(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6644424
(24)【登録日】2020年1月10日
(45)【発行日】2020年2月12日
(54)【発明の名称】ナビゲーション装置および誘導経路探索方法
(51)【国際特許分類】
G01C 21/36 20060101AFI20200130BHJP
G08G 1/0969 20060101ALI20200130BHJP
G09B 29/10 20060101ALI20200130BHJP
G06F 16/29 20190101ALI20200130BHJP
G06F 16/00 20190101ALI20200130BHJP
【FI】
G01C21/36
G08G1/0969
G09B29/10 A
G06F16/29
G06F16/00
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-119373(P2016-119373)
(22)【出願日】2016年6月15日
(65)【公開番号】特開2017-223559(P2017-223559A)
(43)【公開日】2017年12月21日
【審査請求日】2018年12月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000101732
【氏名又は名称】アルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105784
【弁理士】
【氏名又は名称】橘 和之
(72)【発明者】
【氏名】新妻 栄一
(72)【発明者】
【氏名】鬼澤 洋典
【審査官】
中尾 麗
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−227294(JP,A)
【文献】
特開平11−295095(JP,A)
【文献】
特開2016−090273(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 21/00−25/00
G08G 1/00−99/00
G06F 16/00
G06F 16/29
G09B 29/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の異なる探索条件に従って、現在地から目的地に至る複数の経路を探索する経路探索部と、
上記経路探索部により探索された複数の経路の中から選択された一の経路を誘導経路として、当該誘導経路に従って走行案内を行う走行案内部と、
上記複数の異なる探索条件のそれぞれ毎に、その探索条件を選択するユーザの意図に近いものとして定めた一以上の他の探索条件を関連付けて記憶した探索条件記憶部とを備え、
上記経路探索部は、リルートを行う際に、上記探索条件記憶部に記憶されている関連付け情報を参照して、上記誘導経路の探索条件および当該探索条件に関連付けられた上記他の探索条件を特定し、当該特定した複数の探索条件に従って、上記リルート時における現在地から目的地に至る複数の経路を探索し、
上記探索条件記憶部は、上記複数の異なる探索条件のそれぞれ毎に、上記ユーザの意図に近いものとして定めた一以上の他の探索条件に加え、比較対象として定めた一以上の他の探索条件を関連付けて記憶した
ことを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項2】
上記走行案内部による走行案内を行っている際に、上記誘導経路から自車位置が外れるオフルートの発生を検出するオフルート検出部を更に備え、
上記経路探索部は、上記オフルート検出部によるオフルートの検出に応じて上記リルートを行う際に、上記特定した複数の探索条件に従って複数の経路を探索することを特徴とする請求項1に記載のナビゲーション装置。
【請求項3】
道路交通情報を外部より取得する交通情報取得部と、
上記交通情報取得部により取得された上記道路交通情報をもとに、上記誘導経路上に生じている渋滞を検出する渋滞検出部とを更に備え、
上記経路探索部は、上記渋滞検出部による渋滞の検出に応じて上記リルートを行う際に、上記特定した複数の探索条件に従って、上記渋滞の区間を迂回する複数の迂回経路を探索することを特徴とする請求項1に記載のナビゲーション装置。
