(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態を詳述する。ただし、これは単なる例示に過ぎず、これによって本発明が制限されることはなく、本発明は、後述する請求項の範囲によって定義されるだけである。
【0030】
この明細書において、特に断りのない限り、「置換」とは、本発明の官能基のうちの1以上の水素原子がハロゲン原子(F、Br、ClまたはI)、ヒドロキシ基、ニトロ基、シアノ基、アミノ基(NH
2、NH(R
100)またはN(R
101)(R
102)であり、ここで、R
100、R
101およびR
102は、それぞれ独立して、C1〜C10のアルキル基である)、アミジノ基、ヒドラジン基、ヒドラゾン基、カルボキシル基、エステル基、ケトン基、置換もしくは非置換のアルキル基、置換もしくは非置換の脂環族有機基、置換もしくは非置換のアリール基、置換もしくは非置換のアルケニル基、置換もしくは非置換のアルキニル基、置換もしくは非置換のヘテロアリール基、および置換もしくは非置換のヘテロ環基からなる群より選択される1種以上の置換基で置換されたものを意味し、前記置換基は、互いに連結されて環を形成することができる。
【0031】
この明細書において、特に断りのない限り、「アルキル基」とは、C1〜C30のアルキル基を意味し、好ましくは、C1〜C15のアルキル基を意味し、「シクロアルキル基」とは、C3〜C30のシクロアルキル基を意味し、好ましくは、C3〜C18のシクロアルキル基を意味し、「アルコキシ基」とは、C1〜C30のアルコキシ基を意味し、好ましくは、C1〜C18のアルコキシ基を意味し、「エステル基」とは、C2〜C30のエステル基を意味し、好ましくは、C2〜C18のエステル基を意味し、「ケトン基」とは、C2〜C30のケトン基を意味し、好ましくは、C2〜C18のケトン基を意味し、「アリール基」とは、C6〜C30のアリール基を意味し、好ましくは、C6〜C18のアリール基を意味し、「アルケニル基」とは、C2〜C30のアルケニル基を意味し、好ましくは、C2〜C18のアルケニル基を意味し、「アルキニル基」とは、C2〜C30のアルキニル基、好ましくはC2〜C18のアルキニル基を意味し、「アルキレン基」とは、C1〜C30のアルキレン基を意味し、好ましくは、C1〜C18のアルキレン基を意味し、「アリーレン基」とは、C6〜C30のアリーレン基を意味し、好ましくは、C6〜C16のアリーレン基を意味する。
【0032】
また、この明細書において、特に断りのない限り、「脂肪族有機基」とは、C1〜C30のアルキル基、C2〜C30のアルケニル基、C2〜C30のアルキニル基、C1〜C30のアルキレン基、C2〜C30のアルケニレン基、またはC2〜C30のアルキニレン基を意味し、好ましくは、C1〜C15のアルキル基、C2〜C15のアルケニル基、C2〜C15のアルキニル基、C1〜C15のアルキレン基、C2〜C15のアルケニレン基、またはC2〜C15のアルキニレン基を意味し、「脂環族有機基」とは、C3〜C30のシクロアルキル基、C3〜C30のシクロアルケニル基、C3〜C30のシクロアルキニル基、C3〜C30のシクロアルキレン基、C3〜C30のシクロアルケニレン基、またはC3〜C30のシクロアルキニレン基を意味し、好ましくは、C3〜C15のシクロアルキル基、C3〜C15のシクロアルケニル基、C3〜C15のシクロアルキニル基、C3〜C15のシクロアルキレン基、C3〜C15のシクロアルケニレン基、またはC3〜C15のシクロアルキニレン基を意味し、「芳香族有機基」とは、一つの芳香族環、2以上の芳香族環がともに縮合環をなすもの、または2以上の芳香族環が単結合、または、フルオレニレン基、−O−、−S−、−C(=O)−、−CH(OH)−、−S(=O)
2−、−Si(CH
3)
2−、−(CH
2)
p−(ここで、pの範囲は、1≦p≦10である)、−(CF
2)
q−(ここで、qの範囲は、1≦q≦10である)、−C(CH
3)
2−、−C(CF
3)
2−、および−C(=O)NH−から選ばれる官能基、特に、−S(=O)
2−で連結されたものを含む、C6〜C30の基、例えば、C6〜C30のアリール基、またはC6〜C30のアリーレン基を意味し、具体的には、C6〜C16のアリール基、またはフェニレン基などのC6〜C16のアリーレン基を意味し、「ヘテロ環基」とは、O、S、N、P、Siおよびこれらの組み合わせよりなる群から選ばれるヘテロ原子を一つの環内に1個〜3個含有するC2〜C30のヘテロシクロアルキル基、C2〜C30のヘテロシクロアルキレン基、C2〜C30のヘテロシクロアルケニル基、C2〜C30のヘテロシクロアルケニレン基、C2〜C30のヘテロシクロアルキニル基、C2〜C30の(ヘテロシクロアルキニレン基、C2〜C30のヘテロアリール基、またはC2〜C30のヘテロアリーレン基を意味し、好ましくは、O、S、N、P、およびSiからなる群より選択される少なくとも1種のヘテロ原子を一つの環内に1個〜3個含有するC2〜C15のヘテロシクロアルキル基、C2〜C15のヘテロシクロアルキレン基、C2〜C15のヘテロシクロアルケニル基、C2〜C15のヘテロシクロアルケニレン基、C2〜C15のヘテロシクロアルキニル基、C2〜C15のヘテロシクロアルキニレン基、C2〜C15のヘテロアリール基、またはC2〜C15のヘテロアリーレン基を意味する。
【0033】
この明細書において、特に断りのない限り、「組み合わせ」とは、混合または共重合を意味する。この時、「共重合」とはランダム共重合、ブロック共重合、またはグラフト共重合を意味する。
【0034】
さらに、この明細書において、化学式中の「*」は、他の原子または化学構造と連結される部分を意味する。
【0035】
一般に、ポリイミドフィルムは、ポリイミド樹脂をフィルム化したものであって、ポリイミド樹脂は、芳香族二無水物および芳香族ジアミン、または芳香族ジイソシアネートを溶液重合してポリアミック酸誘導体を製造した後、高温で閉環脱水させてイミド化して製造される高耐熱樹脂を称する。しかし、このようなポリイミド樹脂は、高い芳香族環密度によって茶色または黄色に着色されていて可視光線領域で透過度が低く、黄色系の色を示して光透過率が低くなり、大きい複屈折率を有するようになり、光学部材として使用するには困難な点がある。したがって、低い熱膨張係数、高い耐熱性、低い光学異方性、即ち、低い厚さ方向の位相差(R
th)、および高い光透過性を有するポリイミドフィルムが依然として要求されている。
【0036】
本発明の一実施形態において、下記化学式1Aで示されるテトラカルボン酸二無水物および下記化学式1Bで示されるテトラカルボン酸二無水物の少なくとも一方、ならびに下記化学式2で示されるテトラカルボン酸二無水物を含むテトラカルボン酸二無水物と、ジアミンと、を含むポリイミド製造用組成物を提供する。
【0038】
上記化学式1A、1B、および化学式2において、
R
10は、それぞれ独立して、単結合、置換もしくは非置換のC1〜C30の脂肪族有機基、置換もしくは非置換のC3〜C30の脂環族有機基、置換もしくは非置換のC6〜C30の芳香族有機基、または置換もしくは非置換のC2〜C30のヘテロ環基であり、
R
12およびR
13は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基(−OR
