(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6644669
(24)【登録日】2020年1月10日
(45)【発行日】2020年2月12日
(54)【発明の名称】変換回路
(51)【国際特許分類】
H03F 3/70 20060101AFI20200130BHJP
H03F 3/45 20060101ALI20200130BHJP
【FI】
H03F3/70
H03F3/45 220
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-231484(P2016-231484)
(22)【出願日】2016年11月29日
(65)【公開番号】特開2018-88637(P2018-88637A)
(43)【公開日】2018年6月7日
【審査請求日】2019年3月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】特許業務法人快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】水野 健太朗
(72)【発明者】
【氏名】嶋田 英人
(72)【発明者】
【氏名】牧野 泰明
【審査官】
竹内 亨
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−211763(JP,A)
【文献】
特開2012−169712(JP,A)
【文献】
欧州特許出願公開第00060026(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03F 3/00−3/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電荷量変化素子の電荷量を電圧に変換して出力する変換回路であって、
反転入力端子が前記電荷量変化素子に接続され、非反転入力端子が電源部に接続されている演算増幅器と、
前記演算増幅器の負帰還経路に接続されているキャパシタと、
前記キャパシタに対して並列に接続されているリセット部と、
電位調整回路と、を備えており、
前記リセット部は、直列接続されている第1MOSトランジスタと第2MOSトランジスタを有しており、
前記第1MOSトランジスタと前記第2MOSトランジスタは、前記演算増幅器の前記反転入力端子から出力端子に向けてこの順で接続されており、
前記電位調整回路は、前記第1MOSトランジスタのバックゲートの電位を前記反転入力端子の電位と同電位となるように調整する、変換回路。
【請求項2】
前記第1MOSトランジスタのゲートと前記第2MOSトランジスタのゲートが結線されている、請求項1に記載の変換回路。
【請求項3】
前記電位調整回路は、入力端子が前記演算増幅器の非反転入力端子に接続されているとともに出力端子が前記第1MOSトランジスタのバックゲートに接続されているボルテージフォロア回路を有する、請求項1又は2に記載の変換回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書が開示する技術は電荷量変化素子の電荷量を電圧に変換して出力する変換回路に関する。
【背景技術】
【0002】
キャパシタ等の電荷量変化素子の電荷量を電圧に変換して出力する変換回路が知られている。この種の変換回路は、例えば電荷量検出回路、センサからの出力信号を処理するセンサ信号処理回路等に用いられる。特許文献1は、この種の変換回路の一例を開示する。
【0003】
図3に、特許文献1に開示される変換回路の概略を示す。変換回路10は、第1入力端子T11、第2入力端子T12、出力端子T13、演算増幅器OP10、第1キャパシタC11、リセット部12及び制御端子T14を備える。第1入力端子T11は、演算増幅器OP10の反転入力端子(−)に接続されている。第2入力端子T12は、演算増幅器OP10の非反転入力端子(+)に接続されている。出力端子T13は、演算増幅器OP10の出力端子に接続されている。第1キャパシタC11は、演算増幅器OP10の負帰還経路に接続されており、静電容量C11を有する。リセット部12は、第1キャパシタC11に対して並列に接続されており、MOSトランジスタM11を有する。制御端子T14は、MOSトランジスタM11のゲートに接続されている。この変換回路10は、電荷量変化素子である第2キャパシタC12が第1入力端子T11に接続され、電源部15の定電圧源V10が第2入力端子T12に接続されて用いられる。第2キャパシタC12は、静電容量C12を有する。
