(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6644535
(24)【登録日】2020年1月10日
(45)【発行日】2020年2月12日
(54)【発明の名称】電動式操向装置の故障有無検出装置及び方法
(51)【国際特許分類】
B62D 6/00 20060101AFI20200130BHJP
B62D 5/04 20060101ALI20200130BHJP
B62D 101/00 20060101ALN20200130BHJP
B62D 119/00 20060101ALN20200130BHJP
【FI】
B62D6/00
B62D5/04ZYW
B62D101:00
B62D119:00
【請求項の数】10
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-239649(P2015-239649)
(22)【出願日】2015年12月8日
(65)【公開番号】特開2017-7645(P2017-7645A)
(43)【公開日】2017年1月12日
【審査請求日】2018年8月9日
(31)【優先権主張番号】10-2015-0084847
(32)【優先日】2015年6月16日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】591251636
【氏名又は名称】現代自動車株式会社
【氏名又は名称原語表記】HYUNDAI MOTOR COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(72)【発明者】
【氏名】ノ、ユン、カプ
(72)【発明者】
【氏名】イ、ジョン、ホ
(72)【発明者】
【氏名】ノ、ヤン、ス
(72)【発明者】
【氏名】ハン、ミン、ウ
【審査官】
鈴木 敏史
(56)【参考文献】
【文献】
韓国登録特許第10−1449324(KR,B1)
【文献】
韓国登録特許第10−1491391(KR,B1)
【文献】
特開2004−276734(JP,A)
【文献】
特開平7−172331(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 6/00
B62D 5/04
B62D 101/00
B62D 119/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)車両の旋回時、車速が第1設定値以上であるかを判断する段階と、
b)前記a)段階を満足していれば、操向トルクとモータートルクの乗算演算を行って所定の一定時間を積分した累積値の大きさが第2設定値以上であるかを判断する段階と、 c)前記モータートルクの大きさが第3設定値以上であるかを判断する段階と、
d)前記車速と操向角によってヨーレート変化率の大きさを判断して第4設定値以上であるかを判断する段階と、
前記b)〜d)段階の判断条件をすべて満足していれば、操向装置が故障状態であると判断し、何れの一段階でも満足していなければ、前記操向装置が正常状態であると判断する段階と、を含むとともに、
前記操向装置が故障状態であると判断された場合、故障種類の判断を行う段階をさらに含むが、前記故障種類の判断を行う段階は、
e)前記操向角と前記ヨーレート変化率の符号が同じであるかを判断する段階と、
f)前記e)段階を満足していれば、前記操向装置はオーバーステアリング故障であると判断し、前記e)段階を満足していなければ、前記操向装置はロングディレクション故障であると判断する段階と、をさらに含むことを特徴とする電動式操向装置の故障有無検出方法。
【請求項2】
前記操向装置が故障状態であると判断される場合、
前記操向装置のモーターに印加される電流を遮断する段階をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の電動式操向装置の故障有無検出方法。
【請求項3】
前記操向装置のモーターに印加される電流を遮断する段階の後、
前記操向装置をリセットして再開始する段階をさらに含むことを特徴とする請求項2に記載の電動式操向装置の故障有無検出方法。
【請求項4】
