特許第6644405号(P6644405)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6644405未溶接箇所の検査方法および未溶接箇所の検査装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6644405
(24)【登録日】2020年1月10日
(45)【発行日】2020年2月12日
(54)【発明の名称】未溶接箇所の検査方法および未溶接箇所の検査装置
(51)【国際特許分類】
   B23K 31/00 20060101AFI20200130BHJP
   G01B 11/26 20060101ALI20200130BHJP
   B23K 33/00 20060101ALI20200130BHJP
【FI】
   B23K31/00 L
   G01B11/26 Z
   B23K33/00 Z
【請求項の数】3
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2015-177862(P2015-177862)
(22)【出願日】2015年9月9日
(65)【公開番号】特開2017-51982(P2017-51982A)
(43)【公開日】2017年3月16日
【審査請求日】2018年3月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000231350
【氏名又は名称】ジヤトコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】浜田 誠
(72)【発明者】
【氏名】塩川 厚志
【審査官】 柏原 郁昭
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−215839(JP,A)
【文献】 特開昭61−049774(JP,A)
【文献】 特開平08−150474(JP,A)
【文献】 特開2012−083151(JP,A)
【文献】 特開2008−212944(JP,A)
【文献】 特開2008−164482(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 31/00
B23K 33/00
B23K 9/095
B23K 9/127
G01B 11/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1端面に第1面取り部を有する第1部材と、
第2端面に第2面取り部を有する第2部材と、
前記第1端面と前記第2端面とを合わせたときに前記第1面取り部と前記第2面取り部との間に形成される溝部に、溶融金属が充填された溶接部と、を備え、
前記第1部材と前記第2部材と前記溶接部とから構成される被検査物より、溶接されていない未溶接箇所を検査する未溶接箇所の検査方法において、
溶接後の前記被検査物における前記溶接部の前記第1面取り部領域の形状と、溶接後の前記被検査物における前記溶接部の前記第2面取り部領域の形状と、を測定し、
測定した前記溶接部の前記第1面取り部領域の形状から第1角度を算出する際、溶接後の前記被検査物に前記第1面取り部の形状が残る場合には、溶接前の前記第1面取り部の角度を前記第1角度として算出し、溶接後の前記被検査物に前記第1面取り部の形状が残らない場合には、前記溶接部の最も盛り上がっている部分又は前記溶接部の最も凹んでいる部分と前記溶接部及び前記第1部材の平坦面の境目とを結んだ直線と、前記直線と交差する前記第1部材の平坦面と平行する平行線と、の間の角度を前記第1角度として算出し、
測定した前記溶接部の前記第2面取り部領域の形状から第2角度を算出する際、溶接後の前記被検査物に前記第2面取り部の形状が残る場合には、溶接前の前記第2面取り部の角度を前記第2角度として算出し、溶接後の前記被検査物に前記第2面取り部の形状が残らない場合には、前記溶接部の最も盛り上がっている部分又は前記溶接部の最も凹んでいる部分と前記溶接部及び前記第2部材の平坦面の境目とを結んだ直線と、前記直線と交差する前記第2部材の平坦面と平行する平行線と、の間の角度を前記第2角度として算出し、
前記第1角度と前記第2角度とに基づいて、前記被検査物の未溶接箇所の有無を判断し、
前記第1角度が溶接前の前記第1面取り部の角度である第1閾値以上、または、前記第2角度が溶接前の前記第2面取り部の角度である第2閾値以上のときに、前記溝部の両端部のうち少なくとも一方の端部が溶接されていない状態として未溶接箇所有りと判断する
ことを特徴とする未溶接箇所の検査方法。
【請求項2】
請求項1に記載された未溶接箇所の検査方法において、
前記溶接部の溶接部高さを測定し、
前記第1角度が前記第1閾値未満であり、かつ、前記第2角度が前記第2閾値未満である未溶接箇所無しと判断されたとき、前記溶接部高さが、第3閾値未満の場合または第4閾値よりも大きい場合には溶接欠陥有りと判断し、前記溶接部高さが、第3閾値以上かつ第4閾値以下である場合には、溶接欠陥無しと判断する
ことを特徴とする未溶接箇所の検査方法。
【請求項3】
第1端面に第1面取り部を有する第1部材と、第2端面に第2面取り部を有する第2部材と、前記第1端面と前記第2端面とを合わせたときに前記第1面取り部と前記第2面取り部との間に形成される溝部に、溶融金属が充填された溶接部と、から構成される被検査物と、
溶接後の前記被検査物における前記溶接部の前記第1面取り部領域の形状と、溶接後の前記被検査物における前記溶接部の前記第2面取り部領域の形状と、を測定する測定器と、
