特許第6644561号(P6644561)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6644561
(24)【登録日】2020年1月10日
(45)【発行日】2020年2月12日
(54)【発明の名称】飛行物体監視システム
(51)【国際特許分類】
   H04N 7/18 20060101AFI20200130BHJP
   G08B 19/00 20060101ALI20200130BHJP
   G08B 25/00 20060101ALI20200130BHJP
【FI】
   H04N7/18 D
   G08B19/00
   G08B25/00 510M
   G08B25/00 510H
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-13489(P2016-13489)
(22)【出願日】2016年1月27日
(65)【公開番号】特開2017-135550(P2017-135550A)
(43)【公開日】2017年8月3日
【審査請求日】2019年1月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000108085
【氏名又は名称】セコム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067323
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 教光
(74)【代理人】
【識別番号】100124268
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 典行
(72)【発明者】
【氏名】夛澤 慶亮
(72)【発明者】
【氏名】中山 慎士
(72)【発明者】
【氏名】青木 文男
【審査官】 鈴木 隆夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−168421(JP,A)
【文献】 特表2015−507713(JP,A)
【文献】 国際公開第00/057383(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 7/18
G08B 19/00
G08B 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の監視領域内の飛行物体を検知する検知手段と、
監視領域内の音響信号を取得する音響信号取得手段と、
を備えた飛行物体監視システムであって、
前記検知手段が検知した飛行物体を追跡中に消失した場合、前記飛行物体の消失前後の音響信号の変化に応じた判定を行うことを特徴とする飛行物体監視システム。
【請求項2】
前記飛行物体の消失前に、前記音響信号が第一の基準値以上で観測され、前記飛行物体が消失し、前記消失から第一の所定時間内に前記音響信号が第二の基準値以下になった場合に前記飛行物体が墜落したと判定する請求項1に記載の飛行物体監視システム。
【請求項3】
風速及び風向を計測する風速計をさらに備え、
前記風速計による計測情報が所定の条件を満たした場合に、前記飛行物体が墜落と判定することを特徴とする請求項2に記載の飛行物体監視システム。
【請求項4】
前記飛行物体が消失した後、前記音響信号が第一の基準値以上継続中に再度検知された飛行物体を同一のものと判定することを特徴とする請求項1に記載の飛行物体監視システム。
【請求項5】
前記飛行物体が消失した後、前記音響信号が前記第一の所定時間経過後、第二の所定時間内に前記第二の基準値以下になった場合は、当該飛行物体が消失した位置を要監視ポイントとして設定することを特徴とする請求項2に記載の飛行物体監視システム。
【請求項6】
所定の監視領域内の飛行物体を検知する検知手段と、
前記検知手段が検知した飛行物体を撮像する撮像手段と、
前記撮像手段が撮像した撮像画像を表示する表示手段と、
監視領域内の音響信号を取得する音響信号取得手段と、
前記飛行物体が消失するまで撮像画像を取得する場合において、前記撮像画像の取得停止を指示するユーザ入力手段と、
を備えた飛行物体監視システムであって、
