特許第6644615号(P6644615)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6644615
(24)【登録日】2020年1月10日
(45)【発行日】2020年2月12日
(54)【発明の名称】気密性評価装置、及び気密性評価方法
(51)【国際特許分類】
   G01M 3/26 20060101AFI20200130BHJP
【FI】
   G01M3/26 P
   G01M3/26 A
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-69676(P2016-69676)
(22)【出願日】2016年3月30日
(65)【公開番号】特開2017-181324(P2017-181324A)
(43)【公開日】2017年10月5日
【審査請求日】2018年9月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000174943
【氏名又は名称】三井住友建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083138
【弁理士】
【氏名又は名称】相田 伸二
(74)【代理人】
【識別番号】100189625
【弁理士】
【氏名又は名称】鄭 元基
(74)【代理人】
【識別番号】100196139
【弁理士】
【氏名又は名称】相田 京子
(72)【発明者】
【氏名】酒井 英二
(72)【発明者】
【氏名】池原 基博
(72)【発明者】
【氏名】紺野 康彦
【審査官】 川瀬 正巳
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−032125(JP,A)
【文献】 米国特許第04896530(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 3/26
G01N 15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定体の気密の度合いを評価する気密性評価装置において、
前記被測定体の表面の一部であって気密の度合いを評価したい部分に密着させることによって該被測定体と共に略密閉された第1密閉空間を形成する略椀状の第1チャンバーと、
前記被測定体の表面の一部であって該被測定体を貫通するように孔部又は隙間部が形成されている部分に密着させることによって該被測定体と共に略密閉された第2密閉空間を形成する略椀状の第2チャンバーと、
前記第1密閉空間及び前記第2密閉空間の空気を吸引するようにそれらの密閉空間に連結される少なくとも1つの吸気手段と、
前記第1密閉空間の気圧である第1気圧と前記第2密閉空間の気圧である第2気圧との差圧であるチャンバー間差圧を取得するためのチャンバー間差圧取得手段と、
該チャンバー間差圧取得手段で取得したチャンバー間差圧が略ゼロとなるように、前記吸気手段によって前記第1密閉空間から吸引する空気の風量、及び/又は該吸気手段によって前記第2密閉空間から吸引する空気の風量を調整する風量調整手段と、
前記被測定体の裏面側の気圧と前記第1気圧との差圧である表裏差圧を取得するための表裏差圧取得手段と、
前記吸気手段によって前記第1密閉空間から吸引される空気の風量を計測する風量計測手段と、
前記表裏差圧取得手段によって取得した表裏差圧と前記風量計測手段によって計測した風量に基づいて前記被測定体の気密の度合いを演算する演算手段を備えた、
ことを特徴とする気密性評価装置。
【請求項2】
前記第2チャンバーは、前記第1チャンバーよりも大きくて該第1チャンバーを囲繞するように配置されてなる、
ことを特徴とする請求項1に記載の気密性評価装置。
【請求項3】
被測定体の気密の度合いを評価する気密性評価方法において、
前記被測定体の表面の一部であって気密の度合いを評価したい部分に略椀状の第1チャンバーを密着させることによって該被測定体と共に略密閉された第1密閉空間を形成する工程と、
前記被測定体の表面の一部に略椀状の第2チャンバーを密着させることによって該被測定体と共に略密閉された第2密閉空間を形成する工程と、
前記第1密閉空間及び前記第2密閉空間の空気を吸引するように少なくとも1つの吸気手段をそれらの密閉空間に連結する工程と、
前記第1密閉空間の気圧である第1気圧と前記第2密閉空間の気圧である第2気圧との差圧であるチャンバー間差圧を取得する工程と、
