【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成27年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「環境調和型製鉄プロセス技術開発(STEP2)」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【文献】
褐炭へのボラン添加による官能基の変化と自然発火性への影響,化学工学会 第81年会 講演要旨集,公益社団法人 化学工学会,2016年 2月28日,B115
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
劣質炭には含酸素官能基が多く含まれており、加熱をすると比較的低温において熱分解ラジカルが発生しやすく、該ラジカル同士が結合して架橋構造が形成される。そのため400〜500℃程度の軟化溶融温度域に加熱しても、石炭分子の動きが妨げられて石炭の流動性が不十分となって粘結性が抑制され、コークスの強度が低下すると考えられている。
【0015】
本発明者らが鋭意研究を行った結果、予め還元処理を施した劣質炭をコークス原料に用いれば、上記軟化溶融温度域での流動性を向上でき、高強度コークスが得られることを見出し、本発明に至った。
【0016】
本発明に至った経緯は以下の通りである。すなわち、本発明者らが研究した結果、劣質炭には常温から65℃程度の温度域においても反応性が高い不安定なラジカルが存在しており、これらラジカルを安定化させることによって、軟化溶融温度域に加熱しても該ラジカルに起因する架橋反応や重合反応などが抑制できることがわかった。具体的には劣質炭に還元処理を施すことで該ラジカルを安定な分子にできることがわかった。還元処理を施した劣質炭(以下、「改質炭」ということがある)をコークス化した場合、軟化溶融温度域に達しても上記架橋構造の形成等が抑制され、石炭の流動性が向上すると共に、石炭分子の配向性が向上して結晶性が高くなるため、再固化温度以上において強固なコークス構造が得られ、その結果、高強度コークスが得られると考えられる。以下、本発明の劣質炭の改質方法、及びコークスの製造方法について説明する。
【0017】
本発明の改質対象は劣質炭である。劣質炭とは発熱量5700kcal/kg以下、揮発分31%以上の石炭をいう。このような劣質炭としては例えばビクトリア炭、ノースダゴタ炭、ベルガ炭等の褐炭;西バンコ炭、ビヌンガン炭、サマランガウ炭等の亜瀝青炭が例示される。本発明の劣質炭には上記例示に限定されず、ビトリニット平均反射率Roが0.85%以上、かつ、ギーセラー最高流動度logMFが10ddpm以下、または、ビトリニット平均反射率Roが0.85%以下、かつ、ギーセラー最高流動度logMFが50ddpm以下の非微粘結炭も含まれる。
【0018】
なお、還元処理効率を向上させるために、劣質炭は好ましくは直径5mm以下、より好ましくは3mm以下に粉砕しておくことが望ましい。
【0019】
本発明では劣質炭を還元処理して劣質炭を改質するが、還元処理方法は特に限定されず、還元処理によって劣質炭中のラジカルが安定化されればよい。すなわち、還元処理後の劣質炭のラジカル量が低減されていればよい。還元処理前後のラジカル量を直接測定することは困難であるが、例えば本発明の実施例で示すように還元処理を行った場合、行わなかった場合よりも、軟化溶融温度域において流動性が向上していたり、あるいはコークス強度が向上していれば、還元処理によってラジカル量が低減し、劣質炭が改質されたと判断できる。
【0020】
本発明の還元処理では還元剤を用いることが望ましい。還元剤を用いることによって効率的に劣質炭を改質できる。特に銑鉄製造用コークスとして使用する場合には、還元剤は還元処理によって二酸化炭素となるものであると銑鉄製造に不要な成分の混入を防ぐことができるため好ましい。したがって還元剤としては好ましくは有機還元剤である。有機還元剤の中でも常温〜65℃の温度域で蒸気となり得る低級のアルコール類、アルデヒド類、カルボン酸類が望ましい。このようなアルコール類としては、メタノール、2−プロパノール、アルデヒド類としては、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、バレルアルデヒド、カルボン酸類としてはギ酸やシュウ酸等が挙げられる。このうちより好ましくはカルボン酸類であり、特に好ましくはギ酸やシュウ酸である。このような還元剤を用いて還元処理して得られた劣質炭は、上記したように改質されている。