208、ここでR
208はC1〜C10の脂肪族有機基である)、シリル基(−SiR
209R
210R
211、ここで、R
209、R
210およびR
211は、それぞれ独立して、水素原子またはC1〜C10の脂肪族有機基である)、置換もしくは非置換のC1〜C10の脂肪族有機基、または置換もしくは非置換のC6〜C20の芳香族有機基であり、
L1およびL2は、それぞれ独立して、単結合またはC1〜C5のアルキレン基であり、
n7およびn8は、それぞれ独立して、0〜3の整数である。
【0039】
本発明の一実施形態によれば、前記化学式1A中のR
10は、置換もしくは非置換のC1〜C15のアルキレン基、置換もしくは非置換のC1〜C15のフルオロアルキレン基、置換もしくは非置換のC1〜C15のヘテロアルキレン基、置換もしくは非置換のC3〜C15のシクロアルキレン基、置換もしくは非置換のC3〜C15のヘテロシクロアルキレン基、置換もしくは非置換のC6〜C15のアリーレン基、または置換もしくは非置換のC2〜C15のヘテロアリーレン基であることが好ましい。
【0040】
また他の実施形態では、前記化学式1A中のR
10は、置換もしくは非置換のC1〜C15のフルオロアルキレン基であることが好ましい。
【0041】
前記化学式1Aで示される化合物は、好ましくは、下記化学式4または下記化学式5で示される化合物であり、前記化学式2で示される化合物は、好ましくは、下記化学式6または下記化学式7で示される化合物である。
【0043】
上記化学式4〜化学式7において、
R
12およびR
13は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基(−OR
208、ここで、R
208は、C1〜C10の脂肪族有機基である)、シリル基(−SiR
209R
210R
211、ここで、R
209、R
210およびR
211は、それぞれ独立して、水素原子またはC1〜C10の脂肪族有機基である)、置換もしくは非置換のC1〜C10の脂肪族有機基、または置換もしくは非置換のC6〜C20の芳香族有機基であり、
n7およびn8は、それぞれ独立して、0〜3の整数である。
【0044】
上記実施形態による組成物は、前記化学式1Aおよび前記化学式1Bで示したような平面(planar)構造の二無水物と、前記化学式2で示したような傾いた2面角(dihedral tilted)構造の二無水物を共に含む。驚いたことに、このような組成物から製造されるポリイミド重合体は鎖間配向が難しいということを発見した。これはポリイミド重合体鎖間の電荷移動錯体(CTC:Charge Transfer Complex)の形成を難しくし、これによって後述の実施例から分かるように、黄色度指数(YI)が低く、より透明なポリイミドを製造することができると考えられる。また、前記CTC形成が難しくなることによって、光学異方性構造(anisotropic morphology)を形成し、その結果、より高い光透過性およびより低い厚さ方向の位相差(R
th)を有する光学フィルムを形成することができると考えられる。
【0045】
したがって、前記化学式1Aで示されるテトラカルボン酸二無水物は、前記化学式1Aで示したように、その分子構造が平面(planar)構造を形成するものであればどんなものでも使用できる。例えば、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(3,3’,4,4’−biphenyl tetracarboxylic dianhydride、BPDA)、2,3,5,6−tetracarboxylic dianhydride)、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物(3,3’,4,4’−diphenylsulfone tetracarboxylic dianhydride、DSDA)、4,4’−オキシジフタル酸二無水物(4,4’−oxydiphthalic anhydride、ODPA)、および4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物(4,4’−(hexafluoroisopropylidene)diphthalic anhydride、6FDA)からなる群から選択される少なくとも1種が好ましく使用することができる。
【0046】
前記化学式2で示されるテトラカルボン酸二無水物は、前記化学式2で示したようにその分子構造が傾いた2面角(dihedral tilted)構造を示すものであればどんなものでも使用できる。例えば、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(2,3,3’,4’−biphenyltetracarboxylic dianhydride、a−BPDA)、2,3,3’,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物(2,3,3’,4’、−diphenylsulfone tetracarboxylic dianhydride)、または3,4’−オキシジフタル酸二無水物(3,4’−oxydiphthalic anhydride)からなる群より選択される少なくとも1種を好ましく使用することができる。
【0047】
一実施形態において、前記化学式1Aで示されるテトラカルボン酸二無水物は、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(3,3’,4,4’−biphenyl tetracarboxylic dianhydride、BPDA)であることがより好ましく、前記化学式2で示されるテトラカルボン酸二無水物は、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(2,3,3’,4’−biphenyltetracarboxylic dianhydride、a−BPDA)であることがより好ましい。
【0048】
ここで、前記化学式1Aまたは前記化学式2で示されるテトラカルボン酸二無水物は、テトラカルボン酸二無水物分子を構成する二つのジカルボン酸無水物の間の2面角(dihedral angle)の絶対値が約15°未満、例えば約10°未満、例えば約5°未満、例えば約1°未満である場合、平面構造(planar structure)を有する。
【0049】
ここで、前記化学式1Aまたは化学式2で示すようなテトラカルボン酸二無水物は、前記テトラカルボン酸二無水物分子を構成する二つのジカルボン酸無水物の間の2面角(dihedral angle)の絶対値が約15°以上である場合、傾いた構造(tilted structure)または折り畳み構造(folded structure)を有する。
【0050】
前記組成物中、前記化学式1Aおよび1Bで示されるテトラカルボン酸二無水物と前記化学式2で示されるテトラカルボン酸二無水物との含有量の比は1:99〜99:1(モル比)であることが好ましく、10:90〜90:10(モル比)であることがより好ましく、20:80〜80:20(モル比)であることがさらに好ましい。
【0051】
