(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の構成においては、貫通穴と突出融着部のシール幅が狭いため、長期信頼性において融着樹脂層から内部へ水分が透過するおそれがある。加えて、特許文献1に記載の構成以外にも、膨張した外装フィルムを突起物が突き破ることにより内部圧力を開放する構成もあるが、突起となる部品をデバイス毎に付ける等コスト増となる。また常に突起物がついているので、デバイスの取扱いにも注意が必要となる。
【0006】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、異常時に上昇した内部圧力を安全に開放することができ、信頼性が高い蓄電セル、外装フィルム及び蓄電モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る蓄電セルは、蓄電素子と、外装フィルムパッケージとを具備する。
上記外装フィルムパッケージは、上記蓄電素子を収容し、上記蓄電素子側の第1の主面と、上記第1の主面と反対側の第2の主面とを有する金属層と、上記第1の主面に積層された合成樹脂からなる内部樹脂層と、上記第2の主面に積層された合成樹脂からなる外部樹脂層とを有し、少なくとも上記外部樹脂層にスリットが形成された外装フィルムパッケージであって、上記スリットと上記蓄電素子との間において、互いに接触している内部樹脂層を互いに離間させる応力を緩和する応力緩和部と、上記応力が集中する応力集中部とが設けられている。
【0008】
この構成によれば、蓄電セルの異常によって内部圧力が上昇すると、スリットが形成されている箇所において金属層と外部樹脂層が断裂し、その裂け目から内部樹脂層が膨張する。内部樹脂層は内部圧力がさらに上昇すると破裂し、内部圧力が開放される。即ち、スリットの形成箇所において内部圧力が開放されるため、スリット以外の部分からの圧力開放を防止することができる。また、通常時(蓄電セルに異常が生じていない時)には金属層によって水分の収容空間への透過が防止されており、蓄電セルの信頼性を確保することが可能である。
【0009】
さらに、本発明に係る蓄電セルは、スリットと蓄電素子との間において、互いに接触している内部樹脂層を互いに離間させる応力を緩和する応力緩和部と、当該応力が集中する応力集中部とが設けられている。
【0010】
これにより、蓄電セルの異常に伴う上昇した内部圧力を応力集中部に近接するスリットから確実に開放させることが可能となる。従って、スリットが形成されている箇所以外の箇所から内部圧力が開放されることを防止することができる。
【0011】
上記目的を達成するため、本発明の他の一形態に係る蓄電セルは、蓄電素子と、外装フィルムパッケージとを具備する。
上記外装フィルムパッケージは、上記蓄電素子を収容し、上記蓄電素子側の第1の主面と、上記第1の主面と反対側の第2の主面とを有する金属層と、上記第1の主面に積層された合成樹脂からなる内部樹脂層と、上記第2の主面に積層された合成樹脂からなる外部樹脂層とを有し、少なくとも上記外部樹脂層にスリットが形成された外装フィルムパッケージであって、上記スリットと上記蓄電素子との間において、凹凸構造を有する応力緩和部と、平坦構造を有する応力集中部とが設けられている。
【0012】
上記凹凸構造は、典型的にはエンボス加工により形成される。つまり、当該凹凸構造の凸部は、外装フィルムパッケージの表面に浮き出たものである。この構成とすることにより、スリットと蓄電素子との間における外装フィルムパッケージを引っ張る応力が、応力緩和部の上記凸部を引き延ばす力と、何も加工されていない平坦構造を有する応力集中部を引き延ばす力に分散される。
【0013】
従って、上記応力は、応力緩和部では上記凸部を引き延ばす力として消費されるのに対し、応力集中部ではダイレクトに伝わる。よって、応力緩和部よりも応力集中部が優先的に引き延ばされ、応力集中部と近接しているスリットから内部圧力が解放される。
【0014】