前記各段階を順次繰り返すことを特徴とする請求項1に記載の電動式操向装置の故障有無検出方法。
【請求項5】
前記a)段階で車両の旋回を判断する時、前記操向トルクと操向角入力を判断して前記車両の旋回を判断することを特徴とする請求項1に記載の電動式操向装置の故障有無検出方法。
【請求項6】
前記ヨーレート変化率は、前記操向角入力と車速に基づいてヨーレート値を推定し、前記推定されたヨーレート値を微分して低域通過フィルタを用いて前記ヨーレート変化率を算出することを特徴とする請求項1に記載の電動式操向装置の故障有無検出方法。
【請求項7】
車両の操向トルク及び操向角入力により車両が旋回したか否かを判断し、車両が旋回したと判断する時、車速が第1設定値以上であれば、操向装置の故障有無判断実行命令を送信する先行条件判断モジュールと、
前記先行条件判断モジュールの故障有無判断実行命令を受信して操向装置の故障有無を判断する故障有無判断モジュールと、を含み、
前記故障有無判断モジュールは、前記操向トルクとモータートルクの乗算演算を行って所定の一定時間を積分した累積値の大きさが第2設定値以上であるかを判断する積分基盤検出モジュールと、
前記モータートルクの大きさが第3設定値以上であるかを判断するモータートルク基盤検出モジュールと、
前記車速と操向角によりヨーレート変化率の大きさを判断して第4設定値以上であるかを判断するヨーレート変化率基盤検出モジュールと、を含み、
前記積分基盤検出モジュール、モータートルク基盤検出モジュール、及びヨーレート変化率基盤検出モジュールの条件をすべて満足していれば、前記操向装置の故障を判断するとともに、
前記故障有無判断モジュールで前記操向装置の故障を判断した場合、
前記操向角とヨーレート変化率の符号が同じであるかを判断し、前記操向角とヨーレート変化率の符号が同じであれば、前記操向装置はオーバーステアリング故障であると判断し、
前記操向角とヨーレート変化率の符号が同じでなければ、ロングディレクション故障であると判断する故障種類判断モジュールをさらに含むことを特徴とする電動式操向装置の故障有無検出装置。
【請求項8】
前記故障有無判断モジュールにより前記操向装置が故障状態であると判断される場合、 前記操向装置のモーターに印加される電流を遮断するモーター制御モジュールをさらに含むことを特徴とする請求項7に記載の電動式操向装置の故障有無検出装置。
【請求項9】
前記モーター制御モジュールで操向装置のモーターに印加される電流を遮断する場合、 前記操向装置をリセットして再開始することを特徴とする請求項8に記載の電動式操向装置の故障有無検出装置。
【請求項10】
前記ヨーレート変化率は、前記操向角入力と車両の速度に基づいてヨーレートを推定し、前記推定されたヨーレート値を微分して低域通過フィルタに適用して算出することを特徴とする請求項7に記載の電動式操向装置の故障有無検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の電動式操向装置(MDPS、Motor Drive Power System)に関する発明である。より好ましくは、本発明は、車両の全体状態を考慮してモニターリングを行って電動式操向装置の故障及び故障の種類を判断する検出装置及び検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車内部品の電子化に伴って車両の機能安全に対する関心が高まっており、車両の機能安全に関する国際標準のISO26262が自動車関連企業などに大いなる関心を呼び起こしている。
【0003】
車両の電動式操向装置でもこのようなISO26262を満足する操向装置を提供しようとする試みが加速化されている。そして、このような電動式操向装置で生じる問題点には、オーバーステアリング(Over Steering)及びロングディレクション(Wrong direction)がある。オーバーステアリングは、車体が操向角度に比べて曲がりすぎる現象をいうもので、後輪が横方向に滑り始めて接地力を失って発生する現象を指す用語である。また、ロングディレクションは、車体がハンドルの操向角度とは異なる方向に車両が進行する現象をいうもので、車両がユーザの要求と違った旋回方向に走行する現象を指す用語である。
【0004】