一実施形態において、前記化学式2で示されるテトラカルボン酸二無水物は、前記化学式1Aおよび1Bで示されるテトラカルボン酸二無水物と前記化学式2で示されるテトラカルボン酸二無水物との総モル数を基準に10モル%以上53モル%未満であることが好ましく、25モル%以上52モル%以下であることがより好ましい。
【0052】
前記化学式2で示されるテトラカルボン酸二無水物が、前記の範囲で含まれる場合、それから製造されるポリイミドを含む成形品は、高い光透過度、低い黄色度指数(YI)、および低い厚さ方向の位相差(R
th)のような優れた光学的特性を示し、同時に高いガラス転移温度および高い質量減少温度のような優れた熱的特性を示す。
【0053】
一実施形態において、前記化学式1A中のR
10のオルト(ortho)の位置にあるベンゼン環上の任意の置換基は、分子の平面性に顕著に否定的な影響を与えないように適宜選択することができる。一般に、水素原子またはフッ素原子のような小さい置換体が選択できる。一実施形態において、前記化学式1A中のR
10のオルトの位置の置換基は、全てフッ素原子または水素原子であり得る。
【0054】
一実施形態において、前記化学式1Aで示されるテトラカルボン酸二無水物は、下記の化学式18で示される化合物であることが好ましい。
【0056】
上記化学式18において、
R
10は、単結合、置換もしくは非置換のC1〜C30の脂肪族有機基、置換もしくは非置換のC3〜C30の脂環族有機基、置換もしくは非置換のC6〜C30の芳香族有機基、または置換もしくは非置換のC2〜C30のヘテロ環基であり、
R
12およびR
13は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基(−OR
208、ここで、R
208は、C1〜C10の脂肪族有機基である)、シリル基(−SiR
209R
210R
211、ここで、R
209、R
210およびR
211は、それぞれ独立して、水素原子またはC1〜C10の脂肪族有機基である)、置換もしくは非置換のC1〜C10の脂肪族有機基、または置換もしくは非置換のC6〜C20の芳香族有機基であり、
n7およびn8は、それぞれ独立して、0〜2の整数である。
【0057】
上記の平面性(planarity)は、化学式1A中のR
10のオルト位置の置換基が全て水素原子である場合に最大になり得る。
【0058】
本発明の組成物で使用されるジアミンは、製造されるポリイミドの光学的特性および熱的特性を考慮して、下記化学式3で示されるジアミンを使用する。
【0060】
前記化学式3において、R
1は、置換もしくは非置換のC1〜C30の脂肪族有機基、または置換もしくは非置換のC6〜C30の芳香族有機基を含み、
前記置換もしくは非置換のC1〜C30の脂肪族有機基は、置換もしくは非置換のC1〜C30のアルキレン基、置換もしくは非置換のC2〜C30のアルケニレン基、置換もしくは非置換のC2〜C30のアルキニレン基、置換もしくは非置換のC3〜C30のシクロアルキレン基を含み、前記置換もしくは非置換のC3〜C30のシクロアルキレン基は、一つのシクロアルキレン環を含むか、または2以上のシクロアルキレン環がO、S、C(=O)、CH(OH)、S(=O)
2、Si(CH
3)
2、(CH
2)
p(ここで、1≦p≦10)、(CF
2)
q(ここで、1≦q≦10)、C(CH
3)
2、C(CF
3)
2またはC(=O)NHの官能基によって連結されていてもよく、
前記置換もしくは非置換のC6〜C30の芳香族有機基は、一つの芳香族環であるか、2以上の芳香族環が互いに接合されて縮合環を形成するか、または2以上の芳香族環が単結合、もしくはフルオレニレン基、−O−、−S−、−C(=O)−、−CH(OH)−、−S(=O)
2−、−Si(CH
3)
2−、−(CH
2)
p−(ここで、1≦p≦10)、−(CF
2)
q−(ここで、1≦q≦10)、−C(CH
3)
2−、−C(CF
3)
2−もしくは−C(=O)NH−の官能基によって連結されていてもよい。
【0061】
前記化学式3で示されるジアミンは、下記化学式19〜26で示されるジアミンからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0063】
上記化学式19〜26において、
R
32〜R
52は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、置換もしくは非置換のC1〜C15のアルキル基、置換もしくは非置換のC1〜C15のアルコキシ基、置換もしくは非置換のC1〜C15のフルオロアルキル基、置換もしくは非置換のC2〜C15のアルカノイル基、置換もしくは非置換のC2〜C15のアルキルカルボキシル基、置換もしくは非置換のC2〜C15のアルコキシカルボニル基、置換もしくは非置換のC3〜C15のシクロアルキル基、置換もしくは非置換のC3〜C15のヘテロシクロアルキル基、置換もしくは非置換のC3〜C15のシクロアルコキシ基、置換もしくは非置換のC6〜C15のアリール基、置換もしくは非置換のC6〜C15のアリールオキシ基、または置換もしくは非置換のC2〜C15のヘテロアリール基であり、
X
2〜X
12は、それぞれ独立して、単結合、置換もしくは非置換のC1〜C10のアルキレン基、置換もしくは非置換のC3〜C10のシクロアルキレン基、置換もしくは非置換のC6〜C15のアリーレン基、SO
2、O、CO、または下記化学式27〜39で示される基からなる群より選択される基であり:
【0065】
n35〜n37およびn40〜n49は、それぞれ独立して、0〜4の整数であり、
n38およびn39は、それぞれ独立して、0〜3の整数である。
【0066】
前記ジアミンは、下記化学式40〜68で示される化合物からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0068】
一実施形態において、前記ジアミンは、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(2,2’−bis(trifluoromethyl)benzidine、TFDB)であることがより好ましい。
【0069】
組成物に含まれる上記テトラカルボン酸二無水物と上記ジアミンとは、1:1のモル比で反応してポリイミド重合体を製造することができる。
【0070】
したがって、他の一実施形態では、下記化学式8で示されるポリイミドまたはそのポリアミック酸前駆体である重合体が提供される。
【0072】
(化学式8)
上記化学式8において、
Aで示される基は、下記化学式9Aまたは下記化学式9Bで示される基であり、
Bで示される基は、下記化学式10で示される基であり、
【0074】
上記化学式9A、9B、および化学式10において、
R
10、R
12、R
13、L
1、L
2、n7およびn8に対する定義は、前記化学式1A、1Bおよび前記化学式2で定義した通りである。
【0075】
Cで示される基は、下記化学式69〜76で示される基からなる群より選択される基である。
【0077】
上記化学式69〜76において、
R
32〜R