【請求項4】
上記経路探索部は、最初の経路探索時に、複数の異なる探索条件に従って複数の経路を探索し、探索した複数の経路を表示して何れか一の経路をユーザに選択させ、
上記走行案内部は、上記探索条件記憶部に記憶されている関連付け情報を参照して、上記経路探索部により探索された複数の経路の中から、上記ユーザにより選択された上記一の経路と、当該一の経路の探索条件に関連付けられた上記他の探索条件に従って探索された一以上の経路とを特定し、当該特定した複数の経路を表示した状態で上記走行案内を開始することを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載のナビゲーション装置。
【請求項5】
上記走行案内部は、上記走行案内の開始後に、移動体の現在位置に適合しなくなった経路の表示を順次消していくことを特徴とする請求項4に記載のナビゲーション装置。
【請求項6】
ナビゲーション装置の経路探索部が、複数の異なる探索条件に従って、現在地から目的地に至る複数の経路を探索する第1のステップと、
上記ナビゲーション装置の走行案内部が、上記経路探索部により探索された複数の経路の中から選択された一の経路を誘導経路として、当該誘導経路に従って走行案内を行う第2のステップと、
上記ナビゲーション装置の経路探索部が、上記走行案内開始後にリルートを行う際に、上記複数の異なる探索条件のそれぞれ毎に、その探索条件を選択するユーザの意図に近いものとして定めた一以上の他の探索条件および比較対象として定めた一以上の他の探索条件を関連付けて記憶した探索条件記憶部に記憶されている関連付け情報を参照して、上記誘導経路の探索条件および当該探索条件に関連付けられた上記他の探索条件を特定し、当該特定した複数の探索条件に従って、上記リルート時における現在地から目的地に至る複数の経路を探索する第3のステップとを有することを特徴とする誘導経路探索方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナビゲーション装置および誘導経路探索方法に関し、複数の探索条件に従って誘導経路の探索を行う経路誘導機能を備えたナビゲーション装置に用いて好適なものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、ナビゲーション装置が備える経路誘導機能では、地図データを用いて現在地から目的地までを結ぶ最もコストが小さな経路を自動探索し、その探索した経路を誘導経路として地図画面上で他の道路とは色を変えて太く描画する。また、車両が誘導経路上の案内交差点に一定距離内に近づいたときに、交差点拡大図を表示して交差点案内を行う。これにより、運転者を目的地まで案内するようになっている。
【0003】
このような経路誘導機能を搭載したナビゲーション装置の中には、外部から受信した道路交通情報に応じて、渋滞を避ける迂回経路を自動的に再探索する機能を備えたものが存在する。また、誘導経路から自車位置が外れてしまうオフルートが生じたときに、オフルート後の現在地から目的地までを結ぶ誘導経路を自動的に再探索する機能を備えたものもある。これらの機能は、リルートと呼ばれている。
【0004】
しかしながら、リルートにより設定される新たな誘導経路が、ユーザの意図しない経路になってしまうことがあるという問題があった。例えば、一般道路優先の条件で探索した誘導経路を走行中に、間違って高速道路のランプ道に進入してしまうと、オフルートが検出されてリルートが実行される。このとき、現在地の状況から、高速道路優先の条件で誘導経路が探索するナビゲーション装置がある。この場合、一般道路を優先して通る誘導経路に戻すためには、ユーザがマニュアル操作によって探索条件を一般道路優先に切り替えて経路を再探索することが必要となってしまう。
【0005】
そこで、オフルートが検出されてリルートを実行する際に、オフルートする前の誘導経路の探索条件で誘導経路を再探索するようにすることが考えられる。しかしながら、こうすると、ユーザが高速道路を利用しようと意図して誘導経路を外れ、高速道路のランプ道に進入した場合にも、一般道路を優先して通る誘導経路が提供されることになる。そのため、高速道路優先の誘導経路に変更したいときは、ユーザがマニュアル操作によって探索条件を高速道路優先に切り替えて経路を再探索することが必要となってしまう。
