(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6644503
(24)【登録日】2020年1月10日
(45)【発行日】2020年2月12日
(54)【発明の名称】電子名札システム
(51)【国際特許分類】
G07C 9/00 20200101AFI20200130BHJP
G06K 19/07 20060101ALI20200130BHJP
G06K 7/10 20060101ALI20200130BHJP
G06K 19/077 20060101ALI20200130BHJP
【FI】
G07C9/00 Z
G06K19/07 230
G06K7/10 268
G06K19/077 112
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-181687(P2015-181687)
(22)【出願日】2015年9月15日
(65)【公開番号】特開2017-58828(P2017-58828A)
(43)【公開日】2017年3月23日
【審査請求日】2018年6月27日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005810
【氏名又は名称】マクセルホールディングス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】大饗 康次
(72)【発明者】
【氏名】日野 吉晴
【審査官】
森林 宏和
(56)【参考文献】
【文献】
特開2003−312173(JP,A)
【文献】
特開2002−169485(JP,A)
【文献】
特開2006−127064(JP,A)
【文献】
特開2011−053998(JP,A)
【文献】
特開2006−259857(JP,A)
【文献】
特開2002−259347(JP,A)
【文献】
特開2007−128399(JP,A)
【文献】
特開2011−175388(JP,A)
【文献】
特開2009−070313(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G07C 9/00 − 9/02
G06K 19/00 − 19/18
G06K 7/00 − 7/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザーの個人情報を表示する電子名札(1)と、入退場ゲート(2)に配置されるリーダライタ(4)と、リーダライタ(4)を制御するホスト端末(5)を備えている電子名札システムであって、
電子名札(1)は、個人情報を表示する表示体(12)と、表示体(12)の表示状態を制御する表示制御部(13)と、リーダライタ(4)と無線通信を行う通信部(14)と、電源(15)を備えており、
電子名札(1)の表示制御部(13)は、表示体(12)で表示される文字および記号等のフォントデータを格納する表示記憶部(21)を備え、通信部(14)は、名札IDを格納する通信記憶部(23)を備えており、
ホスト端末(5)は、個人情報データが格納してあるデータ格納部(34)と、リーダライタ(4)とデータ格納部(34)の間でデータを送受するデータ制御部(35)を備えており、
ユーザーが入退場ゲート(2)から入場するとき、リーダライタ(4)と電子名札(1)の間で通信を確立して、名札IDに基づきホスト端末(5)のデータ格納部(34)から取得した個人情報データを電子名札(1)に転送して表示体(12)で表示しており、
ユーザーが入退場ゲート(2)から退場するとき、リーダライタ(4)と電子名札(1)との間で通信を確立して、表示体(12)における個人情報の表示を停止しており、
入退場ゲート(2)にユーザーの通過方向を特定する入退場検知部(3)が配置されており、入退場検知部(3)でユーザーが入場したか退場したかを特定して、リーダライタ(4)から電子名札(1)に表示指令を送信して表示体(12)に個人情報データを表示させ、あるいは表示停止指令を送信して表示体(12)の表示を停止しており、
入退場検知部(3)が、リーダライタ(4)を間にして入退場ゲート(2)の内外に配置されて、電子名札(1)の通信記憶部(23)に入場フラグあるいは退場フラグを記録する入場側リーダライタ(41)および退場側リーダライタ(42)で構成されており、