測定した前記溶接部の前記第1面取り部領域の形状から第1角度を算出し、測定した前記溶接部の前記第2面取り部領域の形状から第2角度を算出する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記第1角度を算出する際、溶接後の前記被検査物に前記第1面取り部の形状が残る場合には、溶接前の前記第1面取り部の角度を前記第1角度として算出し、溶接後の前記被検査物に前記第1面取り部の形状が残らない場合には、前記溶接部の最も盛り上がっている部分又は前記溶接部の最も凹んでいる部分と前記溶接部及び前記第1部材の平坦面の境目とを結んだ直線と、前記直線と交差する前記第1部材の平坦面と平行する平行線と、の間の角度を前記第1角度として算出し、
前記第2角度を算出する際、溶接後の前記被検査物に前記第2面取り部の形状が残る場合には、溶接前の前記第2面取り部の角度を前記第2角度として算出し、溶接後の前記被検査物に前記第2面取り部の形状が残らない場合には、前記溶接部の最も盛り上がっている部分又は前記溶接部の最も凹んでいる部分と前記溶接部及び前記第2部材の平坦面の境目とを結んだ直線と、前記直線と交差する前記第2部材の平坦面と平行する平行線と、の間の角度を前記第2角度として算出し、
前記第1角度と前記第2角度とに基づいて、前記被検査物の未溶接箇所の有無を判断し、
記第1角度が溶接前の前記第1面取り部の角度である第1閾値以上、または、前記第2角度が溶接前の前記第2面取り部の角度である第2閾値以上のときに、前記溝部の両端部のうち少なくとも一方の端部が溶接されていない状態として未溶接箇所有りと判断する
ことを特徴とする未溶接箇所の検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、未溶接箇所を検査する未溶接箇所の検査方法および検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、レーザー測定装置にて測定した溶接ビードの高さに基づいて、溶接の欠陥を検査する溶接部の検査方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-014026号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の検査方法にあっては、溶接部の溶接ビードの形状は、盛り上がっているものや、凹んでいるものや、平らなものなど色々な形状をしているため、未溶接箇所を誤判定するおそれがある、という問題がある。
【0005】
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、誤判定することなく未溶接箇所の有無を判断することができる未溶接箇所の検査方法および検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明は、第1端面に第1面取り部を有する第1部材と、第2端面に第2面取り部を有する第2部材と、第1端面と第2端面とを合わせたときに第1面取り部と第2面取り部との間に形成される溝部に、溶融金属が充填された溶接部と、を備えている。また、未溶接箇所の検査方法では、第1部材と第2部材と溶接部とから構成される被検査物より、溶接されていない未溶接箇所を検査する。この未溶接箇所の検査方法において、溶接後の被検査物における溶接部の第1面取り部領域の形状と、溶接後の被検査物における溶接部の第2面取り部領域の形状と、を測定する。測定した溶接部の第1面取り部領域の形状から第1角度を算出する際、溶接後の被検査物に第1面取り部の形状が残る場合には、溶接前の第1面取り部の角度を第1角度として算出し、溶接後の被検査物に第1面取り部の形状が残らない場合には、溶接部の最も盛り上がっている部分又は溶接部の最も凹んでいる部分と溶接部及び第1部材の平坦面の境目とを結んだ直線と、直線と交差する第1部材の平坦面と平行する平行線と、の間の角度を第1角度として算出する。測定した溶接部の第2面取り部領域の形状から第2角度を算出する際、溶接後の被検査物に第2面取り部の形状が残る場合には、溶接前の第2面取り部の角度を第2角度として算出し、溶接後の被検査物に第2面取り部の形状が残らない場合には、溶接部の最も盛り上がっている部分又は溶接部の最も凹んでいる部分と溶接部及び第2部材の平坦面の境目とを結んだ直線と、直線と交差する第2部材の平坦面と平行する平行線と、の間の角度を第2角度として算出する。そして、第1角度と第2角度とに基づいて、被検査物の未溶接箇所の有無を判断する。第1角度が溶接前の第1面取り部の角度である第1閾値以上、または、第2角度が溶接前の第2面取り部の角度である第2閾値以上のときに、溝部の両端部のうち少なくとも一方の端部が溶接されていない状態として未溶接箇所有りと判断する。
【発明の効果】
【0007】
よって、測定された第1角度と第2角度とに基づいて、被検査物の未溶接箇所の有無が判断される。
即ち、溶接されていない未溶接箇所には、溶接前の第1面取り部や第2面取り部の形状が残るため、第1角度と第2角度とに基づいて、未溶接箇所有りと判断される。また、溶接部には溶接前の第1面取り部や第2面取り部の形状が残らないため、溶接部が盛り上がった形状や凹んだ形状や平らな形状などの異なる形状であっても、第1角度と第2角度とに基づいて、未溶接箇所無しと判断される。
この結果、誤判定することなく未溶接箇所の有無を判断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施例1の未溶接箇所の検査方法及び検査装置が適用されたレーザー測定器による検査装置を示す全体概略図である。
図2】実施例1の被検査物の斜視図であって、レーザー測定器から被検査物に対しレーザー光を照射している図である。
図3】実施例1の被検査物の概略拡大断面図であって、図2のII−II線における概略断面図である。
図4】実施例1の被検査物を構成するギアとハブとを分離した状態を示す概略拡大断面図である。
