特許第6644596号(P6644596)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6644596
(24)【登録日】2020年1月10日
(45)【発行日】2020年2月12日
(54)【発明の名称】イオン注入方法およびイオン注入装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/265 20060101AFI20200130BHJP
   H01J 37/317 20060101ALI20200130BHJP
【FI】
   H01L21/265 T
   H01J37/317 C
   H01L21/265 U
【請求項の数】20
【全頁数】34
(21)【出願番号】特願2016-55823(P2016-55823)
(22)【出願日】2016年3月18日
(65)【公開番号】特開2017-174850(P2017-174850A)
(43)【公開日】2017年9月28日
【審査請求日】2018年5月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183196
【氏名又は名称】住友重機械イオンテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100109047
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 雄祐
(74)【代理人】
【識別番号】100109081
【弁理士】
【氏名又は名称】三木 友由
(74)【代理人】
【識別番号】100116274
【弁理士】
【氏名又は名称】富所 輝観夫
(72)【発明者】
【氏名】川崎 洋司
(72)【発明者】
【氏名】佐野 信
(72)【発明者】
【氏名】塚原 一孝
【審査官】 桑原 清
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−084750(JP,A)
【文献】 特開昭63−274767(JP,A)
【文献】 特開2003−249189(JP,A)
【文献】 特開2005−236007(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/172774(WO,A1)
【文献】 特開平11−288681(JP,A)
【文献】 特開2005−285518(JP,A)
【文献】 特開2016−004614(JP,A)
【文献】 特開平03−008323(JP,A)
【文献】 特開平07−172990(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/265
H01J 37/317
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の面チャネリング条件を満たすように配置されたウェハにイオンビームを照射し、ビーム照射後のウェハ表面の所定の特性を測定し、前記特性の測定結果を用いて前記イオンビームの注入角度分布の広がりの大きさを評価することを備え、
前記測定結果は、前記ビーム照射後のウェハ表面の抵抗値、サーマルウェーブ法により測定される前記ビーム照射後のウェハ表面のサーマルウェーブ信号、または、二次イオン質量分析(SIMS)により測定される前記ビーム照射後のウェハ表面の注入不純物濃度の深さプロファイルであることを特徴とするイオン注入方法。
【請求項2】
前記ウェハは、前記ウェハに入射するイオンビームの基準軌道方向と平行する所定の基準面に平行なチャネリング面を有する一方で、前記基準面と直交し、かつ、前記基準軌道方向と平行なチャネリング面を有しないように配向されることを特徴とする請求項1に記載のイオン注入方法。
【請求項3】
前記基準面と直交する方向の前記イオンビームの注入角度分布の広がりの大きさを評価することを特徴とする請求項2に記載のイオン注入方法。
【請求項4】
前記イオンビームの走査方向と前記基準面とが直交するように配置される前記ウェハに前記走査方向に往復走査されるイオンビームを照射し、前記イオンビームの前記走査方向の注入角度分布の広がりの大きさを評価することを特徴とする請求項3に記載のイオン注入方法。
【請求項5】
前記イオンビームの走査方向と前記基準面とが平行するように配置される前記ウェハに前記走査方向に往復走査されるイオンビームを照射し、前記イオンビームの前記走査方向と直交する方向の注入角度分布の広がりの大きさを評価することを特徴とする請求項3に記載のイオン注入方法。
【請求項6】
前記ウェハは、ウェハ主面が(100)面である結晶性基板であり、ウェハ主面の法線周りに前記ウェハを回転させたときの<110>方位と前記基準面との間のツイスト角が0度または45度となり、前記基準面の法線周りに前記ウェハを回転させたときのウェハ主面の法線と前記基準軌道方向との間のチルト角が7度〜60度の範囲内となるように配置されることを特徴とする請求項2から5のいずれか一項に記載のイオン注入方法。
【請求項7】
前記ウェハは、ウェハ主面のオフ角が0.1度以下の結晶性基板であることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載のイオン注入方法。
【請求項8】
前記測定結果を用いて前記イオンビームの中心付近の角度分布の広がりの大きさを評価することを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載のイオン注入方法。
【請求項9】
ウェハ表面に半導体回路の素子構造が形成されたウェハに前記イオンビームを照射することをさらに備え、
前記測定結果を用いて前記素子構造の近傍に入射する前記イオンビームの角度分布の広がりの大きさを評価することを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載のイオン注入方法。
【請求項10】
前記イオンビームの角度分布を角度分布計測器を用いて計測し、前記測定結果を用いて前記角度分布計測器の計測値を評価することを特徴とする請求項1から9のいずれか一項に記載のイオン注入方法。
【請求項11】
前記ウェハのウェハ主面上に設定される複数の領域にビーム条件の異なるイオンビームを照射し、ビーム照射後の前記ウェハの特性を前記複数の領域毎に測定し、前記複数の領域毎の測定結果を用いて前記イオンビームの注入角度分布の広がりの大きさを評価することを特徴とする請求項1から10のいずれか一項に記載のイオン注入方法。
【請求項12】
前記ビーム条件の異なるイオンビームは、少なくともビームの角度条件が異なることを特徴とする請求項11に記載のイオン注入方法。
【請求項13】
前記ビーム条件の異なるイオンビームは、前記イオンビームを生成する装置が異なることを特徴とする請求項11または12に記載のイオン注入方法。
【請求項14】
第1の面チャネリング条件を満たすように配置された第1ウェハにイオンビームを照射し、ビーム照射後の前記第1ウェハの特性を測定することと、
前記第1の面チャネリング条件と異なる第2の面チャネリング条件を満たすように配置された第2ウェハにイオンビームを照射し、ビーム照射後の前記第2ウェハの特性を測定することと、
前記第1ウェハおよび前記第2ウェハの測定結果を用いて前記イオンビームの注入角度分布の広がりの大きさを評価することと、を備えることを特徴とする請求項1から13のいずれか一項に記載のイオン注入方法。
【請求項15】
前記第1ウェハは、前記第1ウェハに入射するイオンビームの基準軌道方向と平行する第1基準面に平行なチャネリング面を有する一方で、前記第1基準面と直交し、かつ、前記基準軌道方向と平行なチャネリング面を有しないように配向され、
前記第2ウェハは、前記第2ウェハに入射するイオンビームの基準軌道方向と平行する第2基準面であって前記第1基準面と非平行な第2基準面に平行なチャネリング面を有する一方で、前記第2基準面と直交し、かつ、前記基準軌道方向と平行なチャネリング面を有しないように配向されることを特徴とする請求項14に記載のイオン注入方法。
【請求項16】
前記第2ウェハは、前記第2基準面が前記第1基準面と直交するように配置されることを特徴とする請求項15に記載のイオン注入方法。
【請求項17】
イオンビームの角度分布を調整するレンズ装置と、
前記レンズ装置により角度分布が調整されたイオンビームを往復走査させるビーム走査器と、
前記ビーム走査器により往復走査されたイオンビームの進行方向を基準軌道方向と平行にするビーム平行化装置と、
前記ビーム平行化装置により平行化されたイオンビームが照射されるウェハを保持するプラテン駆動装置と、
ビーム照射後の前記ウェハの特性を測定する測定装置と、
定の面チャネリング条件を満たすように前記プラテン駆動装置に配置された前記ウェハにイオンビームを照射させ、ビーム照射後のウェハ表面の所定の特性を前記測定装置により測定させ、前記測定装置の測定結果を用いて前記イオンビームの前記角度分布の広がりの大きさを評価する制御装置と、を備え、
前記測定結果は、前記ビーム照射後のウェハ表面の抵抗値、サーマルウェーブ法により測定される前記ビーム照射後のウェハ表面のサーマルウェーブ信号、または、二次イオン質量分析(SIMS)により測定される前記ビーム照射後のウェハ表面の注入不純物濃度の深さプロファイルであることを特徴とするイオン注入装置。
【請求項18】
前記プラテン駆動装置は、ウェハ主面の法線周りに前記ウェハを回転させて前記ウェハの外周部に設けられるアライメントマークと基準位置との間のツイスト角を調整するツイスト角調整機構と、前記ウェハ主面に向かう前記イオンビームの基準軌道方向と前記ウェハ主面の法線との間のチルト角を調整するチルト角調整機構と、を含み、
前記制御装置は、前記ツイスト角および前記チルト角を調整して前記所定の面チャネリング条件を満たすように前記ウェハを配置させることを特徴とする請求項17に記載のイオン注入装置。
【請求項19】
前記プラテン駆動装置は、ウェハ主面に向かう前記イオンビームの基準軌道方向と直交する第1方向に延びる回転軸周りに前記ウェハを回転させて前記ウェハ主面の法線と前記イオンビームの基準軌道方向との間の第1チルト角を調整する第1チルト角調整機構と、前記ウェハ主面に向かう前記イオンビームの基準軌道方向および前記第1方向の双方に直交する第2方向に延びる回転軸周りに前記ウェハを回転させて前記ウェハ主面の法線と前記イオンビームの基準軌道方向との間の第2チルト角を調整する第2チルト角調整機構と、を含み、
前記制御装置は、前記第1チルト角および前記第2チルト角を調整して前記所定の面チャネリング条件を満たすように前記ウェハを配置させることを特徴とする請求項17に記載のイオン注入装置。
【請求項20】
前記プラテン駆動装置は、ウェハ主面の法線周りに前記ウェハを回転させて前記ウェハの外周部に設けられるアライメントマークと基準位置との間のツイスト角を調整するツイスト角調整機構と、前記ウェハ主面に向かう前記イオンビームの基準軌道方向と直交する第1方向に延びる回転軸周りに前記ウェハを回転させて前記ウェハ主面の法線と前記イオンビームの基準軌道方向との間の第1チルト角を調整する第1チルト角調整機構と、前記ウェハ主面に向かう前記イオンビームの基準軌道方向および前記第1方向の双方に直交する第2方向に延びる回転軸周りに前記ウェハを回転させて前記ウェハ主面の法線と前記イオンビームの基準軌道方向との間の第2チルト角を調整する第2チルト角調整機構と、を含み、
前記制御装置は、前記ツイスト角、前記第1チルト角および前記第2チルト角の少なくとも二以上を調整して前記所定の面チャネリング条件を満たすように前記ウェハを配置させることを特徴とする請求項17に記載のイオン注入装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イオン注入方法およびイオン注入装置に関し、特に、イオンビームの注入角度分布を制御する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造工程では、半導体の導電性を変化させる目的、半導体の結晶構造を変化させる目的などのため、半導体ウエハにイオンを注入する工程(以下、「イオン注入工程」ともいう)が標準的に実施されている。イオン注入工程で使用される装置は、イオン注入装置と呼ばれ、イオン源によってイオンを生成し、生成されたイオンを加速してイオンビームを形成する機能と、そのイオンビームを注入処理室まで輸送し、処理室内のウエハにイオンビームを照射する機能を有する。処理対象となるウェハの全面にイオンを注入するため、例えば、イオンビームはビーム走査器によって往復走査され、ウェハはビーム走査方向に直交する方向に往復運動される。
