特許第6644445号(P6644445)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6644445
(24)【登録日】2020年1月10日
(45)【発行日】2020年2月12日
(54)【発明の名称】電気化学ガスセンサ
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/416 20060101AFI20200130BHJP
【FI】
   G01N27/416 331
【請求項の数】10
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-539788(P2017-539788)
(86)(22)【出願日】2016年8月18日
(86)【国際出願番号】JP2016074054
(87)【国際公開番号】WO2017047316
(87)【国際公開日】20170323
【審査請求日】2019年4月5日
(31)【優先権主張番号】特願2015-183700(P2015-183700)
(32)【優先日】2015年9月17日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2015-199967(P2015-199967)
(32)【優先日】2015年10月8日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000112439
【氏名又は名称】フィガロ技研株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086830
【弁理士】
【氏名又は名称】塩入 明
(74)【代理人】
【識別番号】100096046
【弁理士】
【氏名又は名称】塩入 みか
(72)【発明者】
【氏名】佐井 正和
【審査官】 黒田 浩一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−098269(JP,A)
【文献】 特開2008−164305(JP,A)
【文献】 特開平02−019759(JP,A)
【文献】 特開2005−147790(JP,A)
【文献】 特開2008−070165(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/26−27/49
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高分子固体電解質膜と、前記固体電解質膜に接触している検知極と、前記固体電解質膜に接触しかつ前記検知極とは非接触である対極と、前記固体電解質膜とは反対側の面で前記検知極を被覆すると共に導電性でかつ多孔質のガス拡散層と、フィルタとを有し、水溜を備えない電気化学ガスセンサにおいて、
前記ガス拡散層が親水性であるか、もしくは前記フィルタが親水性であることを特徴とする、電気化学ガスセンサ。
【請求項2】
高分子固体電解質膜と、前記固体電解質膜に接触している検知極と、前記固体電解質膜に接触しかつ前記検知極とは非接触である対極と、前記固体電解質膜とは反対側の面で前記検知極を被覆すると共に導電性でかつ多孔質のガス拡散層と、フィルタとを有し、水溜を備えない電気化学ガスセンサにおいて、
前記ガス拡散層が親水化されているか、もしくは前記フィルタが親水化されていることを特徴とする、電気化学ガスセンサ。
【請求項3】
高分子固体電解質膜と、前記固体電解質膜に接触している検知極と、前記固体電解質膜に接触しかつ前記検知極とは非接触である対極と、前記固体電解質膜とは反対側の面で前記検知極を被覆すると共に導電性でかつ多孔質のガス拡散層と、フィルタとを有し、水溜を備えない電気化学ガスセンサにおいて、
前記ガス拡散層がカーボンを含むと共に、セルロース、PVA(ポリビニルアルコール)、酢酸ビニルポリマー、PVAと酢酸ビニルとのコポリマー、ヘミセルロース、デンプン、ペクチン、アルギン酸、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸アミド、H+型のポリアクリル酸、H+型のポリメタクリル酸、H+型のポリマレイン酸、スルホン化したビスフェノール類の縮合物、リグニン、ポリオレフィングリコールから成る群の少なくとも一員の、アルカリ金属イオンを含まずかつ水に不溶な親水性高分子である有機物バインダにより親水化されていることを特徴とする、電気化学ガスセンサ。
【請求項4】
前記検知極は前記固体電解質膜の一方の面に設けられ、
前記対極は前記固体電解質膜の他方の面に設けられ、
前記検知極を被覆するガス拡散層を第1のガス拡散層として、
前記固体電解質膜とは反対側の面で前記対極を被覆すると共に導電性でかつ多孔質の第2のガス拡散層をさらに有し、