電子名札(1)の通信記憶部(23)に記録された入場フラグまたは退場フラグを前記リーダライタ(4)で読込んで、ユーザーが入場するのか退場するのかをホスト端末(5)に設けたデータ制御部(35)で判定することを特徴とする電子名札システム。
【請求項2】
ホスト端末(5)に、データ格納部(34)に記録された個人情報データの変更、および追加を行うデータ管理部(36)が設けられており、
電子名札(1)を再発行するとき、データ管理部(36)が紛失した電子名札(1)の名札IDを無効化し、再発行される電子名札(1)の名札IDを個人情報データとともにデータ格納部(34)に格納する請求項1に記載の電子名札システム。
【請求項3】
入退場検知部(3)が、ユーザーの通過方向に沿って入退場ゲート(2)に分離配置した複数個の光センサー(29A〜29C・30A〜30C)で構成されており、
複数個の光センサー(29A〜29C・30A〜30C)がユーザーの通過を検知するときの、各光センサー(29A〜29C・30A〜30C)の検知動作の違いで入退場ゲート(2)におけるユーザーの通過方向を特定する請求項1または2に記載の電子名札システム。
【請求項4】
入退場ゲート(2)の複数個所に、一人のユーザーのみが通過できる個別通路(6)が設けられて、各個別通路(6)ごとに入退場検知部(3)とリーダライタ(4)が配置されており、
個別通路(6)を通過するユーザーが着用した電子名札(1)とリーダライタ(4)との間で通信を確立して、入退場ゲート(2)を通過する複数のユーザーの電子名札(1)の表示、または表示停止を行う請求項1から3のいずれかひとつに記載の電子名札システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、個人情報を表示する表示部を備えている電子名札と、電子名札の識別コード(以下、単に名札IDと言う。)や個人情報の表示内容を読み書きするリーダライタと、個人情報を管理するホスト端末(サーバー)を備えている電子名札システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば学校等においては、学生、生徒等の個人識別を明確化するために、学校内において名札の着用を義務付けることがある。しかし、学校外において名札を着用したままであると、個人情報が不正に取得され犯罪に利用されるおそれがある。こうした個人情報の不正利用や情報漏洩を防ぐために、登校時に学校内で名札を着用し、下校時には名札を外して個人情報を保護する措置が講じられている。しかし、下校時に名札を外し忘れ、あるいは外した名札を紛失することがあり、そのため名札の付け外しを行うことのみで個人情報を確実に保護するのは難しい。また、名札を付け外しすること自体が煩わしく、さらに低学年の生徒の場合には、外した名札の保管や管理を適切に行えないことがある。
【0003】
本発明においては、名札を電子化して必要な場所においてのみ個人情報を表示し、それ以外の場所では個人情報の表示を停止して、個人情報の不正利用や情報漏洩を防止するが、こうした電子名札システムは例えば特許文献1に開示されている。そこでは、電子名札と、電子名札管理端末で電子名札システムを構成している。電子名札には、電子名札管理端末と通信する無線通信部と、個人情報を表示する表示部と、表示部の表示状態を制御する表示制御部と、表示データを格納する記憶部などが設けてある。電子名札管理端末は、特定エリアの入場口に設けられて、電子名札と通信することにより、電子名札を着用したユーザーの入場あるいは退場を検知し管理する。電子名札は、特定エリア内においてのみ個人情報を表示し、特定エリアから退場した状態では個人情報の表示を停止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−128399号公報(段落番号0055、