図5】実施例1のV溝部に溶接ビードが形成される前の状態を示す概略拡大断面図である。
図6】実施例1のコントローラで実行される未溶接箇所判断処理の流れを示すフローチャートである。
図7】実施例1の溶接前のギア面取り部の角度Aと溶接前のハブ面取り部側の角度Bを説明する説明図である。
図8】実施例1のレーザー測定器で測定された被検査物の第1の位相データを示す概略拡大断面図である。
図9】実施例1のレーザー測定器で測定された被検査物の第2の位相データを示す概略拡大断面図である。
図10】実施例1のレーザー測定器で測定された被検査物の第3の位相データを示す概略拡大断面図である。
図11】実施例1のレーザー測定器で測定された被検査物の第4の位相データを示す概略拡大断面図である。
図12】実施例1のレーザー測定器で測定された被検査物の第5の位相データを示す概略拡大断面図である。
図13】実施例1のレーザー測定器で測定された被検査物の第6の位相データを示す概略拡大断面図である。
図14】実施例1のレーザー測定器で測定された被検査物の第7の位相データを示す概略拡大断面図である。
図15】実施例1のレーザー測定器で測定された被検査物の第8の位相データを示す概略拡大断面図である。
図16】他実施例のコントローラで実行される未溶接箇所判断処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の未溶接箇所の検査方法及び検査装置を実現する最良の形態を、図面に示す実施例1に基づいて説明する。
【実施例1】
【0010】
まず、構成を説明する。
実施例1における未溶接箇所の検査方法及び検査装置は、レーザー測定器による検査装置に適用したものである。以下、実施例1における未溶接箇所の検査装置の構成を、「全体構成」と、「未溶接箇所判断処理構成」とに分けて説明する。
【0011】
[全体構成]
図1は、実施例1の未溶接箇所の検査方法及び検査装置が適用されたレーザー測定器による検査装置の全体概略図を示し、図2は、被検査物の斜視図であって、レーザー測定器から被検査物に対してレーザー光が照射されている状態を示している。図3は、被検査物の概略拡大断面図を示し、図4は、被検査物を構成するギアとハブとを分離した状態を示している。図5は、V溝部に溶接ビードが形成される前の状態を示している。以下、全体構成を、図1図5に基づき説明する。
【0012】
検査装置1は、図1に示すように、転置台2と、被検査物3と、レーザー測定器4(測定器)と、コントローラ5(制御部)と、から構成されている。
【0013】
前記転置台2は、図1に示すように、被検査物3を載せるための台である。この転置台2は、コントローラ5と繋がっており、コントローラ5から入力される動作信号により、被検査物3を所定の速度で回転させることができる。なお、所定の速度とは、レーザー測定器4により被検査物3の形状を、所定の位相毎に測定できる速度である。また、この速度は、コントローラ5により調整できる。
【0014】
前記被検査物3は、図2図3に示すように、ギア31(第1部材)とハブ32(第2部材)と溶接部33から構成されている。
【0015】
前記ギア31は、図2に示すように、円筒形状である。このギア31は、図4に示すように、ギア31のギア外周側端面31a(第1端面)にギア面取り部31c(第1面取り部)を有している。このギア面取り部31cの面取り形状は、図4に示すように、例えば、ギア外周側端面31aとギア平坦面31bとを繋ぐ傾斜面形状になっている。
【0016】
前記ハブ32は、図2に示すように、円筒形状である。このハブ32は、図4に示すように、ハブ32のハブ内周側端面32a(第2端面)にハブ面取り部32c(第2面取り部)を有している。このハブ面取り部32cの面取り形状は、図4に示すように、例えば、ハブ内周側端面32aとハブ平坦面32bとを繋ぐ傾斜面形状になっている。
【0017】
前記溶接部33は、図3図5に示すように、ギア面取り部31cとハブ面取り部32cとの間に形成されるV溝部(溝部)34に、溶融金属33aが充填されることにより形成される。この溶融金属33aの溶融量は、V溝部34に収まる程度の量となっている。例えば、溶融金属33aの溶融量は、図3に示すように、ギア平坦面31b及びハブ平坦面32bの共通平坦面35よりも僅かに盛り上がっている。
ここで、「V溝部34」は、図2図5に示すように、ハブ32の内周側にギア31を嵌合させ、ギア外周側端面31aとハブ内周側端面32aとを合わせることにより、ギア面取り部31cとハブ面取り部32cとの間にV溝部(溝部)33が形成される。このとき、図5に示すように、ギア面取り部31cとハブ面取り部32cとは互いに向かい合う状態となる。なお、ギア外周側端面31aとハブ内周側端面32aとを合わせた面を、合せ面36という(図3図5等参照)。
【0018】
前記レーザー測定器4は、図2に示すようにレーザー光41を被検査物3へ照射し、その反射光を受光して、演算を行うことにより、被検査物3の形状を測定することができる(レーザー計測)。このレーザー測定器4は、コントローラ5と繋がっており、コントローラ5から入力される信号により、レーザー測定を開始/終了する。レーザー測定の結果は、レーザー測定器4からコントローラ5へ出力される。このレーザー測定器4は、二次元または三次元の形状が測定可能なものである。レーザー測定器4は、転置台2の回転によって、被検査物3の全周を測定する。
【0019】
前記コントローラ5は、転置台2を回転させるための信号を出力する。また、コントローラ5は、レーザー測定器4にレーザー測定を開始/終了させるための信号を出力する。また、コントローラ5には、レーザー測定器4から測定結果を入力する。
【0020】
[未溶接箇所判断処理構成]
