特許第6644449号(P6644449)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6644449遠隔管理システム、遠隔管理方法および管理タグ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6644449
(24)【登録日】2020年1月10日
(45)【発行日】2020年2月12日
(54)【発明の名称】遠隔管理システム、遠隔管理方法および管理タグ
(51)【国際特許分類】
   G01S 19/34 20100101AFI20200130BHJP
【FI】
   G01S19/34
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-46095(P2018-46095)
(22)【出願日】2018年3月14日
(65)【公開番号】特開2019-152638(P2019-152638A)
(43)【公開日】2019年9月12日
【審査請求日】2018年11月5日
(31)【優先権主張番号】特願2018-37026(P2018-37026)
(32)【優先日】2018年3月2日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】513083624
【氏名又は名称】M・S・K株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120640
【弁理士】
【氏名又は名称】森 幸一
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 なおと
【審査官】 東 治企
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−160820(JP,A)
【文献】 特開平11−248816(JP,A)
【文献】 特開平06−123767(JP,A)
【文献】 特開2004−177229(JP,A)
【文献】 特開2002−181927(JP,A)
【文献】 特開平03−073877(JP,A)
【文献】 特開平10−160821(JP,A)
【文献】 特開2001−059738(JP,A)
【文献】 特表平11−513787(JP,A)
【文献】 特開2001−337149(JP,A)
【文献】 特開2010−197073(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 5/00−5/14
G01S 19/00−19/55
G01C 21/00−21/36
G01C 23/00−25/00
A01K 1/00−45/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被管理対象物に取り付けられる、GPS受信機と、通信装置と、上記GPS受信機および上記通信装置の動作を制御し、上記GPS受信機で受信されるGPS信号より上記被管理対象物の位置データを取得し、この位置データを上記通信装置から外部に送信する処理装置と、上記GPS受信機、上記通信装置および上記処理装置に電力を供給する、電池からなる電源とを有し、上記電源のオン/オフにより上記処理装置をオン/オフし、上記処理装置からの制御信号により上記GPS受信機および上記通信装置のオン/オフを制御する管理タグを有し、
上記管理タグは、時刻t1 に上記電源をオンとし、次いで上記時刻t1 から5マイクロ秒以内の時刻t2 コールドスタートの状態で上記GPS受信機をオンとして計測を開始し、上記GPS信号より最初の位置データを取得した後であって上記時刻t2 から50秒以内の時刻t3 に上記GPS受信機をオフとし、上記時刻t3 上記通信装置をオンとして通信を開始し、上記位置データを上記通信装置から送信できた場合もできなかった場合も通信開始後1秒以内に通信を終了して上記時刻t3 から4秒以内の時刻t5 上記通信装置をオフとし、次いで上記時刻t5 から1秒以内の時刻t6 に上記電源をスリープ状態としてこのスリープ状態を上記時刻t6 から1分以上の時刻t7 まで継続し、上記時刻t1 から上記時刻t6 までの時間を1分以内とし、上記時刻t1 から上記時刻t7 までの動作を繰り返し行うように構成されている遠隔管理システム。
