(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6644625
(24)【登録日】2020年1月10日
(45)【発行日】2020年2月12日
(54)【発明の名称】製鋼炉スラグ凝固物の破砕磁選装置および破砕磁選方法
(51)【国際特許分類】
B02C 23/08 20060101AFI20200130BHJP
C21C 5/28 20060101ALI20200130BHJP
B03C 1/00 20060101ALI20200130BHJP
B03C 1/005 20060101ALI20200130BHJP
B03C 1/14 20060101ALI20200130BHJP
B03C 1/28 20060101ALI20200130BHJP
G01N 33/24 20060101ALI20200130BHJP
G01N 1/28 20060101ALI20200130BHJP
【FI】
B02C23/08 Z
C21C5/28 D
B03C1/00 B
B03C1/005
B03C1/14
B03C1/28 107
G01N33/24 A
G01N1/28 T
【請求項の数】6
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-78734(P2016-78734)
(22)【出願日】2016年4月11日
(65)【公開番号】特開2017-189721(P2017-189721A)
(43)【公開日】2017年10月19日
【審査請求日】2019年1月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】399009642
【氏名又は名称】JFE条鋼株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105968
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 憲一郎
(72)【発明者】
【氏名】志賀 哲生
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 主計
(72)【発明者】
【氏名】吉長 久雄
(72)【発明者】
【氏名】三木 俊人
(72)【発明者】
【氏名】小松 喜美
【審査官】
瀧 恭子
(56)【参考文献】
【文献】
登録実用新案第3013806(JP,U)
【文献】
実開平02−090641(JP,U)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0148902(US,A1)
【文献】
国際公開第2017/167680(WO,A1)
【文献】
特開2003−010724(JP,A)
【文献】
特開2007−181775(JP,A)
【文献】
特開2007−239034(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B02C 23/00−23/40
C21C 5/00、5/28−5/50
B03C 1/00−1/32
G01N 1/00−1/44、33/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓋を着脱可能に装着できかつ製鋼炉スラグの凝固物を収納する収納容器と、該収納容器の底部の内側に配設されて前記凝固物を破砕するとともに前記凝固物を前記収納容器の壁部へ飛散させる回転ブレードと、前記壁部の外側に配設されて前記凝固物中の粒鉄を前記壁部の内側に磁着させる磁石と、を有することを特徴とする製鋼炉スラグ凝固物の破砕磁選装置。
【請求項2】
前記収納容器の直径が上方に広がるように前記壁部が傾斜することを特徴とする請求項1に記載の製鋼炉スラグ凝固物の破砕磁選装置。
【請求項3】
前記回転ブレードによって前記凝固物を破砕する間に、前記収納容器を揺動させる揺動手段を有することを特徴とする請求項1または2に記載の製鋼炉スラグ凝固物の破砕磁選装置。
【請求項4】
収納容器に製鋼炉スラグの凝固物を収納し、前記収納容器に着脱可能な蓋を装着した後、前記収納容器の底部の内側に配設した回転ブレードを回転させて前記凝固物を破砕するとともに前記収納容器の壁部へ飛散させ、前記壁部の外側に配設した磁石によって前記凝固物中の粒鉄を前記壁部の内側に磁着させることを特徴とする製鋼炉スラグ凝固物の破砕磁選方法。
