(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に本発明の好ましい形態について具体的に説明するが、本発明は以下の記載のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において適宜変更して適用することができる。なお、以下に記載される本発明の個々の好ましい形態を2又は3以上組み合わせた形態も、本発明の好ましい形態に該当する。
【0014】
〔アルカリ可溶性樹脂〕
アルカリ可溶性樹脂は、アルカリ可溶性を示す樹脂(重合体)であり、分子内に酸基を有する。酸基としては、例えば、カルボキシル基、フェノール性水酸基、カルボン酸無水物基、リン酸基、スルホン酸基等、アルカリ水と中和反応する官能基が挙げられ、これらの1種のみを有していてもよいし、2種以上有していてもよい。中でも、カルボキシル基やカルボン酸無水物基が好ましく、カルボキシル基がより好ましい。
なお、アルカリ可溶性樹脂は、後述する感光性樹脂組成物中でバインダー樹脂として作用し得る。
【0015】
上記アルカリ可溶性樹脂の酸価(AV)は、例えば、20mgKOH/g以上であることが好ましい。これにより、充分なアルカリ可溶性が発現され、現像性(現像速度)により優れる硬化物を与えることが可能になる。より好ましくは50mgKOH/g以上である。本発明のアルカリ可溶性樹脂は、高酸価であっても低粘度化を達成することができる。また、酸価の上限は特に限定されないが、例えば、硬化性や硬化物の耐水性向上の観点からは、300mgKOH/g以下であることが好ましい。より好ましくは250mgKOH/g以下、更に好ましくは200mgKOH/g以下、特に好ましくは180mgKOH/g以下である。
本明細書中、重合体の酸価は、後述する実施例に記載の方法により求めることができる。
【0016】
上記アルカリ可溶性樹脂の重量平均分子量(Mw)は、例えば、5000以上であることが好ましい。これにより、耐熱性や機械的強度により優れる硬化物を与えることができる。より好ましくは8000以上である。このように高分子量であると、色材分散性がより良好になる他、アルカリ可溶性樹脂の劣化が充分に抑制されて信頼性が向上するために非常に好適である。通常は、このように高分子量であると粘度が高くなるが、本発明のアルカリ可溶性樹脂は、高分子量であっても低粘度化を達成することができるため、工業的に非常に有利である。Mwの上限は特に限定されないが、低粘度化をより達成して現像性をより高める観点から、例えば、30万以下が好ましく、より好ましくは25万以下、更に好ましくは10万以下、特に好ましくは5万以下である。
本明細書中、重量平均分子量は、後述する実施例に記載の方法により測定することができる。
【0017】
上記アルカリ可溶性樹脂のガラス転移温度(Tg)は、50℃以上である。これにより、現像性が際立って高いものとなり、現像時にパターンの欠けや剥がれ、残渣の発生が充分に抑制される。Tgは、好ましくは60℃以上、より好ましくは70℃以上である。また、Tgの上限は特に限定されないが、例えば、現像性や、柔軟性、基材との密着性等を向上させる観点から、200℃以下であることが好ましい。より好ましくは150℃以下、更に好ましくは130℃以下である。これにより、現像性が著しく良好なものとなる。
【0018】
本明細書中、Tgは、以下の計算式により算出することができる。
【0020】
式中、Tgは、重合体のTg(絶対温度)である。W
1’、W
2’、・・・Wn’は、重合体を生成するのに使用した全単量体成分に対する各単量体の質量分率である。T
1、T
2、・・・Tnは、各単量体成分からなるホモポリマー(単独重合体)のガラス転移温度(絶対温度)である。
【0021】
上記アルカリ可溶性樹脂は、主鎖に環構造を有する。主鎖に環構造を有することで、耐熱性や表面硬度、密着性に優れ、また、例えば高温暴露後の経時変化が抑制されて各種物性を安定して発現できる硬化物を与えることができる。なお、最近の表示装置では、各種部材に外部からの衝撃に耐えうる強度をもたせるため、基板に強化ガラスを使用することがあるが、アルカリ可溶性樹脂として主鎖に環構造を有する重合体を用いると、高温暴露後においても強化ガラスに対して優れた密着性を発揮できる硬化物が得られるため、非常に有用である。
【0022】
上記アルカリ可溶性樹脂はまた、エステル基に炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基を有する(メタ)アクリレート(a)に由来する構成単位(A)を有し、該構成単位(A)は、エステル基に炭素数2〜5の脂肪族炭化水素基を有する(メタ)アクリレート(a1)由来の構成単位(A1)を含む。このような(メタ)アクリレート(a1)由来の構成単位(A1)を必須とすることで、現像性に極めて優れる硬化物が得られる他、アルカリ可溶性樹脂が高分子量である場合にも低粘度化を達成できる。
【0023】
上記(メタ)アクリレート(a1)が有する炭素数2〜5の脂肪族炭化水素基は、水酸基を含まない。言い替えれば、上記(メタ)アクリレート(a1)は、エステル基に、水酸基非含有の炭素数2〜5の脂肪族炭化水素基を有する(メタ)アクリレートである。水酸基を含まないことにより、アルカリ可溶性樹脂の親水性が低下して現像時の密着性がより一層向上される。また、後述するように重合溶媒としてグリコールモノエーテルのエステル類を使用してアルカリ可溶性樹脂を得る場合に、重合反応がより容易になるため、アルカリ可溶性樹脂をより容易に得ることが可能になる。
【0024】
ここで、上記「水酸基を含まない」及び「水酸基非含有」は、(メタ)アクリレート(a1)がエステル基に有する炭素数2〜5の脂肪族炭化水素基が、置換基として、実質的に水酸基を含まないことを意味するが、本発明の効果を損なわない範囲で水酸基を微量含んでいてもよい。例えば、本発明のアルカリ可溶性樹脂が有する構成単位(A1)の総量100モル%に対し、置換基として存在する水酸基の含有量が0〜10モル%であることが好ましい。より好ましくは0〜5モル%、更に好ましくは0〜1モル%である。
【0025】
上記アルカリ可溶性樹脂が有する構成単位(A)の総量100質量%中、構成単位(A1)が占める割合は、50質量%以上であることが好ましい。より好ましくは60質量%以上、更に好ましくは80質量%以上、特に好ましくは100質量%、すなわち構成単位(A)として構成単位(A1)のみを有する形態である。だが、構成単位(A1)と、エステル基に炭素数1の脂肪族炭化水素基を有する(メタ)アクリレート(すなわちメチル(メタ)アクリレート)に由来する構成単位とを併せ持った形態も好適である。この場合、構成単位(A1)とメチル(メタ)アクリレート由来構成単位との質量比は、50〜99/1〜50であることが好ましく、より好ましくは60〜99/1〜40、更に好ましくは80〜99/1〜20である。
なお、1分子内に構成単位(A1)を2個以上有する場合、当該構成単位(A1)は同一のものであってもよいし、異なるものであってもよい。構成単位(A)、(A1)を与える(メタ)アクリレート(a)、(a1)の好ましい形態は後述するとおりである。
【0026】
本発明のアルカリ可溶性樹脂は、例えば、酸基を有する単量体と、重合体の主鎖骨格に環構造を導入し得る単量体と、上記(メタ)アクリレート(a)とを含む単量体成分を重合することによって製造することができるが、当該重合により得られる重合体(ベースポリマーとも称す)の側鎖に重合性二重結合を導入することによって製造することも好ましい。後者の製法により得られる側鎖二重結合含有重合体も、本発明のアルカリ可溶性樹脂に包含するものとする。これらの中でも、感光性や硬化性、耐熱分解性等の観点から、上記アルカリ可溶性樹脂は、側鎖二重結合含有重合体であることが好ましい。原料の単量体はそれぞれ1種又は2種以上を使用することができ、ベースポリマーを形成する単量体成分(モノマー組成物とも称す)を「ベースポリマー成分」とも称する。
以下に、アルカリ可溶性樹脂の原料成分や重合方法について更に説明する。
【0027】
−原料成分(単量体等)−
(i)酸基を有する単量体
酸基を有する単量体とは、分子内に酸基と重合性二重結合とを有する化合物である。例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、ケイ皮酸、ビニル安息香酸等の不飽和モノカルボン酸類;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸等の不飽和多価カルボン酸類;コハク酸モノ(2−アクリロイルオキシエチル)、コハク酸モノ(2−メタクリロイルオキシエチル)等の不飽和基とカルボキシル基との間が鎖延長されている不飽和モノカルボン酸類;無水マレイン酸、無水イタコン酸等の不飽和酸無水物類;ライトエステルP−1M(共栄社化学製)等のリン酸基含有不飽和化合物;等が挙げられる。これらの中でも、汎用性、入手性等の観点から、カルボン酸系単量体(不飽和モノカルボン酸類、不飽和多価カルボン酸類、不飽和酸無水物類)を用いることが好適である。より好ましくは、反応性、アルカリ可溶性等の点で、不飽和モノカルボン酸類であり、更に好ましくは(メタ)アクリル酸(すなわちアクリル酸及び/又はメタクリル酸)であり、特に好ましくはメタクリル酸である。
【0028】
上記酸基を有する単量体の配合割合は、例えば、ベースポリマー成分の総量100質量%に対し、5質量%以上であることが好ましい。これにより、アルカリに対する溶解性がより充分となり、現像性が必要とされる用途に更に有用な樹脂組成物となる。また、高温暴露後においても硬化物の優れた外観や密着性等をより維持できる点で、60質量%以下であることが好ましい。より好ましくは10〜50質量%である。
【0029】
(ii)重合体の主鎖骨格に環構造を導入し得る単量体