【0021】
ギ酸を還元剤として用いた場合、下記式に示される反応によって水素及び電子が劣質炭に供与され、劣質炭中のラジカルを安定化できる。
HCOOH→CO
2+2H
++2e
-
【0022】
またシュウ酸を還元剤として用いた場合、下記式に示される反応によって水素及び電子が劣質炭に供与され、劣質炭中のラジカルを安定化できる。
(COOH)
2→2CO
2+2H
++2e
-
【0023】
還元剤によって水素及び電子が劣質炭に供与された結果、劣質炭に含まれているラジカルが安定化されるため、上記したように得られた改質炭を軟化溶融温度域に加熱すると石炭の流動性が向上して高強度コークスが得られる。還元剤を使用する場合は、攪拌等によって接触効率を高めると、効率的に還元処理を行うことができるため好ましい。
【0024】
還元剤は気体状、液体状のいずれでもよい。還元剤を気体状で用いる場合は例えば還元剤を加熱して得られる蒸気と劣質炭を接触させればよい。また還元剤を液体状で用いる場合は、例えば還元剤を含む水溶液(以下、「還元剤含有水溶液」ということがある)を劣質炭と接触させて還元処理を行えばよい。接触方法としては還元剤含有水溶液中に劣質炭を浸漬させたり、あるいは還元剤含有水溶液を劣質炭に噴霧してもよい。また還元剤を気体状で用いる場合は、例えば劣質炭を含む密閉空間内で還元剤を加熱して蒸気化させたり、あるいは外部で還元剤を加熱して得られる蒸気を該密閉空間に供給してもよい。
【0025】
上記還元処理で消費される還元剤の量は、使用する劣質炭の種類にもよるが、電子供与量として、0.2mmol/g−coal程度であると推定されており、これに基づくと、ギ酸の場合0.45質量%(乾燥炭基準)、シュウ酸の場合0.9質量%(乾燥炭基準)である。還元反応に関与しない還元剤は元の分子の状態を保ち、還元能力は維持しているため、還元処理後に未反応の還元剤を回収しリサイクルする装置および操作とすることが望ましい。
【0026】
還元処理時の反応温度は特に限定されない。反応温度を高めると劣質炭表面で還元剤が拡散され易くなり、還元反応が促進されて生産効率が向上する。したがって還元反応時の温度は好ましくは常温以上、より好ましくは40℃以上である。一方、反応温度の上限は石炭の軟化溶融温度よりも低ければ限定されないが、加熱コストや、石炭表面及び石炭基質内部への拡散等を考慮すると65℃以下が好ましく、より好ましくは60℃以下である。反応温度は任意の手段で加熱するなどして調整すればよい。
【0027】
また還元処理時は十分な還元が行われればよく限定されないが、好ましくは10分以上、より好ましくは30分以上、好ましくは6時間以下、より好ましくは2時間以下である。
【0028】
還元処理後、還元処理を行って得られた改質炭を必要に応じて冷却処理、水等で還元剤を除去する洗浄処理、該洗浄処理後の還元処理炭を乾燥させる乾燥処理を行ってもよい。
【0029】
劣質炭の改質に還元剤を用いても、改質炭には還元剤に由来するC、H、O以外の成分が含まれておらず、銑鉄の製造過程に該コークス由来の不要成分が含まれていないため、銑鉄製造用コークスの原料炭として好適である。
【0030】
劣質炭の還元処理はコークス化処理前、好ましくは軟化溶融温度に加熱される前の任意のタイミングで行えばよく限定されない。例えばヤードなどで貯炭している劣質炭に還元処理を施してもよく、あるいは石炭輸送時に還元処理を施してもよい。コークス化処理前に予め劣質炭を還元処理しておくことで、コークス製造のリードタイムを増加させることなく、また現行のコークス製造施設に新たな変更や設備の追加をせずに高強度コークスを製造できるため、生産コストの観点からも望ましい。