前記検知手段にて検知中の飛行物体が消失したとき、前記音響信号が前記飛行物体の消失前後で継続している場合は撮像停止の有無を前記ユーザ入力手段から入力を必要とし、前記音響信号がない場合は強制的に終了することを特徴とする飛行物体監視システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の監視領域内に飛来する飛行物体(例えばドローン等)を監視する飛行物体監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ドローンと呼ばれる小型で無人のマルチコプターが実用化され、農薬散布や施設点検などさまざまな用途に有効利用されている。一方で、盗撮や危険物運搬などドローンを悪用した犯罪も懸念されつつあり、このようなドローンを早期に検出するシステムも現れ始めている。
【0003】
従来、例えば下記特許文献1に開示されるように、特定の監視領域内に侵入する侵入物体を監視対象とし、検知手段にて侵入物体を検知すると遠隔の監視モニターに表示し、監視員が確認可能な監視装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−198802号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の監視装置では、監視領域内において飛行物体が検知された場合、遠隔のセンタ装置の監視卓の表示装置にレーダ画像或いは監視カメラ映像を表示させ、監視員がレーダ画像や監視カメラ映像を見て飛行物体の監視を行う。その際、レーダにより追跡中の飛行物体が検知できなくなると、他に飛行物体がなければ監視員は監視卓における監視業務を完了し、待機状態に戻る。
【0006】
しかしながら、追跡中の飛行物体が一時的にレーダの監視範囲外に外れることがあり、しばらくしてからまたレーダの監視範囲に追跡中の飛行物体が戻ってくる場合もある。また、ドローンのような不安定な飛行物体は、有人のヘリコプターと違い、モータトラブルや電波障害あるいは強風に煽られて制御を失うと墜落する場合がある。
【0007】
従って、追跡中の飛行物体がレーダで検知できなくなった場合、その状況に応じて監視員が適切な対処ができるように情報提供が行えるシステムを構築することが望まれる。
【0008】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、監視領域内を飛行する飛行物体を監視するにあたって、監視員による監視中の飛行物体が消失した場合に、レーダ以外の補助情報を用いて監視員が適切な対処が行えるよう情報提供することができる飛行物体監視システムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記した目的を達成するために、本発明に係る飛行物体監視システムは、所定の監視領域内の飛行物体を検知する検知手段と、
監視領域内の音響信号を取得する音響信号取得手段と、
を備えた飛行物体監視システムであって、
前記検知手段が検知した飛行物体を追跡中に消失した場合、前記飛行物体の消失前後の音響信号の変化に応じた判定を行うことを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る飛行物体監視システムは、前記飛行物体の消失前に、前記音響信号が第一の基準値以上で観測され、前記飛行物体が消失し、前記消失から第一の所定時間内に前記音響信号が第二の基準値以下になった場合に前記飛行物体が墜落したと判定してもよい。
【0011】
さらに、本発明に係る飛行物体監視システムは、風速及び風向を計測する風速計をさらに備え、
前記風速計による計測情報が所定の条件を満たした場合に、前記飛行物体が墜落と判定してもよい。
【0012】
また、本発明に係る飛行物体監視システムは、前記飛行物体が消失した後、前記音響信号が前記第一の基準値以上継続中に再度検知された飛行物体を同一のものと判定してもよい。
【0013】
さらに、本発明に係る飛行物体監視システムは、前記飛行物体が消失した後、前記音響信号が前記第一の所定時間経過後、第二の所定時間内に前記第二の基準値以下になった場合は、当該飛行物体が消失した位置を要監視ポイントとして設定してもよい。
【0014】
また、本発明に係る飛行物体監視システムは、所定の監視領域内の飛行物体を検知する検知手段と、
前記検知手段が検知した飛行物体を撮像する撮像手段と、
前記撮像手段が撮像した撮像画像を表示する表示手段と、
監視領域内の音響信号を取得する音響信号取得手段と、
前記飛行物体が消失するまで撮像画像を取得する場合において、前記撮像画像の取得停止を指示するユーザ入力手段と、
を備えた飛行物体監視システムであって、
