(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述した特許文献1に開示された車両用表示装置では、車両の衝突が予測された時点で表示部が安全形態に移行するため、実際に衝突に至らない場合には無駄な動きとなるという問題があった。一方、実際に車両が衝突した場合であっても、車両の搭乗者の頭部や手の位置が表示部から遠い場合にも、安全形態に移行する必要はなく、無駄な動きになるという問題があった。
【0005】
また、上述した特許文献2に開示された回転支持装置では、人や物体を検出したときにディスプレイ装置の保持力を切り替えているため、その時点ではディスプレイ装置の姿勢が変化せず、無駄な動きは生じないが、ディスプレイ装置とは別に人や物体を検出する物体検出センサを設ける必要があり、部品の追加や物体検出センサを設けるスペースも必要になって全体構成が複雑になるという問題があった。
【0006】
本発明は、このような点に鑑みて創作されたものであり、その目的は、センサ類の追加が不要であって構成の簡略化が可能であり、実際に接触する前の無駄な動きを抑制することができる車載装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために、本発明の車載装置は、所定の操作画面を表示する表示部と、操作画面上に配置されて検出感度の高低が切り替え可能なタッチパネルと、車両の衝突検出あるいは衝突予測を行う衝突検出・予測手段と、衝突検出・予測手段によって車両の衝突が検出あるいは予測されたときに、タッチパネルの検出感度を高く設定し、それ以外のときに低く設定する検出感度設定手段と、検出感度設定手段によって高い検出感度が設定されたときに、タッチパネルに対する被検出物の接近の有無を判定する接近判定手段と、接近判定手段によって被検出物が接近した旨の判定が行われたときに、表示部の支持状態を変更する支持状態変更手段とを備えている。また、上述した検出感度設定手段によって低い検出感度が設定されたときに、タッチパネルを用いて操作画面上における指示体の操作位置を判定する操作位置判定手段をさらに備えている。
検出感度を高く設定することにより、検出感度を低く設定したときよりも、操作画面からの被検出物の検出可能距離を長くしている。
【0008】
操作画面上の操作位置を判定するために用いられるタッチパネルの検出感度を変更することにより、個別のセンサ類を設置することなく、表示部に被検出物が接近していることを検出することができるため、構成の簡略化が可能となる。また、車両の衝突が検出あるいは予測され、かつ、タッチパネルを用いて被検出物の接近を検出した場合に表示部の支持状態が変更されるため、衝突の検出や予測の時点において表示部に被検出物が実際に接近していないような場合に表示部を移動させるなどの無駄な動きを抑制することができる。
【0009】
また、上述したタッチパネルは、静電容量方式により被検出物の検出を行うことが望ましい。これにより、タッチパネルを用いてホバー操作やフローティングタッチが可能になり、非接触状態で被検出物を検出することができる。
【0010】
また、上述した表示部を収納する収納部をさらに備え、表示部は、使用時に収納部から突出した第1の状態で支持され、未使用時に収納部に少なくとも一部が収納された第2の状態で支持され、支持状態変更手段は、接近判定手段によって被検出物が接近した旨の判定が行われたときに、表示部の支持状態を第1の状態から第2の状態に変更することが望ましい。これにより、車両の衝突が検出あるいは予測され、かつ、表示部に被検出物(搭乗者の頭部等)が接近したときに、接触に至る前に表示部を収納する動作を開始することができる。
【0011】
また、上述した表示部は、第1の支持力で固定された第1の状態と、第1の支持力よりも弱い第2の支持力で固定された第2の状態のいずれかで支持され、支持状態変更手段は、接近判定手段によって被検出物が接近した旨の判定が行われたときに、表示部の支持状態を第1の状態から第2の状態に変更することが望ましい。これにより、車両の衝突が検出あるいは予測され、かつ、表示部に被検出物(搭乗者の頭部等)が接近したときに、接触に至る前に表示部の支持力を弱めることができ、実際の接触時に容易に姿勢(角度や位置)を変えることが可能となる。
【0012】
