(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
冷凍機と、前記冷凍機の冷水出口側に冷水1次往配管で接続される第1往ヘッダと、1次冷水ポンプを介して、前記冷凍機の冷水入口側に冷水1次往配管で接続される還ヘッダと、前記第1往ヘッダと前記還ヘッダとを接続するバイパス管と、2次冷水ポンプを介して、前記第1往ヘッダに往ヘッダ配管で接続される第2往ヘッダと、前記第2往ヘッダと前記還ヘッダとの間に冷水2次往配管及び冷水2次還配管を介して接続される空調負荷と、前記第2往ヘッダ又は前記冷水2次往配管に2次往温度計と、前記還ヘッダ又は前記冷水2次還配管に2次冷水還温度を計測する2次還温度計と、前記冷水2次還配管に2次冷水流量を計測する2次流量計と、制御装置と、
を備える熱源制御システムの制御方法であって、
前記空調負荷の出口の前記2次還温度計と前記空調負荷の入口の前記2次往温度計の計測値の差である2次冷水温度差が設計値未満となるときに、前記2次還温度計と前記2次往温度計と前記2次流量計の各計測値から算出した2次側の負荷熱量と、前記2次冷水還温度の計測値と冷凍機冷水出口温度と1次冷水流量から計算で求める1次側の生成熱量とが等しくなる条件で、かつ前記1次冷水ポンプが送水する1次冷水と、前記バイパス管を介して前記還ヘッダから前記第1往ヘッダへ流入する2次還冷水とが合流した2次冷水往温度が制御目標値である2次冷水往温度の設定値となるように、
前記制御装置が、前記2次冷水往温度の設定値と、前記2次冷水還温度と、前記2次冷水流量を用いて、冷凍機冷水出口温度を制御するための第1の制御設定値と、1次冷水流量を制御するための第2の制御設定値とを求め、
前記制御装置が、前記第1の制御設定値および前記第2の制御設定値に基づいて前記冷凍機および前記1次冷水ポンプを制御する
ことを特徴とする熱源制御システムの制御方法。
冷凍機と、前記冷凍機の冷水出口側に冷水1次往配管で接続される第1往ヘッダと、1次冷水ポンプを介して、前記冷凍機の冷水入口側に冷水1次往配管で接続される還ヘッダと、前記第1往ヘッダと前記還ヘッダとを接続するバイパス管と、2次冷水ポンプを介して、前記第1往ヘッダに往ヘッダ配管で接続される第2往ヘッダと、前記第2往ヘッダと前記還ヘッダとの間に冷水2次往配管及び冷水2次還配管を介して接続される空調負荷と、前記第2往ヘッダ又は前記冷水2次往配管に2次往温度計と、前記還ヘッダ又は前記冷水2次還配管に2次冷水還温度を計測する2次還温度計と、前記冷水2次還配管に2次冷水流量を計測する2次流量計と、を備える熱源制御システムに適用される制御装置であって、
前記空調負荷の出口の前記2次還温度計と前記空調負荷の入口の前記2次往温度計の計測値の差である2次冷水温度差が設計値未満となるときに、前記2次還温度計と前記2次往温度計と前記2次流量計の各計測値から算出した2次側の負荷熱量と、前記2次冷水還温度の計測値と冷凍機冷水出口温度と1次冷水流量から計算で求める1次側の生成熱量とが等しくなる条件で、かつ前記1次冷水ポンプが送水する1次冷水と、前記バイパス管を介して前記還ヘッダから前記第1往ヘッダへ流入する2次還冷水とが合流した2次冷水往温度が制御目標値である2次冷水往温度の設定値となるように、
前記2次冷水往温度の設定値と、前記2次冷水還温度と、前記2次冷水流量を用いて、冷凍機冷水出口温度を制御するための第1の制御設定値と、1次冷水流量を制御するための第2の制御設定値とを求める処理と、
前記第1の制御設定値および前記第2の制御設定値に基づいて前記冷凍機および前記1次冷水ポンプを制御する処理と、
を実行することを特徴とする制御装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の技術において、2次冷水往温度を冷凍機冷水出口温度に維持すべく、還ヘッダから往ヘッダへの逆流を防止するために冷水1次流量を増加させる場合には、1次冷水ポンプにおける1次冷水の搬送動力の増大や熱源の運転台数の増加等により、余計なエネルギーが消費されるおそれがある。変流量定温度差方式の熱源流量制御システムを組んでいれば、負荷の変動に関わらず2次冷水温度差ΔT2が設計値となるべきところ、実際には2次冷水温度差ΔT2が小さくなっている事柄を受けて、さらに1次冷水流量を増加させるのは、設計時のポンプ搬送動力や設計時の熱源運転動力や運転台数を大きく増加させていることに他ならない。
【0008】
また、上記のように空調負荷が要求する必要な冷熱量が同じ状況で1次冷水流量を増加させると、1次冷水出口温度と1次冷水入口温度との差(1次冷水温度差ΔT1)が小さくなるが、1次冷水温度差ΔT1が小さくなると、冷凍機としては軽負荷運転状態となり圧縮機の能力を絞っても蒸発器から圧縮機への吸入量を絞ることが出来ず、吸入過剰状態から蒸発圧力低下による、冷水凍結という故障防止のため、冷凍機側盤の安全回路により冷凍機のコンプレッサを停止させる制御が行われ、冷凍機コンプレッサの再起動には一定時間のインターバルが必要なため、冷凍機のコンプレッサが停止したときには2次冷水往温度が上昇してしまう。
【0009】
これらの問題を解決するために、往ヘッダと還ヘッダ間のバイパス管内を、還ヘッダから往ヘッダへ温度が高くなった2次還冷水を流入させる逆流を許容することで、1次冷水流量を2次冷水流量よりも大きくしなくてすむ、適正な1次冷水流量を目指す熱源制御システムが、わずかながら存在する。
【0010】
例えば、特許文献1には、一次流量制御を実行する制御手段が、冷凍機からの送出熱媒とバイパス管からの二次還り熱媒との混合により負荷機器の適正入口熱媒温度となるバイパス利用一次流量制御において、二次流量に対する一次流量の比率である運転流量比率を制御するのに、負荷機器の入口熱媒温度の計測値と所要の目標状態に処理する適正入口熱媒温度との偏差に応じて、その偏差の解消側に一次流量を調整することが開示されている。
【0011】
また、特許文献2には、往一次ヘッダと往二次ヘッダとからなる往ヘッダと、還一次ヘッダと還二次ヘッダとからなる還ヘッダとの間に、各ヘッダの内部熱媒の混合の良好な箇所にバランス管を配置して、往ヘッダ内の熱媒の温度を検出する熱源水温度検出手段、還流水一次温度検出手段、還流水二次温度検出手段およびバランス管内水温検出手段によって検出された温度に基づいて熱源の温度制御および熱源ポンプによる流量制御を行う制御手段を備えることで、送水温度が上昇した冷水を空調負荷に送ることを防止し、負荷が増え二次側の還流水がバランス管を、還ヘッダから往ヘッダへと流れる逆流を速やかに検知し、冷凍機からの熱媒の温度制御を実行すること、が開示されている。
【0012】
しかし、特許文献1では、負荷機器の入出口熱媒温度差が設計値よりも小さくなる原因である、中間期などで負荷機器の入口熱媒温度が相対的に過剰能力の温度になる状況については、何ら具体的な説明がなく、負荷機器で処理対象を所要の目標状態に処理することが可能で且つ処理に必要な限界温度寄りである適正入口熱媒温度については、熱源システム構成機器の特性情報に基づく所定の決定方法によると、概念だけ示して具体的には記載がない。
【0013】
