(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
所定方向に移動可能な第1キャリッジと、前記第1キャリッジを移動させる駆動機構と、前記第1キャリッジと連結可能に構成され、前記所定方向に移動可能な第2キャリッジとを備え、
前記粉末除去部材は、前記第1キャリッジに設けられ、
前記造形ヘッドは、前記第2キャリッジに設けられ、
前記造形ヘッドから前記バインダを吐出するとき、前記第1キャリッジと前記第2キャリッジとは連結され、かつ、前記粉末除去部材が前記三次元造形物の周囲に位置する粉末材料を除去するとき、前記第1キャリッジと前記第2キャリッジとの連結は解除されるように構成されている、請求項1に記載の三次元造形装置。
前記制御装置は、前記造形された三次元造形物の位置情報に基づいて、前記造形された三次元造形物に対する前記含浸剤供給部材の移動経路を示す第2パスデータを作成する第2パスデータ作成部を更に備え、
前記第3制御部は、前記第2パスデータを用いて、前記含浸剤供給部材による前記含浸剤の吐出および前記含浸剤供給部材の移動を制御する、請求項10に記載の三次元造形装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、粉末材料にバインダを吐出することによって三次元造形物を造形する装置では、造形が完了した三次元造形物は粉末材料に埋もれている。このため、三次元造形物を堆積した粉末材料の中から掘り出す必要がある。作業者は、特定の工具を用いて粉末材料に空気を吹き付けたり、粉末材料を吸引したりすることによって三次元造形物を粉末材料の中から掘り出す。しかしながら、作業者は、堆積した粉末材料のどの位置に三次元造形物が埋まっているのかを正確に把握することができないため、作業者の不注意によって工具を三次元造形物に接触させてしまうことがある。造形されて粉末材料に埋もれている三次元造形物の硬度は十分に高くないため、造形された三次元造形物が破損してしまう虞がある。
【0006】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、粉末材料に埋もれている三次元造形物の周囲に位置する粉末材料を自動で除去することによって、三次元造形物を容易に取り出すことができる三次元造形装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る三次元造形装置は、粉末材料を硬化させて所定の断面形状の粉末硬化層を順次積層することによって三次元造形物を造形する三次元造形装置であって、粉末材料が収容される造形槽と、前記造形槽に供給される粉末材料が収容される粉末材料収容槽と、前記粉末材料収容槽に収容された粉末材料を前記造形槽に供給する供給部材と、前記造形槽に収容された粉末材料にバインダを吐出する造形ヘッドと、前記造形槽に収容された粉末材料を除去する粉末除去部材と、前記造形ヘッドおよび前記粉末除去部材を制御する制御装置と、を備えている。前記制御装置は、造形する三次元造形物を、所定の方向に連続する複数の層にスライスした断面画像データを記憶する記憶部と、前記断面画像データに基づいて、前記造形槽に収容された粉末材料に前記バインダを吐出するように前記造形ヘッドを制御する第1制御部と、前記三次元造形物の造形が完了した後に、前記断面画像データから把握される前記造形された三次元造形物の位置情報に基づいて、前記三次元造形物の周囲に位置する粉末材料を除去するように前記粉末除去部材を制御する第2制御部と、を備えている。
【0008】
本発明の三次元造形装置によれば、第1制御部は、断面画像データに基づいて造形ヘッドを制御し、造形槽に収容された粉末材料にバインダを吐出する。これにより、断面画像データに対応する所定の断面形状の粉末硬化層が順次積層され、三次元造形物が造形される。さらに、第2制御部は、三次元造形物の造形が完了した後に、粉末除去部材を制御し、三次元造形物の周囲に位置する粉末材料を除去する。ここで、三次元造形物の造形が完了した後、三次元造形物は粉末材料に埋もれているが、三次元造形物を造形する際に用いた断面画像データによって、三次元造形物の位置情報は把握することができる。即ち、堆積した粉末材料のどの位置に三次元造形物が埋もれているのかを把握することができる。このため、第2制御部は、三次元造形物の位置情報に基づいて、粉末除去部材を三次元造形物に接触させることなく、造形された三次元造形物の周囲に位置する粉末材料を除去するように粉末除去部材を制御することができる。このように、本発明の三次元造形装置によれば、造形された三次元造形物の周囲に位置する粉末材料を粉末除去部材によって自動で除去することができ、作業者は、粉末材料に埋もれた三次元造形物を容易に取り出すことができる。なお、特許文献2には、造形された硬化層が所定の数になったときに、切削が必要な部分の周囲に位置する粉末材料のみを取り除く技術が開示されている。すなわち、特許文献2に開示された技術は、切削作業の加工経路の情報に基づいて、切削が必要な部分に位置する粉末材料のみを取り除くものであって、三次元造形物を堆積した粉末材料から取り出すことを容易にするために、三次元造形物の周囲に位置する粉末材料を排除するものではない。
【0009】
本発明の一態様によれば、前記制御装置は、前記造形された三次元造形物の位置情報に基づいて、前記造形された三次元造形物に対する前記粉末除去部材の移動経路を示す第1パスデータを作成する第1パスデータ作成部を更に備え、前記第2制御部は、前記第1パスデータを用いて、前記粉末除去部材による前記粉末材料の除去および前記粉末除去部材の移動を制御する。
【0010】
上記態様によれば、造形された三次元造形物の周囲に位置する粉末材料をより確実に除去することができる。
【0011】
本発明の一態様によれば、所定方向に移動可能な第1キャリッジと、前記第1キャリッジを移動させる駆動機構と、前記第1キャリッジと連結可能に構成され、前記所定方向に移動可能な第2キャリッジとを備え、前記粉末除去部材は、前記第1キャリッジに設けられ、前記造形ヘッドは、前記第2キャリッジに設けられ、前記造形ヘッドから前記バインダを吐出するとき、前記第1キャリッジと前記第2キャリッジとは連結され、かつ、前記粉末除去部材が前記三次元造形物の周囲に位置する粉末材料を除去するとき、前記第1キャリッジと前記第2キャリッジとの連結は解除されるように構成されている。
【0012】
上記態様によれば、造形ヘッドからバインダを吐出するときには、第1キャリッジと第2キャリッジとは連結されているため、造形ヘッドのみを動かす駆動機構が不要となる。また、第1キャリッジと第2キャリッジとの連結を解除することができる。このため、粉末除去部材が粉末材料を除去しているときに、粉末材料が造形ヘッドに飛散しないように造形ヘッドのみを所定の位置に配置させることができる。
【0013】
本発明の一態様によれば、粉末材料が配置される造形テーブルと、前記造形テーブルを上下方向に移動させる昇降装置と、を更に備え、前記造形ヘッドの下端の上下方向の位置と前記粉末除去部材の下端の上下方向の位置とは同じである。
【0014】