【0006】
なお、時間優先、距離優先、一般道路優先、高速道路優先、道幅優先など複数の異なる探索条件に従って経路探索を行い、探索された複数の経路を画面上に表示し、その中から選択された何れか1つの経路を誘導経路として設定する技術も知られている(例えば、特許文献1〜5参照)。この技術を用いれば、リルート時に複数の誘導経路を探索して表示することにより、ユーザが自らの意図に合った経路を選択して新たな誘導経路として設定することが可能となる。
【0007】
なお、特許文献1には、複数の案内経路を探索して表示し、移動体の走行開始後に、移動体の現在位置に適合しなくなった不要な案内経路を順次除外していき、現在位置に適合する経路が1つになった場合に、その経路をユーザにより選択された経路と見なすことが記載されている。
【0008】
特許文献2には、メイン案内経路を含めて複数の経路を探索し、探索したメイン案内経路中に設定されている案内ポイント毎に、複数経路の同時案内をユーザに提供することが記載されている。
【0009】
特許文献3〜5には、オフルート時に実行するリルートに関する構成が開示されている。特許文献3には、距離優先、時間優先等のあらかじめ設定された複数の探索条件のそれぞれに対応した複数の経路が探索された直後において、それらの誘導経路のいずれからも自車位置が外れた場合に、あらかじめ設定された複数の探索条件の全てについて経路探索処理を再度実施し、それぞれの探索条件に対応した複数の誘導経路を設定することが記載されている。
【0010】
特許文献4には、推奨経路を外れたときに、推奨経路と推奨経路以外の新たな誘導経路とを画面上に案内表示して、いくつかの経路の中からユーザが自由に選択可能とすることが記載されている。具体的には、自車が誘導中の誘導経路から外れたとき、誘導中の誘導経路に効率よく戻る経路と、誘導中の誘導経路以外の少なくとも1つの誘導経路とを各々探索し、探索した少なくとも2つの誘導経路を表示して案内することが記載されている。
【0011】
特許文献5には、車両が誘導経路から逸脱したときに、単に誘導経路に戻る経路を提供するのではなく、ユーザの意図に応じた経路を提供することが記載されている。具体的には、車両が誘導経路から逸脱したことを検知すると、探索条件を変えて複数の探索経路を探索し、それら複数の探索経路を地図画像上に重ね合わせて表示することが記載されている。また、特許文献5には、リルートを行うときの探索条件を、誘導経路探索時の探索条件や車両位置に応じて適宜変更することも記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2000−304560号公報
【特許文献2】特開2001−255162号公報
【特許文献3】特開2001−59730号公報
【特許文献4】特開2004−255162号公報
【特許文献5】特開2006−3328号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、リルート時に複数の経路を探索する上記特許文献3〜5に記載の技術のうち、特許文献3に記載の技術の場合、複数の経路を探索するときの探索条件はいつも固定である。その探索条件の中には、ユーザが当初の経路探索時に選択した探索条件も含まれている。しかし、再探索して表示された複数の経路のうち、どれが自分の意図にあった経路であるかが分かりにくく、混乱することがあるという問題があった。
【0014】
これに対し、特許文献4,5に記載の技術では、複数の経路の1つとして、「元の誘導経路に戻る」という探索条件で経路が探索されて表示されるので、ユーザは自身の意図にあった当初の誘導経路に戻る経路を選択しやすくなる。しかしながら、リルートを行う時点において、元の誘導経路に戻る経路が、目的地までの最適な経路であるとは限らない。
【0015】
なお、特許文献5には、誘導経路探索時の探索条件や車両位置に応じて、リルート時の探索条件を適宜変更することが記載されている。一例として、高速道路の近くに車両がいるときに用いる探索条件として、「誘導経路に戻る経路」、「次の高速道路入口を使用する経路」および「一般道を優先する経路」の3つの探索条件を設定し、これらの探索条件に応じて3つの経路を探索することが記載されている。