重合体の主鎖骨格に環構造を導入し得る単量体としては、例えば、分子内に二重結合含有環構造を有する単量体や、環化重合して環構造を主鎖に有する重合体を形成する単量体等が挙げられる。このような単量体としては、N置換マレイミド系単量体、アクリル系エーテルダイマー、及び、α−(不飽和アルコキシアルキル)アクリレート系単量体からなる群より選択される少なくとも1種が好適である。この場合、上記アルカリ可溶性樹脂は、N置換マレイミド系単量体単位、アクリル系エーテルダイマー単位、及び/又は、α−(不飽和アルコキシアルキル)アクリレート系単量体単位を有する重合体となる。
【0030】
特にN置換マレイミド系単量体単位、及び/又は、アクリル系エーテルダイマー単位を含む樹脂(重合体)は、耐熱性や分散性(例えば色材分散性等)、硬度等がより向上された硬化膜を与えることが可能になる。また、α−(不飽和アルコキシアルキル)アクリレート系単量体単位を含む樹脂は、密着性、硬化性、乾燥再溶解性等の製版性に寄与する性能や、色材分散性、耐熱性、透明性等がより向上された硬化膜を与えることが可能になる。
上述の単量体単位を含む樹脂(重合体)とは、例えば、単量体の重合反応や架橋反応によって当該単量体由来の構成単位を含む樹脂を意味する。
【0031】
(ii−1)N置換マレイミド系単量体
N置換マレイミド系単量体としては、例えば、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−イソプロピルマレイミド、N−t−ブチルマレイミド、N−ドデシルマレイミド、N−ベンジルマレイミド、N−ナフチルマレイミド、p−メチルベンジルマレイミド、p−ブチルベンジルマレイミド、p−ヒドロキシベンジルマレイミド、o−クロロベンジルマレイミド、o−ジクロロベンジルマレイミド、p−ジクロロベンジルマレイミド等が挙げられ、中でも、透明性の観点から、N−フェニルマレイミド、N−ベンジルマレイミドが好ましく、特にN−ベンジルマレイミドが好適である。N−ベンジルマレイミドとしては、例えば、ベンジルマレイミド;p−メチルベンジルマレイミド、p−ブチルベンジルマレイミド等のアルキル置換ベンジルマレイミド;p−ヒドロキシベンジルマレイミド等のフェノール性水酸基置換ベンジルマレイミド;o−クロロベンジルマレイミド、o−ジクロロベンジルマレイミド、p−ジクロロベンジルマレイミド等のハロゲン置換ベンジルマレイミド;等が挙げられる。
【0032】
(ii−2)アクリル系エーテルダイマー
アクリル系エーテルダイマーとしては、例えば、例えば、下記一般式(1):
【0034】
(式中、R
1及びR
2は、同一又は異なって、水素原子、又は、置換基を有していてもよい炭素数1〜25の有機基を表す。)で表される化合物が好適である。
【0035】
上記一般式(1)中、R
1及びR
2が表し得る炭素数1〜25の有機基としては、置換基を有していてもよい、炭素数1〜25の炭化水素基であることが好適である。例えば、特開2013−061599号公報〔0037〕に例示された、直鎖状又は分岐状のアルキル基;アリール基;脂環式基;アルコキシで置換されたアルキル基;アリール基で置換されたアルキル基;等が挙げられる。中でも、メチル、エチル、シクロヘキシル、ベンジル等のような、酸や熱で脱離しにくい1級又は2級炭素の炭化水素基が耐熱性の点で好ましい。
なお、R
1及びR
2は、同種の有機基であってもよいし、異なる有機基であってもよい。
【0036】
上記アクリル系エーテルダイマーの中でも、ジアルキル−2,2’−(オキシジメチレン)ジアクリレート系単量体が好適である。具体的には、例えば、ジメチル−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジエチル−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(n−プロピル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(イソプロピル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(n−ブチル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(イソブチル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(t−ブチル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(t−アミル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(ステアリル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(ラウリル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(2−エチルヘキシル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(1−メトキシエチル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(1−エトキシエチル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジベンジル−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジフェニル−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジシクロヘキシル−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(t−ブチルシクロヘキシル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(ジシクロペンタジエニル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(トリシクロデカニル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(イソボルニル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジアダマンチル−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(2−メチル−2−アダマンチル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート等が挙げられる。
【0037】
これらの中でも、ジメチル−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジエチル−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジシクロヘキシル−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジベンジル−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエートが好ましい。着色の少なさや分散性、工業的入手の容易さ等の観点から、より好ましくは、ジメチル−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエートである。
【0038】
(ii−3)α−(不飽和アルコキシアルキル)アクリレート系単量体
α−(不飽和アルコキシアルキル)アクリレート系単量体としては、例えば、アルキル−(α−メタリルオキシメチル)アクリレートや、α−(アリルオキシメチル)アクリレートが好適である。中でも、α−(アリルオキシメチル)アクリレートがより好ましい。
【0039】
上記α−(アリルオキシメチル)アクリレートとしては、例えば、下記一般式(2):
【0041】
(式中、R
3は、水素原子、又は、置換基を有していてもよい炭素数1〜30の有機基を表す。)で表される化合物が好適である。なお、本明細書では、「α−(アリルオキシメチル)アクリレート」に、R
3が水素原子である化合物(すなわちα−アリルオキシメチルアクリル酸)も含むものとする。
【0042】
上記R
3は、目的や用途に合わせて、適宜選択すればよいが、R
3が表し得る炭素数1〜30の有機基としては、置換基を有していてもよい、炭素数1〜30の炭化水素基であることが好適である。具体的には、例えば、特開2013−061599号公報〔0037〕に例示された、鎖状飽和炭化水素基;鎖状飽和炭化水素基の水素原子の一部をアルコキシ基で置き換えたアルコキシ置換鎖状飽和炭化水素基;鎖状飽和炭化水素基の水素原子の一部をヒドロキシ基で置き換えたヒドロキシ置換鎖状飽和炭化水素基;鎖状飽和炭化水素基の水素原子の一部をハロゲンで置き換えたハロゲン置換鎖状飽和炭化水素基;鎖状不飽和炭化水素基、及び、その水素原子の一部をアルコキシ基、ヒドロキシ基やハロゲンで置き換えた鎖状不飽和炭化水素基;脂環式炭化水素基、及び、その水素原子の一部をアルコキシ基、ヒドロキシ基やハロゲンで置き換えた脂環式炭化水素基;芳香族炭化水素基及びその水素原子の一部をアルコキシ基、ヒドロキシ基やハロゲンで置き換えた芳香族炭化水素基;等が挙げられる。また、これら有機基に更に任意の置換基が結合していてもよい。
【0043】