【請求項2】
上記被管理対象物は家畜である請求項1記載の遠隔管理システム。
【請求項3】
被管理対象物に、GPS受信機と、通信装置と、上記GPS受信機および上記通信装置の動作を制御し、上記GPS受信機で受信されるGPS信号より上記被管理対象物の位置データを取得し、この位置データを上記通信装置から外部に送信する処理装置と、上記GPS受信機、上記通信装置および上記処理装置に電力を供給する、電池からなる電源とを有し、上記電源のオン/オフにより上記処理装置をオン/オフし、上記処理装置からの制御信号により上記GPS受信機および上記通信装置のオン/オフを制御する管理タグを装着した状態で、時刻t1 に上記電源をオンとするステップと、
上記時刻t1 から5マイクロ秒以内の時刻t2 にコールドスタートの状態で上記GPS受信機をオンとして計測を開始し、上記GPS信号より最初の位置データを取得した後であって上記時刻t2 から50秒以内の時刻t3 に上記GPS受信機をオフとするステップと、
上記時刻t3 に上記通信装置をオンとして通信を開始し、上記位置データを上記通信装置から送信できた場合もできなかった場合も通信開始後1秒以内に通信を終了して上記時刻t3 から4秒以内の時刻t5 に上記通信装置をオフとするステップと、
上記時刻t5 から1秒以内の時刻t6 に上記電源をスリープ状態としてこのスリープ状態を上記時刻t6 から1分以上の時刻t7 まで継続するステップとを有し、
上記時刻t1 から上記時刻t6 までの時間を1分以内とし、上記時刻t1 から上記時刻t7 までの動作を繰り返し行う遠隔管理方法。
【請求項4】
被管理対象物に取り付けられる、GPS受信機と、通信装置と、上記GPS受信機および上記通信装置の動作を制御し、上記GPS受信機で受信されるGPS信号より上記被管理対象物の位置データを取得し、この位置データを上記通信装置から外部に送信する処理装置と、上記GPS受信機、上記通信装置および上記処理装置に電力を供給する、電池からなる電源とを有し、上記電源のオン/オフにより上記処理装置をオン/オフし、上記処理装置からの制御信号により上記GPS受信機および上記通信装置のオン/オフを制御する管理タグであって、
時刻t1 に上記電源をオンとし、次いで上記時刻t1 から5マイクロ秒以内の時刻t2 にコールドスタートの状態で上記GPS受信機をオンとして計測を開始し、上記GPS信号より最初の位置データを取得した後であって上記時刻t2 から50秒以内の時刻t3 に上記GPS受信機をオフとし、上記時刻t3 に上記通信装置をオンとして通信を開始し、上記位置データを上記通信装置から送信できた場合もできなかった場合も通信開始後1秒以内に通信を終了して上記時刻t3 から4秒以内の時刻t5 に上記通信装置をオフとし、次いで上記時刻t5 から1秒以内の時刻t6 に上記電源をスリープ状態としてこのスリープ状態を上記時刻t6 から1分以上の時刻t7 まで継続し、上記時刻t1 から上記時刻t6 までの時間を1分以内とし、上記時刻t1 から上記時刻t7 までの動作を繰り返し行うように構成されていることを特徴とする管理タグ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、遠隔管理システム、遠隔管理方法および管理タグに関し、例えば、牛等の家畜やその他の各種物品の位置、動き等を離れた位置から把握し管理するのに適用して好適なものである。
【背景技術】
【0002】
牛等の家畜を放牧地に放牧する場合、放牧された家畜から離れた位置からリアルタイムで家畜の位置を把握するシステムとして、放牧家畜遠隔管理システムが知られている(特許文献1参照。)。この放牧家畜遠隔管理システムでは、例えば、牛に首輪を取り付けて放牧地に放牧する。この首輪は、GPS衛星からの電波を受信し、現在位置等のデータを出力するGPS受信機、このGPS受信機からのデータから所望のデータを抽出し、この抽出したデータに予め設定されている牛の識別コードを付加した移動位置信号(牛位置データ)にして送出する位置データ生成部、この位置データ生成部からの牛位置データを送信する無線機およびこれらに電力を供給する電源部を備えている。