特許第6644417号(P6644417)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6644417
(24)【登録日】2020年1月10日
(45)【発行日】2020年2月12日
(54)【発明の名称】電子回路用電源回路
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/28 20060101AFI20200130BHJP
【FI】
   H02M3/28 V
   H02M3/28 C
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-15374(P2016-15374)
(22)【出願日】2016年1月29日
(65)【公開番号】特開2017-135915(P2017-135915A)
(43)【公開日】2017年8月3日
【審査請求日】2018年11月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000227401
【氏名又は名称】日東工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001977
【氏名又は名称】特許業務法人なじま特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大澤 寛治
(72)【発明者】
【氏名】加藤 浩久
(72)【発明者】
【氏名】加藤 幸一郎
【審査官】 佐藤 匡
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−153990(JP,A)
【文献】 特開2003−070031(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力される第1電圧を変圧して負荷機器に出力する電子回路用電源回路において、前記第1電圧を第4電圧に昇圧する第1電源回路と、第1電圧と第4電圧との差分を第2電圧として取り出す第2電源回路とを備え、取出された第2電圧を負荷機器の電源として利用することを特徴とする電子回路用電源回路。
【請求項2】
前記第1電源回路は、前記第1電圧により電力を蓄積する蓄積部を備え、前記第2電源回路は、この第1電源回路の蓄積部から前記第2電圧を取り出すことを特徴とする請求項1に記載の電子回路用電源回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変動する高電圧を変圧して負荷機器に電源供給するに適した電子回路用電源回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば太陽光発電システムにおいては、太陽電池が発生する電力を、太陽光発電システムに組み込まれている電流や電圧などの計測機器の電源とすることが望まれる。しかし、太陽電池モジュールを複数個直列に接続したストリングが発生する電圧は、0V〜1000Vまで大きく変動するのに対して、計測機器などの負荷機器の駆動電圧は例えば24Vで一定である。
【0003】
そこで本出願人は特許文献1に示すように、ストリングが発生する電圧を定電圧回路によって大幅に電圧降下させ、計測機器などの負荷機器の電源とするユニットを開発した。しかしこのユニットでは高電圧をトランスで電圧降下させているために電力損失が大きくなるうえ、電力損失に伴う発熱量が大きくなる。そのため、この大きな発熱に対する熱対策が必要となり、放熱手段が大型化する等の問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015−91181号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って本発明の目的は上記した従来の問題点を解決し、変動する高電圧を大きい電力損失を生じさせることなく低電圧に変換し、負荷機器の電源として利用することができる電子回路用電源回路を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するためになされた本発明は、入力される第1電圧を変圧して負荷機器に出力する電子回路用電源回路において、前記第1電圧を第4電圧に昇圧する第1電源回路と、第1電圧と第4電圧との差分を第2電圧として取り出す第2電源回路とを備え、取出された第2電圧を負荷機器の電源として利用することを特徴とするものである。
【0007】
前記第1電源回路は、前記第1電圧により電力を蓄積する蓄積部を備え、前記第2電源回路は、この第1電源回路の蓄積部から前記第2電圧を取り出すことができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の電子回路用電源回路は、入力される第1電圧により第1電源回路の蓄積部に電力を蓄積し、第1電圧を第4電圧に昇圧し、第1電圧と第4電圧との差分を第2電圧として取り出し、取出された第2電圧を負荷機器の電源として利用する。このためトランスで電圧降下させていた従来の回路に比べて電力損失を小さくすることができ、発熱量を減少させることができる。従って放熱手段も小型化することができ、全体を小型化することが可能となる。