上記α−(アリルオキシメチル)アクリレートの具体例としては、例えば、α−アリルオキシメチルアクリル酸、α−アリルオキシメチルアクリル酸メチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸エチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸n−プロピル、α−アリルオキシメチルアクリル酸i−プロピル、α−アリルオキシメチルアクリル酸n−ブチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸s−ブチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸t−ブチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸n−アミル、α−アリルオキシメチルアクリル酸s−アミル、α−アリルオキシメチルアクリル酸t−アミル、α−アリルオキシメチルアクリル酸ネオペンチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸n−ヘキシル、α−アリルオキシメチルアクリル酸s−ヘキシル、α−アリルオキシメチルアクリル酸n−ヘプチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸n−オクチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸s−オクチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸t−オクチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸2−エチルヘキシル、α−アリルオキシメチルアクリル酸カプリル、α−アリルオキシメチルアクリル酸ノニル、α−アリルオキシメチルアクリル酸デシル、α−アリルオキシメチルアクリル酸ウンデシル、α−アリルオキシメチルアクリル酸ラウリル、α−アリルオキシメチルアクリル酸トリデシル、α−アリルオキシメチルアクリル酸ミリスチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸ペンタデシル、α−アリルオキシメチルアクリル酸セチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸ヘプタデシル、α−アリルオキシメチルアクリル酸ステアリル、α−アリルオキシメチルアクリル酸ノナデシル、α−アリルオキシメチルアクリル酸エイコシル、α−アリルオキシメチルアクリル酸セリル、α−アリルオキシメチルアクリル酸メリシル等の鎖状飽和炭化水素基含有α−(アリルオキシメチル)アクリレートが好ましい。その他、特開2013−061599号公報〔0037〕に例示された化合物(例えば、アルコキシアルキル−α−(アリルオキシメチル)アクリレート等)も好適である。これらの中でも、α−アリルオキシメチルアクリル酸メチル(α−(アリルオキシメチル)メチルアクリレートとも称す)が特に好適である。
【0044】
上記α−(不飽和アルコキシアルキル)アクリレートは、例えば、国際公開第2010/114077号パンフレットに開示されている製造方法により製造することができる。
【0045】
上記重合体の主鎖骨格に環構造を導入し得る単量体の含有割合(2種以上用いる場合はその合計の割合)は、例えば、上記ベースポリマー成分100質量%に対し、1〜40質量%以上であることが好ましい。これにより、耐熱性や分散性、表面硬度等をより一層高めることができる。中でも特に、N置換マレイミド系単量体、アクリル系エーテルダイマー、及び/又は、α−(不飽和アルコキシアルキル)アクリレートの含有割合(2種以上用いる場合はその合計の割合)が、上記ベースポリマー成分100質量%に対し、1〜40質量%であることが好ましい。これらの単量体成分に由来する主鎖環構造の含有量が増加すると、密着性が向上する傾向にある。また、N置換マレイミド系単量体の添加量をより増加させるとより硬度が高い硬化物が得られ、アクリル系エーテルダイマーを用いると耐熱着色性により優れる硬化物が得られる。なお、N置換マレイミド系単量体の含有割合が多すぎると、現像速度がより適切なものとはならないことがある。上記N置換マレイミド系単量体、アクリル系エーテルダイマー、及び/又は、α−(不飽和アルコキシアルキル)アクリレートの含有割合としてより好ましくは2〜30質量%である。
【0046】
(iii)(メタ)アクリレート(a)
(メタ)アクリレート(a)は、エステル基に炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基を有する(メタ)アクリレートである。脂肪族炭化水素基としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基が挙げられるが、アルキル基が好ましく、この場合、上記(メタ)アクリレート(a)はアルキル(メタ)アクリレートとなる。また、脂肪族炭化水素基は、直鎖状、分岐鎖状又は環状であってもよいが、直鎖状又は分岐鎖状であることが好ましく、より好ましくは直鎖状である。
なお、上記脂肪族炭化水素基は置換基を有しないことが好ましいが、置換基を有する場合、その置換基は1種又は2種以上であってもよい。置換基は特に限定されず、例えば、ハロゲン原子等が挙げられる。
【0047】
上記(メタ)アクリレート(a)として特に好ましくは、下記一般式(3):
【0049】
(式中、R
4は、水素原子又はメチル基を表す。R
5は、置換基を有していてもよい、炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基を表す。)で表される化合物である。R
5で表される脂肪族炭化水素基の好ましい形態は、上述したとおりである。脂肪族炭化水素基として特に好ましくは、置換基を有しない直鎖状アルキル基である。
【0050】
上記(メタ)アクリレート(a)の具体例としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、iso−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、iso−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、n−ペンチル(メタ)アクリレート、iso−ペンチル(メタ)アクリレート、t−ペンチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0051】
上記(メタ)アクリレート(a)の配合割合((メタ)アクリレート(a)の総量の割合)は、例えば、ベースポリマー成分の総量100質量%に対し、10質量%以上であることが好ましい。これにより、現像性がより一層高められる他、透明性や耐熱性も向上する。より好ましくは15質量%以上である。配合割合の上限は、他の単量体の配合割合等を考慮して適宜設定することが好ましいが、例えば、80質量%以下であることが好ましい。より好ましくは75質量%以下、更に好ましくは70質量%以下である。
【0052】
本発明では、上記(メタ)アクリレート(a)として、エステル基に、水酸基非含有の炭素数2〜5の脂肪族炭化水素基を有する(メタ)アクリレート(a1)を必須に用いる。このような(メタ)アクリレート(a1)を必須とすることで、アルカリ可溶性樹脂のTgが低すぎず、かつ高すぎない適切な範囲になるため、現像性が極めて良好になるものと推測できる。また、(メタ)アクリレート(a1)が有する脂肪族炭化水素基が水酸基を含まないことにより、アルカリ可溶性樹脂の親水性が低下して現像時の密着性がより一層向上される他、後述するように重合溶媒としてグリコールモノエーテルのエステル類を使用して重合を行う場合に、重合反応をより容易に行うことが可能になる。
【0053】
ここでの「水酸基を含まない」及び「水酸基非含有」の意味は上述したとおりであり、例えば、単量体として使用される(メタ)アクリレート(a1)の総量100モル%に対し、置換基として存在する水酸基の含有量が0〜10モル%であることが好ましい。より好ましくは0〜5モル%、更に好ましくは0〜1モル%である。
【0054】
上記(メタ)アクリレート(a1)が有する脂肪族炭化水素基としては、上述した炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基の好ましい形態のうち、炭素数が2〜5のものが挙げられる。炭素数2〜5の脂肪族炭化水素基の中でも、粘度低減の観点から、炭素数2〜4の脂肪族炭化水素基が好適である。更に好ましくは、置換基を有しない炭素数2〜4の直鎖状アルキル基である。
【0055】
上記(メタ)アクリレート(a)の総量100質量%中、(メタ)アクリレート(a1)が占める割合は、例えば、50質量%以上であることが好ましく、より好ましくは60質量%以上、更に好ましくは80質量%以上、特に好ましくは100質量%、すなわち(メタ)アクリレート(a)として、(メタ)アクリレート(a1)に該当する化合物を1種又は2種以上を使用することが特に好ましい。だが、(メタ)アクリレート(a1)と、エステル基に炭素数1の脂肪族炭化水素基を有する(メタ)アクリレート(すなわちメチル(メタ)アクリレート)とを併用することも好適である。この場合、(メタ)アクリレート(a1)とメチル(メタ)アクリレートとの質量比は、50〜99/1〜50であることが好ましく、より好ましくは60〜99/1〜40、更に好ましくは80〜99/1〜20である。
【0056】
(iv)他の単量体
上記ベースポリマー成分はまた、必要に応じ、必要に応じ、上述した単量体の少なくとも1以上と共重合可能なその他の単量体(他の単量体とも称す)を1種又は2種以上含んでもよい。
【0057】
上記他の単量体としては特に限定されず、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸1−アダマンチル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニルオキシエチル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル等の環状構造を有する(メタ)アクリル酸エステル系単量体(但し、上記(ii)又は(iii)の単量体に該当する化合物を除く);スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル化合物;ブタジエン、イソプレン等のブタジエン又は置換ブタジエン化合物;エチレン、プロピレン、塩化ビニル、アクリロニトリル等のエチレン又は置換エチレン化合物;酢酸ビニル等のビニルエステル類;等が挙げられる。
【0058】
