【実施例】
【0186】
(実施例1) テルペノイド誘導体(I)、テルペノイド誘導体(III)の製造(変換菌:SANK 10312株)
【0187】
【化8】
【0188】
。 (1)ケトミウム属変換菌の培養
100ml容の三角フラスコ4本に下記表1に示す組成の種培養培地を各々20mlずつ入れ、121℃にて20分間滅菌した後、室温まで冷却し、SANK 10312株の胞子懸濁液を1ml接種し、回転振とう培養機で23℃、210rpmの条件下で2日間培養した。得られた培養液を、以下、「種培養液」という。
【0189】
(表1)
表1.SANK 10312株の種培養培地の培地組成
グリセリン 30g
グルコース 30g
可溶性澱粉 20g
大豆粉 10g
ゼラチン 2.5g
イーストエキス(Difco) 2.5g
NH
4NO
3 2.5g
寒天 3g
消泡剤 *1 0.1ml
水道水 1000ml
*1 ニッサン・ディスフォームCB−442(日本油脂(株)製)
*2 pHは無修正。
【0190】
500ml容の三角フラスコ13本に下記表2に示す組成の本培養培地を各々80mlずつ入れ、121℃にて20分間滅菌した後、室温まで冷却し、上述のSANK 10312株の種培養液を無菌的に各4ml接種し、回転振とう培養機で23℃、210rpmの条件下で2日間培養した。この培養液に10mg/mlの濃度でジメチルスルホキシドに溶解したCDDO−Meの溶液を各々0.8mlずつ添加し、再度回転振とう培養機で23℃、210rpmで6日間培養を行った。
【0191】
(表2)
表2.本培養培地の培地組成
グリセリン 30g
グルコース 30g
可溶性澱粉 20g
大豆粉 10g
ゼラチン 2.5g
イーストエキス(Difco) 2.5g
NH
4NO
3 2.5g
消泡剤 *1 0.1ml
水道水 1000ml
*1 ニッサン・ディスフォームCB−442(日本油脂(株)製)
*2 pHは無修正。
【0192】
(2)テルペノイド誘導体(I)、テルペノイド誘導体(III)の単離
本実施例におけるテルペノイド誘導体(I)、テルペノイド誘導体(III)の挙動は、以下に示す条件のHPLCでモニターした。
【0193】
カラム:Unison UK−C18
(直径4.6mm×長さ75mm:インタクト(株)製)
溶 媒:A:0.01%ギ酸を含む10mMギ酸アンモニウム水溶液
B:0.01%ギ酸を含むアセトニトリル
A/B=5/5で平衡化したのちA/B=1/9まで7分間の直線グラジエント
流 速:1.0ml/分
検 出:紫外部吸収 λ230nm
保持時間:4.3分(テルペノイド誘導体(I))
4.9分(テルペノイド誘導体(III))。
【0194】
(1)において得られた培養液1040mlに等量のアセトンを添加し、室温で1時間静置後、菌体を吸引濾過によって取り除き、濾液2000mlを得た。この濾液に酢酸エチル1Lを添加し、液々分配することで目的化合物を含む有機層を得た。得られた有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶剤を留去することによって、テルペノイド誘導体(I)、テルペノイド誘導体(III)を含む粉末549.9mgを得た。この粉末のうち275mgをメタノール1.37mlに溶解し、そのうち0.2mlを予め0.01%ギ酸水溶液:0.01%ギ酸含有アセトニトリル=45:55の溶媒で平衡化したHPLCカラム(Unison US−C18:直径20mm×長さ150mm:インタクト(株)製)に供与し、0.01%ギ酸水溶液:0.01%ギ酸含有アセトニトリル=45:55の溶媒で流速18.0ml/分で溶出した。目的化合物の紫外部吸収を波長λ=230nmにて検出し、保持時間9.1分に現れるピーク(テルペノイド誘導体(I))、保持時間12.3分に現れるピーク(テルペノイド誘導体(III))を7回に分けて分取した。分取液を合併して、減圧濃縮して得られた懸濁液を凍結乾燥し、テルペノイド誘導体(I)を無色粉末として1.4mg、テルペノイド誘導体(III)を無色粉末として16.2mg得た。
【0195】
得られた本発明のテルペノイド誘導体(I)の立体構造は、二次元核磁気共鳴スペクトル(NOESY)を用いて決定した。
【0196】
テルペノイド誘導体(I)は、二次元核磁気共鳴スペクトル(NOESY)において、19位のβ-プロトンと21位のβ-プロトンに相関が観察されたことから、立体構造を式(I)のように決定した。
【0197】
テルペノイド誘導体(I)の物理化学的性状の測定値
1)物質の性状:無色粉末状物質
2)分子式: C
32H
43NO
5
3)分子量:521(ESIマススペクトル法により測定)
4)高分解能LC−ESIマススペクトル法により測定した精密質量、[M+H]
+は次に示す通りである。
実測値:522.32062
計算値:522.32140
5)
1H−核磁気共鳴スペクトル:重クロロホルム中でTMSのシグナルを0.00ppmとして測定した
1H−核磁気共鳴スペクトル(500MHz)は、以下に示す通りである。
σ:0.98(3H,s),0.99(3H,s),1.00(3H,s),1.17(3H,s),1.18−1.22(1H,m),1.25(3H,s),1.28−1.30(1H,m),1.33(3H,s),1.49(3H,s),1.51−1.55(1H,m),1.62−1.66(1H,m),1.68−1.71(1H,m),1.69−1.72(1H,m),1.70−1.80(2H,m),1.77−1.79(1H,m),1.76−1.82(2H,m),1.85−1.89(2H,m),2.96(1H,d,J=5.0Hz),3.04(1H,ddd,J=4.0Hz,4.0Hz,14.0Hz),3.49(1H,dd,J=5.0Hz,11.5Hz),3.71(3H,s),5.97(1H,s),8.03(1H,s)ppm
6)
13C−核磁気共鳴スペクトル:重クロロホルム中でTMSのシグナルを0.00ppmとして測定した
13C−核磁気共鳴スペクトル(125MHz)は、以下に示す通りである。
σ:16.4(q),18.2(t),21.4(q),21.5(q),23.9(t),24.6(q),26.6(q),27.0(q),28.1(t),29.1(q),31.1(d),31.6(t),35.8(t),35.9(s),40.1(t),42.0(s),42.5(s),45.0(s),45.7(s),47.7(d),48.9(s),49.0(d),52.1(q),73.7(d),114.3(s),114.6(s),124.0(d),165.5(d),168.5(s),176.6(s),196.5(s),198.7(s)ppm
7)高速液体クロマトグラフィー:
カラム:Unison UK−C18
(直径4.6mm×長さ75mm:インタクト(株)製)
溶 媒:A:0.01%ギ酸含有10mMギ酸アンモニウム水溶液
B:0.01%ギ酸含有アセトニトリル
A/B=5/5で平衡化したのちA/B=1/9まで7分間の直線グラジエント
流 速:1.0ml/分
温 度:40℃
検 出:紫外部吸収 λ230nm
保持時間:4.3分。
【0198】
8)テルペノイド誘導体(I)の1H−核磁気共鳴スペクトルを
図1に、二次元核磁気共鳴スペクトル(1H−13C HSQCスペクトル)を
図2に示す。1H−核磁気共鳴スペクトルと二次元核磁気共鳴スペクトル(1H−13C HSQCスペクトル)の解析の結果、各プロトンを以下のように帰属した。
【0199】
19位のβ−プロトン:1.28−1.30ppm(メチレン)
21位のβ−プロトン:3.49ppm(メチン)
9)テルペノイド誘導体(I)の二次元核磁気共鳴スペクトル(1H−1H NOESYスペクトル)を
図3に示す。
図3において、19位のβ−プロトンと21位のβ−プロトンに相関が認められることから、立体構造を(I)のように決定した。
【0200】
(実施例2) テルペノイド誘導体(I)、テルペノイド誘導体(III)の製造(変換菌:SANK 11867株)
(1)ケトミウム属変換菌の培養
100ml容の三角フラスコ176本に実施例1の表1に示す組成の種培養培地を各々20mlずつ入れ、121℃にて20分間滅菌した後、室温まで冷却し、SANK 11867株の胞子懸濁液を1ml接種し、回転振とう培養機で23℃、210rpmの条件下で2日間培養した。得られた培養液を、以下、「種培養液」という。
【0201】
