(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記複数の圧電素子がm個(mは2以上の自然数)であり、m個の前記圧電素子が(m−1)個の前記連結部材によって連結されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の発電デバイス。
前記連結部材が連結される連結部と前記保持部材に固定された固定部との間に配置された前記複数の前記圧電体は、その一部の圧電体が第1の電極に接続され、残りの圧電体が第2の電極に接続されている請求項1乃至7の何れか一に記載の発電デバイス。
前記梁の上面において、前記連結部材が連結される連結部と前記保持部材に固定された固定部との間に配置された前記複数の前記圧電体は、その一部の圧電体が第1の電極に接続され、残りの圧電体が第2の電極に接続されており、且つ、
前記梁の下面において、前記連結部材が連結される連結部と前記保持部材に固定された固定部との間に配置された前記複数の前記圧電体は、その一部の圧電体が第3の電極に接続され、残りの圧電体が第4の電極に接続されていることを特徴とする請求項2乃至7の何れか一に記載の発電デバイス。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して本発明に発電デバイスについて説明する。但し、本発明の発電デバイスは多くの異なる態様で実施することが可能であり、以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、本実施の形態で参照する図面において、同一部分または同様な機能を有する部分には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0024】
〈実施形態〉
(実施形態1)
[発電デバイスの概要]
図1から
図3を用いて、本発明の実施形態1に係る発電デバイス1000の構造の概要を説明する。
【0025】
図1は、本発明の実施形態1に係る発電デバイス1000を示す斜視図である。
図1に示すように、本実施形態に係る発電デバイス1000は、保持部材110、複数の圧電素子120a及び120b、連結部材130を備えている。
【0026】
複数の圧電素子120は一定のスペースを介して上下に配置される。ここで、
図1から4においては、説明の便宜上、2枚の圧電素子120有する発電デバイス1000を一例として図示した。複数の圧電素子120は、端部を保持部材110に固定される。本実施形態に係る保持部材110の材料はアルミニウム(A5052)であるが、ステンレス他、耐久性を備えた材料ならこれに限定しない。
【0027】
図1に示すように、複数の圧電素子120は、その数がm個のとき、連結部131で、(m−1)個の連結部材130を挟み込む構造で連結してもよい(mは2以上の自然数)。ここで、
図1から
図4では、説明の便宜上、1個の連結部材130を2枚の圧電素子120で挟みこむ構造を一例として図示した(m=2)。
【0028】
図2は本発明の実施形態1に係る発電デバイス1000の一例を示す平面図である。
図1および
図2に示すように、圧電素子120は、金属弾性板122と、金属弾性板の上面に複数配置された圧電体121とを含む。金属弾性板122は、高靭性と弾性を備え、薄い板状で曲げ剛性が低い構造であればよい。本実施形態においては、金属弾性板122は、厚さが50μmの2cm四方の板状ステンレス素子(SUS304)を用いている。
【0029】
圧電素子120はn本の両持ち梁の構造を維持する配置に、2n個のスリット123を有するようにしてもよい(nは自然数)。ここで、
図1および2においては、説明の便宜上、4個のスリット123を有する圧電素子120を含む発電デバイス1000を一例として図示した(n=2)。この結果、圧電素子120は2本の両持ち梁124が交差した十字構造を示す。
【0030】
本発明の実施形態に係る複数の圧電体121は、両持ち梁124上に配置される。
図1から
図4においては、説明の便宜上、1枚の金属弾性板122に上面計8個の圧電体121(121a、121b、121c、121d、121e、121f、121g、および121h)を有する発電デバイス1000を一例として図示した。
【0031】
本実施形態において、圧電体121の材料は、窒化アルミニウム(AlN)を用いている。本実施形態の圧電体121の厚さは2μm以上10μm以下である。
【0032】
