特許第6644412号(P6644412)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6644412
(24)【登録日】2020年1月10日
(45)【発行日】2020年2月12日
(54)【発明の名称】接合構造
(51)【国際特許分類】
   F16H 57/03 20120101AFI20200130BHJP
   F16H 57/029 20120101ALI20200130BHJP
【FI】
   F16H57/03
   F16H57/029
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-244895(P2015-244895)
(22)【出願日】2015年12月16日
(65)【公開番号】特開2017-110719(P2017-110719A)
(43)【公開日】2017年6月22日
【審査請求日】2018年10月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000231350
【氏名又は名称】ジヤトコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100148301
【弁理士】
【氏名又は名称】竹原 尚彦
(74)【代理人】
【識別番号】100077779
【弁理士】
【氏名又は名称】牧 哲郎
(74)【代理人】
【識別番号】100078260
【弁理士】
【氏名又は名称】牧 レイ子
(72)【発明者】
【氏名】杉本 雅道
【審査官】 前田 浩
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−61000(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 57/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の部材のフランジ部と、他方の部材のフランジ部とを、互いの接合面を重ね合わせて接合した接合構造であって、
前記一方の部材のフランジ部と前記他方の部材のフランジ部のうちの少なくとも一方のフランジ部では、重ね合わせ方向における前記接合面とは反対側に、前記接合面側に窪んだ凹部が形成されており、
前記フランジ部の外周側から見て、前記凹部は、頂点を前記接合面側に位置させたアーチ状の縁で形成されており、
前記一方の部材のフランジ部と前記他方の部材のフランジ部では、ボルトを挿通させるボス部が、互いの接合面を挟んで対向する位置に設けられており、
前記凹部は、前記フランジ部の周方向で隣接する一方のボス部から他方のボス部まで及ぶ範囲に形成されていることを特徴とする接合構造。
【請求項2】
前記ボス部は、前記フランジ部の周方向に間隔をあけて複数設けられていることを特徴とする請求項1に記載の接合構造。
【請求項3】
前記アーチ状の縁は、前記フランジ部の周方向で隣接する一方のボス部から他方のボス部まで及ぶ範囲に形成されて、前記凹部を形成しており、
前記アーチ状の縁の頂点は、前記フランジ部の周方向で隣接する一方のボス部と他方のボス部の中間に位置していることを特徴とする請求項2に記載の接合構造。
【請求項4】
前記アーチ状の縁は、前記一方のボス部から他方のボス部まで同じ曲率半径で形成されていることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の接合構造。
【請求項5】
前記凹部は、前記一方の部材と前記他方の部材にそれぞれ設けられており、
前記一方の部材の前記凹部と、前記他方の部材の前記凹部は、前記互いの接合面を挟んで対向する位置に設けられていることを特徴とする請求項1から請求項4の何れか一項に記載の接合構造。
【請求項6】
前記一方の部材は、自動変速機の変速機構部を収容する変速機ケースであり、
前記他方の部材は、前記自動変速機のトルクコンバータを収容するトルコンカバーであることを特徴とする請求項1から請求項5の何れか一項に記載の接合構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接合構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一方の部材の周壁を全周に亘って囲むフランジ部と、他方の部材の周壁を全周に亘って囲むフランジ部とを互いに重ね合わせたのち、重ね合わせたフランジ部同士をボルトとナットで連結して、一方の部材と他方の部材とを接合する接合構造が種々知られている。