電源部は、GPS受信機に対しては、10分から20分毎に一度電力を供給する。従って、首輪の無線機から、10分から20分毎に牛位置データが送信される。監視センター側では、GPS衛星からの電波に基づいて自らの位置を求めるとともに牛位置データを受信し、監視センターの画像処理装置が牛位置データの受信時刻に一致する自らの位置との差に基づいて、画面上における放牧地の地図の各画像の位置を移動させて、牛位置データに基づく点画像を地図上に表示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−160820号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された放牧家畜遠隔管理システムでは、GPS受信機に対しては10分から20分毎に一度電力を供給するようにしているためGPS受信機の消費電力の低減を図ることができるものの、位置データ生成部および無線機には本体の電源がオンになっている間常時、電力を供給しているため、電源部の電池はかなり容量の大きいものが必要と考えられ、必然的に電源部の重量はかなり大きくならざるを得ず、従って首輪の重量はかなり大きくなると考えられる。このため、牛に大きな負担を掛けることになり、無用のストレスを与えるおそれが高い。しかも、このような大容量の電池を用いたとしても、GPS受信機、位置データ生成部および無線機全体の電力消費量が大きいため、電池を頻繁に交換しなければならず、交換の手間が掛かると考えられる。
【0005】
そこで、この発明が解決しようとする課題は、放牧地に放牧される牛等の家畜、より一般的には各種の被管理対象物の位置や動き等を遠隔でニアタイムで正確に把握し管理することができ、しかも被管理対象物に装着される管理タグの電力消費量の大幅な低減を図ることができ、それによって管理タグに取り付けられる電池の容量の低減による管理タグの軽量化および電池の交換頻度の大幅な減少を図ることができ、被管理対象物が牛等の家畜のような生物である場合、それに対して無用のストレスを与えるおそれがない遠隔管理システムおよび遠隔管理方法ならびにそれらに用いられる管理タグを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、この発明は、
被管理対象物に取り付けられる、GPS受信機と、通信装置と、上記GPS受信機および上記通信装置の動作を制御し、上記GPS受信機で受信されるGPS信号より上記被管理対象物の位置データを取得し、この位置データを上記通信装置から外部に送信する処理装置と、上記GPS受信機、上記通信装置および上記処理装置に電力を供給する電源とを有する管理タグを有し、
上記管理タグは、時刻t1 に上記電源をオンとし、次いで上記GPS受信機をオンとして計測を開始し、上記GPS信号より最初の位置データを取得した後の時刻t3 に上記GPS受信機をオフとし、次いで上記時刻t3 または上記時刻t3 の前後の時刻t4 に上記通信装置をオンとして上記位置データを上記通信装置から送信し、次いで時刻t5 に上記通信装置をオフとし、次いで時刻t6 に上記電源をスリープ状態としてこのスリープ状態を時刻t7 まで継続し、上記時刻t1 から上記時刻t6 までの時間を10分以内とし、上記時刻t1 から上記時刻t7 までの動作を繰り返し行うように構成されている遠隔管理システムである。
【0007】
この遠隔管理システムにおいては、GPS受信機は、コールドスタートの状態で使用される。この遠隔管理システムにおいては、管理タグの電力消費量を抑える観点より、管理タグは、好適には、時刻t1 に上記電源をオンとし、上記時刻t1 から10ミリ秒以内の時刻t2 に上記GPS受信機をオンとして計測を開始し、上記GPS信号より最初の位置データを取得した直後の時刻t3 に上記GPS受信機をオフとし、上記時刻t3 または上記時刻t3 の前後の時刻t4 に上記通信装置をオンとして上記位置データを上記通信装置から送信し、上記時刻t3 または上記時刻t4 から5秒以内の時刻t5 に上記通信装置をオフとし、上記時刻t5 から1秒以内の時刻t6 に上記電源をスリープ状態としてこのスリープ状態を時刻t7 まで1秒以上継続し、上記時刻t1 から上記時刻t6 までの時間を5分以内とし、上記時刻t1 から上記時刻t7 までの動作を繰り返し行うように構成される。