500ml容の三角フラスコ583本に実施例1の表2に示す組成の本培養培地を各々80mlずつ入れ、121℃にて20分間滅菌した後、室温まで冷却し、上述のSANK 11867株の種培養液を無菌的に各4ml接種し、回転振とう培養機で23℃、210rpmの条件下で2日間培養した。この培養液に30mg/mlの濃度でジメチルスルホキシドに溶解したCDDO−Meの溶液を各々0.8mlずつ添加し、再度回転振とう培養機で23℃、210rpmで6日間培養を行った。
【0202】
(2)テルペノイド誘導体(I)、テルペノイド誘導体(III)の単離
本実施例におけるテルペノイド誘導体(I)、テルペノイド誘導体(III)の挙動は、以下に示す条件のHPLCでモニターした。
【0203】
カラム:Unison UK−C18
(直径4.6mm×長さ75mm:インタクト(株)製)
溶 媒:A:0.01%ギ酸を含む10mMギ酸アンモニウム水溶液
B:0.01%ギ酸を含むアセトニトリル
A/B=5/5で平衡化したのちA/B=1/9まで7分間の直線グラジエント
流 速:1.0ml/分
検 出:紫外部吸収 λ230nm
保持時間:4.3分(テルペノイド誘導体(I))
4.9分(テルペノイド誘導体(III))。
【0204】
(1)において得られた培養液42.6Lに等量のアセトンを添加し、よく撹拌したのち室温で一晩静置後、菌体を吸引濾過によって取り除き、濾液78Lを得た。この濾液を、あらかじめアセトンで洗浄後、水で置換したセパビーズ SP207(2L:三菱化学(株)製)カラムに供与した。カラムをアセトン:水=5:5の混合溶媒6L、次いでアセトン:水=6:4の混合溶媒6Lで洗浄した後、アセトン:水=7:3の混合溶媒6Lで溶出した。この目的化合物を含む溶出液に水1.2Lを加え、さらに酢酸エチル2.6Lを添加し、液々分配することで目的化合物を含む有機層を分離し、飽和食塩水で洗浄したのち、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧濃縮することによって、テルペノイド誘導体(I)、テルペノイド誘導体(III)を含む抽出物6.92gを得た。この抽出物のうち1.5gをメタノール5mlに溶解し、ODS−A(7.5g:株式会社ワイエムシィ製)に吸着させたものをミニカラムに充填し、あらかじめアセトニトリル:0.01%ギ酸入り水=55:45の混合溶媒で平衡化したODS−A(100g:株式会社ワイエムシィ製)カラムに供与し、同混合溶媒で流速15ml/分で溶出した。目的化合物の紫外部吸収を波長λ=230nmにて検出し、保持時間42.0分に現れるピーク(テルペノイド誘導体(I))と、保持時間50.0分に現れるピーク(テルペノイド誘導体(III))を5回に分けて分取した。分取液をそれぞれまとめて減圧濃縮し、テルペノイド誘導体(I)の無色粉末192mgと、テルペノイド誘導体(III)を含む薄黄色粉末2.45gを得た。テルペノイド誘導体(III)を含む薄黄色粉末2.45gは、アセトニトリル2mlに溶解し、あらかじめアセトニトリル:水=55:45の混合溶媒で置換したセパビーズ SP207SS(500ml:三菱化学(株)製)カラムに供与した。カラムをアセトニトリル:水=60:40の混合溶媒1750mlで洗浄した後、アセトニトリル:水=65:35の混合溶媒2340mlで溶出した。溶出液のうちテルペノイド誘導体(III)を高純度に含む1200mlについて、減圧濃縮した後、凍結乾燥することで、テルペノイド誘導体(III)を2.19g得た。
【0205】
(実施例3) テルペノイド誘導体(II)、テルペノイド誘導体(III)の製造(変換菌:SANK 70214株)
【0206】
【化9】
【0207】
【化10】
【0208】
。
【0209】
(1)基質化合物(2)の合成
【0210】
【化11】
【0211】
CDDO−Me(8.00g,15.8mmol)をジクロロメタン(40ml)に溶解し、氷冷下で3−クロロ過安息香酸(>65%)(5.04g,19.0mmol)を加え、室温にて3時間攪拌した。反応液に、飽和重曹水(40ml)を加え、同温で15分間攪拌した。さらに、同混合物に10%チオ硫酸ナトリウム水溶液(40ml)を加え、同温で5分間攪拌後、酢酸エチルで抽出した。分離した有機層を飽和食塩水で洗浄、硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を減圧留去した。残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n−ヘキサン:酢酸エチル=4:1,v/v)で精製し、白色アモルファス状固体として基質化合物(2)(8.16g,99%)を得た。
【0212】
ESI−MS;m/z:522(M++1).
1H−NMR(400MHz,CDCl3)δ:0.91(3H,s),1.01(3H,s),1.08(3H,s),1.12(3H,s),1.19(3H,s),1.27(3H,s),1.55(3H,s),1.18−2.00(15H,m),2.94(1H,d,J=4.9Hz),3.05(1H,dt,J=13.8,3.7Hz),3.70(3H,s),4.34(1H,s),6.07(1H,s).
高速液体クロマトグラフィー:
純 度:99.0%
カラム:コスモシール 5C18−MS−II
(直径6.0mm×長さ150mm:ナカライテスク(株)製)
溶 媒:A:10mM酢酸アンモニウム水溶液
B:アセトニトリル
A/B=15/85のアイソクラティック
流 速:1.0ml/分
温 度:40℃
検 出:紫外部吸収 λ254nm
保持時間:9.6分。
【0213】
(2)バチルス属変換菌の培養
100ml容の三角フラスコ20本に下記表3に示す組成の種培養培地を各々20mlずつ入れ、121℃にて30分間滅菌した後、室温まで冷却し、SANK 70214株のコロニーを1白金耳接種して、回転振とう培養機で28℃、210rpmの条件下で24時間培養した。得られた培養液を、以下、「種培養液」という。
【0214】
(表3)
表3.SANK 70214株の種培養培地の培地組成
グルコース 50g
大豆粉 10g
肉エキス 4g
ポリペプトン 4g
イーストエキス(Difco) 1g
CaCO
3 5g
NaCl 2.5g
消泡剤 *1 0.5ml
イオン交換水 1000ml
*1 ニッサン・ディスフォームCB−442(日本油脂(株)製)
*2 pHは滅菌前に、NaOHまたはHClで7.2に調整。
【0215】
500ml容の三角フラスコ300本に上記表3に示す組成の本培養培地を各々80mlずつ入れ、121℃にて30分間滅菌した後、室温まで冷却し、(1)で合成した基質化合物(2)の30mg/mlの濃度でジメチルスルホキシドに溶解した溶液を各々0.8mlずつ添加した。この培地に、上述のSANK 70214株の種培養液を無菌的に各0.8ml接種し、回転振とう培養機で28℃、210rpmの条件下で5日間培養した。
【0216】
(3)テルペノイド誘導体(II)、テルペノイド誘導体(III)の単離
本実施例におけるテルペノイド誘導体(II)、テルペノイド誘導体(III)の挙動は、以下に示す条件のHPLCでモニターした。
【0217】
カラム:Unison UK−C18
(直径4.6mm×長さ75mm:インタクト(株)製)
溶 媒:A:0.01%ギ酸を含む10mMギ酸アンモニウム水溶液
B:0.01%ギ酸を含むアセトニトリル
A/B=5/5で平衡化したのちA/B=1/9まで7分間の直線グラジエント
流 速:1.0ml/分
検 出:紫外部吸収 λ230nm
保持時間:5.4分(テルペノイド誘導体(II))
4.9分(テルペノイド誘導体(III))。
【0218】