図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の電子名札システムによれば、特定エリア内においてのみ個人情報を表示できるので、個人情報の不正利用や情報漏洩を防止できる。しかし、個人情報が表示データとして電子名札の記憶部に格納してあるため、電子名札を紛失し、あるいは不正に取得された場合に、表示データが解析され、個人情報が不正に取得され犯罪に利用されるおそれがある。また、電子名札を紛失したユーザーに対しては電子名札を再発行するが、紛失した電子名札は真正であるため、何らかの形で無効化しない限りは悪用されるおそれがあり、電子名札の再発行に要する手間が煩雑になる。さらに、学生や生徒であれば学年および組番号などの氏名以外の属性情報、あるいは職域であれば所属部署および役職名などの氏名以外の属性情報が変わった場合に、個々の電子名札の表示データを書き換える必要があり、表示データの書き換えに多くの手間が掛かってしまう。
【0006】
特許文献1の電子名札システムは、特定エリアに入場し、あるいは特定エリアから退場するとき、例えばスイッチを操作し、あるいは認証カードを通して、ユーザーの入退場を電子名札管理端末に対して通知する必要がある。そのため、少人数のユーザーが特定エリアへ入場し、あるいは特定エリアから退場するような場合には問題はないが、多人数のユーザーが同時に入退場しようとした場合に、電子名札管理端末に対する通知に多くの時間が掛かかってしまう。例えば、特許文献1の電子名札システムを学校等に導入した場合には、登下校時に校門や校舎の入口が混雑し、学生や生徒を円滑に出入りさせることが困難となる。
【0007】
本発明の目的は、電子名札を紛失し、あるいは電子名札が不正に取得された場合であっても、個人情報が解析され悪用されるのを確実に防止できる、情報セキュリティ性に優れた電子名札システムを提供することにある。
本発明の目的は、氏名以外の属性情報の変更や、電子名札を紛失したときの再発行処理をホスト端末側で簡便に行うことができ、従来の電子名札システムに比べて取扱いや管理が容易な電子名札システムを提供することにある。
本発明の目的は、リーダライタの通信エリアを通過するだけで、電子名札に個人情報を表示し、あるいは表示を停止でき、多人数のユーザーが同時に入退場するような場合でも、ユーザーの入退場を円滑に行える電子名札システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る電子名札システムは、
図1に示すように、ユーザーの個人情報を表示する電子名札1と、入退場ゲート2に配置されるリーダライタ4と、リーダライタ4を制御するホスト端末5を備えている。電子名札1は、個人情報を表示する表示体12と、表示体12の表示状態を制御する表示制御部13と、リーダライタ4と無線通信を行う通信部14と、電源15を備えている。電子名札1の表示制御部13は、表示体12で表示される文字および記号等のフォントデータを格納する表示記憶部21を備え、通信部14は、名札IDを格納する通信記憶部23を備えている。ホスト端末5は、個人情報データが格納してあるデータ格納部34と、リーダライタ4とデータ格納部34の間でデータを送受するデータ制御部35を備えている。ユーザーが入退場ゲート2から入場するときは、リーダライタ4と電子名札1の間で通信を確立して、名札IDに基づきホスト端末5のデータ格納部34から取得した個人情報データを電子名札1に転送して表示体12で表示する。ユーザーが入退場ゲート2から退場するときは、リーダライタ4と電子名札1との間で通信を確立して、表示体12における個人情報の表示を停止することを特徴とする。
【0009】
入退場ゲート2にユーザーの通過方向を特定する入退場検知部3を配置する。入退場検知部3でユーザーが入場したか退場したかを特定して、リーダライタ4から電子名札1に表示指令を送信して表示体12に個人情報データを表示させ、あるいは表示停止指令を送信して表示体12の表示を停止する。
【0010】
ユーザーが入退場ゲート2から入場するとき、リーダライタ4は電子名札1と通信を確立し、電子名札1の通信記憶部23から名札IDを取得して、ホスト端末5のデータ制御部35へ送致する。データ制御部35は、リーダライタ4から受取った名札IDに基づき、データ格納部34から個人情報データを取得して、リーダライタ4を介して電子名札1の表示制御部13へ送致する。個人情報データを受取った電子名札1の表示制御部13は、必要なフォントデータを表示記憶部21から取得して表示体12に個人情報を表示する。
【0011】
ホスト端末5に、データ格納部34に記録された個人情報データの変更、および追加を行うデータ管理部36を設ける。電子名札1を再発行するとき、データ管理部36が紛失した電子名札1の名札IDを無効化し、再発行される電子名札1の名札IDを個人情報データとともにデータ格納部34に格納する。