上記態様によれば、三次元造形物を造形するときのテーブルの上下方向の移動量と、粉末材料を除去するときのテーブルの上下方向の移動量とを共通化することができる。このため、粉末除去部材を上下方向に移動させる機構が不要となる。
【0015】
本発明の一態様によれば、前記粉末除去部材は、前記三次元造形物の周囲に位置する粉末材料を吸引する吸引部を備えている。
【0016】
上記態様によれば、吸引部によって、三次元造形物の周囲に位置する粉末材料を吸引し、粉末材料を除去することができる。
【0017】
本発明の一態様によれば、前記粉末除去部材は、前記三次元造形物の周囲に位置する粉末材料を吹き飛ばす空気を送出する開口部を備えたブロア部を備えている。
【0018】
上記態様によれば、ブロア部の開口部から送出された空気によって、三次元造形物の周囲に位置する粉末材料を吹き飛ばし、粉末材料を除去することができる。
【0019】
本発明の一態様によれば、前記ブロア部には、ヒータが設けられ、前記開口部から送出される空気は、前記ヒータによって暖められる。
【0020】
上記態様によれば、三次元造形物の周囲に位置する粉末材料を除去しながら、三次元造形物を乾燥させることができる。三次元造形物を乾燥させることによって三次元造形物自体の硬度が高くなる。また、三次元造形物の周囲に位置する粉末材料が水分を多く含んでいる場合、粉末材料の除去に時間を要するが、粉末材料も同時に乾燥されるため、粉末材料の除去が容易となる。さらに、例えば、三次元造形物に含浸剤を吐出するときには含浸剤がよりよく含浸するため、三次元造形物の硬度がより高くなる。
【0021】
本発明の一態様によれば、前記粉末材料の種類は前記記憶部に記憶され、前記制御装置は、前記記憶部に記憶された前記粉末材料の種類に基づいて、前記ブロア部から送出される空気の量を調整する調整部を更に備えている。
【0022】
上記態様によれば、粉末材料の種類に基づいて、ブロア部から送出される空気の量が調整されるため、空気の量が多すぎることによる三次元造形物の破損等を防止することができる。また、造形された三次元造形物の硬度が比較的高いときには、空気の量を多くすることによって粉末材料の除去をより速く行うことができる。
【0023】
本発明の一態様によれば、前記開口部は、その開口方向を変更可能に構成されている。
【0024】
上記態様によれば、開口部の開口方向を変更することによって、空気を当てることが困難な部分にも空気を送出することができる。この結果、三次元造形物の周囲に位置する粉末材料をより確実に除去することができる。
【0025】
本発明の一態様によれば、前記開口部は、その開口面積を変更可能に構成されている。
【0026】
上記態様によれば、例えば、三次元造形物の形状が単純な部分では、開口部の開口面積を大きくすることで広範囲に空気を送出して粉末材料を除去すると共に、三次元造形物の形状が複雑な部分では、開口部の開口面積を小さくすることで狭い範囲に空気を送出して細かい部分に位置する粉末材料をより確実に除去することができる。
【0027】
本発明の一態様によれば、前記三次元造形物に含浸剤を供給する含浸剤供給部材を備え、前記制御装置は、前記三次元造形物の周囲に位置する粉末材料が除去された後に、前記造形された三次元造形物の位置情報に基づいて、前記三次元造形物に含浸剤を吐出するように前記含浸剤供給部材を制御する第3制御部を更に備えている。
【0028】
上記態様によれば、第3制御部は、三次元造形物の周囲に位置する粉末材料が除去された後に、含浸剤供給部材を制御し、三次元造形物に含浸剤を吐出する。含浸剤を三次元造形物に吐出することによって、三次元造形物の硬度は高くなる。ここで、三次元造形物を造形する際に用いた断面画像データによって、粉末材料が除去された三次元造形物の位置情報は把握することができる。このため、第3制御部は、三次元造形物の位置情報に基づいて、含浸剤供給部材を三次元造形物に接触させることなく、三次元造形物に含浸剤を吐出するように含浸剤供給部材を制御することができる。このように、本態様の三次元造形装置によれば、含浸剤供給部材によって、三次元造形物に自動で含浸剤を吐出することができる。
【0029】
本発明の一態様によれば、前記制御装置は、前記造形された三次元造形物の位置情報に基づいて、前記造形された三次元造形物に対する前記含浸剤供給部材の移動経路を示す第2パスデータを作成する第2パスデータ作成部を更に備え、前記第3制御部は、前記第2パスデータを用いて、前記含浸剤供給部材による前記含浸剤の吐出および前記含浸剤供給部材の移動を制御する。
【0030】
上記態様によれば、三次元造形物に含浸剤をより確実に供給することができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、粉末材料に埋もれている三次元造形物の周囲に位置する粉末材料を自動で除去することによって、三次元造形物を容易に取り出すことができる。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係る三次元造形装置について説明する。なお、ここで説明される実施形態は、当然ながら特に本発明を限定することを意図したものではない。また、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付し、重複する説明は適宜省略または簡略化する。
【0034】
図1は、本実施形態に係る三次元造形装置10の斜視図である。
図2は、三次元造形装置10の正面図である。
図3は、
図1中のIII‐III線に沿う断面図である。なお、図面中の符号F、Re、L、R、Up、Dnは、それぞれ前、後、左、右、上、下を示している。ただし、これらは説明の便宜上の方向に過ぎず、三次元造形装置10の設置態様を何ら限定するものではない。
【0035】
三次元造形装置10は、フルカラーの三次元造形物を造形する装置である。三次元造形装置10は、三次元造形物の断面形状を表すフルカラーの断面画像データに基づいて、粉末材料にバインダを吐出し、粉末材料を硬化させて、断面画像データに沿った断面形状の粉末材料の粉末硬化層を順次積層することによって、フルカラーの三次元造形物を造形する装置である。ここで、「断面形状」とは、造形する三次元造形物を所定の方向(例えば上下方向)に所定の厚み(例えば0.1mm。なお、所定の厚みは必ずしも一定の厚みに限られない。)ごとにスライスしたときの断面の形状である。「粉末材料」としては、例えば、石膏、セラミックス、金属、プラスチック等が挙げられる。「バインダ」は、上記粉末材料同士を固着することが可能な材料であれば特に限定されない。バインダとして、例えば、水性顔料インク等の水を主成分とした液体が挙げられる。
【0036】
図1に示すように、三次元造形装置10は、筐体12と、蓋部材14(
図2参照)と、移動部20と、プリントキャリッジ30と、デパウダキャリッジ40と、含浸キャリッジ50と、造形部60と、粉末材料供給部70と、制御装置80とを備えている。
【0037】
図1に示すように、筐体12は、直方体形状に形成されている。筐体12は、移動部20と造形部60と粉末材料供給部70とが設けられた第1筐体12Aと、カートリッジ収容部24が設けられた第2筐体12Bとを有している。
