特許第6644344号(P6644344)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6644344
(24)【登録日】2020年1月10日
(45)【発行日】2020年2月12日
(54)【発明の名称】管路の更新方法
(51)【国際特許分類】
   E02B 9/04 20060101AFI20200130BHJP
   F16L 1/00 20060101ALI20200130BHJP
【FI】
   E02B9/04 A
   F16L1/00 P
   F16L1/00 Q
   F16L1/00 S
【請求項の数】9
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2019-171413(P2019-171413)
(22)【出願日】2019年9月20日
【審査請求日】2019年9月25日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】519341902
【氏名又は名称】株式会社エステックコンサルタンツ
(74)【代理人】
【識別番号】100101971
【弁理士】
【氏名又は名称】大畑 敏朗
(72)【発明者】
【氏名】山木 康雄
【審査官】 彦田 克文
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−14163(JP,A)
【文献】 特開昭63−57980(JP,A)
【文献】 特開2009−2391(JP,A)
【文献】 特開平11−193882(JP,A)
【文献】 特開平7−217771(JP,A)
【文献】 特開2001−40990(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2016/0178109(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B 9/04
F16L 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地上に露出して敷設された通水用の既存管路を新たな管路に更新する管路の更新方法であって、
管体ピースを挿入する挿入用開口部と、管体ピース同士の接合部を外部に露出させる連結用開口部とを、更新する既存管路に形成する開口部形成工程と、
前記管体ピースを前記挿入用開口部から挿入し、前記既存管路の設置位置に移動させる管体ピース設置工程と、
前記既存管路内において隣り合う前記管体ピースの端部を、前記連結用開口部を介して連結する連結工程と、
前記挿入用開口部と前記連結用開口部とを前記挿入用開口部と前記連結用開口部とに対応した形状の閉塞部材により塞ぐ閉塞工程と、
前記管体ピースと前記既存管路との間の隙間に固化材を注入する注入工程と、を有することを特徴とする管路の更新方法。
【請求項2】
前記既存管路は、傾斜地に敷設されて水源側の水を発電所の発電装置に供給する鉄管路であり、前記管体ピース設置工程においては、挿入用開口部から挿入された前記管体ピースを前記既存管路の下側部に向けて移動させて設置する、
ことを特徴とする請求項1記載の管路の更新方法。
【請求項3】
前記挿入用開口部と前記連結用開口部とは、前記既存管路のうち横断面が半円形状の上側部分を切断した切断撤去部により形成され、前記閉塞工程において前記切断撤去部を前記挿入用開口部と前記連結用開口部に閉塞部材として戻して前記既存管路に復旧する、
ことを特徴とする請求項1または2記載の管路の更新方法。
【請求項4】
前記切断撤去部の外周面に円弧形状の補強部材を前記切断撤去部の切断前に固定するようにした、
ことを特徴とする請求項3記載の管路の更新方法。
【請求項5】
前記挿入用開口部は前記管体ピースの軸方向長さよりも長く、前記連結用開口部は前記挿入用開口部よりも軸方向長さが短い、
ことを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の管路の更新方法。
【請求項6】
前記挿入用開口部が前記連結用開口部を兼ねる、
ことを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載の管路の更新方法。
【請求項7】
前記既存管路は経路中に屈曲部を有しており、当該屈曲部に前記挿入用開口部を設ける、
ことを特徴とする請求項1〜6の何れか一項に記載の管路の更新方法。
【請求項8】
前記管体ピースの粗度係数は、前記既存管路の粗度係数よりも低い、
ことを特徴とする請求項1〜7の何れか一項に記載の管路の更新方法。
【請求項9】
前記既存管路は鉄製であり、前記管体ピースは樹脂製である、