【0003】
ウェハに入射するイオンビームの角度が変わると、イオンビームとウェハとの相互作用の態様が変化し、イオン注入の処理結果に影響を与えることが知られている。例えば、ウェハの結晶軸または結晶面に沿ってイオンビームが入射する場合、そうではない場合と比較して、ビームの入射面からより深い位置にまで注入イオンが到達するチャネリング現象が生じ、注入処理の結果として得られるウェハ内のキャリア濃度分布に影響を及ぼす。そのため、注入処理に用いるイオンビームの入射角度を制御する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−245506号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ウェハに入射するイオンビームの角度特性として、ビーム全体の平均値としての入射角度の他にイオンビームを構成するイオン粒子群の角度分布が挙げられる。ウェハに入射するイオンビームは、わずかながらも発散または収束している場合があり、ビームを構成するイオン粒子群はある広がりを持つ角度分布を有する。このとき、ビーム全体の平均値としての入射角度がチャネリング条件を満たさない場合であっても、入射角度がずれた一部のイオン粒子の角度成分がチャネリング条件を満たす場合、その一部のイオンに起因するチャネリング現象が生じる。逆に、ビーム全体の平均値としての入射角度がチャネリング条件を満たす場合であっても、入射角度がずれた一部のイオン粒子の角度成分がチャネリング条件を満たさない場合、その一部のイオンに起因するチャネリング現象の抑制が生じる。したがって、ウェハ内に形成されるキャリア濃度分布の形状ないし範囲をより精密に制御するためには、ビームの角度分布についても正確に制御する必要がある。
【0006】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、イオンビームの注入角度分布をより正確に評価するための技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある態様のイオン注入方法は、所定の面チャネリング条件を満たすように配置されたウェハにイオンビームを照射し、ビーム照射後のウェハ表面の所定の特性を測定し、特性の測定結果を用いてイオンビームの注入角度分布を評価する。
【0008】
本発明の別の態様は、イオン注入装置である。この装置は、イオンビームが照射されるウェハを保持するプラテン駆動装置と、ビーム照射後のウェハの特性を測定する測定装置と、少なくともプラテン駆動装置および測定装置の動作を制御する制御装置と、を備える。制御装置は、所定の面チャネリング条件を満たすようにプラテン駆動装置に配置されたウェハにイオンビームを照射させ、ビーム照射後のウェハ表面の所定の特性を測定装置により測定させ、測定装置の測定結果を用いてイオンビームの注入角度分布を評価する。
【0009】
なお、以上の構成要素の任意の組合せや本発明の構成要素や表現を、方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、イオンビームの注入角度分布をより正確に評価する技術を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1(a)〜(e)は、ウェハに入射するイオンビームの角度特性を模式的に示す図である。
図2図2(a)〜(e)は、図1(a)〜(e)に示すイオンビームの角度分布を模式的に示すグラフである。
図3】イオンビームの照射によりゲート構造の近傍に形成される不純物領域を模式的に示す断面図である。
図4】イオンビームの照射によりゲート構造の近傍に形成される不純物領域を模式的に示す断面図である。
図5】ウェハ処理面上に形成されるゲート構造を模式的に示す平面図である。
図6図6(a)、(b)は、イオンビームBの基準軌道に対するウェハWの向きを模式的に示す図である。
図7図7(a)、(b)は、注入角度分布の評価に用いる評価用ウェハを模式的に示す図である。
図8図8(a)〜(c)は、所定のチャネリング条件またはオフチャネリング条件を満たすように配置されたウェハの表面近傍の原子配列を模式的に示す図である。
図9】オフチャネリング条件のウェハにイオンビームを照射したときのウェハのシート抵抗を示すグラフである。
図10図10(a)、(b)は、面チャネリング条件のウェハにイオンビームを照射したときのウェハのシート抵抗を示すグラフである。
図11】軸チャネリング条件のウェハにイオンビームを照射したときのウェハのシート抵抗を示すグラフである。
図12】実施の形態に係るイオン注入装置の概略構成を示す上面図である。
図13図12のイオン注入装置の概略構成を示す側面図である。
図14図14(a)、(b)は、レンズ装置の構成を模式的に示す図である。
図15】レンズ装置の制御例を模式的に示すグラフである。
図16図16(a)〜(e)は、レンズ装置により調整されるイオンビームの注入角度分布を模式的に示す図である。
図17】Vカーブ法によるシート抵抗の測定例を示すグラフである。
図18】実施の形態に係るイオン注入装置の動作過程を示すフローチャートである。
図19】イオン注入により製造されるトランジスタの閾値電圧と注入に用いるイオンビームの注入角度分布の広がりとの関係性を示すグラフである。
図20図20(a)、(b)は、変形例に係るプラテン駆動装置の構成を模式的に示す図である。
図21】変形例に係るイオン注入装置の動作過程を示すフローチャートである。
図22】第2の面チャネリング条件を満たすように配置されたウェハの表面近傍の原子配列を模式的に示す図である。
図23図23(a)〜(d)は、ウェハ主面上に設定される複数の領域を模式的に示す図である。
図24】変形例に係るイオン注入装置の動作過程を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。また、以下に述べる構成は例示であり、本発明の範囲を何ら限定するものではない。
【0013】
実施の形態を説明する前に、本発明の概要を述べる。本実施の形態に係るイオン注入装置は、イオンビームをx方向に往復走査させるビーム走査器と、往復走査されるイオンビームが照射されるウェハをy方向に往復運動させるプラテン駆動装置と、イオンビームに電界および磁界の少なくとも一方を作用させてイオンビームを収束または発散させる二以上のレンズ装置と、を備える。二以上のレンズ装置は、イオンビームに作用させる力を調整することにより、ウェハに入射するイオンビームの角度分布をx方向とy方向のそれぞれについて独立に調整できるように構成される。
【0014】
ウェハに入射するイオンビームの角度が変わると、イオンビームとウェハとの相互作用の態様が変化し、イオン注入の処理結果に影響を与えることが知られている。例えば、ウェハの結晶軸または結晶面に沿ってイオンビームが入射する場合、そうではない場合と比較して、ビームの入射面からより深い位置にまで注入イオンが到達するチャネリング現象が生じ、注入処理の結果として得られるウェハ内のキャリア濃度分布に影響を及ぼす。そのため、イオン注入工程では一般的に、イオンビームの進行方向(z方向)に対するウェハの傾斜角(チルト角)とウェハ表面に垂直な軸周りのウェハの回転角(ツイスト角)が調整され、ウェハに入射するビーム全体の平均値としての注入角度が制御される。
【0015】
ウェハに入射するイオンビームの角度特性には、ビーム全体の平均値としての入射角度の他にイオンビームを構成するイオン粒子群の角度分布がある。ウェハに入射するイオンビームは、わずかながらも発散または収束している場合があり、ビームを構成するイオン粒子群はある広がりを持つ角度分布を有する。このとき、ビーム全体の平均値としての入射角度がチャネリング条件を満たさない場合であっても、ビームの基準軌道から入射角度のずれた一部のイオン粒子の角度成分がチャネリング条件を満たす場合、その一部のイオンに起因するチャネリング現象が生じる。逆に、ビーム全体の平均値としての入射角度がチャネリング条件を満たす場合であっても、入射角度がずれた一部のイオン粒子の角度成分がチャネリング条件を満たさない場合、その一部のイオンに起因するチャネリング現象の抑制が生じる。したがって、ウェハ内に形成されるキャリア濃度分布の形状ないし範囲をより精密に制御するためには、ビームの角度分布についても正確に制御する必要がある。
【0016】
その一方で、ウェハに入射するイオンビームの角度分布を直接的に正確に測定することは難しい。イオンビームの角度分布は、例えば、ビームラインの上流と下流の異なる位置で計測したビーム形状を比較したり、ビームの一部をスリットに通過させ、スリット通過後の下流でのビーム形状をスリット形状と比較したりすることにより角度分布が算出される。つまり、ビーム進行方向のビーム形状の変化率からイオンビーム全体の発散または収束の程度が算出される。しかしながら、ビーム形状の変化から角度分布を算出する場合、ビーム形状に大きく影響しないような角度分布情報、例えば、ビームの中心付近の角度分布については正しく測定することができない。また、イオンビームを構成するイオン粒子が中性化して角度分布が変化する場合、中性化した粒子はファラデーカップで計測できないため中性粒子についての角度情報を得ることはできない。
【0017】
そこで、本実施の形態では、イオンビームを直接測定してビームの角度分布情報を得るのではなく、イオンビームが入射したウェハのシート抵抗を測定することによりビームの角度分布情報を評価する。より具体的には、イオンビームを構成するイオン粒子の角度分布に応じてウェハ内でチャネリングするイオン粒子数の割合が変化し、その結果として得られるウェハのシート抵抗値が変化することを利用してイオンビームの角度分布を評価する。特に、所定の面チャネリング条件を満たす注入処理と所定の軸チャネリング条件を満たす注入処理とを組み合わせることにより、イオンビームのx方向およびy方向の注入角度分布を評価する。本実施の形態では、x方向およびy方向のそれぞれについて注入角度分布を評価できるようにして、より精度の高いイオン注入処理が実現できるようにする。
【0018】
以下、本実施の形態について、前提となる技術について詳述する。つづいて、後述する前提技術を用いてイオンビームの注入角度分布を調整するイオン注入装置について説明する。
【0019】
[イオンビームの注入角度分布]
図1(a)〜(e)は、ウェハWに入射するイオンビームBの角度特性を模式的に示す図である。本図に示すイオンビームBは、いずれもウェハWの表面に対して垂直に入射する場合、つまり、イオンビームBの入射角度が0度となる場合を示している。しかしながら、各図に示すイオンビームBは、ビームを構成するイオン粒子群の角度分布が異なる。
【0020】
図1(a)は、ウェハWに向かってイオンビームBのビーム径が広がって発散していく「発散ビーム」を示す。図1(b)は、(a)と同様にイオンビームBが発散しているものの発散の程度が小さい場合を示す。図1(c)は、ウェハWに向かうイオンビームBのビーム径が変わらない場合を示し、イオンビームBを構成するイオン粒子のほぼ全てがビーム軌道と平行に進む「平行ビーム」を示している。図1(d)は、ウェハWに向かってイオンビームBのビーム径が狭くなって収束していく「収束ビーム」を示す。図1(e)は、(d)と同様にイオンビームBが収束しているものの収束の程度が大きい場合を示す。このようにイオンビームBは、ビームの基準軌道に対して発散または収束している場合があり、ビーム全体としての進行方向とは別に、各イオン粒子の角度成分のばらつきを表す「角度分布」を有する。