管理タグの電力消費量をより一層抑える観点より、時刻t1 から時刻t2 までの時間、時刻t2 から時刻t3 までの時間、時刻t3 または時刻t4 から時刻t5 までの時間はできるだけ短くするのが望ましい。好適には、時刻t1 から時刻t2 までの時間は10マイクロ秒以内、より好適には5マイクロ秒以内、時刻t2 から時刻t3 までの時間は5分以内、好適には3分以内、より好適には1分以内で可能な限り短くし、時刻t3 または時刻t4 から時刻t5 までの時間は4秒以内であり、時刻t1 から時刻t6 までの時間は1分以内である。
【0008】
電源は、典型的には、管理タグに取り付けられた電池であり、使用する電池は特に限定されず、必要に応じて選ばれる。電源は、無線電力通信により外部から送信される電力を利用するものであってもよい。
【0009】
この遠隔管理システムの一つの例では、管理タグの通信装置から送信される位置データを受信する中継機およびこの中継機から転送される位置データを受信し、被管理対象物の管理を行う管理センターをさらに有する。被管理対象物の位置データは複数の中継機を経由して管理センターに受信されることもあるし、中継機から更に、インターネット等の電気通信回線(無線または有線)を経由して管理センターに受信されることもある。あるいは、被管理対象物10の位置データは、通信装置24から直接、管理センター50の画像表示装置に送信されるようにしてもよい。この遠隔管理システムの他の例では、中継機を設けず、管理タグから直接、位置データを受信し、被管理対象物の管理を行う管理センターをさらに有する。管理センターには、典型的には、画像表示装置が設けられ、この画像表示装置の画面に管理エリアの画像および管理エリア内の被管理対象物の位置が表示される。中継機は、管理エリア全体で被管理対象物の遠隔管理が可能となるように、管理エリア内に一つまたは複数設置される。
【0010】
被管理対象物は、管理エリア内で何らかの動きがあるものであれば、基本的にはどのようなものであってもよく、生物であっても非生物であってもよいし、生物と非生物とが混在してもよい。生物である被管理対象物は、例えば、家畜、家畜以外の動物、人(ヒト)等である。動物は、具体的には、例えば、牛(乳牛、肉牛を含む)、水牛、ジャワ牛、バンテーン、ヤク、ヒツジ、ヤギ、アンテロープ、シカ、ガゼル、キリン、ラクダ、アルパカ、リャマ、グアナコ、ビクーニャ、マメジカ、ネズミジカ等の脊椎動物偶蹄類(反芻動物)やウマ、ロバ等の脊椎動物奇蹄類等であるが、これに限定されるものではない。非生物である被管理対象物は、各種の物品(商品、製品等)であり、これらが段ボール等の包装箱に収納されているものも含む。被管理対象物への管理タグの取り付けは、被管理対象物の種類や状況等に応じて行うことができる。例えば、被管理対象物が家畜である場合、管理タグは、家畜の首にはめられる首輪等に取り付けられたり、耳、胴体、足首等に取り付けられる。また、商品や製品等では、管理タグはこれらに直接取り付けられることもあるし、包装箱に取り付けられることもある。
【0011】
また、この発明は、
被管理対象物に、GPS受信機と、通信装置と、上記GPS受信機および上記通信装置の動作を制御し、上記GPS受信機で受信されるGPS信号より上記被管理対象物の位置データを取得し、この位置データを上記通信装置から外部に送信する処理装置と、上記GPS受信機、上記通信装置および上記処理装置に電力を供給する電源とを有する管理タグを装着した状態で、時刻t1 に上記電源をオンとするステップと、
上記GPS受信機をオンとして計測を開始し、上記GPS信号より最初の位置データを取得した後の時刻t3 に上記GPS受信機をオフとするステップと、
上記時刻t3 または上記時刻t3 の前後の時刻t4 に上記通信装置をオンとして上記位置データを上記通信装置から送信し、時刻t5 に上記通信装置をオフとするステップと、
時刻t6 に上記電源をスリープ状態としてこのスリープ状態を時刻t7 まで継続するステップとを有し、
上記時刻t1 から上記時刻t6 までの時間を10分以内とし、上記時刻t1 から上記時刻t7 までの動作を繰り返し行う遠隔管理方法である。
【0012】