【請求項5】
前記収納容器の直径が上方に広がるように前記壁部を傾斜させて、前記粒鉄を前記回転ブレードから加えられる運動エネルギーによって前記壁部に沿って一旦上昇させた後、前記粒鉄に加わる重力によって前記壁部に沿って下降させることを特徴とする請求項4に記載の製鋼炉スラグ凝固物の破砕磁選方法。
【請求項6】
前記回転ブレードによって前記凝固物を破砕する間に、前記収納容器を揺動させることを特徴とする請求項4または5に記載の製鋼炉スラグ凝固物の破砕磁選方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製鋼炉スラグに酸化鉄(すなわちFeO、Fe
2O
3、Fe
3O
4)として含有されるFe
量の機器分析を行なうに先立って、機器分析に供する試料を得るために、製鋼炉スラグを凝固させた後、その凝固物を破砕しながら、スラグへの混入鉄分を磁力で選別(以下、磁選という)する破砕磁選装置および破砕磁選方法に関するものである。なお、ここで製鋼炉は、原料や方式によらず、溶鋼を製造する炉という意味であり、具体的には転炉や電気炉等の総称である。
【背景技術】
【0002】
製鋼炉(たとえば転炉、電気炉等)の操業において、炉内に生じるスラグ(以下、製鋼炉スラグという)にはFeが酸化鉄として含有されており、安定操業を維持する上で、そのスラグ中のFeの総量(いわゆるトータルFe)が有効な指標となることが知られている。つまり、スラグ中のトータルFeを適切な範囲に保持、管理することで鉄ロスの少ない合理的な操業をすることができる。
【0003】
トータルFeの適切な範囲は製鋼炉の仕様や製造する鋼種等に応じて異なるが、トータルFeを所定の範囲内に保持された操業をするためには、操業中に製鋼炉から製鋼炉スラグを採取し、さらにその成分を短時間で分析して、その測定結果を操業に反映させる必要がある。様々な機器を用いた分析技術(いわゆる機器分析)を採用すれば、トータルFeの測定に要する時間を短縮することは可能である。
【0004】
しかし、機器分析に供する試料を得るためには、採取した製鋼炉スラグを冷却して凝固させ、さらにその凝固物を粒状に破砕する必要がある。また、製鋼炉スラグには溶鋼から酸化鉄ではない鉄(Fe)が混入しており、試料を得る過程で冷却することによって、粒子状の鉄(以下、粒鉄という)として凝固物中に分散している。トータルFeの測定精度を向上するためには、粒鉄を除去した試料を機器分析に供する必要がある。
【0005】
つまり、機器分析によるトータルFeの測定精度を高めるためには、製鋼炉スラグを冷却して凝固させた後、その凝固物を粒状に破砕し、さらに粒鉄を除去した試料を機器分析に供する必要がある。したがって、製鋼炉スラグを採取して凝固させ、さらに凝固物の破砕と粒鉄の除去を経て、機器分析の試料を得るまでに時間を要するので、トータルFeの測定結果を製鋼炉の操業に反映させ難いという問題がある。しかも粒鉄の除去は作業員が手作業で行なうので、除去作業の効率が悪いばかりでなく、機器分析の試料に残留する粒鉄の量が個人差に起因して変動する惧れがある。
そこで、粒鉄を効率良く除去して、機器分析の試料を短時間で安定して得る技術が検討されている。
【0006】
たとえば特許文献1には、高炉スラグや転炉スラグの凝固物をクラッシャーで破砕してドラムに落下させ、そのドラムに内蔵される磁石によって粒鉄をドラム表面に吸着させることによって、凝固物と粒鉄の選別を行なう技術が開示されている。この技術は、凝固物を破砕しながら、磁石による粒鉄の選別(以下、磁選という)を行なうことができるので、機器分析の試料を得るための所要時間を短縮できる。しかも、作業員の個人差に起因する問題点も解消できる。
【0007】
しかし特許文献1に記載された技術は、クラッシャーを使用するので、スラグの凝固物を破砕しながら磁選を行なう装置(以下、破砕磁選装置という)が大規模になるのは避けられず、したがって高炉、転炉あるいは電気炉等の工場内あるいは操作室内に設置するのは困難である。そのため、採取したスラグを工場から場外の破砕磁選装置へ運搬せざるを得ないので、機器分析の試料を得るための所要時間が長くなるという問題が生じる。