前記第1のガス拡散層と前記第2のガス拡散層がいずれも、カーボンを含むと共に、前記水に不溶な親水性高分子である有機物バインダにより親水化されていることを特徴とする、請求項3に記載の電気化学ガスセンサ。
【請求項5】
高分子固体電解質膜と、前記固体電解質膜に接触している検知極と、前記固体電解質膜に接触しかつ前記検知極とは非接触である対極と、前記固体電解質膜とは反対側の面で前記検知極を被覆すると共に導電性でかつ多孔質のガス拡散層と、フィルタとを有し、水溜を備えない電気化学ガスセンサにおいて、
前記ガス拡散層がカーボンを含むと共に、水酸基あるいはエーテル基を有し、アルカリ金属イオンを含まずかつ水に不溶な親水性高分子である有機物バインダにより親水化されていることを特徴とする、電気化学ガスセンサ。
【請求項6】
前記ガス拡散層が、バインダと親水性のカーボンとから成ることを特徴とする、請求項1に記載の電気化学ガスセンサ。
【請求項7】
前記検知極は前記固体電解質膜の一方の面に設けられ、
前記対極は前記固体電解質膜の他方の面に設けられ、
前記検知極を被覆するガス拡散層を第1のガス拡散層として、
前記固体電解質膜とは反対側の面で前記対極を被覆すると共に導電性でかつ多孔質の第2のガス拡散層をさらに有し、
前記第1のガス拡散層と前記第2のガス拡散層がいずれも、バインダと親水性のカーボンとから成ることを特徴とする、請求項6に記載の電気化学ガスセンサ。
【請求項8】
前記フィルタは親水化されている活性炭から成ることをことを特徴とする、請求項1に記載の電気化学ガスセンサ。
【請求項9】
高分子固体電解質膜と、前記固体電解質膜に接触している検知極と、前記固体電解質膜に接触しかつ前記検知極とは非接触である対極と、前記固体電解質膜とは反対側の面で前記検知極を被覆すると共に導電性でかつ多孔質のガス拡散層と、フィルタとを有し、水溜を備えない電気化学ガスセンサにおいて、
前記フィルタは、セルロース、PVA、酢酸ビニルポリマー、PVAと酢酸ビニルとのコポリマー、ヘミセルロース、デンプン、ペクチン、アルギン酸、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸アミド、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリマレイン酸、スルホン化したビスフェノール類の縮合物、リグニン、及びポリオレフィングリコールから成る群の少なくとも一員の親水性高分子を含むことを特徴とする、電気化学ガスセンサ。
【請求項10】
前記フィルタが前記親水性高分子と活性炭とから成ることを特徴とする、請求項9に記載の電気化学ガスセンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電気化学ガスセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
プロトン導電体膜の一面に検知極を他面に対極を設け、カーボンとPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)から成る疎水性の炭素繊維シートにより、検知極と対極とを覆った電気化学ガスセンサが知られている(特許文献1 JP2006-84319A)。この電気化学ガスセンサは水溜を備え、疎水性の炭素繊維シートは水溜からの液体の水を排除する。
【0003】
特許文献2(US2015/1076A)は、ヒドロキシゲルにより検知極と対極、参照極の3極を覆った電気化学ガスセンサを開示している。ヒドロキシゲルは水を蓄え、水溜として作用する。特許文献3(JP2010-241648A)は、活性炭の親水化について記載している。特許文献4(JP2007-503992)は、酸により処理した活性炭は、未処理の活性炭よりもシロキサン除去能力が高いことを記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】JP2006-84319A
【特許文献2】US2015/1076A
【特許文献3】JP2010-241648A
【特許文献4】JP2007-503992
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
水溜を備えない電気化学ガスセンサは、乾燥雰囲気中で、高分子固体電解質の導電性が低下すること、及び検知極の活性が低下すること等により、感度が低下しやすい。例えばCOの検出では、検知極での以下の反応を利用し、検出には水が必要である。また高分子固体電解質の導電性が低下すると、出力電流あるいは出力電圧が低下する。
CO+H2O→CO2+2H++2e-
【0006】
この発明の課題は、水溜を備えない電気化学ガスセンサに対し、乾燥雰囲気に対する耐久性を向上させることにある。