これらの中でも、透明性が良好で耐熱性を損ないにくい点で、環状構造含有(メタ)アクリル酸エステル系単量体や芳香族ビニル化合物が好ましい。より好ましくは、環状構造含有(メタ)アクリル酸エステル系単量体である。更に好ましくは、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルや(メタ)アクリル酸ベンジルである。
【0059】
上記他の単量体の配合割合は特に限定されないが、例えば、ベースポリマー成分の総量100質量%に対し、0〜70質量%であることが好ましい。中でも、環状構造含有(メタ)アクリル酸エステル系単量体及び/又は芳香族ビニル化合物を含む場合は、耐熱性や硬度、色材分散性、現像速度、透明性等の観点から、その含有割合は1〜50質量%であることが好ましい。
【0060】
ここで、本発明の効果をより充分に発現させる観点から、上記ベースポリマーを得る際に使用される単量体は、水酸基を有しないことが好適である。すなわち水酸基含有単量体を上記ベースポリマーを得る際の重合に使用しないことが好ましい。具体的には、例えば、上記ベースポリマー成分の総量100質量%に対し、水酸基含有単量体の配合割合が20質量%以下であることが好ましい。より好ましくは10質量%以下、更に好ましくは1質量%以下である。
【0061】
−重合方法−
上記単量体成分を重合する方法としては、バルク重合、溶液重合、乳化重合等の通常用いられる手法を用いることができ、目的、用途に応じて適宜選択すればよい。中でも、溶液重合が、工業的に有利で分子量等の構造調整も容易であるため、好適である。また、上記単量体成分の重合機構は、ラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合、配位重合等の機構に基づいた重合方法を用いることができるが、ラジカル重合機構に基づく重合方法が、工業的にも有利であるため好ましい。また、重合濃度や重合温度は、使用する単量体の種類や比率、目標とする重合体の分子量によっても異なるが、好ましくは、重合温度を40〜150℃、重合濃度を20〜50質量%に設定することであり、より好ましくは、重合温度を60〜130℃、重合濃度を30〜45質量%に設定することである。
【0062】
上記重合に溶媒を用いる場合、溶媒としては、通常のラジカル重合反応で使用される溶媒を用いればよく特に限定されないが、後に感光性樹脂組成物とする際に使用する溶剤を用いることが効率面で好ましい。なお、溶媒は1種又は2種以上を使用することができる。
【0063】
上記溶媒として具体的には、例えば、以下の化合物等が挙げられる。
メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、s−ブタノール等のモノアルコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類;テトラヒドロフラン,ジオキサン等の環状エーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、3−メトキシブタノール等のグリコールモノエーテル類;エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル等のグリコールエーテル類;
【0064】
エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、3−メトキシブチルアセテート等のグリコールモノエーテルのエステル類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル等のアルキルエステル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;ヘキサン、シクロヘキサン、オクタン等の脂肪族炭化水素類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類;等。
【0065】
これらの中でも、重合効率の観点から、グリコールモノエーテルのエステル類を少なくとも用いることが好ましい。具体的には、重合溶媒の総量100質量%中、グリコールモノエーテルのエステル類が占める割合が80〜100質量%であることが好ましい。より好ましくは90質量%以上、更に好ましくは100質量%、すなわち重合溶媒としてグリコールモノエーテルのエステル類のみを使用する(グリコールモノエーテルのエステル類に該当する溶媒を1種又は2種以上使用する)ことである。これにより、高分子量の重合体をより効率よく与えることができる。
なお、例えば、グリコールモノエーテル類やモノアルコール類等のアルコール系溶媒を使用した場合には、これらが重合中に連鎖移動剤として働いてしまうため、より高分子量の重合体を効率よく与えることができないおそれがある。
【0066】
上記重合には、必要に応じて、重合開始剤を1種又は2種以上用いてもよい。
重合開始剤としては特に限定されないが、例えば、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート等の有機過酸化物;2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)等のアゾ化合物;過酸化水素、過硫酸塩;等が挙げられる。なお、重合開始剤とともに、遷移金属塩やアミン類等の還元剤を併用してもよい。
【0067】
上記重合開始剤の使用量は、使用する単量体の種類や量、重合温度や濃度等の重合反応条件、目標とする重合体の分子量等に応じて適宜設定すればよく、特に限定されないが、例えば、ベースポリマー成分の総量100質量部に対して0.1〜20質量部とすることが好ましい。これにより、ゲル化することなく重量平均分子量が好ましい範囲にある重合体を容易に得ることができる。より好ましくは0.5〜15質量部である。
【0068】
上記重合にはまた、分子量調整のために、必要に応じて連鎖移動剤を用いてもよい。
連鎖移動剤としては、例えば、n−ドデシルメルカプタン、メルカプトプロピオン酸、メルカプト酢酸、メルカプト酢酸メチル等のメルカプタン系連鎖移動剤、α−メチルスチレンダイマー等の他、特開2015−22175号公報〔0047〕に記載の化合物も挙げられる。中でも、連鎖移動効果が高く、かつ残存単量体を低減でき、入手も容易である点で、n−ドデシルメルカプタン及び/又はメルカプトプロピオン酸を用いることが好ましい。
【0069】
連鎖移動剤を使用する場合、その使用量は、使用する単量体の種類や量、重合温度や濃度等の重合反応条件、目標とする重合体の分子量等に応じて適宜設定すればよく、特に限定されないが、例えば、ベースポリマー成分の総量100質量部に対し、0.1〜15質量部とすることが好ましい。これにより、ゲル化することなく重量平均分子量が好ましい範囲にある重合体を容易に得ることができる。より好ましくは0.5〜8質量部である。
【0070】
−側鎖に重合性二重結合を導入する方法−
上記アルカリ可溶性樹脂はまた、側鎖に重合性二重結合を含むことが好ましい。側鎖に重合性二重結合を持たせることにより、熱や光で硬化させることができる。そのため、より耐熱分解性が向上する他、光に対する感度が向上し、より少ない光で硬化し、かつ硬化後の機械強度も高くなる。側鎖に重合性二重結合を導入する方法としては、上記ベースポリマーに、酸基と結合し得る官能基及び重合性二重結合を含む化合物を付加させる方法が挙げられる。
【0071】
上記酸基と結合し得る官能基及び重合性二重結合を有する化合物において、重合性二重結合としては、例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基、メタリル基等が挙げられ、当該化合物としてこれらの1種又は2種以上を有するものが好適である。中でも、得られる重合体の反応性の点から(メタ)アクリロイル基が好ましい。また、酸基と結合し得る官能基としては、例えば、エポキシ基、オキサゾリン基、水酸基、オキセタニル基、イソシアネート基等が挙げられ、上記化合物としてこれらの1種又は2種以上を有するものが好適である。中でも、エポキシ基、オキサゾリン基又は水酸基が好ましく、変性処理反応の速さ、耐熱性、分散性の点から、エポキシ基(グリシジル基を含む)がより好ましい。
【0072】
上記酸基と結合し得る官能基及び重合性二重結合を有する化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、アリルアルコール等の水酸基と二重結合とを有する化合物;(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸β−メチルグリシジル、(メタ)アクリル酸β−エチルグリシジル、ビニルベンジルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、(メタ)アクリル酸3,4−エポキシシクロヘキシルメチル、アリルグリシジルエーテル、ビニルシクロヘキセンオキシド等のエポキシ基と二重結合とを有する化合物; ビニルオキサゾリン、イソプロペニルオキサゾリン等のオキサゾリン基と二重結合とを有する化合物;等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を使用することができる。中でも、エポキシ基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物(単量体)を用いることが好ましい。特に、反応性が高く、かつ反応のコントロールがしやすいうえ、入手が容易で、ラジカル重合性二重結合だけでなく同時に水酸基も導入できる点から、(メタ)アクリル酸グリシジル、及び/又は、(メタ)アクリル酸3,4−エポキシシクロヘキシルメチルがより好ましい。
【0073】
上記酸基と結合し得る官能基及び重合性二重結合を含む化合物の付加量は、ベースポリマーを与える単量体成分(ベースポリマー成分)の総量100質量部に対し、好ましくは2〜60質量部である。当該化合物の付加量がこの範囲にあることで、硬化性がより高まり、硬化後の強度がより充分なものとなる他、得られる重合体(側鎖二重結合含有重合体)の保存安定性がより向上され、また、硬化物において着色が充分に抑制される。より好ましくは10質量部以上である。また、上限は55質量部以下であることがより好ましく、更に好ましくは50質量部以下、特に好ましくは45質量部以下である。
