(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
フロア側に設けられ、フロアと対向する下面を有するロアレールと、シート側に設けられ、ロアレールに移動可能に係合するアッパレールとを有したシートトラック装置においては、アッパレールの前記ロアレールからの剥離を防止する補強レールを有するものがある。
【0003】
図9は、補強レールを有する従来のシートトラック装置の断面図である。図において、フロア側に設けられるロアレール1には、アッパレール3が紙面に対して垂直方向に移動可能に係合している。
アッパレール3は、ブラケット5,7を介して、シートクッションフレーム(シート)9に設けられている。
【0004】
シートクッションフレーム9には、アッパレール3の移動方向に沿って、ロアレール1の一方の側部側に位置する第1アッパフック11と、ロアレール1の他方の側部側に位置する第2アッパフック13とが設けられている。
ロアレール1には、ロアレール1の一方の側部側に位置し、第1アッパフック11と係合することにより、アッパレール3に剥離力(アッパレール3を上方に引き上げる力)が作用し、アッパレール3のロアレール1からの剥離(アッパレール3の上方への移動)を防止する第1ロアフック15と、ロアレール1の他方の側部側に位置し、第2アッパフック13と係合することにより、アッパレール3のロアレール1からの剥離を防止する第2ロアフック17とが設けられている。
【0005】
そして、第1ロアフック15と、第2ロアフック17とは、ロアレール1の他方の側部側で重ね合わされ、重なり部分(
図9において矢印T部分)を溶接することにより両者は取り付けられている(例えば、特許文献1参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1に記載された構造では、アッパレール3に大きな剥離力が作用すると、その剥離力は第1ロアフック15と、第2ロアフック17との重なり部分Tでは、第1ロアフック15と第2ロアフック17とを上下方向に剥離させるように作用する。
よって、第1ロアフック15と、第2ロアフック17との重なり部分Tが大きな剥離力に耐えるように、重なり部分Tの面積を広くして、溶接面積を広げる必要があり、製造コストが高くなる問題点がある。
【0008】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたもので、その課題は、製造コストが安くなるシートトラック装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題のうち少なくとも一つを実現するために、本発明の一側面を反映したシートトラック装置は、フロア側に設けられ、前記フロアと対向する下面を有するロアレールと、シート側に設けられ、前記ロアレールに移動可能に係合するアッパレールと、前記アッパレールに取り付けられる取付部、該取付部の一方の側部に形成された第1アッパフック、前記取付部の他方の側部に形成された第2アッパフックを有するアッパ補強レールと、前記ロアレールに設けられ、前記ロアレールの下面に対向する第1取付部,前記第1アッパフックと係合し、前記アッパレールの前記ロアレールからの剥離を防止する第1ロアフックを有する第1ロア補強レールと、前記ロアレールに設けられ、前記ロアレールの下面に対向する第2取付部,前記第2アッパフックと係合し、前記アッパレールの前記ロアレールからの剥離を防止する第2ロアフックを有する第2ロア補強レールと、を有し、前記ロアレールの下面に前記第1取付部と前記第2取付部が重なるように取り付けられ
、前記ロアレールの前記下面には、フロア方向に向かって延びるピンが設けられ、前記第1取付部には、前記アッパレールの移動方向と交差する方向に延出する第1ピン導入部、該第1ピン導入部から前記アッパレールの移動方向に沿って延出する第1ピン位置決め部からなる第1ピン穴が形成され、前記第2取付部には、前記アッパレールの移動方向と交差する方向に延出する第2ピン導入部、該第2ピン導入部から前記アッパレールの移動方向に沿って延出し、前記ロアレールの下面に前記第1取付部と前記第2取付部が取り付けられた状態で、前記第1ピン穴の第1ピン位置決め部と重なる第2ピン位置決め部からなる第2ピン穴が形成されることを特徴とする。
。
【0010】
本発明の他の特徴は、以下に述べる発明を実施するための形態並びに添付の図面から一層明らかになるであろう。
【発明の効果】
【0011】
本発明のシートトラック装置よれば、前記ロアレールの下面に前記第1取付部と前記第2取付部が重なるように取り付けられていることにより、前記アッパレールに剥離力が作用すると、その剥離力は、前記第1ロア補強レールの第1取付部では、前記ロアレールの下面を押す力となり、前記第2ロア補強レールの第2取付部では、前記第1ロア補強レールの第1取付部を押す力となる。