【0008】
また、様々な機器分析のうち、トータルFeの測定に好適な蛍光X線分析は、試料が細粒であるほど測定精度が改善される。ところが特許文献1に記載された技術は、クラッシャーを使用するので、スラグの凝固物を粗く破砕することは可能であるが、細かく破砕することは困難である。したがって特許文献1に記載された技術を採用して、蛍光X線分析によるトータルFeを測定すると、良好な測定精度が得られないという問題がある。したがって、製鋼炉から少量のスラグを採取して、その場で測定精度の高い分析を迅速に行なうことは困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2003-10724号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、従来の技術の問題点を解消し、簡便な手段で製鋼炉スラグの破砕と粒鉄の磁選(すなわち粒鉄の選別)とを同時に短時間で行なうことが可能であり、かつ破砕による製鋼炉スラグの凝固物の細粒化、ならびに磁選による粒鉄の確実な選別が可能となる破砕磁選装置および破砕磁選方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、トータルFeの測定に好適な機器分析として蛍光X線分析に着目した。そして、蛍光X線分析は製鋼炉の工場内で行なうことが可能であるから、トータルFeの測定結果を製鋼炉の操業に速やかに反映させるために、製鋼炉の工場内で測定に供する試料を得る技術について検討した。そして、製鋼炉から少量のスラグ(50g程度)を採取すれば、回転ブレードを高速で回転させることによって製鋼炉スラグの凝固物を細かく破砕することが可能となり、その結果、蛍光X線分析に供する試料の細粒化を図ることができるので、トータルFeの測定精度の向上に寄与することを見出した。しかも、製鋼炉スラグの凝固物を細かく破砕することによって、粒鉄を凝固物から分離し易くなる。
【0012】
さらに、破砕された凝固物が周辺に飛び散るのを防止するために、凝固物を収納する容器(以下、収納容器という)の内部で回転ブレードを回転させれば、製鋼炉の工場内(たとえば操作室内)で製鋼炉スラグの凝固物を破砕することが可能であることが分かった。そして、回転ブレードによって運動エネルギーを加えられた細粒の凝固物と粒鉄が収納容器内で飛散するので、磁石を配設することによって、粒鉄のみを磁着させることができる。
このようにして製鋼炉の工場内で破砕と磁選を同時に行ない、粒鉄を分離した細粒の凝固物は、蛍光X線分析の試料として好適に使用できる。
【0013】
本発明は、このような知見に基づいてなされたものである。
すなわち本発明は、蓋を着脱可能に装着できかつ製鋼炉スラグの凝固物を収納する収納容器と、収納容器の底部の内側に配設されて凝固物を破砕するとともに凝固物を収納容器の壁部へ飛散させる回転ブレードと、壁部の外側に配設されて凝固物中の粒鉄を壁部の内側に磁着させる磁石と、を有する製鋼炉スラグ凝固物の破砕磁選装置である。
【0014】
本発明の破砕磁選装置においては、収納容器の直径が上方に広がるように壁部が傾斜することが好ましい。さらに、回転ブレードによって凝固物を破砕する間に、収納容器を揺動させる揺動手段を有することが好ましい。
【0015】
また本発明は、収納容器に製鋼炉スラグの凝固物を収納し、収納容器に着脱可能な蓋を装着した後、収納容器の底部の内側に配設した回転ブレードを回転させて凝固物を破砕するとともに収納容器の壁部へ飛散させ、壁部の外側に配設した磁石によって凝固物中の粒鉄を壁部の内側に磁着させる製鋼炉スラグ凝固物の破砕磁選方法である。
【0016】
本発明の破砕磁選方法においては、収納容器の直径が上方に広がるように壁部を傾斜させて、粒鉄を回転ブレードから加えられる運動エネルギーによって壁部に沿って一旦上昇させた後、粒鉄に加わる重力によって壁部に沿って下降させることが好ましい。さらに、回転ブレードによって凝固物を破砕する間に、収納容器を揺動させることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、簡便な手段で製鋼炉スラグの破砕と粒鉄の磁選とを同時に短時間で行なうことが可能であり、かつ破砕による製鋼炉スラグの凝固物の細粒化、ならびに磁選による粒鉄の確実な選別が可能となる。そして、蛍光X線分析によるトータルFeの測定精度が向上するので、産業上格段の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明に係る破砕磁選装置の例を模式的に示す平面図である。