本実施形態においては、圧電体121の材料には窒化アルミニウムを用いたが、スカンジウム含有窒化アルミニウム(Sc―AlN)、マグネシウムおよびニオブ含有窒化アルミニウム(Mg/Nb−AlN)、またはニオブ酸カリウムナトリウム(KNN) といった圧電体や強誘電体であってもよい。
【0033】
本実施形態においては、連結部材130の連結部131は、圧電素子120の中央を示しているが、これに限るものではない。本実施形態においては、連結部材130の材料は快削真鍮(C3604)を用いているが、これに限るものではない。
図1から
図4では、円柱型の連結部材130を示したが、これに限るものではない。
【0034】
図3は本発明の実施形態に係る発電デバイス1000の一例を示す断面図である。圧電素子120の振動方向を連結部材130軸方向に制限するため、保持部材110の内側、上部及び下部それぞれに、ストッパー111を設ける構造を有するようにしてもよい。
【0035】
圧電素子120の振動方向を連結部材130軸方向に制限するため、保持部材110の内壁に固定潤滑層112を設ける構造を有するようにしてもよい。固定潤滑層112の材質は、耐摩擦性、耐摩耗性を有すればよい。本実施形態においては、テフロン(登録商標)無電解ニッケル(Ni−PTFE)を用いている。
【0036】
[発電デバイスの振動と発電原理]
次に、本発明の実施形態1に係る発電デバイス1000の振動と発電原理について、
図4A〜4Dを用いて詳細に説明する。
図4A〜4Dは、本発明の実施形態1に係る発電デバイス1000において、圧電素子120および連結部材130が振動している状態を示す断面図である。
図4A〜4Dでは、1個の連結部材130を2枚の圧電素子120で挟みこむ構造を例示するが、この数に限定されず、(m−1)個の連結部材130をm枚の圧電素子120で挟みこむ構造でも同じ原理が適用できる(mは2以上の自然数)。
【0037】
本発明の実施形態1に係る圧電素子120は、金属弾性板122と、金属弾性板122の上面に位置する計8個の圧電体121(121a、121b、121c、121d、121e、121f、121g、および121h)とを有する。
【0038】
図4Bに示す状態が、外力が作用していない状態である。本発明の実施形態1に係る発電デバイス1000に外力がかかるとき、その反作用により連結部材130の軸方向に加わる力は、外力の加えられる方向に対して凸状となるように圧電素子120を屈曲させる。
金属弾性板122は、薄い板状で曲げ剛性が低い構造であることから、圧電素子120は収縮変位し、変位が増大するとともに反発力が増加し、反転により変位する。すなわち、外力の加えられる方向が
図4A〜4Cにおいて下方向である場合、
図4(b)から(c)→(b)→(a)→(b)のくりかえしにより振動する。
【0039】
圧電素子120が屈曲する際に発生する電荷は、圧電体121の屈曲する向きに依存して極性が変わるため、各圧電体121から電気エネルギーを効率良く取り出すために、それぞれ別個の電気回路を用いる必要がある。
【0040】
圧電素子120のそれぞれの両持ち梁は、横からみるとS字状にまがるため、同一面でも場所により圧縮と伸張とが発生する。
図4Dに、本発明の実施形態1に係る両持ち梁の一部の動きの拡大図を示す。連結部材130が図中(e)、上方向に振動する時、圧電体121aは圧縮し、圧電体121bは伸張する。連結部材130が図中(g)、下方向に振動する時、圧電体121aは伸張し、圧電体121bは圧縮する。すなわち、
図4A〜4Cにおいて、圧電素子120の保持部材110に固定された固定端側に位置する圧電体121aおよび121dと、外力の作用点である連結部131側に位置する圧電体121bおよび121cとで、逆相の電荷を発生する。このため全面に電極を設けた場合はお互いに発生した逆相の電荷により打ち消しあってしまう。
【0041】
このため、圧電素子に外力がかかるとき、圧電現象による発電量を打ち消し合わずに集電できるよう、圧電素子120の保持部材110に固定された固定端側に位置する圧電体121aおよび121dと、外力の作用点である連結部131側に位置する圧電体121bおよび121cとで電極を分けた構造を有するようにしてもよい。
【0042】
これにより負荷や蓄電池等に逆の極性の電圧が印加されることを防止し、更に効率良く起電力を得ることができる。
【0043】
発電デバイス1000が設置される場所は必ずしも発生する振動がコントロールされているとは限らない。所望の周波数帯における予期せぬ大きな振動や、設計範囲外に生じる大きな振動において、圧電素子120が破壊されないようにしなければならない。