この遠隔管理方法においては、管理タグの電力消費量を抑える観点より、管理タグは、好適には、上記時刻t1 から10ミリ秒以内の時刻t2 に上記GPS受信機をオンとして計測を開始し、上記GPS信号より最初の位置データを取得した直後の時刻t3 に上記GPS受信機をオフとし、上記時刻t3 または上記時刻t3 の前後の時刻t4 に上記通信装置をオンとして上記位置データを上記通信装置から送信し、上記時刻t3 または上記時刻t4 から5秒以内の時刻t5 に上記通信装置をオフとし、上記時刻t5 から1秒以内の時刻t6 に上記電源をスリープ状態としてこのスリープ状態を時刻t7 まで1秒以上継続し、上記時刻t1 から上記時刻t6 までの時間を5分以内とし、上記時刻t1 から上記時刻t7 までの動作を繰り返し行う。この遠隔管理方法の発明においては、上記以外のことについては、その性質に反しない限り、上記の遠隔管理システムの発明に関連して説明したことが成立する。
【0013】
また、この発明は、
被管理対象物に取り付けられる、GPS受信機と、通信装置と、上記GPS受信機および上記通信装置の動作を制御し、上記GPS受信機で受信されるGPS信号より上記被管理対象物の位置データを取得し、この位置データを上記通信装置から外部に送信する処理装置と、上記GPS受信機、上記通信装置および上記処理装置に電力を供給する電源とを有する管理タグであって、
時刻t1 に上記電源をオンとし、次いで上記GPS受信機をオンとして計測を開始し、上記GPS信号より最初の位置データを取得した後の時刻t3 に上記GPS受信機をオフとし、次いで上記時刻t3 または上記時刻t3 の前後の時刻t4 に上記通信装置をオンとして上記位置データを上記通信装置から送信し、次いで時刻t5 に上記通信装置をオフとし、次いで時刻t6 に上記電源をスリープ状態としてこのスリープ状態を時刻t7 まで継続し、上記時刻t1 から上記時刻t6 までの時間を10分以内とし、上記時刻t1 から上記時刻t7 までの動作を繰り返し行うように構成されていることを特徴とするものである。
【0014】
この管理タグの発明においては、上記以外のことについては、その性質に反しない限り、上記の遠隔管理システムの発明に関連して説明したことが成立する。
【発明の効果】
【0015】
この発明によれば、少なくとも10分未満、例えば5分未満の時間間隔でもGPS信号を取得して被管理対象物の位置データを取得することができるため、被管理対象物の位置や動き等を遠隔でニアタイムで正確に把握し管理することができ、しかもGPS受信機、通信装置等のオン時間が極めて短くこれらの電力消費量が少ないため、被管理対象物に装着される管理タグの電力消費量の大幅な低減を図ることができ、それによって管理タグに取り付けられる電池の容量の低減による管理タグの軽量化および電池の交換頻度の大幅な減少を図ることができ、被管理対象物が牛等の家畜のような生物である場合、それに対して無用のストレスを与えるおそれがない。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】この発明の一実施の形態による遠隔管理システムの全体構成を示す略線図である。
図2】この発明の一実施の形態による遠隔管理システムにおいて用いられる管理タグを示す略線図である。
図3】この発明の一実施の形態による遠隔管理システムにおける管理タグのGPS受信機、処理装置および通信装置への電力の供給方法を示す略線図である。
図4】この発明の一実施の形態による遠隔管理システムにより放牧地に放牧された多数の牛の位置データを取得する例を示す略線図である。
図5】この発明の一実施の形態による遠隔管理システムにより放牧地に放牧された多数の牛のうちの1頭の移動軌跡を取得する例を示す略線図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、発明を実施するための形態(以下、単に「実施の形態」と言う。)について説明する。
【0018】
〈一実施の形態〉
[遠隔管理システム]
図1は一実施の形態による遠隔管理システムの全体構成を示す。
【0019】