【0003】
特許文献1には、この種の接合構造の一例となる変速機ケースとオイルパンとの接合構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−112126号公報
【0005】
この種の接合構造は、変速機構部を収容する変速機ケースと、トルクコンバータを収容するトルコンカバーとの接合にも採用されている。
【0006】
図4は、従来例にかかる接合構造を説明する図であり、(a)は、変速機ケース2とトルコンカバー3との接合部の要部拡大図であり、(b)は、(a)における面Aで、変速機ケース2のフランジ部21とトルコンカバー3のフランジ部31との接合部を切断した断面図である。
【0007】
変速機構部を収容する変速機ケース2と、トルクコンバータを収容するトルコンカバー3との接合部に採用された従来例にかかる接合構造では、変速機ケース2の周壁を全周に亘って囲むフランジ部21と、トルコンカバー3の周壁を全周に亘って囲むフランジ部31に、ボルトBを挿通させるボス部22、23が、周方向に所定間隔で複数設けられている。
そして、変速機ケース2とトルコンカバー3は、重ね合わせたフランジ部21、31同士を、ボス部22、23を挿通させたボルトBで連結して、互いに接合されている。
【0008】
ここで、車両に搭載された自動変速機には、エンジンの振動や走行に起因する振動などが作用しており、変速機ケース2やトルコンカバー3には、これら振動に起因する応力が作用している。
そのため、これら応力などによりフランジ部21、31が変形すると、重ね合わせたフランジ部21、31の間に隙間が生じてしまい、この隙間から、変速機ケース2内のオイルが外部に漏出する虞がある。
そこで、変速機ケース2とトルコンカバー3の接合方向におけるフランジ部21、31の厚みW1を厚くして、変速機ケース2側のフランジ部21とトルコンカバー3側のフランジ部31の剛性強度を高めることで、フランジ部21、31の変形を防止して、重ね合わせたフランジ部21、31の間のシール性を確保している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
近年、自動変速機を搭載した車両の燃費向上や、自動変速機の作製コストの低減のために、自動変速機をより軽量化することが求められている。
しかし、軽量化のために、フランジ部21、31の厚みを単純に薄くすると、フランジ部21、31の剛性強度が低下するため、重ね合わせたフランジ部21、31の間のシール性を確保できなくなる虞がある。
【0010】
そのため、重ね合わせたフランジ部の間のシール性を確保しつつ、軽量化することが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、
一方の部材のフランジ部と、他方の部材のフランジ部とを、互いの接合面を重ね合わせて接合した接合構造であって、
前記一方の部材のフランジ部と前記他方の部材のフランジ部のうちの少なくとも一方のフランジ部では、重ね合わせ方向における前記接合面とは反対側に、前記接合面側に窪んだ凹部が形成されており、
前記フランジ部の外周側から見て、前記凹部は、頂点を前記接合面側に位置させたアーチ状の縁で形成されており、
前記一方の部材のフランジ部と前記他方の部材のフランジ部では、ボルトを挿通させるボス部が、互いの接合面を挟んで対向する位置に設けられており、
前記凹部は、前記フランジ部の周方向で隣接する一方のボス部から他方のボス部まで及ぶ範囲に形成されている構成の接合構造とした。
【0012】
本発明によれば、凹部が形成されたフランジ部では、他のフランジ部との接合面の反対側に、凹部を構成する曲面状の縁が位置しており、接合面からフランジ部に入力された応力が、フランジ部内で、曲面状の縁に沿う方向に分散する。
よって、凹部を設けたことでフランジ部の重ね合わせ方向の厚みが薄くなっていても、接合面に直交する方向の応力に対する剛性強度を確保することができる。