【0012】
このため、前記ロアレールの下面と前記第1ロア補強レールの第1取付部との取付部分、前記第1ロア補強レールの第1取付部と前記第2ロア補強レールの第2ロア補強レールの第2取付部との取付部分には、両者を分離する剥離力が作用しない。
よって、前記ロアレールの下面と、前記第1ロア補強レールの第1取付部との取付部分や、前記第1取付部と前記第2ロア補強レールの第2取付部の取付部分の面積を広げる必要がなく、製造コストが安くなる。
【0013】
本発明の他の効果は、以下に述べる発明を実施するための形態並びに添付の図面から一層明らかになるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1−
図6を用いて実施形態例を説明する。
図1は実施形態例のシートトラック装置の断面を示す図で、
図2の切断線I−Iでの断面図、
図2は実施形態のシートトラック装置の側面図、
図3は
図2の上面図、
図4は
図2の底面図、
図5は
図1の第1ロア補強レールの斜視図、
図6は
図1の第2ロア補強レールの斜視図である。
【0016】
尚、これらの図で、アッパレールの移動方向を前後方向、フロア方向を下方向、フロア方向と逆方向を上方向、前後方向,上下方向とそれぞれ直交する方向を左右方向とし、
図1−
図6において矢印で示す。
最初に、
図1を用いて、ロアレール、アッパレールの断面形状を説明する。
【0017】
フロア側に設けられたロアレール21には、シート側に設けられたアッパレール27が移動可能に係合している。
ロアレール21の断面形状は、水平に配置され、フロアと対向する下面21hを有する基底部21aと、基底部21aの一方の端部から折曲され、上方に延出する第1側壁部21bと、基底部21aの他方の端部から折曲され、上方に延出する第2側壁部21cと、第1側壁部21bの上方の端部から折曲し、基底部21aと略平行に第2側壁部21c方向へ延出する第1上面部21dと、第2側壁部21cの上方の端部から折曲し、基底部21aと略平行に第1側壁部21b方向へ延出する第2上面部21eと、第1上面部21dの他方の端部から基底部21a方向に折曲し、第1側壁部21bより長さが短い第1垂下部21fと、第2上面部21eの他方の端部から基底部21a方向に折曲し、第1垂下部21fと空間を介して対向し、第1垂下部21fと略同じ長さの第2垂下部21gとからなっている。
【0018】
又、アッパレール27は、ロアレール21の基底部21aと略平行に設けられた上面部27aと、上面部27aの一方の端部より折曲し、ロアレール21の第1垂下部21fと第2垂下部21gとの間の空間を介してロアレール21内へ延出する第1側壁部27bと、上面部27aの他方の端部より折曲し、ロアレール21の第1垂下部21fと第2垂下部21gとの間の空間を介してロアレール21内へ延出する第2側壁部27cと、第1側df壁部27bの下方の端部よりロアレール21の第1側壁部21b、第1上面部21d,第1垂下部21fで形成される空間へ延出する第1跳上部27dと、第2側壁部27cの下方の端部よりロアレール21の第2側壁部21c,第2上面部21e,第2垂下部21gで形成される空間へ延出する第2跳上部27eとからなっている。
【0019】
そして、鋼球29が、ロアレール21の第1側壁部21b、第1上面部21dと、アッパレール27の第1跳上部27dとで囲まれた 空間に配置されている。また、鋼球30が、ロアレール21の第2側壁部21c、第2上面部21eと、アッパレール27の第2跳上部27eとで囲まれた空間に配置されている。これにより、アッパレール27はロアレール21に対して紙面に対して垂直方向にスムーズに移動する。
【0020】
次に、
図1−
図3を用いてアッパレール27の補強レールを説明する。
アッパレール27には、アッパ補強レール31が取り付けられている。このアッパ補強レール31は、アッパレール27の上面部27aに取り付けられる取付部33と、取付部33のアッパレール27の移動方向(前後方向)に沿った一方の側部から下方に向かって延びた後、上方に向かって延びる第1アッパフック35、取付部の33のアッパレール27の移動方向(前後方向)に沿った他方の側部から下方に向かって延びた後、上方に向かって延びる第2アッパフック37とを有している。
【0021】
第1アッパフック35,第2アッパフック37の断面形状は、それぞれ先端側が鉤状に曲げ返された略J字形となっている。
尚、本実施形態では、
図2、
図3に示すように、アッパ補強レール31の前後方向の長さは、アッパレール27の前後方向の長さの約1/2としている。また、第1アッパフック35、第2アッパフック37のアッパレール27の前後方向の長さは、取付部33の前後方向の長さの約1/2としている。
【0022】