図1に示すように、この遠隔管理システムにおいては、被管理対象物10に管理タグ20が取り付けられる。被管理対象物10は一つまたは複数あり、複数の場合はそれぞれの被管理対象物10に一つの管理タグ20が取り付けられる。各管理タグ20には識別コードが付与されており、この識別コードにより管理タグ20が取り付けられた被管理対象物10の識別が可能になっている。被管理対象物10は、牛等の家畜に代表される生物や各種の物品等である。被管理対象物10に管理タグ20を取り付ける位置や取り付け方は被管理対象物10の種類、性状等に応じて適宜選択することができる。例えば、被管理対象物10が牛等の家畜である場合、管理タグ20は好適には家畜の首にはめられる首輪に取り付けられ、首輪に別体として取り付けられる場合もあるし首輪に一体に設けられる場合もある。後に詳述するが、管理タグ20はGPS受信機、処理装置(プロセッサ)および通信装置を有し、全球測位衛星システムを構成する複数のGPS衛星30から送られるGPS信号をGPS受信機により受信し、処理装置においてこのGPS信号より被管理対象物10の位置データを取得し、こうして取得した位置データを通信装置により外部に送信する。こうして管理タグ20の通信装置から送信された位置データは中継機40により受信され、内蔵のメモリ(図示せず)に記録される。中継機40は、管理エリア全体をカバーするように一つまたは複数設置する。そして、中継機40のメモリに記録された位置データは、無線または有線により管理センター50に送信され、管理センター50に備えられた管理用の画像表示装置により受信される。そして、この画像表示装置の画面に管理エリアの画像および管理エリア内の被管理対象物10の位置が表示されるようになっている。
【0020】
図2は管理タグ20の詳細を示す。図2に示すように、この管理タグ20は、基板21上にGPS受信機22、処理装置23、通信装置24、電源を構成する電池25、電源レギュレータ26および電源レギュレータ27を有する。処理装置23のGND端子、電源レギュレータ26のGND端子および電源レギュレータ27のGND端子は電池25の負極と接続され、処理装置23のVCC端子、電源レギュレータ26のVCC端子および電源レギュレータ27のVCC端子はスイッチ28を介して電池25の正極と接続されている。スイッチ28が閉じた状態では、処理装置23のGND端子およびVCC端子間、電源レギュレータ26のGND端子およびVCC端子間、電源レギュレータ27のGND端子およびVCC端子間に電池25の電圧がそれぞれ印加される。GPS受信機22のGND端子およびVCC端子間には、電源レギュレータ26により昇圧もしくは降圧および安定化された電圧が印加されるようになっている。また、通信装置23のGND端子およびVCC端子間には、電源レギュレータ27により昇圧もしくは降圧および安定化された電圧が印加されるようになっている。電源レギュレータ26および電源レギュレータ27への電力の供給、従ってGPS受信機22および通信装置24への電力の供給は、処理装置23のCTR端子から送出される制御信号により制御されるようになっている。また、電池25に接続されたスイッチ28のオン/オフは、ボタン等によりマニュアルで行うことができる。なお、スイッチ28を省略し、電池25を取り付けると同時に電源が入るようにしてもよい。処理装置23のCTR端子から送出される制御信号により制御されるようになっている。この制御方法の詳細は後述する。GPS受信機22のデータ入出力端子RDおよびSDはそれぞれ処理装置23のデータ入出力端子RDおよびSDと接続されている。通信装置24のデータ入出力端子RDおよびSDはそれぞれ処理装置23のデータ入出力端子RDおよびSDと接続されている。電池25は、一つであっても複数であってもよく、一次電池であっても二次電池であってもよく、管理タグ20の用途等によって必要に応じて選ばれる。管理タグ20の軽量性を重視する用途では、電池25として例えば単三電池3本または4本が用いられ、管理タグ20が低消費電力であることによりこの場合でも長期間に亘って管理タグ20を使用し続けることができる。
【0021】
[遠隔管理システムの動作方法]