(2)において得られた培養液22.8Lに等量のアセトンを添加し、よく撹拌したのち室温で一晩静置後、菌体をフィルタープレスによって取り除き、濾液42Lを得た。この濾液を、あらかじめアセトンで洗浄後、水で置換したセパビーズ SP207(2L:三菱化学(株)製)カラムに供与した。カラムをアセトン:水=5:5の混合溶媒14L、次いでアセトン:水=6:4の混合溶媒6Lで洗浄した後、アセトン:水=7:3の混合溶媒7.2Lで溶出し、さらにアセトン:水=8:2の混合溶媒8Lで溶出した。アセトン:水=7:3の混合溶媒の溶出画分から目的化合物を含む溶出液4Lを回収し、そこへセパビーズ SP207SS(16ml:三菱化学(株)製)を添加し、有機溶媒を留去して目的化合物を樹脂に吸着させた。その吸着物を、あらかじめアセトンで洗浄後、水で置換したセパビーズ SP207SS(350ml:三菱化学(株)製)カラムに供与した。カラムをアセトニトリル:水=50:50の混合溶媒1200ml、次いでアセトニトリル:水=55:45の混合溶媒1050mlで洗浄した後、アセトニトリル:水=60:40の混合溶媒2950mlで溶出した。溶出液のうちテルペノイド誘導体(III)を高純度に含む920mlについて、有機溶媒を留去した後、凍結乾燥することで、テルペノイド誘導体(III)を1.58g得た。また、溶出液のうち、テルペノイド誘導体(II)を含む580mlについて有機溶媒を留去した後、凍結乾燥することでテルペノイド誘導体(II)を含む粉末を120.7mg得た。この粉末のうち109mgをジメチルスルホキシド1.0mlに溶解し、そのうち0.3mlを予め0.01%ギ酸水溶液:0.01%ギ酸含有アセトニトリル=45:55の溶媒で平衡化したHPLCカラム(Unison US−C18:直径20mm×長さ150mm:インタクト(株)製)に供与し、0.01%ギ酸水溶液:0.01%ギ酸含有アセトニトリル=45:55の溶媒で流速20.0ml/分で溶出した。目的化合物の紫外部吸収を波長λ=230nmにて検出し、保持時間13.6分に現れるピーク(テルペノイド誘導体(II))を3回に分けて分取した。分取液を合併し、減圧濃縮して得られた懸濁液を凍結乾燥し、テルペノイド誘導体(II)を無色粉末として4.5mg得た。
【0219】
得られた本発明のテルペノイド誘導体(II)の立体構造は、二次元核磁気共鳴スペクトル(NOESY)を用いて決定した。
【0220】
テルペノイド誘導体(II)は、二次元核磁気共鳴スペクトル(NOESY)において、19位のα-プロトンと21位のα-プロトンに相関が観察されたことから、立体構造を式(II)のように決定した。
【0221】
テルペノイド誘導体(II)の物理化学的性状の測定値
1)物質の性状:無色粉末状物質
2)分子式: C
32H
43NO
6
3)分子量:537(ESIマススペクトル法により測定)
4)高分解能LC−ESIマススペクトル法により測定した精密質量、[M+H]
+は次に
示す通りである。
実測値:538.31496
計算値:538.31631
5)
1H−核磁気共鳴スペクトル:重クロロホルム中でTMSのシグナルを0.00ppmとして測定した
1H−核磁気共鳴スペクトル(500MHz)は、以下に示す通りである。
σ:0.96(3H,s),1.06(3H,s),1.11(3H,s),1.12(3H,s),1.19(3H,s),1.27(3H,s),1.28(3H,s),1.46(1H,d,J=13.0Hz),1.47(1H,d,J=13.0Hz),1.52−1.59(2H,m),1.61−1.65(2H,m),1.66−1.69(1H,m),1.68−1.75(1H,m),1.75(1H,dd,J=3.5Hz,14.5Hz),1.88(1H,brd,J=14.5Hz),1.98(1H,dd,J=5.5Hz,9.5Hz),2.03(1H,dd,J=3.5Hz,14.5Hz),2.38(1H,ddd,J=3.5Hz,14.0Hz,14.0Hz),2.99(1H,d,J=4.5Hz),3.10(1H,brd,J=13.5Hz),3.53(1H,brs),3.69(3H,s),4.34(1H,s),6.09(1H,s)ppm
6)
13C−核磁気共鳴スペクトル:重クロロホルム中でTMSのシグナルを0.00ppmとして測定した
13C−核磁気共鳴スペクトル(125MHz)は、以下に示す通りである。
σ:18.3(t),21.0(q),21.3(q),22.8(q),23.9(q),24.0(q),25.7(t),27.4(q),28.0(q),28.7(t),30.0(t),31.4(t),31.5(d),35.2(s),38.9(t),40.9(s),42.1(s),42.6(d),45.1(s),45.5(s),47.0(s),49.5(d),52.0(q),53.2(s),69.1(d),74.8(d),113.6(s),124.8(d),168.8(s),177.6(s),198.8(s),202.4(s)ppm
7)高速液体クロマトグラフィー:
カラム:Unison UK−C18
(直径4.6mm×長さ75mm:インタクト(株)製)
溶 媒:A:0.01%ギ酸含有10mMギ酸アンモニウム水溶液
B:0.01%ギ酸含有アセトニトリル
A/B=5/5で平衡化したのちA/B=1/9まで7分間の直線グラジエント
流 速:1.0ml/分
温 度:40℃
検 出:紫外部吸収 λ230nm
保持時間:5.4分。
【0222】
8)テルペノイド誘導体(II)の1H−核磁気共鳴スペクトルを
図4に、二次元核磁気共鳴スペクトル(1H−13C HSQCスペクトル)を
図5に示す。1H−核磁気共鳴スペクトルと二次元核磁気共鳴スペクトル(1H−13C HSQCスペクトル)の解析の結果、各プロトンを以下のように帰属した。
【0223】
19位のα−プロトン:1.47ppm(メチレン)
21位のα−プロトン:3.53ppm(メチン)
9)テルペノイド誘導体(II)の二次元核磁気共鳴スペクトル(1H−1H NOESYスペクトル)を
図6に示す。
図6において、19位のα−プロトンと21位のα−プロトンに相関が認められることから、立体構造を(II)のように決定した。
【0224】
(実施例4) テルペノイド誘導体(III)の製造(変換菌:SANK 70314株)
(1)バチルス属変換菌の培養
100ml容の三角フラスコに種培養培地として以下に示すトリプト ソイ ブイヨン培地(以下、TSB培地とする)を20ml入れ、121℃にて15分間滅菌した後、室温まで冷却し、SANK 70314株のコロニーを1白金耳接種して、回転振とう培養機で28℃、210rpmの条件下で24時間培養した。得られた培養液を、以下、「種培養液」という。
<TSB培地(トリプト ソイ ブイヨン 培地)>
パールコア トリプトソイブイヨン培地 栄研(栄研化学(株)製) 30g
蒸留水 1000ml。
【0225】
500ml容の三角フラスコに本培養培地としてTSB培地を100ml入れ、121℃にて15分間滅菌した後、室温まで冷却し、実施例3(1)に記載の方法で合成した基質化合物(2)を、濃度30mg/mlとなるようにジメチルスルホキシドに溶解した溶液を1.0ml添加した。この培地に、上述のSANK 70314株の種培養液を無菌的に1.0ml接種し、回転振とう培養機で37℃、210rpmの条件下で3日間培養した。
【0226】
(2)テルペノイド誘導体(III)の単離
本実施例におけるテルペノイド誘導体(III)の挙動は、以下に示す条件のHPLCでモニターした。
【0227】
カラム:Unison UK−C18
(直径4.6mm×長さ75mm:インタクト(株)製)
溶 媒:A:0.01%ギ酸を含む10mMギ酸アンモニウム水溶液
B:0.01%ギ酸を含むアセトニトリル
A/B=5/5で平衡化したのちA/B=1/9まで7分間の直線グラジエント
流 速:1.0ml/分
検 出:紫外部吸収 λ230nm
保持時間:4.9分(テルペノイド誘導体(III))。
【0228】
(1)において得られた培養液を100mlにメスアップしたのち、アセトン100mlを添加し、室温で1時間静置した。そのうち1mlをとり、10000rpm、10分の遠心分離処理を行い、その上清を培養液抽出物とした。
【0229】
このようにして調整した培養液抽出物10μlを上記HPLC条件で溶出した。目的化合物の紫外部吸収を波長λ=230nmにて検出し、保持時間4.9分に現れるピーク(テルペノイド誘導体(III))のピーク面積より基質化合物(2)に対する変換効率を算出したところ、テルペノイド誘導体(III)を32%確認した。
【0230】
(実施例5)SANK 70214の野性株からのクローニング
(1)Bacillus sp. SANK 70214株のゲノムDNAサンプルの調製