【
図2】
図1に示す破砕磁選装置の側面を示す側面図である。
【
図3】
図1に示す破砕磁選装置の側面の別の例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は本発明に係る破砕磁選装置の例を模式的に示す平面図である。製鋼炉スラグの凝固物を破砕するにあたって、凝固物を収納容器1に収納して、蓋を装着する。
図1では収納容器1の内部を示すために、蓋は図示していない。そして
図2に、その
図1の側面図を示す。
【0020】
収納容器1の底部の内側には回転ブレード2が配設されており、収納容器1に蓋を装着した状態で、回転ブレード2を高速で回転させる。回転ブレード2の回転によって、製鋼炉スラグの凝固物と回転ブレード2とが繰り返し激しく衝突するので、凝固物が細かく破砕される。そして、製鋼炉スラグの凝固物中に分散している粒鉄が凝固物から分離されて、細粒の凝固物(以下、粉砕スラグという)と単体の粒鉄とが混在した状態となる。この過程で、粉砕スラグと粒鉄は、回転ブレード2から加えられる運動エネルギーによって、収納容器1の壁部へ飛散するが、蓋を装着して開口部を閉鎖しているので、収納容器1から外部へ飛び散るのは防止できる。
【0021】
収納容器1の壁部の外側には、磁石3が配設されており、回転ブレード2によって飛散する粉砕スラグと粒鉄のうち、粒鉄のみが磁石3の磁力によって壁部の内側に磁着する。したがって収納容器1の材質は、金属等の磁力を透過し易いものが好ましい。具体的には、耐久性と価格の両立を図る観点から、ステンレス鋼製の収納容器1が好ましい。また、収納容器1内を飛散する粒鉄に磁石3の磁力を均等に作用させるために、収納容器1の水平断面形状は円形(
図1参照)であることが好ましい。
一方で粉砕スラグは、収納容器1の壁部に衝突しても磁着せず、壁部に沿って滑落して、底部に貯留される。
【0022】
このようにして、簡便な手段で製鋼炉スラグの破砕と粒鉄の磁選とを同時に短時間で行なうことが可能となる。しかも、破砕による粉砕スラグの細粒化、ならびに磁選による粒鉄の確実な選別が可能となる。
そして、回転ブレード2の回転を停止し、さらに蓋を取り外して、収納容器1の底部から粉砕スラグを回収すれば、蛍光X線分析の試料として好適に使用できる。
収納容器1から粉砕スラグを回収する手段は、特に限定しない。たとえば、手作業でつまみ上げる、スプーン状の治具を用いてすくい上げる等のように、適宜工夫して回収することができる。
【0023】
また、粉砕スラグは磁着しないので、収納容器1を傾けて、粉砕スラグを壁部に沿って別の容器に流下させることによって回収できる。ただしその場合は、磁着している粒鉄が、粉砕スラグとの摩擦によって剥離して混入する惧れがある。そこで、
図3に示すように、収納容器1の壁部に磁石3を配設しない部分を設けて、その部分を下側に向けて収納容器1を傾けることによって、粒鉄の混入を防止できる。つまり、磁石3を配設しない部分には粒鉄が磁着していないので、そこを流路として粉砕スラグを別の容器に流下させれば、粒鉄が粉砕スラグに混入するのを防止できる。
【0024】
使用する磁石3の種類は、永久磁石、電磁石いずれも使用できる。ただし、電磁石は付帯設備(たとえば電源、配線等)が必要である。したがって、簡便な手段で破砕と磁選を同時に行なう観点から、永久磁石が好ましい。
磁石3の形状は、特に限定しない。磁石3を収納容器1の壁部に配設する際に、互いに隣り合う磁石同士の隙間を小さくすることが可能な形状(たとえば円形、正方形、正6角形等)のものを使用すれば良い。
【0025】
収納容器1は、既に説明した通り水平断面形状が円形であることが好ましい。加えて、その直径が上方に広がるように壁部を傾斜(
図2、3参照)させることが好ましい。このように壁部を傾斜させることによって、粒鉄の磁着を促す効果が一層発揮される。つまり、回転ブレード2から加えられた運動エネルギーによって収納容器1の壁部に衝突した粒鉄は、傾斜した壁部に沿って一旦上昇した後、重力によって壁部に沿って下降する。その結果、磁石3の磁力が粒鉄に作用する時間を延長できるので、粒鉄を確実に磁着させることが可能となる。