52は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、置換もしくは非置換のC1〜C15のアルキル基、置換もしくは非置換のC1〜C15のアルコキシ基、置換もしくは非置換のC1〜C15のフルオロアルキル基、置換もしくは非置換のC2〜C15のアルカノイル基、置換もしくは非置換のC1〜C15のアルキルカルボキシル基、置換もしくは非置換のC1〜C15のアルコキシカルボニル基、置換もしくは非置換のC3〜C15のシクロアルキル基、置換もしくは非置換のC3〜C15のヘテロシクロアルキル基、置換もしくは非置換のC3〜C15のシクロアルコキシ基、置換もしくは非置換のC6〜C15のアリール基、置換もしくは非置換のC6〜C15のアリールオキシ基、または置換もしくは非置換のC2〜C15のヘテロアリール基であり、
X
2〜X
12は、それぞれ独立して、単結合、置換もしくは非置換のC1〜C10のアルキレン基、置換もしくは非置換のC3〜C10のシクロアルキレン基、置換もしくは非置換のC6〜C15のアリーレン基、SO
2、O、CO、または下記化学式27〜39で示される基からなる群より選択される基であり、
【0079】
n35〜n37およびn40〜n49は、それぞれ独立して、0〜4の整数であり、
n38およびn39は、それぞれ独立して、0〜3の整数である。
【0080】
前記xおよびyは、重合体内の繰り返し単位のモル分率を示し、0<x<1であり、y=1−xである。
【0081】
例えば、前記xは0.10≦x<0.53であることが好ましく、0.25≦x≦0.52であることがより好ましい。
【0082】
一実施形態で、前記化学式9A中のR
10は、置換もしくは非置換のC1〜C15のアルキレン基、置換もしくは非置換のC1〜C15のフルオロアルキレン基、置換もしくは非置換のC1〜C15のヘテロアルキレン基、置換もしくは非置換のC3〜C15のシクロアルキレン基、置換もしくは非置換のC3〜C15のヘテロシクロアルキレン基、置換もしくは非置換のC6〜C15のアリーレン基、または置換もしくは非置換のC2〜C15のヘテロアリーレン基であり得る。
【0083】
また、他の実施形態で、前記化学式9A中のR
10は、置換または非置換のC1〜C15のフルオロアルキレン基であり得る。
【0084】
前記化学式9Aで示される基は、下記化学式11で示される基または下記化学式12で示される基が好ましく、前記化学式10で示される基は、下記化学式13または下記化学式14で示される基が好ましい。
【0086】
上記化学式11〜14において、
R
12、R
13、n7、およびn8に対する定義は、前記化学式1Aおよび前記化学式2で定義した通りである。
【0087】
前記化学式9Aで示される基は、下記化学式19で示される基であることがより好ましい。
【0089】
上記化学式19において、
R
10は、単結合、置換もしくは非置換のC1〜C30の脂肪族有機基、置換もしくは非置換のC3〜C30の脂環族有機基、置換もしくは非置換のC6〜C30の芳香族有機基、または置換もしくは非置換のC2〜C30のヘテロ環基であり、
R
12およびR
13は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基(−OR
208、ここで、R
208は、C1〜C10の脂肪族有機基である)、シリル基(−SiR
209R
210R
211、ここで、R
209、R
210およびR
211は、それぞれ独立して、水素原子またはC1〜C10の脂肪族有機基である)、置換もしくは非置換のC1〜C10の脂肪族有機基、または置換もしくは非置換のC6〜C20の芳香族有機基であり、
n7およびn8は、それぞれ独立して、0〜2の整数である。
【0090】
一実施形態において、上記化学式8中のAで示される基は、下記化学式15で示される基であることが好ましい。
【0092】
一実施形態において、上記化学式8中のBで示される基は、下記化学式16で示される基であることが好ましい。
【0094】
一実施形態において、上記化学式8中のCで示される基は、下記化学式17で示される基であることが好ましい。
【0096】
前記化学式8で示されるポリイミドまたはその前駆体であるポリアミック酸は、前記化学式1Aで示されるテトラカルボン酸二無水物および前記化学式1Bで示されるテトラカルボン酸二無水物の少なくとも一方ならびに前記化学式2で示されるテトラカルボン酸二無水物を含むテトラカルボン酸二無水物と、前記化学式3で示されるジアミンとを、重縮合して製造することができる。
【0097】
前記化学式1Aで示されるテトラカルボン酸二無水物および前記化学式1Bで示されるテトラカルボン酸二無水物の少なくとも一方、ならびに前記化学式2で示されるテトラカルボン酸二無水物を含む混合物を、前記化学式3で示されるジアミンと混合して重合反応させることによって、前記化学式8で示されるポリイミドの前駆体であるポリアミック酸重合体が製造され、これを熱的または化学的イミド化によってイミド化することによって、上記化学式8で示されるポリイミドを製造することができる。一方、前記重合体を化学的または熱的に完全イミド化する前に、予め一部イミド化することによって、製造される最終ポリイミド成形品の物性が改善される可能性がある。したがって、必要によっては、前記ジアミンと前記テトラカルボン酸二無水物とを混合して重合反応させた後、これを基板などにキャスティングして成形する前に、混合物を化学的イミド化などによって部分的にイミド化する過程をさらに含むことができる。
【0098】
また、他の一実施形態では、前記組成物または前記重合体から製造される成形品を提供する。
【0099】
前記成形品は、フィルム、繊維(fiber)、コーティング材、または接着材であり得る。
【0100】
前記成形品は、ポリイミドフィルムの厚さ10μmを基準にして、380nm〜780nmの全波長範囲での平均透過度が87%超であり得る。したがって、無色透明性を必要とする分野、例えば、光学用基材フィルムやコーティング剤として使用することができる。
【0101】
また、前記成形品は、ポリイミドフィルムの厚さ10μmを基準にして、波長430nmの光に対する光透過率が好ましくは80%以上、より好ましくは84%以上であり得る。
【0102】
前記成形品は、4%未満の黄色度指数(yellow index、YI)であることが好ましく、3.5%未満のYIであることがより好ましい。
【0103】
前記成形品は、R
thが800nm以下であることが好ましく、700nm以下であることがより好ましい。なお、YIおよびR
thは実施例に記載の方法により測定することができる。
【0104】
前記成形品は、高いガラス転移温度(Tg)、好ましくは310℃以上、より好ましくは320℃以上のガラス転移温度を有し、0.5%質量減少温度も好ましくは400℃以上、より好ましくは410℃以上であり、高温特性も優れている。
【0105】
上記実施形態による組成物または重合体から製造される成形品、例えばフィルムは、上記のような高い光透過度および低い黄色度指数を有し、特に厚さ方向の位相差(R
th)をかなり減少させることができる。したがって、上記フィルムは、LCDなど光学装置の補償フィルムとして使用することができる。また、上記フィルムを、ディスプレイ装置などの透明基板として使用する場合、当該基板は補償フィルムとしての役割も果たすことにより、当該ディスプレイ装置で別途の補償フィルムを必要としなくなる。
【0106】