図6は、実施例1のコントローラで実行される未溶接箇所判断処理構成の流れを示している(コントローラ5)。図7は、溶接前のギア面取り部の角度Aと、溶接前のハブ面取り部の角度Bと、を示している。図8は、レーザー測定器で測定された被検査物の第1の位相データを示し、図9は、レーザー測定器で測定された被検査物の第2の位相データを示している。
以下、図6図9に基づき、未溶接箇所判断処理構成をあらわす図6の各ステップについて説明する。なお、この処理は、レーザー測定器4で測定された被検査物3の全周データについて、所定の位相毎に繰り返しコントローラ5により実行される。
【0021】
ステップS1では、ギア面取り部31c側のギア側角度a(第1角度)が、閾値A(第1閾値)以上か否かを判断する。YES(ギア側角度a≧閾値A)の場合はステップS3へ進み、NO(ギア側角度a<閾値A)の場合はステップS2へ進む。
ここで、「閾値A」は、図7に示すように、溶接前のギア面取り部31cの角度Aに設定される。また、「ギア側角度a」は、レーザー測定器4により測定された被検査物3のギア面取り部31c側の角度である。この「ギア側角度a」は、V溝部34のギア面取り部31c側において、少なくとも一部が溶接されていない場合には、閾値Aと同一となる。これとは反対に、例えば、図8図9に示すように、V溝部34が溶接されている場合には、「ギア側角度a」を算出する。以下、図8図9により、「ギア側角度a」の算出方法を説明する。
【0022】
最初に、図8に示すように、ギア平坦面31b(共通平坦面35)よりも上方に溶接部33が盛り上がっている場合について説明する。まず、溶接部33が最も盛り上がっている部分P11と交差するように、ギア平坦面31bと平行する平行線L11を引く。次いで、部分P11と、ギア平坦面31bと溶接部33との境目である所定位置P12と、を直線L12で結ぶ。続いて、平行線L11と直線L12との間の角度a11を算出する。この角度a11(以下、「第1ギア側角度a11」という。)が、「ギア側角度a」に相当する。
【0023】
次に、図9に示すように、ギア平坦面31bよりも合せ面36側に溶接部33が凹んでいる場合について説明する。まず、溶接部33が最も凹んでいる部分P21と交差するように、ギア平坦面31bと平行する平行線L21を引く。次いで、部分P21と、ギア平坦面31bと溶接部33との境目である所定位置P22と、を直線L22で結ぶ。続いて、平行線L21と直線L22との間の角度a21を算出する。この角度a21(以下、「第2ギア側角度a21」という。)が、「ギア側角度a」に相当する。
【0024】
ステップS2では、ステップS1での「ギア側角度a<閾値A」との判断に続き、ハブ面取り部32c側のハブ側角度b(第2角度)が、閾値B(第2閾値)以上か否かを判断する。YES(ハブ側角度b≧閾値B)の場合はステップS3へ進み、NO(ギア側角度b<閾値B)の場合はステップS4へ進む。
ここで、「閾値B」は、図7に示すように、溶接前のハブ面取り部32c側の角度Bに設定される。また、「ハブ側角度b」は、レーザー測定器4により測定された被検査物3のハブ面取り部32c側の角度である。この「ハブ側角度b」は、V溝部34のハブ面取り部32c側において、少なくとも一部が溶接されていない場合には、閾値Bと同一である。これとは反対に、例えば、図8図9に示すように、V溝部34が溶接されている場合には、「ハブ側角度b」を算出する。以下、図8図9により、「ハブ側角度b」の算出方法を説明する。
【0025】
最初に、図8に示すように、ハブ平坦面32b(共通平坦面35)よりも上方に溶接部33が盛り上がっている場合について説明する。まず、溶接部33が最も盛り上がっている部分P11と交差するように、ハブ平坦面32bと平行する平行線L13を引く。次いで、部分P11と、ハブ平坦面32bと溶接部33との境目である所定位置P13と、を直線L14で結ぶ。続いて、平行線L13と直線L14との間の角度b11を算出する。この角度b11(以下、「第1ハブ側角度b11」という。)が、「ハブ側角度b」に相当する。
【0026】
次に、図9に示すように、ハブ平坦面32bよりも合せ面36側に溶接部33が凹んでいる場合について説明する。まず、溶接部33が最も凹んでいる部分P21と交差するように、ハブ平坦面32bと平行する平行線L23を引く。次いで、部分P21と、ハブ平坦面32bと溶接部33との境目である所定位置P23と、を直線L24で結ぶ。続いて、平行線L23と直線L24との間の角度b21を算出する。この角度b21(以下、「第2ハブ側角度b21」という。)が、「ハブ側角度b」に相当する。
【0027】
ステップS3では、ステップS1での「ギア側角度a≧閾値A」との判断、或いは、ステップS2での「ハブ側角度b≧閾値B」との判断に続き、V溝部34が溶接されていないとして、所定の位相データに「未溶接箇所有り」と判断し、エンドへ進む。
【0028】
ステップS4では、ステップS2での「ギア側角度b<閾値B」との判断に続き、V溝部34が溶接されているとして、所定の位相データに「未溶接箇所無し」と判断し、ステップS5へ進む。
【0029】
ステップS5では、ステップS4での「未溶接箇所無し」との判断に続き、溶接部高さhが、閾値C(第3閾値)未満か否かを判断する。YES(溶接部高さh<閾値C)の場合はステップS7へ進み、NO(溶接部高さh≧閾値C)の場合はステップS6へ進む。
ここで、「閾値C」は、図8図9に示すように、共通平坦面35から、溶接による接合強度が得られる高さ位置までが、閾値Cとして設定される。この「溶接による接合強度が得られる位置」とは、例えば、共通平坦面35よりも僅かに上の高さ位置に設定される。また、「溶接部高さh」は、レーザー測定器4により測定された溶接部33の溶接部高さhである。この「溶接部高さh」は、共通平坦面35から、溶接部33のうち最も盛り上がっている部分までの高さである。例えば、図8では、共通平坦面35から部分P11までの高さh11(以下、「第1溶接部高さh11」という。)が、溶接部高さhに相当する。なお、その第1溶接部高さh11は閾値C以上と判断される。また、図9では、溶接部33が共通平坦面35よりも合せ面36側にあるため、閾値C未満と判断される。