【0031】
以下、上記還元処理を行って得られた改質炭をコークス原料としてコークスを製造する方法を説明するが、コークスの製造方法は特に限定されず、従来のコークス製造方法を採用できる。したがってコークスの製造方法は下記例に限定されず、適宜変更を加えることもできる。本発明のコークスの製造方法は混合工程と乾留工程とを有する。
【0032】
<混合工程>
まず、上記改質炭をコークス原料として混合物を製造する。混合工程では、改質炭と必要に応じて添加される他の石炭や粘結材とを混合して混合物を得る工程である。改質炭と粘結材との混合方法は特に限定されず、均一な混合物が得られればよい。混合にはミキサー、ニーダー、混合機など公知の手段を用いればよい。
【0033】
本発明ではコークス原料として改質炭単独で使用してもよいが、改質炭と共に他の石炭を配合して使用してもよい(以下、「原料炭」ということがある)。使用する他の石炭の種類は特に限定されず、強粘結炭、準粘結炭、微粘結炭、及び非粘結炭よりなる群から選ばれる少なくとも1種を用いることが望ましい。本発明において強粘結炭とは、ビトリニット平均反射率Roが1.1超〜1.5%、ギーセラー最高流動度logMFが0.5〜3.5ddpmの石炭、準粘結炭とは、ビトリニット平均反射率Roが0.7〜1.1%、ギーセラー最高流動度logMFが2.5超〜3.5ddpmの石炭、微粘結炭とは、ビトリニット平均反射率Roが0.7〜1.1%、ギーセラー最高流動度logMFが0.5〜2.5ddpmの石炭をいう。なお、ビトリニット平均反射率RoはJIS M8816、ギーセラー最高流動度logMFはJIS M8801に規定されたギーセラープラストメータ法に基づく最高流動度である。
【0034】
本発明の改質炭は劣質炭を原料とするものであるが、上記したように改質炭はコークスの高強度化に寄与する。そのため原料炭として改質炭単独でも高強度コークスが得られるが、改質炭と他の石炭と組み合わせて配合炭とする場合は、改質炭の配合量を増加させると、コークスの強度が向上する。したがって改質炭の配合量を高めれば従来と比べて強粘結炭の配合比率を低減させても高強度コークスが得られる。
【0035】
また強粘結炭、準強粘結炭、微粘結炭、非粘結炭は、複数種組み合わせて用いることもでき、要求されるコークスの特性に応じて適宜組み合わせればよい。強粘結炭の配合量を増加させると、コークスの強度が向上する。また準強粘結炭は強粘結炭に次ぐ粘性を持ち、また高流動性、高膨張性という特性を有するため、これら石炭を適宜組み合わせることで、配合炭の性状を制御できる。また微粘結炭、非粘結炭の配合量を増加させると、コークスの強度が低下する。
【0036】
コークスの強度向上を図るために原料炭の粒径は、工業的に可能な粉砕粒径範囲、および粉塵などを考慮して適宜決定すればよく、限定されない。例えば原料炭は好ましくは80質量%以上、より好ましくは85質量%以上、更に好ましくは90質量%以上の粒径が、3mm以下であることが望ましい。なお、本発明において「粒径」とは、JIS M8801記載の粒度試験法によって求められる値である。
【0037】
本発明では必要に応じて粘結材を用いてもよく、粘結材としては、例えば、石油系ピッチ、石炭系ピッチ、溶剤抽出炭など各種公知の粘結材を使用できる。原料炭と粘結材との混合比率は特に限定されない。本発明ではコークス強度を向上させる観点から、粘結材を配合した後の流動性を調整することが望ましい。流動性は例えばギーセラー最高流動度logMFで好ましくは1.5〜3.5ddpm、より好ましくは2.0〜3.0ddpmに調整することによって、コークス強度を向上できる。また、粘結材の混合比率は要求されるコークス反応性、および使用する原料炭の流動性や反応性などの性状に応じ、適宜混合比率を決めればよい。
【0038】
混合物の製造にあたっては、公知の添加剤などを必要に応じて含有させてもよい。
【0039】