さらに、特許文献1では、熱源ユニット側の熱媒流量である一次流量は、二次流量に対する一次流量の比率である運転流量比率は、100%より増側にも減側にも調整可能とはしているものの、負荷機器の入口熱媒温度の計測値と、設定値である適正入口熱媒温度との偏差でしか調整しないもので、冷凍機の出口温度下限値や流量下限値に付いて考慮していないので、冷凍機の安全回路を動作させかねず、熱源制御としては不完全なものである。
【0014】
そして、特許文献2では、熱源水温度検出手段、還流水一次温度検出手段、還流水二次温度検出手段およびバランス管内水温検出手段という、均一に混合している箇所に温度計を設置することが困難なヘッダやヘッダ間バランス管内の温度計測値に頼り、その温度計測値を用いた複雑な演算により、あくまでバランス管内の逆流をできるだけ防止することを主眼とした熱源制御システムである。
【0015】
このように、これら従来技術においても、1次2次ポンプ方式における2次冷水往温度に新たに制御目標値を設けた熱源制御システムとして、1次冷水出口温度の最適化や1次冷水流量の最適化による、空調負荷へ一定温度で供給しなければならない2次冷水往温度の安定制御を行ないつつ、1次冷水の搬送動力の省エネルギー制御にはなお改善の余地があった。
【0016】
本発明の目的は、従来の制御では成り行きで決定されていた2次冷水往温度を安定的に制御し、従来と比べて1次冷水ポンプにおける1次冷水の搬送動力の増大や熱源の運転台数増加を抑制し易く、冷凍機のコンプレッサも停止しにくくなる熱源制御システム、制御方法および制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の一例である熱源制御システムは、冷凍機と、前記冷凍機の冷水出口側に冷水1次往配管で接続される第1往ヘッダと、1次冷水ポンプを介して、前記冷凍機の冷水入口側に冷水1次往配管で接続される還ヘッダと、前記第1往ヘッダと前記還ヘッダとを接続するバイパス管と、2次冷水ポンプを介して、前記第1往ヘッダに往ヘッダ配管で接続される第2往ヘッダと、前記第2往ヘッダと前記還ヘッダとの間に冷水2次往配管及び冷水2次還配管を介して接続される空調負荷と、前記第2往ヘッダ又は前記冷水2次往配管に2次往温度計と、前記還ヘッダ又は前記冷水2次還配管に
2次冷水還温度を計測する2次還温度計と、前記冷水2次還配管に
2次冷水流量を計測する2次流量計と、前記冷凍機および前記1次冷水ポンプを制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記空調負荷の出口の前記2次還温度計と前記空調負荷の入口の前記2次往温度計の計測値の差である2次冷水温度差が設計値未満となるときに、前記2次還温度計と前記2次往温度計と前記2次流量計の各計測値から算出した2次側の負荷熱量と、前記2次冷水還温度
の計測値と冷凍機冷水出口温度と1次冷水流量から計算で求める1次側の生成熱量とが等しくなる条件で、かつ前記1次冷水ポンプが送水する1次冷水と、前記バイパス管を介して前記還ヘッダから前記第1往ヘッダへ流入する2次還冷水とが合流した2次冷水往温度が制御目標値である2次冷水往温度の設定値となるように、前記2次冷水往温度の設定値と、前記2次冷水還温度と、前記2次冷水流量を用いて、冷凍機冷水出口温度を制御するための第1の制御設定値と、1次冷水流量を制御するための第2の制御設定値とを求め、前記第1の制御設定値および前記第2の制御設定値に基づいて前記冷凍機および前記1次冷水ポンプを制御する。
【0018】
本発明の一例である熱源制御システムの制御方法は、冷凍機と、前記冷凍機の冷水出口側に冷水1次往配管で接続される第1往ヘッダと、1次冷水ポンプを介して、前記冷凍機の冷水入口側に冷水1次往配管で接続される還ヘッダと、前記第1往ヘッダと前記還ヘッダとを接続するバイパス管と、2次冷水ポンプを介して、前記第1往ヘッダに往ヘッダ配管で接続される第2往ヘッダと、前記第2往ヘッダと前記還ヘッダとの間に冷水2次往配管及び冷水2次還配管を介して接続される空調負荷と、前記第2往ヘッダ又は前記冷水2次往配管に2次往温度計と、前記還ヘッダ又は前記冷水2次還配管に
2次冷水還温度を計測する2次還温度計と、前記冷水2次還配管に
2次冷水流量を計測する2次流量計と、制御装置と、を備える熱源制御システムの制御方法であって、前記空調負荷の出口の前記2次還温度計と前記空調負荷の入口の前記2次往温度計の計測値の差である2次冷水温度差が設計値未満となるときに、前記2次還温度計と前記2次往温度計と前記2次流量計の各計測値から算出した2次側の負荷熱量と、前記2次冷水還温度
の計測値と冷凍機冷水出口温度と1次冷水流量から計算で求める1次側の生成熱量とが等しくなる条件で、かつ前記1次冷水ポンプが送水する1次冷水と、前記バイパス管を介して前記還ヘッダから前記第1往ヘッダへ流入する2次還冷水とが合流した2次冷水往温度が制御目標値である2次冷水往温度の設定値となるように、前記制御装置が、前記2次冷水往温度の設定値と、前記2次冷水還温度と、前記2次冷水流量を用いて、冷凍機冷水出口温度を制御するための第1の制御設定値と、1次冷水流量を制御するための第2の制御設定値とを求め、前記制御装置が、前記第1の制御設定値および前記第2の制御設定値に基づいて前記冷凍機および前記1次冷水ポンプを制御する。
本発明の一例である制御装置は、冷凍機と、前記冷凍機の冷水出口側に冷水1次往配管で接続される第1往ヘッダと、1次冷水ポンプを介して、前記冷凍機の冷水入口側に冷水1次往配管で接続される還ヘッダと、前記第1往ヘッダと前記還ヘッダとを接続するバイパス管と、2次冷水ポンプを介して、前記第1往ヘッダに往ヘッダ配管で接続される第2往ヘッダと、前記第2往ヘッダと前記還ヘッダとの間に冷水2次往配管及び冷水2次還配管を介して接続される空調負荷と、前記第2往ヘッダ又は前記冷水2次往配管に2次往温度計と、前記還ヘッダ又は前記冷水2次還配管に
2次冷水還温度を計測する2次還温度計と、前記冷水2次還配管に
2次冷水流量を計測する2次流量計と、を備える熱源制御システムに適用される制御装置であって、前記空調負荷の出口の前記2次還温度計と前記空調負荷の入口の前記2次往温度計の計測値の差である2次冷水温度差が設計値未満となるときに、前記2次還温度計と前記2次往温度計と前記2次流量計の各計測値から算出した2次側の負荷熱量と、前記2次冷水還温度
の計測値と冷凍機冷水出口温度と1次冷水流量から計算で求める1次側の生成熱量とが等しくなる条件で、かつ前記1次冷水ポンプが送水する1次冷水と、前記バイパス管を介して前記還ヘッダから前記第1往ヘッダへ流入する2次還冷水とが合流した2次冷水往温度が制御目標値である2次冷水往温度の設定値となるように、前記2次冷水往温度の設定値と、前記2次冷水還温度と、前記2次冷水流量を用いて、冷凍機冷水出口温度を制御するための第1の制御設定値と、1次冷水流量を制御するための第2の制御設定値とを求める処理と、前記第1の制御設定値および前記第2の制御設定値に基づいて前記冷凍機および前記1次冷水ポンプを制御する処理と、を実行する。
【発明の効果】
【0019】
本発明の熱源制御システム、制御方法および制御装置によれば、従来の制御では成り行きで決定されていた2次冷水往温度を安定的に制御でき、従来と比べて1次冷水ポンプにおける1次冷水の搬送動力の増大や熱源の運転台数増加を抑制し易くするとともに、冷凍機のコンプレッサを停止しにくくすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の説明では、冷水を冷熱媒とし、冷凍機を熱源とする場合を説明する。