該取得したチャンバー間差圧が略ゼロとなるように、前記吸気手段によって前記第1密閉空間から吸引する空気の風量、及び/又は該吸気手段によって前記第2密閉空間から吸引する空気の風量を調整する工程と、
前記被測定体の裏面側の気圧と前記第1気圧との差圧である表裏差圧を取得する工程と、
前記吸気手段によって前記第1密閉空間から吸引される空気の風量を計測する工程と、
前記表裏差圧と前記風量に基づいて 前記被測定体の気密の度合いを演算評価する、
ことを特徴とする気密性評価方法。
【請求項4】
前記第2チャンバーは、前記第1チャンバーよりも大きくて該第1チャンバーを囲繞するように配置する、
ことを特徴とする請求項3に記載の気密性評価方法。
【請求項5】
前記第2チャンバーは、前記被測定体の表面の一部であって該被測定体を貫通するように孔部又は隙間部が形成されている部分に密着させる、
ことを特徴とする請求項3に記載の気密性評価方法。
【請求項6】
前記第1チャンバーは、前記被測定体の表裏を貫通するように形成されたスリット状の隙間部の一部を覆うように配置し、
前記第2チャンバーは、該第1チャンバーに隣接させた状態で前記隙間部の別の部分を覆うように配置する、
ことを特徴とする請求項5に記載の気密性評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被測定体の気密の度合いを評価する気密性評価装置、及び気密性評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一般住宅や工場やクリーンルームなど(以下、“被測定体”とする)の気密の度合いを評価するための方法については日本工業規格(JIS A 2201:2003「送風機による住宅等の気密性能試験方法」)に規定されており、その方法を実施するための気密性評価装置については種々のものが提案されている(例えば、特許文献1、2、3参照)。
【0003】
ところで、既に構築されている被測定体の全体の気密性を評価するのではなく、該被測定体の一部の気密性を局所的に評価したいような場合がある。例えば、建物のドアや窓の隙間部の気密性のデータを予め測定しておいて、新たな建物を構築する場合に設計段階で参考にしたいようなケースが挙げられる。
【0004】
図4(a)は、そのような気密性評価装置を使って被測定体の局所的な気密性を測定する様子の一例を示す断面図であり、符号D3は被測定体を示し、符号H3は、該被測定体D3の表裏を貫通するように形成されている隙間部(孔部)を示し、符号C3は、該被測定体D3との間に略密閉された空間A3を形成するように該被測定体D3の表面に密着されるチャンバーを示し、符号2Cは、該空間A3内の空気を吸引する吸気手段を示している。このような装置において、該吸気手段2Cを駆動したときの前記空間A3からの風量を測定すれば局所的な気密性を演算により求めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平4−145339号公報
【特許文献2】特開2001−91397号公報
【特許文献3】特開2002−228537号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、図4(a)に例示するような被測定体D3の場合、該被測定体D3の裏側(図示の下側)から吸引される空気Mは前記空間A3にそのまま吸引されることとなるので、気密性を正確に評価することが出来るが、図4(b)に例示するような被測定体D4の場合には、隙間部H4は複雑に分岐しているために、該被測定体D4の裏側(図示の下側)から吸引される空気Mだけでなく横からの空気Nも前記空間A3に吸引されることとなり、該横からの空気Nがノイズ成分となってしまい、気密性を正確に評価することができないという問題があった。つまり、図4(a)(b)に例示する方法によれば、気密性の評価は被測定体の隙間部の形状の影響を受けることとなってしまい、気密性を正確に測れたり測れなかったりするという問題があった。
【0007】
本発明は、上述の問題を解消することのできる気密性評価装置、及び気密性評価方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の観点は、図1及び図2(a)(b)に例示するものであって、被測定体(D1,D2)の気密の度合いを評価する気密性評価装置(1,11)において、
前記被測定体(D1,D2)の表面(図示上側の面)の一部であって気密の度合いを評価したい部分(E1)に密着させることによって該被測定体(D1,D2)と共に略密閉された第1密閉空間(A1)を形成する略椀状の第1チャンバー(C11,C21)と、