この発明の副次的な課題は、結露雰囲気でも、ガスセンサの感度が失われないようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、高分子固体電解質膜と、前記固体電解質膜に接触している検知極と、前記固体電解質膜に接触しかつ前記検知極とは非接触である対極と、前記固体電解質膜とは反対側の面で前記検知極を被覆すると共に導電性でかつ多孔質のガス拡散層と、フィルタとを有し、水溜を備えない電気化学ガスセンサにおいて、
前記ガス拡散層が親水性であるか、前記フィルタが親水性の活性炭から成ることを特徴とする。
【0008】
最初に、ガス拡散層の親水化を説明する。図3図4に示すように、ガス拡散層を親水化することにより、乾燥雰囲気中への耐久性が向上する。なおガス拡散層は、固体高分子電解質膜、検知極、及び対極に比べ厚い部材であり、これらに比べて多量の水を保持でき、この水が乾燥雰囲気で徐々に蒸発し、あるいは電極と固体高分子電解質膜へ移動することにより、ガス感度を維持できる。この発明の電気化学ガスセンサは、水溜を備えなくても、乾燥雰囲気への耐久性が高い(図3図4)。なお一般に、電気化学ガスセンサは長期間乾燥雰囲気に置かれると感度が低下するが、常湿の雰囲気に戻すと感度は回復する。
【0009】
好ましくは、前記検知極は前記固体電解質膜の一方の面に設けられ、前記対極は前記固体電解質膜の他方の面に設けられている。前記検知極を被覆するガス拡散層を第1のガス拡散層とし、前記固体電解質膜とは反対側の面で前記対極を被覆すると共に導電性でかつ多孔質の第2のガス拡散層を、ガスセンサはさらに有し、前記第1のガス拡散層と前記第2のガス拡散層がいずれも親水化されている。第1のガス拡散層と第2のガス拡散層がいずれも親水性なので、ガス拡散層に多量の水を蓄えることができ、乾燥雰囲気への耐久性が向上する。
【0010】
ガス拡散層は通常、カーボンが有機物バインダにより結着されている。燃料電池用のガス拡散層は水が溜まることを防止するため、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等の疎水性高分子をバインダとし、ガス拡散層も疎水性である。好ましくは、前記第1のガス拡散層と前記第2のガス拡散層はいずれも、アルカリ金属イオンを含まずかつ水に不溶な親水性高分子である有機物バインダにより親水化されている。このような親水性高分子には、セルロース、PVA(ポリビニルアルコール)、酢酸ビニルポリマー、PVAと酢酸ビニルとのコポリマー、ヘミセルロース、デンプン、ペクチン、アルギン酸、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸アミド、H+型のポリアクリル酸、H+型のポリメタクリル酸、H+型のポリマレイン酸、スルホン化したビスフェノール類の縮合物、リグニン等がある。これらの親水性高分子は、水酸基、エーテル基、カルボキシル基、ケトン基、アミド基、H+型のスルホン酸基、スルホニル基、エステル基等の親水性基により親水化されている。そして親水性の程度は主として親水性基の含有量で定まり、親水性基の種類、高分子結晶の安定性、等も影響する。例えば水酸基はエステル基よりも親水性が高い。
【0011】
なお、カルボキシセルロース、酢酸ビニルポリマー、ヘミセルロース、デンプン、ペクチン、アルギン酸、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸アミド、H+型のポリアクリル酸、H+型のポリメタクリル酸、H+型のポリマレイン酸、スルホン化したビスフェノール類の縮合物、スルホン化あるいはカルボキシル化を進めたリグニン、等には水溶性のものがあるが、架橋等により水に不溶にする。架橋以外に、疎水性の高分子との共重合、疎水性の高分子骨格へのグラフト重合等でも、水に不溶にできる。さらに親水性の水酸基を疎水性のエステル基により置換する、炭素骨格の水素をフッ素などで置換する、などによっても、親水性高分子を水に不溶にできる。またカーボンは、炭素繊維、カーボンブラック、活性炭、黒鉛等である。
【0012】
バインダがアルカリ金属イオンを含むと、結露雰囲気で浸透圧により多量に吸水し、バインダが膨張する可能性がある。例えばNa型のポリアクリル酸は、結露雰囲気で多量の水を吸収して膨張する。そしてバインダが膨張すると、ガス拡散層が膨張し、ガスセンサの特性が変化する可能性がある。さらにバインダが水に可溶であると、結露雰囲気でバインダが水に溶出して移動するおそれがある。そこで有機物バインダは、アルカリ金属イオンを含まずかつ水に不溶な親水性高分子であることが好ましい。バインダがアルカリ金属イオンを含まずかつ水に不溶であると、ガス拡散層が結露雰囲気でも膨潤せず、またバインダが流出しない。なお、H型でNa等の金属イオンを含まない高分子でも、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリマレイン酸のカルボン酸ポリマー、スルホン化したリグニン、スルホン化したビスフェノール類等のスルホン酸ポリマーは、金属を腐食させる可能性があるので、使用が制限される。またアルカリイオンの代わりにNH4を含む高分子バインダも、同様に浸透圧により膨潤し、さらにNH3を発生させる可能性があるので好ましくない。