前記検知手段にて検知中の飛行物体が消失したとき、前記音響信号が前記飛行物体の消失前後で継続している場合は撮像停止の有無を前記ユーザ入力手段から入力を必要とし、前記音響信号がない場合は強制的に終了することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の飛行物体監視システムによれば、検知手段は、所定の監視領域内に飛来する飛行物体を検知する。音響信号取得手段は、監視領域内の音響信号を取得する。そして、検知手段にて検知した飛行物体を追跡中に消失した場合、その飛行物体の消失前後の音響信号の変化に応じた判定を行う。かかる構成により、音響信号を利用することで検知手段から飛行物体が消失した時の原因を精度良く判定でき、監視領域内に飛来する飛行物体を監視するにあたって、監視員による監視中の飛行物体が消失した場合に、飛行物体の検知情報以外の補助情報として音響信号を用いて監視員が適切な対処が行えるよう情報提供することができる。
【0016】
また、本発明の飛行物体監視システムによれば、飛行物体の消失前に、音響信号が第一の基準値以上で観測され、飛行物体が消失し、消失から第一の所定時間内に音響信号が第二の基準値以下になった場合に飛行物体が墜落したと判定する。かかる構成により、飛行物体が墜落したと判定したときに監視員が適切に対処することができる。例えば、墜落地点に操作者がドローンを回収に来る可能性が高く、身元の確認等の対応が可能となる。
【0017】
さらに、本発明の飛行物体監視システムによれば、風速計は、風速及び風向を計測する。そして、風速計による計測情報が所定の条件を満たした場合に、飛行物体が墜落と判定する。かかる構成により、飛行物体の墜落判定に風速計の計測情報を条件に追加してより精度良く飛行物体の墜落判定が可能になる。
【0018】
また、本発明の飛行物体監視システムによれば、飛行物体が消失した後、音響信号が第一の基準値以上継続中再度検知された飛行物体を同一のものと判定する。かかる構成により、追跡中に消失した飛行物体が再度現れた場合、新規の物体として判定しないことで継続的な判定を行うことができる。
【0019】
さらに、本発明の飛行物体監視システムによれば、飛行物体が消失した後、音響信号が第一の所定時間経過後、第二の所定時間内に第二の基準値以下になった場合は、当該飛行物体が消失した位置を要監視ポイントとして設定する。かかる構成により、例えばビルの上などに不時着した場合、所有者に確認することが困難な場合が多いが、要監視ポイントと設定しておくことで再び消失点から出現したドローンを不審なものと推定することができる。
【0020】
また、本発明の飛行物体監視システムによれば、検知手段は、所定の監視領域内の飛行物体を検知する。撮像手段は、検知手段にて検知した飛行物体を撮像する。表示手段は、撮像手段が撮像した撮像画像を表示する。音響信号取得手段は、監視領域内の音響信号を取得する。ユーザ入力手段は、飛行物体が消失するまで撮像画像を取得する場合において、撮像画像の取得停止を指示する。検知手段にて検知中の飛行物体が消失すると、音響信号が飛行物体の消失前後で継続している場合は撮像停止の有無をユーザ入力手段から入力を必要とし、音響信号がない場合は強制的に終了する。かかる構成により、検知手段が飛行物体の消失時に鳥のように音響信号が観測できない場合は、撮像手段で視認可能であっても監視を強制停止し、音響信号が観測されている場合に監視をユーザ判断に任せることで利便性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明に係る飛行物体監視システムの全体構成を示すブロック図である。
図2】本発明に係る飛行物体監視システムによる監視イメージの概略図である。
図3】本発明に係る飛行物体監視システムの検知手段を構成する監視用レーダの概略構成を示す図である。
図4】本発明に係る飛行物体監視システムの制御内容を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を実施するための形態について、添付した図面の図1〜4を参照しながら詳細に説明する。
【0023】
[本発明の概要について]
本発明は、監視領域内に飛来する飛行物体(例えばドローン等)を監視する飛行物体監視システムに関するものであり、建物の屋上等の所定の高さに設置され、設置高さ以上の監視範囲を監視する検知手段(監視用レーダ)で検知した飛行物体が追跡中に消失したとき、同時に観測中の音響情報等の情報に応じて異なる判定を行う機能を有する。
【0024】