図1または
図2は、車両の旋回走行時、オーバーステアリング及びロングディレクションが発生した場合を示す図面である。
【0005】
前記
図1および
図2で車両は駆動し始めて旋回を開始する。そして、電動式操向装置の故障が発生すると、車両は正常にコーナーを旋回せず、故障時の経路を辿るようになる。
【0006】
したがって、走行中にこのような電動式走行装置の故障が発生すると、ユーザの要求通りに車両がコーナーを回らずに、辿るべき経路の内側または外側にずれ込んでしまうという問題があった。
【0007】
先行技術の特許文献1では、車両の前輪操向装置を用いて車両の前輪を後輪と同じ方向に操向することで、車両の後輪操向装置が故障しても車両の直進性を確保する技術を提供している。
【0008】
しかし、前記特許文献1では、車両の電子式操向装置の故障有無を早期に感知してモーターの電流印加を遮断して手動操向装置の操作を可能とする技術を開示していないため、操向装置が故障しても車両の走行性を維持できないという問題がある。
【0009】
また、電動式操向装置の故障により前記操向装置をリセットして再作動を行うが、誤りが発生することを防止する方法を提供していないという問題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】韓国特許出願第2012−92310号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記のような問題点を解決するために案出されたもので、電動式操向装置において、前記操向装置の故障有無を早期に感知する装置及び方法を提供する。
【0012】
また、車両の全体状態を現象学的に判断して操向装置の故障有無を判断できるが、電動式操向装置に別途の機能を追加しなくてもフェイルセーフ機能を行う技術を提供する。
【0013】
また、操向装置が故障すると、電動式操向装置のモーターの電流印加を遮断して手動で操向装置の操作を可能とする方法を提供する。
【0014】
また、操向装置が故障すると、電動式操向装置をリセットして再作動することで、誤りが発生することを防ぐ方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明による電動式操向装置の故障有無検出方法は、a)車両の旋回時、車速が第1設定値以上であるかを判断する段階と、b)前記a)段階を満足していれば、操向トルクとモータートルクの乗算演算を行って所定の一定時間を積分した累積値の大きさが第2設定値以上であるかを判断する段階と、c)前記モータートルクの大きさが第3設定値以上であるかを判断する段階と、d)前記車速と操向角によってヨーレート変化率の大きさを判断して第4設定値以上であるかを判断する段階と、前記b)〜d)段階の判断条件をすべて満足していれば、操向装置が故障状態であると判断し、何れの一段階でも満足していなければ、前記操向装置が正常状態であると判断する段階と、を含むことを特徴とする電動式操向装置の故障有無検出方法を提供する。
【0016】
また、前記操向装置が故障状態であると判断された場合、故障種類の判断を行う段階をさらに含むが、前記故障種類の判断を行う段階は、e)前記操向角と前記ヨーレート変化率の符号が同じであるかを判断する段階と、f)前記e)段階を満足していれば、前記操向装置はオーバーステアリング故障であると判断し、前記e)段階を満足していなければ、前記操向装置はロングディレクション故障であると判断する段階と、をさらに含むことを特徴とする電動式操向装置の故障有無検出方法を提供する。
【0017】
また、前記操向装置が故障状態であると判断される場合、前記操向装置のモーターに印加される電流を遮断する段階をさらに含むことを特徴とする電動式操向装置の故障有無検出方法を提供する。
【0018】
また、前記操向装置のモーターに印加される電流を遮断する段階の後、前記操向装置をリセットして再開始する段階をさらに含むことを特徴とする電動式操向装置の故障有無検出方法を提供する。
【0019】
また、前記各段階を順次繰り返すことを特徴とする電動式操向装置の故障有無検出方法を提供する。
【0020】