【0044】
発電に寄与する振動方向であっても、材料の弾性限界を超えた変位が生じないようにするため、上下にストッパー111を設ける。また、横方向からの振動に対してもは圧電素子120の破壊を防ぐため、周囲に固定潤滑層112を設ける。
【0045】
以上の構造とすることにより、本実施形態に係る本発明の発電デバイスは、大きな振動にも壊れること無く、かつ、発生した電気エネルギーを無駄にすること無く、広帯域の振動エネルギーを電気エネルギーにすることが可能となる。自然環境に広周波数帯域で存在する振動エネルギーを、効率よく電気エネルギーに変換するために非線形ばね効果を利用し、広い発電周波数帯を備えた発電デバイスを提供することができる。また、発生電荷の電極内打ち消しを防ぐために意図しない振動モードを抑制する構造を備えた発電デバイスを提供することができる。
【0046】
(実施形態2)
[発電デバイスの概要]
図5から
図7を用いて、本発明の実施形態2に係る発電デバイス2000の構造の概要を説明する。
【0047】
図5は、本発明の実施形態2に係る発電デバイス2000を示す斜視図である。
図5に示すように、本実施形態に係る発電デバイス2000は、保持部材110、複数の圧電素子120a及び120b、連結部材130を備えている。
【0048】
複数の圧電素子120は一定のスペースを介して上下に配置される。ここで、
図5から
図8においては、説明の便宜上、2枚の圧電素子120有する発電デバイス2000を一例として図示した。複数の圧電素子120は、端部を保持部材110に固定される。本実施形態に係る保持部材110の材料はアルミニウム(A5052)であるが、ステンレス他、耐久性を備えた材料ならこれに限定しない。
【0049】
図5に示すように、複数の圧電素子120は、その数がm個のとき、連結部131で、(m−1)個の連結部材130を挟み込む構造で連結してもよい(mは2以上の自然数)。ここで、
図5から
図8では、説明の便宜上、1個の連結部材130を2枚の圧電素子120で挟みこむ構造を一例として図示した(m=2)。
【0050】
図6は本発明の実施形態2に係る発電デバイス2000の一例を示す平面図である。
図5および
図6に示すように、圧電素子120は、金属弾性板122と、金属弾性板の上面および下面に複数配置された圧電体121とを含む。金属弾性板122は、高靭性と弾性を備え、薄い板状で曲げ剛性が低い構造であればよい。本実施形態においては、金属弾性板122は、厚さが50μmの2cm四方の板状ステンレス素子(SUS304)を用いている。
【0051】
圧電素子120はn本の両持ち梁の構造を維持する配置に、2n個のスリット123を有するようにしてもよい(nは自然数)。ここで、
図5および6においては、説明の便宜上、4個のスリット123を有する圧電素子120を含む発電デバイス2000を一例として図示した(n=2)。この結果、圧電素子120は2本の両持ち梁124が交差した十字構造を示す。
【0052】
本発明の実施形態に係る複数の圧電体121は、両持ち梁124上に配置される。
図5から
図8においては、説明の便宜上、1枚の金属弾性板122に上面および下面計16個の圧電体121(上面:121aa、121ab、121ac、121ad、121ae、121af、121ag、121ah、下面:121ba、121bb、121bc、121bd、121be、121bf、121bg、および121bh)を有する発電デバイス2000を一例として図示した。
【0053】
本実施形態において、圧電体121の材料は、窒化アルミニウム(AlN)を用いている。本実施形態の圧電体121の厚さは2μm以上10μm以下である。
【0054】
なお、以下の数式(1)は、出力電圧V[V]、発生電荷量Q[C]、圧電体の静電容量C[F]、圧電体のヤング率Ep[Pa]、基板のヤング率Es[Pa]、圧電体の厚みhp[m]、基板の厚みhs[m]との関係を表す理論式である。
【0055】
数式(1)に、本実施形態で用いる基板のヤング率(SUS304 Es=197GPa)、圧電体のヤング率(AIN Ep=300 GPa)、圧電体の静電容量(圧電体の誘電率(ε=9.0))×電極面積÷圧電体の厚み)を代入すると、
図9に示すとおり、本実施形態における出力電圧Vと圧電体の厚みhpと基板の厚みhsとの関係グラフが導き出される。
図9においては、縦軸を発生電圧V(又は発生電荷量Q)とし、横軸を圧電体の厚みhpとし、基板の厚みhsを変化させてたときのグラフを示す。