【0022】
本実施形態では、1次2次ポンプ方式の熱源制御システムにおいて、2次側の熱交換器への冷水供給温度の制御目標値を、1次側の冷凍機冷水出口温度ではなく2次側の2次冷水往温度で設定し(Tcs2_SP)、冷凍機冷水出口温度(Tcs1)と1次冷水流量(Vc1)を制御する。そして、本実施形態の熱源制御システムでは、バイパス管を介した還ヘッダから往ヘッダへの逆流を許容し、熱源からの1次冷水と往ヘッダに逆流する還ヘッダの温度の高い冷水とをミキシングして2次側の熱交換器に送水することで、2次冷水往温度(Tcs2)を安定的に制御するものである。
【0023】
図1は、本実施形態における1次2次ポンプ方式の熱源制御システムの構成例を示す。
【0024】
熱源制御システム100は、n台の冷凍機(熱源R1−Rn)10と、n台の1次冷水ポンプ11と、第1往ヘッダ12と、第2往ヘッダ13と、第1還ヘッダ14と、第2還ヘッダ15と、2次冷水ポンプ16と、空調負荷としての空調機(AHU)17と、PLC(Programmable Logic Controller)0およびPLC1とを備える。また、第1往ヘッダ12および第1還ヘッダ14は、バイパス管18を介して接続されている。なお、
図1の例では、簡単のため空調機17を1台のみ示すが、実際には空調機17の台数及び種類は複数である。そして空調機17の近傍には図示しない比例2方弁などの制御弁が、空調機の熱交換器に1対1又は多対1で設置され、空調対象室の温度センサなどの信号から空調負荷に応じて2次側冷水流量を調整している。
【0025】
冷凍機(熱源R)10は、例えば、ターボ冷凍機、インバータターボ冷凍機、吸収式冷凍機、冷温水発生機、スクリューチラー、ヒートポンプチラーなどである。熱源制御システム100に含まれるn台の冷凍機10は、個々の性能に相違がある場合があるが、本実施形態では、冷凍容量や運転の優先度などそれらの冷凍負荷に対する運転の基本的な対応は同一または同様である。また、各々の冷凍機10を制御する冷凍機側盤10aの入出力は、PLC0およびPLC1にそれぞれ接続されている。冷凍機側盤10aには、冷凍機の保護回路やそれに必要な補機のインターロック回路が納められている。なお、
図1では、冷凍機側盤10aの図示は省略する。
【0026】
各々の冷凍機10は、それぞれ冷水1次往配管21により第1往ヘッダ12に対して並列に接続されており、それぞれ冷水1次還配管22により第1還ヘッダ14に対して並列に接続されている。冷水1次往配管21は、冷水の1次側において、冷凍機10で冷却された冷水を第1往ヘッダ12へ送水する配管である。また、冷水1次還配管22は、冷水の1次側において、空調機17で熱交換されて温度が上昇した冷水が合流した還冷水を、第1還ヘッダ14から冷凍機10まで送水する配管である。
【0027】
各冷凍機10に接続される各々の冷水1次往配管21には、冷凍機冷水出口温度Tcs1を計測する温度センサ23がそれぞれ設けられている。各々の温度センサ23で計測された冷凍機冷水出口温度Tcs1のPV(Process Value:計測値)は、PLC0およびPLC1にそれぞれ出力される。
【0028】
各冷凍機10に接続される各々の冷水1次還配管22には、第1還ヘッダから冷凍機10に向かって、1次冷水ポンプ11と、1次冷水流量Vc1_Ri(iは冷凍機10の番号を示す)を計測する流量計24と、冷凍機冷水入口温度Tcr1を計測する温度センサ25とがそれぞれ設けられている。各々の温度センサ25で計測された冷凍機冷水入口温度Tcr1のPVは、PLC0およびPLC1にそれぞれ出力される。また、各々の流量計24で計測された1次冷水流量Vc1_RiのPVは、PLC0およびPLC1と、流量指示調節計(FIC)26とに出力される。また、1次冷水ポンプ11はポンプモータのインバータ(INV)27を備えている。流量指示調節計26は、複数の熱源に対して1台設けられており、後述するように、1次冷水流量Vc1_RiのPVとPLC0の指示(pVc1_SP)を受けて各々の1次冷水ポンプ11の流量(回転数)を制御する。1次冷水ポンプ11の回転数は、インバータ27が電源を周波数制御することで可変する。
【0029】
このように、
図1に示す熱源制御システム100では、第1往ヘッダ12および第1還ヘッダ14と、第1往ヘッダ12および第1還ヘッダ14の間に並列に接続されたn台の冷凍機10と、これらの要素を接続する配管とによって、熱源の1次側が構成される。
【0030】
一方、
図1に示す熱源制御システム100では、熱源の2次側において、第1往ヘッダ12の下流側には第2往ヘッダ13が接続され、第1還ヘッダ14の上流側には第2還ヘッダ15が接続されている。また、第1往ヘッダ12と第2往ヘッダ13とは、それぞれに2次冷水ポンプ16が配置された複数の配管31で接続されている。なお、各々の2次冷水ポンプ16の回転数は、インバータ32が電源を周波数制御することで可変する。
【0031】
この2次冷水ポンプ16の回転数可変は、2次側に位置する全空調機の要求冷水量の総量に応じて行なわれるのだが、例えば2次側冷水配管系の何れかの位置に設置される圧力計のPVに応じて制御され、各空調機17の制御弁により空調負荷に応じて熱交換器へ流入する冷水量が絞られた場合、2次冷水ポンプ16の回転数がそのままだと圧力計のPV値が上昇し、設定圧との偏差に応じて2次冷水ポンプ16の回転数を低下させる制御を行なう。尚、2次側の変流量制御の一例として圧力による例を示したが、これに限定されることなく流量によっても熱量によっても良く、どのような2次側の変流量制御でも良い。
【0032】
また、第2往ヘッダ13には、2次冷水往温度Tcs2を計測する温度センサ33が設けられる。温度センサ33で計測された2次冷水往温度Tcs2のPVは、PLC0およびPLC1に出力される。また、第1還ヘッダ14には、2次冷水還温度Tcr2を計測する温度センサ34が設けられる。温度センサ34で計測された2次冷水還温度Tcr2のPVは、PLC0およびPLC1に出力される。さらに、第2還ヘッダ15と第1還ヘッダ14との間には、2次冷水流量Vc2を計測する流量計35が設けられる。流量計35で計測された2次冷水流量Vc2のPVは、PLC0およびPLC1に出力される。
【0033】
そして、第2往ヘッダ13と第2還ヘッダ15との間には、第2往ヘッダ13と空調機17とを接続する冷水2次往配管36と、空調機17と第2還ヘッダ15とを接続する冷水2次還配管37とが設けられており、これらの配管によって第2往ヘッダ13および第2還ヘッダ15が空調機17と接続される。冷水2次往配管36は、冷水の2次側において、冷凍機10で冷却された冷水を第2往ヘッダ13から空調機17に送水する配管である。冷水2次還配管37は、冷水の2次側において、空調機17で熱交換されて温度が上昇した冷水を空調機17から第2還ヘッダ15に送水する配管である。
【0034】
このように、
図1に示す熱源制御システム100では、第1往ヘッダ12および第2往ヘッダ13と、第1還ヘッダ14および第2還ヘッダ15と、空調機17と、これらの要素を接続する配管によって2次側が構成される。