ことを特徴する請求項1〜8の何れか一項に記載の管路の更新方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水力用発電用の水圧鉄管等のように、地上に露出して敷設された管路を、既存の管路を利用しつつ新たな管路を構築する管路の更新方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
地上に露出して敷設される配管の一例として、水力発電に使用される水圧鉄管がある。水圧鉄管は、水源地から発電機を有する発電所に水を供給するための管路である。水力発電を水の利用面で分類すると、貯水池式、調整池式、流れ込み式がある。貯水式は、水量が豊富で電力の消費量が比較的少ない春先や秋口等に河川水を大きな貯水池に貯め込み、電力が多く消費される夏季や冬季にこれを使用して発電する方式である。調整池式は、夜間や週末の電力消費量の少ない時に発電を控えて河川水を池に貯め込み、消費量の増加に合わせて水量を調整しながら発電する方式である。流れ込み式は、河川に流れる水を貯めることなく、そのまま発電に使用する方式である。
【0003】
水力発電を構造面で分類すると、ダム式、水路式、ダム水路式がある。ダム式は、ダムにより河川を堰き止めて貯水池を造り、ダム直下の発電所との落差を利用して発電する方式である。水路式は、川の上流に低い堰により造った調整池に水を取り入れ、長い水路により落差が得られるところまで水を導いて発電する方式である。ダム水路式は、ダム式と水路式とを組み合わせた発電方式である。
【0004】
それぞれの発電方式において、調整池等の水源地から発電所の発電装置に水を供給するために、水圧鉄管や導水路などの管路が使用される。
【0005】
特許文献1には、袋状の堰体を膨張させて河川を堰き止めて、堰き止めた水を発電装置に導水路を介して供給するようにした水力発電装置が開示されている。また、特許文献2には、山岳部の水力発電のための導水路が開示されており、ダム式、水路式およびダム水路式についての水力発電方式が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第5092056号公報
【特許文献2】特許第4647032号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
水力発電に使用される導水路や水圧管等の管路は鉄製の管であり、耐用年数に応じて取替工事つまり更新工事が行われる。従来の更新工事は、既存の管路を撤去して新たな管路を敷設することにより行われている。したがって、新たな管路を敷設するには、まず、固定台や小支台等のコンクリート構造物の上に敷設された既存管路を撤去し、必要に応じてコンクリート構造物の相当部分を取り壊す。次いで、新規に同様のコンクリート構造物を構築するとともに、新たな管路を敷設している。
【0008】
水力発電のための管路は急傾斜地に敷設されているので、更新工事を行うには、ケーブルクレーン等の索道を使用しての作業が多くなる。このため、作業場所の上方を吊り荷が通過する頻度が多くなるので、上下作業を回避するための工程管理が厳しくなり、結果として敷設工期を長くする必要がある。また、重量物を搬送することになるので、索道設備が大がかりなものになる。さらには、安全対策として、コンクリート構造物の取り壊し撤去時の飛来落下防止、高所や傾斜地での墜落転落防止対策や粉塵対策、騒音対策等に大がかりな仮設設備を設置する必要があり、管路の更新工事には、その施工工期に長期間かかるだけでなく、施工コストの上昇が問題となっている。
【0009】
このような管路の取り替え、更新工事における問題は、水力発電用の水圧鉄管や導水路等の管路のみならず、地上に露出して敷設された種々の管路においても、同様である。
【0010】
本発明は、上述の技術的背景からなされたものであって、地上に露出して敷設された既存の管路を取り替えて、短期間で新たな管路を構築し得るようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、請求項1に係る本発明の管路の更新方法は、地上に露出して敷設された通水用の既存管路を新たな管路に更新する管路の更新方法であって、管体ピースを挿入する挿入用開口部と、管体ピース同士の接合部を外部に露出させる連結用開口部とを、更新する既存管路に形成する開口部形成工程と、前記管体ピースを前記挿入用開口部から挿入し、前記既存管路の設置位置に移動させる管体ピース設置工程と、前記既存管路内において隣り合う前記管体ピースの端部を、前記連結用開口部を介して連結する連結工程と、前記挿入用開口部と前記連結用開口部とを前記挿入用開口部と前記連結用開口部とに対応した形状の閉塞部材により塞ぐ閉塞工程と、前記管体ピースと前記既存管路との間の隙間に固化材を注入する注入工程と、を有することを特徴とする。