したがって、一実施形態において、前記成形品は光学フィルムであり得る。
【0107】
前記光学フィルムは、上位実施形態による組成物を混合し反応させることにより上記実施形態によるポリイミド、またはその前駆体であるポリアミック酸重合体を得て、前記重合体を基板などにコーティングしてキャスティングした後、最終的な硬化および延伸を行い製造することができる。このようなフィルムの製造方法も、当該技術分野でよく知られているので、これに関する詳しい説明は省略する。
【0108】
また、他の一実施形態は、前記成形品を含む光学装置が提供される。
【0109】
前記光学装置は、液晶ディスプレイ(LCD)装置、有機発光ダイオード(OLED)装置、相補性金属酸化膜半導体(CMOS)センサーなどであり得るが、これらに制限されない。
【0110】
一実施形態において、前記光学装置は液晶ディスプレイ(LCD)装置である。
【0111】
以下、
図1を参照して液晶ディスプレイ装置について説明する。
【0112】
前記ディスプレイ装置のうち液晶表示装置(LCD)について
図1に基づいて説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る液晶表示装置の断面図である。
【0113】
図1を参照すると、前記液晶表示装置は、薄膜トランジスタ表示板100と、これと向かい合う共通電極表示板200と、両表示板100、200の間に挟持されている液晶層3と、を備える。
【0114】
先ず、薄膜トランジスタ表示板100について説明する。
【0115】
基板110の上に、ゲート電極124と、ゲート絶縁膜140と、半導体154と、複数の抵抗性接触部材163、165と、ソース電極173およびドレイン電極175がこの順に形成されている。ソース電極173およびドレイン電極175は互いに分離されており、ゲート電極124を中心として向かい合う。
【0116】
一つのゲート電極124と、一つのソース電極173および一つのドレイン電極175は、半導体154とともに一つの薄膜トランジスタ(thin film transistor;TFT)をなし、薄膜トランジスタのチャネルは、ソース電極173とドレイン電極175との間の半導体154に形成される。
【0117】
ゲート絶縁膜140と、ソース電極173およびドレイン電極175との上には、保護膜180が形成されており、保護膜180には、ドレイン電極175を露出する接触口185が形成されている。
【0118】
保護膜180の上には、ITOまたはIZOなどの透明な導電物質からなる画素電極191が形成されている。画素電極191は、接触口185を介してドレイン電極175と接続される。
【0119】
次いで、共通電極表示板200について説明する。
【0120】
共通電極表示板200は、基板210の上にブラックマトリックスと呼ばれる遮光部材220が形成されており、基板210および遮光部材220の上にはカラーフィルタ230が形成されており、カラーフィルタ230の上には共通電極270が形成されている。
【0121】
このとき、基板110、210は、前記ポリイミドまたはポリイミドのポリアミック酸前駆体を含む成形品から製作されていてもよい。
【0122】
液晶ディスプレイ(LCD)装置の場合、液晶の厚さによる厚さ方向の位相差R
thが小さいものが好まれる。上記実施形態による光学フィルムは、液晶ディスプレイ(LCD)装置の補償フィルム、または液晶ディスプレイ装置の透明基板として使用することができるが、これに制限されない。
【実施例】
【0123】
以下、実施例によって詳しく説明する。しかし、下記の実施例は単に例として説明するためのものであり、これによって範囲が制限されるわけではない。
【0124】
参考例1−1〜
参考例12および比較例1〜比較例3:ポリイミドフィルムの製造
<
参考例1−1>
攪拌機、窒素注入装置、および冷却器を取り付けた250mL反応器に窒素を通過させながらN−メチル−2−ピロリドン(NMP)121.1mlを満たした後、反応器の温度を25℃に設定し、TFDB 13.2g(0.0415モル)を溶解し、この溶液を25℃で維持した。そして、BPDA 10.98g(0.037モル)、およびa−BPDA 1.22g(0.0042モル)を添加した後、48時間攪拌して、固形分の濃度が17質量%であるポリアミック酸溶液を得た。ここに、無水酢酸(acetic anhydride)とピリジン(pyridine)とをそれぞれ前記製造されたポリアミック酸内アミック酸の総モル数に対して60モル%添加した後、24時間攪拌して化学的イミド化を行なった。
【0125】
反応が終了した後、得られた溶液をガラス板に塗布した後にスピンキャスティングし、80℃のホットプレートで1時間乾燥した。その後、フィルムをファーネスに入れて室温から300℃まで約1時間30分の間、昇温速度約3℃/分で、徐々に加熱した。300℃で1時間維持させた後、徐々に冷却し、ガラス板から分離してポリイミドフィルムを得た(厚さ10μm)。
【0126】
<
参考例1−2>
前記
参考例1−1と同様な方法で、ポリイミドフィルムを製造した。但し、前記無水酢酸(acetic anhydride)とピリジン(pyridine)とをそれぞれ前記製造されたポリアミック酸内アミック酸の総モル数に対して80モル%ずつ添加することによって、フィルム硬化前に化学的イミド化を80%行なった点の除いては、
参考例1−1と同様にして、ポリイミドフィルムを製造した(厚さ10μm)。
【0127】
<実施例2>
攪拌機、窒素注入装置および冷却器を取り付けた250mL反応器に窒素を通過させながらN−メチル−2−ピロリドン(NMP)124mlを満たした後、反応器の温度を25℃に設定し、TFDB 11.7g(0.036モル)を溶解し、この溶液を25℃で維持した。そして、BPDA 8.08g(0.0275モル)、およびa−BPDA 2.69g(0.0092モル)を添加した後に48時間攪拌して、固形分の濃度が15質量%であるポリアミック酸溶液を得た。ここに、無水酢酸(acetic anhydride)とピリジン(pyridine)とをそれぞれ前記製造されたポリアミック酸内アミック酸の総モル数に対して60モル%添加した後、24時間攪拌して化学的イミド化を行なった。
【0128】
反応が終了した後、得られた溶液をガラス板に塗布した後にスピンキャスティングし、80℃のホットプレートで1時間乾燥した。その後、フィルムをファーネスに入れて、室温から300℃まで1時間30分の間、昇温速度約3℃/分で、徐々に加熱した。300℃で1時間維持させた後、徐々に冷却し、ガラス板から分離してポリイミドフィルムを得た(厚さ10μm)。
【0129】
<実施例3>
攪拌機、窒素注入装置、および冷却器を取り付けた250mL反応器に窒素を通過させながらN−メチル−2−ピロリドン(NMP)121.1mlを満たした後、反応器の温度を25℃に設定し、TFDB 13.2g(0.0415モルl)を溶解し、この溶液を25℃で維持した。そして、BPDA 7.32g(0.0249モル)、およびa−BPDA 4.88g(0.0166モル)を添加した後に48時間攪拌して、固形分の濃度が17質量%であるポリアミック酸溶液を得た。ここに、無水酢酸(acetic anhydride)とピリジン(pyridine)とをそれぞれ前記製造されたポリアミック酸内アミック酸の総モル数に対して60モル%添加した後、24時間攪拌して化学的イミド化を行なった。