【0013】
なおポリメタクリル酸メチル樹脂はエステル基を含むが親水性が不足し、乾燥雰囲気中でガスセンサの感度が低下する(図9図10)。同様に、ポリアミド繊維(6−6ナイロン繊維)はアミド基を含むが、親水性が不十分で、乾燥雰囲気でガスセンサの感度が低下する。
【0014】
特に好ましくは、前記有機物バインダが水酸基あるいはエーテル基を備えている。このような有機物バインダには、例えばセルロース、PVA(ポリビニルアルコール)、ポリオレフィングリコール(ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等)、ヘミセルロース、アルギン酸、等がある。なおセルロースは水酸基の一部がエステル化されていても良く、セルロースの種類は任意である。またPVA、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ヘミセルロース、アルギン酸等は水に可溶なので、架橋等により水に不溶にすることが好ましい。有機物バインダが水に不溶であると、結露雰囲気でもバインダが流出せず、結露雰囲気への耐久性が増す。特に好ましい有機物バインダは、セルロース、及び水に不溶なPVA、ヘミセルロース、アルギン酸である。これらの内でも、セルロースと水に不溶なPVAとが好ましい。なおPVAは酢酸ビニルとのコポリマーでも良い。発明者は、セルロースあるいは水に不溶なPVAをバインダとすると、50℃の結露雰囲気に例えば10週間置いても、センサ特性の変化が小さいことを確認した(図5)。
【0015】
好ましくは、前記第1のガス拡散層と前記第2のガス拡散層はいずれも、親水性のカーボンにより親水化されている。例えば活性炭を、濃硫酸と酸化剤との混合物、あるいは濃硝酸と酸化剤との混合物により処理すると、低湿領域でシリカゲルと同量以上の水を保持するようになることが知られている(特許文献3 JP2010-241648A)。このような活性炭は電気化学ガスセンサのガス拡散層に用いうる程度の導電性があり、親水化によりガスセンサの乾燥雰囲気中での耐久性を向上させる(表2)。炭素繊維、黒鉛、カーボンブラックも同様の手法で親水化できる。
【0016】
参照極を設ける場合、高分子固体電解質膜の例えば対極と同じ面に設ける。高分子固体電解質膜はプロトン導電性でもアニオン導電性でも良いが、好ましくはプロトン導電性とし、導電性を発現させるキャリアはプロトンでもアルカリイオンでも良い。
【0017】
多くの電気化学ガスセンサでは、雰囲気を、フィルタ、検知極側のガス拡散層、検知極の順に供給する。シロキサン等の検知極の触媒活性を被毒するガスを、フィルタにより除去する。フィルタは例えば活性炭から成り、ガス拡散層に比べて容積が大きな部材である。そして発明者は、親水性の活性炭をフィルタとすることにより、電気化学ガスセンサの乾燥雰囲気への耐久性を向上させ、しかも結露雰囲気でもガス感度が失われないようにすることができることを見出した。
【0018】
図12図14は、活性炭と親水性高分子とからなる親水性の活性炭フィルタを用いた際の、ガスセンサの結露雰囲気(図12)及び乾燥雰囲気(図13図14)での挙動を示す。活性炭フィルタが親水性でも、結露によりフィルタが目詰まりしてガス感度が失われることはない(図12)。また70℃の乾燥雰囲気でも、10週間ガスを安定して検出できる(図14)。
【0019】
図15図17は、酸化により親水化されている活性炭をフィルタとした際の挙動を示す。結露雰囲気でも安定してガスを検出でき(図15)、70℃の乾燥雰囲気でも10週間ガスを安定して検出できる(図17)。
【0020】
図18図19は、通常の活性炭をフィルタとした際の挙動を示し、50℃(図18)及び70℃(図19)の乾燥雰囲気中で徐々にガス感度が低下する。
【0021】
これらのデータは、親水性の活性炭フィルタにより高温の乾燥雰囲気への耐久性が増すこと、及び、親水性の活性炭フィルタでも結露雰囲気でガス感度を維持できることを示している。高温の乾燥雰囲気への耐久性が増す原因は、親水性の活性炭フィルタが保持している水にあると考えられる。結露雰囲気でガス感度が低下しない原因は不明であるが、このことは、親水性高分子を含む活性炭フィルタでも、活性炭自体を親水性にしたフィルタでも生じる。これらのため、水溜無しで乾燥雰囲気での電気化学ガスセンサの信頼性を向上させることができ、しかも結露雰囲気でも感度が失われない。