【0016】
しかしながら、高速道路の近くに車両がいるからと言って、高速道路を使用する経路がユーザの意図に合った経路であるとは限らない。また、上述したように、元の誘導経路に戻る経路が目的地までの最適な経路であるとは限らない。さらに、一般道を優先する経路が、誘導経路に戻る経路以外でユーザの意図に合った経路であるとは限らない。
【0017】
本発明は、このような問題を解決するために成されたものであり、ユーザが希望の探索条件を設定して経路を再探索するという面倒なマニュアル操作を行うことなく、ユーザの意図に合った最適な経路を簡単に設定することができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記した課題を解決するために、本発明では、複数の異なる探索条件のそれぞれ毎に、その探索条件を選択するユーザの意図に近いものとして定めた一以上の他の探索条件
および比較対象として定めた一以上の他の探索条件を関連付けて記憶しておく。リルートを行う際には、当該探索条件の関連付け情報を参照して、誘導経路の探索条件および当該探索条件に関連付けられた他の探索条件を特定し、当該特定した複数の探索条件に従って、リルート時における現在地から目的地に至る複数の経路を探索するようにしている。
【発明の効果】
【0019】
上記のように構成した本発明によれば、リルートを行う際に、そのとき走行案内に使われている誘導経路の探索条件、つまり、経路探索時にユーザにより選択された探索条件と、その探索条件を選択したユーザの意図に近いものとしてあらかじめ定められた一以上の他の探索条件とに従って、目的地までの最適な経路がそれぞれ探索される。ユーザは、このようにして探索された複数の経路の中から何れか希望するものを選択して新たな誘導経路として設定することができる。これにより、本発明によれば、ユーザが希望の探索条件を設定して経路を再探索するという面倒なマニュアル操作を行うことなく、ユーザの意図に合った最適な経路を簡単に設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本実施形態によるナビゲーション装置の機能構成例を示すブロック図である。
【
図2】本実施形態の探索条件記憶部に記憶される関連付け情報(テーブル情報)の一例を示す図である。
【
図3】本実施形態の経路探索部によってリルート時に3つの探索条件に従って探索される複数の経路の一例を示す図である。
【
図4】本実施形態によるナビゲーション装置の動作例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態によるナビゲーション装置100の機能構成例を示すブロック図である。なお、本実施形態のナビゲーション装置100は、車載用であってもよいし、携帯用であってもよい。携帯用のナビゲーション装置100は、スマートフォンのような携帯端末にインストールされたアプリケーションによって実現されるものであってもよい。
【0022】
図1に示すように、本実施形態のナビゲーション装置100は、その機能構成として、操作受付部1、目的地設定部2、現在位置検出部3、交通情報取得部4、経路探索部5、経路選択部6、走行案内部7、オフルート検出部8および渋滞検出部9を備えている。また、本実施形態のナビゲーション装置100は、記憶媒体として、誘導経路記憶部11および探索条件記憶部12を備えている。さらに、本実施形態のナビゲーション装置100には、地図データ記憶部200および表示部300が接続されている。
【0023】
上記各機能ブロック1〜9は、ハードウェア、DSP(Digital Signal Processor)、ソフトウェアの何れによっても構成することが可能である。例えばソフトウェアによって構成する場合、上記各機能ブロック1〜9は、実際にはコンピュータのCPU、RAM、ROMなどを備えて構成され、RAMやROM、ハードディスクまたは半導体メモリ等の記録媒体に記憶されたプログラムが動作することによって実現される。
【0024】