【0035】
PLC0およびPLC1は、熱源制御システム100の制御を分担して実行するコントローラである。PLC0およびPLC1は、例えば空調設備が設置されている建物の中央監視装置とそれぞれ接続され、中央監視装置からの指示を受ける。なお、
図1では中央監視装置の図示は省略している。
【0036】
なお、
図2は、熱源制御システム100における中央監視装置、PLC0、PLC1および冷凍機nとの入出力の例を示す図である。
図2では、n台の冷凍機10のうち1台分の冷凍機nのみを示し、PLC0、PLC1と他の冷凍機との接続はいずれも同一または同様であるので重複説明は省略する。また、
図2では、PLC0、PLC1に対する温度センサ23,25,33,34および流量計24,35との接続はいずれも図示を省略している。
【0037】
PLC0は、制御装置の一例であって、1次側の冷凍機冷水出口温度および1次冷水流量を制御する。なお、PLC0は、PLC1と同時に設置されるものでもよく、PLC1を有する既存の熱源制御システムに後付けで設置されるものであってもよい。
【0038】
例えば、
図2に示すように、PLC0は、制御目標値である2次冷水往温度の設定値Tcs2_SP(SP:Set Point)を中央監視装置から受ける。また、PLC0は、冷凍機側盤10aに冷凍機冷水出口温度の設定値Tcs1_SPを出力し、冷凍機側盤10aからその冷凍機nの運転状態(オン/オフ)を示す信号を受ける。PLC0は、各々の冷凍機側盤10aから受けた運転状態の信号によりシステム全体での冷凍機10の運転台数Nの情報を取得できる。また、PLC0は、1次冷水流量比率の設定値pVc1_SPを流量指示調節計26に出力する。
【0039】
ここで、
図2に示すように、流量指示調節計26は、PLC0からpVc1_SPを受け、流量計24から1次冷水流量Vc1_RiのPVを受ける。また、流量指示調節計26は、1次冷水ポンプ11のインバータ27にインバータ制御用の流量信号を出力する。そして、1次冷水ポンプ11のインバータ27は、流量指示調節計26から受けた流量信号に応じて1次冷水ポンプ11の電源の周波数制御を行い、1次冷水ポンプ11の回転数を可変させる。これにより、1次冷水ポンプ11による1次冷水流量を調節することができる。なお、1次冷水ポンプ11のインバータ27は冷凍機側盤10aと接続されており、1次冷水ポンプ11のオン/オフは冷凍機10の運転状態と連動するように制御される。
【0040】
PLC1は、システム全体での冷凍機10の稼働台数を変更する制御(熱源台数制御)を実行する。例えば、
図2に示すように、PLC1は、熱源群発停指令(システム全体での熱源のオン/オフ)を中央監視装置から受ける。また、PLC1は、冷凍機側盤10aに発停指令(個々の熱源のオン/オフ)を出力し、冷凍機側盤10aからはその冷凍機nの運転状態(オン/オフ)を示す信号を受ける。
【0041】
次に、本実施形態の熱源制御システムの制御例を説明する。
【0042】
図3は、熱源制御システム全体の動作を示す流れ図である。
図3の処理は、中央監視装置から熱源群の起動指令(システム全体での熱源のオン)が出力されたときに開始される。
【0043】
ステップS100において、PLC1は、熱源群を起動する。ステップS101において、PLC0およびPLC1は、例えばPLC内に設けられたメモリ等から各機器の設計値(各種パラメータの上限値および下限値など)の情報を取得する。ステップS102において、PLC1は熱源群のベース機を起動させる。
【0044】
そして、ステップS103において、PLC0およびPLC1は、熱源制御システム100の定周期ループ制御を行う。例えば、中央監視装置から熱源群の停止指令を受けるまでこれらの制御は継続して行われる。
【0045】
ステップS103でのPLC0は1次側の冷凍機冷水出口温度および1次冷水流量の制御を実行する。ステップS103でのPLC0の制御の例は
図4に示す。同様に、ステップS103でのPLC1は熱源台数制御を実行する。なお、以下の熱源台数制御の説明では、冷凍機を追加で起動させることを増段と称し、冷凍機を停止させることを減段と称する。
【0046】
ここで、本実施形態におけるPLC1の熱源台数制御は、公知の制御と同様であってもよいが、2次負荷熱量による増段判定と減段判定に加えて、2次冷水往温度Tcs2と2次冷水還温度Tcr2が2次冷水往温度の設定値Tcs2_SPに追従するようにPLC1が熱源台数制御を行うことが好ましい。この場合、例えば、PLC1は、2次冷水往温度の設定値Tcs2_SPに調整パラメータ(例えば1〜2℃程度)の値を足した増段判定温度(2次側冷水往温度に基づく冷凍能力不足判定)よりも2次冷水往温度Tcs2が高いときに熱源を1台分増段し、2次冷水往温度の設定値Tcs2_SPに調整パラメータ(例えば0.5℃〜2℃程度)の値を足した減段判定温度(2次側冷水還温度と2次側冷水往温度との差分に基づく冷凍能力過分判定)よりも2次冷水還温度Tcr2が低いときに熱源を1台分減段する。なお、PLC1の熱源台数制御を公知の制御と同様にすると、例えば、既存の熱源制御システムにPLC0を後付けで設置して本実施形態の熱源制御システム100を実現する場合には、PLC1の熱源台数制御のアルゴリズムを既存のものから変更しなくてすむのでシステムの導入が容易となるという利点がある。
【0047】
図4は、
図3のステップS103におけるPLC0の制御例を示す流れ図である。なお、以下の制御例の説明では、熱源制御システム100の熱源構成において、各熱源の(冷凍機出口温度、冷水流量、定格に対する冷水流量比率、バイパス流量などの)上限値および下限値はいずれも同じであり、各熱源において、冷凍機冷水出口温度の設定値Tcs1_SPと1次冷水流量比率の設定値pVc1_SPとがいずれも同じに設定される(すなわち均等容量方式)ことを前提として説明を行う。
【0048】
ステップS200において、PLC0は、制御目標値である2次冷水往温度の設定値Tcs2_SPを中央監視装置から受ける。なお、2次冷水往温度の設定値Tcs2_SPは、例えば、中央監視装置が実行するスケジュール管理処理によって日付に応じて自動的に決定されてもよく、中央監視装置を操作する設備管理者が手動で設定してもよい。また、PLC0に対して制御目標値である2次冷水往温度の設定値Tcs2_SPを送信する装置は、中央監視装置以外の他の装置類であってもよい。
【0049】
ステップS201において、PLC0は、温度センサ23,25,33,34から冷凍機冷水出口温度Tcs1、冷凍機冷水入口温度Tcr1、2次冷水往温度Tcs2、2次冷水還温度Tcr2のPVをそれぞれ取得する。また、PLC0は、流量計24,35から1次冷水流量Vc1_Ri、2次冷水流量Vc2のPVをそれぞれ取得する。また、PLC0は、各々の冷凍機側盤10aから受けた運転状態の信号によりシステム全体での冷凍機10の運転台数Nの情報を取得する。
【0050】
ステップS202において、PLC0は、2次冷水往温度Tcs2、2次冷水還温度Tcr2および2次冷水流量Vc2の各PVを用いて、以下の式(1)により2次負荷熱量Q2を算出する。ここで、「k」は水の比熱の物理定数および水の密度の物理定数をまとめて示した係数である。