【0022】
特に好ましくは、活性炭フィルタでは活性炭が親水性高分子をバインダとして成形されている。成形された活性炭フィルタは扱いやすく、また粉末状活性炭を用いても活性炭粉末により周囲を汚染することがない。
【0023】
好ましくは、活性炭フィルタは、親水性あるいは疎水性の活性炭と、親水性高分子とから成る。親水性高分子は、セルロース、PVA(ポリビニルアルコール)、酢酸ビニルポリマー、PVAと酢酸ビニルとのコポリマー、ヘミセルロース、デンプン、ペクチン、アルギン酸、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸アミド、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリマレイン酸、スルホン化したビスフェノール類の縮合物、リグニン等である。これらの親水性高分子は、水酸基、エーテル基、カルボキシル基、ケトン基、アミド基、スルホン酸基、スルホニル基、エステル基等の親水性基を有し、親水性の程度は主として親水性基の含有量で定まり、親水性基の種類、高分子結晶の安定性、等も影響する。例えば水酸基はエステル基よりも親水性が高い。
【0024】
親水性高分子は、特に好ましくは、セルロース、PVA(ポリビニルアルコール)、酢酸ビニルポリマー、PVAと酢酸ビニルとのコポリマー、ヘミセルロース、デンプン、ペクチン、アルギン酸、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸アミドとする。これらの高分子は弱塩基性〜弱酸性で扱いやすく、図2図4に示したように、乾燥雰囲気への耐久性を向上させ、かつ結露雰囲気でも感度を維持できる。
【0025】
活性炭と親水性高分子との割合は、好ましくは質量比で活性炭が90〜50mass%、親水性高分子が10〜50mass%とする。活性炭は繊維状、粉末状、あるいは塊状を問わない。
【0026】
好ましくは、活性炭フィルタは、酸化されて親水性の活性炭を有する。酸化されて親水性の活性炭は、硫酸根、硝酸根、リン酸根、炭酸根等の酸基を含む点と、乾燥領域で保持する水の量が多い点で、他の活性炭から区別できる。活性炭を、濃硫酸と酸化剤との混合物、あるいは濃硝酸と酸化剤との混合物により酸化すると、低湿領域でシリカゲルと同量以上の水を保持するようになることが知られている(特許文献3 JP2010-241648A)。この明細書では、酸と酸化剤の混合物等により酸化された活性炭を、酸化により親水化した活性炭という。さらに強酸で処理した活性炭は、シロキサン化合物を吸着することが知られている(特許文献4 JP2007-503992)。
【0027】
このため、酸化されて親水性の活性炭を用いると、乾燥雰囲気で保持する水のため乾燥へのガスセンサの耐久性が増し、また酸化時に酸を用いるとシロキサンにより検知極が被毒されることをより確実に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】実施例1,2の電気化学ガスセンサの断面図
図2図1の要部拡大断面図
図3】50℃の乾燥雰囲気での、実施例(セルロース+PVAバインダ)のガスセンサの出力を示す特性図
図4】70℃の乾燥雰囲気での、実施例(セルロース+PVAバインダ)のガスセンサの出力を示す特性図
図5】50℃の湿潤雰囲気での、実施例(セルロース+PVAバインダ)のガスセンサの出力を示す特性図
図6】50℃の乾燥雰囲気での、比較例(PTFEバインダ)のガスセンサの出力を示す特性図
図7】70℃の乾燥雰囲気での、比較例(PTFEバインダ)のガスセンサの出力を示す特性図
図8】50℃の湿潤雰囲気での、比較例(PTFEバインダ)のガスセンサの出力を示す特性図
図9】50℃の乾燥雰囲気での、比較例(アクリル樹脂バインダ)のガスセンサの出力を示す特性図
図10】70℃の乾燥雰囲気での、比較例(アクリル樹脂バインダ)のガスセンサの出力を示す特性図
図11】実施例3,4の電気化学ガスセンサの断面図
図12】50℃の湿潤雰囲気での、実施例3(セルロース+PVAバインダ)のガスセンサの出力を示す特性図
図13】50℃の乾燥雰囲気での、実施例3(セルロース+PVAバインダ)のガスセンサの出力を示す特性図
図14】70℃の乾燥雰囲気での、実施例3(セルロース+PVAバインダ)のガスセンサの出力を示す特性図
図15】50℃の湿潤雰囲気での、実施例4(酸化により親水化した活性炭)のガスセンサの出力を示す特性図
図16】50℃の乾燥雰囲気での、実施例4(酸化により親水化した活性炭)のガスセンサの出力を示す特性図