【0012】
請求項2に係る本発明の管路の更新方法は、請求項1記載の発明において、前記既存管路は、傾斜地に敷設されて水源側の水を発電所の発電装置に供給する鉄管路であり、前記管体ピース設置工程においては、挿入用開口部から挿入された前記管体ピースを前記既存管路の下側部に向けて移動させて設置する、ことを特徴とする。
【0013】
請求項3に係る管路の更新方法は。請求項1または2記載の発明において、前記挿入用開口部と前記連結用開口部とは、前記既存管路のうち横断面が半円形状の上側部分を切断した切断撤去部により形成され、前記閉塞工程において前記切断撤去部を前記挿入用開口部と前記連結用開口部に閉塞部材として戻して前記既存管路に復旧する、ことを特徴とする。
【0014】
請求項4に係る管路の更新方法は、請求項3記載の発明において、前記切断撤去部の外周面に円弧形状の補強部材を前記切断撤去部の切断前に固定するようにした、ことを特徴とする。
【0015】
請求項5に係る管路の更新方法は、請求項1〜4の何れか一項に記載の発明において、前記挿入用開口部は前記管体ピースの軸方向長さよりも長く、前記連結用開口部は前記挿入用開口部よりも軸方向長さが短い、ことを特徴とする。
【0016】
請求項6に係る管路の更新方法は、請求項1〜5の何れか一項に記載の発明において、前記挿入用開口部が前記連結用開口部を兼ねる、ことを特徴とする。
【0017】
請求項7に係る管路の更新方法は、請求項1〜6の何れか一項に記載の発明において、前記既存管路は経路中に屈曲部を有しており、当該屈曲部に前記挿入用開口部を設ける、ことを特徴とする。
【0018】
請求項8に係る管路の更新方法は、請求項1〜7の何れか一項に記載の発明において、前記管体ピースの粗度係数は、前記既存管路の粗度係数よりも低い、ことを特徴とする。
【0019】
請求項9に係る管路の更新方法は、請求項1〜8の何れか一項に記載の発明において、前記既存管路は鉄製であり、前記管体ピースは樹脂製である、ことを特徴する。
【発明の効果】
【0020】
既存管路の取替更新を、既存管路をそのまま利用して既存管路の内部に管体ピースを挿入することにより行うので、短期間で新たな管路を低コストで構築することができる。管路の更新のために、鉄筋コンクリート構造物の取り壊し撤去作業が相当部分不要となるので、更新工事を安全に行うことができる。
【0021】
また、撤去する材料が少なく且つ軽量となるため、搬送頻度の低減により安全性が向上するとともに、索道設備の小型化を図ることができる。
【0022】
既存管路が水力発電のための鉄管路の場合には、鉄管路は傾斜地に敷設されており、管体ピースを挿入用開口部から設置位置に移動するときには、管体ピースの自重を利用して移動させることができる。
【0023】
挿入用開口部や連結用開口部は既存管路を切断することにより形成され、切断撤去部を再利用して閉塞部材としてそれぞれの開口部を閉塞することにより、切断撤去部を有効利用することができる。切断撤去部の外周面に補強部材を固定すると、切断撤去部の変形を防止することができ、再利用時に既存管路への取り付けを容易に行うことができる。
【0024】
既存管路の経路中に屈曲部が設けられている場合には、屈曲部に挿入用開口部を設けると、屈曲タイプの管体ピースの設置を容易に行うことができる。
【0025】
管体ピースを樹脂製とすると、内部を流れる水の摩擦抵抗が少ないので、既存管路の内径よりも管体ピースの内径が小さくなっても、十分な通水量を確保できる。また、新設管路は既存管路を鞘管として内部に管体ピースが組み込まれた二重管となるので、新設管路の耐久性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】調整池式の水力発電方式を示す概略図である。
図2】調整池と発電所の間に敷設された既存管路としての鉄管路の一例を示す断面図である。
図3図2の一部を示す拡大断面図である。
図4】既存管路に複数の開口部を形成した状態を示す断面図である。
図5】既存管路内に3つの管体ピースが設置された状態を示す断面図である。
図6】既存配管内の隣り合う管体ピースを連結した後に閉塞部材により挿入用開口部が閉じられた状態を示す断面図である。
図7】管体ピースと既存管路との間の隙間に固化材を注入している状態を示す断面図である。
図8】既存管路内に配置された管体ピースに他の管体ピースを接続した状態を示す断面図である。
図9】閉塞部材として再利用できる切断撤去部の一例を示す斜視図である。
図10】(A)は切断撤去部の変形例を示す正面図であり、(B)は(A)における10B−10B線の断面図であり、(C)は(A)における10C−10C線の断面図である。