Q2=(Tcr2−Tcs2)×Vc2×k[kW] …(1)
ステップS203において、PLC0は、冷凍機10の運転台数Nに基づいて、N台運転時における1次冷水流量の上限値Vc1_MAXを以下の式(2)により算出し、N台運転時における1次冷水流量の下限値Vc1_MINを以下の式(3)により算出する。また、PLC0は、N台運転時における1次生成熱量の最大値Q1_MAXを以下の式(4)により算出する。
Vc1_MAX=Vc1_MAX_Ri×N[m
3/h] …(2)
Vc1_MIN=Vc1_MAX×pVc1_MIN_Ri[m
3/h] …(3)
Q1_MAX=Q1_MAX_Ri×N[kW] …(4)
ここで、「Vc1_MAX_Ri」は、番号iの冷凍機10における1次冷水流量の上限値である。「pVc1_MIN_Ri」は、番号iの冷凍機10における1次冷水流量比率の下限値である。「Q1_MAX_Ri」は、番号iの冷凍機10における定格生成熱量である。これらのパラメータは、
図3のステップS100の処理で取得される。
【0051】
なお、1次冷水流量については、冷凍機の蒸発器チューブ内流速が速すぎると圧力損失が増加するだけでなく、チューブ内にエロージョンを発生させる原因となるので冷凍機メーカにより上限値が設定されている。1次冷水流量比率は、逆に蒸発器チューブ内の流速が遅すぎる場合、伝熱の低下と流水中の異物沈降による腐食を起こす虞があるため冷凍機メーカによりチューブ内流速に応じて冷水流量の定格値の比率として下限値が設定されている。
【0052】
ステップS204において、PLC0は、2次負荷熱量Q2と1次生成熱量の最大値Q1_MAXとを用いて、以下の式(5)により熱源負荷率pQ1を算出する。
pQ1=Q2/Q1_MAX×100[%] …(5)
ステップS205において、PLC0は、2次負荷熱量Q2に対して冷凍機の運転台数Nが適切かを判定する。具体的には、PLC0は、熱源負荷率pQ1が番号iの冷凍機10における生成熱量比率の下限値(pQ1_MIN_Ri)以上であり、かつ熱源負荷率pQ1が熱源負荷率pQ1の最大値(pQ1_MAX)以下であるか(pQ1_MIN_Ri≦pQ1≦pQ1_MAX)を判定する。ここで、pQ1_MAX=100[%]であり、pQ1_MIN_Riは設計値で決定される。
【0053】
pQ1_MIN_Ri≦pQ1≦pQ1_MAXの場合、2次負荷熱量Q2に対して現在の冷凍機10の運転台数Nが適切な状態であり、ステップS206に処理が移行する。一方、pQ1_MIN_Ri≦pQ1≦pQ1_MAXではない場合、2次負荷熱量Q2に対して現在の冷凍機10の運転台数Nが適切ではない状態であり、ステップS210に処理が移行する。
【0054】
ステップS206において、PLC0は、2次冷水往温度Tcs2、2次冷水還温度Tcr2を用いて、以下の式(6)により空調負荷の出口と入口との間の2次冷水温度差ΔT2を算出する。
ΔT2=Tcr2−Tcs2[℃] …(6)
ステップS207において、PLC0は、2次冷水温度差ΔT2が十分に取れているかを判定する。具体的には、PLC0は、2次冷水温度差ΔT2が2次冷水温度差の設計値(ΔT2_DV=5℃)以上か否かを判定する。2次冷水温度差ΔT2が2次冷水温度差の設計値以上である場合(ΔT2≧ΔT2_DV)には、ステップS208に処理が移行する。一方、2次冷水温度差ΔT2が2次冷水温度差の設計値未満である場合(ΔT2<ΔT2_DV)には、ステップS209に処理が移行する。
【0055】
ステップS208において、2次冷水温度差ΔT2が2次冷水温度差の設計値以上であって2次冷水温度差ΔT2が十分に取れているので、PLC0は、1次冷水流量=2次冷水流量、1次冷水冷凍機出口温度=2次冷水往温度となるように制御を行う。
【0056】
具体的には、PLC0は、第1の制御設定値である冷凍機冷水出口温度の設定値Tcs1_SPを、2次冷水往温度の設定値Tcs2_SPと等しくする(Tcs1_SP=Tsc2_SP)。また、PLC0は、第2の制御設定値である1次冷水流量比率の設定値pVc1_SPを、以下の式(7)で算出する。ステップS208の後、PLC0は
図4の処理を終了する。
pVc1_SP=Vc2/Vc1_MAX×100[%] …(7)
ステップS209において、PLC0は、2次負荷熱量Q2と1次側の生成熱量Q1とが等しくなる条件(Q2=Q1)で、各種の設計条件を満たして冷凍機10が安全運転できるような第1の制御設定値(Tcs1_SP)および第2の制御設定値(pVc1_SP)の解を算出する。ステップS209の処理の例は
図5に示す。
【0057】
ここで、ステップS209では、1次冷水ポンプ11が送水する1次冷水と、バイパス管18を介して還ヘッダから第1往ヘッダ12へ流入する2次還冷水とが合流した2次冷水往温度が制御目標値である2次冷水往温度の設定値となるように、PLC0は、2次冷水往温度の設定値Tcs2_SPと、2次冷水還温度Tcr2と、2次冷水流量Vc2を用いて、第1の制御設定値(Tcs1_SP)および第2の制御設定値(pVc1_SP)を算出する。この演算においては、仮の冷凍機冷水出口温度tTcs1または仮の1次冷水流量tVc1を代入することで、これらの仮の値に対応する解を算出することができる。ステップS209の後、PLC0は
図4の処理を終了する。
【0058】
ここで、ステップS209の制御では、2次冷水還温度Tcr2は冷凍機冷水出口温度Tcs1よりも高い温度である。つまり、ステップS209でのPLC0は、第1の制御設定値および第2の制御設定値に基づいて送水される1次冷水の冷凍機冷水出口温度を2次冷水往温度の設定値よりも低い温度もしくは同じ温度とする。そして、PLC0は、冷凍機10から送水される1次冷水とバイパス管18から逆流する2次還冷水とをミキシングした2次冷水往温度Tcs2が所望の2次冷水往温度の設定値Tcs2_SPとなるように制御を行う(なお、第1の制御設定値および第2の制御設定値の値によっては1次冷水流量=2次冷水流量となってミキシングをさせない場合もある)。そのため、2次冷水往温度の設定値Tcs2_SPは、冷凍機冷水出口温度の下限値Tcs1_MINよりも高い温度に設定することが好ましい。なお、本実施形態による制御は、2次冷水往温度の設定値Tcs2_SPを高く設定しても影響のない冬期や中間期の運転に適している。
【0059】
ステップS210において、PLC0は、冷凍機10の運転台数Nが不足しているかを判定する。具体的には、PLC0は、熱源負荷率pQ1が熱源負荷率の最大値pQ1_MAXより大きいか(pQ1>pQ1_MAX)を判定する。熱源負荷率pQ1が熱源負荷率の最大値pQ1_MAXより大きい場合、冷凍機10の運転台数Nが不足している状態であり、ステップS211に処理が移行する。一方、熱源負荷率pQ1が熱源負荷率の最大値pQ1_MAX以下である場合、冷凍機10の運転台数Nが過剰な状態であり、ステップS212に処理が移行する。
【0060】