500ml容の三角フラスコに3% PEARLCORE TRYPTO−SOY BROTH(栄研化学株式会社製)(オートクレーブ前にpH8.0に調製)(以下、TSB培地(pH8.0)と示す)からなる培地を100ml入れ、121℃にて15分間滅菌した後、室温まで冷却し、SANK 70214株を1白金耳接種し、28℃、210rpmの条件で15.5時間培養した。得られた培養液を種培養とした。500ml容の三角フラスコに100mlのTSB培地(pH8.0)を100ml入れ、121℃にて15分間滅菌した後、室温まで冷却し、上述のSANK 70214株の種培養液を無菌的に1ml接種し、28℃、210rpmの条件で8時間培養を行なった。得られた培養液40mlを50mlコニカルチューブに分注し、6,000rpm、10分間遠心して菌体を回収し、ゲノムDNAを調整した。
【0231】
(2)ゲノムシークエンスとP450遺伝子の同定
ゲノムシークエンスはPacBio RSII(Pacific biosciences社製)およびMiseq(Illumina社製)を用いて次世代天然物化学技術研究組合でおこなった。得られた配列は4.0Mbp、GC含量は40.8%であった。得られたゲノム配列はBacillus halodurans を参照配列として、BASys Server 2(https://www.basys.ca/server2/basys/cgi/text_search.pl)を用いてアノテーション付けを行い、1個のP450と推測される塩基配列(SANK 70214株の水酸化活性を有するタンパク質の塩基配列)を得た(配列番号3、
図9)。得られた塩基配列は、Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters, 2012 1; 22(1): 606−609に記載されている3種類のmotifを保持していた。そこで、基質化合物(2)を本発明のテルペノイド誘導体(III)に水酸化する活性を持つタンパク質(配列番号5、
図11)の遺伝子をクローニングした。
【0232】
(3)大腸菌へのクローニング
SANK 70214株のP450の塩基配列をPCRで増幅するために、プライマーセットF1(GAAGGAGATATACATATGAGTCATGCTGCGAACG)とR1(TGTCGACGGAGCTCTTTAGAATGAAACGGGCAATG)を作製した。このプライマーセットを用いてSANK 70214を鋳型として、PCR反応を行なった。PCR反応はPrimeSTAR Max(タカラバイオ社製)とPCR装置(タカラバイオ社製、TP350)を用い、変性を98℃、10秒間、アニーリングを55℃、5秒間、伸長を72℃、10秒間行う3段階の反応を30回繰り返した。その結果、約1.2kbの長さのDNA断片が増幅された。得られたSANK 70214株の約1.2kbのDNA断片はIn−Fusion cloning反応に備えて、Cloning Enhancer (Clontech社製)で処理した。クローニング用および発現用のベクターpET21b(Novagen社製)をPCRで増幅するために、プライマーセットF2(ATGTATATCTCCTTCTTAAAGTTAAAC)とR2(AGAGCTCCGTCGACAAGC)を作製した。このプライマーセットを用いてpET21bを鋳型として、PCR反応を行なった。PCR反応はPrimestar max(タカラバイオ社製)とPCR装置(タカラバイオ社製、TP600)を用い、変性を98℃、10秒間、アニーリングを55℃、5秒間、伸長を72℃、60秒間行う3段階の反応を30回繰り返した。その結果、約5kbの長さのDNA断片が増幅された。このPCR反応液をアガロースゲル電気泳動に供し、約5kbのDNA断片を切り出して、Monofas DNA 精製キットI(ジーエルサイエンス社製)によって回収した。回収したpET21bの約5kbのDNA断片とあらかじめCloning Enhancer処理した約1.2kbの長さのDNA断片はIn−Fusion HD Cloning kit(Clontech社製)を用いて連結し、大腸菌DH5α(TOYOBO社製)に形質転換した。その後、100μg/ml カルベニシリンを含むLB寒天培地で大腸菌を選択した。得られた形質転換大腸菌のコロニーを100μg/ml カルベニシリンを含むLB液体培地で培養した。増殖した大腸菌を回収し、QIAprep Spin Miniprep Kit (QIAGEN社製)を用いてプラスミドDNAの精製を行いSANK 70214株の水酸化活性を有するタンパク質の塩基配列を保持したプラスミド(pET−SANK70214−01)を得た。
【0233】
(4)Bacillus subtilis 168株へのクローニング
Bacillus subtilis 168株へSANK 70214の水酸化活性を有するタンパク質の塩基配列を導入するために、Bacillus subtilisと大腸菌とのシャトルベクターであるpHT01(MoBiTec社製)へのリクローニングを行なった。
【0234】
pET−SANK 70214−01にクローニングしたP450の塩基配列をPCRで増幅するために、プライマーセットF3(AAGGAGGAAGGATCCATGAGTCATGCTGCGAACGTAA)とR3(GACGTCGACTCTAGATTAGAATGAAACGGGCAATG)を作製した。このプライマーセットを用いてpET−SANK 70214−01を鋳型として、PCR反応を行なった。PCR反応はPrimeSTAR Max(タカラバイオ社製)とPCR装置(タカラバイオ社製、TP350)を用い、変性を98℃、10秒間、アニーリングを55℃、5秒間、伸長を72℃、10秒間行う3段階の反応を30回繰り返した。その結果、約1.2kbの長さのDNA断片が増幅された。得られたSANK 70214の約1.2kbのDNA断片はIn−Fusion cloning反応に備えて、Cloning Enhancer (Clontech社製)で処理した。B.subtilisと大腸菌とのシャトルベクターであるpHT01(MoBiTec社製)をPCRで増幅するために、プライマーセットF4(TCTAGAGTCGACGTCCCCG)とR4(GGATCCTTCCTCCTTTAATTG)を作製した。このプライマーセットを用いてpHT01を鋳型として、PCR反応を行なった。PCR反応はPrimeSTAR Max(タカラバイオ社製)とPCR装置(タカラバイオ社製、TP350)を用い、変性を98℃、10秒間、アニーリングを55℃、5秒間、伸長を72℃、60秒間行う3段階の反応を30回繰り返した。その結果、約8kbの長さのDNA断片が増幅された。このPCR反応液をアガロースゲル電気泳動に供し、約8kbのDNA断片を切り出して、Monofas DNA 精製キットI(ジーエルサイエンス社製)によって回収した。回収したpHT01の約8kbのDNA断片とあらかじめCloning Enhancer処理した約1.2kbの長さのDNA断片はIn−Fusion HD Cloning kit(Clontech社製)を用いて連結し、大腸菌DH5α(TOYOBO社製)に形質転換した。その後、100μg/ml カルベニシリンを含むLB寒天培地で大腸菌を選択した。得られた形質転換大腸菌のコロニーを100μg/ml カルベニシリンを含むLB液体培地で培養した。増殖した大腸菌を回収し、QIAprep Spin Miniprep Kit (QIAGEN社製)を用いてプラスミドDNAの精製を行いSANK 70214の水酸化活性を有するタンパク質の塩基配列を保持したプラスミド(pHT01−SANK 70214−01)を得た。得られたpHT01−SANK 70214−01をB. subtilisへの形質転換のために大腸菌C600(Zymo Research社製)に形質転換した。その後、100μg/ml カルベニシリンを含むLB寒天培地で大腸菌を選択した。得られた形質転換大腸菌のコロニーを100μg/ml カルベニシリンを含むLB液体培地で培養した。増殖した大腸菌を回収し、QIAprep Spin Miniprep Kit (QIAGEN社製)を用いてプラスミドDNAの精製を行いBacillus subtilisへの形質転換するためのpHT01−SANK 70214−01を得た。エレクトロポレーション法を持ちいて、B.subtilis 168株にpHT01−SANK 70214−01を導入し、100 μg/ml クロラムフェニコールを含むLB寒天培地でB. subtilisを選択した。pHT01−SANK 70214−01を保持したB. subtilisを得た。これをB. subtilis SANK 70214Tとした。
【0235】
(実施例6)SANK 70314の野性株からのクローニング