【0130】
反応が終了した後、得られた溶液をガラス板に塗布した後にスピンキャスティングし、80℃のホットプレートで1時間乾燥した後、フィルムをファーネスに入れて、室温から300℃まで1時間30分の間、昇温速度約3℃/分で、徐々に加熱した。300℃で1時間維持させた後、徐々に冷却しガラス板から分離してポリイミドフィルムを得た(厚さ10μm)。
【0131】
<実施例4>
攪拌機、窒素注入装置および冷却器を取り付けた250mL反応器に窒素を通過させながらN−メチル−2−ピロリドン(NMP)121.1mlを満たした後、反応器の温度を25℃に設定し、TFDB 13.2g(0.0415モル)を溶解し、この溶液を25℃で維持した。そして、BPDA 6.71g(0.0228モル)、およびa−BPDA 5.49g(0.0187モル)を添加した後に48時間攪拌して、固形分の濃度が17質量%であるポリアミック酸溶液を得た。ここに、無水酢酸(acetic anhydride)とピリジン(pyridine)とをそれぞれ前記製造されたポリアミック酸内アミック酸の総モル数に対して60モル%添加した後、24時間攪拌して化学的イミド化を行なった。
【0132】
反応が終了した後、得られた溶液をガラス板に塗布した後にスピンキャスティングし、80℃のホットプレートで1時間乾燥した後、フィルムをファーネスに入れて、室温から300℃まで1時間30分の間、昇温速度約3℃/分で、徐々に加熱した。300℃で1時間維持させた後、徐々に冷却しガラス板から分離してポリイミドフィルムを得た(厚さ10μm)。
【0133】
<実施例5>
攪拌機、窒素注入装置、および冷却器を取り付けた250mL反応器に窒素を通過させながらN−メチル−2−ピロリドン(NMP)121.1mlを満たした後、反応器の温度を25℃に設定し、TFDB 13.2g(0.0415モル)を溶解し、この溶液を25℃で維持した。そして、BPDA 6.1g(0.0208モル)、およびa−BPDA6.1g(0.0208モル)を添加した後に48時間攪拌して、固形分の濃度が17質量%であるポリアミック酸溶液を得た。ここに、無水酢酸(acetic anhydride)とピリジン(pyridine)とをそれぞれ前記製造されたポリアミック酸内アミック酸の総モル数に対して60モル%添加した後、24時間攪拌して化学的イミド化を行なった。
【0134】
反応が終了した後、得られた溶液をガラス板に塗布した後にスピンキャスティングし、80℃のホットプレートで1時間乾燥した後、フィルムをファーネスに入れて、室温から300℃まで約1時間30分の間、昇温速度約3℃/分で、徐々に加熱した。300℃で1時間維持させた後、徐々に冷却しガラス板から分離してポリイミドフィルムを収得した(厚さ10μm)。
【0135】
<実施例6>
攪拌機、窒素注入装置、および冷却器を取り付けた250mL反応器に窒素を通過させながらN−メチル−2−ピロリドン(NMP)121.1mlを満たした後、反応器の温度を25℃に設定し、TFDB 13.2g(0.0415モル)を溶解し、この溶液を25℃で維持した。そして、BPDA 5.98g(0.0203モル)、およびa−BPDA 6.22g(0.0212モル)を添加した後に48時間攪拌して、固形分の濃度が17質量%であるポリアミック酸溶液を得た。ここに、無水酢酸(acetic anhydride)とピリジン(pyridine)とをそれぞれ前記製造されたポリアミック酸内アミック酸の総モル数に対して60モル%添加した後、24時間攪拌して化学的イミド化を行なった。
【0136】
反応が終了した後、得られた溶液をガラス板に塗布した後にスピンキャスティングし、80℃のホットプレートで1時間乾燥した後、フィルムをファーネスに入れて、室温から300℃まで約1時間30分の間、昇温速度約3℃/分で、徐々に加熱した。300℃で1時間維持させた後、徐々に冷却しガラス板から分離してポリイミドフィルムを収得した(厚さ10μm)。
【0137】
<実施例7>
攪拌機、窒素注入装置、および冷却器を取り付けた250mL反応器に窒素を通過させながらN−メチル−2−ピロリドン(NMP)121.1mlを満たした後、反応器の温度を25℃に設定し、TFDB 13.2g(0.0415モル)を溶解し、この溶液を25℃で維持した。そして、BPDA 5.86g(0.0199モル)、およびa−BPDA6.34g(0.0216モル)を添加した後に48時間攪拌して、固形分の濃度が17質量%であるポリアミック酸溶液を得た。ここに、無水酢酸(acetic anhydride)とピリジン(pyridine)とをそれぞれ前記製造されたポリアミック酸内アミック酸の総モル数に対して60モル%添加した後、24時間攪拌して化学的イミド化を行なった。
【0138】
反応が終了した後、得られた溶液をガラス板に塗布した後にスピンキャスティングし、80℃のホットプレートで1時間乾燥した後、フィルムをファーネスに入れて、室温から300℃まで約1時間30分の間、昇温速度約3℃/分で、徐々に加熱した。300℃で1時間維持させた後、徐々に冷却しガラス板から分離してポリイミドフィルムを得た(厚さ10μm)。
【0139】
<比較例1>
攪拌機、窒素注入装置、および冷却器を取り付けた250mL反応器に窒素を通過させながらN−メチル−2−ピロリドン(NMP)125.4mlを満たした後、反応器の温度を25℃に設定し、TFDB 10.94g(0.0342モル)を溶解し、この溶液を25℃で維持した。そして、BPDA 10.05g(0.0342モル)を添加した後に48時間攪拌して、固形分の濃度が14質量%であるポリアミック酸溶液を得た。ここに、無水酢酸(acetic anhydride)とピリジン(pyridine)をそれぞれ前記製造されたポリアミック酸内アミック酸の総モル数に対して60モル%添加した後、24時間攪拌して化学的イミド化を行なった。
【0140】
反応が終了した後、得られた溶液をガラス板に塗布した後にスピンキャスティングし、80℃のホットプレートで1時間乾燥した後、フィルムをファーネスに入れて、室温から300℃まで1時間30分の間、昇温速度約3℃/分で、徐々に加熱した。300℃で1時間維持させた後、徐々に冷却しガラス板から分離してポリイミドフィルムを得た(厚さ10μm)。
【0141】
<
参考例8>
攪拌機、窒素注入装置、および冷却器を取り付けた250mL反応器に窒素を通過させながら、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)121.1mlを満たした後、反応器の温度を25℃に設定し、TFDB 13.28g(0.0415モル)を溶解し、この溶液を25℃で維持した。そして、BPDA 11.59g(0.0394モル)、およびa−BPDA 0.61g(0.0021モル)を添加した後に48時間攪拌して、固形分の濃度が17質量%であるポリアミック酸溶液を得た。ここに、無水酢酸(acetic anhydride)とピリジン(pyridine)とをそれぞれ前記製造されたポリアミック酸内アミック酸の総モル数に対して60モル%添加した後、24時間攪拌して化学的イミド化を行なった。
