベルの変化に伴うチャネル電位レベル変化量を検出するX−Yアドレス型イオンセンサである。これにより、高S/Nかつ高速信号読み出しが可能なイオンセンサを提供することができる。このようなイオンセンサにより、例えばi-PS細胞など微細な1つの細胞内の局所的な活動や性質に関する知見を得ることができる。人のDNAが30億個であり、そのうち病気に関係するDNAが5億個あると言われているが、イオンセンサ100を用いれば、7mm□程度のチップで2000万セルの同時測定が可能となり、短時間で塩基配列の解析を完了させることができる。
【0053】
また、イオンセンサ100は、同一のシリコン基板11に、イオンセンシングアレイ1および周辺回路部21が形成されている構造である。しかも、シリコン基板11におけるSiO膜12および表面膜13が形成される面(第2面)にイオンセンシング面1aが形成される一方、シリコン基板11における第2面と反対側の面(第1面)に、転送ゲート15などの各ゲートが形成されている。
【0054】
このような構造により、イオンセンシング面1aに十分な面積を確保しながらセル10のサイズを10μm以下に縮小することが可能となる一方、第2面側に多層配線層17を配置することができる。これにより、イオンセンサ100は、周辺回路部21を含んでいても、小型化が可能となる。したがって、イオンセンサ100のシステムオンチップ化が容易になる。
【0055】
また、第2面に多層配線層17が形成されないことから、製造プロセス上の制約がなくなるので、イオン感応膜として、一般的に使用される窒化シリコン膜以外に、酸化アルミニウム膜または酸化タンタル膜を用いることができる。酸化アルミニウムおよび酸化タンタルは、窒化シリコンよりもイオンセンシング感度に優れているものの、膜の製造および加工の容易さや、材料コストの点から実用性に乏しい。したがって、イオンセンシング感度を重視する場合は、イオンセンサ100が、酸化アルミニウムまたは酸化タンタルからなるイオン感応膜を含んでいることが好ましい。
【0056】
また、上記の多層配線層17において、3層以上で金属配線18が形成されている。デジタル回路を構成するには、一般に、4層以上かつ6層以下の層構造をなす配線が必要となる。イオンセンサ100の多層配線層17は、4層以上かつ6層以下の層構造をなす金属配線18を含むので、シリコン基板11にA/D変換回路6を形成して、イオン検出結果をデジタル信号として出力することができる。また、A/D変換回路6から出力されたデジタル信号を処理する所望のデジタル回路をイオンセンサ100に組み込むことが可能となる。
【0057】
〔実施形態2〕
本発明の実施形態2について図6および図7を用いて説明すれば、以下のとおりである。なお、本実施形態において、前述の実施形態1における構成要素と同等の機能を有する構成要素については、同一の符号を付記して、その説明を省略する。
【0058】
図6は、実施形態2に係るイオンセンサ100Aのイオンセンシングアレイ1におけるセル10Cの構成を示す縦断面図である。図7は、実施形態2に係るイオンセンサ100Aにおけるイオンセンシングアレイ1と周辺回路部21との構成を示す縦断面図である。
【0059】
図7に示すように、イオンセンサ100Aは、図6に示す各セル10Cが、仕切壁20(壁)で個別に区分されることを除いて、上述の図4に示すイオンセンサ100と同等に構成されている。仕切壁20は、表面膜13上に例えばSiOによって掲載された壁状の部分である。
【0060】
上記のように、各セル10Cを仕切壁20で区分することにより、各セル10Cに異なるDNAテンプレートを配置して、大規模にDNAの並列解析を実行することが可能となる。したがって、イオンセンサ100AをDNA分析に好適に利用することができる。
【0061】
〔実施形態3〕
本発明の実施形態3について図8を用いて説明すれば、以下のとおりである。なお、本実施形態において、前述の実施形態1および2における構成要素と同等の機能を有する構成要素については、同一の符号を付記して、その説明を省略する。
【0062】
図8の(a)および(b)は、実施形態3に係るイオンセンサにおけるセルの仕切構造を示す平面図である。
【0063】
本実施形態は、上述の実施形態2に係るイオンセンサ100Aに適用される。
【0064】
図8の(a)に示すように、各セル10Dは、方形に形成されており、仕切板201によって区分されている。これにより、セル10Dの面積を最大に確保することができる。
【0065】
これに対し、図8の(b)に示すように、各セル10Eは、楕円形(円形でもよい)に形成されており、仕切板202によって区分されている。これにより、セル10Eの面積は、セル10Dよりも小さくなるが、仕切壁202の厚さを仕切壁201よりも厚くすることができる。したがって、セル10E間の干渉を少なくすることができる。
【0066】
なお、セルの形状は、上記の方形や楕円形に限定されないことは勿論である。
【0067】
〔まとめ〕