(1)Bacillus megaterium SANK70314株のゲノムDNAサンプルの調製
SANK 70214株の代わりにSANK 70314株を用い、SANK 70314株の種培養液の培養時間を6時間とした以外は、実施例5と同じ方法で、SANK70314株のゲノムDNAサンプルの調製を調整した。
【0236】
(2)ゲノムシークエンスとP450遺伝子の同定
ゲノムシークエンスはPacBio RSII(Pacific biosciences社製)およびMiseq(illumina社製)を用いて行なった。得られた配列は5.4Mbp、GC含量は38.0%であった。得られたゲノム配列はB.megateriumを参照配列として、BASys Server 2(https://www.basys.ca/server2/basys/cgi/text_search.pl)を用いてアノテーション付けを行い、6個のP450と推定される塩基配列(SANK 70314の水酸化活性を有するタンパク質の塩基配列)を得た。得られたP450の塩基配列は、Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters, 2012 1; 22(1): 606−609に記載されている3種類のmotifを保持していた。この中から基質化合物(2)を本発明のテルペノイド誘導体(III)に水酸化する活性を持つタンパク質(配列番号6、
図12)の遺伝子をクローニングした(配列番号4、
図10)。
【0237】
(3)大腸菌へのクローニング
SANK 70314株のP450の塩基配列をPCRで増幅するために、プライマーセットF5(GAAGGAGATATACATATGAAAACCGAAAGAGAAAAC)とR5(TGTCGACGGAGCTCTTATACATGTTTACGAATCA)を作製した。このプライマーセットを用いてSANK 70314株を鋳型として、PCR反応を行なった。
【0238】
以下は、実施例5と同じ方法でSANK 70314の水酸化活性を有するタンパク質の塩基配列を保持したプラスミド(pET−SANK70314−01)を得た。
【0239】
(4)Bacillus subtilis 168株へのクローニング
Bacillus subtilis 168株へSANK 70314の水酸化活性を有するタンパク質の塩基配列を導入するために、B.subtilisと大腸菌とのシャトルベクターであるpHT01(MoBiTec社製)へのリクローニングを行なった。
【0240】
pET−SANK70314−01にクローニングしたP450の塩基配列をPCRで増幅するために、プライマーセットF6(AAGGAGGAAGGATCCATGAAAACCGAAAGAGAAAAC)とR6(GACGTCGACTCTAGATTATACATGTTTACGAATCAATAATTC)を作製した。このプライマーセットを用いてpET−SANK70214−01を鋳型として、PCR反応を行なった。PCR反応はPrimeSTAR Max(タカラバイオ社製)とPCR装置(タカラバイオ社製、TP350)を用い、変性を98℃、10秒間、アニーリングを55℃、5秒間、伸長を72℃、10秒間行う3段階の反応を30回繰り返した。その結果、約1.2kbの長さのDNA断片が増幅された。得られたSANK 70314の約1.2kbのDNA断片はIn−Fusion cloning反応に備えて、Cloning Enhancer(Clontech社製)で処理した。Bacillus subtilisと大腸菌とのシャトルベクターであるpHT01(MoBiTec社製)をPCRで増幅するために、プライマーセットF4(TCTAGAGTCGACGTCCCCG)とR4(GGATCCTTCCTCCTTTAATTG)を利用した。このプライマーセットを用いてpHT01を鋳型として、PCR反応を行なった。PCR反応はPrimeSTAR Max(タカラバイオ社製)とPCR装置(タカラバイオ社製、TP350)を用い、変性を98℃、10秒間、アニーリングを55℃、5秒間、伸長を72℃、60秒間行う3段階の反応を30回繰り返した。その結果、約8kbの長さのDNA断片が増幅された。このPCR反応液をアガロースゲル電気泳動に供し、約8kbのDNA断片を切り出して、Monofas DNA 精製キットI(ジーエルサイエンス社製)によって回収した。回収したpHT01の約8kbのDNA断片とあらかじめCloning Enhancer処理した約1.2kbの長さのDNA断片はIn−Fusion HD Cloning kit(Clontech社製)を用いて連結し、大腸菌DH5α(TOYOBO社製)に形質転換した。その後、100μg/mlカルベニシリンを含むLB寒天培地で大腸菌を選択した。得られた形質転換大腸菌のコロニーを100μg/mlカルベニシリンを含むLB液体培地で培養した。増殖した大腸菌を回収し、QIAprep Spin Miniprep Kit(QIAGEN社製)を用いてプラスミドDNAの精製を行いSANK 70314の水酸化活性を有するタンパク質の塩基配列を保持したプラスミド(pHT01−SANK 70314−01)を得た。得られたpHT01−SANK 70314−01をB.subtilisへの形質転換のために大腸菌C600(Zymo Research社製)に形質転換した。その後、100μg/mlカルベニシリンを含むLB寒天培地で大腸菌を選択した。得られた形質転換大腸菌のコロニーを100μg/mlカルベニシリンを含むLB液体培地で培養した。増殖した大腸菌を回収し、QIAprep Spin Miniprep Kit(QIAGEN社製)を用いてプラスミドDNAの精製を行いB.subtilisへの形質転換するためのpHT01−SANK 70314−01を得た。エレクトロポレーション法を用いて、B.subtilis 168株にpHT01−SANK 70314−01を導入し、100μg/ml クロラムフェニコールを含むLB寒天培地でB. subtilisを選択した。pHT01−SANK 70314−01を保持したB. subtilisを得た。これをB. subtilis SANK 70314Tとした。
【0241】
(実施例7)テルペノイド誘導体(III)の製造(変換菌:SANK 70214T株)
(1)SANK 70214T株の培養
100ml容の三角フラスコに下記表4に示す組成の種培養培地を20ml入れ、121℃にて15分間滅菌した後、室温まで冷却し、SANK 70214T株のコロニーを1白金耳接種して、回転振とう培養機で37℃、210rpmの条件下で24時間培養した。得られた培養液を、以下、「種培養液」という。
【0242】
【表4】
* pH無調整。
【0243】
500ml容の三角フラスコに下記表5に示す組成の本培養培地−1を100ml入れ、121℃にて30分間滅菌した後、下記表6に示す組成の本培養培地−2を無菌的に加えて本培養培地とした。これに、上述のSANK 70214T株の種培養液を無菌的に1.0ml接種して、回転振とう培養機で37℃、210rpmの条件下で2時間培養した。その後、IPTG(イソプロピル-β-チオガラクトピラノシド)最終濃度として0.1mMになるように添加し、回転振とう培養機で37℃、210rpmの条件下で1時間培養したのち、実施例3(1)の方法で合成した基質化合物(2)の30mg/mlの濃度でジメチルスルホキシドに溶解した溶液を1.0ml添加して、回転振とう培養機で37℃、210rpmの条件下で5時間培養した。
【0244】
【表5】
【0245】
(表6)
表6.本培養培地の培地組成−2
100mM 硫酸第一鉄 1ml
80mg/ml 5−アミノレブリン酸 1ml
2mg/ml チミン 10ml
100mg/ml クロラムフェニコール 1ml
。
【0246】
(2)テルペノイド誘導体(III)の単離
本実施例におけるテルペノイド誘導体(III)の挙動は、以下に示す条件のHPLCでモニターした。
【0247】
カラム:Unison UK−C18
(直径4.6mm×長さ75mm:インタクト(株)製)
溶 媒:A:0.01%ギ酸を含む10mMギ酸アンモニウム水溶液
B:0.01%ギ酸を含むアセトニトリル
A/B=5/5で平衡化したのちA/B=1/9まで7分間の直線グラジエント
流 速:1.0ml/分
検 出:紫外部吸収 λ230nm
保持時間:4.9分(テルペノイド誘導体(III))。