即ち、本発明に係る蓄電セルは、応力緩和部と応力集中部を有する構成であることにより、蓄電セルの異常に伴い上昇した内部圧力が開放される開放圧力を所望とする圧力に設定可能となる。これにより、内部圧力の上昇時に外装フィルムパッケージが均一に拡張してしまい上記開放圧力を所望の圧力とするのが困難であった厚みが薄いセルの開放圧力を、所望とする圧力にコントロールすることが可能となる。
【0015】
上記応力緩和部は、第1の応力緩和
領域と、上記第1の応力緩和
領域と離間する第2の応力緩和領域とを有し、
上記応力集中部は、上記第1の応力緩和領域と上記第2の応力緩和領域との間に設けられていてもよい。
【0016】
この構成とすることにより、スリットと蓄電素子との間において、応力集中部がスリットと必然的に対向する構成となる。これにより、当該応力集中部と近接するスリットから蓄電セルの異常に伴う上昇した内部圧力を確実に開放させることが可能となる。
【0017】
上記スリットは、上記外部樹脂層において上記スリットの先端から上記第2の主面までの距離が0μm以上5μm以下となる深さに形成されていてもよい。
【0018】
これにより、スリットの加工深さを厳密に規定する必要がなくなることから、蓄電セルの生産性を向上させることが可能となる。
【0019】
上記スリットは、上記外部樹脂層から上記金属層にかけて、上記金属層において上記スリットの先端から上記第2の主面までの距離が0μm以上5μm以下となる深さに形成されていてもよい。
【0020】
この構成によれば、スリットが金属層において、第1の主面と第2の主面の間までの深さを有していてもよい。つまり、外部樹脂層だけではなく金属層にも切れ込みが形成されていてもよい構成となる。これにより、金属層がより断裂しやすいものとなり、蓄電セルの異常時における内部圧力の過剰な上昇を抑制することが可能となる。
【0021】
上記外装フィルムパッケージは、上記蓄電素子の周縁において上記内部樹脂層が互いに熱融着することによって形成されたシール領域を有し、
上記スリットは、上記シール領域の周縁に対して平行に形成されていてもよい。
【0022】
これにより、スリットにおける内部樹脂層の膨張及び破裂を容易となり、スリットの開放圧力を小さくすることが可能となる。
【0023】
上記内部樹脂層は、無軸延伸ポリプロピレンからなり、
上記外部樹脂層は、ポリエチレンテレフタレートからなってもよい。
【0024】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る外装フィルムは、蓄電素子を収容する収容空間を形成する外装フィルムであって、上記蓄電素子を収容し、上記蓄電素子側の第1の主面と、上記第1の主面と反対側の第2の主面とを有する金属層と、上記第1の主面に積層された合成樹脂からなる内部樹脂層と、上記第2の主面に積層された合成樹脂からなる外部樹脂層とを有し、少なくとも上記外部樹脂層にスリットが形成され、上記スリットと上記蓄電素子との間において、互いに接触している内部樹脂層を互いに離間させる応力を緩和する応力緩和部と上記応力が集中する応力集中部とが設けられている。
【0025】
上記構成を有する外装フィルムによって蓄電素子を被覆することにより、異常時に上昇した内部圧力を安全に開放することができ、信頼性が高い蓄電セルを作製することが可能である。
【0026】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る蓄電モジュールは、複数の蓄電セルが積層された蓄電モジュールである。
上記蓄電セルは、蓄電素子と外装フィルムパッケージとを具備する。
上記外装フィルムパッケージは、上記蓄電素子を収容し、上記蓄電素子側の第1の主面と、上記第1の主面と反対側の第2の主面とを有する金属層と、上記第1の主面に積層された合成樹脂からなる内部樹脂層と、上記第2の主面に積層された合成樹脂からなる外部樹脂層とを有し、少なくとも上記外部樹脂層にスリットが形成された外装フィルムパッケージであって、上記スリットと上記蓄電素子との間において、互いに接触している内部樹脂層を互いに離間させる応力を緩和する応力緩和部と、上記応力が集中する応力集中部とが設けられている。
【0027】
上記外装フィルムパッケージは、上記蓄電素子の周縁において上記内部樹脂層が互いに接触している接触領域を有し、