【0021】
図2(a)〜(e)は、図1(a)〜(e)に示すイオンビームBの角度分布を模式的に示すグラフである。各グラフは、縦軸がイオンビームBを構成するイオン粒子の数を表し、横軸が各イオン粒子の進行方向とイオンビームBの進行方向とのなす角度ψを表す。図2(c)に示されるように、イオンビームBを構成するイオン粒子が全て平行に進む場合、イオンビームの角度分布の広がりは小さい。一方、図2(a),(e)に示されるように、イオンビームBの発散または収束が大きい場合には、イオンビームの角度分布の広がりは大きい。なお、イオンビームの角度分布の広がりの程度は、図示される角度分布の標準偏差により定量化することもできる。
【0022】
イオンビーム全体としての進行方向は、ビームの角度分布の平均角度値またはピーク角度値を基準として定めることができる。したがって、図1に示す例では、イオンビームBの進行方向はウェハWに垂直な方向となる。このとき、イオンビームBの進行方向に沿った方向(z方向)のビーム軌道を本明細書において「基準軌道」ということがある。また、ウェハ処理面(またはウェハ主面)を基準としたときのイオンビームの入射方向を「注入角度」ということがある。この注入角度は、ウェハ主面の法線とビームの基準軌道方向との間の角度により規定される。また、ウェハ主面を基準としたときのイオンビームの角度分布を「注入角度分布」ということがある。
【0023】
[ウェハに形成される不純物濃度分布]
図3は、イオンビームBの照射によりゲート構造90の近傍に形成される不純物領域91を模式的に示す断面図である。本図は、ウェハ処理面上にゲート構造90が形成されたウェハWにイオンビームBを照射してゲート構造90の近傍にソース/ドレイン領域となる不純物領域91を形成するイオン注入処理を示す。ウェハWは、ウェハ処理面が(100)面となるシリコン基板である。ウェハWに入射するイオンビームBは、ウェハ処理面に対する注入角度が0度であり、注入角度分布の広がりの小さい平行ビームである。そのため、ウェハWに入射するイオン粒子の多くはウェハWの<100>方位の結晶軸に沿って入射し、強い軸チャネリング効果によってz方向に深く侵入する。その結果、イオン粒子が到達する不純物領域91の深さ方向の広がり幅zが大きくなり、ゲート構造90の下方に回り込んで形成される不純物領域91のゲート長方向の広がり幅Lが小さくなる。なお、本図の左方に示すグラフは、深さ方向(z方向)の不純物濃度Nの分布を示し、本図の下方に示すグラフは、ゲート長方向の不純物濃度Nの分布を示す。
【0024】
図4は、イオンビームBの照射によりゲート構造90の近傍に形成される不純物領域92を模式的に示す断面図である。本図は、ウェハWに入射するイオンビームBが図1(a)に示したような「発散ビーム」であり、注入角度分布の広がりを有する点で図3と相違する。図4のイオンビームBは発散ビームであるため、図3に示す平行ビームと比べてチャネリング現象が生じにくく、チャネリングが生じるイオンの割合が少ない。その結果、イオン粒子が到達する不純物領域92の深さ方向の広がり幅zが小さくなり、ゲート構造90の下方に回り込んで形成される不純物領域92のゲート長方向の広がり幅Lが大きくなる。なお、注入角度分布以外のビーム特性が同じであれば、イオン注入によって生成される欠陥93の位置や不純物濃度Nのピーク位置Rpは図3図4の場合においてほぼ同じである。したがって、照射するイオンビームBの注入角度分布を適切に制御できれば、ゲート構造90の近傍に形成される不純物領域の深さ方向およびゲート長方向の広がりの大きさ(分布)を調整できる。また、イオン注入後にウェハWにアニール処理を加える場合であっても不純物濃度分布は相対的に維持されることから、注入角度分布を制御することで最終的に得られるキャリア濃度分布を目的に合った形状とすることができる。
【0025】
イオンビームBの注入角度分布の制御は、一次元方向だけではなくビームの進行方向と直交する断面内の二次元方向についてなされることが好ましい。一般に、同一ウェハに形成されるゲート構造は全て同じ方向を向いているわけではなく、互いに直交する方向や互いに交差する方向に配列されるためである。図5は、ウェハ処理面上に形成されるゲート構造を模式的に示す平面図であり、同一のウェハWに形成されるゲート電極90a,90bの一例を示す。図示する例では、紙面上において左右方向(x方向)に延在する第1ゲート電極90aと、紙面上において上下方向(y方向)に延在する第2ゲート電極90bが設けられる。このようなウェハWにイオンビームを照射する場合、第1ゲート電極90aの近傍に形成される不純物領域のゲート長方向(y方向)の広がり幅は、主にy方向の注入角度分布に影響される。一方で、第2ゲート電極90bの近傍に形成される不純物領域のゲート長方向(x方向)の広がり幅は、主にx方向の注入角度分布に影響される。したがって、第1ゲート電極90aおよび第2ゲート電極90bの双方について所望の不純物濃度分布を得るためには、x方向とy方向のそれぞれの注入角度分布を適切に制御する必要がある。
【0026】
[シート抵抗を利用した注入角度分布の評価]
上述のように、ウェハに入射するイオンビームの注入角度分布は、ウェハに形成される不純物領域の分布形状に影響を与え、アニール処理後のウェハのキャリア濃度分布にも影響を及ぼしうる。一般に、ウェハのキャリア濃度分布が異なるとウェハのシート抵抗が異なりうることから、照射するイオンビームの注入角度分布とウェハのシート抵抗値との間には一定の相関性が成り立つことが予想される。そこで、本発明者らは、イオン注入後のウェハのシート抵抗を利用することにより、イオン注入に用いたイオンビームの注入角度分布の評価ができるかもしれないと考えた。特に、ウェハの向きを変えてイオンビームから見たx方向およびy方向のチャネリング条件を変化させることにより、x方向およびy方向のそれぞれについて注入角度分布の評価ができるかもしれないと考えた。
【0027】
図6(a)、(b)は、イオンビームBの基準軌道に対するウェハWの向きを模式的に示す図である。図6(a)は、ビームの基準軌道が延びるz方向に対してウェハWを傾けることによりチルト角θを設定した状態を示す。チルト角θは、図示されるように、x軸周りにウェハWを回転させたときの回転角として設定される。チルト角θ=0°となる状態は、ウェハWにイオンビームBが垂直に入射する場合である。図6(b)は、ウェハ主面に垂直な軸周りにウェハWを回転させることによりツイスト角φを設定した状態を示す。ツイスト角φは、図示されるように、ウェハ主面に垂直な軸周りにウェハWを回転させたときの回転角として設定される。ツイスト角φ=0°となる状態は、ウェハWの中心Oからアライメントマーク94に延びる線分がy方向となる場合である。本実施の形態では、イオンビームBに対するウェハWの配置としてチルト角θとツイスト角φを適切に設定することにより所定のチャネリング条件が実現されるようにする。
【0028】
図7(a)、(b)は、注入角度分布の評価に用いる評価用ウェハWを模式的に示す図である。図7(a)は、評価用ウェハWの結晶方位を示し、図7(b)は、評価用ウェハWの表面近傍の原子配列を示す。本実施の形態では、評価用ウェハWとして、ウェハ主面の面方位が(100)面である単結晶シリコン基板を用いる。評価用ウェハWのアライメントマーク94は、<110>方位を示す位置に設けられる。評価用ウェハWは、いわゆるベアウェハであり、半導体回路を構成するためのゲート構造やトレンチ構造などが設けられていない。
【0029】
評価用ウェハWは、厳密なチャネリング条件を実現できるようにウェハ主面のオフ角が十分小さいことが望ましく、半導体回路製造に一般的に用いられるベアウェハよりも小さいオフ角を有することが好ましい。具体的には、オフ角が0.1度以下となるように切り出されたシリコン基板を用いることが好ましい。ここで「オフ角」とは、ウェハ主面の法線方向とウェハを構成するシリコンの結晶軸の<100>方位との間の角度ずれである。オフ角が0度である場合、評価用ウェハWのウェハ主面がシリコン結晶の(100)面に厳密に一致する。
【0030】
図8(a)〜(c)は、所定のチャネリング条件またはオフチャネリング条件を満たすように配置されたウェハの表面近傍の原子配列を模式的に示す図であり、ウェハに入射するイオンビームから見た原子配列を示す。本図では、シリコン原子の位置を黒丸で示している。また、奥行き方向(z方向)に異なる位置にあるシリコン原子をxy面内に重ねて描いている。
【0031】
図8(a)は、軸チャネリング条件を満たすように配置された場合の原子配列を示し、上述の評価用ウェハWをツイスト角φ=23°、チルト角θ=0°の向きで配置した場合を示す。図示する軸チャネリング条件では、実線上に配置されるシリコン原子により形成される複数の第1結晶面96と、破線上に配置されるシリコン原子により形成される複数の第2結晶面97とが互いに交差して格子状に配列され、一次元的に延びる軸状の隙間(チャネリング軸95)が形成される。その結果、x方向およびy方向の少なくとも一方に角度分布を有するイオンビームは、z方向に直進するイオン粒子のみがチャネリングし、z方向からある程度ずれた角度成分を有するイオン粒子はいずれかの結晶面に遮られてチャネリングしない。したがって、軸チャネリング条件を満たすように配置されるウェハは、主としてイオンビームの基準軌道に沿って軸方向に進むイオン粒子をチャネリングさせる「軸チャネリング」を生じさせる。
【0032】
軸チャネリング条件を満たす配置は、上述のツイスト角およびチルト角に限られず、図示するような原子配列が実現されるようなウェハ配置であれば、他のツイスト角およびチルト角を用いてもよい。より具体的には、ウェハに入射するイオンビームの基準軌道に沿う方向にチャネリング軸を有する一方で、イオンビームの基準軌道方向(z方向)とウェハの往復運動方向(y方向)により規定される基準面と平行または直交するチャネリング面を有しないように評価用ウェハWが配置されるのであれば、他の角度条件が用いられてもよい。このような軸チャネリング条件を実現するために、例えば、評価用ウェハWのツイスト角を実質的に15度〜30度の範囲内とし、チルト角を実質的に0度としてもよい。
【0033】
図8(b)は、面チャネリング条件を満たすように配置された場合の原子配列を示し、上述の評価用ウェハWをツイスト角φ=0°、チルト角θ=15°の向きで配置した場合を示す。図示する面チャネリング条件では、yz平面内に配列されたシリコン原子による複数の結晶面99が形成され、x方向に対向する結晶面99の間に二次元的な広がりを有する隙間(チャネリング面98)が形成される。その結果、x方向に角度分布を有するイオンビームは、z方向に直進する一部のイオン粒子のみがチャネリングし、x方向にある程度ずれた角度成分を有するイオン粒子は結晶面99に遮られてチャネリングしない。一方、y方向に角度分布を有するイオンビームは、結晶面99に遮られることなく結晶面間の隙間をチャネリングする。したがって、面チャネリング条件を満たすように配置されるウェハは、主としてイオンビームの基準軌道に沿うz方向とy方向の双方により規定される基準面に沿って進むイオン粒子をチャネリングさせる「面チャネリング」を生じさせる。よって、面チャネリング条件を満たすように配置されたウェハに対してイオンビームを照射すると、x方向に角度成分を有するイオン粒子はチャネリングせず、y方向に角度成分を有するイオン粒子はチャネリングするという方向依存性が生じる。
【0034】
面チャネリング条件を満たす配置は、上述のツイスト角およびチルト角に限られず、図示されるような原子配列が実現可能なウェハ配置であれば、他のツイスト角およびチルト角を用いてもよい。より具体的には、ウェハに入射するイオンビームの基準軌道に沿う方向とy方向の双方により規定される基準面に平行なチャネリング面を有する一方で、基準面と直交するチャネリング面を有しないような向きに評価用ウェハWが配置されるのであれば、他の角度条件が用いられてもよい。面チャネリング条件を実現するために、例えば、評価用ウェハWのツイスト角を実質的に0度または45度とし、チルト角を15度〜60度の範囲内としてもよい。
【0035】