図2に示すように、第1筐体12Aには、移動部20と造形部60(
図1参照)と粉末材料供給部70(
図1参照)とを覆う蓋部材14が着脱自在に設けられている。蓋部材14を第1筐体12Aに取り付けることによって、移動部20と造形部60と粉末材料供給部70とは、外部空間と遮断されて閉状態となる。即ち、第1筐体12Aと蓋部材14とによって、内部空間15が形成される。蓋部材14を第1筐体12Aから取り外すことによって、移動部20と造形部60と粉末材料供給部70とは、外部空間と連通して開状態となる。なお、蓋部材14は、第1筐体12Aに対して開閉自在に設けてもよい。
図1および3において、便宜上、蓋部材14の図示を省略している。
【0038】
図1に示すように、筐体12は、一対のガイドレール25L、25Rを備えている。ガイドレール25L、25Rは、第1筐体12Aに設けられている。ガイドレール25L、25Rは、前後方向に延びる。筐体12は、カートリッジ収容部24を備えている。カートリッジ収容部24は、第2筐体12Bに設けられている。カートリッジ収容部24には、含浸剤カートリッジ24K、バインダカートリッジ24Bおよびインクカートリッジ24Iが収容される。
【0039】
図1に示すように、移動部20は、第1筐体12Aに設けられている。移動部20は、第1筐体12Aに設けられたガイドレール25L、25Rにスライド自在に配置されている。移動部20は、前後方向に移動する。移動部20は、駆動機構20A(
図2参照)によって、前後方向に移動する。駆動機構20Aは、移動部20を移動させる。駆動機構20Aは、第1筐体12Aに設けられている。移動部20は、左壁21Lと右壁21Rと中央壁21Cとを備えている。左壁21Lは、前後方向に延びる。右壁21Rは、前後方向に延びる。左壁21Lは、ガイドレール25Lにスライド自在に配置されている。右壁21Rは、ガイドレール25Rにスライド自在に配置されている。中央壁21Cは、左右方向に延びる。中央壁21Cは、左壁21Lと右壁21Rとを連結する。中央壁21Cには、左右方向に延びるガイドレール23が設けられている。本実施形態では、
図1に示すように、移動部20がガイドレール25L、25Rの後端に位置している状態を、「移動部20が原点位置に位置する」とする。
【0040】
図2に示すように、移動部20は、右壁21Rの左方に設けられたヘッド待機部22Rと、左壁21Lの右方に設けられたヘッド待機部22Lとを備えている。プリントキャリッジ30およびデパウダキャリッジ40がヘッド待機部22Lの上方に位置するとき、プリントキャリッジ30およびデパウダキャリッジ40は、ヘッド待機部22Lに設けられたヘッドクリーニング機構(図示せず)と対向する。ヘッドクリーニング機構は、キャップ機構(図示せず)およびワイパー機構(図示せず)を備えている。後述の造形ヘッド32、インクヘッド34および粉末除去部材41がヘッド待機部22Lの上方に位置するとき、造形ヘッド32の下端部32B、インクヘッド34の下端34Bおよび粉末除去部材41の下端41Bは、必要に応じてクリーニング機構によってクリーニングされる。また、後述の含浸キャリッジ50がヘッド待機部22Rの上方に位置するとき、含浸キャリッジ50は、ヘッド待機部22Rに設けられたヘッドクリーニング機構(図示せず)と対向する。ヘッドクリーニング機構は、キャップ機構(図示せず)およびワイパー機構(図示せず)を備えている。後述の含浸剤供給部51がヘッド待機部22Rの上方に位置するとき、含浸剤供給部51の下端部51Bは、必要に応じてクリーニング機構によってクリーニングされる。
【0041】
図1に示すように、造形部60は、筐体12の第1筐体12Aに設けられている。造形部60は、ガイドレール25Lとガイドレール25Rとの間に配置されている。造形部60では、三次元造形物5が造形される。
図3に示すように、造形部60は、造形槽61と、造形テーブル62と、テーブル昇降装置63とを備えている。造形槽61内には、粉末材料8が収容される。粉末材料8は、粉末材料供給部70から供給される。造形槽61において、造形テーブル62上に粉末硬化層5Aが積層され、三次元造形物5が造形される。造形テーブル62は、造形槽61内を上下方向に移動する。造形テーブル62は、テーブル昇降装置63と連結している。テーブル昇降装置63は、造形テーブル62を上下方向に移動させる。造形テーブル62上に、1層の粉末硬化層5Aが形成されると、テーブル昇降装置63は、造形テーブル62を下方に移動させる。テーブル昇降装置63は、粉末硬化層5Aの一層分の厚みだけ造形テーブル62を下方に移動させる。なお、
図1では、便宜上、粉末材料8の図示を省略している。
【0042】
図1に示すように、粉末材料供給部70は、筐体12の第1筐体12Aに設けられている。粉末材料供給部70は、ガイドレール25Lとガイドレール25Rとの間に配置されている。粉末材料供給部70は、造形部60に粉末材料8(
図3参照)を供給する。
図3に示すように、粉末材料供給部70は、粉末材料収容槽71と、供給テーブル72と、テーブル昇降装置73と、供給ローラ75と、を備えている。粉末材料収容槽71は、造形槽61より後方に配置されている。粉末材料収容槽71は、造形槽61に隣接している。粉末材料収容槽71には、粉末材料8が収容される。粉末材料収容槽71に収容された粉末材料8は、造形槽61に供給される。供給テーブル72は、粉末材料収容槽71内を上下方向に移動する。供給テーブル72は、テーブル昇降装置73と連結している。テーブル昇降装置73は、供給テーブル72を上下方向に移動させる。粉末材料収容槽71から造形槽61に粉末材料8が供給されると、テーブル昇降装置73は、供給テーブル72を上方に移動させる。このとき、供給テーブル72を上方に移動させるときの移動量は、造形テーブル62を下方に移動させるときの移動量と同じである。テーブル昇降装置73は、粉末硬化層5Aの一層分の厚みだけ供給テーブル72を上方に移動させる。
【0043】
図1に示すように、供給ローラ75は、粉末材料収容槽71に収容された粉末材料8(
図3参照)を、造形槽61に供給する供給部材である。供給ローラ75の右端は、移動部20の右壁21Rに接続している。供給ローラ75の左端は、移動部20の左壁21Lに接続している。供給ローラ75は、移動部20の移動に伴って粉末材料収容槽71および造形槽61上を前後方向に移動する。
図3に示すように、供給ローラ75が粉末材料8を造形槽61に供給するとき、供給ローラ75は、粉末材料収容槽71より後方に位置する。供給ローラ75は、粉末材料収容槽71に対して造形槽61と反対側に配置される。このとき、テーブル昇降装置73は、粉末硬化層5Aの一層分の厚みだけ供給テーブル72を上方に移動させる。そして、供給ローラ75が、前方に移動することによって、粉末材料収容槽71内の粉末材料8が造形槽61内に供給される。造形槽61内に収容しきれなかった粉末材料8は、筐体12に設けられた余剰粉収容槽78に収容される。余剰粉収容槽78は、造形槽61より前方に配置されている。余剰粉収容槽78は、造形槽61に隣接している。なお、本実施形態の供給ローラ75は、移動部20の移動に伴って前後方向に移動するが、駆動機構20Aとは別途に設けた駆動機構によって移動部20の移動に連動せずに単独で前後方向に移動するように構成されていてもよい。
