(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6644700
(24)【登録日】2020年1月10日
(45)【発行日】2020年2月12日
(54)【発明の名称】人の皮膚の状態を測定する装置
(51)【国際特許分類】
A61B 5/05 20060101AFI20200130BHJP
A61B 5/00 20060101ALI20200130BHJP
【FI】
A61B5/05 B
A61B5/00 M
【請求項の数】8
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-557934(P2016-557934)
(86)(22)【出願日】2015年3月13日
(65)【公表番号】特表2017-509407(P2017-509407A)
(43)【公表日】2017年4月6日
(86)【国際出願番号】AT2015050064
(87)【国際公開番号】WO2015139065
(87)【国際公開日】20150924
【審査請求日】2018年2月6日
(31)【優先権主張番号】A50191/2014
(32)【優先日】2014年3月17日
(33)【優先権主張国】AT
(73)【特許権者】
【識別番号】507313412
【氏名又は名称】エーアイティー オーストリアン インスティテュート オブ テクノロジー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】AIT Austrian Institute of Technology GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100082887
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 利春
(74)【代理人】
【識別番号】100090918
【弁理士】
【氏名又は名称】泉名 謙治
(74)【代理人】
【識別番号】100181331
【弁理士】
【氏名又は名称】金 鎭文
(74)【代理人】
【識別番号】100183597
【弁理士】
【氏名又は名称】比企野 健
(72)【発明者】
【氏名】オーバーライトネル アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】ルーフ ローベルト
(72)【発明者】
【氏名】マインドル ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】バイシュタイナー マルティン
【審査官】
門田 宏
(56)【参考文献】
【文献】
特表2013−517092(JP,A)
【文献】
蘭国特許発明第02009123(NL,C)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/053
A61B 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
人の皮膚の状態を測定する装置であって、皮膚トポグラフィに適合し、皮膚表面の少なくとも1箇所の固定位置に付着させた状態で貼り付けられるように、非導電性プラスチックシート及び/又はポリマーが結合した織物シートからなる接着性の平坦なフィルムシート(1)を備え、この平坦なフィルムシートには、センサ、センサに接続された連携する電流又は電圧供給ユニット、センサデータ処理ユニット、及びアンテナに接続された通信ユニットが埋め込まれ、
前記平坦なフィルムシート(1)を貫通する略中央に配置された凹部(2)を備え、皮膚の特定の領域を目視観察すること、及び/又は外側(as)から人の皮膚(9)に化粧品又は医薬製剤(91)を、繰り返して直接塗布することを可能にしており、
前記平坦なフィルムシート(1)の皮膚側(hs)に付され、前記皮膚(9)に直接あてがわれるセンサとして、少なくとも2個の間隔を置いて配置された接触電極(3、3’)のうちの少なくとも一対の連携する等面積の接触電極が、配置され、
前記接触電極はそれぞれ、前記平坦なフィルムシート内に配線された導線(50)によって、外部(as)からNFC技術を用いて電流を供給可能な前記電圧供給ユニットを介して、インピーダンス、抵抗又は静電容量測定ユニット(4)に接続されており、
前記インピーダンス、抵抗又は静電容量測定ユニットから、受動通信ユニット(6)が、抵抗及び/若しくは静電容量測定データを供給可能にされ、一方、アンテナループ(7)が、同様に、前記平坦なフィルムシート(1)のプラスチックシート及び/又はポリマーが結合した織物シート内に配置され、少なくとも前記凹部(2)の周囲を取り囲み、前記平坦なフィルムシート(1)の縁(11)に沿って巡り、
受動通信ユニット(6)には、携帯電話、スマートフォン、又は読み取り装置のグループに属するNFCが可能な通信装置により、皮膚の水分及び/又は、皮膚の障害若しくは傷の状態のデータ、及びそれらの経時変化を、外部(as)から直接アクセスすることができる、
装置において、
前記平坦なフィルムシート(1)における凹部(2)が、長方形若しくは正方形、円形、六角形又は八角形の形状を有していること、及び
前記平坦なフィルムシート(1)が、合計で少なくとも4個の電極(3、3’)を構成する、それぞれ互いに割り当てられた少なくとも2個の2倍すなわち2対の正反対の側から向かい合う真っ直ぐな電路を備え、互いに向かい合う縁(31、31’)すなわち境界部が、互いに平行に、それぞれ前記凹部(2)の互いに向かい合う二つの縁(21、21’)の近傍で延びており、これらの電極は、インピーダンス、抵抗又は静電容量測定ユニット(4)に接続されていることを、
特徴とする皮膚の状態を測定する装置。
【請求項2】
前記凹部(2)の正反対の側から向かい合う縁(21、21’)と、前記接触電極(3、3’)の凹部(2)側の正反対の側から向かい合う縁(31、31’)との間の距離(a,a’)が、2〜10mmであり、
個々の前記接触電極(3、3’)の凹部(2)の縁側の縁(31、31’)の長さが、前記縁が直線状の前記凹部(2)の辺の長さ又は円形の前記凹部(2)の円の測定電極の数に対応する弦に対する長さの75〜125%である、