図8(c)は、オフチャネリング条件を満たすように配置された場合の原子配列を示し、上述の評価用ウェハWをツイスト角φ=23°、チルト角θ=7°の向きで配置した場合を示す。図示されるオフチャネリング条件では、イオン粒子の通り道となるチャネルが見えず、シリコン原子がx方向およびy方向に隙間なく配置されているように見える。その結果、オフチャネリング条件を満たすウェハに向けてイオンビームを照射すると、ビームを構成するイオン粒子がx方向およびy方向の角度成分を有するか否かに拘わらず、チャネリング現象が生じないようになる。
【0036】
オフチャネリング条件を満たす配置は、上述のツイスト角およびチルト角に限られず、図示されるような原子配列が実現可能なウェハ配置であれば、他のツイスト角およびチルト角を用いてもよい。より具体的には、ウェハの{100}面、{110}面、{111}面などの低次の結晶面がイオンビームの基準軌道と斜めに交差するような向きに評価用ウェハWが配置されれば、他の角度条件が用いられてもよい。オフチャネリング条件を実現するために、例えば、評価用ウェハWのツイスト角を15度〜30度の範囲内とし、チルト角を7度〜15度の範囲内としてもよい。
【0037】
なお、オフチャネリング条件を実現するために、評価用ウェハWに対してプレアモルファス化処理を施してもよい。プレアモルファス化処理では、シリコン(Si)やゲルマニウム(Ge)といったキャリア濃度分布に影響を及ぼさないイオン種のイオンビームを照射して表面近傍の結晶構造を変化させ、ウェハの表面近傍をアモルファス状態にする。アモルファス状態にすることで結晶の規則的な構造を壊してイオン粒子の通り道となるチャネルが存在しないようにでき、上述の「オフチャネリング」条件を実現できる。
【0038】
つづいて、各チャネリング条件を満たす評価用ウェハWにイオンビームを照射した場合のウェハのシート抵抗について説明する。本実施の形態では、イオンビームを照射した評価用ウェハWにアニール処理を施した後、四探針法を用いてウェハのシート抵抗を測定する。なお、四探針法によるシート抵抗の測定方法は公知であるため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0039】
図9は、オフチャネリング条件のウェハにイオンビームを照射したときのウェハのシート抵抗Rを示すグラフであり、注入角度分布に関するビーム条件を変えた場合に得られるシート抵抗値を示す。グラフの縦軸は、測定したシート抵抗値(Ω/□)を示し、横軸は異なるビーム条件A〜Dを示す。ビーム条件Aは、x方向の注入角度分布の広がりが小さく、y方向の注入角度分布の広がりが大きい場合、ビーム条件Bは、x方向およびy方向の双方の注入角度分布の広がりが小さい場合、ビーム条件Cは、x方向の注入角度分布の広がりが大きく、y方向の注入角度分布の広がりが小さい場合、ビーム条件Dは、x方向およびy方向の双方の注入角度分布の広がりが中程度の場合である。なお、イオンビームのビーム電流量といった他の注入条件は同じである。
【0040】
図9に示されるように、オフチャネリング条件のウェハを用いる場合、照射するイオンビームの注入角度分布を変えたとしても得られるシート抵抗値は同等となる。これは、ビームの注入角度分布の特性に関係なくチャネリング現象が生じないことに起因すると考えられる。このことから、オフチャネリング条件のウェハを利用したシート抵抗の測定により、注入角度分布に依存しないビーム特性、例えば、ビーム照射により得られるドーズ量を評価できる。
【0041】
図10(a)、(b)は、面チャネリング条件のウェハにイオンビームを照射したときのウェハのシート抵抗Rを示すグラフである。図10(a)は、y方向の注入角度分布に関するビーム条件を変えた場合に得られるシート抵抗値を示している。グラフの縦軸は、測定したシート抵抗値(Ω/□)を示し、横軸は異なるビーム条件A,Bを示す。ビーム条件Aは、x方向の注入角度分布の広がりが小さく、y方向の注入角度分布の広がりが大きい場合、ビーム条件Bは、x方向およびy方向の双方の注入角度分布の広がりが小さい場合である。したがって、二つのビーム条件A,Bは、x方向の注入角度分布の広がりが同等であり、y方向の注入角度分布の広がりが異なる。図示されるように、面チャネリング条件のウェハにy方向の注入角度分布の広がりが異なるイオンビームを照射しても得られるシート抵抗値の差は十分に小さく、ほぼ同等となる。つまり、面チャネリング条件のウェハにイオンビームを照射する場合、得られるシート抵抗値にy方向の注入角度分布の差はほとんど反映されない。
【0042】
図10(b)は、x方向の注入角度分布に関するビーム条件を変えた場合に得られるシート抵抗値を示している。グラフの縦軸は、測定したシート抵抗値(Ω/□)を示し、横軸は照射したビームのx方向の注入角度分布の広がりの標準偏差値(角度)を示す。なお、イオンビームのビーム電流量といった他の注入条件は同じである。図示されるように、x方向の注入角度分布の広がりが大きくなるにつれて得られるシート抵抗値が増大することがわかる。これは、x方向の注入角度分布の広がりが大きくなるにつれて軸方向にチャネリングしてより深い位置に注入されるイオン粒子数が減少することに起因すると考えられる。このことから、面チャネリング条件のウェハを利用したシート抵抗の測定により、ビームのx方向の注入角度分布の広がりを評価できる。
【0043】
図11は、軸チャネリング条件のウェハにイオンビームを照射したときのウェハのシート抵抗Rを示すグラフであり、y方向の注入角度分布に関するビーム条件を変えた場合に得られるシート抵抗を示している。グラフの縦軸は、測定したシート抵抗値(Ω/□)を示し、横軸は照射したビームのy方向の注入角度分布の広がりの標準偏差値(角度)を示す。なお、イオンビームのビーム電流量といった他の注入条件は同じである。図示されるように、y方向の注入角度分布の広がりが大きくなるにつれて得られるシート抵抗値が増大することがわかる。これは、注入角度分布の広がりが大きくなるにつれて軸方向にチャネリングしてより深い位置に注入されるイオン粒子数が減少することに起因すると考えられる。このことから、軸チャネリング条件のウェハを利用したシート抵抗の測定により、ビームの注入角度分布の広がりを評価できる。また、上述の面チャネリング条件の評価結果と組み合わせて分析することにより、ビームのy方向の注入角度分布の広がりを評価することが可能となる。
【0044】
[イオン注入装置の構成]
つづいて、上述の技術を利用したイオン注入装置10について説明する。図12は、実施の形態に係るイオン注入装置10を概略的に示す上面図であり、図13は、イオン注入装置10の概略構成を示す側面図である。
【0045】
イオン注入装置10は、被処理物Wの表面にイオン注入処理をするよう構成されている。被処理物Wは、例えば基板であり、例えば半導体ウェハである。よって以下では説明の便宜のため被処理物WをウェハWと呼ぶことがあるが、これは注入処理の対象を特定の物体に限定することを意図していない。
【0046】
イオン注入装置10は、ビームを一方向に往復走査させ、ウェハWを該一方向と直交する方向に往復運動させることによりウェハWの全体にわたってイオンビームBを照射するよう構成されている。本書では説明の便宜上、設計上のビーム軌道を進むイオンビームBの進行方向をz方向とし、z方向に垂直な面をxy面と定義する。イオンビームBを被処理物Wに対し走査する場合において、ビームの走査方向をx方向とし、z方向及びx方向に垂直な方向をy方向とする。よって、ビームの往復走査はx方向に行われ、ウェハWの往復運動はy方向に行われる。
【0047】
イオン注入装置10は、イオン源12と、ビームライン装置14と、注入処理室16と、ウェハ搬送室60と、ウェハ評価室62と、制御装置70とを備える。イオン源12は、イオンビームBをビームライン装置14に与えるよう構成されている。ビームライン装置14は、イオン源12から注入処理室16へとイオンを輸送するよう構成されている。また、イオン注入装置10は、イオン源12、ビームライン装置14、注入処理室16、及びウェハ搬送室60に所望の真空環境を提供するための真空排気系(図示せず)を備える。
【0048】
ビームライン装置14は、例えば、上流から順に、質量分析部18、可変アパチャ20、ビーム収束部22、第1ビーム計測器24、ビーム走査器26、平行化レンズ30又はビーム平行化装置、及び、角度エネルギーフィルタ(AEF;Angular Energy Filter)34を備える。なお、ビームライン装置14の上流とは、イオン源12に近い側を指し、下流とは注入処理室16(またはビームストッパ38)に近い側を指す。
【0049】
質量分析部18は、イオン源12の下流に設けられており、イオン源12から引き出されたイオンビームBから必要なイオン種を質量分析により選択するよう構成されている。
【0050】
可変アパチャ20は、開口幅が調整可能なアパチャであり、開口幅を変えることでアパチャを通過するイオンビームBのビーム電流量を調整する。可変アパチャ20は、例えば、ビームラインを挟んで上下に配置されるアパチャプレートを有し、アパチャプレートの間隔を変化させることによりビーム電流量を調整してもよい。
【0051】
ビーム収束部22は、四重極収束装置(Qレンズ)などの収束レンズを備えており、可変アパチャ20を通過したイオンビームBを所望の断面形状に整形するよう構成されている。ビーム収束部22は、電場式の三段四重極レンズ(トリプレットQレンズともいう)であり、上流側から順に第1四重極レンズ22a、第2四重極レンズ22b、第3四重極レンズ22cを有する。ビーム収束部22は、三つのレンズ装置22a,22b,22cを用いることにより、ウェハWに入射するイオンビームBのx方向およびy方向の収束または発散をそれぞれの方向について独立に調整しうる。ビーム収束部22は、磁場式のレンズ装置を含んでもよく、電場と磁場の双方を利用してビームを整形するレンズ装置を含んでもよい。
【0052】
第1ビーム計測器24は、ビームライン上に出し入れ可能に配置され、イオンビームの電流を測定するインジェクタフラグファラデーカップである。第1ビーム計測器24は、ビーム収束部22により整形されたイオンビームBのビーム形状を計測できるように構成される。第1ビーム計測器24は、ビーム電流を計測するファラデーカップ24bと、ファラデーカップ24bを上下に移動させる駆動部24aを有する。図13の破線で示すように、ビームライン上にファラデーカップ24bを配置した場合、イオンビームBはファラデーカップ24bにより遮断される。一方、図13の実線で示すように、ファラデーカップ24bをビームライン上から外した場合、イオンビームBの遮断が解除される。
【0053】
ビーム走査器26は、ビームの往復走査を提供するよう構成されており、整形されたイオンビームBをx方向に走査する偏向手段である。ビーム走査器26は、x方向に対向して設けられる走査電極対28を有する。走査電極対28は可変電圧電源(図示せず)に接続されており、走査電極対28に印加される電圧を周期的に変化させることにより、電極間に生じる電界を変化させてイオンビームBをさまざまな角度に偏向させる。こうして、イオンビームBは、x方向の走査範囲にわたって走査される。なお、図12において矢印Xによりビームの走査方向及び走査範囲を例示し、走査範囲でのイオンビームBの複数の軌跡を一点鎖線で示している。
【0054】
平行化レンズ30は、走査されたイオンビームBの進行方向を設計上のビーム軌道と平行にするよう構成されている。平行化レンズ30は、中央部にイオンビームの通過スリットが設けられた円弧形状の複数のPレンズ電極32を有する。Pレンズ電極32は、高圧電源(図示せず)に接続されており、電圧印加により生じる電界をイオンビームBに作用させて、イオンビームBの進行方向を平行に揃える。なお、平行化レンズ30は他のビーム平行化装置で置き換えられてもよく、ビーム平行化装置は磁界を利用する磁石装置として構成されてもよい。平行化レンズ30の下流には、イオンビームBを加速または減速させるためのAD(Accel/Decel)コラム(図示せず)が設けられてもよい。
【0055】