【0248】
(1)において得られた培養液を100mlにメスアップしたのち、アセトン100mlを添加し、室温で1時間静置した。そのうち1mlをとり、10000rpm、10分の遠心分離処理を行い、その上清を培養液抽出物とした。
【0249】
このようにして調整した培養液抽出物10μlを上記HPLC条件で溶出した。目的化合物の紫外部吸収を波長λ=230nmにて検出し、保持時間4.9分に現れるピーク(テルペノイド誘導体(III))のピーク面積より基質化合物(2)に対する変換効率を算出したところ、テルペノイド誘導体(III)を77%確認した。
(1)SANK 70314T株の培養
100ml容の三角フラスコに実施例7の表4に示す組成の種培養培地を20ml入れ、121℃にて15分間滅菌した後、室温まで冷却し、SANK 70314T株のコロニーを1白金耳接種して、回転振とう培養機で37℃、210rpmの条件下で10時間培養した。得られた培養液を、以下、「種培養液」という。
【0250】
500ml容の三角フラスコに実施例7の表5に示す組成の本培養培地−1を100ml入れ、121℃にて15分間滅菌した後、上記表6に示す組成の本培養培地−2を無菌的に加えて本培養培地とした。これに、上述のSANK 70314T株の種培養液を無菌的に1.0ml接種して、回転振とう培養機で37℃、210rpmの条件下で2時間培養した。その後、IPTGを最終濃度として0.1mMになるように添加し、回転振とう培養機で37℃、210rpmの条件下で1時間培養したのち、実施例3(1)の方法で合成した基質化合物(2)の30mg/mlの濃度でジメチルスルホキシドに溶解した溶液を1.0ml添加して、回転振とう培養機で37℃、210rpmの条件下で84時間培養した。
【0251】
(2)テルペノイド誘導体(III)の単離
本実施例におけるテルペノイド誘導体(III)の挙動は、以下に示す条件のHPLCでモニターした。
【0252】
カラム:Unison UK−C18
(直径4.6mm×長さ75mm:インタクト(株)製)
溶 媒:A:0.01%ギ酸を含む10mMギ酸アンモニウム水溶液
B:0.01%ギ酸を含むアセトニトリル
A/B=5/5で平衡化したのちA/B=1/9まで7分間の直線グラジエント
流 速:1.0ml/分
検 出:紫外部吸収 λ230nm
保持時間:4.9分(テルペノイド誘導体(III))。
【0253】
(1)において得られた培養液を100mlにメスアップしたのち、アセトン100mlを添加し、室温で1時間静置した。そのうち1mlをとり、10000rpm、10分の遠心分離処理を行い、その上清を培養液抽出物とした。
【0254】
このようにして調整した培養液抽出物10μlを上記HPLC条件で溶出した。目的化合物の紫外部吸収を波長λ=230nmにて検出し、保持時間4.9分に現れるピーク(テルペノイド誘導体(III))のピーク面積よりRNR−0014に対する変換効率を算出したところ、テルペノイド誘導体(III)を39%確認した。
【0255】
(実施例9) 徐放性医薬組成物・マイクロスフェアの製造
徐放性医薬組成物の有効成分として、本発明のテルペノイド誘導体(III)を使用した。基材としては、表7に示すポリ乳酸、及び、乳酸−グリコール酸共重合体(和光純薬工業(株)製)を用いた。
【0256】
【表7】
【0257】
薬物含有率10重量%のマイクロスフェアについては、次の方法で製造した。ジクロロメタンに、基材と本発明のテルペノイド誘導体(III)を、それぞれの濃度が約17%および約1.7%(w/v)となるように溶解させた。次いで、得られた溶液をさらに0.05%ポリビニルアルコール水溶液中に加え、撹拌機を用いてo/wエマルションを形成させた。この際の水相体積は油相体積の約6.7倍であった。
【0258】
o/wエマルションを形成する際の撹拌速度を適宜調整することにより、得られるマイクロスフェアの粒子径を制御した。例えば、回転数が速ければ得られるマイクロスフェアの粒子径は小さく、逆に回転速度が遅ければ粒子径が増大した。
【0259】
油相の溶媒の蒸発には水中乾燥法(o/w法)を採用し、マグネチックスターラーで撹拌しながら常圧で行った。このようにして得られたマイクロスフェアをろ過して分取した後、マイクロスフェアの表面に付着している乳化剤等を精製水等で数回繰り返し洗浄した後、再び、蒸留水(精製水)に分散して凍結乾燥し、目的のマイクロスフェアを得た。
【0260】
薬物含有率30重量%のマイクロスフェアについては、次の方法で製造した。ジクロロメタンに、基材と本発明のテルペノイド誘導体(III)を、それぞれの濃度が約12%および約5%(w/v)となるように溶解させた。次いで、得られた溶液をさらに0.05%ポリビニルアルコール水溶液中に加え、撹拌機を用いてo/wエマルションを形成させた。この際の水相体積は油相体積の約6.7倍であった。
【0261】
得られたマイクロスフェアの平均粒子径の測定は、レーザー回折式粒子径分布測定装置(HELOS&CUVETTE, SYMPATEC)で行なった。測定結果を表8に示す。
【0262】
【表8】
【0263】
得られたマイクロスフェア中の、本発明のテルペノイド誘導体(III)の含有率(薬物含有マイクロスフェア中の薬物の重量分率)は以下の方法で測定した。
【0264】
製造したマイクロスフェア(約1mgを正確に秤量した。)をジメチルスルホキシドに溶解させて正確に1mLとし、この溶液に含まれる本発明のテルペノイド誘導体(III)の含有量を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)の測定値から算出し、次式に従って、マイクロスフェア中の本発明のテルペノイド誘導体(III)の含有率を算出した。
【0265】
含有率(重量%)=(本発明のテルペノイド誘導体(III)の含有量の測定値/マイクロスフェア量)×100 。
【0266】
HPLC条件は次の通りである。
<HPLC条件>
装置:クロマトグラフ(Acquity,Waters)、UV検出器(Acquity,Waters)、データ解析機器(Empower,Waters)
HPLCカラム: ACQUITY UPLC BEH C18 1.7 μm
(2.1mm I.D. x 50mm, Waters)
分析時間:14分
移動相A:水:アセトニトリル:リン酸(95 : 5 : 0.1)
移動相B:アセトニトリル:水:リン酸(95 : 5 : 0.1)
流速:0.75 mL/分 (表9にグラジエント条件を示す。)
カラム温度:40℃付近一定温度
サンプル温度:25℃付近一定温度
検出波長:UV−245 nm。
【0267】
【表9】
【0268】
この方法で求められた薬物含有率は、マイクロスフェア製造時の基材と薬物の組成から算出される重量比の85%乃至95%と、ほぼ定量的であることが確認された。そこで、本発明では、組成物の表示では、便宜的に製造時の組成から算出される薬物含有率にて表記した。
【0269】
(実施例10) 徐放性医薬組成物・ロッド状インプラントの製造
基材がPLA−0020で、本発明のテルペノイド誘導体(III)を10重量%含有するマイクロスフェアを用いて、ロッド状インプラントを製造した。このマイクロスフェアは、約200℃に加温することにより完全に融解することができた。融解したマイクロスフェアを金属筒内に満たし、放冷後に取り出して完全に冷却し、目的のロッド状インプラント(直径約1mm)を得た。
【0270】
得られたロッド状インプラントをジメチルスルホキシドに溶解させて正確に1mg/mLとした。この溶液に含まれるテルペノイド誘導体(III)の含有量を実施例4と同様にして測定し、ロッド状インプラント中のテルペノイド誘導体(III)の含有率を算出した。
【0271】
本実施例で用いた薬物含有率10重量%のマイクロスフェアは、次の方法で製造した。ジクロロメタンに、基材と本発明のテルペノイド誘導体(III)を、それぞれの濃度が約17%および約1.7%(w/v)となるように溶解させた。次いで、得られた溶液をさらに0.05%ポリビニルアルコール水溶液中に加え、撹拌機を用いてo/wエマルションを形成させた。この際の水相体積は油相体積の約6.7倍であった。
【0272】
(試験例1)NQO1アッセイ