前記被測定体(D1,D2)の表面の一部であって該被測定体(D1,D2)を貫通するように孔部又は隙間部(図1の符号H1、及び図2(a)(b)の符号H2参照)が形成されている部分(E2)に密着させることによって該被測定体(D1,D2)と共に略密閉された第2密閉空間(A2)を形成する略椀状の第2チャンバー(C12,C22)と、
前記第1密閉空間(A1)及び前記第2密閉空間(A2)の空気を吸引するようにそれらの密閉空間(A1,A2)に連結される少なくとも1つの吸気手段(2A,2B)と、
前記第1密閉空間(A1)の気圧である第1気圧(P1)と前記第2密閉空間(A2)の気圧である第2気圧(P2)との差圧であるチャンバー間差圧(ΔPC)を取得するためのチャンバー間差圧取得手段(3)と、
該チャンバー間差圧取得手段(3)で取得したチャンバー間差圧(ΔPC)が略ゼロとなるように、前記吸気手段(2A)によって前記第1密閉空間(A1)から吸引する空気の風量、及び/又は該吸気手段(2B)によって前記第2密閉空間(A2)から吸引する空気の風量を調整する風量調整手段(4)と、
前記被測定体(D1,D2)の裏面側(図示下側であって、符号A3で示す側)の気圧(P3)と前記第1気圧(P1)との差圧である表裏差圧(ΔP)を取得するための表裏差圧取得手段(5)と、
前記吸気手段(2A)によって前記第1密閉空間(A1)から吸引される空気の風量(Q)を計測する風量計測手段(6)と、
前記表裏差圧取得手段(5)によって取得した表裏差圧(ΔP)と前記風量計測手段(6)によって計測した風量(Q)と下式(1)及び下式(2)とからαAの値を演算する演算手段(7)と、
を備え、
該演算手段(7)が演算したαAの値によって気密の度合いを評価するように構成されたことを特徴とする。
【数1】
【数2】
【0009】
本発明の第2の観点は、図1に例示するものであって、前記第2チャンバー(C12)は、前記第1チャンバー(C11)よりも大きくて該第1チャンバー(C11)を囲繞するように配置されてなることを特徴とする。
【0010】
本発明の第3の観点は、被測定体(D1,D2)の気密の度合いを評価する気密性評価方法において、
前記被測定体(D1,D2)の表面の一部であって気密の度合いを評価したい部分(E1)に略椀状の第1チャンバー(C11,C21)を密着させることによって該被測定体(D1,D2)と共に略密閉された第1密閉空間(A1)を形成する工程と、
前記被測定体(D1,D2)の表面の一部(E2)に略椀状の第2チャンバー(C12,C22)を密着させることによって該被測定体(D1,D2)と共に略密閉された第2密閉空間(A2)を形成する工程と、
前記第1密閉空間(A1)及び前記第2密閉空間(A2)の空気を吸引するように少なくとも1つの吸気手段(2A,2B)をそれらの密閉空間(A1,A2)に連結する工程と、
前記第1密閉空間(A1)の気圧である第1気圧(P1)と前記第2密閉空間(A2)の気圧である第2気圧(P2)との差圧であるチャンバー間差圧(ΔPC)を取得する工程と、
該取得したチャンバー間差圧(ΔPC)が略ゼロとなるように、前記吸気手段(2A)によって前記第1密閉空間(A1)から吸引する空気の風量、及び/又は該吸気手段(2B)によって前記第2密閉空間(A2)から吸引する空気の風量を調整する工程と、
前記被測定体(D1,D2)の裏面側の気圧(P3)と前記第1気圧(P1)との差圧である表裏差圧(ΔP)を取得する工程と、
前記吸気手段(2A,2B)によって前記第1密閉空間(A1)から吸引される空気の風量(Q)を計測する工程と、
前記表裏差圧(ΔP)と前記風量(Q)と下式(1)及び下式(2)とからαAの値を演算する工程と、
を備え、
該演算したαAの値によって気密の度合いを評価することを特徴とする。
【数3】
【数4】
【0011】
本発明の第4の観点は、前記第2チャンバー(C12)は、前記第1チャンバー(C11)よりも大きくて該第1チャンバー(C11)を囲繞するように配置することを特徴とする。
【0012】
本発明の第5の観点は、前記第2チャンバー(C12,C22)は、前記被測定体(D1,D2)の表面の一部であって該被測定体(D1,D2)を貫通するように孔部又は隙間部(図1の符号H1、及び図2(a)(b)の符号H2参照)が形成されている部分(E2)に密着させることを特徴とする。
【0013】
本発明の第6の観点は、図2(a)(b)に例示するものであって、前記第1チャンバー(C21)は、前記被測定体(D2)の表裏を貫通するように形成されたスリット状の隙間部(H2)の一部(E1)を覆うように配置し、