【0044】
図1に示すように、プリントキャリッジ30は、移動部20に設けられている。プリントキャリッジ30は、移動部20に設けられたガイドレール23にスライド自在に配置されている。プリントキャリッジ30は、左右方向に移動する。プリントキャリッジ30は、デパウダキャリッジ40と連結可能に構成されている。
図2に示すように、プリントキャリッジ30は、造形ヘッド32とインクヘッド34とを備えている。造形ヘッド32およびインクヘッド34は、プリントキャリッジ30を介してガイドレール23にスライド自在に配置されている。本実施形態では、造形ヘッド32とインクヘッド34とはプリントキャリッジ30に設けられているが、それぞれ別体のプリントキャリッジに設けてもよい。
【0045】
造形ヘッド32は、造形槽61に収容された粉末材料8にバインダを吐出する。造形ヘッド32は、造形槽61に収容された粉末材料8のうち、フルカラーの断面画像データに沿った断面形状に対応する領域にバインダを吐出する。造形ヘッド32は、バインダを吐出するノズル(図示せず)を備えている。ノズルは、カートリッジ収容部24に収容されたバインダカートリッジ24B(
図2参照)に接続されている。造形ヘッド32の下端32Bの上下方向の位置と粉末除去部材41の下端41Bの上下方向の位置とは同じである。
【0046】
インクヘッド34は、バインダが吐出されて硬化した粉末硬化層5A(
図3参照)上にインクを吐出する。インクヘッド34は、フルカラーの断面画像データに基づいた色のインクを粉末硬化層5Aに吐出する。インクヘッド34は、インクを吐出するノズル(図示せず)を備えている。ノズルは、カートリッジ収容部24に収容されたインクカートリッジ24I(
図2参照)に接続されている。
【0047】
図1に示すように、デパウダキャリッジ40は、移動部20に設けられている。デパウダキャリッジ40は、プリントキャリッジ30より右方に配置されている。デパウダキャリッジ40は、移動部20に設けられたガイドレール23にスライド自在に配置されている。デパウダキャリッジ40は、左右方向に移動する。デパウダキャリッジ40は、駆動機構40A(
図2参照)によって、左右方向に移動する。駆動機構40Aは、デパウダキャリッジ40を移動させる。駆動機構40Aは、移動部20に設けられている。デパウダキャリッジ40は、粉末除去部材41を備えている。粉末除去部材41は、造形槽61に収容された粉末材料8(
図3参照)を除去する。粉末材料8の除去は、蓋部材14(
図2参照)を第1筐体12Aに取り付けた閉状態で行われる。
【0048】
図1に示すように、粉末除去部材41は、バキューム/ブロア部42を備えている。バキューム/ブロア部42は、円筒状に形成されている。バキューム/ブロア部42は、後述の集塵装置26に設けられた図示しないファンまたはコンプレッサ(以下、これらを総称して単に「ファン」とする。)によって空気が送り込まれたり吸引された粉末材料8を排出したりする第1開口部42Hを備えている。バキューム/ブロア部42は、粉末材料8を吸引したり、バキューム/ブロア部42に送り込まれた空気を外部に送出したりする第2開口部42Aを備えている。第2開口部42Aは、下方に向けて開口している。粉末除去部材41は、三次元造形物5の周囲に位置する粉末材料8を第2開口部42Aから吸引する。粉末除去部材41は、三次元造形物5の周囲に位置する粉末材料8を吸引することによって、粉末材料8を除去する。粉末除去部材41は、第2開口部42Aから送出された空気によって、三次元造形物5の周囲に位置する粉末材料8を吹き飛ばす。粉末除去部材41は、三次元造形物5の周囲に位置する粉末材料8を吹き飛ばすことによって、粉末材料8を除去する。なお、第2開口部42Aが斜めや横方向を向くように、バキューム/ブロア部42を傾斜可能に構成してもよい。また、上下方向に延びるバキューム/ブロア部42の中心軸42Z(
図2参照)を中心にしてバキューム/ブロア部42を回転可能に構成させてもよい。また、開口部42Aの開口面積を変更可能に構成してもよい。
【0049】
三次元造形物5の造形終了後、三次元造形物5は、造形に使われずに造形槽61内に残った粉末材料8に埋もれている。粉末除去部材41は、三次元造形物5の造形終了後、造形に使われずに造形層61内に残った粉末材料8を取り除く。これにより、三次元造形物5を容易に取り出すことができる。粉末除去部材41は、空気を吸引することによって、三次元造形物5の周囲の粉末材料8を吸い取る。粉末除去部材41は、空気を吹き出すことによって、三次元造形物5の周囲の粉末材料8を吹き飛ばす。集塵装置26のファンの回転方向を切替えることによって、バキューム/ブロア部42から空気を吹き出したり、バキューム/ブロア部42に空気を吸い込んだりする。通常は、粉末除去部材41は、まず三次元造形物5の周囲の粉末材料8をおおよそ吸い取り、次に、三次元造形物5に付着して残った粉末材料8を吹き飛ばす。これにより、三次元造形物5の周囲に位置する粉末材料8が除去される。粉末除去部材41は、三次元造形物5の造形データを使い、造形層61の外郭部から造形データに向かって、粉末材料8を除去するために最適な位置、すなわち、粉末除去部材41の下端41Bが三次元造形物5の表面から適度なオフセット位置になるように、粉末除去部材41を移動して粉末材料8の除去を行う。粉末除去部材41のオフセット位置は、三次元造形物5の造形データに基づいて設定されるため、粉末材料8の除去時に粉末除去部材41が三次元造形物5に当たって、三次元造形物5の表面に傷をつけたりすることはない。本実施形態では、粉末除去部材41は、粉末材料8の吸引と、粉末材料8の吹き飛ばしを行っているが、いずれか一方のみであってもよい。
【0050】
図1に示すようにバキューム/ブロア部42には、ヒータ43が設けられている。バキューム/ブロア部42から送出される空気は、ヒータ43によって暖められる。暖められた空気は、三次元造形物5の乾燥を促進する。ヒータ43は、バキューム/ブロア部42に設けられているため、デパウダキャリッジ40および移動部20を三次元造形物5の表面付近に移動させることによって、三次元造形物5の所望の位置を乾燥させることができる。ヒータ43としては、例えば、ニクロム線が挙げられる。
【0051】
プリントキャリッジ30およびデパウダキャリッジ40は、互いに連結可能に構成されている。造形ヘッド32からバインダを吐出するときおよびインクヘッド34からインクを吐出するとき、プリントキャリッジ30とデパウダキャリッジ40とは連結されるように構成されている。造形ヘッド32からバインダを吐出するときおよびインクヘッド34からインクを吐出するとき、プリントキャリッジ30とデパウダキャリッジ40とは一体となって移動する。一方、粉末除去部材41が三次元造形物5の周囲に位置する粉末材料8を除去するとき、プリントキャリッジ30とデパウダキャリッジ40との連結は解除されるように構成されている。粉末除去部材41が三次元造形物5の周囲に位置する粉末材料8を除去するとき、デパウダキャリッジ40は単独で移動し、プリントキャリッジ30はヘッド待機部22L上に待機している。なお、プリントキャリッジ30に、プリントキャリッジ30を移動させる駆動機構を設けることによって、造形ヘッド32からバインダを吐出するときおよびインクヘッド34からインクを吐出するとき、プリントキャリッジ30とデパウダキャリッジ40との連結を解除し、プリントキャリッジ30を単独で移動させるようにしてもよい。