図11】2本の管体ピースを示す斜視図である。
図12】(A)は2本の管体ピースを接合している状態を示す斜視図であり、(B)は(A)の横断面図である。
図13】(A)〜(C)は2つの管体ピースの受け部と差し込み部とを熱溶着している状態を示す断面図である。
図14】(A)は管体ピースの接合部を示す断面図であり、(B)は(A)における14B−14B線の拡大断面図である。
図15】(A)は管体ピースの変形例を示す半断面図であり、(B)は管体ピースの他の変形例を示す半断面図である。
図16】(A)は屈曲タイプの管体ピースの一例を示す半断面図であり、(B)は屈曲タイプの管体ピースの変形例を示す半断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1に示すように、調整池式の水力発電方式においては、堰体1により造られた調整池2には河川水が貯め込まれる。調整池2内の水は水路3により発電所4に供給され、発電所内の発電機により発電され、発電後の水は放水路5により河川に流される。
【0028】
図2は、調整池2と発電所4との間に敷設された既存管路としての鉄管路10の一例を示す断面図である。この鉄管路10は、調整池2と発電所4との間の傾斜地6に敷設された通水用の鉄製の管路であり、調整池2内の水源側の水は鉄管路10により発電所4の発電装置に送られる。鉄管路10は地上に露出して敷設されており、発電所4から調整池2に向けて、つまり下流側から上流側に向けて、4つのストレート領域11〜14を有しており、各ストレート領域の接続部は屈曲部15〜17となっている。屈曲部15、17は、上方に突出した山折れの屈曲部であり、屈曲部16は下方に引っ込んだ谷折れの屈曲部である。
【0029】
このように、図2に示す鉄管路10は、地表面の縦断形状に沿うように敷設されるため、調整池2と発電所4との間の通水経路中に複数の屈曲部15〜17を有している。ただし、例えば、貯水池式の水力発電方式では、屈曲部を有することなく、全体がストレートとなっている場合もあり、その場合にも、本発明の更新方法を適用することができる。
【0030】
鉄管路10は、複数の固定台21〜24により傾斜地6に支持されており、地表に露出している。図2においては、4つの固定台21〜24が傾斜地6に敷設されている。それぞれの固定台21〜24の間には、固定台よりも小型の複数の小支台25が傾斜地6に敷設され、それぞれの小支台25は、各ストレート領域11〜14を支持している。固定台21〜24と小支台25は、それぞれ鉄筋コンクリート製であり、屈曲部15〜17は、固定台21〜23により支持されている。
【0031】
鉄管路10の耐用年数が経過して老朽化した場合には、鉄管路10の取替工事つまり更新工事を行う必要がある。本実施の形態において、その場合には、既に敷設された既存管路である鉄管路10を、撤去することなく、これを再利用して新たな新設管路を構築する。
【0032】
図3図8は、既存管路を利用して新設管路を構築する管路の更新方法を示しており、それぞれは図2に示した鉄管路10のうちストレート領域11、12と、ストレート領域13の一部を示す。
【0033】
図3においては、2つの挿入用開口部31、32と、3つの連結用開口部33〜35の位置が二点鎖線により示されている。挿入用開口部31は鉄管路10の屈曲部15の部分を含んでおり、挿入用開口部32は鉄管路10の屈曲部16の部分を含んでいる。挿入用開口部31、32の軸方向長さは、連結用開口部33〜35の軸方向長さよりも長く設定されている。つまり、連結用開口部33〜35は挿入用開口部31、32よりも短くなっている。
【0034】
それぞれの開口部31〜35は、鉄管路10の径方向の上側部分に対応しており、開口部31〜35の部分を切断撤去部として鉄管路10から除去すると、図4において実線で示すように、開口部31〜35が鉄管路10に形成される。
【0035】
既存管路である鉄管路10の中には、切断撤去部が取り除かれた挿入用開口部31、32から管体ピース(詳細は後述する)が挿入され、管体ピースは連結用開口部33〜35において端部で相互に接合される。これにより、既存管路である鉄管路10の内部に管体ピースからなる新設管路が敷設される。なお、挿入用開口部31、32においても、管体ピースを接合することができる。また、挿入用開口部31,32は、屈曲部に設けられているが、ストレート部に挿入用開口部を設けるようにしてもよい。
【0036】