図17】70℃の乾燥雰囲気での、実施例4(酸化により親水化した活性炭)のガスセンサの出力を示す特性図
図18】50℃の乾燥雰囲気での、比較例(親水化していない活性炭)のガスセンサの出力を示す特性図
図19】70℃の乾燥雰囲気での、比較例(親水化していない活性炭)のガスセンサの出力を示す特性図
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下に本発明を実施するための最適実施例を示す。
【実施例】
【0030】
図1図2に実施例の電気化学ガスセンサ2を示す。図において、4はMEA、6はステンレス等の金属缶、8は拡散制御板で、孔径を一定に制御した拡散制御孔10から被検出雰囲気をMEA4へ導入する。12は封孔体で、活性炭等のフィルタ材14を収容し、開口16から被検出雰囲気を取り入れ、開口18から拡散制御孔10へ被検出雰囲気を拡散させる。またガスケット20は、金属缶6と封孔体12との間を気密に絶縁する。
【0031】
図2に示すように、MEA4は膜厚20μmのプロトン導電体膜22の両面に、膜厚10μmの検知極23と膜厚10μmの対極24とを積層し、これらを膜厚200μmのガス拡散層25,26で挟んだものである。そして検知極23とガス拡散層25が被検出雰囲気側に、対極24とガス拡散層26が金属缶6側に配置されている。プロトン導電体膜22はフッ素樹脂にスルホン酸基を導入した樹脂で、膜厚は例えば5μm以上50μm以下が好ましく、検知極23と対極24はカーボンブラック、活性炭等のカーボンにPt、Pt-Ru等の触媒を担持させると共に、プロトン導電性高分子を分散させたもので、膜厚は例えば1μm以上10μm以下が好ましい。検知極23,対極24を薄膜電極とする場合、膜厚は0.1μm以上1μm以下とする。さらにプロトン導電体膜22の代わりに、水酸イオン導電体等のアニオン導電体膜を用いても良い。
【0032】
ガス拡散層25,26は、カーボンブラック、炭素繊維、活性炭、黒鉛等のカーボンを、親水性高分子から成るバインダにより結着したシートであり、多孔質でかつ導電性があり、膜厚は20μm以上400μm以下が好ましい。ガス拡散層25,26での親水性高分子の濃度は10mass%以上50mass%以下が好ましく、カーボン濃度は50mass%以上90mass%以下が好ましい。なおガス拡散層25,26の一方のみを親水化しても良い。
【0033】
電気化学ガスセンサの構造は任意で、金属缶6と封孔体12の代わりに合成樹脂の容器を用いても良い。この場合、例えば検知極23と対極24とに各々リードを接続し、リードを容器の外部へ引き出す。また検知極23と対極24をプロトン導電体膜22の同じ面に離隔して配置しても良い。この場合、例えば検知極23をプロトン導電体膜22の中心部に配置し、拡散制御孔10から被検出雰囲気を検知極23へ供給する。そして対極24を、プロトン導電体膜22の同じ面上で、例えば検知極23を取り巻くようにリング状に配置する。そしてガス拡散層25には、検知極23と対極24の間の領域でリング状に樹脂を含浸させて、検知極23と対極24間を気密にしても良い。この場合、ガス拡散層26は不要である。
【0034】
ガス拡散層25,26の親水化は例えば、
・ 親水性高分子から成るバインダによりカーボンを結着する(実施例1,比較例1,2)か、
・ カーボンを酸化し親水化する(実施例2)ことにより行う。
【0035】
実施例1
カーボンブラック60mass%を、ヒドロキシセルロース繊維20mass%及び架橋により水に不溶にした繊維状PVA20mass%から成るバインダで混練し、シート状に成形して膜厚200μmのガス拡散層25,26とした。このガス拡散層を用いたガスセンサを実施例1とする。カーボンブラック80mass%をPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)20mass%で結着し、膜厚200μmのガス拡散層25,26としたガスセンサを、比較例1とする。さらに炭素繊維60mass%を、ポリメタクリル酸メチル20mass%及PET(ポリエチレンテレフタレート)20mass%から成るバインダで混練して膜厚200μmのガス拡散層25,26としたガスセンサを、比較例2とする。
【0036】
各ガスセンサ(サンプル数N=5)に対し、20℃50%RHの条件でCO濃度に対する出力電流の初期値を測定した。次いで各ガスセンサを50℃の乾燥雰囲気(RH10%)または70℃の乾燥雰囲気(RH4%)で10週間エージングし、この間に20℃50%RHの雰囲気へ移して1時間後にCO感度を測定した後、再度乾燥雰囲気へ戻した。CO1000ppm中での出力電流の初期値をI0とし、10週間の出力電流Iの推移を測定した。また50℃でRH100%の湿潤雰囲気でのCO感度の推移を同様にして測定した。CO感度の推移は、CO1000ppm中での出力電流Iとその初期値I0との比で示す。これらの試験は、乾燥雰囲気への耐久性及び結露雰囲気への耐久性の加速試験である。また試験後に、24時間20℃50%RHの雰囲気に放置すると、各ガスセンサの感度は初期値に復帰した。