具体的には、検知手段としての監視用レーダで追跡中の飛行物体が消失したとき、音響信号処理装置のマイクから取得した音響信号に急激な変化(或いは消失)があれば監視用レーダの監視範囲外の下方への墜落と判定し、一方、音響信号が消失前と同様に継続して取得できる場合は、飛行物体が一時的に監視領域から外れたと判定し継続監視を行う。この場合、音響信号が継続中に消失した地点から所定範囲内で検知された飛行物体を同一物体と判定する。或いは、飛行物体がレーダから消失後、音響信号が一定時間継続後、その後音響信号が消失した場合は監視用レーダの監視範囲外の下方への不時着と判定し、周辺を要監視ポイントとして設定する。或いは音響信号処理装置として、3次元の音響アレイを採用する場合は、飛行物体がレーダから消失後の音響信号から判定される音源位置の移動方向が下降後、音響信号が消失した場合に不時着と判定する。
【0025】
そして、飛行物体が一時的に消失したと判定した場合は、継続して監視を行い、一方で、墜落と判定した場合は、その現場に対処員を派遣して飛行物体(例えばドローン等)を回収に来た操作者を発見できる。これにより、追跡中の飛行物体が監視用レーダで検知できなくなった場合、その状況に応じて監視員が適切な対処ができるように情報提供を行うことができる。
【0026】
[飛行物体監視システムの構成について]
図1に示すように、本実施の形態の飛行物体監視システム1は、監視領域内に飛来する飛行物体を監視する監視装置2と、監視装置2から離れた位置に配置される遠隔のセンタ装置3とから大略構成される。
【0027】
図2は飛行物体監視システム1による監視イメージの概略を示している。図2において、円は監視装置2の後述する監視用レーダ11の監視範囲Eを示している。図2では、飛行物体W1と飛行物体W2とが監視範囲E内に飛来している例を示している。監視範囲E内には、重要施設等の重点的に監視すべきポイント(要監視ポイントC)を設定することができる。
【0028】
監視領域には後述する監視用レーダ11を含む監視装置2が設置されており、監視用レーダ11が飛行物体Wを検知すると、その監視用レーダ11近傍の後述する撮像装置12が撮像したカメラ画像を遠隔のセンタ装置3に送信し、センタ装置3の後述する監視卓の表示装置22にカメラ画像が表示される。監視員は、監視卓の表示装置22に表示されるカメラ画像により飛行物体Wを監視する。
【0029】
なお、図2の例では、1つの監視装置2にて監視領域内に監視範囲Eを設定しているが、監視装置2を監視領域内に複数設置し、複数の監視範囲Eの一部を重複させて広域の監視領域を設定するようにし、何れかの監視用レーダ11が飛行物体を検知すると、監視用レーダ11近傍の撮像装置12によるカメラ画像が遠隔のセンタ装置3に送信されるようにしてもよい。
【0030】
[監視装置]
図1に示すように、監視装置2は、例えば図2に示す監視範囲Eを形成するように監視領域の所定箇所に設置され、検知手段としての監視用レーダ11、撮像装置12、音響信号処理装置13、レーダ信号処理装置14、データ処理装置15を含んで構成される。
【0031】
[監視用レーダ]
監視用レーダ11は、監視領域に検知波を所定周期で走査して監視領域内に飛来する飛行物体Wを検知するもので、周辺の建造物等の影響を受けないようにある程度の高さをもって監視領域の所定箇所に固定設置され、監視用レーダ11より上方の半球面を監視可能なように複数のレーダで構成される。監視用レーダ11は、レーダから送信される送受信波として周波数変調された連続波を使用して測距を行うFM−CW方式を採用し、所定周期(例えば1回転/1秒)で方位方向に所定の水平ビーム幅(例えば2度)のビームを360度回転させ、所定周期(例えば3ms)ごとに電波を送受信することで、飛行物体Wの方位方向を検知できる。また、監視用レーダ11の回転速度はレーダの最大検知距離(例えば100m)に応じて決定されるビームの往復時間と比較して、アンテナが停止しているみなせるほど小さい速度に設定される。監視用レーダ11からは、レーダを中心とした水平面上の角度、距離、速度、受信強度を出力情報として得ることができる。
【0032】
さらに監視用レーダ11の構成について図3を参照しながら説明する。ここでの監視用レーダ11は、斜方監視用レーダと天面監視用レーダによる2つのレーダ装置を組み合わせて半球面を監視する構成としている。以下、2つのレーダ装置にFM−CWレーダを用いた場合を例にとって説明する。
【0033】
図3は2つのレーダ装置で構成される監視領域のイメージを示している。固定位置に設置されたFM−CWレーダが、斜め上方、及び上空方向におのおの送信ビームを放射し、斜め上方に送信した領域を上下に分割した領域からの電波を受信する2つの受信アンテナ、及び上空方向からの電波を受信する2つの受信アンテナを用いて監視領域内に飛来する飛行物体Wからの反射ビームを受信する。