上記スリットは、蓄電セルの接触領域のうち隣接する蓄電セルの接触領域と向かい合う箇所に形成されていてもよい。
【0028】
この構成によれば、蓄電セルの異常に伴って上昇した内部圧力が開放されることによりスリットから電解液が漏れた場合に、上記箇所に対策部品(スポンジ等の吸収部材)を設けることによって、互いに隣接している蓄電セルに共通した対策部品により、電解液を吸収させることができる。
【0029】
仮に、互いに隣接している蓄電セルが背中合わせとなっている箇所にスリットが形成される場合はそれぞれのセル毎に対策を行い、スリットが同一方向に形成される場合は構造が異なる方式でセル毎に対策部品を設ける必要がある。
【0030】
従って、スリットを上記箇所に設けることにより、装置構成を複雑化させず且つ低コストで、スリットから電解液が漏れた場合に対処可能な蓄電モジュールを提供することが可能となる。
【発明の効果】
【0031】
以上のように、本発明によれば異常時に上昇した内部圧力を安全に開放することができ、信頼性が高い蓄電セル、外装フィルム及び蓄電モジュールを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
【0034】
[蓄電セルの構造]
図1は、本実施形態に係る蓄電セル10の斜視図であり、
図2は、
図1のA−A線における蓄電セル10の断面図である。以下の図においてX方向、Y方向及びZ方向は相互に直交する3方向である。
【0035】
図1及び
図2に示すように、蓄電セル10は、外装フィルム20、蓄電素子30、正極端子40及び負極端子50を有する。
【0036】
蓄電セル10においては、2枚の外装フィルム20によって構成される外装フィルムパッケージが収容空間Rを形成し、収容空間Rには蓄電素子30が収容されている。2枚の外装フィルム20は、蓄電素子30の周縁においてシールされており、外装フィルムパッケージは2枚の外装フィルム20が接触する接触領域20aと、蓄電素子30を収容する素子収容部20bを備える。接触領域20a及び素子収容部20bについては後述する。
【0037】
本実施形態の蓄電セル10の厚みは、特に限定されないが、例えば12mm以下とすることができる。これにより、後述するスリットSと、応力緩和部21と、応力集中部22とが蓄電セル10に形成されることによる作用効果がより顕著なものとなる。
【0038】
蓄電素子30は、
図2に示すように、正極31、負極32及びセパレータ33を備える。正極31と負極32はセパレータ33を介して対向し、収容空間Rに収容されている。
【0039】
正極31は、蓄電素子30の正極として機能する。正極31は正極活物質やバインダ等を含む正極材料からなるものとすることができる。正極活物質は例えば活性炭である。正極活物質は、蓄電セル10の種類に応じて適宜変更することができる。
【0040】
負極32は、蓄電素子30の負極として機能する。負極32は負極活物質やバインダ等を含む負極材料からなるものとすることができる。負極活物質は例えば炭素系材料である。負極活物質は、蓄電セル10の種類に応じて適宜変更することが可能である。
【0041】
セパレータ33は、正極31と負極32の間に配置され、電解液を通過させると共に正極31と負極32の接触を防止(絶縁)する。セパレータ33は、織布、不織布又は合成樹脂微多孔膜等であるものとすることができる。
【0042】
図2においては、正極31と負極32がそれぞれ一つずつ設けられているが、それぞれが複数設けられるものとすることも可能である。この場合、複数の正極31と負極32がセパレータ33を介して交互に積層されるものとすることができる。また、蓄電素子30は、正極31、負極32及びセパレータ33の積層体がロール状に巻回されたものとすることも可能である。
【0043】
蓄電素子30の種類は特に限定されず、リチウムイオンキャパシタやリチウムイオン電池、電気二重層キャパシタ等とすることができる。収容空間Rには、蓄電素子30と共に電解液が収容される。この電解液は、例えばSBP・BF
4(spirobipyyrolydinium tetrafuloroborate)等であり、蓄電素子30の種類に応じて選択することができる。
【0044】