これにより、凹部を形成しても、フランジ部の剛性強度を確保して、重ね合わせたフランジ部の間のシール性を確保することができるので、シール性を確保しつつ、凹部を設けた分だけ軽量化することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施の形態にかかる接合構造を適用した無段変速機を説明する図である。
図2】実施の形態にかかる接合構造を説明する図である。
図3】変形例にかかる接合構造を説明する図である。
図4】従来例にかかる接合構造を説明する図である。
【0014】
以下、本発明にかかる接合構造の実施の形態を、変速機ケース2のフランジ部21と、トルコンカバー3のフランジ部31との接合構造1に適用した場合を例に挙げて説明する。
【0015】
図1は、実施の形態にかかる接合構造1を適用した変速機ケース2とトルコンカバー3を説明する図であり、(a)は、斜視図であり、(b)は、(a)における要部拡大図である。
図2は、変速機ケース2とトルコンカバー3との接合構造1を説明する図であり、(a)は、図1の(b)における面Aで、変速機ケース2とトルコンカバー3との接合部を切断した断面図であって、接合部をフランジ部21、31の外周側から見た断面に相当する図であり、(b)は、(a)におけるA−A断面図である。
【0016】
車両用の自動変速機は、変速機構部(図示せず)を収容する変速機ケース2と、トルクコンバータ(図示せず)を収容するトルコンカバー3とを有しており、これら変速機ケース2とトルコンカバー3は、互いのフランジ部21、31同士を重ね合わせたのち、重ね合わせたフランジ部21、31を、ボルトで連結して互いに接合されている。
【0017】
図2に示すように、変速機ケース2側のフランジ部21とトルコンカバー3側のフランジ部31の互いの接合面21a、31aは、変速機ケース2とトルコンカバー3との接合方向(図2における左右方向)に直交する平坦面となっており、フランジ部21、31は、変速機ケース2とトルコンカバー3とを連通させる開口(図示せず)を全周に亘って囲むように設けられている。
【0018】
フランジ部21、31には、ボルトBの挿通孔221、321を有するボス部22(22A、22B)、32(32A、32B)が、接合面21aと接合面31aとの合わせ面Fを挟んで対象となる位置に設けられており、これらボス部22(22A、22B)、32(32A、32B)は、フランジ部21、31の周方向に所定間隔で複数設けられている。
ここで、以下の説明では、ボス部22A、22Bを区別しない場合には、単純にボス部22と標記する。ボス部32A、32Bについても同様とする。
【0019】
フランジ部21では、周方向で隣接するボス部22A、22Bの間に、接合面21a側に窪んだ凹部23が設けられており、フランジ部31では、周方向で隣接するボス部32A、32Bの間に、接合面31a側に窪んだ凹部33が設けられている。
【0020】
これら凹部23、33は、合わせ面Fを挟んで対称となる形状で形成されており、断面視においてこれら凹部23、33は、頂点P、Pを合わせ面F(接合面21a、31a)側に位置させた曲線状の縁231、331を有している。
【0021】
縁231、331は、同一の曲率半径Rを持つ曲線状を成しており、この曲線上で最も合わせ面F側に位置する頂点P、Pは、フランジ部21、31の周方向で間隔を開けて配置されたボス部22A、22Bの中間と、ボス部32A、32Bの中間に、それぞれ位置している。
【0022】
フランジ部21、31の周方向において凹部23、33は、一方のボス部22A、32Aから、他方のボス部22B、32Bまで及んで形成されており、凹部23、33が設けられていない場合のフランジ部21、31の側面21b、31b(接合方向における接合面21a、31aとは反対側の面)の位置から、縁231、331までの接合方向(図中左右方向)の深さd、dは、ボス部22(22A、22B)、33(33A、33B)から離れるにつれて大きくなって、頂点P、Pの位置で最大となっている。
【0023】
そのため、フランジ部21、31は、凹部23、33とボス部22、32との境界点a、aでの接合方向の厚みWaよりも、頂点P、Pでの接合方向の厚みWbのほうが薄くなっている。
よって、凹部23、23を設けていない従来例の場合のフランジ部21、31のように、フランジ部21、31が、周方向の全周に亘って同じ厚みW1(図4参照)で形成されている場合に比べて、厚みが薄くなった分だけ、変速機ケース2やトルコンカバー3の重量が少なくなっている。