遠隔管理を行う一つまたは複数の被管理対象物10に管理タグ20を装着する。例えば、被管理対象物10が牛等の家畜である場合には、その首にはめる首輪等に管理タグ20を取り付ける。管理タグ20の装着方法は特に限定されないが、例えば、家畜の首にはめた時の首輪の上部あるいは下部にバンド等により管理タグ20を固定する。被管理対象物10が物品である場合には、その物品に直接、あるいはこの物品を梱包した包装箱に管理タグ20を取り付ける。あるいは、物品を梱包した包装箱内に管理タグ20を入れるだけでもよい。
【0022】
スイッチ28を閉じて管理タグ20(本体)の電源をオンとする。それによって、処理装置23がオンとなり、遠隔管理システムの動作が開始する。具体的には、処理装置23のCTR端子から送出される制御信号により、GPS受信機22および通信装置24の電源のオン/オフを制御する。
【0023】
GPS受信機22、処理装置23および通信装置24の電源のオン/オフのタイミングを図3に示す。図3に示すように、時刻t1 に電源をオンとする。時刻t1 から10ミリ秒以内、好適には例えば5ミリ秒以内の時刻t2 にGPS受信機22をオンとして計測を開始する。計測を開始するとGPS信号が取得される。取得されたGPS信号は処理装置23に送られ、被管理対象物10の位置データが求められる。GPS信号より最初の位置データを取得した直後の時刻t3 にGPS受信機22をオフとする。時刻t3 に通信装置24をオンとして処理装置23により取得された位置データを通信装置24から送信する。時刻t3 から5秒以内の時刻t5 に通信装置24をオフとする。時刻t5 から10ミリ秒以内、好適には例えば5ミリ秒以内の時刻t6 にスリープ状態としてこのスリープ状態を時刻t7 まで1秒以上、好適には1分以上継続する。そして、時刻t1 から時刻t6 までの時間を10分以内、好適には5分以内、より好適には1分以内とし、時刻t1 から時刻t7 までの動作を繰り返し行う。これらの動作は、処理装置23に組み込まれた所定のプログラムに従って実行される。
【0024】
上述のようにして通信装置24から送信された被管理対象物10の位置データは中継機40に送信され、この中継機40から管理センター50の画像表示装置に送信される。被管理対象物10の位置データは複数の中継機40を経由することもあるし、中継機40から更に、インターネット等の電気通信回線(無線または有線)を経由することもある。あるいは、被管理対象物10の位置データは、通信装置24から直接、管理センター50の画像表示装置に送信されるようにしてもよい。こうして管理センター50の画像表示装置に受信された位置データは、この画像表示装置の画面に表示された管理エリアの画像上に表示される。必要に応じて、特定の被管理対象物10に注目し、管理エリア内におけるこの被管理対象物10の移動軌跡を調べることができる。好適には、地図上に被管理対象物10の位置を示す。
【0025】
図4は、牧場において、100頭の牛の首輪に上記の管理タグを取り付けて放牧を行う場合に、この遠隔管理システムにより牛の位置データ(経度、緯度)を取得する例を示す。図4中、+印が個々の牛の位置を示す。図5は、100頭の牛から選んだ1頭の牛の移動軌跡を1日のある時間内に追跡する場合の例を示す。好適には、地図上に牛の位置を示す。
【0026】
〈実施例〉
基板21としての76mm×50mm程度の大きさの長方形のプリント基板上に、GPS受信機22として市販のGPS受信機(GPS−125A−077相当品)、処理装置23としてオープンソースハードウェアのArduino Pro Mini 3.3V(消費電流約25mA)、通信装置24として市販の工事設計認証取得済み920MHz帯LoRaモジュールES920LR(消費電流約40mA)、電源レギュレータ26、27として市販の出力電圧3.3VのレギュレータNJM2884U1−33、電池25として市販の公称電圧1.5Vの単三電池3本を直列に接続した出力電圧4.5Vのものを搭載したものを管理タグ20として用いた。この出力電圧4.5VをNJM2884U1−33により3.3Vに降圧した。電池容量は約2000mAhと考えられる。この管理タグの重量は、プラスチック製の保護カバーを含めて約110gであり、牛の首輪に取り付けても重量増加は少ないため、首輪を牛の首にはめても牛に負担は生じないと考えられる。図3に示す電源タイムチャートにおいて、時刻t1 でコールドスタートの状態で電源をオンとした。t1 からt2 までの時間は数マイクロ秒、t2 からt3 までの時間は1〜50秒、時刻t3 で計測を終了し、通信装置23をオンとした。時刻t3 から1ミリ秒後に通信を開始し、送信できた場合もできなかった場合も通信開始後1秒以内に通信を終了し、時刻t3 から数ミリ秒後の時刻t5 に通信装置24をオフとした。その後、時刻t5 から1マイクロ秒後の時刻t6 から管理タグはスリープ状態となる。時刻t7 で電源を再度オンとした。加速試験を行うために、t1 からt7 までの時間を約30〜90秒(平均1分程度)とし、t1 からt7 までの処理を繰り返し行った。