【数1】
・・・(1)
【0056】
図9に示すように、金属弾性板122の厚さが50μmで、圧電体121の厚さが半分の値25μm程度であるときに、発電効率が最大となる。このため本実施形態の金属弾性板122の厚さは50μm、圧電体121の厚さは25μmとしてもよい。一方、発電効率の最大化ではなく、設計上の目標とする共振周波数や製造コストを考慮して金属弾性板122の厚さや、圧電体121の厚さを適宜、本実施形態の範囲外にしてもよい。
【0057】
本実施形態においては、圧電体121の材料には窒化アルミニウムを用いたが、スカンジウム含有窒化アルミニウム(Sc―AlN)、マグネシウムおよびニオブ含有窒化アルミニウム(Mg/Nb−AlN)、またはニオブ酸カリウムナトリウム(KNN)といった圧電体や強誘電体であってもよい。
【0058】
本実施形態においては、連結部材130の連結部131は、圧電素子120の中央を示しているが、これに限るものではない。本実施形態においては、連結部材130の材料は快削真鍮(C3604)を用いているが、これに限るものではない。
図5から
図8では、円柱型の連結部材130を示したが、これに限るものではない。
【0059】
図7は本発明の実施形態に係る発電デバイス2000の一例を示す断面図である。圧電素子120の振動方向を連結部材130軸方向に制限するため、保持部材110の内側、上部及び下部それぞれに、ストッパー111を設ける構造を有するようにしてもよい。
【0060】
圧電素子120の振動方向を連結部材130軸方向に制限するため、保持部材110の内壁に固定潤滑層112を設ける構造を有するようにしてもよい。固定潤滑層112の材質は、耐摩擦性、耐摩耗性を有すればよい。本実施形態においては、テフロン無電解ニッケル(Ni−PTFE)を用いている。
【0061】
[発電デバイスの振動と発電原理]
次に、本発明の実施形態2に係る発電デバイスの振動と発電原理について、
図8A〜8Dを用いて詳細に説明する。
図8A〜8Dは、本発明の実施形態2に係る発電デバイスにおいて、圧電素子120および連結部材130が振動している状態を示す断面図である。
図8A〜8Dでは、1個の連結部材130を2枚の圧電素子120で挟みこむ構造を例示するが、この数に限定されず、(m−1)個の連結部材130をm枚の圧電素子120で挟みこむ構造でも同じ原理が適用できる(mは2以上の自然数)。
【0062】
本発明の実施形態2に係る圧電素子120は、金属弾性板122と、金属弾性板122の上面および下面に位置する計16個の圧電体121(上面:121aa、121ab、121ac、121ad、121ae、121af、121ag、121ah、下面:121ba、121bb、121bc、121bd、121be、121bf、121bg、および121bh)とを有する。
【0063】
図8Bに示す状態が、外力が作用していない状態である。本発明の実施形態2に係る発電デバイス2000に外力がかかるとき、その反作用により連結部材130の軸方向に加わる力は、外力の加えられる方向に対して凸状となるように圧電素子120を屈曲させる。
金属弾性板122は、薄い板状で曲げ剛性が低い構造であることから、圧電素子120は収縮変位し、変位が増大するとともに反発力が増加し、反転により変位する。すなわち、外力の加えられる方向が
図8A〜8Cにおいて下方向である場合、
図8(b)から(c)→(b)→(a)→(b)のくりかえしにより振動する。
【0064】
圧電素子120が屈曲する際に発生する電荷は、圧電体121の屈曲する向きに依存して極性が変わるため、各圧電体121から電気エネルギーを効率良く取り出すために、それぞれ別個の電気回路を用いる必要がある。
【0065】
圧電素子120のそれぞれの両持ち梁は、横からみるとS字状にまがるため、同一箇所でも上面、下面により圧縮と伸張とが発生する。
図8Dに、本発明の実施形態2に係る両持ち梁の一部の動きの拡大図を示す。連結部材130が図中(e)、上方向に振動する時、圧電体121aaおよび121bbは圧縮し、圧電体121abおよび121baは伸張する。連結部材130が図中(g)、下方向に振動する時、圧電体121aaおよび121bbは伸張し、圧電体121abおよび121baは圧縮する。すなわち、
図8A〜8Cにおいて、圧電素子120の上面の保持部材110に固定された固定端側に位置する圧電体のうち121aaおよび121adと、下面の保持部材110に固定された固定端側に位置する圧電体のうち121baおよび121bdとで、逆相の電荷を発生する。さらに、
