特許第6644485号(P6644485)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6644485
(24)【登録日】2020年1月10日
(45)【発行日】2020年2月12日
(54)【発明の名称】粉体化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/25 20060101AFI20200130BHJP
   A61K 8/92 20060101ALI20200130BHJP
   A61Q 1/00 20060101ALI20200130BHJP
【FI】
   A61K8/25
   A61K8/92
   A61Q1/00
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-126197(P2015-126197)
(22)【出願日】2015年6月24日
(65)【公開番号】特開2016-29028(P2016-29028A)
(43)【公開日】2016年3月3日
【審査請求日】2018年5月1日
(31)【優先権主張番号】特願2014-149828(P2014-149828)
(32)【優先日】2014年7月23日
(33)【優先権主張国】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000226437
【氏名又は名称】日光ケミカルズ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】301068114
【氏名又は名称】株式会社コスモステクニカルセンター
(72)【発明者】
【氏名】山口 俊介
(72)【発明者】
【氏名】服部 京子
【審査官】 辰己 雅夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭62−249914(JP,A)
【文献】 特表2007−517770(JP,A)
【文献】 特開2011−020959(JP,A)
【文献】 特開平10−139647(JP,A)
【文献】 韓国公開特許第10−2013−0086779(KR,A)
【文献】 特開昭53−038635(JP,A)
【文献】 特開平08−165219(JP,A)
【文献】 特開平07−330541(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K8/00− 8/99
A61Q1/00−90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め油剤(油剤に、紫外線吸収剤を含まない)を含浸させた平均粒子径が1〜50μm、比表面積が250〜1000m/g、細孔容積が5mL/g以下、細孔直径が3〜50nm、吸油量が100〜400mL/100gである表面処理を行っていない多孔質粉体シリカを配合することを特徴とする粉体化粧料。
【請求項2】
上記、多孔質粉体シリカに対して含浸させる油量が10〜70質量%であることを特徴とする、請求項1に記載の粉体化粧料。
【請求項3】
上記、油含浸多孔質粉体シリカを化粧料全体に対して1〜30質量%配合することを特徴とする、請求項1または2に記載の粉体化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、しっとりとする、肌へののびが良いといった使用性を有する粉体化粧料に関し、より詳しくはシリカに油分を予め混合することで、粉体化粧料の硬度や色味を変化させることなく優れた使用性(しっとり感、肌上の伸び易さ)を付与できる粉体化粧料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ファンデーション類は基本的には粉末、油剤、水の3成分のうち2種または3種を組み合わせて作られ、目的に応じて薬剤、乳化剤、保湿剤等を添加する。剤型はルースパウダー、プレストパウダーなどの粉末化粧料型やリキッドファンデーションやクリームファンデーションなどの乳化型など様々である。中でも粉末化粧料型は乳化型に比べて、粉末配合量が多く、べたつきにくくカバー力に優れるが、油分が少ないことから粉感を強く感じる。そのため、乾燥肌タイプの消費者はリキッドファンデーションなどの乳化型を好む傾向にあり、乾燥期の秋や冬でも同様に乳化型が好まれる傾向にある。さらに、プレストファンデーションに油性感を強めるために油分を多く配合した場合、成型後の硬度が上昇し、ケーキングといった問題を起こし易くなる。
【0003】
そこで、粉体化粧料の粉感を低減する技術として、アミノ変性シリコーンや脂肪酸により疎水化処理した体質顔料を粉体化粧料中に配合することでしっとりした感触を得る技術(特許文献1、特開2014−5279)やシリコーンエラストマーなどのシリコーン粉末を配合することできしみ感を低減する方法(特許文献2、特開1996−26932)などが一般的であるが、油分配合量を多く配合する技術ではなく、その効果は満足のいくものではなかった。また、水溶性高分子などの保湿剤を配合することでしっとり感を付与する技術(特許文献3、特開2010−37216)があるが、処理が複雑であり簡便に使用できるものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014−5279号公報
【特許文献2】特開1996−26932号公報
【特許文献3】特開2010−37216号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、優れた使用性(しっとり感、肌上の伸び易さ)を有する粉体化粧料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本課題を解決すべく鋭意検討を加えたところ、予め多孔質シリカに対して油剤を10〜70質量%含浸させた粉体を、化粧料全体に対して1〜30質量%配合した粉体化粧料に上記課題を解決する特性を見出したものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明品は、吸油性に優れた多孔質シリカなどの粉体に予め油剤を含浸させた粉体を粉体化粧料に配合することで、配合しない場合と比較して、硬度や色味をほぼ変化させることなく優れた使用性(しっとり感、肌上の伸び易さ)を付与することが簡便にできる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、本発明について詳述する。
本発明で用いられる油含浸多孔質粉体は、多孔質粉体としてシリカを用いることが好ましく、予め油を含浸させる方法としては特に限定されるものではない。本発明に用いられる多孔質粉体は、特に限定はされないが、平均粒子径は1〜50μm、比表面積は250〜1000m2/g、細孔容積は5mL/g以下、細孔直径は3〜50nm、吸油量は100〜400mL/100gであれば好ましく、このような多孔質粉体の市販品としてはサンスフェアHシリーズなどがある。さらに、多孔質粉体質量に対して10〜70質量%の油剤を含浸させることが好ましい。含浸させる油剤には特に限定はなく、化粧品原料として汎用的に使用される油剤、例えば、炭化水素油、エステル油、植物油、シリコーン油などが挙げられる。
【0009】
本発明における油含浸多孔質粉体の配合量は、粉体化粧料全量に対して1.0〜30.0質量%であるが、好ましくは3.0〜15.0質量%である。この範囲であれば、化粧料塗布時に十分なしっとり感や肌上への伸び易さを得ることができる。
本発明の粉体化粧料には、前記本発明の効果を損なわない範囲において、一般に化粧料に配合される各種任意成分、例えば油剤、保湿剤、増粘剤、防腐剤、乳化剤、顔料、その他の粉体、pH調整剤、薬効成分、紫外線吸収剤、抗酸化剤、香料等を適宜配合することができる。
【0010】
本発明の粉体化粧料を調製する際は、粉体用ミキサーやプレス装置など通常の製造装置が使用できる。調製方法は、粉体用ミキサーで顔料やその他の粉体を攪拌混合し、必要であれば予め加温溶解したバインダーを加え、均一になるまで十分に攪拌し、必要であれば型に入れプレス成型する方法などが挙げられる。
【0011】
さらに本発明の粉体化粧料とは、前述の油含浸多孔質粉体を必須成分として配合するものであり、形態としては特に限定されず、プレストパウダー、ルースパウダーのいずれも該当する。また用途としても特に限定されず、ボディパウダー、フェイスパウダー、ファンデーション、チーク、アイシャドウ、アイブロウなどが挙げられる。
次に本発明をより多くの実施例で詳述するが、本発明はこれにより限定されるものではない。
【実施例1】
【0012】
(1)油含浸多孔質粉体の調製
表1に示す処方に従って、多孔質粉体シリカと油剤をあらかじめ混合し含浸させた油含浸多孔質粉体(製造例1〜5)を調製した。