本発明では上記混合物に所望の割合の鉄鉱石を混合してもよい。また混合物は所望の形状に成形してもよい。成形方法は特に限定されず、例えば、平ロールによるダブルロール型成形機、アーモンド型ポケットを有するダブルロール型成形機、単軸プレスやローラータイプの成形機、押し出し成形機等、いずれも採用できる。
【0040】
成形は、室温前後で行う冷間成形、加熱して行う熱間成形のいずれでもよい。熱間成形は、室温を超えて石炭の熱分解温度、例えば400℃未満で行うことが好ましく、より好ましくは250〜350℃である。400℃以上になると石炭が熱分解し、タールが発生して石炭成分を失うことがある。成形圧力は特に限定されず、公知の条件を採用すればよい。
【0041】
上記のような成形を経て得られる成形体の大きさは、原料鉄鉱石や石炭の種類、製造条件、或いは高炉での運用条件によって異なるが、おおむね10〜30mm前後である。
【0042】
<乾留工程>
乾留工程は、上記混合工程で得られた混合物を乾留する工程である。乾留することによって石炭部分がコークス化されてコークスを製造できる。
【0043】
乾留工程は、既存のコークス炉を用いて行うことができる。乾留するときに用いる炉の形状も特に限定されず、室炉を用いてバッチ式で乾留してもよいし、縦型シャフト炉を用いて連続式で乾留してもよい。縦型シャフト炉を用いた場合には、炉の上方から上記成形体を装入し、炉内を上から下に向かって移動する間に乾留され、炉の下方から乾留されて排出される。混合物は必要に応じて予備加熱してもよい。
【0044】
乾留温度や乾留時間などの乾留条件も公知の条件を採用できる、乾留温度は好ましくは650℃以上、より好ましくは700℃以上であって、好ましくは1200℃以下、より好ましくは1110℃以下である。また乾留時間は好ましくは5分以上、より好ましくは10分以上であって、好ましくは24時間以下、より好ましくは12時間以下である。乾留雰囲気は、石炭の酸化防止の観点から、非酸化性ガス雰囲気とすることが好ましい。
【0045】
上記コークスの製造方法には、各工程に悪影響を与えない範囲において、各工程の間あるいは前後に新たな工程を設けてもよい。例えば、原料炭を粉砕する石炭粉砕工程、加熱処理によって軟化溶融性を調整する工程、ごみ等の不要物を除去する除去工程等を行ってもよい。
【0046】
得られた本発明のコークスは、従来の劣質炭を原料炭とするコークスよりも高強度を有しており、具体的には本発明のコークスの強度は0.4MPa以上、好ましくは0.5MPa以上、更に好ましくは1.0MPa以上の十分な強度を有している。
【0047】
本発明の製造方法により得られたコークスは、強度に優れるので、高炉における銑鉄の製造に好適に使用できる。すなわち、本発明の製造方法により得られたコークスは圧壊しない十分な強度を有するため、高炉における銑鉄製造時のガス通気性向上に有効である。
【0048】
高炉における銑鉄の製造方法は、公知の方法を採用すればよく、例えば高炉に石灰石、鉄鉱石とコークスとをそれぞれ層状に交互に積層させて、高炉の下部より熱風、必要に応じて微粉炭を吹き込む方法を挙げることができる。
【実施例】
【0049】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0050】
表1に示す劣質炭を用いて下記(1)〜(3)に基づいてコークス原料を製造した。なお、劣質炭の分析方法は以下の通りである。
元素含有率(dry ash free):JIS M8801で測定される石炭の水分と灰分を除いた有機質等(C、H、O、N)の元素の含有率(質量%)
灰分、及び揮発分:JIS M8812
【0051】
【表1】
【0052】
(1)石炭還元処理A
F炭10gまたはG炭10gと、0.5mol/Lギ酸水溶液250mLとを容量500mLの三角フラスコに入れて温度を65℃に維持しつつ、6時間振とうさせ、還元反応を行った。還元反応後、石炭を取り出して水で洗浄し、乾燥させて還元石炭を得た。F炭を用いた還元石炭を還元処理A−F炭、G炭を用いた還元石炭を還元処理A−G炭とした。
【0053】
(2)石炭還元処理B