正極端子40は、正極31の外部端子である。
図2に示すように、正極端子40は、正極配線41を介して正極31と電気的に接続され、接触領域20aにおいて2つの外装フィルム20の間を介して収容空間Rの内部から外部へ引き出されている。正極端子40は導電性材料からなる箔や線材であるもとすることができる。
【0045】
上記のように、蓄電セル10は、接触領域20aと素子収容部20bを備える。接触領域20aは、2枚の外装フィルム20が接触する領域であり、素子収容部20bは接触領域20aに囲まれ、蓄電素子30を収容する部分である。
【0046】
図3は、蓄電セル10をZ方向から見た模式図である。同図に示すように、接触領域20aは、シール領域E1と非シール領域E2とを有する。接触領域20aの幅は、例えば、数mmから数十mm程度とすることができる。
【0047】
シール領域E1は、外装フィルム20が互いに熱融着することにより形成されている領域であり、外装フィルム20の周縁に設けられている。
【0048】
非シール領域E2は、シール領域E1が熱融着されていることにより、外装フィルム20が接触している領域であり、シール領域E1と素子収容部20bの間に設けられている。シール領域E1及び非シール領域E2の幅は、例えば、数mmから数十mm程度とすることができる。
【0049】
[外装フィルムの構成]
図4は、外装フィルム20の断面図である。同図に示すように、外装フィルム20は、金属層25、内部樹脂層26及び外部樹脂層27から構成されている。
【0050】
金属層25は、箔状の金属からなる層であり、大気中の水分の透過を防ぐ機能を有する。金属層25は、
図4に示すように、第1の主面25aとその反対側の第2の主面25bとを有する。
【0051】
金属層25は、例えば、アルミニウムからなる金属箔とすることができる。また、金属層25はこの他にも銅、ニッケル又はステンレス等の箔であってもよい。本実施形態に係る金属層25の厚みは、数十μm程度とするのが好適である。
【0052】
内部樹脂層26は、第1の主面25aに積層され、収容空間Rの内周面を構成し、金属層25を被覆して絶縁する。
【0053】
内部樹脂層26は、合成樹脂からなり、例えば、無軸延伸ポリプロピレン(CPP)からなるものとすることができる。この他にも、内部樹脂層26はポリエチレン、これらの酸変成物、ポリフェニレンサルファイド、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド又はエチレン−酢酸ビニル共重合体等からなるものとすることができる。また、内部樹脂層26は複数層の合成樹脂層が積層されて構成されてもよい。
【0054】
外部樹脂層27は、第2の主面25bに積層され、蓄電セル10の表面を構成し、金属層25を被覆して保護する。
【0055】
外部樹脂層27は、合成樹脂からなり、例えば、ポリエチレンテレフタレートからなるものとすることができる。この他にも、外部樹脂層27はナイロン、ポリエチレンナフタレート、2軸延伸ポリプロピレン、ポリイミド又はポリカーボネート等からなるものとすることができる。
【0056】
本実施形態では、上記構成を有する外装フィルム20の2枚が蓄電素子30を介して対向し、接触領域20aでシールされた外装フィルムパッケージによって収容空間Rが形成されている。シール領域E1においては、2枚の外装フィルム20の内部樹脂層26が互いに熱融着されている。外装フィルム20は、内部樹脂層26が収容空間R側(内側)となり、外部樹脂層27が表面27a側(外側)となるように配置される。
【0057】
上記構成を有する外装フィルム20の2枚が蓄電素子30を介して対向し、シール領域E1でシールされた外装フィルムパッケージによって収容空間Rが形成されている。シール領域E1においては、2枚の外装フィルム20の内部樹脂層26が互いに熱融着されている。外装フィルム20は、内部樹脂層26が収容空間R側(内側)となり、外部樹脂層27が表面側(外側)となるように配置される。
【0058】
外装フィルム20は、柔軟性を有する状態で用いられ、蓄電素子30の形状に応じて