【0037】
実施例1での結果を図3図5に、比較例1での結果を図6図8に、比較例2での高温の乾燥雰囲気での結果を図9図10に示す。実施例1では、70℃RH4%で10週間CO感度は低下せず、さらに50℃RH100%で10週間でもCO感度はほとんど低下しなかった。このことは、結露雰囲気でガス拡散層25,26に水が溜まり、その結果、ガス感度が低下することが無いことを示している。なおカーボンブラックとセルロースの混合物、あるいはカーボンブラックとPVAと酢酸ビニルのコポリマーでも、結露雰囲気への耐久性は同様であった。これに対し、比較例1では、70℃RH4%でも、50℃RH10%でも、CO感度は低下した。さらに比較例2では、比較例1よりもCO感度が大きく低下した。
【0038】
カーボンの種類と濃度、及びバインダの種類と濃度が異なるガスセンサに対し、50℃RH10%で10週間エージングした後のCO感度を同様に測定し、結果を表1に示す。センサ数は各5個で、平均値で結果を示し、*を付した試料は比較例である。
【0039】
表1
カーボンの種類 バインダの種類 10週間後のCO感度
と濃度(mass%) と濃度(mass%) (I/I0
炭素繊維60 ヒドロキシセルロース40 1.0
粉末状活性炭80 ケン化度60%のPVA-酢酸ビニル/コポリマー20 1.0
炭素繊維60* 6-6ナイロン40* 0.8
【0040】
実施例2
特許文献3に従い、濃硫酸と過マンガン酸カリウムとを用いて親水化した粉末状活性炭80mass%とPTFEバインダ20mass%とを用いて、膜厚200μmのガス拡散層25,26を調製し、ガスセンサ2とした。50℃RH10%の雰囲気で10週間エージングした後のCO感度を表2に示す。センサ数は5個、結果は平均値である。親水化する活性炭は繊維状等でも良い。
【0041】
表2
カーボンの種類 バインダの種類 10週間後のCO感度
と濃度(mass%) と濃度(mass%) (I/I0
親水化活性炭80 PTFE20 1.0
【0042】
実施例では拡散制御孔10により、MEA4と被検出雰囲気との間の水蒸気移動を制限している。このことが、ガス拡散層25,26中の少量の水が、乾燥雰囲気への耐久性を長期間保証できることに寄与している。このように、MEA4と被検出雰囲気との間の拡散を制御する電気化学ガスセンサ2に対し、この発明は特に有効である。またバインダが結露雰囲気で膨潤あるいは水に溶けて移動すると、拡散制御孔10を塞いだり、ガス拡散層25,26の性質が変化したりするおそれがある。そこでアルカリ金属イオンを含まず、かつ水に不溶なバインダを用いることにより、結露雰囲気への耐久性を向上させる。そしてバインダの親水性基を水酸基あるいはエーテル基とすると、結露雰囲気への耐久性が特に向上する。
【0043】
実施例3,4でのガスセンサの構造
図11に実施例3,4の電気化学ガスセンサ2を示す。図において、4はMEAで、膜厚20μmのプロトン導電体膜22の両面に、検知極と対極とを積層し、これらをガス拡散層25,26で挟んだものである。プロトン導電体膜22はフッ素樹脂にスルホン酸基を導入した樹脂で、膜厚は例えば5μm以上50μm以下が好ましく、検知極と対極はカーボンブラック、活性炭等のカーボンにPt、Pt-Ru等の触媒を担持させると共に、プロトン導電性高分子を分散させたもので、膜厚は例えば0.1μm以上10μm以下が好ましい。またプロトン導電体膜22の代わりに、水酸イオン導電体膜等のアニオン導電体膜を用いても良い。ガス拡散層25,26は、カーボンブラックをPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等のバインダにより結着したシートであり、多孔質でかつ導電性があり、膜厚は20μm以上400μm以下が好ましい。
【0044】
8は拡散制御板で、孔径を一定に制御した拡散制御孔10から、被検出雰囲気をMEA4のガス拡散層25へ導入する。12は金属の封孔体で、活性炭フィルタ14を収容し、開口16から被検出雰囲気を取り入れ、開口18から拡散制御孔10へ被検出雰囲気を拡散させる。6は金属缶で、MEA4と封孔体12とを収容し、絶縁性のガスケット20を介して、カシメにより封孔体12とMEA4、拡散制御板8を気密に固定する。これらの結果、封孔体12が検知極に接続され、金属缶6が対極に接続される。なお7は金属缶6の側壁である。
【0045】