【0024】
実施の形態では、周方向で隣接するボス部22(22A、22B)、32(32A、32B)のうち、一方のボス部22A、32Aの挿通孔221、321の中心(軸線X1)と、他方のボス部22B、32Bの挿通孔221、321の中心(軸線X2)とが、フランジ部21、31の周方向に距離L離れて位置している。
そして、軸線X1と軸線X2の中間(軸線X1と軸線X2から距離L/2離れた位置)を通る線分であって、これら軸線X1、X2に対して平行な線分X上に、縁231、331の頂点P、Pが位置するように、凹部23、33が設けられている。
【0025】
変速機ケース2のフランジ部21とトルコンカバー3のフランジ部31では、フランジ部21、31の周方向に間隔をあけて複数のボス部22、33が設けられている。
実施の形態では、周方向で隣接するボス部22、22の間に設けられた凹部23と、周方向で隣接するボス部32、32の間に設けられた凹部33は、フランジ部21、31の周方向に複数設けられており、変速機ケース2側の凹部23と、トルコンカバー3側の凹部33は、合わせ面Fを間に挟んだ背中合わせの関係で、フランジ部21とフランジ部31に同数ずつ設けられている。
【0026】
以下、実施の形態にかかる接合構造1の作用を説明する。
変速機ケース2とトルコンカバー3には、自動変速機やこの自動変速機を搭載した車両の振動などが作用しており、変速機ケース2のフランジ部21とトルコンカバー3のフランジ部31との接合部には、これらの振動に起因する応力が作用している。
【0027】
ここで、フランジ部21、31が応力により変形して、重ね合わせたこれらフランジ部21、31の間に隙間が生じると、この生じた隙間から、変速機ケース2内のオイルが外部に漏出する虞があるので、フランジ部21、31には、振動等に起因して作用する応力で変形することのない剛性強度が要求されている。
【0028】
断面視においてフランジ部21、31は、アーチ形状を成す縁231、331を有しており、例えばフランジ部21、31の接合方向(図2の(a)における左右方向)に作用する応力F1がフランジ部21、31に入力されると、入力された応力F1は、曲線状の縁231、331に沿って、フランジ部21、32の周方向(ボス部22A、22B、ボス部32A、32Bの方向)に分散されるようになっている(図中、矢印F2参照)。
【0029】
そして、フランジ部21、31の周方向における凹部23、33が設けられた領域の両側には、剛性強度の高いボス部22A、32Aと、ボス部22B、32Bがそれぞれ位置しており、フランジ部21、31には、凹部23、33とボス部22、32との境界点a、aから、反力F3が作用している。
そのため、フランジ部21、31の凹部23、33が設けられた領域は、ボス部22、32の方向に分散された応力F2と、ボス部22、32側から作用する反力F3により、フランジ部21、31の周方向で圧縮されて、剛性強度が高められるようになっている。
【0030】
そのため、フランジ部21、31に凹部23、33を設けたことで、フランジ部21、31の接合方向(図2における左右方向)の厚みが薄くなっていても、厚みが薄くなったことに起因する剛性強度の低下分を、フランジ部21、31においてアーチ形状を成す縁231、331が設けられた領域での剛性強度の上昇により、補うことができるようになっている。
そのため、凹部23、33を設けた分だけ、フランジ部21、31を有する変速機ケース2およびトルコンカバー3の重量が少なくなるので、自動変速機の重量を低減させることが可能になる。
【0031】
以上の通り、実施の形態では
(1)変速機ケース2(一方の部材)のフランジ部21と、トルコンカバー3(他方の部材)のフランジ部31とを、互いの接合面21a、31aを重ね合わせて接合した接合構造1であって、
変速機ケース2のフランジ部21とトルコンカバー3のフランジ部31には、重ね合わせ方向における接合面21a、31aとは反対側に、接合面21a、31a側に窪んだ凹部23、33が形成されており、
フランジ部21、31の外周側から見て、凹部23、33は、頂点P、Pを接合面21a、31a側に位置させた曲線状の縁231、331を有している構成とした。