これは、アッパレール27がロアレール21に対して最も前方に来た位置でも第1アッパフック35と第2アッパフック37の後端部がそれぞれ第1ロアフック45と第2ロアフック55の前端部と係合できる位置関係である。
アッパレール27とアッパ補強レール31との取付けを
図1、
図2、
図3を用いて説明する。アッパレール27の長手方向(前後方向)に沿って、その上面部27aに、上方(フロアと反対側の方向)に延びる3本のピン61を設けている。このピン61の周面には、おねじが形成されている。一方、アッパ補強レール31の取付部33には、各ピン61が挿通するピン穴39が形成されている。そして、
図1に示すように、ピン穴39を挿通したピン61にナット63が螺合することにより、アッパレール27にアッパ補強レール31が取り付けられている。
【0023】
次に、
図1−
図8を用いてロアレール21の補強レールを説明する。
図7、
図8はロアレールとロア補強レールとの取付方法を説明する図である。
ロアレール21には、第1ロア補強レール41と、第2ロア補強レール51とが取り付けられている。
【0024】
図1に示すように、第1ロア補強レール41は、ロアレール21の基底部21aの下面21hと対向する第1取付部43と、第1取付部43の左右方向の一方の側部から上方に延びた後、下方に向かって延びる第1ロアフック45とを有している。
第1ロアフック45の断面形状は、先端側が鉤状に曲げ返された略J字形で、第1アッパフック35と空間を介して対向している。そして、アッパレール27に剥離力が作用し、アッパレール27が上方に移動すると、第1アッパフック37が第1ロアフック45と係合し、アッパレール27のロアレール21からの剥離を防止する。
【0025】
第2ロア補強レール51は、ロアレール21の基底部21aの下面21hと対向する第2取付部53と、第2取付部53の左右方向の他方の側部から上方に延びた後、下方に向かって延びる第2ロアフック55とを有している。
第2ロアフック55の断面形状は、先端側が鉤状に曲げ返された略J字形で、第2ロアフック55と空間を介して対向している。そして、アッパレール27に剥離力が作用し、アッパレール27が上方に移動すると、第2アッパフック37は第2ロアフック55と係合することにより、アッパレール27のロアレール21からの剥離を防止する。
【0026】
本実施形態では、ロアレール21の基底部21aの下面21hに第1ロア補強レール41の第1取付部43を取り付け、第1ロア補強レール41の第1取付部43に第2ロア補強レール51の第2取付部53を重なるように取り付けている。
尚、本実施形態では、第1ロア補強レール41、第2ロア補強レール51の第1ロアフック45、第2ロアフック55の前後方向の長さは、ロアレール21のアッパレール27の前後方向の長さの約1/2としている。
【0027】
さらに、第1ロア補強レール41、第2ロア補強レール51の取付部43、取付部53の前後方向の長さは、ロアレール21の前後方向の長さと略同じとしている。
ロアレール21と第1ロア補強レール41,第2ロア補強レール51との取付けを
図1、
図2、
図4を用いて説明する。ロアレール21の前後方向に沿って、その基底部21aに、フロア方向(下方向)に延びる4本のピン71を設けている。このピン71の周面には、おねじが形成されている。一方、第1ロア補強レール41,第2ロア補強レール51の第1取付部43、第2取付部53には、各ピン71が挿通する第1ピン穴47、第2ピン穴57が形成されている。そして、
図1に示すように、第1ピン穴47、第2ピン穴57を挿通したピン71にナット73が螺合することにより、ロアレール21の基底部21aに第1ロア補強レール41の第1取付部43が取り付けられ、第1ロア補強レール41の第1取付部43に第2ロア補強レール51の第2取付部53が重なるように取り付けられている。
【0028】
ここで、第1ピン穴47,第2ピン穴57を説明する。
図4、
図5、
図6に示すように、第1ピン穴47は、左右方向に延びる第1ピン導入部47aと、第1ピン導入部47aの一方の端部から前後方向に延出する第1ピン位置決め部47bからなる略L字形となっている。本実施形態では、第1ピン位置決め部47bは、第1ロア補強レール41の左右方向の中央に形成している。
【0029】
第2ピン穴57も第1ピン穴47と同様に左右方向に延びる第2ピン導入部57aと、第2ピン導入部57aの一方の端部から前後方向に延出する第2ピン位置決め部57bからなる略L字形となっている。本実施形態では、第2ピン位置決め部57bは、第2ロア補強レール51の左右方向の中央に位置している。
【0030】
ここで、
図7、
図8を用いて、ロアレール21と第1ロア補強レール41,第2ロア補強レール51との取付け方法を説明する。