【0074】
上記ベースポリマー中の酸基の一部に、酸基と結合し得る官能基及び重合性二重結合を含む化合物を付加する方法は、公知の方法を採用すればよく特に限定されない。反応温度は、例えば60℃〜140℃が好ましい。また、トリエチルアミンやジメチルベンジルアミン等のアミン化合物;塩化テトラエチルアンモニウム等のアンモニウム塩;臭化テトラフェニルホスホニウム等のホスホニウム塩、ジメチルホルムアミド等のアミド化合物;等の公知の触媒を使用することが好ましい。
【0075】
上記二重結合の導入の結果、得られるアルカリ可溶性樹脂(側鎖二重結合含有重合体)の二重結合当量(二重結合1molあたりの樹脂重量(g)を意味する)は、好ましくは300〜4000g/molである。二重結合当量がこの範囲にあると、光に対する感度が高くなって現像性がより向上される他、硬化時の着色がより抑制され、また、保存安定性や溶媒に対する溶解性がより向上される。より好ましくは400〜3000g/mol、更に好ましくは450〜2000g/mol、特に好ましくは490〜2000g/molである。
【0076】
二重結合当量は、分子中に含まれる二重結合量の尺度となるものであり、同じ樹脂重量の化合物であれば、二重結合当量の数値が大きいほど二重結合の導入量が少なくなる。二重結合当量は、重合体や二重結合を導入する化合物の仕込み量から計算できる。滴定及び元素分析、NMR、IR等の各種分析や示差走査熱量計法を用いて測定することもできる。
本明細書中、二重結合当量は、下記式により求めるものとする。
二重結合当量=(ベースポリマーの重量+酸基と結合し得る官能基及び重合性二重結合を含む化合物の重量)/(酸基と結合し得る官能基及び重合性二重結合を含む化合物のモル数)
【0077】
本発明のアルカリ可溶性樹脂は、低粘度化が達成されたものである。具体的には例えば、アルカリ可溶性樹脂と溶剤とからなり、固形分濃度が30〜35質量%である樹脂溶液の粘度(25℃)が、10Pa・s以下となるものであることが好ましい。より好ましくは8Pa・s以下、更に好ましくは5Pa・s以下である。
本明細書中、粘度は、後述する実施例に記載の方法により測定することができる。
【0078】
〔感光性樹脂組成物〕
本発明の感光性樹脂組成物(単に樹脂組成物とも称す)は、本発明のアルカリ可溶性樹脂と、重合性単量体(重合性化合物とも称す)と、溶剤とを含む。必要に応じ、更に他の成分を1種又は2種以上含んでいてもよく、各含有成分はそれぞれ1種又は2種以上を使用することができる。
【0079】
本明細書中、感光性樹脂組成物の「固形分総量」とは、感光性樹脂組成物を構成する成分のうち、硬化物を形成する成分の総量、すなわち硬化物の形成時に揮発する溶媒等を除く成分(固形分、不揮発分)の総量を意味する。具体的には、アルカリ可溶性樹脂と、重合性単量体と、更に他の硬化物形成成分(例えば、光重合開始剤、色材、分散剤等)を含む場合は当該成分と、の合計の固形分質量を意味する。
【0080】
<重合性化合物>
重合性化合物は、重合性の基を有する化合物を意味する。好ましくは、重合性二重結合を有する化合物である。中でも、感光性や硬化性の観点から、重合体二重結合を分子内に2個以上有する化合物、すなわち2官能以上の多官能化合物であることが好ましく、より好ましくは3官能以上の多官能化合物、更に好ましくは4官能以上の多官能化合物である。
【0081】
上記重合性化合物としては、(メタ)アクリロイル基を有する化合物が特に好ましい。これによって、より感光性及び硬化性に優れたものとなり、より高硬度の硬化膜を与えることが可能になる。(メタ)アクリロイル基とは、メタクリロイル基及び/又はアクリロイル基を意味するが、本発明では、反応性により優れる観点からアクリロイル基を少なくとも含むものが好ましい。
【0082】
上記重合性化合物の分子量(原子量換算量(炭素原子の質量数を12.01とする)を意味する)は700以下であることが好ましく、より好ましくは650以下、更に好ましくは600以下である。また、二重結合当量は、150以下であることが好ましく、より好ましくは140以下、更に好ましくは110以下である。分子量及び二重結合当量の下限は特に限定されず、硬化が可能な範囲であればよいが、感度向上の観点から、分子量は250を超えることが好ましい。中でも、優れた画素を形成できる点からは、比較的分子量が小さく、かつ二重結合当量が小さい化合物が好ましい。
【0083】
上記重合性化合物の好ましい具体例としては、例えば、以下の化合物等が挙げられる。
エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAアルキレンオキシドジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFアルキレンオキシドジ(メタ)アクリレート、9,9−ビス[4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン等の2官能(メタ)アクリレート化合物;
【0084】
トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘプタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールオクタ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド付加トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド付加ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド付加ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド付加ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ε−カプロラクトン付加トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ε−カプロラクトン付加ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ε−カプロラクトン付加ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ε−カプロラクトン付加ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の3官能以上の多官能(メタ)アクリレート化合物;等。
【0085】
これらの中でも、各種物性のバランスをより良好なものとする観点から、3官能以上の多官能(メタ)アクリレート化合物が好ましく、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、及び/又は、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートを用いることが特に好適である。
【0086】
上記重合性化合物の含有割合は特に限定されず、他成分の割合を考慮して適宜設定することも好ましいが、例えば、アルカリ可溶性樹脂の固形分総量100質量部に対し、20〜300質量部であることが好ましい。これにより、硬化性及び透明性がより高いものとなる。より好ましくは25〜200質量部、更に好ましくは30〜150質量部である。
【0087】
<溶剤>
本発明では、溶剤として、少なくともグリコールモノエーテルのエステル類を含む。上述したように、重合効率の観点から、アルカリ可溶性樹脂を得る際の重合溶媒としてグリコールモノエーテルのエステル類を少なくとも用いることが好ましいが、感光性樹脂組成物とする際にもこれをそのまま含むことが好適である。本発明では、溶剤の総量100質量%中、グリコールモノエーテルのエステル類が占める割合は、80〜100質量%である。より好ましくは90質量%以上、更に好ましくは100質量%、すなわち溶剤としてグリコールモノエーテルのエステル類のみを使用することである。
【0088】
上記溶剤の含有割合は特に限定されず、感光性樹脂組成物の使用形態(例えば塗布等)に応じて適宜設定することが好ましい。例えば、感光性樹脂組成物100質量%中の固形分総量(固形分濃度)が1〜90質量%になるように、溶剤の含有割合を設定することが好ましい。感光性樹脂組成物100質量%中の固形分総量は、より好ましくは5〜70質量%、更に好ましくは10〜50質量%である。
【0089】
<色材>
本発明の樹脂組成物はまた、カラーフィルタ用途等に使用する場合は、色材を含むことが好ましい。色材としては、顔料(有機顔料、無機顔料)や染料等を用いることができる。
【0090】
上記顔料としては特に限定されないが、例えば、アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、多環式顔料(キナクリドン系、ペリレン系、ペリノン系、イソインドリノン系、イソインドリン系、ジオキサジン系、チオインジゴ系、アントラキノン系、キノフタロン系、金属錯体系、ジケトピロロピロール系等)、染料レーキ系顔料等の有機顔料;白色・体質顔料(酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、クレー、タルク、硫酸バリウム、炭酸カルシウム等)、有彩顔料(黄鉛、カドミニウム系、クロムバーミリオン、ニッケルチタン、クロムチタン、黄色酸化鉄、ベンガラ、ジンククロメート、鉛丹、群青、紺青、コバルトブルー、クロムグリーン、酸化クロム、バナジン酸ビスマス等)、黒色顔料(カーボンブラック、ボーンブラック、グラファイト、鉄黒、チタンブラック等)、光輝材顔料(パール顔料、アルミ顔料、ブロンズ顔料等)、蛍光顔料(硫化亜鉛、硫化ストロンチウム、アルミン酸ストロンチウム等)等の無機顔料;等が挙げられる。中でも、有機顔料が好ましい。
【0091】