【0034】
ここでは、FM−CWレーダの原理の詳細については省略するが、その概略について説明すると、監視用レーダ11としてのFM−CWレーダは、送信アンテナ、第1の受信アンテナ、第2の受信アンテナ、受信アンテナ切り替えスイッチ、送受信装置、A/D変換器、信号処理装置を含んで構成される。
【0035】
各部について説明すると、送信アンテナは、送信ビームを前方に放射する。第1の受信アンテナと第2の受信アンテナは、送信ビームの範囲あるいは、送信ビームの範囲を分割した監視領域からの電波を受信する。受信アンテナ切り替えスイッチは、第1の受信アンテナと第2の受信アンテナのどちらか一方を一定時間毎に交互に有効にする。送受信装置は、FM−CW送信波を生成し、また受信ビームを信号処理装置で処理可能な周波数に変換する。A/D変換器は、送受信装置が出力する受信ビーム強度をデジタル変換する。信号処理装置は、A/D変換器が出力する受信ビーム強度から監視領域にある検知対象物の相対距離、相対速度、及び受信ビーム中の検知対象物からの反射ビーム成分の強度を求める。
【0036】
さらに説明すると、信号処理装置では、A/D変換器から入力した反射ビームの信号の周波数分析を行い、各周波数における信号強度を演算する。次に、信号強度が閾値以上となる周波数を求めて、その周波数を検知対象物からの反射ビーム成分の周波数とする。そして、求めた検知対象物からの反射ビーム成分の周波数と、送信ビームの周波数の差を演算してビート周波数を算出し、このビート周波数から検知対象物の相対距離、相対速度を演算して出力する。また、回転させているレーダがどの位置で飛行物体Wを検知したかに基づいて角度を求めることができる。
【0037】
なお、監視用レーダ11は、監視領域に検知波を所定周期で走査して検知対象物(飛行物体)を検知し、監視領域にある検知対象物の相対距離、相対速度、及び受信ビーム中の検知対象物からの反射ビーム成分の強度などの検知対象物に関する各種情報を取得できればよく、図3に示す構成に限定されるものではない。
【0038】
[撮像装置]
撮像装置12は、パン、チルト、ズーム機能を備えた高解像度、高感度のカメラで構成される。撮像装置12は、監視領域を撮影可能な位置に固定設置され、センタ装置3の後述する制御装置21の制御により、パン、チルト及びズームが可能であり、飛行物体Wが画面中央に映し出せるように撮影範囲が可変される。撮像装置12は、監視用レーダ11と連動し、監視用レーダ11で検知した飛行物体Wの位置情報に基づくセンタ装置3の後述する制御装置21制御により、飛行物体Wが画像中心になるように旋回台を旋回、上下方向を調整し、カメラ画像をデータ処理装置14を介してセンタ装置3に送信する。
【0039】
なお、撮像装置12は、監視用レーダ(FM−CWレーダ)11の上部または下部、あるいは別の場所に設置してもよい。
【0040】
[音響信号処理装置]
音響信号処理装置13は、例えばマイクロホン、マイクアンプ、A/D変換器などを含んで構成される。マイクロホンは、監視領域内の音響信号取得手段として機能し、無指向性のコンデンサマイクを採用することができる。また、所定距離間隔をあけて上下左右に複数のマイクロホンで構成するマイクロホンアレイを採用することで音源の方向を3次元的に特定することができる。
【0041】
なお、マイクロホンアレイを採用した場合は、監視用レーダ11で検知した飛行物体の方向と音源方向の一致を判定条件にすることができる。また、マイクロホンの数と所定距離は、サンプリング周期や監視距離に応じて決定される。マイクロホンで取得した音響信号は、マイクアンプで増幅された後にA/D変換器によりデジタル信号に変換され、データ処理装置15を介してセンタ装置3に送信される。
【0042】
[レーダ信号処理装置]
レーダ信号処理装置14は、監視用レーダ11から取得した出力情報(レーダを中心とした水平面上の角度、距離、速度、受信強度などの情報)からノイズ除去処理や固定物体除去処理などを行ってデータ処理装置15へ出力する。
【0043】
[データ処理装置]
データ処理装置15は、レーダ信号処理装置14と有線または無線にて接続され、レーダ信号処理装置14から取得した監視用レーダ11の出力を信号処理して特定の飛行物体(例えばドローン)Wと判定すると、その旨の判定信号をセンタ装置3へ出力する。その際、レーダ信号処理装置14によりノイズ除去処理などが行われた監視用レーダ11からの出力情報や音響信号処理装置13からの音響信号も合わせてセンタ装置3に出力される。