【0032】
このように構成すると、凹部23、33が形成されたフランジ部21、31では、他のフランジ部31、21との接合面21a、31aとは反対側に、凹部23、33を構成する曲面状の縁231、231が位置しており、接合面21a、31aからフランジ部21、31に入力された応力F1が、フランジ部21、31内で、曲面状の縁231、331に沿う方向に分散する(図2における、符号F2参照)。
よって、凹部23、33を設けたことでフランジ部21、31の重ね合わせ方向の厚みが薄くなっていても、接合面21a、31aに直交する方向(重ね合わせ方向)の応力に対する剛性強度を確保することができる。
これにより、凹部23、33を形成しても、フランジ部21、31の剛性強度を確保して、重ね合わせたフランジ部21、31の間のシール性を確保することができるので、シール性を確保しつつ、凹部23、33を設けた分だけ、自動変速機を軽量化することが可能になる。
【0033】
(2)変速機ケース2のフランジ部21とトルコンカバー3のフランジ部31では、ボルトBを挿通させるボス部22、23が、互いの接合面21a、31aを挟んで対向する位置に設けられていると共に、ボス部22、33は、フランジ部21、31の周方向に間隔をあけて複数設けられており、
凹部23、33は、フランジ部21、31の周方向で隣接する一方のボス部22A、333Aから他方のボス部22B、33Bまで及ぶ範囲に形成されている構成とした。
【0034】
このように構成すると、フランジ部21、31内で曲面状の縁231、331に沿う方向に分散させた応力F2を、剛性強度の高いボス部22、32で受けることになる。
これにより、フランジ部21、31における凹部23、33が設けられた領域には、ボス部22(22A、22B)、33(33A、33B)からの反力F3が作用するので、フランジ部21、31における凹部23、33が設けられた領域は、曲面状の縁231、331に沿う方向で圧縮されて、剛性強度がいっそう高められるので、重ね合わせたフランジ部21、31の間のシール性を、より確実に確保することができる。
【0035】
(3)曲線状の縁231、331は、フランジ部21、31の周方向で隣接する一方のボス部22A、32Aから他方のボス部22B、32Bまで及ぶ範囲に形成されて、凹部23、33を形成しており、
曲線状の縁231、331の頂点P、Pは、フランジ部21、31の周方向で隣接する一方のボス部22A、32Aと他方のボス部22B、32Bの中間に位置している構成とした。
【0036】
このように構成すると、凹部23、33が形成されたフランジ部21、31に入力された応力を、一方のボス部22A、32A側と他方のボス部22B、32B側に、略均等に分散させることができる。
これにより、入力された応力が均等に分散されない場合に比べて、凹部23、33が形成されたフランジ部21、31の剛性強度をより確実に確保することができる。
【0037】
(4)曲線状の縁231、331は、一方のボス部22A、32Aから他方のボス部22B、32Bまで同じ曲率半径Rで形成されている構成とした。
【0038】
このように構成すると、凹部23、33が形成されたフランジ部21、31に入力された応力F1を、一方のボス部22A、32A側と他方のボス部22B、32B側に、略均等に分散させることができると共に、分散させた応力F2を、一方のボス部22A、32Aと他方のボス部22B、32Bで均等に受けることができる。
これにより、凹部23、33が形成されたフランジ部21、31は、曲面状の縁231、331に沿う方向で均等に圧縮されて、剛性強度がいっそう高められるので、重ね合わせたフランジ部21、31の間のシール性を、より確実に確保することができる。
【0039】
(5)凹部23、33は、変速機ケース2とトルコンカバー3のフランジ部21、31にそれぞれ設けられており、
変速機ケース2の凹部23と、トルコンカバー3の凹部33は、互いの接合面21a、31aを挟んで対向する位置に設けられている構成とした。
【0040】
このように構成すると、重ね合わせ方向で、互いの接合面21a、31aを挟んで一方側に位置するフランジ部21と他方側に位置するフランジ部31に、それぞれ凹部23、33が設けられているので、一方側に位置する凹部23が形成されたフランジ部21と、他方側に位置する凹部33が形成されたフランジ部21の剛性強度を、ほぼ同じ剛性強度で揃えることが可能になる。