【0142】
反応が終了した後、得られた溶液をガラス板に塗布した後にスピンキャスティングし、80℃のホットプレートで1時間乾燥した後、フィルムをファーネスに入れて、室温から300℃まで約1時間30分の間、昇温速度約3℃/分で、徐々に加熱した。300℃で1時間維持させた後、徐々に冷却しガラス板から分離してポリイミドフィルムを得た(厚さ10μm)。
【0143】
<
参考例9>
攪拌機、窒素注入装置、および冷却器を取り付けた250mL反応器に窒素を通過させながらN−メチル−2−ピロリドン(NMP)121.1mlを満たした後、反応器の温度を25℃に設定し、TFDB 13.28g(0.0415モル)を溶解し、この溶液を25℃で維持した。そして、BPDA 11.47g(0.039モル)、およびa−BPDA0.73g(0.0025モル)を添加した後に48時間攪拌して、固形分の濃度が17質量%であるポリアミック酸溶液を得た。ここに、無水酢酸(acetic anhydride)とピリジン(pyridine)とをそれぞれ前記製造されたポリアミック酸内アミック酸の総モル数に対して60モル%添加した後、24時間攪拌して化学的イミド化を行なった。
【0144】
反応が終了した後、得られた溶液をガラス板に塗布した後にスピンキャスティングし、80℃のホットプレートで1時間乾燥した後、フィルムをファーネスに入れて、室温から300℃まで約1時間30分の間、昇温速度約3℃/分で、徐々に加熱した。300℃で1時間維持させた後、徐々に冷却しガラス板から分離してポリイミドフィルムを得た(厚さ10μm)。
【0145】
<
参考例10>
攪拌機、窒素注入装置、および冷却器を取り付けた250mL反応器に窒素を通過させながらN−メチル−2−ピロリドン(NMP)121.1mlを満たした後、反応器の温度を25℃に設定し、TFDB 13.28g(0.0415モル)を溶解し、この溶液を25℃で維持した。そして、BPDA 11.1g(0.0378モル)、およびa−BPDA 1.0g(0.0037モル)を添加した後に48時間攪拌して、固形分の濃度が17質量%であるポリアミック酸溶液を得た。ここに、無水酢酸(acetic anhydride)とピリジン(pyridine)とをそれぞれ前記製造されたポリアミック酸内アミック酸の総モル数に対して60モル%添加した後、24時間攪拌して化学的イミド化を行なった。
【0146】
反応が終了した後、得られた溶液をガラス板に塗布した後にスピンキャスティングし、80℃のホットプレートで1時間乾燥した後、フィルムをファーネスに入れて、室温から300℃まで約1時間30分の間、昇温速度約3℃/分で、徐々に加熱した。300℃で1時間維持させた後、徐々に冷却しガラス板から分離してポリイミドフィルムを得た(厚さ10μm)。
【0147】
<
参考例11>
攪拌機、窒素注入装置、および冷却器を取り付けた250mL反応器に窒素を通過させながらN−メチル−2−ピロリドン(NMP)121.1mlを満たした後、反応器の温度を25℃に設定し、TFDB 13.28g(0.0415モル)を溶解し、この溶液を25℃で維持した。そして、BPDA 5.73g(0.0195モル)、およびa−BPDA 6.47g(0.022モル)を添加した後に48時間攪拌して、固形分の濃度が17質量%であるポリアミック酸溶液を得た。ここに、無水酢酸(acetic anhydride)とピリジン(pyridine)とをそれぞれ前記製造されたポリアミック酸内アミック酸の総モル数に対して60モル%添加した後、24時間攪拌して化学的イミド化を行なった。
的イミド化を行なった。
【0148】
反応が終了した後、得られた溶液をガラス板に塗布した後にスピンキャスティングし、80℃のホットプレートで1時間乾燥した後、フィルムをファーネスに入れて、室温から300℃まで約1時間30分間、昇温速度約3℃/分で、徐々に加熱した。300℃で1時間維持させた後、徐々に冷却しガラス板から分離してポリイミドフィルムを得た(厚さ10μm)。
【0149】
<
参考例12>
攪拌機、窒素注入装置、および冷却器を取り付けた250mL反応器に窒素を通過させながらN−メチル−2−ピロリドン(NMP)121.1mlを満たした後、反応器の温度を25℃に設定し、TFDB 13.28g(0.0415モル)を溶解し、この溶液を25℃で維持した。そして、BPDA 5.61g(0.0191モル)、およびa−BPDA 6.59g(0.0224モル)を添加した後に48時間攪拌して、固形分の濃度が17質量%であるポリアミック酸溶液を得た。ここに、無水酢酸(acetic anhydride)とピリジン(pyridine)とをそれぞれ前記製造されたポリアミック酸内アミック酸の総モル数に対して60モル%添加した後、24時間攪拌して化学的イミド化を行なった。
【0150】
反応が終了した後、得られた溶液をガラス板に塗布した後にスピンキャスティングし、80℃のホットプレートで1時間乾燥した後、フィルムをファーネスに入れて、室温から300℃まで約1時間30分の間、昇温速度約3℃/分で、徐々に加熱した。300℃で1時間維持させた後、徐々に冷却しガラス板から分離してポリイミドフィルムを得た(厚さ10μm)。
【0151】
<比較例2>
攪拌機、窒素注入装置、および冷却器を取り付けた250mL反応器に窒素を通過させながらN−メチル−2−ピロリドン(NMP)119.2mlを満たした後、反応器の温度を25℃に設定し、TFDB 13.2g(0.0415モル)を溶解し、この溶液を25℃で維持した。そして、BPDA 10.98g(0.037モル)、HPMDA(1,2,4,5−Cyclohexane tetracarboxylic dianhydride)0.92g(0.00415モル)を添加した後に48時間攪拌して、固形分の濃度が17質量%であるポリアミック酸溶液を得た。ここに、無水酢酸(acetic anhydride)とピリジン(pyridine)とをそれぞれ前記製造されたポリアミック酸内アミック酸の総モル数に対して60モル%添加した後、24時間攪拌して化学的イミド化を行なった。
【0152】
反応が終了した後、得られた溶液をガラス板に塗布した後にスピンキャスティングし、80℃のホットプレートで1時間乾燥した後、フィルムをファーネスに入れて、室温から300℃まで1時間30分の間、昇温速度約3℃/分で、徐々に加熱した。300℃で1時間維持させた後、徐々に冷却しガラス板から分離してポリイミドフィルムを得た(厚さ10μm)。
【0153】
<比較例3>
攪拌機、窒素注入装置、および冷却器を取り付けた250mL反応器に窒素を通過させながらN−メチル−2−ピロリドン(NMP)122.8mlを満たした後、反応器の温度を25℃に設定し、TFDB 13.2g(0.0415モル)を溶解し、この溶液を25℃で維持した。そして、BPDA 10.87g(0.037モル)、6FDA(hexafluoroisopropylidene)diphthalic anhydride)1.8g(0.00415モル)を添加した後に48時間攪拌して、固形分の濃度が17質量%であるポリアミック酸溶液を得た。ここに、無水酢酸(acetic anhydride)とピリジン(pyridine)とをそれぞれ前記製造されたポリアミック酸内アミック酸の総モル数に対して60モル%添加した後、24時間攪拌して化学的イミド化を行なった。