ステップS211において、2次負荷熱量Q2に対して冷凍機10の運転台数が不足しているため、PLC0は、現在の冷凍機10の運転台数Nの条件下で1次側の生成熱量Q1が最大となるように制御を行う。具体的には、PLC0は、第1の制御設定値である冷凍機冷水出口温度の設定値Tcs1_SPを、冷凍機冷水出口温度の下限値Tcs1_MINまで下げる(Tcs1_SP=Tsc1_MIN)。また、PLC0は、第2の制御設定値である1次冷水流量比率の設定値pVc1_SPを最大の100%とする(pVc1_SP=100[%])。ステップS211の後、PLC0は
図4の処理を終了する。
【0061】
ステップS212において、2次負荷熱量Q2に対しての冷凍機10の運転台数Nが過剰であるため、PLC0は、1次側の生成熱量を制御範囲内で最小とするための1次冷水流量の判定を行う。具体的には、PLC0は、1次冷水流量Vc1が最小となるときにバイパス管流量が上限値を超えないかを判定する。具体的には、PLC0は、2次冷水流量Vc2から1次冷水流量の下限値Vc1_MINを減じた値がバイパス管流量の上限値Vbp_MAXより大きいか(Vbp_MAX<Vc2−Vc1_MIN)を判定する。1次冷水流量Vc1が最小となるときにバイパス管流量が上限値を超える場合、ステップS213に処理が移行する。1次冷水流量Vc1が最小となるときにバイパス管流量が上限値を超えない場合、ステップS214に処理が移行する。
【0062】
ステップS213において、PLC0は、現在の冷凍機10の運転台数Nの条件下で1次側の生成熱量Q1が可能な限り小さくなるように制御を行う。具体的には、PLC0は、第1の制御設定値である冷凍機冷水出口温度の設定値Tcs1_SPを、冷凍機冷水出口温度の下限値Tcs1_MINとする(Tcs1_SP=Tsc1_MIN)。また、PLC0は、第2の制御設定値である1次冷水流量比率の設定値pVc1_SPを以下の式(8)で算出する。ステップS213の後、PLC0は
図4の処理を終了する。
pVc1_SP=(Vc2−Vbp_MAX)/Vc1_MAX×100[%] …(8)
ステップS214において、PLC0は、現在の冷凍機10の運転台数Nの条件下で1次側の生成熱量Q1が可能な限り小さくなるように制御を行う。具体的には、PLC0は、第1の制御設定値である冷凍機冷水出口温度の設定値Tcs1_SPを、冷凍機冷水出口温度の下限値Tcs1_MINとする(Tcs1_SP=Tsc1_MIN)。また、PLC0は、第2の制御設定値である1次冷水流量比率の設定値pVc1_SPを、個々の冷凍機10での1次冷水流量比率の下限値pVc1_MIN_Riとする(pVc1_SP=pVc1_MIN_Ri)。ステップS214の後、PLC0は
図4の処理を終了する。
【0063】
次に、
図5、
図6を参照しつつ、
図4のステップS209での処理を詳細に説明する。
図5は、
図4のステップS209におけるPLC0の処理例を示す流れ図である。
【0064】
また、
図6は、Q1=Q2のときの1次冷水流量Vc1を定格値100%とした比率と1次冷水温度差ΔT1との関係の例を示す図である。
図6の縦軸は1次冷水温度差ΔT1を示し、
図6の横軸は1次冷水流量Vc1を定格値100%とした比率を示す。また、
図6の曲線は、Q1=Q2=Constのときの1次冷水流量Vc1と1次冷水温度差ΔT1との関係をプロットしたものである。
図6のQ1=Q2の曲線で示される熱量の定格比率は45%で、横軸100%のとき縦軸は45%、横軸67%のとき縦軸は67%、横軸50%のとき縦軸は90%、縦軸120%のとき横軸37.5%である。なお、
図6に示す曲線はあくまで一例であり、Q2が増減することで曲線がシフトする。
【0065】
ここで、
図5に示すステップS300番台の制御では、計測値から算出した2次側の負荷熱量Q2と計算で求める1次側の生成熱量Q1とが等しくなる条件で、かつ冷凍機10の出口と入口との間の1次冷水温度差ΔT1を制御範囲内で最大とすることで軽負荷運転による冷凍機コンプレッサの停止を抑制するとともに、1次冷水ポンプ11の流量を制御範囲内で極力小さく制御することで1次冷水搬送動力の削減が期待できる順に、第1の制御設定値(Tcs1_SP)および第2の制御設定値(pVc1_SP)の解を求める。
【0066】
ステップS300において、PLC0は、冷凍機冷水出口温度が下限値のとき(
図6の点(a))の解を算出する。具体的には、PLC0は、以下の式(9)において、仮の冷凍機冷水出口温度tTcs1に冷凍機冷水出口温度の下限値Tcs1_MINを代入したときの仮の1次冷水流量tVc1を算出する。
【0068】
また、PLC0は、仮の1次冷水流量tVc1に基づく仮のバイパス管流量tVbpを以下の式(10)で算出する。
tVbp=Vc2−tVc1 ……(10)
ステップS301において、PLC0は、ステップS300で算出した解が設計条件を満たすかを判定する。具体的には、PLC0は、以下の(条件1)および(条件2)を満たす場合に設計条件を満たすと判定する。
(条件1):仮の1次冷水流量tVc1が1次冷水流量の下限値から上限値までの範囲内(Vc1_MIN≦tVc1≦Vc1_MAX)にある。
(条件2):仮のバイパス管流量tVbpがバイパス管流量の上限値Vbp_MAX以下(tVbp≦Vbp_MAX)である。
【0069】
上記の設計条件を満たす場合にはステップS308に処理が移行する。一方、上記の設計条件を満たさない場合にはステップS302に処理が移行する。
【0070】
ステップS302において、PLC0は、1次冷水流量が下限値のとき(
図6の点(b))の解を算出する。具体的には、PLC0は、以下の式(11)において、仮の1次冷水流量tVc1に1次冷水流量の下限値Vc1_MINを代入したときの仮の冷凍機冷水出口温度tTcs1を算出する。
【0072】
また、PLC0は、仮の冷凍機冷水出口温度tTcs1に基づく仮の1次冷水温度差tΔT1を以下の式(12)で算出する。
tΔT1=Tcr2−tTcs1 ……(12)
ステップS303において、PLC0は、ステップS302で算出した解が設計条件を満たすかを判定する。具体的には、PLC0は、以下の(条件11)〜(条件13)の全てを満たす場合に設計条件を満たすと判定する。
(条件11):仮の冷凍機冷水出口温度tTcs1が冷凍機冷水出口温度の下限値から上限値までの範囲内(Tcs1_MIN≦tTcs1≦Tcs1_MAX)にある。
(条件12):仮の1次冷水温度差tΔT1が1次冷水温度差の下限値ΔT1_MIN以上(tΔT1≧ΔT1_MIN)である。
(条件13):仮のバイパス管流量tVbpがバイパス管流量の上限値Vbp_MAX以下(tVbp≦Vbp_MAX)である。
【0073】
上記の設計条件を満たす場合にはステップS308に処理が移行する。一方、上記の設計条件を満たさない場合にはステップS304に処理が移行する。
【0074】
ステップS304において、PLC0は、1次冷水流量がバイパス管流量の上限値のとき(
図6の点(c))の解を算出する。具体的には、PLC0は、上記の式(11)において、仮の1次冷水流量tVc1にVc2−Vbp_MAXを代入したときの仮の冷凍機冷水出口温度tTcs1を算出する。また、PLC0は、上記の式(12)により、1次冷水流量がバイパス管流量の上限値のときの仮の1次冷水温度差tΔT1を算出する。
【0075】
なお、