【0012】
入退場検知部3は、ユーザーの通過方向に沿って入退場ゲート2に分離配置した複数個の光センサー29A〜29C・30A〜30Cで構成する。複数個の光センサー29A〜29C・30A〜30Cがユーザーの通過を検知するときの、各光センサー29A〜29C・30A〜30Cの検知動作の違いで入退場ゲート2におけるユーザーの通過方向を特定する。
【0013】
入退場検知部3は、リーダライタ4を間にして入退場ゲート2の内外に配置されて、電子名札1の通信記憶部23に入場フラグあるいは退場フラグを記録する入場側リーダライタ41および退場側リーダライタ42で構成する。電子名札1の通信記憶部23に記録された入場フラグまたは退場フラグを前記リーダライタ4で読込んで、ユーザーが入場するのか退場するのかをホスト端末5に設けたデータ制御部35で判定する。
【0014】
入退場ゲート2の複数個所に、一人のユーザーのみが通過できる個別通路6が設けられて、各個別通路6ごとに入退場検知部3とリーダライタ4を配置する。個別通路6を通過するユーザーが着用した電子名札1とリーダライタ4との間で通信を確立して、入退場ゲート2を通過する複数のユーザーの電子名札1の表示、または表示停止を行う。
【発明の効果】
【0015】
本発明の電子名札システムにおいては、個人情報データをホスト端末5のデータ格納部34に格納しておき、電子名札1には名札IDとフォントデータ等を格納するようにした。そのうえで、ユーザーが入退場ゲート2を入場するとき、電子名札1とリーダライタ4の間の通信を確立して、電子名札1に格納してある名札IDをキーにして、データ格納部34から個人情報データを電子名札1へ転送し、表示体12で個人情報を表示するようにした。また、ユーザーが入退場ゲート2から退場するときは、リーダライタ4と電子名札1との間で通信を確立して、表示体12における個人情報の表示を停止するようにした。
【0016】
上記の電子名札システムによれば、ユーザーが入退場ゲート2から退場した状態では、電子名札1における個人情報の表示が停止されるので、個人情報が不必要に人目に晒され、あるいは不正に取得されるのを防止できる。また、入退場ゲート2から退場したユーザーの電子名札1には、個人情報が残っていないので、電子名札1を紛失し、あるいは電子名札1が不正に取得された場合であっても、個人情報が解析され悪用されるのを確実に防止して、情報セキュリティ性を向上できる。さらに、ユーザーの個人情報データは、ホスト端末5のデータ格納部34にまとめて格納してあるので、氏名以外の属性情報の変更や、電子名札1を紛失したときの再発行処理をホスト端末5側で簡便に行うことができ、従来の電子名札システムに比べて、電子名札システムの取扱いや管理を容易化できる。
【0017】
入退場ゲート2に入退場検知部3を配置する電子名札システムによれば、ユーザーが入場したか退場したかを入退場検知部3で明確に特定することができる。そのため、一度入退場ゲート2から入場したユーザーが退場し、再び入場するような場合でも、表示体12による個人情報データの表示と、表示の停止をさらに確実に行えるので、個人情報が不必要に人目に晒され、あるいは不正に取得されるのをさらに確実に防止できる。
【0018】
ホスト端末5にデータ管理部36を設けておき、電子名札1を再発行するとき、紛失した電子名札1の名札IDをデータ管理部36で無効化すると、紛失した電子名札1が不正に使用されるのを確実に防止して、電子名札1の情報セキュリティ性をさらに向上できる。従って、紛失した電子名札1の悪用による個人情報の漏えいや、関係者以外の悪意を持った人間が特定エリアへ入場するのを確実に防止できる。
【0019】
複数個の光センサー29A〜29C・30A〜30Cの検知動作の違いで、入退場ゲート2におけるユーザーの通過方向を特定すると、ユーザーの入場動作と退場動作を明確に特定できるので、表示体12による個人情報の表示と、表示の停止を的確に行える。また市販されている光センサーを利用して入退場検知部3を構成できるので、電子名札システムの導入に要するコストを削減できる。
【0020】