角度エネルギーフィルタ(AEF)34は、イオンビームBのエネルギーを分析し必要なエネルギーのイオンを下方に偏向して注入処理室16に導くよう構成されている。角度エネルギーフィルタ34は、電界偏向用のAEF電極対36を有する。AEF電極対36は、高圧電源(図示せず)に接続される。図13において、上側のAEF電極に正電圧、下側のAEF電極に負電圧を印加させることにより、イオンビームBをビーム軌道から下方に偏向させる。なお、角度エネルギーフィルタ34は、磁界偏向用の磁石装置で構成されてもよく、電界偏向用のAEF電極対と磁石装置の組み合わせで構成されてもよい。
【0056】
このようにして、ビームライン装置14は、ウェハWに照射されるべきイオンビームBを注入処理室16に供給する。
【0057】
注入処理室16は、図13に示すように、1枚又は複数枚のウェハWを保持するプラテン駆動装置50を備える。プラテン駆動装置50は、ウェハ保持部52と、往復運動機構54と、ツイスト角調整機構56と、チルト角調整機構58とを含む。ウェハ保持部52は、ウェハWを保持するための静電チャック等を備える。往復運動機構54は、ビーム走査方向(x方向)と直交する往復運動方向(y方向)にウェハ保持部52を往復運動させることにより、ウェハ保持部52に保持されるウェハをy方向に往復運動させる。図13において、矢印YによりウェハWの往復運動を例示する。
【0058】
ツイスト角調整機構56は、ウェハWの回転角を調整する機構であり、ウェハ処理面の法線を軸にウェハWを回転させることにより、ウェハの外周部に設けられるアライメントマークと基準位置との間のツイスト角を調整する。ここで、ウェハのアライメントマークとは、ウェハの外周部に設けられるノッチやオリフラのことをいい、ウェハの結晶軸方向やウェハの周方向の角度位置の基準となるマークをいう。ツイスト角調整機構56は、図示されるようにウェハ保持部52と往復運動機構54の間に設けられ、ウェハ保持部52とともに往復運動される。
【0059】
チルト角調整機構58は、ウェハWの傾きを調整する機構であり、ウェハ処理面に向かうイオンビームBの進行方向とウェハ処理面の法線との間のチルト角を調整する。本実施の形態では、ウェハWの傾斜角のうち、x方向の軸を回転の中心軸とする角度をチルト角として調整する。チルト角調整機構58は、往復運動機構54と注入処理室16の壁面の間に設けられており、往復運動機構54を含むプラテン駆動装置50全体をR方向に回転させることでウェハWのチルト角を調整するように構成される。
【0060】
注入処理室16は、ビームストッパ38を備える。ビーム軌道上にウェハWが存在しない場合には、イオンビームBはビームストッパ38に入射する。また、注入処理室16には、イオンビームのビーム電流量やビーム電流密度分布を計測するための第2ビーム計測器44が設けられる。第2ビーム計測器44は、サイドカップ40R、40Lと、センターカップ42を有する。
【0061】
サイドカップ40R、40Lは、ウェハWに対してx方向にずれて配置されており、イオン注入時にウェハWに向かうイオンビームを遮らない位置に配置される。イオンビームBは、ウェハWが位置する範囲を超えてオーバースキャンされるため、イオン注入時においても走査されるビームの一部がサイドカップ40R、40Lに入射する。これにより、イオン注入処理中のイオン照射量を計測する。サイドカップ40R、40Lの計測値は、第2ビーム計測器44に送られる。
【0062】
センターカップ42は、ウェハWの表面(ウェハ処理面)におけるビーム電流密度分布を計測するためのものである。センターカップ42は、可動式となっており、イオン注入時にはウェハ位置から待避され、ウェハWが照射位置にないときにウェハ位置に挿入される。センターカップ42は、x方向に移動しながらビーム電流量を計測して、ビーム走査方向のビーム電流密度分布を計測する。センターカップ42は、ウェハ処理面の位置でのイオンビームBのビーム形状を計測できるように構成される。センターカップ42の計測値は、第2ビーム計測器44に送られる。なお、センターカップ42は、ビーム走査方向の複数の位置におけるイオン照射量を同時に計測可能となるように、複数のファラデーカップがx方向に並んだアレイ状に形成されていてもよい。
【0063】
ウェハ搬送室60は、注入処理室16に隣接する位置に設けられる。ウェハ搬送室60は、イオン注入される前の処理前ウェハを準備して注入処理室16に搬入し、イオン注入された後の処理済ウェハを注入処理室16から搬出する。ウェハ搬送室60は、大気圧下のウェハを高真空状態の注入処理室16に搬入するためのロードロック室や、一枚または複数枚のウェハを搬送するための搬送ロボット等を有する。
【0064】
ウェハ評価室62は、注入処理室16にてイオン注入されたウェハのシート抵抗を測定する場所である。ウェハ評価室62は、ウェハ搬送室60に隣接する位置に設けられ、ウェハ搬送室60を介して処理済ウェハが搬入されるように構成される。ウェハ評価室62は、処理済ウェハのシート抵抗を測定するためのシート抵抗測定器64と、シート抵抗の測定前に処理済ウェハをアニールするためのアニール装置66とを有する。シート抵抗測定器64は、例えば、四探針法によりウェハのシート抵抗を測定するよう構成される。アニール装置66は、注入された不純物濃度分布のアニール時の拡散による変化が抑制されるように、900℃〜1000℃程度の比較的低い温度でアニールするよう構成される。
【0065】
図14(a)、(b)は、レンズ装置の構成を模式的に示す図である。図14(a)は、イオンビームBを縦方向(y方向)に収束させる第1四重極レンズ22aおよび第3四重極レンズ22cの構成を示し、図14(b)は、イオンビームBを横方向(x方向)に収束させる第2四重極レンズ22bの構成を示す。
【0066】
図14(a)の第1四重極レンズ22aは、横方向(x方向)に対向する一組の水平対向電極82と、縦方向(y方向)に対向する一組の垂直対向電極84とを有する。一組の水平対向電極82には負電位−Qyが印加され、垂直対向電極84には正電位+Qyが印加される。第1四重極レンズ22aは、正の電荷を有するイオン粒子群で構成されるイオンビームBに対し、負電位の水平対向電極82との間で引力を生じさせ、正電位の垂直対向電極84との間で斥力を生じさせる。これにより、第1四重極レンズ22aは、イオンビームBをx方向に発散させ、y方向に収束させるようにビーム形状を整える。第3四重極レンズ22cも第1四重極レンズ22aと同様に構成され、第1四重極レンズ22aと同じ電位が印加される。
【0067】
図14(b)の第2四重極レンズ22bは、横方向(x方向)に対向する一組の水平対向電極86と、縦方向(y方向)に対向する一組の垂直対向電極88とを有する。第2四重極レンズ22bは、第1四重極レンズ22aと同様に構成されるが、印加される電位の正負が逆である。一組の水平対向電極86には正電位+Qxが印加され、垂直対向電極88には負電位−Qxが印加される。第2四重極レンズ22bは、正の電荷を有するイオン粒子群で構成されるイオンビームBに対し、正電位の水平対向電極86との間で斥力を生じさせ、負電位の垂直対向電極88との間で引力を生じさせる。これにより、第2四重極レンズ22bは、イオンビームBをx方向に収束させ、y方向に発散させるようにビーム形状を整える。
【0068】
図15は、レンズ装置の制御例を模式的に示すグラフであり、レンズ装置の対向電極に印加される電位Qx,Qyと整形されるビームの角度分布との関係性を示す。横軸の縦収束電位Qyは、第1四重極レンズ22aおよび第3四重極レンズ22cに印加される電位を示し、縦軸の横収束電位Qxは、第2四重極レンズ22bに印加される電位を示す。図16(a)〜(e)は、レンズ装置により調整されるイオンビームの注入角度分布を模式的に示すグラフである。上段にx方向の注入角度分布を示し、下段にy方向の注入角度分布を示している。(a)〜(e)に示すグラフは、それぞれ図15の地点A1/A2、地点B1/B2、地点C、地点D1/D2、地点E1/E2における電位を用いた場合に対応する。
【0069】
所定の電位Qx、Qyが印加される地点Cは、図16(c)に示すように、x方向およびy方向の双方の注入角度分布の広がりが小さい「平行ビーム」となる動作条件である。この地点Cから直線Lxに沿って電位Qx,Qyを変化させると、x方向の注入角度分布のみを変化させ、y方向の注入角度分布を変化させないようにビーム調整できる。地点Cから地点B1,A1へと横収束電位Qxを上げていくと、x方向に収束された「収束ビーム」となってx方向の注入角度分布の広がりが大きくなる。一方、地点Cから地点B2,A2へと横収束電位Qxを下げていくと、x方向に発散された「発散ビーム」となってx方向の注入角度分布の広がりが大きくなる。
【0070】
同様に、地点Cから直線Lyに沿って電位Qx,Qyを変化させると、y方向の注入角度分布のみを変化させ、x方向の注入角度分布を変化させないようビームを調整できる。地点Cから地点D1,E1へと縦収束電位Qyを上げていくと、y方向に収束された「収束ビーム」となってy方向の注入角度分布の広がりが大きくなる。一方、地点Cから地点D2,E2へと縦収束電位Qyを下げていくと、y方向に発散された「発散ビーム」となってy方向の注入角度分布の広がりが大きくなる。
【0071】
このようにして、三段式のレンズ装置のそれぞれに印加する電位Qx,Qyを一定の条件下で変化させることにより、ウェハWに照射されるイオンビームのx方向およびy方向の注入角度分布をそれぞれ独立に制御することができる。例えば、x方向の注入角度分布のみを調整したい場合、ΔQx=α・ΔQyの関係性が維持されるようにして直線Lxの傾きに合わせて電位を変化させればよい。同様に、y方向の注入角度分布のみを調整したい場合、ΔQx=β・ΔQyの関係性が維持されるようにして直線Lyの傾きに合わせて電位を変化させればよい。なお、直線Lx,Lyの傾きα,βの値は、使用するレンズ装置の光学特性に応じて適切な値が求められる。
【0072】
制御装置70は、イオン注入装置10を構成する各機器の動作を制御する。制御装置70は、実施しようとするイオン注入工程の注入条件の設定を受け付ける。制御装置70は、注入条件として、イオン種、注入エネルギー、ビーム電流量、ウェハ面内のドーズ量、チルト角、ツイスト角などの設定を受け付ける。また、制御装置70は、イオンビームの注入角度分布に関する設定を受け付ける。
【0073】
制御装置70は、設定された注入条件が実現されるように各機器の動作パラメータを決定する。制御装置70は、イオン種を調整するためのパラメータとして、イオン源12のガス種や、イオン源12の引出電圧、質量分析部18の磁場の値などを決定する。制御装置70は、注入エネルギーを調整するためのパラメータとして、イオン源12の引出電圧、Pレンズ電極32の印加電圧、ADコラムの印加電圧の値などを決定する。制御装置70は、ビーム電流量を調整するためのパラメータとして、イオン源12のガス量、アーク電流、アーク電圧、ソースマグネット電流といった各種パラメータや、可変アパチャ20の開口幅を調整するためのパラメータなどを決定する。また、制御装置70は、ウェハ面内のドーズ量またはドーズ量分布を調整するためのパラメータとして、ビーム走査器26の走査パラメータや、プラテン駆動装置50の速度パラメータなどを決定する。
【0074】
制御装置70は、イオンビームの注入角度分布を評価するために、所定のチャネリング条件を満たすように配置された評価用ウェハWにイオンビームを照射する試験照射工程を実行する。制御装置70は、面チャネリング条件、軸チャネリング条件またはオフチャネリング条件を満たすように評価用ウェハWをプラテン駆動装置50に配置させ、配置された評価用ウェハWに対するイオン注入処理を実行する。制御装置70は、試験照射された評価用ウェハWをウェハ評価室62に搬送させ、ウェハ評価室62にてアニール処理およびシート抵抗の測定を実施させる。
【0075】