図6(c)に示すバイパス管流量の上限値のときの仮の1次冷水流量tVc1は、現在の熱源台数Nに応じて変動する。ここで、バイパス管流量の上限値Vbp_MAXは固定値(一般的に冷凍機1台分の流量)であるが、1次冷水流量は熱源台数Nが多いほど大きくなり、熱源台数Nが少なくなれば小さくなる。したがって、熱源台数Nが多いほどバイパス管流量の上限値のときの仮の1次冷水流量tVc1は相対的に高い値となり、
図6での点(c)の位置が1次冷水流量の上限値の方向に近づく。逆に、熱源台数Nが少ないほどバイパス管流量の上限値のときの仮の1次冷水流量tVc1は相対的に低い値となり、
図6での点(c)の位置が1次冷水流量の下限値の方向に近づく。
【0076】
ステップS305において、PLC0は、ステップS304で算出した解が設計条件を満たすかを判定する。具体的には、PLC0は、PLC0は、以下の(条件21)〜(条件23)の全てを満たす場合に設計条件を満たすと判定する。
(条件21):仮の冷凍機冷水出口温度tTcs1が冷凍機冷水出口温度の下限値から上限値までの範囲内(Tcs1_MIN≦tTcs1≦Tcs1_MAX)にある。
(条件22):仮の1次冷水温度差tΔT1が1次冷水温度差の下限値ΔT1_MIN以上(tΔT1≧ΔT1_MIN)である。
(条件23):仮の1次冷水流量tVc1が1次冷水流量の下限値から上限値までの範囲内(Vc1_MIN≦tVc1≦Vc1_MAX)にある。
【0077】
上記の設計条件を満たす場合にはステップS308に処理が移行する。一方、上記の設計条件を満たさない場合には、逆流が発生する解の組み合わせでは設計条件を満たすことが出来ないと考えられる。したがって、計測値から算出した2次側の負荷熱量Q2と計算で求める1次側の生成熱量Q1とが等しくなる条件で、かつ冷凍機10の出口と入口との間の1次冷水温度差ΔT1が最大となる解はtTcs1=Tcs2_SP、tVc1=Vc2の1次冷水と2次冷水が均衡した状態となる。Vc2が1次冷水ポンプ11の流量調整範囲内(Vc2≦Vc1_MAX)であるかを判定するために、ステップS306に処理が移行する。
【0078】
ステップS306において、PLC0は、2次冷水流量Vc2がその時点における冷凍機の運転台数から算出した1次冷水流量の上限値Vc1_MAX以下であるか(Vc2≦Vc1_MAX)を判定する。2次冷水流量Vc2が1次冷水流量の上限値Vc1_MAX以下である場合にはステップS307に処理が移行する。一方、2次冷水流量Vc2が1次冷水流量の上限値Vc1_MAXよりも大きい場合には、設計条件を満たす解が存在しないため、ステップS309に処理が移行する。
【0079】
ステップS307において、1次冷水流量と2次冷水流量とが等しいときの解を算出する。PLC0は、仮の1次冷水流量tVc1を2次冷水流量Vc2とし(tVc1=Vc2)、仮の冷凍機冷水出口温度tTcs1を2次冷水往温度の設定値Tcs2_SPとする(tTcs1=Tcs2_SP)。その後、ステップS308に処理が移行する。
【0080】
ステップS308において、PLC0は、第1の制御設定値である冷凍機冷水出口温度の設定値Tcs1_SPをtTcsとする(Tcs1_SP=tTsc1)。また、PLC0は、第2の制御設定値である1次冷水流量比率の設定値pVc1_SPをtVc1/Vc1_MAX×100とする(pVc1_SP=tVc1/Vc1_MAX×100[%])。
【0081】
このように、ステップS301、ステップS303、ステップS305、ステップS307の順に解を求めることで、PLC0は、計測値から算出した2次側の負荷熱量と計算で求める1次側の生成熱量Q1とが等しくなる条件で、かつ1次冷水ポンプ11の流量調整範囲内で冷凍機10の出口と入口との間の1次冷水温度差ΔT1が最大となるような第1の制御設定値(Tcs1_SP)および第2の制御設定値(pVc1_SP)の解を求めることができる。ステップS308の後、PLC0は
図5の処理を終了する。
【0082】
ステップS309において、PLC0は、第1の制御設定値である冷凍機冷水出口温度の設定値Tcs1_SPを冷凍機冷水出口温度の下限値Tcs1_MINとする(Tcs1_SP=Tsc1_MIN)。また、PLC0は、第2の制御設定値である1次冷水流量比率の設定値pVc1_SPを100%とする(pVc1_SP=100[%])。ステップS309の後、PLC0は
図5の処理を終了する。
【0083】
ステップS309の場合、熱量的には冷凍機10の運転台数が見合っていても現在の運転台数ではQ1=Q2となる1次冷水流量を賄えない可能性がある。そのため、PLC0は、可能な範囲で1次側の生成熱量を最大とする制御を行う。なお、この場合には、PLC1によって熱源台数を増段する制御が別途行われることとなる。
【0084】
次に、
図7から
図9を参照し、熱源制御システムの比較例および実施例の動作を説明する。なお、
図7から
図9は、1次2次ポンプ方式の熱源制御システムの構成を模式的に示し、簡単のため、2次往ヘッダ、2次冷水ポンプの図示は省略している。
【0085】
ここで、
図7から
図9での熱源制御システムは、3台の冷凍機R1−R3を有する。冷凍機R1はINVターボで530USRTの冷凍能力、冷凍機R2は定速ターボで530USRTの冷凍能力、冷凍機R3はガス吸収式で500USRTの冷凍能力とする。また、外気条件は、乾球温度15.0℃Db、相対湿度40.0%RH、湿球温度8.48℃Wbとする。また、2次負荷熱量条件は26%、406USRT(1426kW)とする。
【0086】
図7は、2次冷水往温度が10℃、2次冷水還温度が15℃、2次冷水の温度差ΔT=5℃であり、還ヘッダから往ヘッダの逆流を禁止した制御での動作状態を示している。
図7の場合、熱量比率76.53%で冷凍機R1を1台運転したときに、2次負荷熱量と1次側の生成熱量とが均衡し、かつ1次冷水流量と2次冷水流量も均衡する。
【0087】
なお、
図7の例では、冷水ポンプの動力は、8.6kW、冷凍機の冷却に用いられる冷却水ポンプの動力は8.1kw、冷凍機の冷却に用いられる冷却塔のファンの動力は13.3kwであった。
【0088】
図8は、2次冷水の温度差ΔT=3℃において、還ヘッダから往ヘッダの逆流を禁止した比較例の制御での動作状態を示している。
図8の例では、2次冷水流量が408.8m
3/hに増加するため、冷凍機冷水出口温度(10℃)の冷水をそのまま空調機に送水するためには、1次冷水流量を増加させて逆流を抑止する必要が生じる。そのため、
図8の例では、流量収支より運転台数を増加させる制御を行い、冷凍機R1、R2をそれぞれ熱量比率38.26%で運転させる。これにより、1次冷水流量は408.8m
3/hとなり、1次冷水流量と2次冷水流量が均衡するので逆流は生じない。
【0089】
なお、
図8の例では、冷水ポンプの動力は、9.6kW、冷却水ポンプの動力は13.2kw、冷却塔のファンの動力は17.1kwであった。
【0090】
一方、
図9は、2次冷水の温度差ΔT=3℃における本実施形態の実施例の制御での動作状態を示している。本実施形態の実施例の制御の場合、逆流を許容し、1次冷水ポンプの1次冷水と、バイパス管からの還ヘッダから往ヘッダへの流れとを合流させて制御目標値の2次冷水往温度を得る。つまり、
図9の例では、