上記染料としては特に限定されないが、例えば、特開2010−9033号公報、特開2010−211198号公報、特開2009−51896号公報、特開2008−50599号公報に記載されている有機染料を使用することができる。中でも、アゾ系染料、アントラキノン系染料、フタロシアニン系染料、キノンイミン系染料、キノリン系染料、ニトロ系染料、カルボニル系染料、メチン系染料等が好ましい。
【0092】
上記色材の総量(色材の総含有量)は特に限定されないが、例えば、感光性樹脂組成物の固形分総量100質量%に対し、正味の色材(固形分)量として3質量%以上であることが好ましい。上限は特に限定されないが、他の含有成分(例えば、アルカリ可溶性樹脂や重合性単量体)に起因する感光性、溶解性及び硬化性等の画像形成性をより充分に発揮させる観点からは、50質量%以下であることが好ましい。
【0093】
<光重合開始剤>
本発明の樹脂組成物はまた、光重合開始剤を含むことが好適である。
光重合開始剤としては特に限定されないが、例えば、以下の化合物等が挙げられる。
2−ジメチルアミノ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2−ジエチルアミノ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2−メチル−2−モルホリノ−1−フェニルプロパン−1−オン、2−ジメチルアミノ−2−メチル−1−(4−メチルフェニル)プロパン−1−オン、2−ジメチルアミノ−1−(4−エチルフェニル)−2−メチルプロパン−1−オン、2−ジメチルアミノ−1−(4−イソプロピルフェニル)−2−メチルプロパン−1−オン、1−(4−ブチルフェニル)−2−ジメチルアミノ−2−メチルプロパン−1−オン、2−ジメチルアミノ−1−(4−メトキシフェニル)−2−メチルプロパン−1−オン、2−ジメチルアミノ−2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)プロパン−1−オン、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−ジメチルアミノフェニル)−ブタン−1−オン、2−ジメチルアミノ−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルフォルニル)フェニル]−1−ブタノン等のα−アミノケトン系化合物;2,2−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシー2−フェニルアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−〔4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル〕−2−ヒドロキシー2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−1−{4−〔4−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオニル)ベンジル〕フェニル}−2−メチルプロパン−1−オン、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2−(ジメチルアミノ)−2−〔(4−メチルフェニル)メチル〕−1−〔4−(4−モルホリニル)フェニル〕−1−ブタノン等のアルキルフェノン系化合物;
【0094】
2−(4−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−メトキシナフチル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−エトキシナフチル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−エトキシカルボキニルナフチル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン等のハロメチル化トリアジン系化合物;2−トリクロロメチル−5−(2’−ベンゾフリル)−1,3,4−オキサジアゾール、2−トリクロロメチル−5−〔β−(2’−ベンゾフリル)ビニル〕−1,3,4−オキサジアゾール、4−オキサジアゾール、2−トリクロロメチル−5−フリル−1,3,4−オキサジアゾール等のハロメチル化オキサジアゾール系化合物;2,2’−ビス(2−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール、2,2’−ビス(2,4−ジクロロフェニル)−4,4’,5,5’ −テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール、2,2’−ビス(2,4,6−トリクロロフェニル)−4,4’,5,5’ −テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール等のビイミダゾール系化合物;1,2−オクタンジオン,1−〔4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)〕、エタノン,1−〔9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル〕−,1−(O−アセチルオキシム)等のオキシムエステル系化合物;ビス(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル)チタニウム等のチタノセン系化合物;p−ジメチルアミノ安息香酸、p−ジエチルアミノ安息香酸等の安息香酸エステル系化合物;9−フェニルアクリジン等のアクリジン系化合物;1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ヒロドキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン等のα−ヒドロキシケトン系化合物;等。
【0095】
上記光重合開始剤の中でも、密着性や硬化膜形状を優れたものとする等の観点から、α−アミノケトン系化合物を少なくとも用いることが特に好ましい。α−アミノケトン系化合物の中でも、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、2−ジメチルアミノ−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルフォルニル)フェニル]−1−ブタノンが好ましく、より好ましくは2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オンである。市販品としては、例えば、IRGACURE(登録商標)907、369、379(いずれもBASFジャパン社製)等が好ましい。
【0096】
上記光重合開始剤の含有割合は特に限定されず、色材等の他成分の割合を考慮して適宜設定することも好ましいが、例えば、アルカリ可溶性樹脂の固形分総量100質量部に対し、5〜80質量部であることが好ましい。これにより、硬化性及び透明性がより一層高められる。
【0097】
<分散剤>
本発明の樹脂組成物はまた、分散剤を含むことが好ましい。分散剤としては特に限定されないが、例えば、色材への相互作用部位と分散媒(アルカリ可溶性樹脂や溶剤等)への相互作用部位とを有し、分散媒への色材の分散を安定化する働きを持つものが好ましい。一般には、樹脂型分散剤(高分子分散剤)、界面活性剤(低分子分散剤)、色素誘導体に分類され、通常使用されている分散剤を用いればよい。
【0098】
上記樹脂型分散剤としては、例えば、ポリウレタン、ポリアクリレート等のポリカルボン酸エステル、不飽和ポリアミド、ポリカルボン酸、ポリカルボン酸アミン塩、ポリカルボン酸アンモニウム塩、ポリカルボン酸アルキルアミン塩、ポリシロキサン、長鎖ポリアミノアマイドリン酸塩、水素基含有ポリカルボン酸エステル、ポリ(低級アルキレンイミン)と遊離のカルボキシル基を有するポリエステルとの反応により形成されたアミドやその塩、(メタ)アクリル酸−スチレン共重合体、(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエステル系、変性ポリアクリレート、エチレンオキサイド/ポリプロピレンオキサイド付加物等が挙げられる。中でも、構造面から、主鎖が色材への相互作用部位を有するアンカー鎖で、グラフト鎖が分散媒への相互作用性を有する相溶性鎖であるようなグラフト構造の樹脂や、アンカー鎖と相溶性鎖とがブロック構造になっている樹脂が、特に好ましく用いられる。
【0099】
上記界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキルナフタリンスルホン酸ナトリウム、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸モノエタノールアミン、ラウリル硫酸トリエタノールアミン、ラウリル硫酸アンモニウム、ステアリン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム等のアニオン性界面活性剤;ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリエチレングリコールモノラウレート等のノニオン性界面活性剤;アルキル4級アンモニウム塩やそれらのエチレンオキサイド付加物等のカチオン性界面活性剤;アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン等のアルキルベタイン、アルキルイミダゾリン等の両性界面活性剤;等が挙げられる。
【0100】
上記色素誘導体とは、官能基を色素に導入した構造の化合物である。官能基としては、例えば、スルホン酸基、スルホンアミド基及びその4級塩、ジアルキルアミノ基、水酸基、カルボキシル基、アミド基、フタルイミド基等が挙げられ、母体となる色素の構造としては、例えば、アゾ系、アントラキノン系、キノフタロン系、フタロシアニン系、キナクリドン系、ベンズイミダゾロン系、イソインドリン系、ジオキサジン系、インダンスレン系、ペリレン系、ジケトピロロピロール系等が挙げられる。
【0101】