制御装置70は、シート抵抗の測定結果を利用してイオンビームの注入角度分布が所望の分布となるように調整する。制御装置70は、ビーム収束部22の三つのレンズ装置22a,22b,22cに印加する横収束電位Qxおよび縦収束電位Qyの値を調整することにより、イオンビームのx方向およびy方向の注入角度分布をそれぞれ独立に制御する。制御装置70は、注入角度分布が調整されたイオンビームを被処理ウェハに照射し、被処理ウェハ内に所望のキャリア濃度分布が形成されるような本照射工程を実行する。
【0076】
つづいて、イオンビームの具体的な調整例について説明する。ここでは、イオン注入装置10が出力するイオンビームのビーム特性、特に注入角度分布に関する特性を較正するための調整手法について説明する。この調整手法は、イオン注入装置10が出力する第1イオンビームの特性を基準となる別のイオン注入装置(以下、基準装置ともいう)が出力する第2イオンビームの特性に合わせ込むための方法である。
【0077】
本調整例に係る方法は、イオンビームのドーズ量を合わせる第1工程と、イオンビームの注入角度の基準値を合わせる第2工程と、イオンビームのx方向の注入角度分布を合わせる第3工程と、イオンビームのy方向の注入角度分布を合わせる第4工程と、を備える。
【0078】
第1工程では、上述のオフチャネリング条件を利用する。オフチャネリング条件にてイオンビームを照射する場合、x方向およびy方向の注入角度分布に起因するシート抵抗値の変化が見られないため、ビーム照射によりウェハに注入されたドーズ量を比較できる。第1工程では、イオン注入装置10を用いてオフチャネリング条件の評価用ウェハWにイオンビームを照射し、ビーム照射後にアニール処理が施されたウェハのシート抵抗を測定する。また、基準装置においてもオフチャネリング条件の評価用ウェハWにイオンビームを照射し、ビーム照射後にアニール処理が施されたウェハのシート抵抗を測定する。両者のシート抵抗値の測定結果を比較し、差があればシート抵抗値の差が解消されるようにイオン注入装置10のドーズ量を設定するための各種パラメータを調整する。
【0079】
第2工程では、上述の軸チャネリング条件を応用した「Vカーブ法」といわれる手法を用いる。Vカーブ法では、評価用ウェハWのチルト角をわずかに変化させてビーム照射することにより、シート抵抗値が最小となるチルト角の値からビームの基準軌道の方向を推定する。具体的には、ツイスト角φ=23°、チルト角θ=0°の軸チャネリング条件を満たす向きを中心にして、例えばチルト角θを−2°〜+2°の範囲で変化させ、各チルト角にてイオンビームが照射された評価用ウェハWのシート抵抗を測定する。
【0080】
図17は、Vカーブ法による測定例を示すグラフであり、イオン注入装置10における第1イオンビームの測定結果V1と基準装置における第2イオンビームの測定結果V2とを示す。図示されるように、複数の測定点をV状の曲線で近似することでシート抵抗のチルト角依存性が得られる。本グラフの例では、シート抵抗の最小値がチルト角θ=0°の場合であり、チルト角の基準値(例えばθ=0°)とビームの基準軌道方向との間に角度ずれが生じていない場合を示している。Vカーブ法の測定により装置間でチルト角に差異があることが検出された場合には、イオン注入装置10のチルト角が基準装置のチルト角と一致するように調整する。より具体的には、イオン注入装置10のチルト角またはビームの基準軌道方向の少なくとも一方を調整することにより、ビームの注入角度(ウェハに対するビーム全体の平均値としての入射角度)の基準値が装置間で一致するようにする。例えば、イオン注入装置10のチルト角の基準値に所定のオフセットを加えることにより、基準装置との間のチルト角のずれが反映されるようにしてもよい。その他、ビームライン装置14の各種パラメータを調整することにより、イオン注入装置10の基準軌道方向を変化させ、基準装置との間のビーム軌道方向のずれが反映されるようにしてもよい。
【0081】
図17に示すグラフでは、二つの測定結果V1,V2のシート抵抗の最小値に差分ΔRが生じている。この抵抗値の差分ΔRは、第1イオンビームと第2イオンビームの注入角度分布の差に起因し、シート抵抗の最小値が小さい第2イオンビームに比べて、シート抵抗の最小値が大きい第1イオンビームの方が注入角度分布が大きいことを意味している。このようにシート抵抗値の差分ΔRが見られる場合には、第3工程および第4工程により両者の注入角度分布を合わせ込む調整を行う。なお、両者のシート抵抗の最小値がほぼ一致する場合や、シート抵抗の最小値の差が基準範囲内である場合は、以下の第3工程および第4工程による注入角度分布の調整を省略してもよい。
【0082】
第3工程では、上述の面チャネリング条件を利用してx方向の注入角度分布を評価する。イオン注入装置10を用いて面チャネリング条件の評価用ウェハWにイオンビームを照射し、ビーム照射後にアニール処理が施されたウェハのシート抵抗を測定する。また、基準装置においても面チャネリング条件の評価用ウェハWにイオンビームを照射し、ビーム照射後にアニール処理が施されたウェハのシート抵抗を測定する。両者のシート抵抗値の測定結果を比較し、差があればシート抵抗値の差が解消されるようにビーム収束部22の動作パラメータを調整する。具体的には、ΔQx=α・ΔQyの関係性が維持されるようにしてレンズ装置に印加する電圧Qx、Qyを調整し、x方向の注入角度分布が所望の分布となるようにする。
【0083】
第4工程では、上述の軸チャネリング条件を利用してy方向の注入角度分布を評価する。イオン注入装置10を用いて軸チャネリング条件の評価用ウェハWにイオンビームを照射し、ビーム照射後にアニール処理が施されたウェハのシート抵抗を測定する。また、基準装置においても軸チャネリング条件の評価用ウェハWにイオンビームを照射し、ビーム照射後にアニール処理が施されたウェハのシート抵抗を測定する。両者のシート抵抗値の測定結果を比較し、差があればシート抵抗値の差が解消されるようにビーム収束部22の動作パラメータを調整する。具体的には、ΔQx=β・ΔQyの関係性が維持されるようにしてレンズ装置に印加する電圧Qx、Qyを調整し、y方向の注入角度分布が所望の分布となるようにする。
【0084】
図18は、イオン注入装置10の動作過程を示すフローチャートである。まず、オフチャネリング条件にてイオンビームのドーズ量を評価して(S10)ドーズ量を調整し(S12)、Vカーブ法を用いてビームの注入角度を評価して(S14)注入角度の基準値を調整する(S16)。注入角度分布の調整が必要であれば(S18のY)、面チャネリング条件にてイオンビームのx方向の注入角度分布を評価して(S20)x方向の注入角度分布を調整し(S22)、軸チャネリング条件にてビームのy方向の注入角度分布を評価して(S24)y方向の注入角度分布を調整する(S26)。注入角度分布の調整が必要なければ(S18のN)、S20〜S26をスキップする。つづいて、調整されたイオンビームを被処理ウェハに照射してイオン注入処理を実行する(S28)。
【0085】
本実施の形態によれば、以上の調整方法により、イオン注入装置10から出力される第1イオンビームのドーズ量、基準軌道方向、x方向およびy方向の注入角度分布を基準装置と一致するように合わせ込むことができる。このように調整されたイオンビームを用いて本照射工程を実行することにより、基準装置を用いる場合と同条件のイオン注入処理を実現できる。特に、ビームの注入角度分布を含めて合わせ込むことができるため、被処理ウェハのゲート構造近傍に形成されるキャリア濃度分布の深さ方向およびゲート長方向の広がりが所望の分布となるようにできる。これにより、イオン注入処理の注入精度を高めることができる。
【0086】
図19は、イオン注入により製造されるトランジスタの閾値電圧VTHと注入に用いるイオンビームの注入角度分布との関係性を示すグラフである。グラフの横軸はトランジスタのゲート長Lであり、縦軸は製造されるトランジスタの閾値電圧VTHである。イオン注入に用いるイオンビームB、B、B、Bの注入角度分布の広がりの大きさは、B<B<B<Bの順となっている。例えば、イオンビームBは、注入角度分布がほぼ0である平行ビームであり、イオンビームBは、注入角度分布が大きい発散ビームである。なお、注入角度分布以外の特性はイオンビームB〜Bにおいて共通である。
【0087】
図示されるように、注入処理に用いるイオンビームの注入角度分布を変えるだけで製造されるトランジスタの閾値電圧が変化する。例えば、トランジスタのゲート長を所定の値Lに固定すると、注入角度分布によって製造されるトランジスタの閾値電圧V、V、V、Vが変化する。これは、注入角度分布の違いによりゲート構造の下に形成されるキャリア濃度分布のゲート長方向の広がり幅が異なることとなり、ゲート構造下の実質的なチャネル長が変化することに起因すると考えられる。本実施の形態によれば、イオン注入に用いるイオンビームの角度分布を所望の分布に調整できるため、製造されるトランジスタの閾値電圧が所望の値となるように注入処理を制御することができる。したがって、本実施の形態によれば、最終的に製造される半導体回路が所望の動作特性を有するように注入条件を適切に調整ないし制御できる。
【0088】
また、本実施の形態によれば、評価用ウェハWのシート抵抗を用いて異なる注入装置間のビーム特性を評価しているため、共通の指標に基づく評価をすることができる。異なる装置間でビームの注入角度分布を比較する場合、各注入装置の測定方式や測定装置の取付位置などの違いに起因して、同じ特性のビームを測定したとしても異なる測定結果となることが考えられる。その場合、測定結果の数値が互いに合致するようにビーム調整ができたとしても、ビームの注入角度分布が厳密には一致していない可能性がある。一方、本実施の形態によれば、同一特性の評価用ウェハを用いることで、異なる注入装置間であっても共通の評価基準による比較が可能となる。したがって、本実施の形態によれば、装置間のキャリブレーション精度を高めることができる。
【0089】
また、各注入装置が備える角度分布計測器による計測結果と、ウェハのシート抵抗値との関係性を対応付けるテーブルをあらかじめ作成することにより、注入角度分布に基づいて角度分布計測器の計測値のキャリブレーションをすることもできる。例えば、シート抵抗の測定値を用いて第1イオンビームと第2イオンビームの注入角度分布が同一であることを確認した後に、各注入装置が備えるファラデーカップなどを用いて第1イオンビームと第2イオンビームの注入角度分布を計測する。このような計測結果のペアを異なる注入角度分布について求めることにより、各注入装置が備える角度分布計測器の計測特性を対応付けることができる。例えば、シート抵抗の測定結果から同じ注入角度分布を有することが分かっているイオンビームに対して、第1注入装置では第1の角度分布値が計測される一方で、第2注入装置では第1の角度分布値とは異なる第2の角度分布値が計測されるという相関性が分かる。本実施の形態による手法を用いてこのような相関テーブルをあらかじめ作成すれば、それ以降については評価用ウェハのシート抵抗を測定しなくても各注入装置の角度分布計測機能を利用して注入角度分布を高い精度で合わせ込むことができる。
【0090】
以上、本発明を上述の実施の形態を参照して説明したが、本発明は上述の各実施の形態に限定されるものではなく、各実施の形態の構成を適宜組み合わせたものや置換したものについても本発明に含まれるものである。また、当業者の知識に基づいて各実施の形態における組合せや処理の順番を適宜組み替えることや各種の設計変更等の変形を実施の形態に対して加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施の形態も本発明の範囲に含まれ得る。
【0091】
上述の実施の形態では、イオン注入装置10がシート抵抗測定器64およびアニール装置66を備える構成とした。変形例においては、イオン注入装置10には抵抗測定器およびアニール装置が設けられず、イオン注入装置10の外に設けられる装置を用いて評価用ウェハのアニール処理および抵抗測定がなされてもよい。
【0092】
上述の実施の形態では、ビーム照射後のウェハの抵抗値を測定する方法として、四探針法によりウェハのシート抵抗を測定する場合を示した。変形例においては、異なる手法によりウェハの異なる種類の抵抗値を測定してもよい。例えば、拡がり抵抗測定によりウェハの深さ方向のキャリア濃度分布を求めてもよいし、陽極酸化法を用いてウェハの抵抗測定をしてもよい。