【0004】
電荷量変化素子である第2キャパシタC12に入力電圧Vinが入力すると、第2キャパシタC12の一方の電極に電圧Vinが印加される。演算増幅器OP10の反転入力端子(−)と非反転入力端子(+)はバーチャルショート(VM=VP)されているので、第2キャパシタC12の他方の電極には定電圧源V10の定電圧VPが印加されている。これにより、第2キャパシタC12の電極間には電位差ΔVA(=Vin−VP)が発生し、電位差ΔVAに応じた電荷量Q(=ΔVA×C12)が蓄えられる。第2キャパシタC12の他方の電極と第1キャパシタC11の一方の電極の間の配線L11は閉じているので、第2キャパシタC12の他方の電極と第1キャパシタC11の一方の電極の電荷量は一定に保たれる。このため、第1キャパシタC11の一方の電極には電荷量+Qが蓄えられる。これにより、第1キャパシタC11の電極間には電位差ΔVB(=−Q/C11)が発生し、出力端子T13に電圧VO(=VP−ΔVB)が発生する。このように、変換回路10の出力端子T13の電圧VOは、電荷量変化素子である第2キャパシタC12に蓄えられた電荷量Qに起因する。電圧VO、静電容量C11、C12及び定電圧VPを用いて、電荷量変化素子である第2キャパシタC12に蓄えられた電荷量Qを知ることができ、外部から印加された電圧Vinを知ることができる。
【0005】
変換回路10はさらに、リセット部12を備える。第1キャパシタC11と第2キャパシタC12の間の閉じた配線L11の電荷量が意図しない外部要因(宇宙線等)によって変動することがある。リセット部12は、この閉じた配線L11を開放することで配線L1の電荷量を初期値に設定することができる。これにより、変換回路10は、意図しない外部要因の影響を抑えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−211763号公報(特に、
図6)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図3に示されるように、MOSトランジスタM11には、寄生ダイオードD11d,D11sが存在する。特に、MOSトランジスタM11のバックゲートとドレインの間の寄生ダイオードD11dは、バックゲートからドレインに向けて順方向となるように存在する。このため、この寄生ダイオードD11dを介してリーク電流が流れると、第1キャパシタC11と第2キャパシタC12の間の閉じた配線L11の電荷量が変動してしまう。このため、変換回路10は、正確な変換動作を行うことができないことがある。
【0008】
本明細書は、リセット部が設けられた変換回路において、リセット部のリーク電流の影響を抑える技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本明細書が開示する変換回路の一実施形態は、電荷量変化素子の電荷量を電圧に変換して出力する変換回路であり、演算増幅器とキャパシタとリセット部と電位調整回路を備える。演算増幅器は、反転入力端子が電荷量
変化素子に接続され、非反転入力端子が電源部に接続されている。キャパシタは、演算増幅器の負帰還経路に接続されている。リセット部は、キャパシタに対して並列に接続されている。リセット部は、直列接続されている第1MOSトランジスタと第2MOSトランジスタを有する。第1MOSトランジスタと第2MOSトランジスタは、演算増幅器の反転入力端子から出力端子に向けてこの順で接続されている。電位調整回路は、第1MOSトランジスタのバックゲートの電位を反転入力端子の電位と同電位となるように調整する。この実施形態の変換回路では、第1MOSトランジスタに存在する一方の寄生ダイオード(演算増幅器の反転入力端子から出力端子に向けて見たときに、リセット部に存在する寄生ダイオードのうちの最も反転入力端子側にある寄生ダイオード)の両端電圧が等しくなる。これにより、リセット部のリーク電流によって電荷量変化素子とキャパシタの間の閉じた配線の電荷量が変動することが抑えられる。この結果、この実施形態の変換回路は、正確な変換動作を行うことができる。さらに、この実施形態の変換回路は、第2MOSトランジスタが設けられているので、第1MOSトランジスタの他方の寄生ダイオードを介して流れるリーク電流も抑えられており、安定して変換動作を行うことができる。
【0010】