特に、上述した第1の状態は、表示部を固定した状態であり、第2の状態は、表示部の固定を解除した状態であることが望ましい。これにより、接触時に表示部が容易に転倒するようにすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を適用した一実施形態の車載装置について、図面を参照しながら説明する。
図1は、一実施形態の車載装置の構成を示す図である。
図1に示すように、車載装置1は、ナビゲーション処理部10、TVチューナ処理部14、ラジオチューナ処理部16、AV処理部18、操作部20、タッチパネル22、入力制御部24、衝撃センサ26、表示処理部30、表示部32、収納駆動部34、デジタル−アナログ変換器(D/A)40、スピーカ42、制御部50、ハードディスク装置(HDD)70を備えている。
【0015】
ナビゲーション処理部10は、ハードディスク装置70に記憶されている地図データを用いて車載装置1が搭載された車両の走行を案内するナビゲーション動作を行う。自車位置を検出するGPS(Global Positioning System)装置12とともに用いられ、車両の走行を案内するナビゲーション動作には、地図表示、経路探索・誘導、周辺施設検索などが含まれる。なお、自車位置検出は、GPS12の他にジャイロセンサや車速センサ等の自律航法センサを組み合わせて用いるようにしてもよい。
【0016】
TVチューナ処理部14は、地上デジタル放送等の放送信号を受信し、映像および音声を再生する処理を行う。ラジオチューナ処理部16は、ラジオ放送の信号を受信し、音声を再生する処理を行う。AV処理部18は、圧縮されてハードディスク装置70に記憶されている音楽データや映像データを読み出して再生する処理を行う。なお、音楽データや映像データは、ディスク読取装置(図示せず)を用いてCDやDVDから読み取ったものを用いるようにしてもよい。
【0017】
操作部20は、利用者による各種操作を受け付けるためのものであり、各種のスイッチや操作つまみ等が備わっている。タッチパネル22は、表示部32の画面に重ねて配置されており、利用者の指が接触した画面上の位置を検出する。このタッチパネル22は、例えば静電容量式であって、より望ましくは複数の接触位置を検出可能な相互容量方式であり、検出閾値を変更することにより、検出感度(画面からの検出可能距離)を可変することができる。本実施形態では、検出閾値を変更して2種類の検出感度(高感度と低感度)を実現している。
【0018】
図2は、タッチパネル22の検出範囲を示す図である。タッチパネル22は、検出感度を高低2段階に切り替えることができる。
図2では、検出感度を低く設定した場合の検出範囲がAで、検出感度を高く設定した場合の検出範囲がBで示されている。
【0019】
入力制御部24は、操作部20およびタッチパネル22の操作状態を監視し、利用者による入力内容を検出する。衝撃センサ26は、加速度センサであって、車両に加わる加速度を検出する。なお、本実施形態では、車両の衝突検出および衝突予測を行うためにこの衝撃センサ26を用いているが、この衝撃センサ26は、車載装置1の外部に設けるようにしてもよい。
【0020】
表示処理部30は、各種の操作画面等を表示する映像信号を出力して表示部32にこれらの画面を表示するとともに、TVチューナ処理部14によって受信した放送信号に対応する映像画面やAV処理部18によって再生した映像画面等を表示する映像信号を出力して表示部32にこれらの画面を表示する。表示部32は、運転席と助手席の中央前方に設置されており、例えば液晶表示装置(LCD)を用いて構成され、所定の操作画面を表示する。
【0021】
収納駆動部34は、タッチパネル22が取り付けられた表示部32を使用時に所定位置(使用位置)まで移動させるとともに、使用終了時にこの使用位置から収納位置まで移動させる。
【0022】
図3は、表示部32の使用状態と収納状態の説明図である。車載装置1の使用時には、
図3(A)に示すように、例えば運転席と助手席の間のダッシュボード上面から表示部32がせり上がって前面全体が運転者等から見える位置(使用位置)まで上昇する。また、車載装置1の未使用時には、
図3(B)に示すように、表示部32全体がダッシュボード内の収納位置まで降下する。これらの上昇および降下が収納駆動部34によって行われる。例えば、収納駆動部34は、ラックアンドピニオン機構によってモータの回転を利用して表示部32の上昇および降下を実現することができるが、他の機構を用いるようにしてもよい。
【0023】