【0027】
この遠隔管理システムにより実際に位置データを取得した。具体的には、本発明者の自宅の3階のベランダに中継機を設置し、上記の管理タグ20を体に装着した本発明者が自宅から近くの複数施設(建屋)を有する広い公園内を自由に歩きまわり、時には自宅から1km以上離れ、再び自宅に戻るまで、位置データを取得した。その結果、本発明者の歩行に伴う位置データの変化を逐次得ることができ、移動軌跡を正確に求めることができた。
【0028】
この遠隔管理システムの牧場主や酪農家等のユーザの間では数時間に1回程度の頻度で位置データを取得することができれば十分に実用的であると考えられていることから、上記の加速度試験の結果より、電池が切れて管理タグ20を使用することができなくなるまでの期間を1時間に1回、位置データを取得・送信したとして計算すると約200日となる。管理タグ20を装着して管理を行い始めてから、途中で電池交換を行うことなく、単三電池3本で約200日間もの長期間にわたって管理タグ20を使用することができることは、従来の管理タグでは精々、1ヶ月以内の期間しか使用することができないことを考えると、極めて驚くべきことである。
【0029】
この一実施の形態による遠隔管理システムによれば、次のような種々の利点を得ることができる。すなわち、遠隔管理を行う被管理対象物10に管理タグ20を装着するだけで管理エリア内の位置データを実用的な範囲でニアタイムで取得することができる。このため、被管理対象物10の位置や動き等を十分に実用的な範囲で把握することができ、被管理対象物10を良好に管理することができる。また、管理タグ20の消費電力の大幅な低減を図ることができるため、電池25として容量が小さいものを用いても長期間に亘って管理タグ20を使用し続けることができ、電池25の交換頻度の大幅な低減を図ることができる。また、電池25として容量が小さいものを用いることができるので、電池25の軽量化を図ることができ、ひいては管理タグ20の軽量化を図ることができる。このため、例えば牛等の家畜の首輪に管理タグ20を取り付けても、首輪の重量増加が少ないため、家畜に生じる負担は殆どなく、無用のストレスを与えるおそれがない。また、被管理対象物10がコンテナ等であれば、例えば1日1回、位置データを取得・送信するだけでも十分に実用的なケースもあり、より長期間、電池25の交換の手間を省くことができるため、ランニングコスト、取り分け人件費の削減に寄与することが可能となる。
【0030】
以上、この発明の一実施の形態および実施例について具体的に説明したが、この発明は、上述の実施の形態および実施例に限定されるものではなく、この発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。
【0031】
例えば、上述の一実施の形態および実施例において挙げた数値、構成、構造、形状等はあくまでも例に過ぎず、必要に応じてこれらと異なる数値、構成、構造、形状等を用いてもよい。
【0032】
また、上述の一実施の形態においては、スイッチ28により電源のオン/オフを行うことができるように構成されているが、スイッチ28を省略し、電池25と処理装置23、通信装置24および電源レギュレータ26、27とが常時接続されるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0033】
10…被管理対象物、20…管理タグ、21…基板、22…GPS受信機、23…処理装置、24…通信装置、25…電池、26、27…電源レギュレータ、28…スイッチ、30…GPS衛星、40…中継機、50…管理センター
図1
図2
図3
図4
図5