入場側リーダライタ41および退場側リーダライタ42で入退場検知部3を構成すると、ユーザーが入退場ゲート2を通過するのに先行して、電子名札1に入場フラグや退場フラグが格納されるので、ユーザーの入退場をさらに確実に特定することができる。これは、リーダライタ4と電子名札1の間で無線通信を行う際に、予めデータ化してある入場フラグや退場フラグによって、ユーザーの入退場を電子的に瞬時に特定できるからである。また、リーダライタ4と電子名札1の間の無線通信によって、ユーザーの入退場を特定するので、天候の影響や、自動車のヘッドライトの照射光による外乱を受けることもなく、安定した状態でユーザーの入退場を特定できる。
【0021】
入退場ゲート2の複数個所に個別通路6を設け、各個別通路6ごとに入退場検知部3とリーダライタ4を配置すると、ユーザーはリーダライタ4の通信エリアを通過するだけで、電子名札1に個人情報を表示し、あるいは表示を停止できる。また、入退場ゲート2を通過するとき、ユーザーはホスト端末5に対して入退場を通知する必要がないので、多人数のユーザーが同時に入場し、あるいは退場するような場合でもユーザーの入退場を円滑に行って、入退場ゲート2における混雑や混乱を避けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明に係る電子名札システムのブロック図である。
【
図5】電子名札システムの別の実施例を示すブロック図である。
【
図6】別の実施例に係る校門と電子名札の関係を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(実施例1)
図1ないし
図4は、本発明に係る電子名札システムの実施例を示す。実施例では、ユーザーが生徒であり、登校した生徒の個人情報を学校内部において電子名札1で表示し、下校時には電子名札1による生徒の個人情報の表示を停止する、生徒用の電子名札システムについて説明する。
図1および
図2において、電子名札システムは、生徒の個人情報を表示する電子名札1と、校門(入退場ゲート)2に配置した登下校検知部(入退場検知部)3およびリーダライタ4と、電子名札1を着用した生徒の個人情報データを記憶し管理するホスト端末5などで構成する。校門2以外に登下校できる出入口(入退場ゲート)がある場合には、登下校検知部3およびリーダライタ4を校門2および出入口のそれぞれに設ける。この実施例では
図2に示すように、校門2に一人の生徒のみが通過できる個別通路6を2個設けて、各個別通路6に登下校検知部3およびリーダライタ4を配置している。
【0024】
図3に示すように、電子名札1は、縦長四角形状の薄いケース9の内部にRFIDタグを収容して構成してある。ケース9の上部には、電子名札1を被服に止付けるためのタブ10と安全ピン11が設けてある。
図1においてRFIDタグは、個人情報を表示する電子ペーパー(表示体)12と、電子ペーパー12の表示状態を制御する表示制御部13と、リーダライタ4と無線通信を行う通信部14と、電源15などで構成する。電源15はボタン型の1次電池からなり、タブ10側のケース9の内部に着脱可能に収容してある。電子ペーパー12は、ケース9の前面に設けた透明の表示窓16の内面に固定してあり、生徒の個人情報データを表示し、あるいは表示を停止する。この実施例では、生徒個人の氏名と、学年、組、席次などの氏名以外の属性情報と、学校名を電子ペーパー12で表示するようにした(
図3参照)。
【0025】
図1に示すように表示制御部13は、電子ペーパー12の表示状態を制御する表示ドライバー19と、表示制御部13の全体の動作を制御する表示コントローラ20と、電子ペーパー12で表示される文字および記号等のフォントデータを格納する表示記憶部21で構成する。表示コントローラ20は通信部14と接続されていて、後述する通信コントローラ22から送られる起動信号を受信するための待機モードと、電子ペーパー12に個人情報データを表示する表示モードに電子名札1を切換えることができる。
【0026】
詳しくは、表示コントローラ20は、登校時に通信部14を介してホスト端末5から取得した個人情報データに基づき、表示記憶部21から必要なフォントデータを取得して表示ドライバー19を作動させ、電子ペーパー12に個人情報データを表示する。また、表示モードにおける表示処理が終了したら、電子ペーパー12に個人情報データが表示された状態のままで、表示コントローラ20を再び待機モードに切換える。さらに、下校時には、通信部14を介して取得した停止コマンドに基づき表示ドライバー19を作動させて、電子ペーパー12の表示を消去し、表示を停止させる。