また、前記a)段階で車両の旋回を判断する時、前記操向トルクと操向角入力を判断して前記車両の旋回を判断することを特徴とする電動式操向装置の故障有無検出方法を提供する。
【0021】
また、前記ヨーレート変化率は、前記操向角入力と車速に基づいてヨーレートを推定し、前記推定されたヨーレート値を微分して低域通過フィルタを用いて算出することを特徴とする電動式操向装置の故障有無検出方法を提供する。
【0022】
本発明の電動式操向装置の故障有無検出装置は、車両の操向トルク及び操向角入力により車両が旋回したか否かを判断し、車両が旋回したと判断する時、車速が第1設定値以上であれば、操向装置の故障有無判断実行命令を送信する先行条件判断モジュールと、前記先行条件判断モジュールの故障有無判断実行命令を受信して操向装置の故障有無を判断する故障有無判断モジュールと、を含み、前記故障有無判断モジュールは、前記操向トルクとモータートルクの乗算演算を行って所定の一定時間を積分した累積値の大きさが第2設定値以上であるかを判断する積分基盤検出モジュールと、前記モータートルクの大きさが第3設定値以上であるかを判断するモータートルク基盤検出モジュールと、前記車速と操向角によりヨーレート変化率の大きさを判断して第4設定値以上であるかを判断するヨーレート変化率基盤検出モジュールと、を含み、前記積分基盤検出モジュール、モータートルク基盤検出モジュール、及びヨーレート変化率基盤検出モジュールの条件をすべて満足していれば、前記操向装置の故障を判断することを特徴とする電動式操向装置の故障有無検出装置を提供する。
【0023】
また、前記故障有無判断モジュールで前記操向装置の故障を判断した場合、前記操向角とヨーレート変化率の符号が同じであるかを判断し、前記操向角とヨーレート変化率の符号が同じであれば、前記操向装置はオーバーステアリング故障であると判断し、前記操向角とヨーレート変化率の符号が同じでなければ、ロングディレクション故障であると判断する故障種類判断モジュールをさらに含むことを特徴とする電動式操向装置の故障有無検出装置を提供する。
【0024】
また、前記故障有無判断モジュールにより前記操向装置が故障状態であると判断される場合、前記操向装置のモーターに印加される電流を遮断するモーター制御モジュールをさらに含むことを特徴とする電動式操向装置の故障有無検出装置を提供する。
【0025】
また、前記モーター制御モジュールで操向装置のモーターに印加される電流を遮断する場合、前記操向装置をリセットして再開始することを特徴とする電動式操向装置の故障有無検出装置を提供する。
【0026】
また、前記ヨーレート変化率は、前記操向角入力と車両の速度に基づいてヨーレートを推定し、前記推定されたヨーレート値を微分して低域通過フィルタに適用して算出することを特徴とする電動式操向装置の故障有無検出装置を提供する。
【発明の効果】
【0027】
上述したように、本発明による電動式操向装置の故障有無検出装置及び方法によれば次のような効果がある。
【0028】
第1に、電動式操向装置の故障状態を効果的に感知して災難に備えることができる。
【0029】
第2に、車両の全体状態を現象学的に判断して操向装置の故障有無を判断できるが、電動式操向装置に別途の機能を追加しなくてもフェイルセーフ機能を行うことができる。
【0030】
第3に、操向装置の故障有無を感知すると、電動式操向装置のモーターに印加される電流を遮断して電動式操向装置を手動(manual)状態で操作可能とする効果がある。
【0031】
第4に、電動式操向装置の故障状態を感知すると、操向装置のモーターに印加される電流を遮断すると共にリセットして再動作することで、電動式操向装置の正しい作動を可能とする効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】電動式操向装置が故障する場合、車両のオーバーステアリングのシミュレーション条件を示す。
【
図2】電動式操向装置が故障する場合、車両のロングディレクションのシミュレーション条件を示す。
【
図3】本発明の電動式操向装置の故障有無検出装置のブロック図である。
【
図4】本発明の故障有無判断モジュールを構成するモジュールの構成を示すブロック図である。
【
図5】本発明の電動式操向装置の故障有無検出方法のフローチャートである。
【