図8A〜8Cにおいて、圧電素子120の上面の外力の作用点である連結部131側に位置する圧電体121abおよび121acと、下面の外力の作用点である連結部131側に位置する圧電体121bbおよび121bcとで、逆相の電荷を発生する。このため両面に電極を設けた場合はお互いに発生した逆相の電荷により打ち消しあってしまう。
【0066】
このため、圧電素子に外力がかかるとき、圧電現象による発電量を打ち消し合わずに集電できるよう、圧電素子120の上面の保持部材110に固定された固定端側に位置する圧電体121aaおよび121adと、上面の外力の作用点である連結部131側に位置する圧電体121abおよび121acと、下面の保持部材110に固定された固定端側に位置する圧電体のうちbaおよび121bdと、下面の外力の作用点である連結部131側に位置する圧電体121bbおよび121bcとで、電極を分けた構造を有するようにしてもよい。
【0067】
これにより負荷や蓄電池等に逆の極性の電圧が印加されることを防止し、更に効率良く起電力を得ることができる。
【0068】
本実施形態の発電デバイス2000において、梁をn本に増やし、それぞれの構造を変化させることにより共振周波数はより広帯域化することができる。
図10は、本実施形態に係る発電デバイス2000における、非線形ばね効果による発電周波数帯域の拡大を示すグラフである。加速度9.8m/s
2の調和振動を印加した場合では線形振動が、加速度20m/s
2の調和振動を印加した場合では非線形振動が示された。
【0069】
発電デバイス2000が設置される場所は必ずしも発生する振動がコントロールされているとは限らない。所望の周波数帯における予期せぬ大きな振動や、設計範囲外に生じる大きな振動において、圧電素子120が破壊されないようにしなければならない。
【0070】
発電に寄与する振動方向であっても、材料の弾性限界を超えた変位が生じないようにするため、上下にストッパー111を設ける。また、横方向からの振動に対してもは圧電素子120の破壊を防ぐため、周囲に固定潤滑層112を設ける。
【0071】
以上の構造とすることにより、本実施形態に係る本発明の発電デバイスは、大きな振動にも壊れること無く、かつ、発生した電気エネルギーを無駄にすること無く、広帯域の振動エネルギーを電気エネルギーにすることが可能となる。自然環境に広周波数帯域で存在する振動エネルギーを、効率よく電気エネルギーに変換するために非線形ばね効果を利用し、広い発電周波数帯を備えた発電デバイスを提供することができる。また、発生電荷の電極内打ち消しを防ぐために意図しない振動モードを抑制する構造を備えた発電デバイスを提供することができる。
【0072】
(実施形態3)
[発電デバイスの概要]
図11から
図13を用いて、本発明の実施形態3に係る発電デバイス3000の構造の概要を説明する。
【0073】
図11は、本発明の実施形態3に係る発電デバイス3000を示す斜視図である。
図11に示すように、本実施形態に係る発電デバイス3000は、保持部材110、複数の圧電素子120a及び120b、連結部材130を備えている。
【0074】
複数の圧電素子120は一定のスペースを介して上下に配置される。ここで、
図11から
図13においては、説明の便宜上、2枚の圧電素子120有する発電デバイス3000を一例として図示した。複数の圧電素子120は、端部を保持部材110に固定される。本実施形態に係る保持部材110の材料はアルミニウム(A5052)であるが、ステンレス他、耐久性を備えた材料ならこれに限定しない。
【0075】
図11に示すように、複数の圧電素子120は、その数がm個のとき、連結部131で、(m−1)個の連結部材130を挟み込む構造で連結してもよい(mは2以上の自然数)。ここで、
図11から
図13では、説明の便宜上、1個の連結部材130を2枚の圧電素子120で挟みこむ構造を一例として図示した(m=2)。
【0076】
図12は本発明の実施形態3に係る発電デバイス3000の一例を示す平面図である。
図11および
図12に示すように、圧電素子120は、金属弾性板122と、金属弾性板の上面に複数配置された圧電体121とを含む。金属弾性板122は、高靭性と弾性を備え、薄い板状で曲げ剛性が低い構造であればよい。本実施形態においては、金属弾性板122は、厚さが50μmの2cm四方の板状ステンレス素子(SUS304)を用いている。
【0077】
圧電素子120はn本の両持ち梁の構造を維持する配置に、2n個のスリット123を有するようにしてもよい(nは自然数)。ここで、