【0093】
上述の実施の形態では、ウェハ処理面に形成されるゲート構造近傍のキャリア濃度分布を制御する場合について示した。変形例においては、ウェハ処理面に形成される任意の三次元構造または立体遮蔽物の近傍に形成されるキャリア濃度分布が所望の分布となるようにビームの注入角度分布が制御されてもよい。ウェハ処理面に形成される構造体は、例えば、フィン型FETなどで用いられるフィン構造、縦型トランジスタなどで用いられるトレンチ構造、トランジスタ間を分離するための素子分離酸化膜、その他フォトレジストパターンなどであってもよい。このような構造体が設けられる場合において、ウェハ処理面と直交する深さ方向およびウェハ処理面に平行な水平方向のキャリア濃度分布の広がりが所望の分布となるようにビームの注入角度分布を調整することができる。
【0094】
上述の実施の形態では、ビームの注入角度分布を調整するためのレンズ装置として、三段式の四重極レンズを用いる場合を示した。変形例においては、x方向およびy方向の注入角度分布をそれぞれ独立に制御できる任意の二以上のレンズ装置を用いてもよい。例えば、横方向(x方向)の収束または発散を制御するための第1アインツェルレンズ装置と、縦方向(y方向)の収束または発散を制御するための第2アインツェルレンズ装置とを組み合わせて用いてもよい。第1アインツェルレンズ装置は、x方向に対向する電極対を有し、この電極対に印加される電圧Vxによりx方向の注入角度分布を制御してもよい。第2アインツェルレンズ装置は、y方向に対向する電極対を有し、この電極対に印加される電圧Vyによりy方向に注入角度分布を制御してもよい。
【0095】
本実施の形態の一態様を以下に示す。
【0096】
[項目1]
イオンビームをx方向に往復走査させ、ウェハをy方向に往復運動させてウェハにイオン注入するイオン注入方法であって、
所定の面チャネリング条件を満たすように配置された第1ウェハに前記イオンビームを照射し、ビーム照射後の前記第1ウェハの抵抗を測定することと、
所定の軸チャネリング条件を満たすように配置された第2ウェハに前記イオンビームを照射し、ビーム照射後の前記第2ウェハの抵抗を測定することと、
前記第1ウェハおよび前記第2ウェハの抵抗測定結果を用いて、前記イオンビームの前記ウェハに対する前記x方向および前記y方向の注入角度分布を調整することと、を備えることを特徴とするイオン注入方法。
【0097】
[項目2]
前記注入角度分布は、電界および磁界の少なくとも一方を作用させて前記イオンビームを収束または発散させる二以上のレンズ装置を用いて、前記x方向および前記y方向のそれぞれについて独立に調整されることを特徴とする項目1に記載のイオン注入方法。
【0098】
[項目3]
前記注入角度分布が調整されたイオンビームを被処理ウェハに照射することをさらに備え、
前記注入角度分布は、前記被処理ウェハに所望のキャリア濃度分布が形成されるように調整されることを特徴とする項目2に記載のイオン注入方法。
【0099】
[項目4]
前記被処理ウェハは、ウェハ処理面に形成される構造体を有し、
前記注入角度分布は、前記構造体の近傍におけるキャリア濃度分布の広がりが所望の分布となるように調整されることを特徴とする項目3に記載のイオン注入方法。
【0100】
[項目5]
前記構造体は、ゲート構造であり、
前記注入角度分布は、前記ゲート構造の近傍におけるキャリア濃度分布の深さ方向及びゲート長方向の広がりが所望の分布となるように調整されることを特徴とする項目4に記載のイオン注入方法。
【0101】
[項目6]
前記第1ウェハは、前記第1ウェハに入射するイオンビームの基準軌道に沿う方向と前記y方向の双方により規定される基準面に平行なチャネリング面を有する一方で、前記基準面と直交するチャネリング面を有しないように配向されることを特徴とする項目1から5のいずれか一項に記載のイオン注入方法。
【0102】
[項目7]
前記第1ウェハは、ウェハ主面が(100)面である結晶性基板であり、前記第1ウェハの<110>方位と前記y方向との間のツイスト角が0度または45度となり、前記ウェハ主面の法線と前記基準軌道に沿う方向との間のチルト角が15度〜60度の範囲内となるように配置されることを特徴とする項目6に記載のイオン注入方法。
【0103】
[項目8]
前記第2ウェハは、前記第2ウェハに入射するイオンビームの基準軌道に沿う方向にチャネリング軸を有する一方で、前記第2ウェハに入射するイオンビームの基準軌道に沿う方向と前記y方向の双方により規定される基準面に平行または直交するチャネリング面を有しないように配向されることを特徴とする項目1から7のいずれか一項に記載のイオン注入方法。
【0104】
[項目9]
前記第2ウェハは、ウェハ主面が(100)面である結晶性基板であり、前記第2ウェハの<110>方位と前記y方向との間のツイスト角が15度〜30度の範囲内となり、前記ウェハ主面の法線と前記基準軌道に沿う方向との間のチルト角が0度となるように配置されることを特徴とする項目8に記載のイオン注入方法。
【0105】
[項目10]
前記第1ウェハおよび前記第2ウェハは、ウェハ主面のオフ角が0.1度以下の結晶性基板であることを特徴とする項目1から9のいずれか一項に記載のイオン注入方法。
【0106】
[項目11]
前記第1ウェハの抵抗測定前にビーム照射後の前記第1ウェハにアニール処理を施すことと、前記第2ウェハの抵抗測定前にビーム照射後の前記第2ウェハにアニール処理を施すことの少なくとも一方をさらに備えることを特徴とする項目1から10のいずれか一項に記載のイオン注入方法。
【0107】
[項目12]
前記アニール処理は、900℃〜1000℃のアニール温度でなされることを特徴とする項目11に記載のイオン注入方法。
【0108】
[項目13]
所定のオフチャネリング条件を満たすように配置された第3ウェハに前記イオンビームを照射し、ビーム照射後の前記第3ウェハの抵抗を測定することと、
前記第3ウェハの抵抗測定結果を用いて前記イオンビームによるイオン注入量を調整することと、をさらに備えることを特徴とする項目1から12のいずれか一項に記載のイオン注入方法。
【0109】
[項目14]
前記第3ウェハは、ウェハ主面が(100)面である結晶性基板であり、前記第3ウェハの<110>方位と前記y方向との間のツイスト角が15度〜30度の範囲内となり、前記ウェハ主面の法線と前記ウェハ主面に入射するイオンビームの基準軌道に沿う方向との間のチルト角が7度〜15度の範囲内となるように配置されることを特徴とする項目13に記載のイオン注入方法。
【0110】
[項目15]
前記第3ウェハは、ウェハ主面近傍がアモルファス化された基板であることを特徴とする項目13に記載のイオン注入方法。
【0111】
[項目16]
前記ウェハの抵抗測定は、四探針法を用いて前記ウェハのシート抵抗を測定することであることを特徴とする項目1から15のいずれか一項に記載のイオン注入方法。
【0112】
[項目17]
前記第1ウェハおよび前記第2ウェハには第1イオン注入装置により生成される第1イオンビームが照射され、前記注入角度分布の調整は前記第1イオンビームに対してなされ、
前記イオン注入方法は、
前記第1イオン注入装置とは異なる第2イオン注入装置により生成される第2イオンビームを前記所定の面チャネリング条件を満たすように配置された第4ウェハに照射し、ビーム照射後の前記第4ウェハの抵抗を測定することと、
前記第2イオンビームを前記所定の軸チャネリング条件を満たすように配置された第5ウェハに照射し、ビーム照射後の前記第5ウェハの抵抗を測定することと、をさらに備え、
前記注入角度分布の調整は、前記第1ウェハと前記第4ウェハの抵抗の比較結果および前記第2ウェハと前記第5ウェハの抵抗の比較結果を用いてなされることを特徴とする項目1から16のいずれか一項に記載のイオン注入方法。
【0113】
[項目18]
イオンビームに電界および磁界の少なくとも一方を作用させて前記イオンビームを収束または発散させる二以上のレンズ装置と、
前記イオンビームをx方向に往復走査させるビーム走査器と、
前記往復走査されるイオンビームが照射されるウェハをy方向に往復運動させるプラテン駆動装置と、
ビーム照射後のウェハの抵抗を測定する抵抗測定器と、
前記抵抗測定器の測定結果に基づいて前記二以上のレンズ装置の動作パラメータを決定してイオン注入処理を実行する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
所定の面チャネリング条件を満たすように前記プラテン駆動装置に配置された第1ウェハにイオンビームを照射させ、照射後の前記第1ウェハの抵抗を前記抵抗測定器により測定させ、
所定の軸チャネリング条件を満たすように前記プラテン駆動装置に配置された第2ウェハにイオンビームを照射させ、照射後の前記第2ウェハの抵抗を前記抵抗測定器により測定させ、
前記第1ウェハおよび前記第2ウェハの抵抗測定結果を用いて前記二以上のレンズ装置の動作パラメータを決定し、前記イオンビームの前記ウェハに対する前記x方向および前記y方向の注入角度分布を調整することを特徴とするイオン注入装置。
【0114】
[項目19]
前記ウェハのアニール装置をさらに備え、
前記制御装置は、前記第1ウェハの抵抗測定前にビーム照射後の前記第1ウェハを前記アニール装置を用いてアニールさせ、前記第2ウェハの抵抗測定前にビーム照射後の前記第2ウェハを前記アニール装置によりアニールさせることを特徴とする項目18に記載のイオン注入装置。
【0115】
[項目20]
イオンビームをx方向に往復走査させ、ウェハをy方向に往復運動させてウェハにイオン注入するイオン注入方法であって、
前記x方向および前記y方向の注入角度分布が調整されたイオンビームを被処理ウェハに照射して、前記被処理ウェハに所望のキャリア濃度分布を形成することを特徴とするイオン注入方法。
【0116】
(変形例1)
上述の実施の形態では、面チャネリング条件と軸チャネリング条件を組み合わせることにより、x方向およびy方向の双方の注入角度分布を評価する場合について示した。変形例においては、面チャネリング条件のみを用いて注入角度分布を評価する。以下、本変形例について、上述の実施の形態との相違点を中心に説明する。
【0117】
図20(a)、(b)は、変形例に係るプラテン駆動装置150の構成を模式的に示す図である。プラテン駆動装置150は、ウェハ保持部152と、往復運動機構154と、ツイスト角調整機構156と、第1チルト角調整機構157と、第2チルト角調整機構158とを有する。プラテン駆動装置150は、ウェハWのツイスト角φ、第1チルト角θ1および第2チルト角θ2を調整できるように構成されている。
【0118】
ウェハWは、ウェハ保持部152に固定される。ウェハ保持部152は、ツイスト角調整機構156に取り付けられている。ツイスト角調整機構156は、ウェハ保持部152を回転させることによりウェハWのツイスト角φを調整する。第1チルト角調整機構157は、ツイスト角調整機構156を回転させることによりウェハWの第1チルト角θ1を調整する。第1チルト角θ1は、x方向に延びる回転軸周りの回転角として設定される。第2チルト角調整機構158は、第1チルト角調整機構157を回転させることによりウェハWの第2チルト角θ2を調整する。第2チルト角θ2は、y方向に延びる回転軸周りの回転角として設定される。往復運動機構154は、第2チルト角調整機構158を矢印Yに示すように往復運動させることにより、ウェハWをy方向に往復運動させる。
【0119】
図21は、変形例に係るイオン注入装置10の動作過程を示すフローチャートである。まず、第1の面チャネリング条件にてイオンビームの第1方向の注入角度分布を評価し(S30)、第1方向の注入角度分布を調整する(S32)。第2方向の調整が必要であれば(S34のY)、第2の面チャネリング条件にてイオンビームの第2方向の注入角度分布を評価し(S36)、第2方向の注入角度分布を調整する(S38)。第2方向の調整が不要であれば(S34のN)、S36およびS38の処理をスキップする。つづいて、調整されたイオンビームを被処理ウェハに照射してイオン注入処理を実行する(S40)。