上記実施形態の変換回路では、第1MOSトランジスタのゲートと第2MOSトランジスタのゲートが結線されていてもよい。この実施形態の変換回路では、第1MOSトランジスタと第2MOSトランジスタが共通の制御信号で制御されるので、回路構成が簡素化される。
【0011】
上記実施形態の変換回路では、電位調整回路は、入力端子が演算増幅器の非反転入力端子に接続されているとともに出力端子が第1MOSトランジスタのバックゲートに接続されているボルテージフォロア回路を有していてもよい。この実施形態の変換回路では、バーチャルショートによって、演算増幅器の反転入力端子と非反転入力端子の電位が等しい。さらに、ボルテージフォロア回路が第1MOSトランジスタのバックゲートの電位を非反転入力端子の電位と等しくなるように維持する。これにより、この実施形態の変換回路では、第1MOSトランジスタのバックゲートの電位が反転入力端子の電位と同電位となるように調整される。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1に示されるように、変換回路1は、第1入力端子T1、第2入力端子T2、出力端子T3、演算増幅器OP1、第1キャパシタC1、リセット部2、電位調整回路4及び制御端子T4を備える。第1入力端子T1は、演算増幅器OP1の反転入力端子(−)に接続されている。第2入力端子T2は、演算増幅器OP1の非反転入力端子(+)に接続されている。出力端子T3は、演算増幅器OP1の出力端子に接続されている。
【0014】
第1キャパシタC1は、演算増幅器OP1の反転入力端子(−)と出力端子の間に接続されており、演算増幅器OP1の負帰還経路に接続されている。第1キャパシタC1は、静電容量C1を有する。
【0015】
リセット部2は、演算増幅器OP1の反転入力端子(−)と出力端子の間に接続されており、第1キャパシタC1に対して並列に接続されている。リセット部2は、第1MOSトランジスタM1と第2MOSトランジスタM2を有する。第1MOSトランジスタM1と第2MOSトランジスタM2は、演算増幅器OP1の反転入力端子(−)から出力端子に向けてこの順で接続されている。第1MOSトランジスタM1のゲートと第2MOSトランジスタM2のゲートが結線されており、第1MOSトランジスタM1と第2MOSトランジスタM2は同期して動作するように構成されている。
【0016】
電位調整回路4は、ボルテージフォロア用オペアンプOP2を有しており、第1MOSトランジスタM1のバックゲートの電位を演算増幅器OP1の反転入力端子(−)の電位と同電位となるように調整するように構成されている。ボルテージフォロア用オペアンプOP2は、入力端子が非反転入力端子(+)に接続されているとともに出力端子が第1MOSトランジスタM1のバックゲートに接続されている。バーチャルショートによって反転入力端子(−)の電位VMと非反転入力端子(+)の電位VPが等しい。ボルテージフォロア用オペアンプOP2は、電位VP(即ち、電位VM)を出力する。このため、第1MOSトランジスタM1のバックゲートの電位が反転入力端子(−)の電位VMと同電位となるように調整される。
【0017】
制御端子T4は、第1及び第2MOSトランジスタM1,M2のゲートに接続されている。第1MOSトランジスタM1と第2MOSトランジスタM2は、制御端子T4に入力する制御信号SWによって制御される。
【0018】
変換回路1は、電荷量変化素子である第2キャパシタC2が第1入力端子T1に接続され、電源部5の定電圧源V1が第2入力端子T2に接続されて用いられる。第2キャパシタC2は、静電容量C2を有する。
【0019】
次に、変換回路1の動作を説明する。電荷量変化素子である第2キャパシタC2に入力電圧Vinが入力すると、第2キャパシタC2の一方の電極に電圧Vinが印加される。演算増幅器OP1の反転入力端子(−)と非反転入力端子(+)はバーチャルショート(VM=VP)されているので、第2キャパシタC2の他方の電極には定電圧源V1の定電圧VPが印加されている。これにより、第2キャパシタC2の電極間には電位差ΔVA(=Vin−VP)が発生し、電位差ΔVAに応じた電荷量Q(=ΔVA×C2)が蓄えられる。
【0020】