図11および
図12においては、説明の便宜上、4個のスリット123を有する圧電素子120を含む発電デバイス3000を一例として図示した(n=2)。この結果、圧電素子120は2本の両持ち梁124が交差した十字構造を示す。
【0078】
本発明の実施形態に係る複数の圧電体121は、両持ち梁124上に配置される。
図11から
図14においては、説明の便宜上、1枚の金属弾性板122の上面に計16個の圧電体121(121a1、121a2、121b1、121b2、121c1、121c2、121d1、121d2、121e1、121e2、121f1、121f2、121g1、121g2、121h1および121h2)を有する発電デバイス3000を一例として図示した。
【0079】
本実施形態において、圧電体121の材料は、窒化アルミニウム(AlN)を用いている。本実施形態の圧電体121の厚さは2μm以上10μm以下である。
【0080】
本実施形態においては、圧電体121の材料には窒化アルミニウムを用いたが、スカンジウム含有窒化アルミニウム(Sc―AlN)、マグネシウムおよびニオブ含有窒化アルミニウム(Mg/Nb−AlN)、またはニオブ酸カリウムナトリウム(KNN) といった圧電体や強誘電体であってもよい。
【0081】
本実施形態においては、連結部材130の連結部131は、圧電素子120の中央を示しているが、これに限るものではない。本実施形態においては、連結部材130の材料は快削真鍮(C3604)を用いているが、これに限るものではない。
図11から
図14では、円柱型の連結部材130を示したが、これに限るものではない。
【0082】
図13は本発明の実施形態に係る発電デバイス3000の一例を示す断面図である。圧電素子120の振動方向を連結部材130軸方向に制限するため、保持部材110の内側、上部及び下部それぞれに、ストッパー111を設ける構造を有するようにしてもよい。
【0083】
圧電素子120の振動方向を連結部材130軸方向に制限するため、保持部材110の内壁に固定潤滑層112を設ける構造を有するようにしてもよい。固定潤滑層112の材質は、耐摩擦性、耐摩耗性を有すればよい。本実施形態においては、テフロン無電解ニッケル(Ni−PTFE)を用いている。
【0084】
[発電デバイスの振動と発電原理]
次に、本発明の実施形態3に係る発電デバイス3000の振動と発電原理について、
図14A〜14Dを用いて詳細に説明する。
図14A〜14Dは、本発明の実施形態3に係る発電デバイス3000において、圧電素子120および連結部材130が振動している状態を示す断面図である。
図14A〜14Dでは、1個の連結部材130を2枚の圧電素子120で挟みこむ構造を例示するが、この数に限定されず、(m−1)個の連結部材130をm枚の圧電素子120で挟みこむ構造でも同じ原理が適用できる(mは2以上の自然数)。
【0085】
本発明の実施形態3に係る圧電素子120は、金属弾性板122と、金属弾性板122の上面に位置する計16個の圧電体121(121a1、121a2、121b1、121b2、121c1、121c2、121d1、121d2、121e1、121e2、121f1、121f2、121g1、121g2、121h1および121h2)とを有する。
【0086】
図14Bに示す状態が、外力が作用していない状態である。本発明の実施形態3に係る発電デバイス3000に外力がかかるとき、その反作用により連結部材130の軸方向に加わる力は、外力の加えられる方向に対して凸状となるように圧電素子120を屈曲させる。
金属弾性板122は、薄い板状で曲げ剛性が低い構造であることから、圧電素子120は収縮変位し、変位が増大するとともに反発力が増加し、反転により変位する。すなわち、外力の加えられる方向が
図14A〜14Cにおいて下方向である場合、
図14(b)から(c)→(b)→(a)→(b)のくりかえしにより振動する。
【0087】
圧電素子120が屈曲する際に発生する電荷は、圧電体121の屈曲する向きに依存して極性が変わるため、各圧電体121から電気エネルギーを効率良く取り出すために、それぞれ別個の電気回路を用いる必要がある。
【0088】
圧電素子120のそれぞれの両持ち梁は、横からみるとS字状にまがるため、同一面でも場所により圧縮と伸張とが発生する。
図14Dに、本発明の実施形態3に係る両持ち梁の一部の動きの拡大図を示す。連結部材130が図中(e)、上方向に振動する時、圧電体121a1および121a2は圧縮し、電体121b1および121b2は伸張する。連結部材130が図中(g)、下方向に振動する時、圧電体121a1および121a2は伸張し、電体121b1および121b2は圧縮する。すなわち、