【0120】
第1の面チャネリング条件を実現するため、ウェハに入射するイオンビームの基準軌道方向と平行する第1基準面に平行なチャネリング面を有する一方で、第1基準面と直交し、かつ、基準軌道方向と平行なチャネリング面を有しないようにウェハが配向される。このとき、評価しようとする第1方向と第1基準面とが直交する配置となるようにウェハが配向される。第1方向がx方向である場合、図8(b)に示されるような面チャネリング条件を満たすようにウェハが配向される。このような面チャネリング条件は、ウェハのツイスト角φを実質的に0度または45度とし、第1チルト角θ1を7度〜60度の範囲内とすればよい。具体例を挙げれば、ツイスト角φを実質的に0度とし、第1チルト角θ1を15度としてもよい。第2チルト角θ2は、0度であってよい。
【0121】
第2の面チャネリング条件を実現するため、ウェハに入射するイオンビームの基準軌道方向と平行し、上述の第1基準面と非平行な第2基準面に平行するチャネリング面を有する一方で、第2基準面と直交し、かつ、基準軌道方向と平行するチャネリング面を有しないようにウェハが配向される。このとき、評価しようとする第2方向と第2基準面が直交する配置となるようにウェハが配向される。第2方向がy方向である場合、図22に示されるような面チャネリング条件を満たすようにウェハが配向される。このような面チャネリング条件は、ウェハのツイスト角φを実質的に0度または45度とし、第2チルト角θ2を7度〜60度の範囲内とすればよい。具体例を挙げれば、ツイスト角φを実質的に0度とし、第2チルト角θ2を15度としてもよい。第1チルト角θ1は、0度であってよい。
【0122】
本変形例によれば、異なる面チャネリング条件を組み合わせることにより、イオンビームの複数の方向の注入角度分布を評価することができる。具体的には、x方向と直交するチャネリング面を有する一方で、y方向と直交するチャネリング面を有しないように配向されるウェハを用いることでx方向の注入角度分布を評価することができる。また、y方向と直交するチャネリング面を有する一方で、x方向と直交するチャネリング面を有しないように配向されるウェハを用いることでy方向の注入角度分布を評価することができる。したがって、本変形例によれば、複数の面チャネリング条件を用いてイオンビームの注入角度分布を二次元的に評価することができる。なお、さらなる変形例においては、一つの面チャネリング条件のみを用いて一方向の注入角度分布のみを評価してもよい。
【0123】
(変形例2)
上述の実施の形態では、複数種類のビーム条件に基づいてイオンビームの注入角度分布を評価する場合に、条件ごとに異なるウェハを使用する場合について示した。本変形例では、一枚のウェハにビーム条件の異なるイオンビームを照射して注入角度分布を評価する。具体的には、一枚のウェハの主面上に複数の領域を設定し、領域毎に条件の異なるビームを照射して領域毎にウェハ特性を評価する。以下、本変形例について、上述の実施の形態との相違点を中心に説明する。
【0124】
図23(a)〜(d)は、評価ウェハWのウェハ主面上に設定される複数の領域を模式的に示す図である。図23(a)は、ウェハ主面を上下(y方向)に分割し、上側に第1領域S1、下側に第2領域S2を設定した例を示す。図23(b)は、ウェハ主面を左右(x方向)に分割し、左側に第1領域S1、右側に第2領域S2を設定した例を示す。図23(c)は、ウェハ主面を上下左右(x方向およびy方向)に四分割し、左上に第1領域S1、右上に第2領域S2、左下に第3領域S3、右下に第4領域S4を設定した例を示す。図23(d)は、ウェハ主面を上下方向(y方向)に四分割し、上下方向に順番に第1領域S1、第2領域S2、第3領域S3、第4領域S4を設定した例を示す。なお、図示される領域設定は例示にすぎず、図示する例とは異なる態様でウェハ主面上に複数の領域が設定されてもよい。設定される領域数は3であってもよいし、5以上であってもよい。
【0125】
ウェハ主面上に設定される各領域には、異なるビーム条件のイオンビームが照射される。例えば、図23(a)の第1領域S1には第1ビーム条件のイオンビームが照射され、第2領域S2には第1ビーム条件とは異なる第2ビーム条件のイオンビームが照射される。このとき、ビーム条件の異なるイオンビームとして、ビームの角度条件(注入角度分布)が異なるイオンビームや、ビームの角度条件に影響を与える動作パラメータが異なるように設定されたイオンビームがウェハ主面上の異なる領域に照射される。例えば、第2ビーム条件のイオンビームとして、第1ビーム条件のイオンビームよりも角度分布の大きなビームまたは角度分布を大きくするようにパラメータが設定されたビームが選択される。また、ウェハ主面上の四つの領域S1〜S4ごとに異なる条件のイオンビームを照射する場合、例えば、ビームの角度条件に影響を与える動作パラメータを段階的に設定したビームを対応する領域S1〜S4に照射してもよい。
【0126】
同一ウェハの複数の領域に異なるビーム条件のイオンビームを照射した後、領域毎にウェハ表面の所定の特性が測定される。ウェハ表面の所定の特性とは、ウェハのシート抵抗や拡がり抵抗、サーマルウェーブ法(thermaly modulated optical reflectance)に基づいて測定されるサーマルウェーブ信号(thermal-wave signal)、二次イオン質量分析(SIMS;Secondary Ion Mass Spectrometry)により測定されるウェハ表面の注入不純物濃度の深さプロファイルなどである。これらの方法を用いて領域毎にウェハ特定を測定することにより、各領域に照射されたビーム条件に対応するイオンビームの注入角度分布を評価できる。
【0127】
図24は、変形例に係るイオン注入装置10の動作過程を示すフローチャートである。まず、ウェハの第1領域S1に第1ビーム条件のイオンビームが照射され(S50)、つづいてウェハの第2領域S2に第2ビーム条件のイオンビームが照射される(S52)。ビーム照射後の第1領域および第2領域のウェハ表面の特性を測定し(S54)、第1ビーム条件および第2ビーム条件のイオンビームが評価される(S56)。
【0128】
本変形例によれば、同一のウェハにビーム条件の異なるイオンビームを照射しているため、異なるビーム条件間においてウェハのチャネリング条件を厳密に同じにできる。仮に、異なるビーム条件間で異なるウェハを使用する場合、ウェハのツイスト角やチルト角を厳密に一致させた場合であってもウェハ主面の結晶方位がウェハ毎にばらついている可能性があり、チャネリング条件が厳密な意味で一致しないおそれがある。そうすると、ビーム条件を評価する際にチャネリング条件の相違に起因する誤差が生じる可能性がある。一方、本変形例によれば、同一のウェハを同一のチャネリング条件を満たすように配置して複数の条件でイオンビームを照射するため、ウェハのチャネリング条件を厳密に一致させることができ、注入角度分布に関する評価精度を高めることができる。また、ウェハ主面のオフ角が極めて小さい評価用ウェハではなく、オフ角が0.1度より大きい一般的なウェハを用いる場合であってもイオンビームの注入角度分布を高い精度で評価できる。
【0129】
さらなる変形例においては、同一のイオン注入装置内の異なるビーム条件のイオンビームを評価するのではなく、異なるイオン注入装置間でイオンビームを評価するために同一ウェハを利用してもよい。第1のイオン注入装置を用いてウェハの第1領域に第1ビーム条件のイオンビームを照射した後、第2のイオン注入装置を用いて同じウェハの第2領域に第2ビーム条件のイオンビームを照射してもよい。この場合、同一のウェハを用いて異なる装置のイオンビームを評価できるため、ウェハの違いに起因する測定誤差を防ぐことができ、注入角度分布に関する評価精度を高めることができる。
【0130】
さらなる変形例においては、同一ウェハの領域毎にウェハのツイスト角およびチルト角の条件を変更してチャネリング条件を異ならせてもよい。例えば、ウェハの第1領域にイオンビームを照射する場合には第1の面チャネリング条件を満たすようにウェハを配置し、ウェハの第2領域にイオンビームを照射する場合には第2の面チャネリング条件を満たすようにウェハを配置してもよい。その他、ウェハ表面を四つの領域に分割し、第1領域にイオンビームを照射する場合にはオフチャネリング条件を満たすようにウェハを配置し、第2領域にイオンビームを照射する場合には軸チャネリング条件を満たすようにウェハを配置し、第3領域にイオンビームを照射する場合には第1の面チャネリング条件を満たすようにウェハを配置し、第4領域にイオンビームを照射する場合には第2の面チャネリング条件を満たすようにウェハを配置してもよい。ウェハの配向を変化させる場合であっても、基準となるウェハ主面の結晶方位が同一であるため、ウェハ主面の結晶方位のばらつきによる測定誤差を防ぐことができ、注入角度分布に関する評価精度を高めることができる。
【0131】
本変形例に係る評価方法は、例えば、イオン注入装置10が備える角度分布計測器のキャリブレーションに用いることができる。例えば、ウェハ表面の四つの領域にビーム条件の異なるイオンビームを照射するとともに、各領域に照射したイオンビームを角度分布計測器を用いて計測する。その後、ウェハ表面の特性を測定することにより得られた角度分布の評価値と、角度分布計測器により得られた角度分布の測定結果を比較すれば、角度分布計測器のキャリブレーションをすることができる。本変形例によれば、同一ウェハを用いて評価できるため、評価にかかる時間を短縮化するとともに計測器の較正精度を高めることができる。
【0132】
(変形例3)
上述の実施の形態および変形例においては、走査方向に往復走査させてウェハに照射されるイオンビームについて注入角度分布を評価する例を示した。さらなる変形例においては、x方向に幅広いビームスポットを有するいわゆるリボンビームに対して上述の評価方法を適用してもよい。この場合、リボン状のビームが延びるx方向と直交するy方向に複数の領域が並ぶように各領域を設定することが好ましい。
【0133】
(変形例4)
上述の変形例1では、主に第1チルト角と第2チルト角を調整することにより、第1の面チャネリング条件と第2の面チャネリング条件が実現されるようにウェハを配置する例を示した。さらなる変形例においては、ツイスト角、第1チルト角および第2チルト角の少なくとも一以上を調整することにより、オフチャネリング条件、軸チャネリング条件、第1の面チャネリング条件および第2の面チャネリング条件が実現されるようにウェハを配置してもよい。
【0134】
(変形例5)
上述の変形例1では、プラテン駆動装置150にツイスト角調整機構156、第1チルト角調整機構157、第2チルト角調整機構158を設ける場合を示した。さらなる変形例においては、ツイスト角調整機構、第1チルト角調整機構および第2チルト角調整機構のいずれか二つのみをプラテン駆動装置に設けてもよい。例えば、変形例に係るプラテン駆動装置は、第1チルト角調整機構および第2チルト角調整機構を備え、ツイスト角調整機構を備えなくてもよい。この場合、第1チルト角調整機構および第2チルト角調整機構により第1の面チャネリング条件および第2の面チャネリング条件が実現されるようにウェハを配置して、第1方向と第2方向の注入角度分布を評価してもよい。
【符号の説明】
【0135】
B…イオンビーム、W…ウェハ、10…イオン注入装置、22…ビーム収束部、22a…第1四重極レンズ、22b…第2四重極レンズ、22c…第3四重極レンズ、26…ビーム走査器、50…プラテン駆動装置、64…シート抵抗測定器、66…アニール装置、70…制御装置、90…ゲート構造、95…チャネリング軸、98…チャネリング面、150…プラテン駆動装置、156…ツイスト角調整機構、157…第1チルト角調整機構、158…第2チルト角調整機構。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図10
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