上記分散剤の含有割合は特に限定されず、目的や用途に応じて適宜設定すればよいが、例えば、分散安定性、耐久性(耐熱性、耐光性、耐候性等)及び透明性等のバランスを考慮すると、色材の固形分総量100質量部に対し、分散剤の固形分が0.01〜60質量部であることが好ましい。より好ましくは0.1〜50質量部、更に好ましくは0.5〜40質量部である。
【0102】
<他の成分>
本発明の感光性樹脂組成物はまた、本発明の効果を損なわない範囲で、その他の成分を1種又は2種以上含んでいてもよい。例えば、アルカリ可溶性樹脂以外のバインダー樹脂;耐熱向上剤;レベリング剤;カップリング剤;現像助剤;水酸化アルミニウム、タルク、クレー、硫酸バリウム等の充填材;消泡剤;増感剤;離型剤;滑剤;可塑剤;酸化防止剤;紫外線吸収剤;難燃剤;重合抑制剤;増粘剤;等が挙げられる。
【0103】
上記他の成分の使用量は、目的や用途に応じて適宜設定すればよいが、例えば、感光性樹脂組成物の固形分総量100質量%中、0〜70質量%であることが好ましい。より好ましくは0.01〜70質量%、更に好ましくは0.1〜60質量%、特に好ましくは0.3〜50質量%である。
【0104】
〔感光性樹脂組成物の製造方法〕
本発明の感光性樹脂組成物の製造方法としては特に限定されず、例えば、上述した含有成分を、各種の混合機や分散機を用いて混合分散することによって調製することができる。分散工程及び混合工程は特に限定されず、通常の手法により行えばよいし、また、通常行われる他の工程を更に含むものであってもよい。具体的には、例えば、色材、分散剤、バインダー樹脂(アルカリ可溶性樹脂等)及び溶剤等を含む色材分散液(ミルベースとも称す)を調製した後に、更に、重合性単量体、光重合開始剤、バインダー樹脂(アルカリ可溶性樹脂等)及び溶剤等を含む透明レジスト液(クリアレジスト液とも称す)を加えて調製することが好ましい。得られた樹脂組成物は、フィルタ等によって、濾過処理をして微細なゴミを除去することが好適である。
【0105】
上記色材分散液の調製に際しては、例えば、ペイントコンディショナー、ビーズミル、ロールミル、ボールミル、ジェットミル、ホモジナイザー、ニーダー、ブレンダー等の分散機を用いて色材を微粒子分散させることが好ましい。より好ましくは、ロールミル、ニーダー、ブレンダー等で混練分散処理をした後、0.01〜1mmのビーズを充填したビーズミル等のメディアミルで微分散処理をすることである。
【0106】
〔感光性樹脂組成物の用途〕
本発明の感光性樹脂組成物は、硬化性、感光性、現像性及び耐熱性等の他、透明性にも優れ、現像性(現像速度)に極めて優れる硬化物を与えることができるため、例えば、レジスト材料、各種コーティング剤、塗料等の種々の用途に用いることができる。好ましい用途としては、液晶表示装置や固体撮像素子等に用いられるカラーフィルタ、インキ、印刷版、プリント配線板、半導体素子、フォトレジスト等の、各種の光学部材や電機・電子機器等が挙げられる。中でも、上記感光性樹脂組成物は、カラーフィルタや光導波路等を作製するための材料(例えば、アルカリ現像型のネガ型レジスト材料)として有用であり、これにより、近年の高性能化の要望に充分に対応できる程度に各種表示装置の表示品位や撮像品位の信頼性を充分に高めることができる。特に上記感光性樹脂組成物は、カラーフィルタ用途に極めて有用なものである。
【0107】
上記感光性樹脂組成物は、上述のとおり、カラーフィルタの原材料又は光導波路の原材料として用いることが好適であるが、これらの他、各種表示装置における保護膜(カラーフィルタ用保護膜、タッチパネル式表示装置用保護膜等)や、絶縁膜(タッチパネル式表示装置用絶縁膜等)として用いることも好適である。保護膜や絶縁膜に感光性樹脂組成物を使用する場合、当該感光性樹脂組成物はクリアレジスト液であることが特に好ましい。
【0108】
<硬化膜>
本発明の硬化膜は、上述した本発明の感光性樹脂組成物を硬化してなるものであり、上記樹脂組成物に活性エネルギー光線を照射(露光)することにより得ることができる。具体的には、例えば、基板(基材とも称す)上に上記樹脂組成物を塗布して乾燥させ、その塗布面に活性エネルギー光線を照射(露光)することにより得ることが好ましい。本発明の感光性樹脂組成物はレジスト材料として好適に用いられるため、上記感光性樹脂組成物を硬化してなる硬化膜がレジスト硬化膜である形態は、本発明の好適な形態の1つである。
【0109】
上記硬化膜を有する態様の一例として、基板上に上記硬化膜を有するカラーフィルタが挙げられる。この作製方法について以下に詳述する。
なお、カラーフィルタを構成する部材は、具体的には3原色(RGB)画素、樹脂ブラックマトリックス、保護膜及び柱状スペーサー等があるが、これらのカラーフィルタを構成する部材のうち少なくとも1つが、本発明の感光性樹脂組成物により形成された硬化膜を有することが好ましい。ここで、RGB画素を形成する場合、本発明の樹脂組成物は赤・緑・青の各3原色の色材を含み、樹脂ブラックマトリックスを形成する場合は黒色の色材を含む。
【0110】
上記カラーフィルタは、例えば、次のようにして作製することができる。
1)基板上に、感光性樹脂組成物を公知のコート法でコート(塗工)し、乾燥し、塗膜を作製する。基板としては透明基板が好ましく、具体的には、ガラス(好ましくは無アルカリガラス)や透明プラスチック等が挙げられる。公知のコート法としては、スピンコート法、スプレー法等が挙げられ、スピンコート法が好ましい。乾燥条件に関し、乾燥温度は室温〜120℃が好ましく、より好ましくは60〜100℃である。乾燥時間は10秒〜60分が好ましく、より好ましくは30秒〜10分である。また、常圧又は真空下で加熱乾燥することが好ましい。
【0111】
2)その後、所望のパターン形状に応じた開口部を設けたフォトマスク(パターニングフィルム)を、上記1)で得た塗膜の上に、接触状態で又は非接触状態で載せ、光を照射し、硬化させる。光とは、可視光のみならず、紫外線、X線、電子線等の放射線をも意味するが、紫外線が最も好ましい。紫外線源としては、一般に高圧水銀ランプが好適に使用される。
【0112】
3)上記2)の光照射後、溶剤、水又はアルカリ水溶液等で現像を行う。中でも、アルカリ水溶液が、環境への負荷が少なく高感度の現像を行うことができるため好ましい。アルカリ水溶液中のアルカリ成分としては特に限定されないが、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム及び/又は炭酸ナトリウム等が好ましい。アルカリ成分の濃度は、アルカリ水溶液100質量%中、0.01〜5質量%であることが好ましい。アルカリ成分の濃度がこの範囲内であると、アルカリ可溶性樹脂の溶解性がより向上され、現像性(現像速度)をより高めることができる。より好ましくは0.05〜3質量%、更に好ましくは0.1〜1質量%である。アルカリ水溶液には、界面活性剤を添加してもよい。
【0113】
4)以上の1)〜3)の工程を、黒色色材を含む感光性樹脂組成物を用いて行い、基板上に樹脂ブラックマトリックスを形成する。
【0114】
5)次に、感光性樹脂組成物の色材を赤(R)、緑(G)、青(B)と順次変えて、上記1)〜3)の工程を繰り返し行い、R、G、Bの画素を形成し、RGB画素を作製する。
【0115】
6)次に、基板上に形成されたRGB画素の保護や表面平滑性を向上させる目的で、必要に応じて、保護膜を形成する。
【0116】
7)上記カラーフィルタが液晶表示装置用カラーフィルタである場合には、更に、柱状スペーサーを形成することが好ましい。柱状スペーサーは、スペーサーを形成すべき面に、感光性樹脂組成物を所望のスペーサーの高さとなるような厚みに塗工し、上記1)〜3)の工程を経て作製することができる。
【0117】
ここで、カラーフィルタを作製する際には、各部材の作成時に、現像後加熱(ポストベーク)して硬化を更に進行させ、かつ溶媒が残存している場合はこれを完全に除去させることが好ましい。ポストベークの際の温度は120〜300℃が好ましい。この温度に設定すると、画素の着色及び熱分解による塗膜の平滑性低下をより充分に抑制することができる他、硬化がより進行して塗膜強度がより高まる。より好ましくは150〜250℃、更に好ましくは180〜230℃である。ポストベークは、各部材形成における現像後(各部材作成時における上記3)の後)に行ってもよいし、全ての部材を形成した後に行ってもよい。
【0118】
<表示装置用部材及び表示装置>
本発明の表示装置用部材及び表示装置は上記硬化膜を有するが、更に、他の構成部材等を1種又は2種以上有するものであってもよい。近年では、表示装置等の技術の進歩に伴い、使用される各部材に対しても更に高度な性能が強く要望されているが、本発明の感光性樹脂組成物を用いれば、このようなニーズに充分に対応できる程度に、各種表示装置の表示品位や撮像品位の信頼性を充分に高めることができる。表示装置としては特に限定されないが、例えば、液晶表示装置、固体撮像素子、タッチパネル式表示装置等が好適である。タッチパネル式表示装置としては、特に、静電容量方式のものが好ましい。
【0119】
上記表示装置用部材は、上記硬化膜から構成されるフィルム状の単層又は多層の部材であってもよいし、該単層又は多層の部材に更に他の層が組み合わされた部材であってもよいし、また、上記硬化膜を構成中に含む部材(例えばカラーフィルタ等)であってもよい。
【実施例】
【0120】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。特に断りのない限り、「部」は「重量部」を、「%」は「重量%(質量%)」を、「v」は「体積」をそれぞれ意味するものとする。
【0121】
1、樹脂溶液(アルカリ可溶性樹脂)の物性評価
(1)重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)
GPC(商品名:HLC−8220GPC、東ソー社製)にて、テトラヒドロフラン(THF)を溶離液とし、カラムにTSKgel SuperHZM−N(東ソー社製)を用いて測定し、標準ポリスチレン換算にて算出した。
【0122】
(2)固形分濃度(N.V.)