図6】本発明の電動式操向装置の故障有無検出方法の故障有無判断を行うためのフローチャートである。
【
図7】本発明の操向装置の故障有無を判断した場合、故障種類を判断するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の実施例を図面を参照してさらに詳細に説明する。本発明の実施例は色な形態に変形でき、本発明の範囲が以下の実施例によって限定されると解釈してはいけない。本実施例は当業界で平均の知識を有する者にとって本発明をよくわかるように説明するために提供されるものである。
【0034】
車両の走行中に電動式操向装置のハンドルが調節されると、このようなハンドルの角度やトルクの変化によって操向装置内のモーターが作動して車両の走行方向を変えるようになる。具体的には、電動式操向装置は、運転者が手で握って運転するハンドルを操作すると、トルクセンサがこれを感知して自動車の電子制御装置(ECU)がハンドルの操向方向とトルク値に対応する指令を操向装置内のモーターに下し、モーターがこれに対応して動作して車両の前輪軸を動かすことによって車両の進行方向を変えるようにする装置である。
【0035】
しかし、前記電動式操向装置は車両の走行に直結する構成で、安全にかかわる技術であり、最近、車両の機能安全に関する国際標準のISO26262が争点となっている。
【0036】
このような国際標準を満足する電動式操向装置システムの機能と故障を分析し、故障を早期に見出して事故を未然に防ぐために、電動式操向装置の故障有無を検出するための技術を提供する。
【0037】
本発明は、電動式操向装置の故障有無検出装置及び検出方法を提供するが、モーターによりハンドルとそれに対応する前輪軸の動きを制御する電動式操向装置を対象とする。
【0038】
図1は、本発明の好ましい実施例による電動式操向装置の故障による車両のオーバーステアリング挙動シミュレーションを示す。
【0039】
図1に示すように、車両の旋回にあたって、運転者が旋回走行すると、運転者の操向方向と同じ方向にモータートルクが発生するが、車体が操向角度に比べて曲がりすぎる走行形態を示している。
【0040】
すなわち、オーバーステアリングは、運転者の操向装置の回転トルクは一定に保たれた状態で、運転者の操向方向と同じ方向にモータートルクが発生したことであるため、運転者の操向トルクとモータートルクが同じ方向に発生するようになる。
【0041】
一方、
図2は、本発明の好ましい実施例による電動式操向装置の故障によるロングディレクション挙動シミュレーションを示す。
【0042】
すなわち、前記オーバーステアリングとは異なる条件であり、運転者の操向方向と反対方向のモータートルクが発生するが、運転者の操向トルクとモータートルクが逆方向に発生するようになる。
【0043】
図3は、本発明の好ましい一実施例であって、電動式操向装置の故障有無検出装置を示す。
【0044】
本発明の故障有無の判断に先立ち、車両の旋回走行を行うかを判断し、車速の大きさを判断して所定の設定値と比較し、実際の車速がさらに大きいか否かを判断する先行条件判断モジュール10を構成する。
【0045】
車両の旋回走行の有無は、車速、操向角、及び操向トルクによる検出ロジックを行って判断する。さらに、このように車両が旋回走行を行うと判断されると、車速が第1設定値以上であるか否かを判断し、車両の旋回走行の車速が第1設定値以上で故障有無判断命令を送信する。
【0046】
上述したように、車両の操向装置の故障現象の検出にさらに敏感に作動しなければならない速度時点を定めて任意に第1設定値を選択することができる。車両が低速で動作する場合は無視してもかまわなかった操向装置の故障現象であっても、高速走行では深刻な影響を及ぼすことがあるため、このような所定の第1設定値は調節して敏感度を決定することができる。
【0047】
また、
図4は、前記故障有無判断モジュール11の構成を示すブロック図である。
【0048】