前記第2チャンバー(C22)は、該第1チャンバー(C21)に隣接させた状態で前記隙間部(H2)の別の部分(E2)を覆うように配置することを特徴とする。
【0014】
なお、括弧内の番号などは、図面における対応する要素を示す便宜的なものであり、従って、本記述は図面上の記載に限定拘束されるものではない。
【発明の効果】
【0015】
上記した第1乃至6の観点によれば、気密性の評価をしたいエリア以外から(被測定体の内部の隙間を通って)該エリアに流入しようとする空気は隙間部を通って前記第2チャンバーの側に吸引されることとなり、前記第1チャンバーの側には吸引されないこととなる。その結果、局所的な気密性を正確に評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本発明に係る気密性評価装置の構成の一例を例示する断面図である。
図2図2(a)は、本発明に係る気密性評価装置の構成の他の例を例示する平面図であり、同図(b)は、そのK−K断面図である。
図3図3(a)(b)は、本発明の効果を説明するための断面図である。
図4図4(a)は、従来の気密性評価装置を使って被測定体の局所的な気密性を測定する様子の一例を示す断面図であり、同図(b)は、その問題点を示すための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図1乃至図3に沿って、本発明の実施の形態について説明する。
【0018】
本発明に係る気密性評価装置は、被測定体の気密の度合いを局所的に評価することができるものである。本発明に係る気密性評価装置は、図1及び図2(a)(b)に符号1,11で例示するものであって、略椀状のチャンバーを少なくとも2つ備えている(符号C11,C12、及びC21,C22参照)。これらのチャンバーC11,C12,C21,C22は、開口を有していて、該開口の縁部は前記被測定体(符号D1,D2参照)に密着させることができるような形状になっていて、該開口の縁部を前記被測定体D1,D2に密着させた場合には該被測定体D1,D2と共に略閉塞された密閉空間A1,A2を形成するようになっている。なお、これらのチャンバーC11,C12,C21,C22は、湾曲した面で椀状(カップ状)で形成されている必要は必ずしも無く、少なくとも3つ以上の略平面で略角錐型又は略箱型に形成されていても良い。そして、一方のチャンバー(以下、“第1チャンバー”とする)C11,C21は、前記被測定体D1,D2の表面(図示上側の面)の一部であって気密の度合いを評価したい部分E1に密着させることによって該被測定体D1,D2と共に略密閉された第1密閉空間A1を形成するように構成され、他方のチャンバー(以下、“第2チャンバー”とする)C12,C22は、前記被測定体D1,D2の表面の一部であって該被測定体D1,D2を貫通するように孔部又は隙間部(図1の符号H1、及び図2(a)(b)の符号H2参照)が形成されている部分E2に密着させることによって該被測定体D1,D2と共に略密閉された第2密閉空間A2を形成するように構成されている。
【0019】
そして、本発明に係る気密性評価装置1,11は、
・ 前記第1チャンバーC11,C21と前記被測定体D1,D2とによって形成される第1密閉空間A1の空気、及び
・ 前記第2チャンバーC12,C22と前記被測定体D1,D2とによって形成される第2密閉空間A2の空気、
を吸引する吸気手段(いわゆるブロア)2A,2Bを備えている。なお、図1及び図2(a)(b)に示す例では、2つの吸気手段2A,2Bが配置されていて、前記第1密閉空間A1と前記第2密閉空間A2とを別々の吸気手段によって吸気するように構成されているが、もちろんこれに限られるものではなく、両方の密閉空間A1,A2の空気を1つの吸気手段で吸引するようにしても良い。その場合の吸気量は、該密閉空間A1,A2と該吸気手段との間に介装した絞り弁により調整するようにすると良い。また、3つ以上の吸気手段を備えたものを本発明の範囲から除外するものではない。つまり、本発明においては、前記第1密閉空間A1及び前記第2密閉空間A2の空気を吸引するようにそれらの密閉空間2A,2Bに連結(連通)される少なくとも1つの吸気手段が配置されていれば良い。さらに、図1及び図2(a)(b)に示す例では、各吸気手段2A,2Bは各チャンバーC11,C21,C12,C22に接続されているが、前記密閉空間2A,2Bに連通される構造のものであればもちろんこれに限られるものではなく、