図9は、連結用開口部33から取り除かれて形成された切断撤去部33aを示す斜視図である。この形状の切断撤去部33aを鉄管路10から除去することにより、鉄管路10に連結用開口部33が形成される。切断撤去部33aは、鉄管路10の上側の半円形の円弧形状部分であり、例えば、ガス切断機の切断トーチからガスを鉄管路10に照射することにより、鉄管路10から溶断されて取り出される。他の連結用開口部34、35を鉄管路10に形成することにより、それぞれの連結用開口部34、35の形状に対応した切断除去部34a、35aが鉄管路10から切り出される。同様に、挿入用開口部31、32に対応した形状の部分を鉄管路10から除去することにより、屈曲部を有する切断撤去部31a、32aが形成される。
【0037】
鉄管路10から切断して撤去された切断撤去部33aを再利用して連結用開口部33を閉じるための閉塞部材として使用するために、図9に示すように、切断撤去部33aの外周面には、予め切断前に複数の補強部材36が溶接される。補強部材36は鉄板を円弧形状に加工することにより形成され、切断撤去部33aの外周面に沿って円周方向に延びるとともに径方向外方に突出している。さらに、補強部材36の両端部は、切断撤去部33aの軸方向の開口面よりも外方に突出した突出端部37となっており、切断撤去部33aの端面38は長手方向に対してほぼ直角となっている。
【0038】
図9に示すように、切断撤去部33aの外周面に補強部材36を取り付けると、開口部33から取り除く際の切断撤去部33aの熱変形や弾性変形を防止することができる。さらに、補強部材36の両端部に開口面よりも突出した突出端部37を設けると、切断撤去部33aを連結用開口部33に取り付けるときに、鉄管路10に対する切断撤去部33aの幅方向の位置決めを容易に行うことができる。
【0039】
図9は、連結用開口部33を除去することにより形成された切断撤去部33aを示しているが、他の連結用開口部34、35および挿入用開口部31、32を除去することにより形成される切断撤去部31a、32a、34a、35aについても、同様に外周面に補強部材を取り付けるようにしてもよい。
【0040】
図10は、切断撤去部33aの変形例を示している。この切断撤去部33aの両端面38は傾斜面となっており、それぞれの傾斜面は幅方向中央部から軸方向の開口面に向けて軸方向内方に向けて傾斜している。さらに、開口面には、先端に向けて幅が小さくなったテーパ形状の突起部39aが設けられている。このように、軸方向の両端面38を傾斜させることにより、切断撤去部33aを容易に連結用開口部33に位置合わせして取り付けることができる。他の連結用開口部34、35および挿入用開口部31、32を除去することにより形成される切断撤去部についても、同様に、両端面を傾斜面としてもよい。
【0041】
なお、閉塞部材としては、切断撤去部を再利用することなく、新たに横断面半円形状の部材を形成することも可能であるが、切断撤去部を再利用することにより、資源の有効利用を図ることができるとともに、少ない工程で管路の更新を行うことができる。
【0042】
図5は、鉄管路10内に3つの管体ピース40が設置された状態を示す断面図である。管体ピース40は、挿入用開口部31,32の長さよりも短い寸法に設定されている。最下流側の管体ピース40aが挿入用開口部31から挿入され、鉄管路10の下流側の所定の設置位置に移動される。次いで、管体ピース40bが挿入用開口部31から挿入されて下流側に移動され、管体ピース40aの上端部に突き当てられる。次いで、管体ピース40cが挿入用開口部32から挿入され、鉄管路10内を下流側つまり下側部に移動されて管体ピース40bに突き当てられる。図5においては、管体ピース40cに接続される管体ピース40dをケーブルクレーン41により搬送している状態が示されている。
【0043】
これらの図面においては、管体ピースは符号40で示されており、特定の位置の管体ピース40には符号a〜gが付されている。
【0044】
索道としてのケーブルクレーン41は、図示しないタワーに取り付けられたガイドケーブル42と、このガイドケーブル42により案内されて移動する吊り下げフック43とを備えており、管体ピース40dは吊り下げフック43により挿入用開口部32に挿入される。挿入された管体ピース40dは、鉄管路10内を下流側に移動されて、前述した管体ピース40cの上端部に突き当てられる。
【0045】
傾斜面に敷設された鉄管路10の内部に管体ピース40を挿入して下流側に移動させるので、管体ピース40の自重を利用して移動させることができる。但し、傾斜角が大きい箇所を移動させるときには、先行して挿入された管体ピース40に突き当たったときの衝撃を和らげるためにワイヤ等により引っ張った状態で管体ピース40を徐々に移動させる必要があり、例えば、管体ピース40の軸方向上部に電動ウインチを設置して引っ張りながら下方へ移動させるようにしてもよい。