前記車両の故障有無判断命令を受信して車両の故障有無を判断する操向装置故障有無判断モジュール11は、操向トルクとモータートルクの乗算演算を行って所定の一定時間を積分した累積値の大きさが第2設定値以上であるかを判断する積分基盤検出モジュール21、モータートルクの大きさが第3設定値以上であるかを判断するモータートルク基盤検出モジュール、及び車速と操向角によってヨーレート変化率の大きさを判断して第4設定値以上であるかを判断するヨーレート変化率基盤検出モジュール23を含んで構成される。
【0049】
前記故障有無判断モジュール11を構成するそれぞれのモジュールを察し見ると、第1に、積分基盤検出モジュール21を含む。一般的に、電動式操向装置が正常に作動する場合、操向トルクとモータートルクの符号は常に反対符号を持つ。ただし、電動式操向装置が故障すると、操向トルクとモータートルクの符号は同じ符号が出力されることがある。
【0050】
したがって、前記操向トルクとモータートルクの乗算を算出し、算出された操向トルクとモータートルクの乗算を所定の一定時間の積分を行って累積値を算出する。このように積分基盤検出モジュール21は、モータートルクと操向トルクの乗算の積分を行うため、感知時間の設定が容易である。
【0051】
本発明は、前記算出された累積値が第2設定値以上であるかを判断するが、積分基盤検出モジュール21で算出された累積値が第2設定値以上であれば、操向装置の故障であると判断する。
【0052】
このように一定時間の間に積分した累積値と所定の第2設定値を比較して操向装置の故障を判断する理由は、電動式操向装置の操作中に一時的に故障進路を走行することがあっても直ちに正常状態に復帰することがあり、この場合は操向装置の故障であると判断してモーターの電流を遮断するなどの措置を取る必要がないからである。
【0053】
しかし、このような状態が一定時間ずっと続け、前記累積値が所定の第2設定値以上であれば、操向装置の故障によって車両が故障進路に走行するようになって対応策が必要となるため、操向装置の故障であると判断し、モーター制御モジュール13によりモーターの電流を遮断するなどのフェイルセーフ段階を行う。
【0054】
第2に、前記故障有無判断モジュール11は、モータートルク基盤検出モジュール22をさらに含んで構成される。これはモータートルクが第3設定値以上であれば、操向装置の故障であると判断する。
【0055】
上述したように、モータートルクが所定の第3設定値以下であれば、車両の操向装置の故障時にも運転者の要求による走行方向と車両の旋回方向の差が小さくて別途のフェイルセーフ段階が不要であり、操向装置のモータートルクが所定の第3設定値以上の条件を満足していれば、操向装置の故障であると判断する。
【0056】
第3に、本発明の故障有無判断モジュール11は、ヨーレート変化率基盤検出モジュール23を含む。本発明の好ましい一実施例によって、前記積分基盤検出モジュール21は、ヨーレートセンサを使用せず、ヨーレート変化率算出モジュール14を用いて操向角及び車速からヨーレート値を推定して使用する。
【0057】
このように本発明は、ヨーレートセンサによる車両の制御システムの情報を利用することがなく、車両に入力される操向角及び車速などの因子からヨーレート値を推定し、前記推定されたヨーレート値によりヨーレート変化率を算出する過程を行う。このように算出されたヨーレート変化率が第4設定値以上であれば、本発明の操向装置は故障であると判断する。
【0058】
上述したように、車両に入力される操向角及び車速などの因子からヨーレート変化率算出モジュール14はヨーレート値を推定し、推定されたヨーレート変化率を算出する場合、車両の全体状態を現象学的に判断することができる。具体的には、ヨーレートセンサを用いて操向装置の故障を判断する場合、ヨーレートセンサ自体の遅延によって、故障を即座に感知しにくいが、本発明は、操向角センサ及び車速に基づいてヨーレート値を推定するため、車両の走行状態による操向装置の故障有無を速かに感知することができる。
【0059】
ヨーレート変化値を算出するために要求されるヨーレート推定値は、以下の数式により推定される。
【数1】
(Vx:車速、L:軸距、Kus:アンダーステア定数、g:重力、δf:操向角)
上述したように、本発明は、車両の操向装置の故障有無を検出するにあたって、前記積分基盤検出モジュール21、モータートルク基盤検出モジュール22、及びヨーレート変化率基盤検出モジュール23のそれぞれのすべての条件を満足していれば、操向装置の故障であると判断する。