第2キャパシタC2の他方の電極と第1キャパシタC1の一方の電極の間の配線L1が閉じているので、第2キャパシタC2の他方の電極と第1キャパシタC1の一方の電極の電荷量は一定に保たれる。このため、第1キャパシタC1の一方の電極には電荷量+Qが蓄えられる。これにより、第1キャパシタC1の電極間には電位差ΔVB(=−Q/C1)が発生し、出力端子T3に電圧VO(=VP−ΔVB)が発生する。このように、変換回路1の出力端子T3の電圧VOは、電荷量変化素子である第2キャパシタC2に蓄えられた電荷量Qに起因する。電圧VO、静電容量C1、C2及び定電圧VPを用いて、電荷量変化素子である第2キャパシタC2に蓄えられた電荷量Qを知ることができ、外部から印加された電圧Vinを知ることができる。
【0021】
変換回路1はさらに、リセット部2を備えることを特徴とする。リセット部2の第1及び第2MOSトランジスタM1,M2は、電荷量変化素子である第2キャパシタC2に入力電圧Vinが入力するのに先立って、短時間だけオンするように制御される。第1キャパシタC1と第2キャパシタC2の間の閉じた配線L1の電荷量が意図しない外部要因(宇宙線等)によって変動することがある。リセット部2は、電荷量変化素子である第2キャパシタC2に入力電圧Vinが入力するのに先立って、この閉じた配線L1を開放することで配線L1の電荷量を初期値に設定することができる。これにより、変換回路1は、意図しない外部要因の影響を抑えることができる。
【0022】
図1に示されるように、第1MOSトランジスタM1には寄生ダイオードD1d,D1sが存在し、第2MOSトランジスタM2には寄生ダイオードD2d,D2sが存在する。寄生ダイオードD1dは第1MOSトランジスタM1のバックゲートとドレインの間に存在し、寄生ダイオードD1sは第1MOSトランジスタM1のバックゲートとソースの間に存在する。寄生ダイオードD2dは第2MOSトランジスタM2のバックゲートとドレインの間に存在し、寄生ダイオードD2sは第2MOSトランジスタM2のバックゲートとソースの間に存在する。
【0023】
変化回路1では、電位調整回路4が第1MOSトランジスタM1のバックゲートの電位を反転入力端子(−)の電位と同電位となるように調整する。このため、第1MOSトランジスタM1に存在する寄生ダイオードD1dの両端電圧が等しくなる。この寄生ダイオードD1dは、演算増幅器OP1の反転入力端子(−)から出力端子に向けて見たときに、リセット部2に存在する寄生ダイオードのうちの最も反転入力端子側にある寄生ダイオードである。これにより、リセット部2のリーク電流によって第2キャパシタC2と第1キャパシタC1の間の閉じた配線L1の電荷量が変動することが抑えられる。このような寄生ダイオードD1dのリーク電流は高温(特に100℃以上)で急増することが知られている。変換回路1は、このようなリーク電流を抑えることができるので、高温下でも安定して変換動作を行うことができる。
【0024】
変化回路1のリセット部2は、第1MOSトランジスタM1に対して直列接続された第2MOSトランジスタM2を有することを特徴とする。例えば、第2MOSトランジスタM2が設けられていない場合、反転入力端子(−)の電位VMが出力端子T3の電位VOよりも大きくなると(VM>VO)、第1MOSトランジスタM1の寄生ダイオードD1sを介してボルテージフォロア用オペアンプOP2から出力端子T3に向けて大電流が流れ、変換回路1の変換動作が不安定になる可能性がある。一方、変換回路1は、第2MOSトランジスタM2が設けられているので、第1MOSトランジスタM1の寄生ダイオードD1sに対して逆向きに接続されている寄生ダイオードD2dが存在し、そのような大電流が流れることが抑えられている。これにより、変換回路1は、安定して変換動作を行うことができる。
【0025】
上記実施形態の変換回路1では、第2入力端子T2に電源部5の定電圧源V1が直接的に接続され、第2入力端子T2に定電圧VPが印加されていた。電源部5は、第2入力端子T2に定電圧VPを印加する限りにおいて、様々な回路構成を有し得る。例えば、
図2に示されるように、電源部5は、定電圧源V2に接続される複数の抵抗素子R10,R20,R30を介して第2入力端子T2に定電圧VPを印加するように構成されていてもよい。
【0026】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0027】
1:変換回路
2:リセット部
4:電位調整回路
C1:第1キャパシタ
C2:第2キャパシタ
M1:第1MOSトランジスタ
M2:第2MOSトランジスタ
OP1:演算増幅器
OP2:ボルテージフォロア用オペアンプ
T1:第1入力端子
T2:第2入力端子
T3:出力端子
T4:制御端子
V1:定電圧源