図2に示すような周縁が湾曲した形状をなしてもよい。また、外装フィルム20は、予めエンボス加工によって同形状が形成された状態で用いられてもよい。2枚の外装フィルム20のどちらか一方にはスリットが形成されている。
【0059】
[スリットについて]
図5及び
図6はスリットSを含む外装フィルム20の断面図であり、
図7は蓄電セル10をZ方向から見た模式図である。スリットSは、
図5に示すように、外部樹脂層27の表面27aから途中まで形成されている。これにより、外部樹脂層27はスリットSによって部分的に分離されている。
【0060】
スリットSの深さD1は、通常時において金属層25が水分の透過を防止し、異常時において金属層25が速やかに断裂する深さが好適である。具体的には、外部樹脂層27において、スリットSからの先端Pから第2の主面25bまでの距離D2が0μm以上5μm以下となる深さとすることができる。
【0061】
また、本実施形態に係るスリットSは、
図6に示すように、金属層25において第1の主面25aと第2の主面25bの間までの深さを有するものであってもよい。
【0062】
具体的には、スリットSは、外部樹脂層27から金属層25にかけて、金属層25においてスリットSの先端Pから第2の主面25bまでの距離D2が0μm以上5μm以下となる深さとすることができる。これにより、蓄電セル10の異常時における内部圧力の過剰な上昇を抑制することが可能となる。
【0063】
[応力緩和部と応力集中部について]
本実施形態に係る外装フィルム20は、
図7に示すように、応力緩和部21と応力集中部22とを有する。応力緩和部21は、同図に示すように、スリットSと蓄電素子30との間の非シール領域E2に設けられ、第1応力緩和領域E3と第2応力緩和領域E4とを有する。
【0064】
応力緩和部21のX方向の長さ(X方向における第1及び第2応力緩和領域E3,E4を合わせた長さ)は、特に限定されないが、例えば蓄電素子30のX方向の長さと同等又はそれ以上であってもよい。応力緩和部21のX方向の長さは、例えば、数mm〜数十mm程度とすることができる。
【0065】
本実施形態に係る第1及び第2応力緩和領域E3,E4は、典型的にはエンボス加工由来の凹凸構造を有するが、これに限定されるものではなく、例えば波状形状を有する構造等であってもよい。なお、第1及び第2応力緩和領域E3,E4の凸部の高さは、例えば0.5mm以上1.0mm以下とすることができる。
【0066】
応力集中部22は、
図7に示すように、第1応力緩和領域E3と、第1応力緩和領域E3とX方向に離間する第2応力緩和領域E4との間に設けられる。応力集中部22のX方向の幅D3は、例えば、数mm〜数十mm程度とすることができる。また、応力集中部22は、応力緩和部21が形成されていない非シール領域E2と同様に平坦構造を有する。
【0067】
図8及び
図9は、スリットSと、応力緩和部21及び応力集中部22の形成位置を示す模式図である。
【0068】
本実施形態では、スリットSの延伸方向は特に限定されず、
図8に示すように、正極端子40及び負極端子50が設けられているシール領域E1の長手方向に対して垂直でもよく、
図9に示すように同長手方向に対して平行でもよい。
【0069】
また、応力緩和部21及び応力集中部22の形成位置も
図7に示す位置に限定されず、
図8に示すように、正極端子40及び負極端子50が設けられているシール領域E1の長手方向に対して垂直なスリットSと、蓄電素子30との間に設けられてもよい。
【0070】
あるいは、
図9に示すように、正極端子40及び負極端子50が設けられているシール領域E1と蓄電素子30との間の非シール領域E2以外の場所に形成されたスリットSと、蓄電素子30との間に設けられてもよい。
【0071】
[スリットの効果]
蓄電セル10の使用時において、通常時(蓄電素子30に異常が生じてない状態)、即ち収容空間Rの内部圧力が許容範囲内の場合には、外装フィルム20は
図4〜
図6に示した状態を維持する。この状態ではスリットSは金属層25を分離していないため、金属層25によって水分が外装フィルム20を透過することが防止されている。
【0072】