【0046】
図11は、2本のストレートな管体ピース40を示す斜視図である。管体ピース40は熱可塑性樹脂である高密度ポリエチレンを主原料としたハウエル管(登録商標)と呼ばれる高耐圧ポリエチレン管であり、流水が内壁に触れる際の抵抗量を示す指標である粗度係数が既存の鉄管路10よりも低くなっており、鉄管路10よりも小径にも拘わらず、従前と同じ流量の水を流すことができる。この管体ピース40の基端部には、先端部よりも大径の受け部51が設けられている。受け部51の内径は、継手部の密着度の向上のために先端部の外径よりも小径であり、受け部51の内側には他の管体ピース40の先端部である差し込み部52が挿入される。受け部51の内周面には、発熱体53が環状に組み込まれており、発熱体53に通電することにより、1つの管体ピース40の受け部51と他の管体ピース40の差し込み部52とが熱融着され、2つの管体ピース40が接合される。
【0047】
ここで、2つの管体ピース40を接合する前に、一方の管体ピース40の受け部51に他の管体ピース40の差し込み部52が挿入されて、2つの管体ピース40は継手内部の端部で強く突き当てられる。
【0048】
図12は、管体ピース40の受け部51に管体ピース40の差し込み部52を挿入した状態を示す斜視図である。それぞれの管体ピース40に締結ワイヤ54を2カ所に巻き付け、それぞれの締結ワイヤ54同士をレバーブロック(登録商標)等の締結工具56で前後に締め付けることにより、差し込み部52は受け部51に押し付けられる。この状態のもとで前述のように発熱体53に通電することにより、受け部51と差し込み部52は熱融着されて強固に連結される。
【0049】
図13は、2つの管体ピース40を熱融着している状態を示す図であり、受け部51に差し込み部52を挿入することにより、図13(A)に示すように、発熱体53が差し込み部52の外周面に接触する。この状態のもとで、給電ケーブル50を介して外部から発熱体53に電力を供給すると、発熱体53の温度上昇により受け部51の内周部と、差し込み部52の外周部とに、図13(B)に示すように、溶融部57が形成される。この溶融部57が冷却固化されると、図13(C)に示すように、受け部51と差し込み部52とは樹脂組織が一体化した状態となり、2つの管体ピース40は端部同士で接合される。
【0050】
鉄管路10の内側には複数の管体ピース40が配置され、それぞれの管体ピース40の端部同士が接合される。図14は、例えば、連結用開口部33から外部に露出された管体ピース40c、40dの接合部を示す断面図であり、管体ピース40dの差し込み部52近傍の外周底面にはスペーサ58が設けられている。スペーサ58の径方向の厚み寸法は受け部51の厚み寸法に対応しており、差し込み部52と鉄管路10の内底面との間に隙間が形成される。これにより、差し込み部52を受け部51に挿入するときに、管体ピース40を鉄管路10内で軸方向にずらすだけで(つまり、差し込み部52を持ち上げることなく)、容易に差し込み部52は受け部51内に挿入される。さらに、それぞれの管体ピース40は鉄管路10の軸心とほぼ同軸となって配置される。
【0051】
さらには、撤去した後に再構築される切断除去部33aのテーパ形状の突起部39aに対応して、存置する鉄管路10の連結用開口部33〜35の上端面に設けられたテーパ形状の切欠部39bの箇所に締結工具56を設置することができるようにしている。
【0052】
なお、スペーサ58が管体ピース40dの外周底面から周方向にずれている場合には、差し込み部52を受け部51内に挿入する前に、挿入側の管体ピース40を周方向に回転させてスペーサ58が外周底面に位置するようにする。
【0053】
図15(A)は管体ピース40の変形例を示す半断面図であり、図15(B)は管体ピース40の他の変形例を示す半断面図である。図15(A)の管体ピース40は片受けタイプであり、受け部51が本体部と一体に設けられている。これに対し、図15(B)の管体ピース40は両受けタイプであり、受け部51が本体部に接合される。これらの管体ピースはいずれもストレートタイプである。
【0054】
図16(A)は屈曲タイプの管体ピース40の一例を示す半断面図であり、図16(B)は屈曲タイプの管体ピース40の変形例を示す半断面図である。
【0055】
図16(A)に示す管体ピース40は屈曲角度θが20度の屈曲タイプであり、受け部51が設けられた受け部側部45と、差し込み部52が設けられた差し込み側部46とを有している。一方、図16(B)に示す管体ピース40は、受け部側部分45と差し込み側部分46との間に中間部47が設けられており、屈曲角度θは45度である。なお、屈曲角度は自由に設定して製作することができる。