図14A〜14Cにおいて、圧電素子120の上面の保持部材110に固定された固定端側に位置する圧電体のうち121a1、121a2、121d1および121d2と、上面の外力の作用点である連結部131側に位置する圧電体121b1、121b2、121c1および121c2とで、逆相の電荷を発生する。このため全面に電極を設けた場合はお互いに発生した逆相の電荷により打ち消しあってしまう。
【0089】
このため、圧電素子に外力がかかるとき、圧電現象による発電量を打ち消し合わずに集電できるよう、圧電素子120の上面の保持部材110に固定された固定端側に位置する圧電体のうち121a1、121a2、121d1および121d2と、上面の外力の作用点である連結部131側に位置する圧電体121b1、121b2、121c1および121c2とで、電極を分けた構造を有するようにしてもよい。
【0090】
これにより負荷や蓄電池等に逆の極性の電圧が印加されることを防止し、更に効率良く起電力を得ることができる。
【0091】
発電デバイス3000が設置される場所は必ずしも発生する振動がコントロールされているとは限らない。所望の周波数帯における予期せぬ大きな振動や、設計範囲外に生じる大きな振動において、圧電素子120が破壊されないようにしなければならない。
【0092】
発電に寄与する振動方向であっても、材料の弾性限界を超えた変位が生じないようにするため、上下にストッパー111を設ける。また、横方向からの振動に対しても圧電素子120の破壊を防ぐため、周囲に固定潤滑層112を設ける。
【0093】
以上の構造とすることにより、本実施形態に係る本発明の発電デバイスは、大きな振動にも壊れること無く、かつ、発生した電気エネルギーを無駄にすること無く、広帯域の振動エネルギーを電気エネルギーにすることが可能となる。自然環境に広周波数帯域で存在する振動エネルギーを、効率よく電気エネルギーに変換するために非線形ばね効果を利用し、広い発電周波数帯を備えた発電デバイスを提供することができる。また、発生電荷の電極内打ち消しを防ぐために意図しない振動モードを抑制する構造を備えた発電デバイスを提供することができる。
【0094】
〈実施形態1乃至3の変形例1〉
図15を用いて、本発明の実施形態1乃至3の変形例に係る連結部材130について説明する。連結部材130の形状、サイズ、および作用以外は、本発明の実施形態1乃至3と同じであり、その繰り返しの説明は省略する。
【0095】
図15は、本発明の実施形態に係る連結部材の一例と、その変形例を示す図である。
図15(a)では多段円柱型の連結部材130を示した。
図15(b)では多段角柱型の連結部材130を示した。
【0096】
本発明の実施形態1乃至3の変形例に係る発電デバイスは、複数の圧電素子120と、その数がm個のとき、連結部131で、(m−1)個の連結部材130を挟み込む構造で連結してもよい(mは2以上の自然数)。ここで、mが3以上であるとき、複数の連結部材130は別々の形状をとってもよい。
【0097】
連結部材130は、形状およびサイズによって、錘として機能しうる事を意味する。振動エネルギーを、複数の圧電素子120へ伝える外力に変換する1つの方法となる。このため連結部材130の形状およびサイズは、安定して振動エネルギーを圧電素子120へ伝える外力に変換できるかぎり限定されない。錘の位置も、連結部材130軸延長線上であり、安定して振動エネルギーを圧電素子120へ伝える外力に変換できるかぎり限定されない。
連結部材130の連結部131の位置も、安定して振動エネルギーを圧電素子120へ伝える外力に変換できるかぎり限定されない。
【0098】
以上の構造とすることにより、本実施形態に係る本発明の発電デバイスは、自然環境に広周波数帯域で存在する振動エネルギーを、効率よく電気エネルギーに変換するために非線形ばね効果を利用し、広い発電周波数帯を備えた発電デバイスを提供することができる。
【0099】
これによって、配線給電や電池駆動が難しい、車載応用システムやインフラ健全性診断システムといったITo向けセンサネットワークモジュールの電源用発電機を提供することができる。
【0100】
〈実施形態1の変形例2〉
図16および
図17を用いて、本発明の実施形態の変形例に係る圧電素子120について説明する。120の形状、および作用以外は、本発明の実施形態1から3と同じであり、その繰り返しの説明は省略する。