【0030】
ステップS6では、ステップS5での「溶接部高さh≧閾値C」との判断に続き、溶接部高さhが、閾値D(第4閾値)よりも大きいか否かを判断する。YES(溶接部高さh>閾値D)の場合はステップS7へ進み、NO(溶接部高さh≦閾値D)の場合はステップS8へ進む。
ここで、「閾値D」は、図8図9に示すように、共通平坦面35から、被検査物3を他の部品等に組み付ける等した場合に溶接部33がその他の部品等と干渉しない高さ位置までが、閾値Dとして設定される。また、「溶接部高さh」はステップS5で説明したとおりであり、図8の第1溶接部高さh11は閾値Dと同一と判断される。
【0031】
ステップS7では、ステップS5での「溶接部高さh<閾値C」との判断、或いは、ステップS6での「溶接部高さh>閾値D」との判断に続き、溶接に欠陥が有るとして、所定の位相データに「溶接欠陥有り(溶接不良)」と判断し、エンドへ進む。
【0032】
ステップS8では、ステップS6での「溶接部高さh≦閾値D」との判断に続き、溶接に欠陥が無いとして、所定の位相データに「溶接欠陥無し(溶接良)」と判断し、エンドへ進む。
【0033】
次に作用を説明する。
実施例1の未溶接箇所の検査装置における作用を、「未溶接箇所判断処理作用」と、「未溶接箇所判断作用」と、「未溶接箇所の検査方法の特徴作用」とに分けて説明する。
【0034】
[未溶接箇所判断処理作用]
実施例1の未溶接箇所判断処理作用を、図6に示すフローチャートに基づき説明する。
【0035】
レーザー測定器4により被検査物3の形状測定が開始され、レーザー測定器4の測定結果がコントローラ5へ入力されると、図6のフローチャートにおいて、「START」からステップS1へ進み、ステップS1では「ギア側角度a≧閾値A」に該当するか否かが判断される。ステップS1において「ギア側角度a≧閾値A」と判断されると、ステップS3へ進み所定の位相データに「未溶接箇所有り」と判断される。また、ステップS1において「ギア側角度a<閾値A」と判断されると、ステップS2へ進み、ステップS2では「ハブ側角度b≧閾値B」に該当するか否かが判断される。ステップS2において「ハブ側角度b≧閾値B」と判断されると、ステップS3へ進み所定の位相データに「未溶接箇所有り」と判断される。このように、「ギア側角度a≧閾値A」または「ハブ側角度b≧閾値B」と判断されると、所定の位相データに「未溶接箇所有り」と判断される処理が行われる(ステップS1→ステップS3→エンド、または、ステップS1→ステップS2→ステップS3→エンド)。
【0036】
そして、ステップS2において、「ギア側角度b<閾値B」と判断されると、ステップS4へ進み所定の位相データに「未溶接箇所無し」と判断される。このように、「ギア側角度a<閾値A」かつ「ギア側角度b<閾値B」と判断されると、所定の位相データに「未溶接箇所無し」と判断される処理が行われる(ステップS1→ステップS2→ステップS4)。
【0037】
その後、図6のステップS4からステップS5へ進み、ステップS5では「溶接部高さh<閾値C」に該当するか否かが判断される。ステップS5において「溶接部高さh<閾値C」と判断されると、ステップS7へ進み所定の位相データに「溶接欠陥有り」と判断される。また、ステップS5において「溶接部高さh≧閾値C」と判断されると、ステップS6へ進み「溶接部高さh>閾値D」に該当するか否かが判断される。ステップS6において「溶接部高さh>閾値D」と判断されると、ステップS7へ進み所定の位相データに「溶接欠陥有り」と判断される。このように、「溶接部高さh<閾値C」または「閾値D<溶接部高さh」と判断されると、所定の位相データに「溶接欠陥有り」と判断される処理が行われる(ステップS1→ステップS2→ステップS4→ステップS5→ステップS7→エンド、または、ステップS1→ステップS2→ステップS4→ステップS5→ステップS6→ステップS7→エンド)。
【0038】
そして、ステップS6において「溶接部高さh≦閾値D」と判断されると、ステップS8へ進み所定の位相データに「溶接欠陥無し」と判断される。このように、「閾値C≦溶接部高さh≦閾値D」と判断されると、所定の位相データに「溶接欠陥無し」と判断される処理が行われる(ステップS1→ステップS2→ステップS4→ステップS5→ステップS6→ステップS8→エンド)。
【0039】
[未溶接箇所判断作用]
図8図15は、レーザー測定器で測定された被検査物の各位相データを示している。以下、実施例1の未溶接箇所判断作用を、図7図15に基づきに基づき説明する。
【0040】
まず、被検査物3に「未溶接箇所有り」と判断される場合について、図7図10図12に基づき説明する。
【0041】
被検査物3が、溶接後においても、図7に示すように、溶接前と変わらない状態では、ギア側角度aが閾値Aと同一と判断され、ハブ側角度bが閾値Bと同一と判断される。このため、図7では、所定の位相に「未溶接箇所有り」と判断される。
【0042】
図10図12に示すように、V溝部34の少なくとも一部が溶接されていない状態では、第3〜第5の位相データに「未溶接箇所有り」と判断される。以下、各図について、説明する。
【0043】
次に、図10に示すように、V溝部34のハブ面取り部32c側は溶接されているが、V溝部34のギア面取り部31c側が溶接されていない状態では、ギア側角度aが閾値Aと同一と判断されるため、第3の位相データに「未溶接箇所有り」と判断される。
【0044】