F炭10gまたはG炭10gを内容積250mLの密閉容器に充填した後、濃度99%のギ酸3mLを入れた直径2cm、高さ4cmのビーカーを該密閉容器内に静置して容器を密閉した。該密閉容器の温度を60℃に2時間、または6時間維持して還元反応を行った。還元反応後、石炭を取り出して室温まで冷却して還元石炭を得た。F炭を用い2時間維持した還元石炭を還元処理B2−F炭、G炭を用い2時間維持した還元石炭を還元処理B2−G炭、G炭を用い6時間維持した還元石炭を還元処理B6−G炭とした。
【0054】
(3)コークスの製法
内径1.7cm、高さ1.4cmのステンレス製モールドに、未処理のF炭2gまたは未処理のG炭2g、もしくは、上記各条件で還元処理を行なったF炭またはG炭2gを充填し、該石炭に34.8gの荷重がかかるようにステンレス製の蓋を石炭層上部に設置した。該モールドを竪型加熱炉内の容器内部に設置した。該容器内部を流量0.1NL/分の窒素流通下、昇温速度10℃/分で900℃まで昇温し、該温度で30分間保持してコークス化反応を行って各コークス試料を得た。
【0055】
未処理石炭および還元石炭を用いて、下記軟化溶融性測定試験により軟化溶融性を評価、また、未処理石炭および還元石炭より製造した各コークス試料を用いて、下記強度測定試験によりコークス強度を評価した。
【0056】
軟化溶融性測定試験
熱機械分析(島津製作所社製:TMA−50)を用いて各未処理石炭および各還元石炭の軟化溶融性を評価した。未処理石炭または還元石炭を、内径5.2mm、高さ6.0mmのセル内に厚さ約1mmLに充填し、それに直径4.3mmの円柱状の石英製ロッドによって10gfの荷重を掛けながら、窒素雰囲気下で10℃/minで900℃まで加熱し、試料が軟化溶融してロッドが試料層に押し込まれる際のロッドの位置変化を連続的に測定した。本測定では、軟化溶融性が高い試料ほど、ロッドの位置変化が大きく示される。
【0057】
強度測定試験
各コークス試料をそのまま強度測定に供した。精密万能試験機(島津製作所社製オートグラフAGS−10kNJ)を用いてコークスの圧壊強度試験を行ってコークスの強度を評価した。
【0058】
未処理F炭、還元処理A−F炭の軟化溶融性測定結果を
図1に、未処理G炭、還元処理A−G炭の軟化溶融性測定結果を
図2に示す。
図1、
図2より、いずれの劣質炭でもギ酸水溶液による還元処理を行なうことにより、軟化溶融性が向上した。
【0059】
未処理G炭、還元処理B2−G炭、還元処理B6−G炭の軟化溶融性測定結果を
図3に示す。
図3より、ギ酸蒸気による還元処理を行なうことによっても、軟化溶融性が向上したことが分る。
【0060】
未処理F炭、還元処理A−F炭、および未処理G炭、還元処理A−G炭よりそれぞれ製造した各コークスの強度測定結果を
図4に示す。
図4に示すように還元石炭から製造したコークスは、未処理石炭から製造したコークスと比べてコークス強度が約3〜6倍高かった。
【0061】
未処理F炭、還元処理B2−F炭、および未処理G炭、還元処理B2−G炭、還元処理B6−G炭よりそれぞれ製造した各コークスの強度測定結果を
図5に示す。
図5に示すように還元石炭から製造したコークスは、未処理石炭から製造したコークスと比べてコークス強度が約2〜5倍高かった。また還元時間を6時間にした還元処理B6−G炭から製造したコークスは、コークス強度が更に上昇し、還元処理B2−G炭から製造したコークスと比べて2.5倍程度、未処理G炭から製造したコークスと比べて5倍程度強度が向上した。
【0062】
図1、
図2、
図3より、劣質炭の還元処理を行なうことにより、軟化溶融性を向上できることがわかった。これは、還元処理を行なうことで劣質炭中に存在するラジカルを安定化させることにより、軟化溶融温度域における架橋反応を抑制したためであると考えられる。また、
図4、
図5より、劣質炭に還元処理を施した改質炭を用いるとコークス強度を向上できることがわかった。また還元処理時間を長くすると、強度がより向上する傾向を示した。これは還元処理時間が長くなって十分に還元処理が行われた結果、劣質炭に存在する不安定なラジカル量が減少し、軟化溶融性能が向上した結果、より強固なコークス構造が形成されたためであると考えられる。