図8の例のように1次冷水流量を2次冷水流量以上とする必要はなく、2次負荷熱量と1次側の生成熱量とが均衡するように冷凍機の運転条件を決めればよい。そのため、
図9の例では、熱量収支により冷凍機R1を熱量比率76.80%で1台運転させればよく、
図8の例よりも冷凍機や冷水ポンプの運転台数を抑止できる。
【0091】
また、
図9の例では、バイパス管で還ヘッダから往ヘッダに逆流する水の温度は13℃であり、その流量は204.4m
3/hとなる。そのため、制御目標値である10℃まで2次冷水往温度を下げるために、冷凍機冷水出口温度は制御目標値の10℃よりも低い温度である7℃に設定される。
図9の例では、冷凍機冷水入口温度(13℃)と冷凍機冷水出口温度(7℃)との1次冷水温度差は6℃となり、
図8の例(ΔT1=3℃)よりも大きくなることがわかる。
【0092】
なお、
図9の例では、冷水ポンプの動力は、4.8kW、冷却水ポンプの動力は8.8kw、冷却塔のファンの動力は13.3kwであった。
【0093】
また、
図7から
図9の場合に冷水ポンプの動力を比較すると、
図7の場合は8.6kWであるのに対し、
図8の場合は9.6kW、
図9の場合は4.8kWとなる。また、冷却水ポンプの動力を比較すると、
図7の場合は8.1kWであるのに対し、
図8の場合は13.2kW、
図9の場合は8.8kWとなる。同様に、冷却塔のファンの動力を比較すると、
図7の場合は13.3kWであるのに対し、
図8の場合は17.1kW、
図9の場合は13.3kWとなる。このように、
図8に示す比較例と比べると、
図9に示す本実施形態の実施例では、冷水ポンプの動力、冷却水ポンプの動力、冷却塔ファンの動力のいずれも小さくすることができる。
【0094】
以下、本実施形態の熱源制御システムでの作用効果を述べる。
【0095】
本実施形態の熱源制御システム100では、制御装置は、2次冷水温度差ΔT2が設計値未満となるときに、2次負荷熱量Q2と1次側の生成熱量Q1とが等しくなる条件で、かつ1次冷水ポンプ11が送水する1次冷水と、バイパス管18を介して還ヘッダから第1往ヘッダ12へ流入する2次還冷水とが合流した2次冷水往温度Tcs2が2次冷水往温度の設定値Tcs2_SPとなるように、2次冷水往温度の設定値Tcs2_SPと、2次冷水還温度Tcr2と、2次冷水流量Vc2を用いて、冷凍機冷水出口温度を制御するための第1の制御設定値(Tcs1_SP)と、1次冷水流量を制御するための第2の制御設定値(pVc1_SP)とを求める。
【0096】
つまり、本実施形態では、逆流を許容し、1次冷水ポンプ11の1次冷水と、バイパス管18からの還ヘッダから往ヘッダへの流れとを合流させて制御目標値の2次冷水往温度を得ることで、2次冷水往温度Tcs2の上昇を抑止でき、従来の制御では成り行きで温度が決まっていた2次冷水往温度Tcs2を安定して制御できる。
【0097】
また、本実施形態では、1次冷水ポンプ11の1次冷水と、バイパス管18からの還ヘッダから往ヘッダへの流れとを合流させて制御目標値の2次冷水往温度を得るのに、2次冷水往温度Tcs2よりも冷凍機冷水出口温度Tcs1を低くする場合があるが、その冷凍機冷水出口温度Tcs1を、その時点で要求される2次冷水熱量を基準に、冷凍機冷水出口温度下限値と冷水流量下限値とを少なくとも考慮して演算で決定する。そのため、本実施形態では、1次側において1次冷水温度差ΔT1を制御範囲内で最大にすることが可能となる。冷凍機において1次冷水温度差ΔT1が小さくなると冷凍機のコンプレッサを自動停止させて軽負荷運転状態にする制御が行われるが、本実施形態によれば、1次冷水温度差ΔT1を制御範囲内で最大にできることから、軽負荷運転状態への移行頻度が低下する。これにより、本実施形態によれば、熱源制御システムにおける熱源の軽負荷運転状態への移行による2次冷水往温度Tcs2上昇のリスクを従来の制御よりも極力抑制できる。
【0098】
また、本実施形態では、1次冷水ポンプ11の1次冷水と、バイパス管18からの還ヘッダから往ヘッダへの流れとを合流させて制御目標値の2次冷水往温度を得るのに、2次冷水往温度Tcs2よりも冷凍機冷水出口温度Tcs1を低くする場合があるが、その冷凍機冷水出口温度Tcs1を、その時点で要求される2次冷水熱量を基準に演算決定するので、1次冷水流量Vc1を2次冷水流量Vc2よりも大きくしなくてもよい。そのため、本実施形態によれば、従来と比べて1次冷水の搬送動力を削減することができる。
【0099】
また、従来の制御では1次冷水流量Vc1を2次冷水流量Vc2よりも大きくしていたため、往ヘッダから還ヘッダへの流れにより1次冷水温度差ΔT1が2次冷水温度差ΔT2よりも必然的に小さくなり、1次冷水流量Vc1を制御範囲内で最大としても冷凍機が定格生成熱量を生成できない場合があった。本実施形態によれば、制御範囲内でΔT1を最大とすることが可能なため従来の制御よりも多くの場合において冷凍機の定格能力を発揮する制御が可能となる。
【0100】
また、本実施形態によれば、1次冷水ポンプ11の1次冷水と、バイパス管18からの還ヘッダから往ヘッダへの流れとを合流させて制御目標値の2次冷水往温度を得るのに、2次冷水往温度Tcs2よりも冷凍機冷水出口温度Tcs1を低くする場合があるが、その冷凍機冷水出口温度Tcs1を、その時点で要求される2次冷水熱量を基準に演算決定するので、1次冷水流量Vc1を2次冷水流量Vc2よりも大きくしなくてもよい。そのため、本実施形態では、1次側と2次側の流量収支ではなく、1次側と2次側の熱量収支で冷凍機10の運転台数を制御できるため、従来と比べて温度上昇により発生していた余計な熱源の追加起動を極力抑止できる。
【0101】
(実施形態の補足事項)
上記の実施形態では、PLC0およびPLC1をそれぞれ独立した装置として説明したが、これらの一部または全部の機能を他のPLCに集約する構成としてもよい。また、上記の実施形態において、各々のPLCが他のPLCとデータ通信を行い、共通の情報をPLC間の通信で取得するようにしてもよい。
【0102】
また、上記の実施形態の制御では、複数台の熱源が運転される場合において熱量の分配を均等分配比例方式としているが、熱源の性能に応じて重みづけを行い、稼働させる熱源に優先順位を設けるようにしてもよい。例えば、熱源ごとの定格COP(Coefficient Of Performance)に基づいて熱源の重み係数を決定し、高効率の熱源の重み係数を高くすることで高効率の熱源を優先的に運転するようにしてもよい。あるいは、熱源ごとに上限値および下限値が異なる場合において、運転台数Nおよび2次負荷熱量Q2に応じた重み係数のテーブルを設定し、このテーブルを参照して稼働させる熱源を決定することで、熱源の上限値および下限値の範囲内で制御値を決定してもよい。
【0103】
以上の詳細な説明により、実施形態の特徴点および利点は明らかになるであろう。これは、特許請求の範囲が、その精神および権利範囲を逸脱しない範囲で前述のような実施形態の特徴点および利点にまで及ぶことを意図するものである。また、当該技術分野において通常の知識を有する者であれば、あらゆる改良および変更に容易に想到できるはずである。したがって、発明性を有する実施形態の範囲を前述したものに限定する意図はなく、実施形態に開示された範囲に含まれる適当な改良物および同等物に拠ることも可能である。