【0027】
通信部14は、通信コントローラ22と、通信記憶部23と、ダイポール型のアンテナ24で構成してある。通信コントローラ22は、電子名札1がリーダライタ4の通信エリア内に入ったとき、リーダライタ4から放射された送信波をアンテナ24が受信した際の起電力で起動し、リーダライタ4から送信された指令信号に基づき、通信記憶部23に格納してある名札IDをリーダライタ4へ送信する。通信記憶部23には先の名札IDと、リーダライタ4との無線通信を制御するプログラムなどが格納してある。通信記憶部23は、リーダライタ4から送信された個人情報データを一時的に格納するメモリーとしても機能する。
【0028】
名札IDは、通信コントローラ22の固有の識別コードであって、個々の電子名札1のそれぞれに異なる名札IDが割り当ててある。通信部14とリーダライタ4との間の無線通信は、UHF帯(920MHz)の電波を通信媒体としており、通信規格(EPC Global Class−1 Generation−2)に基づいて通信制御を行うので、電子名札1をリーダライタ4に近接させ、あるいは密着させる必要はない。
【0029】
図2に示すように、登下校検知部3は個別通路6を間に挟む門柱26・27に一定間隔おきに配置した3組の投光器(光センサー)29A・29B・29Cと、先の門柱26・27と対向する門柱27・28に一定間隔おきに配置した3組の受光器(光センサー)30A・30B・30Cで構成する。生徒が各門柱26・27・28の間を通過すると、投光器29A・29B・29Cから受光器30A・30B・30Cへ向かって照射された検知光が生徒によって遮られるので、3組の受光器30A・30B・30Cの受光信号がどの順番で途切れたかを知ることができる。例えば、受光器30A・30B・30Cの受光信号が、30C・30B・30Aの順に途切れた場合には、生徒が校門2を入場方向へ通過したことを特定でき、逆の場合には、生徒が退場方向へ通過したことを特定することができる。なお、中間位置に設けた受光器30Bの受光信号が途切れた時点で、入場か退場かを特定できるので、この時点でリーダライタ4から電子名札1に表示指令を送信して個人情報データを表示させ、あるいは表示停止指令を送信して表示を停止する。
【0030】
リーダライタ4は個別通路6の地面に埋設されてホスト端末5に接続されており、パッチ型のアンテナ33を介して電子名札1に送信波を送信し、あるいは、電子名札1から送信された反射波を受信する。ホスト端末5はパーソナルコンピュータからなり、データ格納部34と、データ制御部35と、データ管理部36を備えている。
図4に示すように、データ格納部34には名札IDと、氏名、学年、組、席次等の個人情報データと、登下校の履歴データが格納してある。
【0031】
データ制御部35は、登下校検知部3の検知データを受取り、さらにリーダライタ4を介して受取った名札IDに基づきデータ格納部34から取得した個人情報データを、リーダライタ4を介して電子名札1に送信する。データ管理部36は、データ格納部34の個人情報データを管理するために設けてあり、個人情報データのデータベースを作成し、あるいは作成したデータベースの加除および訂正を行い、さらに電子名札を再発行する場合等に使用する。データ格納部34に格納してあるデータは、データ管理部36を起動することによりホスト端末5のディスプレイにまとめて表示することができるので、例えば学年、組、席次等のデータを各組ごと、あるいは学年ごとにまとめて変更することができる。従って、個々の電子名札1に個人情報データが格納してある場合に比べて、氏名以外の属性情報の変更を簡便に行うことができる。
【0032】
次に、登校時および下校時における電子名札1とホスト端末5のデータ授受の概略を説明する。