・ 該吸気手段2A,2Bからの吸気通路が前記各チャンバーC11,C21,C12,C22と前記被測定体D1,D2との間に配置されて前記密閉空間A1,A2に開口するようにしても、或いは、
・ 該吸気手段2A,2Bからの吸気通路が前記被測定体D1,D2の内部にも配置されて該被測定体D1,D2の側から前記密閉空間A1,A2に開口するようにしても、
どちらでも良い。
【0020】
一方、本発明に係る気密性評価装置1,11は、前記第1密閉空間A1の気圧(以下、“第1気圧”とする)P1と前記第2密閉空間A2の気圧(以下、“第2気圧”とする)P2との差圧(以下、“チャンバー間差圧”とする)ΔPCを取得するチャンバー間差圧取得手段3を備えている。この場合、市販されているような差圧測定器を該チャンバー間差圧取得手段3に用いて前記チャンバー間差圧ΔPCを直接測定することにより取得しても良いが、該チャンバー間差圧取得手段3を、
・ 前記第1気圧P1を測定する気圧計(不図示)と、
・ 前記第2気圧P2を測定する気圧計(不図示)と、
・ これらの気圧計の測定値に基づいて前記第1気圧と前記第2気圧との差圧を演算するチャンバー間差圧演算手段(不図示)と、
によって構成して前記チャンバー間差圧ΔPCを測定と演算とにより取得するようにしても良い。
【0021】
また、本発明に係る気密性評価装置1,11は、前記被測定体D1,D2の裏面側(符号A3で示す部分であって、図示の下側)であって前記第1チャンバーC11,C21及び前記第2チャンバーC12,C22が密着されていない側の気圧(以下、“裏面側気圧”とする)P3と前記第1気圧P1との差圧(以下、“表裏差圧”とする)ΔPを取得するための表裏差圧取得手段5を備えている。この場合も同様であって、市販されているような差圧測定器を該表裏差圧取得手段5に用いて前記表裏差圧ΔPを直接測定することにより取得しても良いが、該表裏差圧取得手段5を、
・ 前記第1気圧P1を測定する気圧計(不図示)と、
・ 前記裏面側気圧P3を測定する気圧計(不図示)と、
・ これらの気圧計の測定値に基づいて前記第1気圧と前記裏面側気圧との差圧を演算する表裏差圧演算手段(不図示)と、
によって構成して前記表裏差圧ΔPを測定と演算とにより取得するようにしても良い。
【0022】
また一方、本発明に係る気密性評価装置1,11は、前記チャンバー間差圧取得手段3が取得するチャンバー間差圧ΔPCが略ゼロとなるように、
(1) 前記第1密閉空間A1から前記吸気手段2Aによって吸引する空気の風量、又は
(2) 前記第2密閉空間A2から前記吸気手段2Bによって吸引する空気の風量、又は、
(3) 上記(1)及び(2)の両方の風量
のいずれかを調整することができる風量調整手段4を備えている。
【0023】
また、本発明に係る気密性評価装置1,11は、前記第1密閉空間A1から前記吸気手段2Aによって吸引される空気の風量Qを計測する風量計測手段6を備えている。
【0024】
さらに、本発明に係る気密性評価装置1,11は、前記表裏差圧取得手段5によって取得した表裏差圧ΔPと前記風量計測手段6によって計測した風量Qと下式(1)及び下式(2)とからαAの値を演算する演算手段7、を備えていて、該演算手段7が演算したαAの値によって気密の度合いを評価するように構成されている。
【数5】
【数6】
【0025】
ここで、前記相当隙間面積αAの具体的演算方法について説明する。
【0026】
前記吸気手段2A,2Bを操作して吸気量を変えつつ、ΔPとQの値を最低3組以上実測(取得)していく。例えば、3つの表裏差圧ΔP,ΔP,ΔPと、3つの風量Q,Q,Qと、を実測によって求めておく。それらの値を上式(1)に代入して例えば最小二乗法を使うことにより、上記aとnの値が求まることとなる。一方、ρは空気密度であって、測定時の気温tと下式(3)とによって求めることができる。例えば、気温が20℃の場合はρの値は約1.2(kg/m)となる。
【数7】
【0027】
上式(1)と(2)とから、下式(4)を求めることができるが、この式において、aとnとρの値は上述のようにそれぞれ既知であってΔPは9.8(Pa)とすれば良いので、αAの値が求まることとなる。
【数8】
【0028】
本発明によれば、気密性の評価をしたいエリア以外から(被測定体D1の内部の隙間を通って)該エリアに流入しようとする空気は隙間部H1を通って前記第2チャンバーC12の側に吸引されることとなり、前記第1チャンバーC11の側には吸引されないこととなる。その結果、局所的な気密性を正確に評価することができる。例えば、図3(a)(b)に例示するような被検体D3,D4の場合、下側からの空気はそのままチャンバー内に吸引されることとなり、気密性を評価したいエリア以外からの空気が第1チャンバーC21に吸引されることはなく、その結果、局所的な気密性を正確に評価することができる。