地図データ記憶部200は、地図表示や経路探索などに必要な各種の地図データを記憶している。地図データを記憶する記録媒体としては、ハードディスク、DVD(Digital Versatile Disk)、CD(Compact Disc)、半導体メモリ等を用いることが可能である。また、地図データ記憶部200をインターネット上のサーバが備え、ナビゲーション装置100がサーバから適宜地図データを取得するように構成することも可能である。
【0025】
操作受付部1は、ユーザによるナビゲーション装置100に対する各種操作を受け付ける。例えば、操作受付部1は、誘導経路の目的地を設定する操作を受け付ける。また、操作受付部1は、探索された複数の経路の中から何れかを選択する操作を受け付ける。これらのユーザ操作は、例えば、タッチパネルやリモコン等の操作部を用いて行うことが可能である。
【0026】
目的地設定部2は、操作受付部1が受け付けたユーザ操作に応じて、誘導経路の目的地を設定する。現在位置検出部3は、ナビゲーション装置100の現在位置を検出するものであり、自立航法センサおよびGPS受信機の少なくとも一方から供給される情報に基づいて、公知の手法により地図上における現在位置を検出する。
【0027】
交通情報取得部4は、道路交通情報を外部より取得する。例えば、交通情報取得部4は、道路上に設置されたビーコン送受信機との間で電波を介して双方向通信を行うことにより、図示しない道路交通情報センタから送られてくる道路交通情報を受信する。また、交通情報取得部4は、FM放送電波を利用したFM多重放送から道路交通情報を受信する。その他、インターネットを介して道路交通情報を受信するようにしてもよい。
【0028】
経路探索部5は、複数の異なる探索条件に従って、現在地から目的地に至る複数の経路を探索する。例えば、経路探索部5は、一般道路優先、高速道路優先、距離優先、燃費(ECOドライブ)優先などの探索条件で複数の経路を探索するとともに、最もコストが小さくなるコスト優先の経路(推奨経路)を探索する。そして、探索した複数の経路を表示部300に表示して、その中から何れかをユーザが選択できるようにする。なお、異なる探索条件で探索した経路が同じ経路となることがあり得る。
【0029】
本実施形態では、経路探索部5は、走行案内開始前における最初の経路探索時には、上記5つの探索条件に従って複数の経路を探索する。これに対し、走行案内開始後のリルート時には、上記5つの探索条件のうち、探索条件記憶部12に記憶された組み合わせの3つの探索条件に従って複数の経路を探索する。なお、リルート時の経路探索については、詳細を後述する。
【0030】
経路選択部6は、操作受付部1が受け付けたユーザ操作に応じて、経路探索部5により探索された複数の経路の中から一の経路を選択する。経路選択部6により選択された一の経路は、目的地までの誘導経路として誘導経路記憶部11に記憶される。誘導経路のデータは、現在地から目的地までに存在する各ノードに関する情報を記憶したものである。本実施形態では、選択された経路に対応する探索条件も誘導経路記憶部11に記憶する。
【0031】
走行案内部7は、誘導経路記憶部11に記憶された誘導経路のデータに従って走行案内を行う。すなわち、走行案内部7は、地図データに基づいて表示部300に表示される地図画面上で誘導経路を他の道路とは色を変えて太く描画する。また、車両が誘導経路上の案内交差点に一定距離内に近づいたときに、案内交差点の拡大画像を表示部300に表示して進行方向を案内する。
【0032】
オフルート検出部8は、走行案内部7による走行案内を行っている際に、誘導経路記憶部11に記憶された誘導経路のデータと、現在位置検出部3により検出される現在位置とに基づいて、誘導経路から自車位置が外れるオフルートの発生を検出する。渋滞検出部9は、交通情報取得部4により取得された道路交通情報をもとに、誘導経路記憶部11に記憶された誘導経路上に生じている渋滞を検出する。
【0033】
経路探索部5は、オフルート検出部8によりオフルートが検出されたとき、複数の異なる探索条件に従って、オフルート後の現在地から目的地に至る複数の経路を探索する。上述したように、経路探索部5は、このリルートを行う際に、探索条件記憶部12に記憶された組み合わせに従って、5つの探索条件の中から特定した3つの探索条件に従って複数の経路を探索する。