【0044】
なお、図1の構成では、監視装置2が監視用レーダ11、撮像装置12、音響信号処理装置13、レーダ信号処理装置14、データ処理装置15を含む構成としているが、監視用レーダ11、撮像装置12、音響信号処理装置13、レーダ信号処理装置14、データ処理装置15をそれぞれ個別に構成して配置してもよい。
【0045】
[センタ装置]
図1に示すように、センタ装置3は、監視センタに設けられ、制御装置21と監視卓の表示装置(表示手段)22を含んで構成される。
【0046】
[制御装置]
制御装置21は、全体を統括制御するものであり、後述する図4の処理において、監視用レーダ11が飛行物体Wを検知したか否かの判定、監視用レーダ11にて追跡中の飛行物体が消失したか否かの判定、飛行物体の消失前に飛行物体特有の音響信号が有るか否かの判定、音響信号が急変したか否かの判定、飛行物体の消失時から所定時間(設定時間)内に音響信号が停止したか否かの判定、飛行物体の消失点から所定範囲内で監視用レーダ11が飛行物体を再検知したか否かの判定、判定結果に基づく撮像装置12のパン・チルト・ズーム制御(以下、PTZ制御と言う)、表示装置22の表示制御などを行う。
【0047】
なお、制御装置21は、監視用レーダ11および撮像装置12の位置情報(緯度情報、経度情報、高度情報)が予め記憶される記憶部(不図示)を含む。
【0048】
[表示装置]
監視卓の表示装置22は、制御装置21と接続され、レーダ画像及び監視用レーダ11で検知した付近の撮像装置12のカメラ画像を表示するモニタである。
【0049】
表示装置22には、監視用レーダ11が監視範囲E内に飛来する飛行物体Wを検知すると、監視用レーダ11近傍の撮像装置12が撮像したカメラ画像を表示させる。その際、制御装置21は、監視用レーダ11から取得した飛行物体Wの位置情報に基づき撮像装置12のPTZ制御を行い、飛行物体Wが画面中央に映し出せるようにする。
【0050】
また、表示装置22の表示画面上には、監視用レーダ11にて検知される追跡中の飛行物体が消失するまで撮像装置12が撮像したカメラ画像を取得するときに、撮像装置12を撮影停止してカメラ画像の取得停止を指示するユーザ入力手段22aがソフトキーとして表示される。なお、ユーザ入力手段22aは、図1の表示装置22の表示画面上に表示されるソフトキーの他、制御装置21や表示装置22の本体に設けられるボタン、キー、スイッチなどで構成することができる。
【0051】
上記構成による本実施の形態の飛行物体監視システム1では、監視領域E内に飛来する飛行物体を監視用レーダ11にて検知すると、センタ装置3における監視卓の表示装置22のモニタ画面に監視用レーダ11近傍の撮像装置12が撮影したカメラ画像を表示させる。これにより、監視員は、監視卓の表示装置22のモニタ画面を見ながら飛行物体を監視する。そして、監視用レーダ11が飛行物体を検知しなくなると、他の飛行物体を検知していない場合は待機状態に復旧するが、監視用レーダ11から飛行物体が消失した場合には音響信号の有無に基づいて判定を異ならせている。
【0052】
以下、上述した飛行物体の消失時における音響信号の有無に基づく判定を含め、飛行物体監視システム1におけるセンタ装置3の制御装置21の具体的な制御について図4のフローチャートを参照しながら説明する。
【0053】
まず、制御装置21は、データ処理装置14からの判定信号の有無により、所定の高さに設置された監視用レーダ11が監視領域内に飛来する飛行物体Wを検知しているか否かを判定する(S101)。
【0054】
制御装置21は、監視用レーダ11が飛行物体を検知していると判定すると、その位置情報に基づき撮像装置12を飛行物体の方向に向けて旋回し、PTZ制御する(S102)。これにより、PTZ制御された撮像装置12が撮像したカメラ画像は、データ処理装置13を介してセンタ装置3の制御装置21に送信される。
【0055】
そして、制御装置21は、PTZ制御した撮像装置12が撮像したカメラ画像を監視卓の表示装置22に表示制御する(S103)。これにより、監視卓では、監視員が表示装置22のモニタを見ながら飛行物体の監視業務を行う。
【0056】
次に、制御装置21は、監視用レーダ11が追跡中の飛行物体が消失したか否かを判定する(S104)。制御装置21は、監視用レーダ11が追跡中の飛行物体を消失していないと判定すると、飛行物体の動きに追随して、撮像装置12が飛行物体を追尾するようにPTZ制御する。尚、検知された飛行物体が追跡中のものか否かは、直前に検知された飛行物体の検知位置からの移動距離、移動方向等から判定される。