デジタル−アナログ変換器40は、ナビゲーション処理部10、TVチューナ処理部14、ラジオチューナ処理部16、AV処理部18のそれぞれの処理によって生成される音声データや音楽データをアナログの音声信号に変換してスピーカ42から出力する。なお、実際には、デジタル−アナログ変換器40とスピーカ42の間には信号を増幅する増幅器が接続されているが、
図1ではこの増幅器は省略されている。また、デジタル−アナログ変換器40とスピーカ42との組合せは再生チャンネル数分備わっているが、
図1では一組のみが図示されている。
【0024】
制御部50は、車載装置1の全体を制御するためのものであり、ROMやRAMなどに格納された所定のプログラムをCPUで実行することにより実現される。また、制御部50は、衝突検出あるいは衝突予測時にタッチパネル22の検出感度を上げた後の所定の処理を行うために、衝突検出・予測部51、検出感度設定部52、接近判定部53、収納処理部54、操作画面作成部55、操作位置判定部56を有する。
【0025】
衝突検出・予測部51は、衝撃センサ26によって検出された加速度に基づいて衝突検出および衝突予測を行う。例えば、衝撃センサ26の出力に基づいて、運転者による急ブレーキや車両の横滑り等の発生を判定することができ、この判定結果に応じて衝突を予測することができる。また、衝撃センサ26の出力に基づいて、車両が他の車両や構造物に衝突したり落下したことを判定することができ、この判定結果に応じて衝突を検出することができる。なお、本実施形態では、衝突検出・予測部51は、車載装置1に備わった衝撃センサ26の出力に基づいて衝突の検出や予測を行ったが、衝撃センサ26の出力とともに、あるいは衝突センサ26以外の各種センサや車両から入力されるブレーキ角度の情報などを用いて衝突の検出や予測を行うようにしてもよい。
【0026】
検出感度設定部52は、衝突検出・予測部51によって車両の衝突が検出あるいは予測されたときに、タッチパネル22の検出感度を高く設定し、それ以外のときに低く設定する。
【0027】
接近判定部53は、検出感度設定部52によって高い検出感度が設定されたときに、タッチパネル22に対する被検出物の接近の有無を判定する。
【0028】
収納処理部54は、接近判定部53によって被検出物が接近した旨の判定が行われたときに、表示部32の支持状態(収納状態)を変更する。具体的には、収納処理部54は、収納駆動部34に指示を送って、
図3(A)に示す使用位置から
図3(B)に示す収納位置に表示部32を移動させる。
【0029】
操作画面作成部55は、表示部32に表示する各種の操作画面を作成する。この操作画面には、利用者が指で指し示すことにより車載装置1に対して各種の指示を行うための操作アイコンが含まれている。
【0030】
操作位置判定部56は、検出感度設定部52によって低い検出感度が設定されたときに、タッチパネル22を用いて操作画面上における指示体の操作位置を判定する。
【0031】
上述した衝突検出・予測部51が衝突検出・予測手段に、検出感度設定部52が検出感度設定手段に、接近判定部53が接近判定手段に、収納処理部54が支持状態変更手段に、操作位置判定底部56が操作位置判定手段にそれぞれ対応する。
【0032】
本実施形態の車載装置1はこのような構成を有しており、次に、その動作を説明する。
【0033】
図4は、車両の衝突を検出あるいは予測した場合の動作手順を示す流れ図である。車載装置1が動作開始後、衝突検出・予測部51は、車両の衝突を検出あるいは予測したか否かを判定する(ステップ100)。検出あるいは予測がない場合には否定判断が行われ、この判定が繰り返される。また、衝突が検出あるいは予測された場合にはステップ100の判定において肯定判断が行われる。
【0034】
次に、検出感度設定部52は、タッチパネル22の検出感度を高くする(ステップ102)。また、接近判定部53は、検出感度が高く設定されたタッチパネル22を用いて、タッチパネル22に近傍(検出範囲)において被検出物を検出したか否かを判定する(ステップ104)。例えば、被検出物として主に運転者やその他の搭乗者の頭部を想定している。被検出物が検出されない場合には否定判断が行われ、ステップ100に戻って衝突検出・予測判定動作が繰り返される。
【0035】
また、被検出物が検出された場合にはステップ104の判定において肯定判断が行われる。次に、収納処理部54は、収納駆動部34に指示を送って、それまでの使用位置から収納位置に表示部32を移動させる(ステップ106)。