Hepa1c1c7細胞(マウス肝細胞株、ATCC社、カタログ番号CRL−2026)を培養した(5%CO2、37度)。非働化FBSを10%含むDMEM(ライフテクノロジー社、カタログ番号11965−092)の培地を用いた。また、培地は終濃度でペニシリンを100単位/mL、ストレプトマイシンを100ug/mg含む。NQO1アッセイは既報(Anal Biochem 1998; 169: 328−、Methods Enzymol 2004; 382: 243−)に従って、実施した。
【0273】
Hepa1c1c7細胞を10000cells/ウェルとなるように96ウェルプレートに播種した。培地量は100uLである。約24時間後にテルペノイド誘導体(III)、テルペノイド誘導体(I)あるいはテルペノイド誘導体(II)を含む培地に交換して、更に約48時間培養した。溶解液(EDTAを2mM、ジギトニンを0.8%含む溶液)、反応溶液(トリス塩酸を0.025M、アルブミンを0.067%、Tween−20を0.01%、グルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼを2U/mL、フラビンアデニンジヌクレオチドを5μM、グルコース−6−リン酸を1μM、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸を30μM、3−(4、5−ジメチル−2−チアゾリル)−2、5−ジフェニルテトラゾリウムブロミド(MTT)を0.03%、メナジオンを50μM含む溶液)、停止液(ジクマロールを0.3mM、リン酸2水素カリウムを5mM含む溶液、pHは7.4)を調製した。培地を除去後、溶解液を50μL添加して、37度で10分間静置した。さらに、室温で10分間振盪させた。
【0274】
溶液を200uL添加して、室温で5分間静置した。停止液を50μL添加して、490nmの吸光度を測定した。
【0275】
試験結果をグラフパッド社のプリズム(Ver5)で解析して、NQO1の活性を2倍に上昇させる濃度のCD値(concentration of double NQO1 activity)を算出した。1群は3ウェルで、CD値はその平均値である。CD値は、テルペノイド誘導体(III)が1.0nM、テルペノイド誘導体(I)が0.3nM、テルペノイド誘導体(II)が0.1nMであった。
【0276】
(試験例2) テルペノイド誘導体(III)を含有するマイクロスフェア in vitro薬物放出試験
実施例7に記載の方法で、本発明のテルペノイド誘導体(III)を10重量%含有するマイクロスフェアを製造した。眼内灌流用液(オペガードMA、千寿製薬社製)に界面活性剤(Tween80)を1w/v%となるように含有させ、このものに、本発明のテルペノイド誘導体(III)の濃度が50μg/mLになるようにマイクロスフェアを加え、37℃に設定したインキュベーター中で攪拌した。インキュベーション開始後1、2、3および7日に、この混和溶液を遠心分離(3,750rpm、10分間)し、得られた上清200μLを50%アセトニトリル800μLと混和して、本発明のテルペノイド誘導体(III)の溶出量をHPLCで測定した。HPLCの条件は、実施例4に示した条件と同じである。
【0277】
本発明のテルペノイド誘導体(III)の溶出率(%)を、本発明のテルペノイド誘導体(III)がすべて溶出した場合の薬物濃度を100%として算出した。
【0278】
算出結果を表10に示す。これらより、試験を行なったいずれのマイクロスフェアも持続的に薬物を放出することが示された。
【0279】
【表10】
*医薬組成物中のテルペノイド誘導体(III)含有率を示す。
【0280】
(試験例3) テルペノイド誘導体(III)を含有するロッド状インプラントのin vitro薬物放出試験
実施例8に記載の製造方法でロッド状インプラントを製造した。眼内灌流用液(オペガードMA、千寿製薬社製)に界面活性剤(Tween80)を1w/v%となるように含有させ、このものに、本発明のテルペノイド誘導体(III)の濃度が50μg/mLになるようにロッド状インプラントを加え、37℃に設定したインキュベーター中で攪拌した。インキュベーション開始後1、2、3、7、14、21および28日にこの混和溶液を遠心分離(3,750rpm、10分間)し、得られた上清200μLを50%アセトニトリル800μLと混和して本発明のテルペノイド誘導体(III)の溶出量をHPLCで測定した。HPLCの条件は、実施例7に示した条件と同じである。溶出率の計算方法は、試験例2と同様である。
【0281】
算出結果を表11に示す。これらより、基材PLGA−5020を基材とするロッド状インプラントは、持続的に薬物を放出することが示された。
【0282】
(表11)
表11. ロッド状インプラントからの本発明のテルペノイド誘導体(III)の累積溶出率(%)(テルペノイド誘導体(III)の含有率は10重量%)
日数 PLGA−5020
1 0
2 0
3 0
7 4
15 30
21 61
30 84 。
【0283】
(試験例4)テルペノイド誘導体(III)を含有するマイクロスフェアのウサギ眼内動態試験
本発明のテルペノイド誘導体(III)、本発明のテルペノイド誘導体(III)・PLA−0005[基材としてPLA−0005を使用し、本発明のテルペノイド誘導体(III)とPLA−0005の混合比を1:9として調整した]、本発明のテルペノイド誘導体(III)・PLA−0020[基材としてPLA−0020を使用し、テルペノイド誘導体(III)とPLA−0020の混合比を1:9として調整した。]、それぞれを用いて、溶媒は生食とし、テルペノイド誘導体(III)として3mMとなるように懸濁液を調製した。
【0284】
この懸濁液50uLを白ウサギ(オリエンタル酵母株式会社、Kbl:NZW、雄性、8週齢)に硝子体内投与した。硝子体内投与後にウサギを安楽死させ、硝子体内液および網膜を採材し、それらに含まれるテルペノイド誘導体(III)の濃度を測定した。結果を表13、14に示す。下記表12に示す数値は4眼の平均値と標準誤差を示す。各組織中の薬物濃度はLC/MS/MS法にて測定した。組織の前処理は、組織重量の10倍量に値する精製水を希釈して、ホモジネートすることで測定サンプルを得た。得られたサンプルに内部標準溶液 (IS;Niflmic acid)を含む水/アセトニトリル(1:1)溶液を加え薬物を抽出した後、フィルターろ過した溶液をLC/MS/MSに注入した。
LC/MS/MS条件は次の通りである。
<UPLC条件>:Waters Acquity UPLC
分析カラム:ACQUITY UPLC BEH C18 1.7 μm
カラム温度:50℃
移動相A:95%アセトニトリル(5mM酢酸アンモニウム)
移動相B:5%アセトニトリル(5mM酢酸アンモニウム)。
【0285】
(表12)
表12.グラジエント表
時間(分) 移動相A(%) 移動相B(%)
0 5 95
0.2 50 50
0.6 95 50
0.9 95 5
1 5 95
流速:0.8mL/min。
【0286】
<MS/MS条件>:分析装置API4000
Ionization mode:ESI
Ion polarity mode:Positive
Monitor ion
テルペノイド誘導体(III)(Purecursor ion(m/z):538.5、Product ion(m/z):460)
IS(Precursor ion(m/z):283.2、Product ion(m/z):265)。
【0287】
【表13】
【0288】
(表14)
表14. 本発明のテルペノイド誘導体(III)の網膜内濃度(ug/g組織)
日数 PLA−0020
0.25 0.84±0.11
1 2.66±2.89
7 0.03±0.02
17 0.25±0.15
24 0.13±0.11
28 0.04±0.02 。
【0289】
以上より、生分解性ポリマーを基材として用いることで、本発明のテルペノイド誘導体(III)の硝子体及び網膜中濃度が有意に持続していることが確認できた。
【0290】
(試験例5)テルペノイド誘導体(III)を含有するロッド状インプラントのウサギ眼内薬物動態試験
本発明のテルペノイド誘導体(III)・PLGA−5020[基材としてPLGA−5020を使用し、本発明のテルペノイド誘導体(III)とPLGA−5020の混合比を1:9として調整した]からなるマイクロスフェアを製造し、このマイクロスフェアを用いて、溶媒は生食とし、テルペノイド誘導体(III)として3mMとなるように懸濁液を調製した。