【0052】
図1に示すように、含浸キャリッジ50は、移動部20に設けられている。含浸キャリッジ50は、デパウダキャリッジ40より右方に配置されている。含浸キャリッジ50は、移動部20に設けられたガイドレール23にスライド自在に配置されている。含浸キャリッジ50は、左右方向に移動する。含浸キャリッジ50は、駆動機構50A(
図2参照)によって、左右方向に移動する。駆動機構50Aは、含浸キャリッジ50を移動させる。駆動機構50Aは、移動部20に設けられている。含浸キャリッジ50は、含浸剤供給部材51を備えている。含浸剤供給部材51は、造形テーブル62上に造形された三次元造形物5に含浸剤を吐出する。含浸剤供給部材51は、カートリッジ収容部24に収容された含浸剤カートリッジ24K(
図2参照)に接続されている。含浸キャリッジ50は、造形ヘッド32がバインダを吐出するとき、インクヘッド34がインクを吐出するときおよび粉末除去部材41が粉末材料8を除去するときには、ヘッド待機部22R上に待機している。「含浸剤」は、粉末材料8にバインダが吐出されて硬化した粉末硬化層5Aをより硬化させることが可能な材料である。含浸剤としては、例えば、シアノアクリレート等の接着剤、蝋、食塩水等が挙げられる。なお、含浸キャリッジ50は、デパウダキャリッジ40と連結可能に構成されていてもよい。
【0053】
図1に示すように、三次元造形装置10は、集塵装置26を備えている。集塵装置26は、バキューム/ブロア部42によって第2開口部42Aから吸引された粉末材料8を蓄積する。集塵装置26は、三次元造形装置10の内部空間15(
図2参照)内を浮遊する粉末材料8(
図3参照)を吸引する。粉末材料8は、バキューム/ブロア部42の開口部42Aから送出された空気によって吹き飛ばされて内部空間15内を浮遊する。集塵装置26は、第2筐体12Bの内部に配置されている。集塵装置26には、第1パイプ27Aが連結されている。第1パイプ27Aは、第1筐体12Aに設けられた開口12Gに連結されている。内部空間15内を浮遊する粉末材料8は、開口12Gおよび第1パイプ27Aを介して集塵装置26に吸引される。集塵装置26には、第2パイプ27Bが連結されている。第2パイプ27Bは、バキューム/ブロア部42の第1開口部42Hに連結されている。粉末材料8は、第1開口部42Hおよび第2パイプ27Bを介して集塵装置26に吸引される。吸引された粉末材料8は、集塵装置26に隣接する余剰粉収容槽28に送られる。なお、集塵装置26は、ファンの回転方向を変更することによって、バキューム/ブロア部42に空気を送り込んだり、バキューム/ブロア部42から空気を吸引したりする。集塵装置26は、図示しない他のファンによって、内部空間15内を浮遊する粉末材料8を吸引する。
【0054】
図4に示すように、制御装置80は、記憶部80Aと、第1制御部81と、第2制御部82と、第3制御部83と、第4制御部84と、第5制御部85と、第6制御部86と、第7制御部87と、第1パスデータ作成部91と、第2パスデータ作成部92と、調整部93とを備えている。制御装置80の構成は特に限定されない。例えば、制御装置80は、コンピュータであり、中央演算処理装置(以下、CPUという。)と、CPUが実行するプログラムなどを格納したROMと、RAMなどを備えていてもよい。
【0055】
記憶部80Aは、造形槽61および粉末材料収容槽71に収容される粉末材料8の種類を記憶する。記憶部80Aは、造形する三次元造形物5を、所定の方向に連続する複数の層にスライスした断面画像データを記憶する。記憶部80Aは、断面画像データから把握される造形された三次元造形物5の位置情報を記憶する。本実施形態では、断面画像データは、フルカラーの断面画像データである。記憶部80Aは、後述の第1パスデータおよび第2パスデータの作成を実行するためのプログラム並びにこれらの処理に用いる各種データを予め記憶している。ここで、三次元造形物5の位置情報とは、例えば、三次元造形物5の原点情報と、その原点情報を基準にした三次元造形物5の表面形状を表す外形情報との両方を含む。三次元造形物5の位置情報とは、例えば、三次元造形物5の表面形状に基づいた三次元座標データである。
【0056】
第1制御部81は、造形ヘッド32からのバインダの吐出を制御する。第1制御部81は、プリントキャリッジ30とデパウダキャリッジ40とを連結させる。第1制御部81は、駆動機構40A(
図2参照)を制御することによって、デパウダキャリッジ40の移動を制御する。第1制御部81は、デパウダキャリッジ40の移動を制御することによって、デパウダキャリッジ40に連結されたプリントキャリッジ30の移動を制御する。即ち、第1制御部81は、造形ヘッド32の移動を制御する。第1制御部81は、記憶部80Aに記憶された断面画像データに基づいて、造形槽61に収容された粉末材料8にバインダを吐出するように造形ヘッド32を制御する。
【0057】
第2制御部82は、粉末除去部材41による粉末材料8の除去を制御する。第2制御部82は、プリントキャリッジ30とデパウダキャリッジ40との連結を解除する。第2制御部82は、駆動機構40A(
図2参照)を制御することによって、デパウダキャリッジ40の移動を制御する。即ち、第2制御部82は、粉末除去部材41の移動を制御する。第2制御部82は、三次元造形物5の造形が完了した後に、断面画像データから把握される造形された三次元造形物5の位置情報に基づいて、三次元造形物の周囲に位置する粉末材料を除去するように粉末除去部材41を制御する。第2制御部82は、後述の第1パスデータを用いて、粉末除去部材41による粉末材料8の除去および粉末除去部材41の移動を制御する。
【0058】
第3制御部83は、含浸剤供給部材51からの含浸剤の吐出を制御する。第3制御部83は、駆動機構50A(
図2参照)を制御することによって、含浸キャリッジ50の移動を制御する。即ち、第3制御部83は、含浸剤供給部材51の移動を制御する。第3制御部83は、三次元造形物5の周囲に位置する粉末材料8が除去された後に、造形された三次元造形物5の位置情報に基づいて、三次元造形物5に含浸剤を供給するように含浸剤供給部材51を制御する。第3制御部83は、後述の第2パスデータを用いて、含浸剤供給部材51による含浸剤の吐出および含浸剤供給部材51の移動を制御する。
【0059】
第4制御部84は、記憶部80Aに記憶された断面画像データに基づいて、造形テーブル62上に形成された粉末硬化層5Aに所定のインクを吐出するようにインクヘッド34を制御する。第4制御部84は、インクヘッド34からのインクの吐出を制御する。第4制御部84は、駆動機構40A(