まず、図11に示すように、V溝部34のギア面取り部31c側は溶接されているが、V溝部34のハブ面取り部32c側が溶接されていない状態では、ハブ側角度bが閾値Bと同一と判断されるため、第4の位相データに「未溶接箇所有り」と判断される。
【0045】
続いて、図12に示すように、V溝部34の中央部が溶接されているが、V溝部34の両端部が溶接されていない状態では、図7と同様に、ギア側角度aが閾値Aと同一と判断され、ハブ側角度bが閾値Bと同一と判断される。このため、図12では、第5の位相データに「未溶接箇所有り」と判断される。
【0046】
次に、被検査物3に「未溶接箇所無し」と判断されるが、「溶接欠陥有り」と判断される場合について、図9図13図14に基づき説明する。
【0047】
図9に示すように、V溝部34が溶接され、溶接部33が共通平坦面35よりも合せ面36側にある。この状態では、第2ギア側角度a21が閾値A未満と判断され、第2ハブ側角度b21が閾値B未満と判断されるため、第2の位相データに「未溶接箇所無し」と判断される。そして、上述したとおり、図9では、溶接部33が、共通平坦面35よりも合せ面36側にある。この状態では、溶接部高さhが閾値C未満と判断されるため、第2の位相データに「溶接欠陥有り」と判断される。即ち、図9では、第2の位相データにおいて、溶接による接合強度が不足している(溶接不足)と判断される。
【0048】
図13に示すように、V溝部34が溶接され、溶接部33の上面33bが共通平坦面35と面一の状態にある。この状態では、ギア側角度aもハブ側角度bも「ゼロ度」であるので、ギア側角度aが閾値A未満と判断され、ハブ側角度bが閾値B未満と判断されるため、第6の位相データに「未溶接箇所無し」と判断される。そして、上述したとおり、図13では、溶接部33が共通平坦面35と面一の状態にある。この状態では、溶接部高さhが閾値C未満と判断されるため、第6の位相データに「溶接欠陥有り」と判断される。即ち、図13では、図9と同様に、第6の位相データにおいて、溶接による接合強度が不足している(溶接不足)と判断される。
【0049】
図14に示すように、V溝部34が溶接され、溶接部33が共通平坦面35よりも盛り上がっている状態にある。この状態では、ギア側角度aが閾値A未満と判断され、ハブ側角度bが閾値B未満と判断されるため、第7の位相データに「未溶接箇所無し」と判断される。そして、溶接部高さhが、図14に示すように、閾値Dを超えている状態では、溶接部高さhが閾値Dよりも大きいと判断されるため、第7の位相データに「溶接欠陥有り」と判断される。即ち、図14では、被検査物3を他の部品等に組み付ける等した場合に、溶接部33がその他の部品等と干渉する高さ位置になっている(溶接過剰)と判断される。
なお、「ギア側角度a」と「ハブ側角度b」の算出方法と「溶接部高さh」の求め方については、図6のステップS1〜ステップS2とステップS5において説明したので、図8と同一符号を付し、詳細な説明は省略する。また、図14では、図8の第1ギア側角度a11をギア側角度aと示し、第1ハブ側角度b11をハブ側角度bと示し、第1溶接部高さh11を溶接部高さhと示した。
【0050】
次に、被検査物3に「未溶接箇所無し」と判断され、「溶接欠陥無し」と判断される場合について、図8図15に基づき説明する。
【0051】
図8に示すように、V溝部34が溶接され、溶接部33が共通平坦面35よりも盛り上がっている状態にある。この状態では、第1ギア側角度a11が閾値A未満と判断され、第1ハブ側角度b11が閾値B未満と判断されるため、第1の位相データに「未溶接箇所無し」と判断される。そして、第1溶接部高さh11が、図8に示すように、閾値Dと同一にある状態では、第1溶接部高さh11が閾値Dと同一と判断されるため、第1位相データに「溶接欠陥無し」と判断される。即ち、図8では、第1の位相データにおいて溶接による接合強度を充足し、被検査物3を他の部品等に組み付ける等した場合に溶接部33がその他の部品等と干渉しない高さ位置になっている、と判断される。
【0052】
図15に示すように、V溝部34が溶接され、溶接部33が共通平坦面35よりも盛り上がっている状態にある。この状態では、ギア側角度aが閾値A未満と判断され、ハブ側角度bが閾値B未満と判断されるため、第8の位相データに「未溶接箇所無し」と判断される。そして、溶接部高さhが、図15に示すように、閾値Cと同一にある状態では、溶接部高さhが閾値Cと同一と判断されるため、第8位相データに「溶接欠陥無し」と判断される。即ち、図15でも、図8と同様に、第8の位相データにおいて溶接による接合強度を充足し、被検査物3を他の部品等に組み付ける等した場合に溶接部33がその他の部品等と干渉しない高さ位置になっている、と判断される。
なお、「ギア側角度a」と「ハブ側角度b」の算出方法と「溶接部高さh」の求め方については、図6のステップS1〜ステップS2とステップS5において説明したので、図8と同一符号を付し、詳細な説明は省略する。また、図15では、図8の第1ギア側角度a11をギア側角度aと示し、第1ハブ側角度b11をハブ側角度bと示し、第1溶接部高さh11を溶接部高さhと示した。
【0053】
[未溶接箇所の検査方法の特徴作用]
例えば、溶接部の検査方法として、レーザー測定装置にて測定した溶接ビードの高さに基づいて、溶接の欠陥が検査される。
【0054】
しかし、溶接部の溶接ビードの形状は、盛り上がっているものや、凹んでいるものや、平らなものなど色々な形状をしているため、未溶接箇所を誤判定するおそれがある。
【0055】
これに対し、実施例1では、測定されたギア側角度aとハブ側角度bとに基づいて、被検査物3の未溶接箇所の有無が判断されるようにした(図6のステップS3〜ステップS4)。