一方、蓄電セル10の使用時において蓄電素子30に異常が生じ、内部圧力が上昇すると、外装フィルム20が膨張する。これにより、金属層25及び外部樹脂層27は、スリットSが形成されている部分において断裂する。次いで、断裂した金属層25及び外部樹脂層27の裂け目から内部樹脂層26が部分的に外装フィルム20の外部に突出し、膨張する。そして、内部圧力が一定以上となると、外部へ突出した内部樹脂層26が破裂し、収容空間Rの内部圧力が開放される。
【0073】
このように、スリットSが形成されていることにより、内部樹脂層26が破裂する位置を予め特定しておくことが可能である。仮にスリットSが設けられていない場合、外装フィルムパッケージにおいて最も強度が弱いシール領域E1が開裂し、内部圧力が開放される。その場合、蓄電素子30の周縁全体に形成されているシール領域E1のどの部分が開裂するかがわからなくなる。
【0074】
また、上記のように異常時における内部圧力の開放は、内部樹脂層26の破裂によって生じる。即ち、内部樹脂層26の強度によって、蓄電セル10の内部圧力が開放される開放圧力を調整することが可能である。
【0075】
内部樹脂層26の強度は、内部樹脂層26の厚みによって調整することができる。この場合、内部樹脂層26の全体の厚みによって内部樹脂層26の強度を調整することができる。いずれの場合であっても、スリットSにおける内部樹脂層26の破裂が生じる内部圧力が、シール領域E1が開裂する内部圧力よりも小さければよい。
【0076】
[応力緩和部と応力集中部の作用]
本実施形態では上記開放圧力を、スリットSと蓄電素子30との間において、応力緩和部21と応力集中部22を設けることにより調整することができる。
【0077】
より詳細には、本実施形態に係る応力緩和部21の凹凸構造は、典型的にはエンボス加工により形成される。つまり、当該凹凸構造の凸部は、外装フィルム20が押圧されることにより外装フィルム20の表面に浮き出た凸部である。
【0078】
この構成であることにより、蓄電セル10の異常に伴い外装フィルム20が拡張する際に、スリットSと蓄電素子30との間における外装フィルム20を引っ張る応力が、応力緩和部21の上記凸部を引き延ばす力と、何も加工されていない平坦構造を有する応力集中部22を引き延ばす力に分散される。
【0079】
ここで、上記応力は、応力緩和部21では凹凸構造を引き延ばす力として消費されるのに対し、応力集中部22ではダイレクトに伝わる。よって、応力緩和部21よりも応力集中部22が優先的に引き延ばされ、応力集中部22と近接しているスリットSから内部圧力が解放される。
【0080】
即ち、本実施形態に係る蓄電セル10は、応力緩和部21と応力集中部22を有する構成であることにより、従来、内部圧力の上昇時に外装フィルムが均一に拡張してしまい上記開放圧力を所望の圧力とするのが困難であった厚みが薄いセルの開放圧力を、所望の圧力にコントロールすることが可能となる。
【0081】
加えて、本実施形態では上記開放圧力を、シール領域E1と非シール領域E2との間の境界B1とスリットSとの距離を調節することにより調整することもできる。
【0082】
具体的には、蓄電セル10の内部圧力が上昇すると、シール領域E1と非シール領域E2との間の境界に最も応力(外装フィルム20を互いに離間させる力)が集中する。ここで、本実施形態では、上記のとおり応力緩和部21と応力集中部22が設けられている。これにより、境界B1にかかる上記応力が、応力集中部22とY方向に対向する境界B2に集中する。
【0083】
従って、応力集中部22とY方向に対向する非シール領域E2がY方向に重点的に引っ張られる。ゆえに、境界B2とスリットSとの距離によって上記開放圧力を調整することができる。
【0084】
スリットSを境界B2(境界B1)から離間させると、蓄電セル10の異常に伴う内部圧力の上昇時に、スリットSに対する上記応力が緩和される。つまり、スリットSが境界B2(境界B1)から離間すればするほど、スリットSに上記応力が伝播しにくくなるため、上記開放圧力が高いものとなる。
【0085】
従って、本実施形態に係る蓄電セル10においては、上述のようなスリットSの形成箇所における作用を利用して、上記開放圧力を所望の圧力に調整することが可能となる。なお、本実施形態では、上記開放圧力を0.35MPa以上0.45MPa以下とするのが好適であるが、これに限定されるものではない。