図2参照)を制御することによって、デパウダキャリッジ40の移動を制御する。第4制御部84は、デパウダキャリッジ40の移動を制御することによって、デパウダキャリッジ40に連結されたプリントキャリッジ30の移動を制御する。即ち、第4制御部84は、インクヘッド34の移動を制御する。
【0060】
第5制御部85は、記憶部80Aに記憶された断面画像データに基づいて、駆動機構20A(
図2参照)を駆動することによって、移動部20および供給ローラ75を前後方向に移動させる。
【0061】
第6制御部86は、テーブル昇降装置63を駆動することによって、造形テーブル62を上方または下方に移動させる。
【0062】
第7制御部87は、テーブル昇降装置73を駆動することによって、供給テーブル72を上方または下方に移動させる。
【0063】
第1パスデータ作成部91は、造形された三次元造形物5の位置情報に基づいて、造形された三次元造形物5に対する粉末除去部材41の移動経路を示す第1パスデータを作成する。作成された第1パスデータは、記憶部80Aに記憶される。本実施形態では、第1パスデータ作成部91は、粉末材料8を吸引するときの三次元造形物5に対する粉末除去部材41の移動経路を示す第1パスデータAと、粉末材料8を吹き飛ばすときの三次元造形物5に対する粉末除去部材41の移動経路を示す第1パスデータBとを作成する。
【0064】
第2パスデータ作成部92は、造形された三次元造形物5の位置情報に基づいて、造形された三次元造形物5に対する含浸剤供給部材51の移動経路を示す第2パスデータを作成する。作成された第2パスデータは、記憶部80Aに記憶される。
【0065】
調整部93は、記憶部80Aに記憶された粉末材料8の種類に基づいて、バキューム/ブロア部42から送出される空気の量やバキューム/ブロア部42に吸引される空気の量を調整する。「粉末材料8の種類に基づく」とは、粉末材料8の性状(例えば、比重、水分含有量)に基づくことを意味する。調整部93は、集塵装置26の図示しないファンの回転速度を調整する。「空気の量」は、例えば、単位時間当たりの空気流量(l/s)である。調整部93は、粉末材料8の比重が高い場合には空気の量を増やす。調整部93は、粉末材料8の比重が第1比重の場合は、空気の量を第1の量とする。調整部93は、粉末材料8の比重が第1比重よりも高い第2比重の場合には、空気の量を第1の量よりも多い第2の量とする。調整部93は、粉末材料8の水分含有量が多いほど空気の量を増やす。調整部93は、粉末材料8の水分含有量が第1含有量の場合は、空気の量を第3の量とする。調整部93は、粉末材料8の水分含有量が第1含有量よりも多い第2含有量の場合は、空気の量を第3の量よりも多い第4の量とする。
【0066】
図5は、三次元造形物5を造形する手順を示したフローチャートである。以下、三次元造形物5を造形する手順について説明する。
【0067】
まず、ステップS10では、粉末材料収容槽71から造形槽61に粉末材料8が供給される。即ち、
図1に示すように、移動部20が原点位置に位置し、プリントキャリッジ30およびデパウダキャリッジ40がヘッド待機部22Lの上方に位置し、かつ、含浸キャリッジ50がヘッド待機部22Rの上方に位置した状態で、第7制御部87がテーブル昇降装置73を駆動し、粉末硬化層5Aの一層分の厚みだけ供給テーブル72を上方に移動させる。その後、第5制御部85が駆動機構20Aを駆動することによって、移動部20および供給ローラ75を前後方向に移動させる。これにより、供給テーブル72上の粉末材料8は、造形槽61に供給される。
【0068】
次に、ステップS20では、造形ヘッド32は、造形槽61に収容された粉末材料8にバインダを吐出する。即ち、まず、第1制御部81がプリントキャリッジ30とデパウダキャリッジ40とを連結させる。そして、記憶部80Aに記憶された断面画像データに基づいて、第1制御部81がデパウダキャリッジ40の移動を制御すると共に第5制御部85が移動部20の移動を制御することによって、造形ヘッド32の移動が制御され、造形ヘッド32から粉末材料8の所定の位置にバインダが吐出される。これにより、粉末硬化層5Aが造形テーブル62上または先に造形された粉末硬化層5A上に積層される。
【0069】
次に、ステップS30では、インクヘッド34は、造形された粉末硬化層5A上にインクを吐出する。即ち、記憶部80Aに記憶された断面画像データに基づいて、第4制御部84がデパウダキャリッジ40の移動を制御すると共に第5制御部85が移動部20の移動を制御することによって、インクヘッド34の移動が制御され、インクヘッド34から粉末硬化層5Aの所定の位置にインクが吐出される。
【0070】
次に、ステップS40では、第6制御部86がテーブル昇降装置63を駆動し、粉末硬化層5Aの一層分の厚みだけ造形テーブル62を下方に移動させる。第5制御部85が移動部20の移動を制御し、移動部20を原点位置に位置させる。
【0071】
ステップS50では、制御装置80は、三次元造形物5の造形が終了したか否かを判定する。ステップS50において、三次元造形物5の造形が完了したと判定された場合、ステップS60に進む。一方、三次元造形物5の造形が完了していないと判定された場合、ステップS10に戻る。
図6に示すように、造形が完了した三次元造形物5は、粉末材料8に埋もれている。
【0072】
ステップS60では、粉末除去部材41は、三次元造形物5の周囲に位置する粉末材料8を除去する。即ち、まず、第2制御部82がプリントキャリッジ30とデパウダキャリッジ40との連結を解除する。そして、記憶部80Aに記憶された第1パスデータAに基づいて、第2制御部82がデパウダキャリッジ40の移動を制御すると共に第5制御部85が移動部20の移動を制御することによって、粉末除去部材41の移動が制御される。さらに、第1パスデータAに基づいて、第6制御部86は、テーブル昇降装置63を駆動させて、造形テーブル62を上方に移動させる。記憶部80Aに記憶された粉末材料8の種類に基づいて、調整部93がバキューム/ブロア部42の第2開口部42Aに吸引される空気の量を調整する。
図7の矢印Uに示すように、造形槽61に残った粉末材料8は、第2開口部42Aから吸引される。第2開口部42Aに吸引された粉末材料8は、集塵装置26(
図1参照)に送られる。
【0073】
図8に示すように、第1パスデータAに基づいて、バキューム/ブロア部42が三次元造形物5の周囲に位置する粉末材料8を除去しても、部分的に粉末材料8が残る場合がある。そこで、次に、記憶部80Aに記憶された第1パスデータBに基づいて、第2制御部82がデパウダキャリッジ40の移動を制御すると共に第5制御部85が移動部20の移動を制御することによって、粉末除去部材41の移動が制御される。さらに、第1パスデータBに基づいて、第6制御部86は、テーブル昇降装置63を駆動させて、造形テーブル62を下方に移動させる。記憶部80Aに記憶された粉末材料8の種類に基づいて、調整部93がバキューム/ブロア部42の第2開口部42Aから送出される空気の量を調整する。
図9の矢印Dに示すように、第2開口部42Aから送出される空気によって粉末材料8が吹き飛ばされ、三次元造形物5の周囲に位置する粉末材料8が除去される。吹き飛ばされた粉末材料8は、開口部12G(