【0026】
また、製鋼炉スラグの凝固物を破砕する間に、収納容器1を揺動させることによって、回転ブレード2の下側(すなわち回転ブレード2と収納容器1の底部との間)に滞留した凝固物を、回転ブレード2の上側へ移動させることができ、その結果、収納容器1内の凝固物を満遍なく破砕することが可能となる。
収納容器1を揺動する手段は、特に限定しない。たとえば、収納容器1を水平方向に往復運動させる、あるいは円弧方向に往復運動させる等の手段を用いるのが好ましい。
【0027】
なお、本発明を適用して製鋼炉スラグの破砕と粒鉄の磁選とを同時に行なうにあたって、好適な回転ブレード2の回転速度(回/秒)や処理時間(秒)等の設定条件は、収納容器1の直径、収納容器1の壁部の傾斜角、回転ブレード2の寸法等に応じて変化するので、予め破砕磁選のテストを行なって好適な設定条件を求めておくことが好ましい。
【0028】
このようにして操業中の製鋼炉から製鋼炉スラグを採取し、その製鋼炉スラグを冷却して凝固させた後、同じ工場内(たとえば操作室内)にて破砕と磁選を同時に行なうことによって短時間で試料を作成して、蛍光X線分析に供することができる。蛍光X線分析も同じく製鋼炉の工場内で行なうことが可能であるから、トータルFeの測定結果を直ちに製鋼炉の操業条件の調整に反映させることができる。
【実施例】
【0029】
図1に示す本発明に係る破砕磁選装置を用いて、製鋼炉スラグとして電気炉スラグの凝固物の破砕と磁選を同時に行なって、粉砕スラグと粒鉄とを分離し、得られた粉砕スラグを蛍光X線分析に供してトータルFeを測定した。その手順について説明する。
【0030】
製鋼炉スラグの凝固物の粗大な塊を収納容器1に収納し、蓋を装着して、回転ブレード2を高速で回転させて、凝固物を細かく破砕しながら、壁部へ飛散させて粒鉄を磁石3に磁着させた。磁石3は円形のフェライト磁石(TRUSCO社製、直径25mm、厚み4mm)を使用し、壁部に粘着テープで貼り付けたフェライト磁石は合計20個である。なお、収納容器1の壁部には磁石3を配設しない部分(
図3参照)を設けて、破砕磁選が終了した後に細粒の凝固物を回収する際の流路とした。
【0031】
こうして、回転ブレード2を80秒間回転させる間に、適宜、収納容器1を揺動(円弧方向に±30°の往復運動)させた。そして回転ブレード2を停止した後、蓋を取り外し、さらに磁石3を配設しない部分を下側に向けて収納容器1を傾けることによって、粉砕スラグを別の容器に流下させて回収した。その回収した粉砕スラグ(粒径0.3mm以下)を蛍光X線分析に供してトータルFeを測定した。これを発明例とする。
【0032】
これに対して従来は、磁石を配設していない収納容器に製鋼炉スラグの凝固物の粗大な塊を収納し、蓋を装着した後、回転ブレードを高速で回転させて、凝固物を細かく破砕していた。破砕の所要時間は発明例と同じく80秒間であった。破砕が終了した後、蓋を取り外し、さらに作業員が手作業で磁石を収納容器内に差し入れて、粒鉄を磁石に磁着させて、破砕スラグと粒鉄を分離していた。こうして収納容器内に残留した粉砕スラグを蛍光X線分析に供してトータルFeを測定していた。これを従来例とする。
発明例と従来例の手順で12回ずつ蛍光X線分析を行なってトータルFeを測定した。その結果を表1に示す。
【0033】
【表1】
【0034】
表1から明らかなように、測定値の最大値、最小値、平均値は、いずれも発明例の方が従来例よりも低くなっている。これは、発明例では粒鉄を十分に選別できたことを意味する。
また、最大値と最小値との差、標準偏差も発明例の方が小さくなっている。これは、発明例で使用した粉砕スラグ中に粒鉄が残留していないので、トータルFeの測定精度が向上したことを意味する。
【0035】
さらに、従来例は破砕と磁選を別の工程として行なうのに対して、発明例は破砕と磁選を同時に行なうので、発明例では蛍光X線分析に供する試料の作成に要する時間を大幅に短縮できる。つまり、従来例における磁選の工程の所要時間は作業員の個人差によって変動するものの、発明例では、従来例における磁選の工程を省略できる。
【符号の説明】
【0036】
1 収納容器
2 回転ブレード
3 磁石