【0034】
また、経路探索部5は、渋滞検出部9により誘導経路上に渋滞が検出されたとき、複数の異なる探索条件に従って、渋滞の区間を迂回する複数の迂回経路を探索する。上述したように、経路探索部5は、このリルートを行う際に、探索条件記憶部12に記憶された組み合わせに従って、5つの探索条件の中から特定した3つの探索条件に従って複数の迂回経路を探索する。
【0035】
探索条件記憶部12は、5つの異なる探索条件のそれぞれ毎に、その探索条件を選択するユーザの意図に近いものとして定めた一以上の他の探索条件と、比較対象として定めた一以上の他の探索条件とを関連付けて記憶する。
図2は、探索条件記憶部12に記憶される関連付け情報(テーブル情報)の一例を示す図である。
【0036】
図2に示すように、テーブル情報の一番左の列には、5つの異なる探索条件が記憶されている。そして、テーブル情報の2列目には、一番左の列の探索条件を選択するユーザの意図に近いものとして定めた他の探索条件が記憶されている。また、テーブル情報の3列目には、比較対象として定めた他の探索条件が記憶されている。
【0037】
例えば、1番目のレコードには、コスト優先の探索条件(推奨経路の探索条件)に対して、一般道路優先およびECO優先の探索条件が関連付けて記憶されている。すなわち、最初の経路探索時に推奨経路を選択したユーザは、何かの条件を特に優先するという強い意図を持っているわけではないことが多いので、そのユーザの意図に近いものとして一般道路優先が2列目に記憶されている。また、比較対象としてECO優先が記憶されている。
【0038】
また、2番目のレコードにおいては、高速道路優先の探索条件に対して、ユーザの意図に近いものとしてコスト優先の推奨が2列目に記憶され、比較対象として一般道路優先が記憶されている。この場合の推奨は、高速道路を多用した別ルートを探索するという条件である。比較対象として定めた一般道路優先は、一般道路から間違って高速道路に進入してしまった場合に一般道路に戻ることを優先することを想定したものである。
【0039】
また、3番目〜5番目のレコードにおける距離優先、一般道路優先、ECO優先の各探索条件に関しても、ユーザの意図に近いものとして推奨が2列目に記憶されている。比較対象の探索条件としては、距離優先に対しては一般道路優先、一般道路優先に対してはECO優先、ECO優先に対しては一般道路優先がそれぞれ記憶されている。
【0040】
経路探索部5は、リルートを行う際に、探索条件記憶部12に記憶されている関連付け情報を参照して、誘導経路の探索条件および当該探索条件に関連付けられた他の探索条件を特定し、当該特定した複数の探索条件に従って、リルート時における現在地から目的地に至る複数の経路を探索する。すなわち、経路探索部5は、探索条件記憶部12に記憶されているテーブル情報の中から、誘導経路記憶部11に記憶されている誘導経路の探索条件が一番左の列に記憶されているレコードを特定し、当該レコードに記憶されている3つの探索条件に従って複数の経路を探索する。
【0041】
図3は、経路探索部5によってリルート時に3つの探索条件に従って探索される複数の経路の一例を示す図である。
図3において、車両は、誘導経路記憶部11に記憶された誘導経路IRに従って走行中であるものとする。ここでは、誘導経路IRは、一般道路優先の探索条件に従って探索された経路であるとする。
【0042】
例えば、車両の現在位置が、誘導経路IR上の位置PP1から誘導経路IR外の位置PP2に外れてオフルートが検出されると、経路探索部5は、探索条件記憶部12に記憶されている関連付け情報で特定される3つの探索条件に従って経路を再探索する。この例では、誘導経路IRの探索条件が一般道路優先であるから、
図2に示した関連付け情報の4番目のレコードに記憶されている一般道路優先、推奨、ECO優先の3つの探索条件に従って経路が探索される。
【0043】