即ち、溶接されていない未溶接箇所には、溶接前のギア面取り部31cやハブ面取り部32cの形状が残るため、ギア側角度aとハブ側角度bとに基づいて、未溶接箇所有りと判断される(図6のステップS3)。また、溶接部33には溶接前のギア面取り部31cやハブ面取り部32cの形状が残らないため、溶接部33が盛り上がった形状や凹んだ形状や平らな形状などの異なる形状であっても、ギア側角度aとハブ側角度bとに基づいて、未溶接箇所無しと判断される(図6のステップS4)。
この結果、誤判定することなく未溶接箇所の有無が判断される(図6のステップS3〜ステップS4)。
【0056】
実施例1では、ギア側角度aが閾値A以上、または、ハブ側角度bが閾値B以上のときに、未溶接箇所有りと判断されるようにした(図6のステップS3)。
即ち、ギア側角度aが閾値A以上、または、ハブ側角度bが閾値B以上のときに、未溶接箇所有りと判断される(図6のステップS3)。また、ギア側角度aが閾値A未満、かつ、ハブ側角度bが閾値B未満のときに、未溶接箇所無しと判断される(図6のステップS4)。
従って、精度よく未溶接箇所の有無が判断される。
【0057】
実施例1では、閾値Aは溶接前のギア面取り部31cの角度Aであり、閾値Bは溶接前のハブ面取り部32cの角度Bであるようにした(図6のステップS1〜ステップS2と図7)。
即ち、ギア側角度aが溶接前のギア面取り部31cの角度A以上のとき、または、ハブ側角度bが溶接前のハブ面取り部32cの角度B以上のとき、未溶接箇所有りと判断される(図6のステップS3)。また、ギア側角度aが溶接前のギア面取り部31cの角度A未満、かつ、ハブ側角度bが溶接前のハブ面取り部32cの角度B未満のときに、未溶接箇所無しと判断される(図6のステップS4)。
従って、溶接前のギア面取り部31cとハブ面取り部32cのそれぞれの角度A,Bに基づいて未溶接箇所の有無が判断されるので、それぞれの閾値A,Bを決定するために行われる実験等の工数が低減される。
【0058】
実施例1では、ギア側角度aとハブ側角度bに基づいて未溶接箇所無しと判断されたとき(図6のステップS4)、溶接部高さhが、閾値C未満の場合または閾値Dよりも大きい場合には溶接欠陥有りと判断され(図6のステップS7)、溶接部高さhが、閾値C以上かつ閾値D以下である場合には、溶接欠陥無しと判断される(図6のステップS8)ようにした。
即ち、未溶接箇所無しと判断されたとき(図6のステップS4)、溶接部高さhが閾値C未満の場合には溶接不足と判断され、溶接部高さhが閾値Dよりも大きい場合には溶接過剰と判断され、いずれの場合も溶接欠陥有りと判断される(図6のステップS7)。また、未溶接箇所無しと判断されたとき(図6のステップS4)、溶接部高さhが、閾値C以上かつ閾値D以下である場合には、溶接欠陥無しと判断される(図6のステップS8)。
従って、未溶接箇所の有無の判断に加え(図6のステップS3〜ステップS4)、溶接欠陥の有無についても判断される(図6のステップS7〜ステップS8)。
【0059】
次に、効果を説明する。
実施例1の未溶接箇所の検査方法および検査装置にあっては、下記に列挙する効果が得られる。
【0060】
(1) 第1端面(ギア外周側端面31a)に第1面取り部(ギア面取り部31c)を有する第1部材(ギア31)と、
第2端面(ハブ内周側端面32a)に第2面取り部(ハブ面取り部32c)を有する第2部材(ハブ32)と、
第1端面(ギア外周側端面31a)と第2端面(ハブ内周側端面32a)とを合わせたときに第1面取り部(ギア面取り部31c)と第2面取り部(ハブ面取り部32c)との間に形成される溝部(V溝部34)に、溶融金属33aが充填された溶接部33と、を備え、
第1部材(ギア31)と第2部材(ハブ32)と溶接部33とから構成される被検査物3より、溶接されていない未溶接箇所を検査する未溶接箇所の検査方法において、
被検査物3の第1面取り部(ギア面取り部31c)側の第1角度(ギア側角度a)と、被検査物3の第2面取り部(ハブ面取り部32c)側の第2角度(ハブ側角度b)と、を測定し、
第1角度(ギア側角度a)と第2角度(ハブ側角度b)とに基づいて、被検査物3の未溶接箇所の有無を判断する(図6)。
このため、誤判定することなく未溶接箇所の有無を判断する未溶接箇所の検査方法を提供することができる。
【0061】
(2) 第1角度(ギア側角度a)が第1閾値(閾値A)以上、または、第2角度(ハブ側角度b)が第2閾値(閾値B)以上のときに、未溶接箇所有りと判断する(図6)。
このため、(1)の効果に加え、精度よく未溶接箇所の有無を判断することができる。
【0062】
(3) 第1閾値(閾値A)は溶接前の第1面取り部(ギア面取り部31c)の角度Aであり、第2閾値(閾値B)は溶接前の第2面取り部(ハブ面取り部32c)側の角度Bである(図6図7)。
このため、(2)の効果に加え、溶接前の第1面取り部(ギア面取り部31c)と第2面取り部(ハブ面取り部32c)のそれぞれの角度A,Bに基づいて未溶接箇所の有無が判断されるので、それぞれの閾値A,Bを決定するために行われる実験等の工数を低減することができる。
【0063】
(4) 溶接部33の溶接部高さhを測定し、
第1角度(ギア側角度a)と第2角度(ハブ側角度b)に基づいて未溶接箇所無しと判断されたとき、溶接部高さhが、第3閾値(閾値C)未満の場合または第4閾値(閾値D)よりも大きい場合には溶接欠陥有りと判断し、溶接部高さhが、第3閾値(閾値C)以上かつ第4閾値(閾値D)以下である場合には、溶接欠陥無しと判断する(図6)。
このため、(1)〜(3)の効果に加え、未溶接箇所の有無の判断に加え、溶接欠陥の有無についても判断することができる。
【0064】