【0036】
また、衝突検出・予測部51は、衝突検出あるいは予測の状態が解除されたか否かを判定する(ステップ108)。解除されない場合にはステップ106に戻って表示部32の収納状態を維持する。また、衝突検出あるいは予測の状態が解除された場合にはステップ108の判定において肯定判断が行われる。この場合には、収納処理部54は、収納駆動部34に支持を送って、それまでの収納位置から使用位置に表示部32を移動させる(ステップ110)。その後、ステップ100に戻って衝突検出・予測判定動作が繰り返される。
【0037】
このように、本実施形態の車載装置1では、操作画面上の操作位置を判定するために用いられるタッチパネル22の検出感度を変更することにより、個別のセンサ類を設置することなく、表示部32に被検出物が接近していることを検出することができるため、構成の簡略化が可能となる。また、車両の衝突が検出あるいは予測され、かつ、タッチパネル22を用いて被検出物の接近を検出した場合に表示部32の支持状態が変更されるため、衝突の検出や予測の時点において表示部32に被検出物が実際に接近していないような場合に表示部32を移動させるなどの無駄な動きを抑制することができる。
【0038】
また、静電容量方式のタッチパネル22を用いることにより、検出感度を変更することができ、タッチパネル22を用いてホバー操作やフローティングタッチが可能になり、非接触状態で被検出物を検出することができる。
【0039】
また、車両の衝突が検出あるいは予測され、かつ、表示部32に被検出物(搭乗者の頭部等)が接近したときに、接触に至る前に表示部32を収納する動作を開始することができる。
【0040】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において種々の変形実施が可能である。例えば、上述した実施形態では、衝突検出・予測後に表示部32への被検出物の接近を検出したときに表示部32を使用位置から収納位置に収納するようにしたが、収納する代わりに支持状態(支持力)を第1の状態から第2の状態に変更するようにしてもよい。
【0041】
例えば、
図3(A)に示す表示部32の底部が回転可能に支持されているものとした場合に、表示部32が回転しないように強い支持力で固定した状態を第1の状態とし、この固定を解除して弱い支持力で表示部32を支持することにより表示部32の上部が車両前方側に倒れやすくなった状態を第2の状態とする。このような場合に、衝突検出・予測後に表示部32への被検出物の接近を検出したときに表示部32を第1の状態から第2の状態に変更する場合にも本発明を適用することができる。
【0042】
図5は、変形例の車載装置の構成を示す図である。
図5に示す車載装置1Aは、
図1に示した車載装置1に対して、収納駆動部34を固定機構34Aに、収納処理部54を固定解除処理部54Aに置き換えた構成を有する。以後、これらの置き換えられた構成について説明する。
【0043】
固定機構34Aは、表示部32を所定の支持力で支持する。例えば、複数のギアを組み合わせることにより、表示部32が底部を中心にして回転しないようにロック(固定)することができるとともに、これらのギアの噛み合いを解除することによりこのロックを解除して表示部32が底部を中心に回転しやすくすることができる。
【0044】
固定解除処理部54Aは、接近判定部53によって被検出物が接近した旨の判定が行われたときに、固定機構34Aに指示を送って表示部32の支持状態を第1の状態(第1の支持力で固定された状態)から第2の状態(第1の支持力よりも弱い第2の支持力で固定された状態)に変更する。例えば、この第1の状態は、表示部32を固定した状態であり、第2の状態は、表示部32の固定を解除した状態である。
【0045】
このような車載装置1Aでは、車両の衝突が検出あるいは予測され、かつ、表示部32に被検出物(搭乗者の頭部等)が接近したときに、接触に至る前に表示部32の支持力を弱めることができ、実際の接触時に容易に姿勢(角度や位置)を変えることが可能となる。
【0046】
また、上述した実施形態では、タッチパネル22を含む表示部32を収納等する場合について説明したが、タッチパネル22と表示部32以外の構成(極端な場合には、収納駆動部34や固定機構34A以外の全ての構成)を含めて筐体に収容し、この筐体全体を収納等する場合にも本発明を適用することができる。