図3には、一般道路優先の探索条件に従って探索された経路RR1と、コスト優先の探索条件に従って探索された推奨経路RR2と、ECO優先の探索条件に従って探索された経路RR3とが示されている。経路RR1は、無理に元の誘導経路IRに戻るように探索されたものではなく、誘導経路の初期設定時にユーザが選択した一般道路優先の探索条件に従って探索された最適な経路である。コスト優先で探索された推奨経路RR2は、高速道路を通る経路である。ECO優先で探索された経路RR3は、例えば上り坂が最も少ない経路である。
【0044】
経路探索部5は、これら3つの経路を表示部300に表示させることにより、何れか一の経路をユーザに選択させる。このとき、3つの経路を色分け等により識別可能とし、それぞれの経路がどの探索条件で探索されたものであるかの情報を提示するのが好ましい。
【0045】
なお、異なる探索条件で探索した経路が同じとなる場合、それらを全て識別可能に表示するようにしてもよいし、代表して1つのみを表示するようにしてもよい。代表して1つのみを表示する場合、
図2に示した関連付け情報の一番左の列の探索条件(誘導経路の探索条件)を最優先とし、2列目の探索条件(ユーザの意図に近いものとして定めた探索条件)を第2優先として、1つの経路を選択するようにする。
【0046】
ここで、何れか一の経路を選択する操作を操作受付部1が受け付けると、選択された経路が新たな誘導経路として設定される。経路選択部6は、この新たに設定された誘導経路のデータと、当該誘導経路に対応する探索条件とを誘導経路記憶部11に記憶し直す。
【0047】
図4は、上記のように構成したナビゲーション装置100の動作例を示すフローチャートである。なお、この
図4に示すフローチャートは、ナビゲーション装置100において誘導経路の設定メニューが選択されたときに開始する。
【0048】
まず、目的地設定部2は、操作受付部1が受け付けたユーザ操作に応じて、誘導経路の目的地を設定する(ステップS1)。目的地が設定されると、経路探索部5は、コスト優先、一般道路優先、高速道路優先、距離優先、ECO優先の5つの探索条件に従って複数の経路を探索し、その結果を表示部300に表示する(ステップS2)。
【0049】
そして、経路選択部6は、操作受付部1が受け付けたユーザ操作に応じて、経路探索部5により探索された複数の経路の中から一の経路を選択する(ステップS3)。経路選択部6は、選択した一の経路を目的地までの誘導経路に設定し、当該誘導経路のデータと、それ対応する探索条件とを誘導経路記憶部11に記憶する(ステップS4)。走行案内部7は、このようにして誘導経路記憶部11に記憶された誘導経路のデータに従って、走行案内を行う(ステップS5)。
【0050】
このような走行案内の開始後に、オフルート検出部8は、誘導経路から自車位置が外れるオフルートが発生したか否かを判定する(ステップS6)。オフルートが発生していない場合、次いで渋滞検出部9は、誘導経路上に渋滞が生じているか否かを判定する(ステップS7)。オフルートも渋滞も生じていない場合、処理はステップS12に遷移する。
【0051】
一方、オフルートまたは渋滞の何れかが発生している場合、経路探索部5は、誘導経路記憶部11に記憶されている誘導経路の探索条件と、探索条件記憶部12に記憶されている関連付け情報とを参照して、誘導経路の探索条件およびこれに関連付けられた他の2つの探索条件とを特定する(ステップS8)。そして、経路探索部5は、当該特定した3つの探索条件に従って、現在地から目的地に至る複数の経路を再探索し、その結果を表示部300に表示する(ステップS9)。
【0052】
そして、経路選択部6は、操作受付部1が受け付けたユーザ操作に応じて、経路探索部5により再探索された複数の経路の中から一の経路を選択する(ステップS10)。経路選択部6は、選択した一の経路を目的地までの誘導経路に改めて設定し、当該誘導経路のデータと、それ対応する探索条件とを誘導経路記憶部11に記憶する(ステップS11)。
【0053】
その後、走行案内部7は、目的地に到着したか否かを判定する(ステップS12)。目的地にまだ到着していない場合、処理はステップS5に戻り、走行案内部7による走行案内を続行する。一方、目的地に到着した場合、
図4に示すフローチャートの処理は終了する。
【0054】