各製造例で調製した樹脂溶液をアルミカップに約0.3gはかり取り、アセトン約1gを加えて溶解させた後、常温で自然乾燥させた。その後、熱風乾燥機(商品名:PHH−101、エスペック社製)を用い、真空下160℃で1.5時間乾燥した後、デシケータ内で放冷し、重量を測定した。その重量減少量から、共重合体溶液の固形分(樹脂)の重量(固形分濃度)を計算した。
【0123】
(3)酸価(AV)
各製造例で調製した樹脂溶液を1.5g精秤し、アセトン90gと水10gの混合溶媒に溶解させ、0.1NのKOH水溶液で滴定した。滴定は、自動滴定装置(商品名:COM−555、平沼産業社製)を用いて行い、固形分濃度から、ポリマー1g当たりの酸価を求めた(mgKOH/g)。
【0124】
(4)粘度
粘度の測定は、25℃の条件下でB型粘度計(商品名:BQ200、ヤマト科学社製)を用いて行った。
【0125】
2、塗膜(硬化膜)の現像性評価
ガラス基板に、調製例で得た樹脂組成物をスピンコート法により塗布し、加熱処理(90℃、3分間)した後、塗布膜から50μmの距離に10μmのラインアンドスペースの開口部を設けたフォトマスクを介して2.0kWの超高圧水銀ランプを装着した。UVアライナ(商品名:TME−150RNS、TOPCON社製)によって30mJ/cm
2(365nm照度換算)の露光量で露光を行い、0.05%水酸化カリウム水溶液をスピン現像機にて30秒間散布し、未露光部を溶解、除去し、残った露光部を純水で10秒間水洗することにより現像し、残渣及びパターン直線性の評価を行った。パターン直線性の評価基準は以下のとおりである。
〇:現像後のパターンのエッジがシャープであった。
×:現像後のパターンのエッジの一部又は全部に残渣が確認された。
【0126】
3、アルカリ可溶性樹脂の調製
調製例1
反応槽としての冷却管付きセパラブルフラスコに、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート(PGMEA)767部を仕込み、窒素雰囲気下にて85℃に昇温した後、滴下系1としてベンジルマレイミド(BzMI)60部、メタクリル酸(MAA)162部、メタクリル酸エチル(EMA)372部、シクロヘキシルメタクリレート(CHMA)6部、PGMEA60部、パーブチル(登録商標)O(重合開始剤、日本油脂社製、以下PBOとも称す)6部を、滴下系2としてn−ドデシルメルカプタン(n−DM)7.2部、PGMEA72.8部を、それぞれ5時間かけて連続的に供給した。その後30分85℃を保持した後、PBOを3g添加した。更に85℃で30分保持し、温度を115℃まで昇温し、1.5時間保持することで重合液(ベースポリマー溶液)を得た。
得られた重合液にアンテージW−400(川口化学工業社製)を1部、グリシジルメタクリレート(GMA)を79.3部、トリエチルアミンを2部加えて、110℃2時間、115℃5時間保持することで、付加反応を行った。得られた樹脂溶液1について各種物性を測定した。結果を表1に示す。
【0127】
調製例2
EMAをメタクリル酸メチル(MMA)に変更したこと以外は調製例1と同様にして樹脂溶液2を得た。得られた樹脂溶液2について各種物性を測定した。結果を表1に示す。
【0128】
調製例3
反応槽としての冷却管付きセパラブルフラスコに、PGMEA767部を仕込み、窒素雰囲気下にて85℃に昇温した後、滴下系1としてBzMI60部、MAA90部、EMA300部、CHMA150部、PGMEA60部、PBO6部を、滴下系2としてn−DM7.2部、PGMEA72.8部を、それぞれ5時間かけて連続的に供給した。その後30分85℃を保持した後、PBOを3g添加した。更に85℃で30分保持し、温度を115℃まで昇温し、1.5時間保持することで樹脂溶液3を得た。得られた樹脂溶液3について各種物性を測定した。結果を表2に示す。
【0129】
調製例4
EMAをエチルアクリレート(EA)に変更したこと以外は調製例3と同様にして樹脂溶液4を得た。得られた樹脂溶液4について各種物性を測定した。結果を表2に示す。
【0130】
4、顔料分散液の作製
作製例1
ガラス容器に、下記の各試験例で使用しているものと同じ樹脂溶液を固形分で3部、分散剤としてBYK2001(ビックケミー社製)を0.98部、Green顔料G−58(DIC社製)を3.5部、PGMEAを18部、0.1mmφのシリカビーズを51部入れ、ペイントシェーカー(東機精機社製)で4時間分散することで、GREEN顔料分散ミルベースを得た。
【0131】
5、感光性樹脂組成物の作製・評価
試験例1
固形分換算で、調製例1で得た樹脂溶液1を20部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)6.6部、作製例1で得たGREEN顔料分散ミルベース(MB)を75部(固形分)、光重合開始剤としてイルガキュア369(BASF社製)3.3部、更に希釈溶媒(PGMEA)を固形分濃度20%となるように加え、攪拌することで樹脂組成物1を得た。得られた樹脂組成物1について、上述した方法にて現像性を評価した。結果を表1に示す。
【0132】
試験例2〜4
調製例1で得た樹脂溶液1の代わりに調製例2〜4で得た樹脂溶液2〜4をそれぞれ用いたこと以外は、試験例1と同様にして樹脂組成物2〜4を得た後、現像性を評価した。結果を表1、2に示す。
【0133】
【表1】
【0134】
表1では、ベースポリマー成分に含まれる各単量体の割合を、ベースポリマー成分の総量を100質量%としたときの各単量体の配合割合(質量%)で記載し、GMA付加量を、ベースポリマー成分の総量を100重量部としたときの配合量(重量部)で記載した。
【0135】
【表2】
【0136】
表2では、各単量体の割合を、単量体成分の総量を100質量%としたときの各単量体の配合割合(質量%)で記載した。
表2中、※1は、パターンが全て剥離したため、現像性を評価できなかったことを示す。
【0137】
以上より、以下のことが確認された。
試験例1と試験例2とは、使用したアルカリ可溶性樹脂が、エステル基に炭素数2〜5の脂肪族炭化水素基を有する(メタ)アクリレート(a1)に由来する構成単位(A1)を有するか否かで主に相違する。この相違の下、現像性を評価した結果を比較すると、構成単位(A1)を有するアルカリ可溶性樹脂を用いた試験例1では、残渣が無く、パターン直線性にも優れていたのに対し、構成単位(A1)を有しないアルカリ可溶性樹脂を用いた試験例2では、残渣が確認され、パターン直線性にも劣ることが分かる。また、試験例1及び2で用いたアルカリ可溶性樹脂は、共にMwが3万前後の高分子量であるが、試験例1で用いたアルカリ可溶性樹脂は、試験例2で用いたアルカリ可溶性樹脂に比較して、著しく粘度が低減されており、分子量分布も狭いことが分かる。それゆえ、アルカリ可溶性樹脂が構成単位(A1)を有するか否かが、樹脂の粘度や、感光性樹脂組成物としたときの現像性に大きな差異を与えることが確認された。
【0138】
試験例3と試験例4とは、いずれも構成単位(A1)を有するアルカリ可溶性樹脂を使用しているものの、アルカリ可溶性樹脂のガラス転移温度(Tg)が大きく異なる点で主に相違する。この相違の下、現像性を評価した結果を比較すると、Tgが50℃以上であるアルカリ可溶性樹脂を用いた試験例3では、残渣が無く、パターン直線性にも優れていたのに対し、Tgが50℃を下回るアルカリ可溶性樹脂を用いた試験例4では、パターンが全て剥離してしまい、評価試験を行うことさえできなかった。したがって、アルカリ可溶性樹脂が構成単位(A1)を有することに加えて、ガラス転移温度(Tg)が所定範囲にあることが、優れた現像性を発揮するのに非常に重要であることが確認された。
なお、上記では明示していないが、試験例1、3で得た感光性樹脂組成物の硬化膜は、透明性や耐熱性、耐溶剤性にも優れていた。