【0056】
次に、既存管路の鉄管路10を新たな管路に更新するための更新方法の手順について説明する。
【0057】
図4に示すように、開口部形成工程により、管体ピース40を挿入するための挿入用開口部31、32と、管体ピース同士の接合面を外部に露出させる連結用開口部33〜35が鉄管路10に形成される。図4は、開口部形成工程により鉄管路10に形成される全ての開口部が形成された状態を示す。図4においては、次の工程が開始される前に、全ての開口部31〜35が設けられた状態が示されているが、下流側の開口部において次の工程が終了した後に、順次、開口部を設けるようにしてもよい。
【0058】
次いで、挿入用開口部から鉄管路10内に管体ピースが挿入される。図5においては、挿入用開口部31から管体ピース40aと管体ピース40bとが挿入された状態を示す。それぞれの管体ピース40a、40bは所定の設置位置に移動され、基端部側の受け部51が上流側を向き、先端部の差し込み部52が下流側を向いた状態となる。さらに、管体ピース40cが挿入用開口部32から挿入され、管体ピース40cは、その先端部が管体ピース40bの基端部に当接する設置位置まで移動される。これにより、3本の管体ピース40a、40bおよび40cが設定位置に移動されて3本の管体ピース設置工程が終了する。
【0059】
既存管路の内部に隣り合う管体ピース40aの基端部である受け部51とその中に挿入されて突き当てられた端部である差し込み部52とが接合され、2本の管体ピース40a、40bが連結される。この連結工程は、挿入用開口部31の部分でこの部分を介して、図13に示すように、2本の管体ピース40a、40bを締結した状態のもとで、発熱体53に電力を供給することにより行われる。同様に、2本の管体ピース40bの基端部である受け部51と、その中に挿入されて突き当てられる管体ピース40cの差し込み部52とが接合され、2本の管体ピース40a、40bが連結される。2箇所の連結工程は、挿入用開口部31の部分で、これを介して行われる。このように、挿入用開口部31は連結用開口部を兼ねている。
【0060】
図6に示すように、挿入用開口部31は閉塞部材としての切断撤去部31aにより塞がれる。このように、開口部を閉塞する閉塞工程が行われると、切断撤去部31aが閉塞部材として戻されて、既存管路としての鉄管路10に復旧される。これにより、管体ピース40a、40bは既存の鉄管路10の内部に敷設される。閉塞部材は挿入用開口部31を形成するために、鉄管路10の一部を切除したときに形成された切断撤去部31aを使用することができる。このように、切断撤去部31aを再利用して管体ピースを覆うことができる。管体ピースの外周面と鉄管路10の内周面との間には、図14に示すように、隙間59が形成される。
【0061】
図6に示した切断除去部31aには、補強部材36は図示省略されている。図9に示すように、閉塞部材として切断撤去部33aを利用する場合には、切断除去部33aを挿入用開口部33に位置決めし易くするために、切断撤去部33aの外周面に、補強部材36を設けるようにしてもよく、両端面38を図10に示すように傾斜面としてもよい。さらに、突起部39aを設けるようにしてもよい。
【0062】
図7は、閉塞工程により開口部が閉塞された後に、隙間59に固化材を注入している状態を示す。固化材を注入する注入工程は、図7に示すように、閉塞部材31aの下流端部に注入管62を取り付け、外部から注入管62を介して隙間59の中に、モルタル等の固化材を注入する。固化材を下流側の部分から注入すると、固化材は隙間59内の空気を押し上げるようにして充填される。これにより、閉塞部材31aの上端部から固化材を注入する場合よりも、隙間59内に空気溜まりによる空隙を発生させることなく、固化材を確実且つ密実に充填することができる。
【0063】
図8は、図示した領域の鉄管路10内に他の管体ピース40が設置された状態を示す。つまり、管体ピース40cには管体ピース40dが接続され、順次、上流側に向けて管体ピース40hまで設置された状態が示されている。
【0064】
管体ピース40cと管体ピース40dとを連結する連結工程は、連結用開口部33を介して行われ、他の連結用開口部34、35を介して、それぞれの連結用開口部から外部に露出された接合部を連結する。それぞれの管体ピース40d〜40fは、挿入用開口部32から挿入されて所定の設置位置まで移動される。屈曲タイプの管体ピース40gは、挿入用開口部32から挿入されるとともに、管体ピース40hに接合される。この管体ピース40hは、挿入用開口部32よりも上流側に設けられた図示しない挿入用開口部から挿入される。
【0065】