【0057】
制御装置21は、監視用レーダ11が追跡中の飛行物体が消失したと判定すると、飛行物体が消失前に飛行物体特有の音響信号が有ったか否かを判定する(S105)。すなわち、飛行物体が消失直前まで音響信号処理装置13のマイクロホンから飛行物体特有の音響信号を取得していたか否か判定する。制御装置21は、飛行物体が消失直前までマイクロホンから飛行物体特有の音響信号を取得しておらず、消失前に飛行物体特有の音響信号が無いと判定すると、S101の処理に戻る。
【0058】
ここで、特有の音響信号とは、例えばドローンに代表されるマルチコプター等のプロペラ音に基づく特定周波数帯域の継続音などである。ドローンのプロペラ音は機種により異なるためある程度広い周波数帯域を監視帯域とする。音響信号処理装置13にマイクロホンアレイを用いている場合は、監視用レーダ11で消失した飛行物体の方向と、マイクロホンアレイの出力信号から求めた方向が一致するかまで判定する。また、上述のようにプロペラを持たない飛行物体であっても、各々飛行物体に特有の飛行音を検出するようにすることで本発明が適用できる。
【0059】
制御装置21は、飛行物体が消失直前までマイクロホンから飛行物体特有の音響信号が有ると判定すると、監視用レーダ11で飛行物体を消失した直後に音響信号が急変(飛行物体の動力が急停止して音響信号が消失した場合を含む)したか否かを判定する(S106)。
【0060】
ここでの音響信号の急変の判定には、例えばマイクロホンから取得した音響信号に上記特定の周波数帯域を通過するデジタルフィルタで処理した後、振幅値の絶対値(或いは自乗値)を求め、さらに時間方向に平滑化した強度データや周波数スペクトルを求め、この時系列データを用いることができる。算出した強度データの変化に対して一定基準(基準値)を設定しておき、飛行物体が消失直前に一定の基準値(第一の基準値)以上の強度があり、かつ飛行物体が消失した後、所定時間(第一の所定時間)内に強度が第一の基準値より低い一定の基準値(第二の基準値)以下となった場合に音響信号が急変したと判定する。又は、飛行物体が消失した後に音響信号の強度変化が第一の予定時間内に消失前より一定基準以上低下した場合に音響信号が急変したと判定する。さらには音響信号の周波数が飛行物体の消失前後で一定基準以上の上昇或いは下降した場合に音響信号が急変したと判定するようにしてもよい。
【0061】
上記において、第一の所定時間は消失と略同時とみなせる小さい値に設定される。音響信号の強度に対する第一の基準値は一定の値としてもよいが、監視用レーダ11で測定される飛行物体までの距離に応じて遠方から近傍にかけて徐々に大きくなるように設定することができる。
【0062】
また、後述のように飛行物体が墜落する場合、動力を失いプロペラ等が停止して音響信号が消失する場合が殆どであるため、第二の基準値は略ノイズレベルに近い低い値に設定される。
【0063】
そして、制御装置21は、例えば音響信号が突然無くなって(第二の基準値以下となって)、音響信号が急変したと判定すると、飛行物体が監視用レーダ11の監視範囲E外の下方へ墜落したと判定する(S112)。飛行物体が墜落したと判定した場合には、監視員が墜落位置近辺に対処員の派遣を指示することができる。飛行物体の墜落は操作者が意図していない状況と推定されるため、操作者が墜落した飛行物体を回収に来ることが想定され、早期に対応することで操作者を確保することが可能となる。
【0064】
制御装置21は、音響信号が急変していない場合は、飛行物体が消失前の音響信号を継続して検知していることになるので、この場合、監視用レーダ11の監視範囲E外に飛行物体が一時的に外れた可能性が高く、継続監視処理として監視業務が継続される(S107)。そして、制御装置21は、飛行物体の消失時から所定時間(第二の所定時間)内に音響信号が所定基準値(上記第二の基準値)以下になったか否かを判定する(S108)。
【0065】
制御装置21は、飛行物体の消失時から上述の墜落と判定する第一の所定時間以上で、かつ、第二の所定時間内に音響信号が所定基準値(第二の基準値)以下になったと判定すると、消失ポイント及びその周辺を要監視ポイントとして登録する(S109)。これは悪意者が飛行物体をイベント等の前に監視用レーダ11の監視範囲外に着陸させておき、イベント発生時に犯行を実行させる場合などが想定されるため、消失ポイントを要監視ポイントとして登録し、当該ポイントからイベント時に飛行物体を検出した場合は、その飛行物体を優先警戒対象として対処することができる。