図2に示すように、登校する生徒は被服の胸部分に電子名札1を着用して、校門2に設けた個別通路6から校内へ入場する。例えば午前8時になったら、リーダライタ4はホスト端末5の指令信号を受けて送信波の発信を開始する。生徒が校門2に近づき、待機モードの電子名札1がリーダライタ4の通信範囲内に入ると、電子名札1の通信コントローラ22が、リーダライタ4から放射された送信波によってアンテナ24に生じる起電力で起動し、電子名札1とリーダライタ4の間で通信を確立する。このとき、リーダライタ4は、アンテナ24の反射波を介して通信記憶部23に格納してある名札IDを取得し、ホスト端末5のデータ制御部35へ送致する。データ制御部35は、リーダライタ4から受取った名札IDをキーにして、データ格納部34から個人情報データを取得して、リーダライタ4を介して電子名札1の表示制御部13へ送致する。個人情報データを受取った表示制御部13は、必要なフォントデータを表示記憶部21から取得して、
図3に示すように電子ペーパー12に個人情報を表示する。一連の処理は、生徒が校門2を通過する間に行えるので、多人数の生徒が同時に校門2を通過する場合でも、混雑することはなく、生徒の入場(または退場)を円滑に行うことができる。
【0033】
ホスト端末5は、電子ペーパー12による個人情報の表示と併行して、生徒が校門2を入場方向へ通過したことを受光器30A・30B・30Cの受光信号から特定して、登下校の履歴データを○印に書換える。必要があれば、登校した時間を個人情報データとして記録してもよい。表示モードにおける表示処理が終了したら、電子ペーパー12に個人情報データが表示された状態のままで、表示コントローラ20を待機モードに切換えて、電子名札1の作動を停止させる。このように電子名札1の作動を停止した状態では、電源15の電力は消費されないので電源15の交換間隔を大きくできる。なお、ホスト端末5は始業時間が始まって一定時間が経過した時点で作動を停止させるが、生徒個人の事情や早退等により、終業時間前に登下校する場合には、ホスト端末5を起動して登校時および下校時の処理を行う。
【0034】
生徒の下校時間は、学年によって異なることがあるので、最も早く下校する学年の下校時間に合わせてホスト端末5を起動させ、リーダライタ4から送信波を発信する。生徒が校門2に近づき、待機モードの電子名札1がリーダライタ4の通信範囲内に入ると、登校時と同様に電子名札1の通信コントローラ22が、リーダライタ4から放射された送信波によってアンテナ24に生じる起電力で起動し、電子名札1とリーダライタ4の間で通信を確立する。このとき、リーダライタ4は、アンテナ24の反射波を介して通信記憶部23に格納してある名札IDを確認したのち、電子ペーパー12の表示を停止させるコマンドを通信コントローラ22に送致する。停止コマンドを受けた通信コントローラ22は、表示ドライバー19を作動させて、電子ペーパー12の表示を消去し、表示を停止させる。併行して、データ制御部35はリーダライタ4から受取った名札IDに基づき、登下校の履歴データを消去して空欄にし、表示制御部13に格納されているフォントデータを消去する。
【0035】
登下校時や家庭において電子名札1を紛失することがあり、紛失した電子名札1が不正に取得されるおそれがある。しかし、個人情報データはホスト端末5に格納してあるだけで、電子名札1にはフォントデータと名札IDしか残っていない。従って、不正に取得され電子名札1が解析されたとしても、個人情報が漏洩することはない。電子名札1を紛失した生徒に対しては電子名札1を再発行する。その場合にはホスト端末5を起動して、データ管理部36で紛失した電子名札1の名札IDを無効化し、再発行される電子名札1の名札IDを個人情報データとともにデータ格納部34に格納することにより、紛失した電子名札1が悪用されるのを確実に防止できる。生徒の転入や転出時の電子名札1の発行や無効化も、ホスト端末5側で簡便に行えるので、従来の電子名札システムに比べて取扱いや管理が容易な電子名札システムを提供できる。
【0036】
図5および
図6は電子名札システムの別の実施例を示している。そこでは
図6に示すように、校門2の門柱26・27の間に3個のリーダライタ4を配置し、各リーダライタ4を間にして校門2の内外に配置した入場側リーダライタ41および退場側リーダライタ42で、入退場検知部3を構成している。入場側リーダライタ41は、リーダライタ4と同様に電子名札1と通信を確立して、通信記憶部23に記録されていた退場フラグを消去し、入場フラグを格納する。また、退場側リーダライタ42はリーダライタ4と同様に電子名札1と通信を確立して、通信記憶部23に記録された入場フラグを消去し、退場フラグを格納する。リーダライタ4は、通信記憶部23に格納されているのが入場フラグであるか退場フラグであるかによって、生徒が入場したか退場したかをホスト端末5に設けたデータ制御部35で判定し、登下校履歴データを更新する。