これにより、振動による応力F1が、一方側のフランジ部21と他方側のフランジ部31に作用しても、一方側のフランジ部21と他方側のフランジ部31とに、略均等に応力が入力されて、略均等に分散するので、一方側のフランジ部21と他方側のフランジ部31との間に隙間が生じにくくなる。
これにより、重ね合わせたフランジ部21、31の間のシール性を、より確実に確保することができる。
【0041】
(6)変速機ケース2(一方の部材)側のフランジ部21と、トルコンカバー3(他方の部材)側のフランジ部に、凹部23、33を設けた構成とした。
【0042】
このように構成すると、変速機ケース2のフランジ部21と、トルコンカバー3のフランジ部31との互いの接合面21a、31aの間から、変速機ケース2内のオイルが外部に漏出することを好適に阻止することが可能になる。
また、凹部23、33を設けた分だけ、変速機ケース2やトルコンカバーの重量が少なくなるので、自動変速機をより軽量化することができ、自動変速機を搭載した車両の燃費向上や、自動変速機の作製コストの低減が期待される。
【0043】
図3の(a)は、変形例にかかる変速機ケース2とトルコンカバー3との接合構造1Aを説明する図であり、(b)は、他の変形例にかかる変速機ケース2とトルコンカバー3との接合構造1Bを説明する図である。
【0044】
前記した実施の形態では、フランジ部21、31の周方向で隣接するボス部22、33の間に設けられた凹部23、33は、周方向における一方のボス部22A、33Aから、他方のボス部22B、32Bまで及ぶ範囲に形成されている場合を例示したが、本願発明は、この態様に限定されるものではない。
【0045】
例えば、図3の(a)に示すように、フランジ部21、31における一方のボス部22A、33Aと他方のボス部22B、32Bの間の領域の少なくとも一部に、外周側から見て、頂点P、Pを接合面21a、31a側に位置させた曲線状の縁231、331が設けられていれば良い。
【0046】
この場合にも、凹部23、33が形成されたフランジ部21、31では、他のフランジ部31、21との接合面21a、31aとは反対側に、凹部23、33を構成する曲面状の縁231、231が位置しており、接合面21a、31aからフランジ部21、31に入力された応力F1が、フランジ部21、31内で、曲面状の縁231、331に沿う方向に分散することになる(図3の(a)における、符号F2参照)。
そして、フランジ部21、31内で曲面状の縁231、331に沿う方向に分散させた応力F2を、剛性強度の高いボス部22、32と、フランジ部21、31の凹部23、33が設けられていない領域で受けることになる。
これにより、フランジ部21、31における凹部23、33が設けられた領域には、ボス部22(22A、22B)、33(33A、33B)と、フランジ部21、31の凹部23、33が設けられていない領域の剛性強度に起因する反力F3が作用するので、フランジ部21、31における凹部23、33が設けられた領域は、曲面状の縁231、331に沿う方向で圧縮されて、剛性強度がいっそう高められるので、重ね合わせたフランジ部21、31の間のシール性を、より確実に確保することができる。
【0047】
なお、図3の(a)に示す接合構造1Aにおいても、曲線状の縁231、331の頂点P、Pが、フランジ部21、31の周方向で隣接する一方のボス部22A、32Aと他方のボス部22B、32Bの中間に位置しているが、図3の(b)に示す接合構造1Bのように、頂点P、Pの位置を、一方のボス部22A、32Aと他方のボス部22B、32Bの中間を通る線分Xから、フランジ部21、31の周方向に所定距離ΔWオフセットさせている凹部23、33としても良い。
【符号の説明】
【0048】
1、1A、1B 接合構造
2 変速機ケース
3 トルコンカバー
21 フランジ部
21a 接合面
21b 側面
22(22A、22B) ボス部
23 凹部
31 フランジ部
31a 接合面
32(32A、32B) ボス部
33 凹部
221 挿通孔
321 挿通孔
231 縁
331 縁
B ボルト
F 合わせ面
L 距離
P 頂点
R 曲率半径
X 線分
X1 軸線
X2 軸線
a 境界点
図1
図2
図3
図4