【0009】
蓄積部を、トランスとスイッチング部とを備え、スイッチング部はONのときトランスのコアに電力を蓄積し、OFFしたときに蓄積された電力を第2電源回路に放電するものとすれば、第2電源回路の構成やスイッチング部の操作等によって、第2電圧を任意の値とすることができる。
【0010】
第2電源回路が、第2電圧を第3電圧に変換する変換部を備えるものとすれば、負荷機器の動作電圧に対応するための調整が容易であり、また第3電圧にまで変換するので、第1電圧が大きく変動しても対応可能である。
【0011】
この変換部を第2電圧と第3電圧とを絶縁する絶縁型コンバータとすれば、負荷機器の絶縁を確保することができる。
【0012】
第1電源回路を、入力した雷サージ電圧を降下させる第1保護素子と、第1保護素子により降下させた雷サージ電圧を更に降下させる第2保護素子を備えたものとすれば、雷サージが侵入した場合にも、第1電源回路に入力される電圧を抑えることができ、第1電源回路の定格電圧を大きくする必要がなくなり、小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の電子回路用電源回路を組み込んだ太陽光発電システムの全体図である。
図2】実施形態の電子回路用電源回路の回路構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に本発明の実施形態を説明する。
先ず図1に、本発明の電子回路用電源回路1を組み込んだ太陽光発電システムの全体図を示す。本発明の電子回路用電源回路1は太陽光パネル2とパワーコンディショナ3との間に設置された接続箱4の内部に収納され、負荷機器5である計測装置に直流電源を供給するものである。パワーコンディショナ3は負荷または系統に接続されている。
【0015】
この計測装置は太陽光パネル2によって発電される電圧、電流、電力などを計測する装置であり、本実施形態では、その電源電圧は前記したように24Vである。一方、太陽光パネル2から出力される電圧は時刻や気象条件によって大きく変動し、本実施形態では0Vから最高1000Vに達する。いうまでもなく、太陽光パネル2からの出力は直流である。以下に図2によって実施形態の電子回路用電源回路1を詳細に説明する。
【0016】
図2に示すように、太陽光パネル2によって発電された第1電圧(例えば最高1000V)は、電圧降下回路10を介して第1電源回路20に入力される。電圧降下回路10は雷サージが侵入した場合にその高電圧を降下させるための回路であり、第1保護素子11と第2保護素子12とを抵抗13を挟んで並列に接続したものである。これらの保護素子は何れも酸化亜鉛素子からなり、雷サージのような高電圧に対しては低抵抗の導体として作用し、低電圧に対しては高抵抗の絶縁体として作用する電圧−抵抗非直線特性を備えたものである。
【0017】
本実施形態では、第1電源回路20の動作電圧を第1電圧とし、定格電圧をそれ以上とした場合、第1電源回路20は定格電圧までは壊れることがない。このため電圧降下回路10は、例えば所定電圧の雷サージ電圧を受けた場合にも第1電源回路20の定格電圧以下にまで電圧を降下させることができる機能を持たせればよい。なお上記の例において所定電圧以上の雷サージ電圧は、接続箱4内の避雷装置によりカットされるため、第1保護素子11に入力される電圧値は所定電圧以上にはならない。第1保護素子11は雷サージ電圧を一定電圧に降圧する機能を持つものとし、この電圧を抵抗13と第2保護素子12によってそれぞれに電圧分担させ、第2保護素子12の両端から定格電圧以下の電圧を抽出するように構成されている。本実施形態の保護素子は避雷器であり、避雷器は定格電圧が大きく、その種類によって定格電圧の差も大きいため、第2保護素子12における電圧を第1電源回路20の定格電圧に調整することが困難となる場合がある。そこで、抵抗13と第2保護素子12によってそれぞれに電圧分担することで、抵抗13の選定により自由に第2保護素子12との電圧分担の割合を調節することができる。
【0018】
第1電源回路20は、第1トランス21と第1スイッチング部22とからなる蓄積部23を備えている。この蓄積部23は、第1トランス21の一次巻線24と二次巻線25を逆向きとしたフライバック式コンバータと呼ばれる周知の絶縁型のDC−DCコンバータであり、一次巻線24の電流を一次巻線24と直列に接続されている第1スイッチング部22によりオンオフする。なお第1スイッチング部22のオンオフ動作は、スイッチング用IC26によって制御される。
【0019】