(5) 第1端面(ギア外周側端面31a)に第1面取り部(ギア面取り部31c)を有する第1部材(ギア31)と、第2端面(ハブ内周側端面32a)に第2面取り部(ハブ面取り部32c)を有する第2部材(ハブ32)と、第1端面(ギア外周側端面31a)と第2端面(ハブ内周側端面32a)とを合わせたときに第1面取り部(ギア面取り部31c)と第2面取り部(ハブ面取り部32c)との間に形成される溝部(V溝部34)に、溶融金属33aが充填された溶接部33と、から構成される被検査物3と、
被検査物3の第1面取り部(ギア面取り部31c)側の第1角度(ギア側角度a)と、被検査物3の第2面取り部(ハブ面取り部32c)側の第2角度(ハブ側角度b)と、を測定する測定器(レーザー測定器4)と、
第1角度(ギア側角度a)と第2角度(ハブ側角度b)とに基づいて、被検査物3の未溶接箇所の有無を判断する制御部(コントローラ5)と、
を備える(図1図6)。
このため、誤判定することなく未溶接箇所の有無を判断する未溶接箇所の検査装置を提供することができる。
【0065】
以上、本発明の未溶接箇所の検査方法および検査装置を実施例1に基づき説明してきたが、具体的な構成については、この実施例1に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【0066】
実施例1では、コントローラで実行される未溶接箇所判断処理構成の流れを図6とする例を示した。しかし、コントローラで実行される未溶接箇所判断処理構成の流れとして、図16に示すフローチャートにより未溶接箇所の有無のみを判断しても良い。なお、図16のステップS11〜ステップS14の各ステップは、図6のステップS1〜ステップS4の各ステップと同様の処理を行うステップであるため、説明を省略する。
【0067】
実施例1では、閾値Aを、溶接前のギア面取り部31cの角度Aに設定する例を示し、閾値Bを、溶接前のハブ面取り部32c側の角度Bに設定する例を示した。しかし、閾値A,Bの角度については、これに限られない。例えば、閾値Aを角度Aよりも小さくしても良いし、閾値Bを角度Bよりも小さくしても良い。要するに、未溶接箇所の有無を判断することができる閾値A,Bに設定されていれば良い。
【0068】
実施例1では、ステップS1において「ギア側角度a」の算出方法例を示し、ステップS2において「ハブ側角度b」の算出方法例を示した。しかし、「ギア側角度a」と「ハブ側角度b」の算出方法は、これに限られない。例えば、図8において、ギア平坦面31b(共通平坦面35)と直線L12との間の角度を「ギア側角度a」として算出し、ハブ平坦面32b(共通平坦面35)と直線L14との間の角度を「ハブ側角度b」として算出する方法であっても良い。また、図9において、ギア平坦面31b(共通平坦面35)と直線L22との間の角度を「ギア側角度a」として算出し、ハブ平坦面32b(共通平坦面35)と直線L24との間の角度を「ハブ側角度b」として算出する方法であっても良い。
【0069】
実施例1では、閾値Cを、図8等に示すように、共通平坦面35から、共通平坦面35よりも僅かに上の高さ位置に設定する例を示した。例えば、「共通平坦面35から」ではなく、「V溝部34の底から」としても良い。要するに、閾値Cは、溶接による接合強度が得られる値に設定されていれば良い。
【0070】
実施例1では、閾値Dを、図8等に示す位置に設定する例を示した。しかし、閾値Dは、これに限られない。要するに、閾値Dは、被検査物3を他の部品等に組み付ける等した場合に溶接部33がその他の部品等と干渉しない値に設定されていれば良い。
【0071】
実施例1では、ステップS5とステップS6において「溶接部高さh」を、共通平坦面35から、溶接部33のうち最も盛り上がっている部分までの高さとする例を示した。しかし、「溶接部高さh」は、これに限られない。例えば、「溶接部高さh」は、V溝部34の底から、溶接部33のうち最も盛り上がっている部分までの高さとしても良い。
【0072】
実施例1では、所定の位相データにおけるギア側角度aやハブ側角度bや溶接部高さhと閾値A〜Dをそれぞれ比較して、未溶接箇所の有無および溶接欠陥の有無を判断する例を示した。しかし、閾値A〜Dを用いず、所定の位相データにおけるギア側角度aやハブ側角度bから、未溶接箇所の有無の有無を判断しても良い。また、閾値A〜Dを用いず、所定の位相データにおけるギア側角度aやハブ側角度bや溶接部高さhから、未溶接箇所の有無および溶接欠陥の有無を判断しても良い。
【0073】
実施例1では、ギア面取り部31cとハブ面取り部32cを傾斜面形状とする例を示した。しかし、傾斜面形状に限られず、ギア面取り部31cとハブ面取り部32cを曲面形状等としても良い。
【0074】
実施例1では、溝部をV溝部34とする例を示した。しかし、V溝部34に限られず、溝部をU溝部や矩形溝部等としても良い。
【0075】
実施例1では、本発明の未溶接箇所の検査方法及び検査装置を、レーザー測定器による検査装置に適用する例を示した。しかし、実施例1に示したレーザー測定器4による検査装置に限られない。要するに、被検査物3の形状を測定することができる測定器による検査装置であれば、本発明の未溶接箇所の検査方法及び検査装置を適用することができる。
【符号の説明】
【0076】
1 検査装置
2 転置台
3 被検査物
31 ギア(第1部材)
31a ギア外周側端面(第1端面)
31b ギア平坦面
31c ギア面取り部(第1面取り部)
32 ハブ(第2部材)
32a ハブ内周側端面(第2端面)
32b ハブ平坦面
32c ハブ面取り部(第2面取り部)
33 溶接部
33a 溶融金属
34 V溝部(溝部)
4 レーザー測定器(測定器)
5 コントローラ(制御部)
a ギア側角度(第1角度)
b ハブ側角度(第2角度)
h 溶接部の高さ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16