図7に示すように、ロアレール21に対して第1ロア補強レール41を傾けて、第1アッパフック35の端部と第1ロアフック45の端部が接近した状態から、傾きを戻しながらロアレール21の各ピン71を各第1ピン穴47の第1ピン導入部47aに挿通し、挿通後、第1ロア補強レール41の第1取付部43をロアレール21の基底部21aの下面21hに当接させる。そして、第1ロア補強レール41を前後方向に移動させることにより、
図8に示すように、ロアレール21の各ピン71は第1ロア補強レール41の各第1ピン穴47の第1ピン位置決め部47bに移動し、ロアレール21に対する第1ロア補強レール41の位置決めが行われる。
【0031】
次に、
図8に示すように、ロアレール21に対して第2ロア補強レール51を傾けて、第2アッパフック37の端部と第2ロアフック55の端部が接近した状態から傾きを戻しながら、ロアレール21のピン71を第2ピン穴57の第2ピン導入部57aに挿通し、挿通後、第2ロア補強レール51の第2取付部53を第1ロア補強レール41の第1取付部43に当接させる。そして、第2ロア補強レール51を前後方向に沿って移動させることにより、ロアレール21のピン71は第2ロア補強レール51の第2ピン穴57の第2ピン位置決め部57bに移動し、ロアレール21に対する第2ロア補強レール51の位置決めが行われる。
【0032】
そして、第1ピン穴47、第2ピン穴57を挿通したピン71にナット73を螺合させることにより、ロアレール21の基底部21aに第1ロア補強レール41の第1取付部43が取り付けられ、第1ロア補強レール41の第1取付部43に第2ロア補強レール51の第2取付部53が重なるように取り付けられる。
【0033】
本実施形態によれば、以下のような効果が得られる。
(1) ロアレール21の基底部21aに第1ロア補強レール41の第1取付部43が取り付けられ、第1ロア補強レール41の第1取付部43に第2ロア補強レール51の第2取付部53が重なるように取り付けられていることにより、アッパレール27に剥離力が作用すると、その剥離力は、アッパ補強レール31を介して第1ロア補強レール41、第2ロア補強レール51へ伝達され、第1ロア補強レール41の第1取付部43では、ロアレール21の基底部21aの下面21hを押す力となり、第2ロア補強レール51の第2取付部53では、第1ロア補強レール41の第1取付部43を押す力となる。
【0034】
このため、ロアレール21の基底部21aの下面21hと第1ロア補強レール41の第1取付部43との取付部分、第1ロア補強レール41の第1取付部43と第2ロア補強レール51の第2取付部53との取付部分には、両者を分離する剥離力が作用しない。
よって、ロアレール21の基底部21aの下面21hと第1ロア補強レール41の第1取付部43との取付部分、第1ロア補強レール41の第1取付部43と第2ロア補強レール51の第2取付部53との取付部分の面積を取付部分間の保持のためだけに広げる必要がなく、製造コストが安くなる。
【0035】
(2) 第1ロア補強レール41の第1取付部43には、第1ピン導入部47aと第1ピン位置決め部47bからなる略L字形の第1ピン穴47が設けられ、第2ロア補強レール51の第2取付部53には、第2ピン導入部57aと第2ピン位置決め部57bからなる略L字形の第2ピン穴57が設けられているので、
図7、
図8で示した取付方法により、ピン71が設けられたロアレール21に対して第1ロア補強レール41と第2ロア補強レール51が容易に取り付けられ、さらに、位置決めも容易にできる。
【0036】
(3) 第1ロア補強レール41、第2ロア補強レール51の第1ロアフック45、第2ロアフック55の前後方向の長さは、ロアレール21の前後方向の長さの約1/2としている。さらに、第1ロア補強レール41、第2ロア補強レール51の取付部43、取付部53の前後方向の長さは、ロアレール21の前後方向の長さと略同じとしている。
【0037】
よって、第1ロア補強レール41、第2ロア補強レール51の曲げ剛性を高めつつ、第1ロアフック45、第2ロアフック55の長さを必要最低限に抑えられるので、製造コストが安くなる。
また、ロアレール21の曲げ剛性も高くなり、剥離による変形を防止できる。
【0038】
本発明は、上記実施形態に限定するものではない。上記実施形態では、第1ロア補強レール41、第2ロア補強レール51の第1ロアフック45、第2ロアフック55の前後方向の長さは、ロアレール21の前後方向の長さの約1/2としている。さらに、第1ロア補強レール41、第2ロア補強レール51の取付部43、取付部53の前後方向の長さは、ロアレール21のアッパレール27の移動方向の長さと略同じとした。
【0039】
少なくとも第1ロア補強レール41の第1取付部43を第1ロアフック45より長く設定することで、ロアレール21の剛性は高くなる。
さらに、第1ロア補強レール41と第2ロア補強レール51のロアレール21への取り付けは、ピン61とナット63による螺合に限らず、溶接等で行ってもよい。