【0029】
ところで、図1に例示する第2チャンバーC12は、前記第1チャンバーC12よりも大きくて該第1チャンバーC11を囲繞するように配置されている(つまり、該第1チャンバーC11及び該第2チャンバーC12が二重になるように配置されている)が、もちろんこれに限られるものではなく、図2(a)(b)に例示するように、第1チャンバーC21と第2チャンバーC22とを隣接するように配置しても良い。また、図1に示す例では、前記第2チャンバーC12の内側に配置されている第1チャンバーC11の個数は1つであるが、もちろんこれに限られるものではなく、2つ以上であっても良い。
【0030】
一方、本発明に係る気密性評価方法は、前記被測定体D1,D2の気密の度合いを評価するためのものであって、
・ 該被測定体D1,D2の表面の一部であって気密の度合いを評価したい部分E1に略椀状の第1チャンバーC11,C21を密着させることによって該被測定体D1,D2と共に略密閉された第1密閉空間A1を形成する工程と、
・ 前記被測定体D1,D2の表面の一部E2に略椀状の第2チャンバーC12,C22を密着させることによって該被測定体D1,D2と共に略密閉された第2密閉空間A2を形成する工程と、
・ 前記第1密閉空間A1及び前記第2密閉空間A2の空気を吸引するように少なくとも1つの吸気手段2A,2Bをそれらの密閉空間A1,A2に連結する工程と、
・ 前記第1密閉空間A1の気圧である第1気圧P1と前記第2密閉空間A2の気圧である第2気圧P2との差圧であるチャンバー間差圧ΔPCを取得する工程と、
・ 該取得したチャンバー間差圧ΔPCが略ゼロとなるように、前記吸気手段2Aによって前記第1密閉空間A1から吸引する空気の風量、及び/又は該吸気手段2Bによって前記第2密閉空間A2から吸引する空気の風量を調整する工程と、
・ 前記被測定体D1,D2の裏面側A3の気圧P3と前記第1気圧P1との差圧である表裏差圧ΔPを取得する工程と、
・ 前記吸気手段2Aによって前記第1密閉空間A1から吸引される空気の風量Qを計測する工程と、
・ 前記表裏差圧ΔPと前記風量Qと下式(1)及び下式(2)とからαAの値を演算する工程と、
を備えていて、該演算したαAの値によって気密の度合いを評価するようになっている。
【数9】
【数10】
【0031】
本発明によれば、気密性の評価をしたいエリア以外から(被測定体D1の内部の隙間を通って)該エリアに流入しようとする空気は隙間部H1を通って前記第2チャンバーC12の側に吸引されることとなり、前記第1チャンバーC11の側には吸引されないこととなる。その結果、局所的な気密性を正確に評価することができる。
【0032】
この場合、図1に例示するように、前記第2チャンバーC12は、前記第1チャンバーC11よりも大きくて該第1チャンバーC11を囲繞するように配置するようにすると良い。
【0033】
また、前記第2チャンバーC12,C22は、前記被測定体D1,D2の表面の一部であって該被測定体D1,D2を貫通するように孔部又は隙間部(図1の符号H1、及び図2(a)(b)の符号H2参照)が形成されている部分E2に密着させるようにすると良い。
【0034】
さらに、図2(a)(b)に例示するように、前記第1チャンバーC21は、前記被測定体D2の表裏を貫通するように形成されたスリット状の隙間部H2の一部E1を覆うように配置し、前記第2チャンバーC22は、該第1チャンバーC21に隣接させた状態で前記隙間部H2の別の部分E2を覆うように配置するようにすると良い。このようなスリット状の隙間部H2としては、ドアや窓やガラリの隙間を挙げることができる。
【符号の説明】
【0035】
1 気密性評価装置
2A,2B 吸気手段
3 チャンバー間差圧取得手段
4 風量調整手段
5 表裏差圧取得手段
6 風量計測手段
7 演算手段
11 気密性評価装置
A1 第1密閉空間
A2 第2密閉空間
A3 被測定体の裏面側
C11 第1チャンバー
C12 第2チャンバー
C21 第1チャンバー
C22 第2チャンバー
D1 被測定体
D2 被測定体
H1 孔部又は隙間部
H2 スリット状の隙間部
P1 第1気圧
P2 第2気圧
P3 被測定体の裏面側の気圧
ΔP 表裏差圧
ΔPC チャンバー間差圧
図1
図2
図3
図4