【0060】
図5は、本発明の一実施例により電動式操向装置の故障有無検出方法を示すフローチャートである。
【0061】
本発明の電動式操向装置の故障有無検出方法により、車速を受信し(S110)、車両旋回を判断する段階(S120)を行う。前記車両旋回の判断にあたって、操向角入力及び操向トルクを対象として判断する。車両が旋回すると判断される場合、車速が第1設定値よりも大きいかを判断する(S130)。前記車速が第1設定値よりも大きい場合は、操向装置の故障有無を判断し(S140)、さらに、故障種類判断モジュール12により故障種類を判断し(S150)、前記車速が第1設定値よりも小さい場合はロジックを終了する。
【0062】
前記故障有無判断を行って操向装置が故障したと判断されると、フェイルセーフのロジックを適用して故障時の安全状態モードを行うが、モーターに印加される電流を遮断し(S160)、電流が遮断されたモーターをリセットして再開始するため、電動式操向装置が正しく作動することを保障することができる。
【0063】
図6は、故障有無の判断にあたって、操向トルクとモータートルクの乗算演算を行い(S210)、所定の一定時間を積分した累積値(S220)の大きさが第2設定値以上であるかを判断する(S230)。前記積分は積分基盤検出モジュール21により行われる。
【0064】
さらに、前記積分演算過程を行うと共に、モータートルクの大きさが第3設定値以上であるかを判断する段階を行い(S240)、車速と操向角によりヨーレート変化率の大きさを判断して第4設定値以上であるかを判断する(S250)。
【0065】
前記モータートルクの大きさの演算は、モータートルク基盤検出モジュール22を用いて行い、車速と操向角によりヨーレート変化率の大きさを判断する段階はヨーレート変化率基盤検出モジュール23を用いて演算される。
【0066】
さらに、前記ヨーレート変化率を算出するために車両のヨーレート値を推定するが、車速と操向角により前記ヨーレート値は推定される。前記ヨーレート変化率はヨーレート変化率算出モジュール14により行われる。
【0067】
上述したように、モータートルク条件、操向トルクとモータートルクの乗算演算による積分累積値の大きさ条件、及びヨーレート変化率の大きさ条件をすべて満足する場合(S260)、電動式操向装置の故障が判断される(S270)。
【0068】
図7は、電動式操向装置の故障が判断された場合、故障種類の判断を行うフローチャートを示す。
【0069】
図7に示すように、電動式操向装置の故障有無判断(S310)を行って電動式操向装置が故障したと判断される場合、操向角及びヨーレート変化率の乗算を算出し、前記算出された演算値の符号を判断する(S320)。
【0070】
前記演算値の符号が正数であれば、電動式操向装置はオーバーステアリング故障であると判断し(S330)、前記演算値の符号が負数であれば、電動式操向装置はロングディレクション故障であると判断する(S340)。
【0071】
ただし、前記電動式操向装置が故障でないと判断される場合、操向装置の故障種類の判断を保留する。
【0072】
以上、詳細な説明は本発明を例示するためのものである。また、上述した内容は本発明の好ましい実施形態を挙げて説明するもので、本発明は、色んな組合せ、変更及び環境で使用することができる。すなわち、本明細書に開示した発明の概念の範囲、記述した開示内容と均等な範囲及び/または当業界の技術または知識の範囲内で変更または修正が可能である。上述した実施例は本発明の技術的思想を実現するための最善の状態を説明するもので、本発明の具体的な適用分野及び用途から求められる様々な変更も可能である。したがって、以上の発明の詳細な説明は、開示した実施状態により本発明を制限する意図はない。また、添付した特許請求の範囲は他の実施状態も含むと解釈しなければならない。
【符号の説明】
【0073】
10 先行条件判断モジュール
11 故障有無判断モジュール
12 故障種類判断モジュール
13 モーター制御モジュール
14 ヨーレート変化率算出モジュール
21 積分基盤検出モジュール
22 モータートルク基盤検出モジュール
23 ヨーレート変化率基盤検出モジュール