【0291】
この懸濁液50uLを白ウサギ(オリエンタル酵母株式会社、Kbl:NZW、雄性、8週齢)に硝子体内投与した。投与量は、マイクロスフェアとして810ug、本発明のテルペノイド誘導体(III)として81ugであった。
【0292】
また、テルペノイド誘導体(III)・PLGA−5020[基材としてPLGA−5020を使用し、本発明のテルペノイド誘導体(III)とPLGA−5020の混合比を1:9として製造した]からなるロッド状インプラントを製造し、ウサギの硝子体内に投与した。投与量は、ロッド状インプラントとして6.5mg、本発明のテルペノイド誘導体(III)として650ugであった。
【0293】
硝子体内投与後にウサギを安楽死させ、硝子体内液を採材し、本発明のテルペノイド誘導体(III)の濃度を測定した。結果を表15に示す。下記表15に示す数値は、2眼の平均値を示す。ロッド状のインプラントとすることで28日間、硝子体中に薬物が持続できることを確認した。更にマイクロスフェアと比較してロッド状のインプラントは有意にテルペノイド誘導体(III)の硝子体中濃度を持続できることがわかった。
【0294】
(表15)
表15.本発明のテルペノイド誘導体(III)の硝子体内濃度(nM)
日数 マイクロスフェア ロッド状インプラント
3 9.4 3.7
7 0.0 7.9
21 0.0 8.6
28 0.0 2.5 。
【0295】
(試験例6) ウサギ網膜遺伝子に対するテルペノイド誘導体(III)マイクロスフェアの作用
Nrf2標的遺伝子としてNqo1遺伝子の網膜中での変動を検証した。
【0296】
マイクロスフェア懸濁液50uLを白ウサギ(オリエンタル酵母株式会社、Kbl:NZW、雄性、8週齢)に硝子体内投与した。投与量は、マイクロスフェアとして810ug、本発明のテルペノイド誘導体(III)として81ugであった。抽出用キット(キアゲン社製、RNeasy Mini Kit、カタログ番号74106)を用いて、安楽死後のウサギから採材した網膜からmRNAを回収した。得られたmRNAから、cDNA合成キット(GEヘルスケアライフサイエンス社製、First−Strand cDNA Synthesis Kit)を用いてcDNAを作製した。得られたcDNAを試薬(アプライドバイオシステム社製、TaqMan(登録商標)Gene Expression Master Mix(カタログ番号4369016))とプローブを用いて増幅させ、リアルタイム定量PCRをおこなった(アプライドバイオシステムズ社製、Real−time PCR HT7900を使用)。硝子体内投与をしていない網膜でのNqo1遺伝子発現量を1とした時の変動を表16に示す。下記表16に示す数値は、2眼の平均値を示す。
【0297】
(表16)
表16.Nqo1遺伝子の網膜内変動
日数 PLA−0005 PLA−0020
0.25 2.01 2.05
1 4.39 2.47
7 2.08 1.89
17 1.29 1.58
24 1.47 1.91
28 1.52 2.04
試験例3で、テルペノイド誘導体(III)の含有率が高く維持されることが確認されたPLA−0020を基材とするほうが、PLA−0005を基材とするよりも、Nrf2標的遺伝子が強く誘導されることがわかった。
【0298】
(試験例7)含有率変更時のウサギ網膜遺伝子に対するテルペノイド誘導体(III)マイクロスフェアの作用
マイクロスフェアに含有される化合物の割合を変化させて、Nrf2標的遺伝子としてNqo1遺伝子の網膜中での変動を検証した。本発明のテルペノイド誘導体(III)・PLGA−5020[基材としてPLGA−5020を使用し、本発明のテルペノイド誘導体(III)とPLA−0005の混合比を1:9(10重量%)あるいは3:7(30重量%)として製造]を製造した。それぞれを用いて、溶媒は生理食塩液とし、テルペノイド誘導体(III)として3mMとなるように懸濁液を調製した。この懸濁液50uL中には、テルペノイド誘導体(III)が81ug含まれることになる。
【0299】
この懸濁液50uLを白ウサギ(オリエンタル酵母株式会社、Kbl:NZW、雄性、8週齢)に硝子体内投与した。硝子体内投与後にウサギを安楽死させ、ウサギ網膜を採材し、リアルタイム定量PCRを行なって求めたNqo1遺伝子の網膜内変動を表17に示す。下記表17に示す数値は、4眼の平均値と標準誤差を示す。
【0300】
(表17)
表17. Nqo1遺伝子の網膜内変動
時間 10重量% 30重量%
0 1.0±0.0 1.0±0.0
3 1.3±0.6 1.5±0.6
6 1.8±0.4 2.9±0.1
24 2.1±0.4 1.4±0.3
テルペノイド誘導体(III)の含有率が高い医薬組成物でもNrf2標的遺伝子が誘導されることがわかった。
【0301】
また、硝子体液中でのテルペノイド誘導体(III)の濃度を表18に示す。下記表18に示す数値は、4眼の平均値と標準誤差を示す。
【0302】
(表18)
表18.本発明のテルペノイド誘導体(III)の硝子体内濃度(nM)
時間 10重量% 30重量%
0 0±0 0±0
3 213±156 152±111
6 220±163 440±438
24 57±27 37±41 。
【0303】
(試験例8)薬効発現に必要な濃度の算出
本発明のテルペノイド誘導体(III)を有効成分とする徐放性医薬組成物を硝子体に局所投与した際、薬効発現に必要な薬効濃度について検討を行った。Nrf2の標的遺伝子であるNqo1は、その活性を2倍に誘導する濃度が指標として用いられている(AnalBiochem1988;169:328−)。これに倣い、in vivo網膜内でNrf2の標的遺伝子Hmox1を2倍に誘導するテルペノイド誘導体(III)の濃度を指標として、ヒトでの薬物動態を検討した。
【0304】
本発明のテルペノイド誘導体(III)を10重量%含み、基材としてPLA−0020を用いて製造した徐放性医薬組成物を硝子体内投与した際の経時的なHmox1の誘導結果を表19に示す。
【0305】
(表19)
表19.PLA−0020を基材するテルペノイド(III)組成物(マイクロスフェア)硝子体内投与時のNqo1遺伝子の網膜内変動推移
日数 PLA−0020
0.25 6.89
1 11.2
7 2.08
17 1.87
24 2.35
28 1.95 。
【0306】
これより、当該徐放性医薬組成物の投与から28日間、すなわち約1ヶ月間、約2倍以上のHmox1の誘導が維持されたことがわかる。
【0307】
次に、これらの誘導倍率を示すために必要な標的組織(網膜)中の薬物濃度について検討した。当該徐放性医薬組成物を硝子体内投与した際の網膜中薬物濃度推移を表20に示す。
【0308】
(表20)
表20.テルペノイド誘導体(III)の網膜内濃度(nM)
日数 PLA−0020
0.25 1.56
1 9.48
17 0.46
24 0.24
28 0.07 。
【0309】
このように、2倍以上のHmox1の誘導は本試験時において投与後28日間、すなわち約1ヵ月後までの全ての時間で満足した。よって、本試験における最小網膜内薬物濃度、すなわち投与1ヵ月後の網膜内濃度(表14から0.07μM)以上であれば、薬効発現に必要なHmox1の誘導が得られることがわかった。
【0310】
1ヶ月間Hmox1遺伝子を2倍誘導するために必要な投与量は、表13より、本試験例で投与されたマイクロスフェア中薬物量である、81μg/bodyであることが確認された。
【0311】
次に、本結果からヒトへの薬物投与量を予測した。硝子体内の容量はヒトで4mL、ウサギで1.5〜2.5mLである(InvestOphthalmolVisSci2007;48:2230−)。よって、この約2倍の容量比で補正することにより、ウサギ硝子体内の薬物濃度からヒトへの外挿が可能と考えられる。表13のデータを取得したときの薬物投与量81μg/body(ウサギ)であることから、臨床での望ましい薬効持続期間を1ヶ月とすると、必要な薬物投与量は、162μg/bodyと計算される。一方、ロッド状インプラント医薬組成物として製品化されているOzudex(R)の薬物含有量は700μgである。(InvestOphthalmolVisSci20011;52:80−)。以上より、本発明のテルペノイド誘導体(III)有効成分とする医薬組成物により、臨床で薬理効果を発現する薬物量を投与できると予測された。