【0086】
また、本実施形態に係る蓄電セル10は、異常時における開放圧力が調整可能であることにより、蓄電セル10が、比較的厚みが薄いセルであってとしても、上記開放圧力が所望とする圧力よりも高い圧力となることが抑制される。これにより、スリットSが形成されている箇所以外の箇所から内部圧力が開放されることを防止することができる。
【0087】
さらに、上記開放圧力は、応力集中部22の幅D3を調節することにより調整することも可能である。
【0088】
応力集中部22の幅D3が大きいと、スリットSと蓄電素子30との間における外装フィルム20を引っ張る応力かかる面積が大きくなり、当該応力が分散する。よって上記開放圧力が高くなる。一方、幅D3が小さいと、上記応力がかかる面積が小さくなり、当該応力が局所的に集中する。このため所定の圧力で蓄電セル10の内部圧力が開放され、上記開放圧力の過上昇が抑制される。
【0089】
本実施形態では、上述のとおり、境界B2(境界B1)とスリットSとの距離や、応力集中部22の幅D3等が調整されることで、上記開放圧力が所望の圧力に調整されることから、本発明ではスリットSの深さD1が上記開放圧力の設定に大きく関与するものではなくなる。これにより、スリットSの加工精度を従来よりも緩和することができる。
【0090】
具体的には、スリットSの深さD1は、外部樹脂層27の厚みHより5μm程度浅い深さから、厚みHより5μm程度深い深さとなる範囲まで許容される。これにより、蓄電セル10の生産性を向上させることが可能となる。
【0091】
[蓄電モジュールについて]
本実施形態の蓄電セル10を複数積層することにより蓄電モジュールを構成することができる。
図10は、蓄電モジュール100の模式図である。蓄電モジュール100は、同図に示すように、複数の蓄電セル10、熱伝導シート101、プレート102及び支持部材103を備える。
【0092】
複数の蓄電セル10は、熱伝導シート101を介して積層され、支持部材103によって支持されている。蓄電セル10の数は2つ以上であってもよい。蓄電セル10の正極端子40及び負極端子50は図示しない配線又は端子によって蓄電セル10の間で接続されているものとすることができる。複数の蓄電セル10の最上面及び最下面には、プレート102が積層されている。
【0093】
蓄電モジュール100は、
図10に示すように、スリットSが非シール領域E2に形成されていることにより、プレート102によって内部樹脂層26の膨張が妨げられず、所定圧力での内部圧力の開放が可能である。
【0094】
また、本実施形態に係る蓄電モジュール100は、
図10に示すように、蓄電セル10の接触領域20aのうち、隣接する蓄電セル10の接触領域20aと向かい合う箇所にスリットSが形成されている。
【0095】
これにより、蓄電セル10の異常に伴って上昇した内部圧力が開放されることによりスリットSから電解液が漏れた場合に、上記箇所に対策部品(スポンジ等の吸収部材)を設けることによって、互いに隣接している蓄電セル10に共通した対策部品により、電解液を吸収させることができる。
【0096】
仮に、互いに隣接している蓄電セル10が背中合わせとなっている箇所にスリットSが形成される場合はそれぞれのセル毎に対策を行い、スリットSが同一方向に形成される場合は構造が異なる方式でセル毎に対策部品を設ける必要がある。
【0097】
従って、スリットSを上記箇所に設けることにより、装置構成を複雑化させず且つ低コストで、スリットSから電解液が漏れた場合に対処可能な蓄電モジュール100を提供することが可能となる。
【0098】
[変形例]
図11は変形例に係る外装フィルム20の断面図である。上記実施形態において、蓄電セル10は、2枚の外装フィルム20によって構成される外装フィルムパッケージが収容空間Rを封止するものとしたがこれに限られない。
図11に示すように、蓄電セル10は、1枚の外装フィルム20が蓄電素子30を介して折り曲げられ、3辺がシールされて形成された外装フィルムパッケージが収容空間Rを封止する構成であってもよい。