【0066】
尚、上記において第二の所定時間は監視用レーダ11の設置高さ、対象とする飛行物体の下降可能最低速度等に応じて適宜設定される。また、音響信号処理装置13をマイクロホンアレイで構成し、3次元的な音源の移動を検出可能な場合は、S109において音源の移動方向が下方に移動した後、所定値以下になった場合に要監視ポイントとして登録するようにしてもよい。
【0067】
また、制御装置21は、飛行物体の消失時から第二の所定時間内に音響信号が停止していないと判定すると、監視用レーダ11が飛行物体を消失してから音響信号が継続状態のまま所定範囲内で監視用レーダ11が飛行物体を再検知したか否かを判定する(S110)。そして、制御装置21は、飛行物体の消失点から音響信号が継続状態のまま所定範囲内で監視用レーダ11が飛行物体を再検知したと判定すると、その飛行物体が消失前の飛行物体と同一物体であると判定し(S111)、S102へ戻り、継続して飛行物体の監視を行う。
【0068】
なお、S104において監視用レーダ11が追跡中の飛行物体が消失したと判定し、音響信号が継続していて継続監視処理を行う場合は、例えば表示装置22の表示画面上にソフトキーとして表示されるユーザ入力手段22aの操作により撮像装置12の撮像停止を指示し、音響信号が無い場合は強制的に終了するようにしてもよい。これにより、飛行物体の消失時に監視用レーダ11が鳥などの音響信号が観測できない場合は、撮像装置12で視認可能であっても監視を強制停止し、音響信号が観測されている場合に監視をユーザの判断に任せて利便性を向上させることができる。
【0069】
また、S107〜S110において音響信号を継続検出している場合は、継続監視処理を行うようにしているが、これに限定されるものではない。例えば撮像装置12が撮影したカメラ画像で捕らえられる画角が監視用レーダ11の監視範囲Eより広い場合は、カメラ画像中に飛行物体が写っているか否かを監視員が目視できるので、監視継続処理するか否かを指示するユーザインタフェース(不図示のユーザ入力手段)を表示装置22の表示画面上に表示するようにしてもよい。すなわち、飛行物体の消失時に、監視員が画像を確認して継続監視処理するか否かを指示するユーザインタフェースを表示装置22の表示画面上に表示させ、ユーザ入力を待って継続監視処理するか否かを決定するようにしてもよい。なお、その際のユーザインタフェースは、表示装置22の表示画面上のソフトキーの他、制御装置21や表示装置22の本体に設けられるボタン、キー、スイッチ等で構成することができる。
【0070】
さらに、S105において音響信号が消失前に検出できない場合は、ドローン以外である可能性が高いので迅速に初期状態に復帰する(S101)。これにより、他の飛行物体に対する警戒ができる。また、音響信号が継続検知されている場合は、監視員がカメラ画像による目視を行って入力操作を行った上で初期状態に戻ることができるので、より確実な監視を行うことができる。
【0071】
また、図1に点線で示すように、風速及び風向を計測する風速計4を設ける構成としてもよい。この場合、風速計4は、例えば監視用レーダ11近辺或いは監視領域内に数箇所設け、計測情報(風速情報、風向情報)を制御装置21に送信する。そして、上述したS112の墜落判定として、S106にて音響信号の急変があった場合に風速計4にて計測した風速が設定値以上の場合という条件を追加し、この条件を満たしたときに飛行物体が墜落として判定し、風速が設定値未満の場合はS107へ移行するようにしてもよい。これにより、より精度良く飛行物体の墜落判定を行うことができる。
【0072】
また、S101において飛行物体の検知条件としてレーダによる検知に加えて音響信号を検知することを条件に加えてもよい。この場合はS105の処理が省略される。
【0073】
以上、本発明に係る飛行物体監視システムの最良の形態について説明したが、この形態による記述及び図面により本発明が限定されることはない。すなわち、この形態に基づいて当業者等によりなされる他の形態、実施例及び運用技術などはすべて本発明の範疇に含まれることは勿論である。
【符号の説明】
【0074】
1 飛行物体監視システム
2 監視装置
3 センタ装置
4 風速計
11 検知手段(監視用レーダ)
12 撮像装置
13 音響信号処理装置
14 レーダ信号処理装置
15 データ処理装置
21 制御装置
22 表示装置
22a ユーザ入力手段
W(W1,W2) 飛行物体
E 監視範囲
C 要監視ポイント
図1
図2
図3
図4