図5において符号43はアンテナである。
【0037】
登校時の生徒は、入場側リーダライタ41とリーダライタ4を通過したのち、退場側リーダライタ42を通過するが、登校時には退場側リーダライタ42の作動を停止しておくことにより、入場フラグが消去されるのを防止できる。同様に、下校時には入場側リーダライタ41の作動を停止しておくことにより、退場フラグが消去されるのを防止できる。他は先の実施例と同じであるので、同じ部材に同じ符号を付してその説明を省略する。
【0038】
上記のように、入場側リーダライタ41および退場側リーダライタ42で構成した入退場検知部3によれば、生徒が校門2を通過するのに先行して、電子名札1に入場フラグや退場フラグが格納されるので、生徒の登下校をさらに確実に特定することができる。因みに、光センサーを検知要素とする場合には、天候の影響や、自動車のヘッドライトの照射光で受光器30A〜30Cが誤作動するおそれがあり、さらに、ポケットライトを使用したいたずらを受けやすいが、こうした誤作動を一掃できる。また、複数の生徒が横に並んだ状態で校門2を通過した場合でも、個々の生徒の電子名札1と各リーダライタ41・42の間で通信を確立して、生徒の入退場を確実に特定できる。
【0039】
本発明の電子名札システムは、学校等における登下校時の名札管理以外に、企業や公的機関、研究所、空港などの特定エリアにおける入退場時の名札管理にも適用することができる。また、展示会場の入場者に電子名札1を配布し、さらに、展示会場の個々の展示ブースにリーダライタを設けておくことにより、展示ブースの繁忙度合いや、展示会場の入場者の行動を知るためのデータを収集することができる。
【0040】
上記の実施例では、3組の透過型の光センサーで生徒の入退場を検知するようにしたが、光センサーは反射型の光センサーであってもよい。また、光センサーは、少なくとも校門2の内外に2組配置してあれば足りる。さらに、ホスト端末5に登校時間と下校時間を設定しておき、登校時間帯においては、校門2を通過した生徒の電子名札1に個人情報を表示し、下校時間帯においては、校門2を通過した生徒の電子名札1に表示してある個人情報を消去するようにしてもよい。その場合には、ホスト端末5が入退場検知部3を兼ねることになる。電源15は2次電池であってもよい。電子ペーパー12の表面に、学校の校章や校名、あるいは会社のハウスマーク等の標章や会社名を印刷しておいて、個人情報の表示を停止した場合でも、校章や校名あるいは標章や会社名を明示できるようにしてもよい。登校専用の校門2と下校専用の校門2を別個に設けておくことができる。その場合には、生徒が校門2から入場したか、校門2から退場したかを特定する必要がないので、入退場検知部3を省略することができる。
【0041】
登下校時に生徒が校門2を通過したことを、例えばEメールで保護者に通知することができる。上記の実施例では、登校時に生徒が校門2を通過したことを登下校検知部3が検知した時点で、電子ペーパー12に個人情報を表示するようにしたが、その必要はなく、生徒が教室へ入った時点で電子ペーパー12に個人情報を表示することができる。その場合には、教室の出入り口に別途リーダライタを設置しておいて、教室に入ってきた生徒の電子ペーパー12に個人情報を表示することができる。また、校門2を通過してから一定時間が経過したことをタイマーで計時して、教室または校舎に入ってきた生徒の電子ペーパー12に個人情報を表示するようにしてもよい。このように、電子ペーパー12による個人情報の表示を、教室または校舎の側で行うと、登校時の生徒の入場を円滑に行って、校門付近が混雑するのを解消できる。
【符号の説明】
【0042】
1 電子名札
2 校門(入退場ゲート)
3 登下校検知部(入退場検知部)
4 リーダライタ
5 ホスト端末
6 個別通路
9 ケース
12 電子ペーパー(表示体)
13 表示制御部
14 通信部
15 電源
19 表示ドライバー
20 表示コントローラ
21 表示記憶部
22 通信コントローラ
23 通信記憶部
24 通信部のアンテナ
33 リーダライタのアンテナ
34 ホスト端末のデータ格納部
35 ホスト端末のデータ制御部
36 ホスト端末のデータ管理部