第1スイッチング部22がオンとなると第1トランス21の一次巻線24に電流が流れ、発生する磁束によりコアが磁化されてエネルギーが蓄積される。このとき二次巻線25に逆起電力が発生するが、直列に挿入されているダイオード27の向きが逆であるため二次巻線25に誘導電流が流れることはない。なおこのとき蓄積できるエネルギーはトランスの特性により決定され、例えば100Vに設定しておけば、第1電圧が100V〜1000Vの範囲で変動しても、蓄積エネルギーは略一定となる。これにより、第1電源回路の蓄積部23は第1トランス21のコアにエネルギーを蓄積し、第1電圧を第4電圧に昇圧する。
【0020】
次に第1スイッチング部22をオフとすると、コアに蓄積されていたエネルギーが開放され、ダイオード27を通じて二次巻線25に電流が流れる。このとき二次巻線25の電圧が24Vとなるように抵抗28やコンデンサ29を設定しておけば、第1電圧が大きく変動しても常に24Vを取り出すことができる。この電圧は電路30によってスイッチング用IC26の電源として利用される。スイッチング用IC26の消費電力はごく僅かであるから、トランスで降圧していた従来回路に比較して、第1電源回路20の電力損失は非常に小さく、発熱量も小さくなる。
【0021】
40は第2電源回路であり、第2トランス41と第2スイッチング部42とを備えている。第2トランス41の一次巻線43及び第2スイッチング部42は、前記した第1電源回路20の第1トランス21の一次巻線24と直列に接続されている。また一次巻線43の一端は、第1トランス21と第1スイッチング部22との中間点にダイオード44を介して接続されている。
【0022】
第1スイッチング部22がオフとされたとき、第1トランス21のコアに蓄積されていたエネルギーにより第1トランス21の一次巻線24にも逆方向に電流が流れる。この電圧は前記したように第2電圧である100Vに設定されている。すなわち、第1電源回路20は第1スイッチング部22がオフとされたとき、一次巻線43に第2電圧を発生させる。これにより、第2電源回路は、第1電圧と第1電源回路で昇圧した第4電圧(図2では1100V)との差分から第2電圧を取り出している。第2スイッチング部42をオンとしておけば、この第2電圧は第2トランス41の一次巻線43に印加され、第2トランス41のコアにエネルギーを蓄積する。
【0023】
第2トランス41は2つの二次巻線45、46を備えており、二次巻線45には負荷出力回路47が接続され、二次巻線46には第2スイッチング部制御回路48が接続されている。第2スイッチング部42がオフとされたとき第2トランス41のコアに蓄積されていたエネルギーが開放され、負荷出力回路47に第3電圧の電流が流れる。この第3電圧は24Vに設定されており、負荷機器である計測装置に直流電源として供給される。同様に、第2スイッチング部42がオフとされたとき第2スイッチング部制御回路48にも電流が流れ、この電流は第2スイッチング部42のオンオフ制御に用いられる。
【0024】
このように、第2トランス41は第1電源回路20から取出された第2電圧を第3電圧に変換する変換部として機能するものである。第1電圧を電圧降下させて負荷機器5に供給する回路に比べて、第2電圧を第3電圧に電圧降下させて負荷機器5に供給する回路とすることで、電力損失を小さくすることができ、発熱量を減少させることができる。また第1電圧が大幅に変動しても第2電圧は安定した値となり、第3電圧はさらに安定した値となるので、本実施形態によれば負荷機器5である計測装置に安定した直流電源を供給することができる。
【0025】
また第2トランス41も第トランス21と同じく絶縁型コンバータであり、入力側と出力側は絶縁されているため、第1電源回路20に第1電圧が入力されたり、雷サージが侵入したような場合にも、負荷機器5は完全に絶縁されている。
【0026】
なお、上記した実施形態では第1電源回路10から取出した第2電圧を第2電源回路40によって第3電圧に変換したうえで負荷機器5に供給したが、第2電圧を負荷機器5に直接供給することも可能である。
【0027】
また、上記した実施形態では第1電源回路10に入力される電源を太陽光パネル2としたが、例えば風力発電のようなその他の分散電源であっても差し支えない。
【符号の説明】
【0028】
1 電子回路用電源回路
2 太陽光パネル
3 パワーコンディショナ
4 接続箱
5 負荷機器
10 電圧降下回路
20 第1電源回路
11 第1保護素子
12 第2保護素子
13 抵抗
21 第1トランス
22 第1スイッチング部
23 蓄積部
24 一次巻線
25 二次巻線
26 スイッチング用IC
27 ダイオード
28 抵抗
29 コンデンサ
30 電路
40 第2電源回路
41 第2トランス
42 第2スイッチング部
43 一次巻線
44 ダイオード
45 二次巻線
46 二次巻線
47 負荷出力回路
48 第2スイッチング部制御回路
図1
図2