【0101】
図16は、本発明の実施形態の変形例に係る圧電素子120を備えた発電デバイス4000を示す斜視図である。
図16に示すように、本実施形態に係る発電デバイスは、保持部材110、複数の圧電素子120a及び120b、連結部材130を備えている。
【0102】
複数の圧電素子120は一定のスペースを介して上下に配置される。ここで、
図16においては、説明の便宜上、2枚の圧電素子120有する発電デバイス4000を一例として図示した。複数の圧電素子120は、端部を保持部材110に固定される。本実施形態に係る保持部材110の材料はアルミニウム(A5052)であるが、ステンレス他、耐久性を備えた材料ならこれに限定しない。
【0103】
図16に示すように、複数の圧電素子120は、その数がm個のとき、連結部131で、(m−1)個の連結部材130を挟み込む構造で連結してもよい(mは2以上の自然数)。ここでは、説明の便宜上、1個の連結部材130を2枚の圧電素子120で挟みこむ構造を一例として図示した(m=2)。
【0104】
図17は、本発明の実施形態の変形例2に係る発電デバイス1000の一例を示す平面図である。
図16および
図17に示すように、圧電素子120は、金属弾性板122と、金属弾性板の上面に複数配置された圧電体121とを含む。金属弾性板122は、高靭性と弾性を備え、薄い板状で曲げ剛性が低い構造であればよい。本実施形態においては、金属弾性板122は、厚さが50μmの2cm四方の板状ステンレス素子(2015W5−100)を用いている。
【0105】
圧電素子120はn本の両持ち梁の構造を維持する配置に、2n個のスリット123を有するようにしてもよい(nは自然数)。ここで、
図16および
図17においては、2個のスリット123を有する圧電素子120を一例として図示した(n=1)。この結果、圧電素子120は1本の両持ち梁を有するI字構造を示す。
【0106】
以上の構造とすることにより、本実施形態に係る本発明の発電デバイスは、大きな振動にも壊れること無く、かつ、発生した電気エネルギーを無駄にすること無く、広帯域の振動エネルギーを電気エネルギーにすることが可能となる。自然環境に広周波数帯域で存在する振動エネルギーを、効率よく電気エネルギーに変換するために非線形ばね効果を利用し、広い発電周波数帯を備えた発電デバイスを提供することができる。また、発生電荷の電極内打ち消しを防ぐために意図しない振動モードを抑制する構造を備えた発電デバイスを提供することができる。
【0107】
(実施形態4)
本発明の実施形態1乃至3に係る発電デバイスを備えた車載応用システムについて説明する。本発明の実施形態1乃至3に係る発電デバイスの繰り返しの説明は省略する。
【0108】
本実施形態の発電デバイスは、車載応用システムに接続される。すなわち、発電デバイスは、車載応用システムに電源を供給することができる。
【0109】
発電デバイスを有することで、レイアウトフリーになった車載応用システムは、電源、配線を気にすることなく車内外のいずれにも配置することができる。
【0110】
したがって、配線給電や電池駆動が難しい、車載応用システムや、インフラ健全性診断システムといったIoT向けセンサネットワークモジュールへ電源を供給することができる。
【0111】
(実施形態5)
図18を用いて、本発明の実施形態1乃至3に係る発電デバイスを備えた車載応用システムを装備した自動車6000について説明する。本発明の実施形態1乃至3に係る発電デバイスと、その発電デバイスを備えた車載応用システムについての繰り返しの説明は省略する。
【0112】
図18は、本発明の実施形態1に係る発電デバイス1000を備えた車載応用システムを装備した自動車6000の一例を示す図である。
【0113】
自動車6000は、フレームと、フレームに連結された車載応用システムと、車載応用システムに設置された発電デバイスとを有する自動車である。
【0114】
発電デバイスを有することで、レイアウトフリーになった車載応用システムは、電源、配線を気にすることなく車内外のいずれにも配置することができる(図示せず)。
【0115】
これによって、配線給電や電池駆動が難しい、車載応用システムや、インフラ健全性診断システムといったIoT向けセンサネットワークモジュールへ電源を供給することができる。
【0116】
なお、本発明は上記の実施形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。