図1参照)から集塵装置26に吸引される。このとき、第2開口部42Aから送出される空気は、ヒータ43によって暖められているため、三次元造形物5の乾燥が促進される。
図9に示すように、三次元造形物5の周囲に位置する粉末材料8が全て除去される。
【0074】
ステップS70では、含浸剤供給部材51は、造形テーブル62上に造形された三次元造形物5に含浸剤を吐出する。即ち、記憶部80Aに記憶された第2パスデータに基づいて、第3制御部83が含浸キャリッジ50の移動を制御すると共に第5制御部85が移動部20の移動を制御することによって、含浸剤供給部材51の移動が制御され、含浸剤供給部材51から三次元造形物5に含浸剤9が吐出される(
図10参照)。さらに、第2パスデータに基づいて、第6制御部86は、テーブル昇降装置63を駆動させて、造形テーブル62を下方に移動させる。このようにして、強度が高められた三次元造形物5を得ることができる。
【0075】
以上のように、本実施形態では、第1制御部81は、断面画像データに基づいて造形ヘッド32を制御し、造形槽61に収容された粉末材料8にバインダを吐出する。これにより、断面画像データに対応する所定の断面形状の粉末硬化層5Aが順次積層され、三次元造形物5が造形される。さらに、第2制御部82は、三次元造形物5の造形が完了した後に、粉末除去部材41を制御し、三次元造形物5の周囲に位置する粉末材料8を除去する。ここで、三次元造形物5の造形が完了した後、三次元造形物5は粉末材料8に埋もれているが、三次元造形物5を造形する際に用いた断面画像データによって、三次元造形物5の位置情報は把握することができる。即ち、堆積した粉末材料8のどの位置に三次元造形物5が埋もれているのかを把握することができる。このため、第2制御部82は、三次元造形物5の位置情報に基づいて、粉末除去部材41を三次元造形物5に接触させることなく、造形された三次元造形物5の周囲に位置する粉末材料8を除去するように粉末除去部材41を制御することができる。このように、三次元造形装置10によれば、造形された三次元造形物5の周囲に位置する粉末材料8を粉末除去部材41によって自動で除去することができ、作業者は、粉末材料8に埋もれた三次元造形物5を容易に取り出すことができる。
【0076】
本実施形態では、第2制御部82は、第1パスデータ作成部91によって作成された第1パスデータを用いて、粉末除去部材41による粉末材料8の除去および粉末除去部材41の移動を制御する。これにより、造形された三次元造形物5の周囲に位置する粉末材料8をより確実に除去することができる。
【0077】
本実施形態では、造形ヘッド32からバインダを吐出するときには、プリントキャリッジ30とデパウダキャリッジ40とは連結されているため、造形ヘッド32のみを動かす駆動機構が不要となり三次元造形装置10の構造が簡素化する。また、プリントキャリッジ30とデパウダキャリッジ40との連結を解除することができる。このため、粉末除去部材41が粉末材料8を除去しているときに、粉末材料8が造形ヘッド32のノズルに付着しないように造形ヘッド32をヘッド待機部22L上に配置させることができる。
【0078】
本実施形態では、造形ヘッド32の下端32Bの上下方向の位置と粉末除去部材41の下端41Bの上下方向の位置とは同じである。このため、三次元造形物5を造形するときの造形テーブル62の上下方向の移動量と、粉末材料8を除去するときの造形テーブル62の上下方向の移動量とを共通化することができる。これにより、粉末除去部材41を上下方向に移動させる機構が不要となり、三次元造形装置10の構造が簡素化する。
【0079】
本実施形態では、バキューム/ブロア部42の第2開口部42Aから、先ず三次元造形物5の周囲に位置する粉末材料8を吸引し、さらに、第2開口部42Aから送出された空気によって、三次元造形物5の周囲に付着して残った粉末材料8を吹き飛ばし、粉末材料8を除去することができる。
【0080】
本実施形態では、第2開口部42Aから送出される空気は、ヒータ43によって暖められる。このため、三次元造形物5の周囲に位置する粉末材料8を除去しながら、三次元造形物5を乾燥させることができる。三次元造形物5を乾燥させることによって三次元造形物5自体の硬度が高くなる。また、三次元造形物5の周囲に位置する粉末材料8が水分を多く含んでいる場合、粉末材料8の除去に時間を要するが、粉末材料8も同時に乾燥されるため、粉末材料8の除去が容易となる。さらに、三次元造形物5に含浸剤を吐出するときには含浸剤がよりよく含浸するため、三次元造形物5の硬度がより高くなる。
【0081】
本実施形態では、粉末材料8の種類に基づいて、バキューム/ブロア部42から送出される空気の量が調整されるため、空気の量が多すぎることによる三次元造形物5の破損等を防止することができる。また、造形された三次元造形物5の硬度が比較的高いときには、空気の量を多くすることによって粉末材料8の除去をより速く行うことができる。
【0082】
本実施形態では、第3制御部83は、三次元造形物5の周囲に位置する粉末材料8が除去された後に、含浸剤供給部材51を制御し、三次元造形物5に含浸剤9を吐出する。含浸剤9を三次元造形物5に吐出することによって、三次元造形物5の硬度は高くなる。ここで、三次元造形物5を造形する際に用いた断面画像データによって、粉末材料8が除去された三次元造形物5の位置情報は把握することができる。このため、第3制御部83は、三次元造形物5の位置情報に基づいて、含浸剤供給部材51を三次元造形物5に接触させることなく、三次元造形物5に含浸剤9を吐出するように含浸剤供給部材51を制御することができる。このように、三次元造形装置10によれば、含浸剤供給部材51によって、三次元造形物5に自動で含浸剤9を吐出することができる。
【0083】
本実施形態では、第3制御部83は、第2パスデータ作成部92によって作成された第2パスデータを用いて、含浸剤供給部材51による含浸剤9の吐出および含浸剤供給部材51の移動を制御する。これにより、三次元造形物5に含浸剤9をより確実に供給することができる。
【0084】
図11は、第1の変形例に係る粉末除去部材141の断面図である。粉末除去部材141は、バキューム/ブロア部142を備えている。バキューム/ブロア部142は、円筒状に形成されている。バキューム/ブロア部142は、集塵装置(
図1参照)に設けられた図示しないファンから空気が送り込まれる第1開口部142Hと、空気が流通する空気流通路143と、バキューム/ブロア部142に送り込まれた空気を外部(
図11の矢印Xの方向)に送出する第2開口部142Aとを備えている。第1開口部142Hには、第2パイプ27Bが取り付けられており、第2パイプ27Bを介してファンからバキューム/ブロア部142に空気が送り込まれる。バキューム/ブロア部142は、一対の板状部材145A、145Bを備えている。板状部材145A、145Bは、第2開口部142Aの開口面積および開口方向を変更可能に構成されている。即ち、板状部材145A、145Bは、第2開口部142Aから送出される空気の流れる量および空気の流れる方向を変更可能に構成されている。板状部材145Aは、バキューム/ブロア部142に設けられた支持軸146Aに回動自在に取り付けられている。板状部材145Aは、支持軸146Aを中心にして