管体ピース40が所定の設置位置に設置されて連結工程において接合された後に、閉塞工程により連結用開口部33〜35には閉塞部材としての切断撤去部33a〜35aが取り付けられ、挿入用開口部32には切断撤去部32aが閉塞部材として取り付けられる。図8においては、それぞれの切断撤去部32a〜35aが二点鎖線で示されている。
【0066】
図8においては、切断撤去部32a〜35aが取り付けられていない状態で示されているが、下流部側の開口部から順次、切断撤去部を取り付けるとともに、管体ピースと既存管路の鉄管路10との間の隙間59に固化材を注入する。固化材の注入は、屈曲部間を1ブロックとして行うことが好ましいが、距離によっては中間部で分割して行ってもよい。
【0067】
上述のように、既設管路を利用して内部に樹脂製の管体ピース40を敷設すると、更新された管路は二重管となり、鉄製の既存管路を鞘管としてその強度を利用して、更新された管路の強度が高められるとともに、耐久性も向上させることができる。なお、鉄製の既存管路の内部に管体ピース40が敷設されるので、既存管路の内径よりも、通水用の管体ピースの内径は小さくなるが、樹脂製の管体ピース40の内周面に対する水の摩擦抵抗は、鉄製の既存管路の内周面よりも少ないので、通水量の低下を抑制することができる。
【0068】
管体ピース40として前述の高耐圧ポリエチレン管を使用すると、当該高耐圧ポリエチレン管は高密度ポリエチレンを主成分とし、内部にガラス繊維が配合されており、軽量かつ高強度であり、柔軟性もある。
【0069】
以上本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本明細書で開示された実施の形態はすべての点で例示であって、開示された技術に限定されるものではない。すなわち、本発明の技術的な範囲は、前記の実施の形態における説明に基づいて制限的に解釈されるものでなく、あくまでも特許請求の範囲の記載に従って解釈されるべきであり、特許請求の範囲の記載技術と均等な技術および特許請求の範囲の要旨を逸脱しない限りにおけるすべての変更が含まれる。
【0070】
例えば、本発明の管路の更新方法は、水力発電に使用される水圧鉄管としての鉄管路のみならず、水を供給するための管路であれば、その更新のために適用することができる。更新できる管路は傾斜地に敷設されたものだけでなく、水平の地面に敷設された管路であってもよく、屈曲部は水平方向に屈曲した部分でもよい。
【0071】
また、管体ピース40は高密度ポリエチレンを主成分とするものに限られず、所望の粗度係数を確保できる種々の材質のものを選択できる。
【0072】
さらには、既存管路の敷設当時から更新に至る間の地理的または社会的条件等の変化により、設計流量を下方に変更できる場合においては、粗度係数の高低に拘ることなく、既存管路より小径の管体ピース40を用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明は、水を供給するために地上に露出して敷設された既存の管路を更新し、新たな管路に取り替えるために適用することができ、例えば、水力発電に使用される水圧鉄管の更新に好適である。
【符号の説明】
【0074】
1 堰体
2 調整池
3 水路
4 発電所
5 放水路
6 傾斜地
10 鉄管路(既存管路)
11〜14 ストレート領域
15〜17 屈曲部
21〜24 固定台
25 小支台
31,32 挿入用開口部
31a〜35a 切断撤去部(閉塞部材)
33〜35 連結用開口部
36 補強部材
37 突出端部
39a 突起部
39b 切欠部
40,40a〜40g 管体ピース
41 ケーブルクレーン
42 ガイドケーブル
43 フック
45 受け部側部
46 差し込み側部
50 給電ケーブル
51 受け部
52 差し込み部
53 発熱体
54 締結ワイヤ
56 締結工具
57 溶融部
58 スペーサ
59 隙間
62 注入管
【要約】
【課題】地上に露出して敷設された既存の管路を取り替えて、短期間で新たな管路を構築し得るようにする。
【解決手段】地上に露出して敷設された通水用の既存管路を新たな管路に更新する管路の更新方法であって、既存管路の鉄管路10には、管体ピース40を挿入する挿入用開口部31、32と、管体ピース40の接合部を外部に露出させる連結用開口部33〜35が形成される。管体ピース40は挿入用開口部31、32から挿入され、設置位置に移動される。隣り合う管体ピース40の端部は連結され、連結後には、挿入用開口部31、32と連結用開口部33〜35は閉塞部材により閉塞され、管体ピース40と既存管路との間の隙間に固化材が注入される。
【選択図】図7
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16