【0154】
反応が終了した後、得られた溶液をガラス板に塗布した後にスピンキャスティングし、80℃のホットプレートで1時間乾燥した後、フィルムをファーネスに入れて、室温から300℃まで1時間30分の間、昇温速度約3℃/分で、徐々に加熱した。300℃で1時間維持後、徐々に冷却しガラス板から分離してポリイミドフィルムを得た(厚さ10μm)。
【0155】
試験例1:ポリイミドフィルムの光学的特性評価
上記実施例
、参考例および比較例から製造されたポリイミドフィルムの光学的特性を評価し、その結果を下記表1に示した。
【0156】
下記表1で、フィルムの光透過性は「ヒューレットパッカード(Hewlett Packard)8452Aスペクトロフォトメーター(Spectrophotometer)」を用いて、380nm〜780nmの範囲で、ポリイミドフィルムの透過率を測定した。同様に、波長400nmおよび430nmの透過率を測定した。
【0157】
R
thは、Axometrics社製Axoscan装置を使用して測定した。
【0158】
YIおよび透過率(380nm〜780nm)は、「KONICA MINOLTA CM3600dスペクトロフォトメーター(KONICA MINOLTA社製)」を使用して測定した。
【0159】
【表1】
【0160】
上記表1から分かるように、傾いた2面角(dihedral tilted)構造を有するテトラカルボン酸二無水物を一定の含有量で含む組成物から製造された
参考例1−1〜実施例7によるポリイミドフィルムの場合、380nm〜780nmの全波長範囲での透過率が87%を超えた。さらに、波長400nmでの透過率も60%以上であり、波長430nmでの透過率は84%以上であって、これは傾いた2面角構造のテトラカルボン酸二無水物を含まない比較例1のポリイミドフィルム、傾いた2面角構造のテトラカルボン酸二無水物の代わりに脂肪族テトラカルボン酸二無水物であるHPMDA(1,2,4,5−Cyclohexane tetracarboxylic dianhydride)を10モル%含む比較例2のポリイミド、そして傾いた2面角構造でない平面構造のテトラカルボン酸二無水物である6FDAを10モル%含む比較例3のポリイミドフィルムと比較して、全ての波長範囲での透過率がはるかに優れていることが分かる。
【0161】
また、a−BPDAを10モル%未満で少量含む
参考例8〜
参考例10から製造されるポリイミドフィルムの場合、波長400nmで測定した透過率および全波長透過率は、
参考例1−1〜実施例7によるポリイミドフィルムの透過率より低いことが分かる。
【0162】
一方、a−BPDAをそれぞれ53モル%および54モル%含む、
参考例11および
参考例12によるフィルムの場合、壊れやすい(brittle)ため、透過率測定が不可能であった。
【0163】
また、
参考例1−1〜実施例7によるポリイミドフィルムの場合、YIが全体的に3未満で非常に低く、特にa−BPDAでないBPDAのみからなる比較例1、またはa−BPDAを含むが10モル%未満で含む
参考例8〜
参考例10のフィルムと比べても、YIが低いことが分かる。一方、a−BPDAを53モル%および54モル%含む
参考例11および
参考例12のフィルムは、壊れやすいためYI測定が不可能であった。a−BPDAの代わりに脂肪族テトラカルボン酸二無水物であるHPMDA10モル%を含む比較例2のフィルムのYIは、非常に高かった。
【0164】
一方、
参考例1−1〜実施例7によるポリイミドフィルムの厚さ方向の位相差R
thは最大660nmで、a−BPDAを含まないか、またはa−BPDAを10モル%未満で少量含む場合の全てと比較してその値が顕著に低くなることが分かる。特に、a−BPDAを25モル%以上含有する実施例2〜実施例7のポリイミドフィルムは、R
thが300nm未満で顕著に低くなることが分かる。
【0165】
試験例2:ポリイミドフィルムの熱的特性評価
前記実施例および比較例から製造されたポリイミドフィルムの熱的特性を評価し、その結果を下記表2に示した。
【0166】
ガラス転移温度(Tg)は、TAインスツルメンツ社製、2980ダイナミックメカニカルアナライザー(TA Instruments 2980 dynamic mechanical analyzer)を用いて、周波数1.0Hz(波長約10.0μm)および負荷質量0.05Nを使用し、5℃/minの速度で温度を上昇させながらtanδの応答ピークでTgを測定した。
【0167】
熱膨張係数(CTE)はTAインスツルメンツ社製、TMA2940サーマルメカニカルアナライザー(thermal mechanical analyzer)を用いて測定した。フィルムの膨張度は、50℃〜250℃で1回目をスキャンし、および50℃〜300℃の範囲で二回目のスキャン時に値を測定した。最初のスキャン時に同一な温度範囲にわたってサンプルの収縮を除去しサンプルを乾燥させ、二回目スキャン時にフィルム固有の特性であるCTE値を測定した。この時、0.05Nの固定引張強度(fixed tension force)下で測定し、上記で言及された温度範囲内で10℃/minの上昇温度で測定した。
【0168】
【表2】
【0169】
上記表2に示したように、
参考例1−1〜実施例4によって製造されたポリイミドフィルムは320℃以上のガラス転移温度(Tg)を示し、0.5%質量減少温度も410℃以上であって、十分な高温安定性を有することが分かる。
【0170】
一方、傾いた2面角(dihedral tilted)構造を有するa−BPDAの含量が増加するほど、CTEは多少増加する傾向がある。これも傾いた2面角構造によるCTC(Charge Transfer Complex)形成が難しくなることによる結果と予想することができる。しかし、下記試験例から分かるように、このようなCTEの増加は、フィルム形成前の化学的イミド化の比率を調節することによって十分に調節可能であるのを確認した。
【0171】
試験例3:化学的イミド化によるCTEの調節可能
前記
参考例1−1〜実施例7ではフィルム形成前に化学的イミド化を60%行なった後にフィルムを製造したのに反して、このような化学的イミド化を80%まで行なった後にフィルムを製造した場合には、CTEを約20%程度まで減少させることができるのを確認した。
参考例1−2は
参考例1−1と同一の条件でポリイミドフィルムを製造したが、化学的イミド化のみは60%でない80%進行後にポリイミドフィルムを製造したものである。このような
参考例1−1および
参考例1−2によるフィルムの透過率、黄色度指数、R
th、およびCTEを測定して下記表3に示した。
【0172】
【表3】
【0173】
上記表3から分かるように、化学的イミド化以外の条件は全て同一にし、化学的イミド化の比率のみを調節することによって、他の光学的特性および熱的特性の変化なく、CTEを有効に減少させることができることが分かる。
【0174】
以上、本発明の好適な実施例について詳述したが、本発明はこれに何ら限定されるものではなく、特許請求の範囲、発明の詳細な説明および添付図面の範囲内において種々に変形して実施することが可能であり、これもまた本発明の権利範囲に属するということはいうまでもない。