図11の矢印A1および矢印A2の方向に回動する。板状部材145Bは、バキューム/ブロア部142に設けられた支持軸146Bに回動自在に取り付けられている。板状部材145Bは、支持軸146Bを中心にして
図11の矢印B1および矢印B2の方向に回動する。第2開口部142Aは、板状部材145Aと板状部材145Bとの間に位置する。調整部93(
図4参照)は、板状部材145Aおよび145Bの回動を制御し、板状部材145Aおよび145Bの角度を調整する。なお、バキューム/ブロア部142における吸引については、上述した実施形態と同様であるため、その詳細な説明は省略する。
【0085】
図12に示すように、例えば、調整部93(
図4参照)が板状部材145Aを
図12の矢印A2の方向に回動させ、かつ、板状部材145Bを
図12の矢印B2の方向に回動させることによって、第2開口部142Aの開口方向を下向きとすると共に、第2開口部142Aの開口面積を小さくすることができる。また、
図13に示すように、例えば、調整部93が板状部材145Aを
図13の矢印A1の方向に回動させ、かつ、板状部材145Bを
図13の矢印B1の方向に回動させることによって、第2開口部142Aの開口方向を下向きとすると共に、第2開口部142Aの開口面積を大きくすることができる。また、
図14に示すように、例えば、調整部93が板状部材145Aを
図14の矢印A1の方向に回動させ、かつ、板状部材145Bを
図14の矢印B2の方向に回動させることによって、第2開口部142Aの開口方向を斜め下向きとすることができる。
【0086】
本実施形態では、第2開口部142Aは、その開口方向を変更可能に構成されている。このため、空気を当てることが困難な部分にも空気を送出することができる。この結果、三次元造形物5の周囲に位置する粉末材料8をより確実に除去することができる。
【0087】
本実施形態では、第2開口部142Aは、その開口面積を変更可能に構成されている。このため、例えば、三次元造形物5の形状が単純な部分では、第2開口部142Aの開口面積を大きくすることで広範囲に空気を送出して粉末材料8を除去すると共に、三次元造形物5の形状が複雑な部分では、第2開口部142Aの開口面積を小さくすることで狭い範囲に空気を送出して細かい部分に位置する粉末材料8をより確実に除去することができる。
【0088】
図15は、第2の変形例に係る粉末除去部材241の断面図である。粉末除去部材241は、バキューム/ブロア部242を備えている。バキューム/ブロア部242は、外壁242Xと、内壁242Yと、底壁242Zとを備えている。外壁242Xは、有底円筒状に形成されている。内壁242Yは、外壁242Xの内部に位置する。内壁242Yは、円柱状に形成されている。底壁242Zは、内壁242Yの下端に接続されている。底壁242Zは、円錐台状に形成されている。外壁242Xと内壁242Yとの間には、空気が流通する空気流通路243が形成されている。バキューム/ブロア部242は、集塵装置26(
図1参照)に設けられた図示しないファンから空気が送り込まれる第1開口部242Hと、バキューム/ブロア部242に送り込まれた空気を外部(
図15の矢印Yの方向)に送出する第2開口部242Aとを備えている。第1開口部242Hは、外壁242Xに設けられている。第1開口部242Hは、空気流通路243と連通している。第2開口部242Aは、外壁242Xと底壁242Zとの間に設けられている。
図16に示すように、第2開口部242Aは、放射状に空気が送出されるように形成されている。第2開口部242Aは斜め下方に向けて開口しているが、第2開口部242Aは真横に向けて開口していてもよいし、第2開口部242Aは斜め上方に向けて開口していてもよい。また、粉末除去部材241は、8つの第2開口部242Aを備えているが、第2開口部242Aの数はこれに限定されない。なお、バキューム/ブロア部242における吸引については、上述した実施形態と同様であるため、その詳細な説明は省略する。
【0089】
図17は、第3の変形例に係る粉末除去部材341の断面図である。粉末除去部材341は、同時吸引部342を備えている。同時吸引部342は、三次元造形物5(
図3参照)の周囲に位置する粉末材料8(
図3参照)を吸引する。同時吸引部342は、外壁242X、内壁242Yおよび底壁242Zに設けられている。底壁242Zには、
図17の矢印Zの方向に粉末材料8を吸引する第1開口部342Hが形成されている。第1開口部342Hは、下方に向けて開口している。外壁242X、内壁242Yおよび底壁242Zには、吸引された粉末材料8が通過する吸引通路343が形成されている。外壁242Xには、図示しない他の集塵装置に粉末材料8を送出する第2開口部342Aが形成されている。第2開口部342Aには、第3パイプ344が取り付けられており、第3パイプ344を介して他の集塵装置に粉末材料8が吸引される。第2開口部242Aは、斜め下方に向けて開口しているが、下方に向けて開口してもよい。粉末除去部材341は、第2開口部242Aから空気を送出するのと同時に第1開口部342Hから粉末材料8を吸引するように構成されていてもよい。粉末除去部材341は、第2開口部242Aから空気を送出するのと第1開口部342Hから粉末材料8を吸引するのとを別々に実施するように構成されていてもよい。例えば、粉末材料8が多い部分では第1開口部342Hから粉末材料8を吸引し、三次元造形物5に近い部分では第2開口部242Aから空気を送出してもよい。なお、第2開口部342Aは、チューブ344を介して集塵装置26に連結されていてもよい。
【0090】
上述した実施形態に係る三次元造形装置10では、バキューム/ブロア部42にヒータ43を設けることによって、三次元造形物5を乾燥させていたがこれに限定されない。例えば、赤外線照射装置を別途設けることによって、三次元造形物5に含浸剤を吐出する前に、三次元造形物5を乾燥させてもよい。
【0091】
上述した実施形態に係る三次元造形装置10は、フルカラーの三次元造形物を造形する装置であるが、これに限定されない。三次元造形装置10は、インクヘッド34を備えていなくてもよい。記憶部80Aに記憶される断面画像データはフルカラーでなくてもよい。この場合、三次元造形装置10によって造形された三次元造形物5は粉末材料の色しか有していないが、作業者は別途色を塗布することができる。
【0092】
上述した実施形態では、インクヘッド34は、バインダが吐出されて硬化した粉末硬化層5A(
図3参照)上にインクを吐出するが、これに限定されない。例えば、インクヘッド34が造形槽61に収容された粉末材料8にインクを吐出し、その後に、インクが吐出されて着色された粉末材料8に造形ヘッドからバインダを吐出して、粉末材料8を硬化してもよい。また、例えば、インクヘッド34からバインダ成分を含んだインクを造形槽61に収容された粉末材料8に吐出し、粉末材料8の着色と硬化を同時に行ってもよい。