以上詳しく説明したように、本実施形態では、複数の異なる探索条件のそれぞれ毎に、その探索条件を選択するユーザの意図に近いものとして定めた他の探索条件と、比較対象として定めた他の探索条件とを関連付けて探索条件記憶部12に記憶しておく。そして、オフルートまたは渋滞の発生に応じて経路探索部5がリルートを行う際には、探索条件記憶部12に記憶された探索条件の関連付け情報を参照して、誘導経路の探索条件および当該探索条件に関連付けられた他の探索条件を特定し、当該特定した複数の探索条件に従って複数の経路を再探索するようにしている。
【0055】
このように構成した本実施形態によれば、リルートを行う際に、そのとき走行案内に使われている誘導経路の探索条件、つまり、経路探索時にユーザにより選択された探索条件と、その探索条件を選択したユーザの意図に近いものとしてあらかじめ定められた他の探索条件とに従って、目的地までの最適な経路がそれぞれ探索される。ユーザは、このようにして探索された複数の経路の中から何れか希望するものを選択して新たな誘導経路として設定することができる。これにより、本実施形態によれば、ユーザが希望の探索条件を設定して経路を再探索するという面倒なマニュアル操作を行うことなく、ユーザの意図に合った最適な経路を簡単に設定することができる。
【0056】
また、本実施形態では、誘導経路の探索条件を選択したユーザの意図に近いものとして定めた他の探索条件に加え、比較対象として定めた他の探索条件に基づく経路も探索して提示するようにしている。これにより、ユーザは、探索された複数の経路を互いに比較しながら、希望する経路を選択して誘導経路に再設定することができる。
【0057】
なお、上記実施形態では、誘導経路の初期設定時には5つの探索条件に従って経路を探索し、リルートの実行時に3つの探索条件に従って経路を再探索する例について説明したが、本発明はこの数に限定されない。すなわち、誘導経路の初期設定時にn個(nは2以上の任意の数)の探索条件に従って経路を探索し、リルートの実行時にm個(m<n)の探索条件に従って経路を再探索するようにすることが可能である。
【0058】
また、上記実施形態では、ユーザの意図に近いものとして定めた他の探索条件を1つ、比較対象として定めた他の探索条件を1つとして、合計3つの探索条件に従って経路を探索する例について説明したが、本発明はこれに限定されない。すなわち、m<nの条件を満たす範囲において、ユーザの意図に近いものとして定めた他の探索条件を複数としてもよいし、比較対象として定めた他の探索条件を複数としてもよい。また、比較対象として定めた他の探索条件は省略し、ユーザの意図に近いものとして定めた他の探索条件のみとしてもよい。
【0059】
また、上記実施形態では、経路探索部5がリルートを実行するときの例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、経路探索部5が、最初の経路探索時に、5つの探索条件に従って複数の経路を探索し、探索した複数の経路を表示して何れか一の経路をユーザに選択させる。そして、走行案内部7が、探索条件記憶部12に記憶されている関連付け情報を参照して、経路探索部5により探索された複数の経路の中から、ユーザにより選択された一の経路と、当該一の経路の探索条件に関連付けられた他の探索条件に従って探索された一以上の経路とを特定し、当該特定した複数の経路を表示した状態で走行案内を開始するようにしてもよい。この場合、走行案内部7は、走行案内の開始後に、車両の現在位置に適合しなくなった経路の表示を順次消していくようにしてもよい。
【0060】
また、
図2に示した探索条件の組み合わせは一例であって、本発明はこの組み合わせに限定されるものではない。例えば、距離優先の探索条件に対し、ユーザの意図に近いものとしてECO優先の探索条件を設定するようにしてもよい。同様に、ECO優先の探索条件に対し、ユーザの意図に近いものとして距離優先の探索条件を設定するようにしてもよい。
【0061】
その他、上記実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0062】
1 操作受付部
2 目的地設定部
3 現在位置検出部
4 交通情報取得部
5 経路探索部
6 経路選択部
7 走行案内部
8 オフルート検出部
9 渋滞検出部
11 誘導経路記憶部
12 探索条件記憶部