電気化学ガスセンサの構造は任意で、金属缶6と封孔体12の代わりに合成樹脂の容器とキャップを用いても良い。この場合、例えばキャップ内に活性炭フィルタ14を保持させて、被検出ガスを検知極へ導入する。そして例えば検知極と対極とに各々リードを接続し、リードを容器とキャップの外部へ引き出す。また検知極と対極をプロトン導電体膜22の同じ面に離隔して配置しても良い。この場合、例えば検知極をプロトン導電体膜22の中心部に配置し、拡散制御孔10から被検出雰囲気を検知極へ供給する。そして対極を、プロトン導電体膜22の同じ面上で、例えば検知極を取り巻くようにリング状に配置する。またガス拡散層25には、検知極と対極の間の領域でリング状に樹脂を含浸させて、検知極と対極間を気密にする。この場合、ガス拡散層26は不要である。
【0046】
活性炭フィルタ14の親水化は例えば、親水性高分子により活性炭を結着する(実施例3)か、活性炭を酸化し親水化する(実施例4)ことにより行う。なお親水性高分子のビーズを活性炭内に分散させても良いが、これでは異種の材料を混合しただけである。これに対して、親水性高分子をバインダとして活性炭を成形すると、活性炭フィルタを取り扱いやすい。
【0047】
実施例3
粉末状活性炭70mass%を、ヒドロキシセルロース繊維15mass%及び架橋により水に不溶にした繊維状のPVA(ポリビニルアルコール)15mass%と混合し、直径7mm、厚さ2mmのディスク状に成形して、活性炭フィルタ14とした。フィルタ14は通気性で、バインダのヒドロキシセルロースとPVAとのためにディスク状の形状を保つ。比較例として、粉末状活性炭80mass%をPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)バインダ20mass%と混合し、同じサイズに成形した活性炭フィルタを用いた。活性炭は繊維状、あるいは塊状等でも良い。
【0048】
実施例4
特許文献3に従い、濃硫酸と過マンガン酸カリウムにより活性炭表面を酸化して親水化した粉末状活性炭80mass%と、PTFEバインダ20mass%とを用いて、実施例3と同じサイズの活性炭フィルタ14を成形した。PTFEバインダではなく、親水性高分子を用いるとより優れた効果が得られる。活性炭は繊維状、あるいは塊状等でも良い。
【0049】
各ガスセンサに対し、20℃50%RH(露点:10℃)の条件でCO濃度に対する出力電流の初期値Iを測定した。次いで各ガスセンサを50℃の乾燥雰囲気(RH10%)及び70℃の乾燥雰囲気(RH4%)で10週間エージングし、この間、20℃50%RHの雰囲気へ移して1時間後にCO感度を測定した後、再度乾燥雰囲気へ戻した。CO1000ppm中での出力電流の初期値をI0とし、10週間の出力電流Iの推移を測定した。また50℃でRH100%の湿潤雰囲気での、CO感度の推移を同様にして測定した。CO感度の推移は、CO1000ppm中での出力電流Iとその初期値I0との比I/I0で示す。これらの試験は、乾燥雰囲気への耐久性及び結露雰囲気への耐久性の加速試験で、センサ数は5個である。なお試験後に、24時間20℃50%RHの雰囲気に放置すると、各ガスセンサの感度は初期値I0に復帰した。
【0050】
実施例3での結果を図12図14に、実施例4での結果を図15図17に、比較例での結果を図18図19に示す。実施例3,4では、70℃RH4%で10週間の間、CO感度の低下は僅かで、さらに50℃RH100%で10週間でもCO感度の低下は僅かであった。このことは活性炭フィルタ14が多量の水を保持しているため、高温の乾燥雰囲気でもガス感度を維持でき、また結露雰囲気でも、活性炭フィルタ14は目詰まり(フラッディング)しないことを示している。これに対し比較例では、70℃RH4%でも50℃RH10%でもCO感度が低下したが、50℃の結露雰囲気ではガス感度を維持した。なお粉末状活性炭をセルロースにより結着したもの、あるいは粉末状活性炭をPVAと酢酸ビニルのコポリマーにより結着したものでも、乾燥雰囲気への耐久性と結露雰囲気への耐久性は、実施例3と同様であった。
【0051】
非親水性の高分子バインダとして、ポリアクリル酸メチル、あるいは66ナイロンをPTFEの代わりに用いても、乾燥雰囲気への耐久性は比較例よりも改善しなかった。
【符号の説明】
【0052】
2 電気化学ガスセンサ
4 MEA
6 金属缶
8 拡散制御板
10 拡散制御孔
12 封孔体
14 フィルタ材
16,18 開口
20 ガスケット
22 プロトン導電体膜
23 検知極
24 対極
25,26 ガス拡散層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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