本発明の態様1に係るイオン濃度センサは、支持基板9と、検体OJTと接するセンシング面(イオンセンシング面1a)を有し、前記検体OJTのイオンに感応する複数のセンシング部(セル10)と、前記支持基板9と前記センシング部との間に設けられた半導体層(シリコン基板11)と、前記センシング部が感応したイオンの量に応じた信号を読み出して転送する複数のトランジスタ(電荷注入制御トランジスタTc,転送トランジスタTt,増幅トランジスタTa,アドレストランジスタTd,リセットトランジスタTr)と、前記トランジスタから転送されるアナログの前記信号をデジタルに変換するアナログ/デジタル変換回路(A/D変換回路6)とを備え、前記センシング部と、前記トランジスタと、前記アナログ/デジタル変換回路とは前記支持基板9の上に形成され、前記トランジスタは、前記半導体層に形成されるとともに、前記半導体層の一方の第1面に形成されるゲートを有しており、前記アナログ/デジタル変換回路は、前記半導体層に形成され、前記センシング面は前記半導体層における前記第1面とは反対側の第2面に形成されている。
【0068】
上記の構成によれば、半導体層の第1面にトランジスタのゲートが形成される一方、第2面にセンシング面が形成される。これにより、センシング面に十分な面積を確保しながらセンシング部を縮小することが可能となる一方、ゲートに接続される配線を含む多層配線構造を第2面側に形成することができる。それゆえ、イオン濃度センサは、アナログ/デジタル変換回路を含んでいても、小型化が可能となる。したがって、イオン濃度センサのシステムオンチップ化が容易になる。
【0069】
本発明の態様2に係るイオン濃度センサは、上記態様1において、前記支持基板9と前記半導体層との間に設けられ、前記トランジスタの一部から出力される信号を前記アナログ/デジタル変換回路に伝送する配線が4層以上の層構造に形成される多層配線層17をさらに備えていてもよい。
【0070】
上記の構成によれば、4層以上の多層配線層を有することにより、デジタル回路をイオン濃度センサに容易に設けることができる。これにより、アナログ/デジタル変換回路から出力されたデジタル信号を処理する所望のデジタル回路をイオン濃度センサに組み込むことが可能となる。
【0071】
本発明の態様3に係るイオン濃度センサは、上記態様1または2において、前記センシング部は、行列状に配置され、前記半導体層には、前記センシング部を列単位で選択する垂直選択回路2と、当該垂直選択回路2によって選択された前記センシング部から出力された前記信号を行単位で出力する水平選択回路4とがさらに形成されていてもよい。
【0072】
上記の構成によれば、垂直選択回路2および水平選択回路4がイオン濃度センサに組み込まれるので、垂直選択回路2および水平選択回路4を外部に設けてイオン濃度センサに接続する必要がなくなる。これにより、イオン濃度センサのシステムオンチップ化を容易に図ることができる。
【0073】
本発明の態様4に係るイオン濃度センサは、上記態様1から3のいずれかにおいて、各センシング部は壁によって互いに区分されていてもよい。
【0074】
上記の構成によれば、各センシング部に異なるDNAテンプレートを配置して、大規模にDNAの並列解析を実行することが可能となる。したがって、イオン濃度センサをDNA分析に好適に利用することができる。
【0075】
本発明の態様5に係るイオン濃度センサは、上記態様1から4のいずれかにおいて、前記センシング部は、窒化シリコン膜、酸化アルミニウム膜または酸化タンタル膜によって形成されていてもよい。
【0076】
態様1により、第2面にはゲートが形成されないことから、第2面にはゲートが形成されることで生じていた製造プロセス上の制約がなくなる。これにより、イオン感応膜として、従来使用されていた窒化シリコン膜だけではなく、酸化アルミニウム膜または酸化タンタル膜を用いることが可能となる。
【0077】
本発明の態様6に係るイオン濃度センサは、上記態様1から5のいずれかにおいて、前記センシング部の表面における電位レベルの変化に伴うチャネル電位レベル変化量を検出してもよい。
【0078】
上記の構成によれば、高S/Nかつ高速信号読み出しが可能なイオンセンサを提供することができる。
【0079】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。
【符号の説明】
【0080】
1 イオンセンシングアレイ
1a イオンセンシング面(センシング面)
6 A/D変換回路(アナログ/デジタル変換回路)
9 支持基板
11 シリコン基板
10,10A〜10E セル(センシング部)
14 リセットゲート(ゲート)
15 転送ゲート(ゲート)
16 電荷注入制御ゲート(ゲート)
17 多層配線層
20 仕切壁(壁)
100 イオンセンサ
201,202 仕切壁(壁)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8