【表1】
【0013】
(2)プレストファンデーションの調製
表2、3に示す処方に従ってプレストファンデーションを作製した。各成分をミキサーにて均一に混合し、メッシュを通した後にプレス成型することでプレストファンデーションを得た。
【0014】
(3)使用感評価
化粧品専門パネラー10名を用いて、調製したプレストファンデーションの使用感(しっとり感、肌上への伸び易さ)を評価した。評価は以下の4段階の基準に分類した。
◎:10名中8名以上が良好と感じた
○:10名中6〜7名が良好と感じた
△:10名中4〜5名が良好と感じた
×:10名中3名以下が良好と感じた
【0015】
(4)硬度測定
オルゼン型硬度計を用いて、プレスト表面5点の平均値を測定した。
(5)色測定
色差計を用いて、L*、a*、b*および比較品1に対するΔE*abを測定した。

【表2】

【表3】
【0016】
(6)結果
予め油剤を多孔質粉体に含浸させたものを体質顔料であるセリサイトと置き換えて粉体化粧料に配合した場合(発明品1〜7)、比較品1と比べ、使用感が向上し、物性値の変化は硬度において±10%以内、ΔEは目視で差が分かるとされる1.5より低い値であり影響はほとんどみられなかった。また、多孔質粉体に油量を変更し含浸させた製造例1〜3の油含浸多孔質粉体を用いたプレストファンデーション(発明品1〜3)の物性に大きな差はなかった。
【実施例2】
【0017】
ルースパウダー
マイカ 100.0に調整(質量%)
製造例2の油含浸多孔質粉体 10.0
酸化亜鉛 5.0
顔料級二酸化チタン 10.0
ベンガラ 1.5
黄酸化鉄 4.5
黒酸化鉄 0.3
防腐剤 適量
(調製方法)各成分をミキサーにて均一に混合し、メッシュを通した後にプレス成型した。
(結果)肌上への伸びやすさ、しっとり感に優れていた。
【実施例3】
【0018】
チークパウダー
タルク 100.0に調整(質量%)
製造例4の油含浸多孔質粉体 10.0
セリサイト 20.0
マイカ 5.0
二酸化チタン 5.0
ステアリン酸マグネシウム 3.0
流動パラフィン 4.0
2−エチルヘキサン酸セチル 1.5
着色料 適量
防腐剤 適量
(調製方法)各成分をミキサーにて均一に混合し、メッシュを通した後にプレス成型した。
(結果)肌上への伸びやすさ、しっとり感に優れていた。
【実施例4】
【0019】
アイシャドウ
タルク 100.0に調整(質量%)
製造例5の油含浸多孔質粉体 10.0
セリサイト 20.0
マイカ 15.0
二酸化チタン 3.0
ステアリン酸亜鉛 3.0
流動パラフィン 4.0
2−エチルへキサン酸セチル 2.5
着色料 適量
防腐剤 適量
(調製方法)各成分をミキサーにて均一に混合し、メッシュを通した後にプレス成型した。
(結果)肌上への伸びやすさ、しっとり感に優れていた。
【実施例5】
【0020】
粉おしろい
タルク 100.0に調整(質量%)
製造例1の油含浸多孔質粉体 10.0
セリサイト 10.0
カオリン 5.0
二酸化チタン 5.0
ステアリン酸亜鉛 5.0
炭酸マグネシウム 5.0
着色料 適量
防腐剤 適量
(調製方法)各成分をミキサーにて均一に混合し、メッシュを通した後に充填した。
(結果)肌上への伸びやすさ、しっとり感に優れていた。