ことを特徴とする請求項1に記載の皮膚の状態測定装置。
【請求項3】
複対の前記電極(3、3’)のうちの少なくとも一対が、それぞれ2個の副電極、一方が電力入力用で、他方が電圧測定用の副電極を、前記電極(3、3’)当たり備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載の皮膚の状態測定装置。
【請求項4】
導電性材料からなる細かい網又はフィルムの形態をした平坦な遮蔽ユニット(8)が、一方では、前記電極(3、3’)の上面(Os)、前記電圧供給ユニット(4)、測定ユニット(5)、前記受動通信ユニット(6)及び前記導線(50)と、もう一方では、前記平坦なフィルムシート(1)の外縁(11’)又は前記凹部(2)の近傍の、前記凹部の縁(21、21’)と前記電極の凹部(2)側の縁(31、31’)との間のスペース内にある前記アンテナループ(7)との間の層内に配置されていることを特徴とする請求項1〜3の何れか1に記載の皮膚の状態測定装置。
【請求項5】
前記皮膚(9)に直接あてがわれる前記電極(3、3’)の下面には、接触強化層(33)が、備えられるか又は備えることが可能になっていることを特徴とする請求項1〜4の何れか1に記載の状態測定装置。
【請求項6】
前記インピーダンス、抵抗又は静電容量測定ユニット(5)並びに受動通信ユニット(6)が、共通のチップ内に配置されていることを特徴とする請求項1〜5の何れか1に記載の皮膚の状態測定装置。
【請求項7】
測定電極及び他の構成要素の電力供給が、外部からの通信装置を通じた電磁結合により、又は、前記平坦なフィルムシート(1)に組み込まれた小型電池を用いることにより行われることを特徴とする請求項1〜6の何れか1に記載の皮膚の状態測定装置。
【請求項8】
前記平坦なフィルムシート(1)は、下面すなわち皮膚側(hs)が、皮膚に優しい自動接着性材料(13)で覆われていることを特徴とする請求項1〜7の何れか1に記載の皮膚の状態測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサに接続されたセンサデータ測定処理ユニットと、連携する電流又は電圧供給ユニットと、アンテナに接続された通信ユニットが埋め込まれた、人の皮膚の少なくとも1箇所に付着させた状態で貼り付けられる、非導電性の可撓性材料からなるプラスタを用いた人の皮膚の状態を測定する装置に関する。
【0002】
したがって、本発明による新規な装置は、第1に、皮膚の水分及びその経時変化を、第2に、皮膚の障害、怪我若しくは手術の後の傷、病理的な皮膚の変化などの状態及びそれらの経時変化を、皮膚インピーダンスを確認しモニタすることにより、測定することを目的としている。
【背景技術】
【0003】
人の外観及び健康にとっての必須の要素のうちの一つが、水分に起因する素肌、特に顔の皮膚の状態であることが以前より知られている。
【0004】
この知識に基づき、現在の研究の大部分が、老化及び、特に、主な目的が特に新たに開発された又は新たに開発されることになる化粧水、乳液、クリーム及び軟膏の持続可能性を向上させることである化粧品部門における努力に関連している。
【0005】
皮膚に塗布する化粧品、並びに必要に応じて医薬製剤、化粧用製品及びそのための原料の有効性と効果の測定用に、皮膚の水分、皮膚の弾力性及び経皮水分喪失量(TEWL)と、それらのそれぞれの所定の観察期間内における変化を測定する広く知られた方法が用いられている。
【0006】
現在、特に、赤外分光法、共振周波数測定、核磁気共鳴(NMR)法、皮膚の電気抵抗、インピーダンス若しくは静電容量の測定などの種々の方法が通例用いられ、皮膚水和を測定している。皮膚水和の測定に用いられる静電容量測定装置のセンサは、少なくとも1個のコンデンサを備えている。静電容量測定装置のヘッドが、皮膚に押圧されると、角質層が、30℃において約80の比較的高い範囲の水の誘電率が用いられるコンデンサの電界が変化する域に達する。基本的に、皮膚の誘電率は、皮膚がより湿っているほど、より大きく測定され、また、皮膚がより乾いているほど、より小さく測定される。皮膚の含水量は、静電容量値を変化させる。この静電容量値は、静電容量測定装置において、皮膚のそれぞれの含水量に対応するデジタル測定値に変換される。
【0007】
この点で、例えば、持続性の皮膚水和値が、ナノ構造の脂質担体(NLC)を含むこともあり含まないこともあるコエンザイムQ10含有クリームの場合には、相当異なることが証明されている。皮膚の水分は、何らかのコエンザイムQ10含有クリームを7日間以上塗ることによって、相当増加することが分かっている。皮膚の水分は、NLCを含むクリームを塗ると、研究期間全体にわたって増加する一方、NLCを含まないクリームを用いると、皮膚の水分は、初めは増加するがその後は一定の低いレベルにとどまる。
【0008】
本発明による新規な装置は、決して皮膚に塗布した化粧品の効果の観察に限定されるものではなく、抵抗部材のインピーダンス及び/又は皮膚の静電容量を測定することにより、傷、障害、微生物による悪影響又は起こりうる内分泌物の変化によって生じたものであろうとなかろうと、皮膚の変化をモニタするように特に適合化されている。
【0009】
国際公開第2013/049716 A1号は、一般的に、表面、特に皮膚の表面及びその近傍で支配的な物理的及び/又は化学的な状態又は関係を測定し究極的には表示するセンサを有する可撓性の装置を開示しており、この装置においては、センサが、この測定タスク用に備わっており、センサは、センサによって供給されるデータ用の処理ユニットと、特に計算されたデータを外部に、すなわち、従来の通信装置、例えば、携帯電話、スマートフォンなどに流布させることを目的としたアンテナを有する通信ユニットと接続されている。
米国特許公開第2011/178375号は、人の皮膚の状態を測定する装置であって、皮膚トポグラフィに適合し、皮膚表面の少なくとも1箇所の固定位置に貼り付けられてそのまま付着した状態の、非導電性のプラスチックシート及び/又はポリマーが結合した織物シートからなる接着性の平坦なフィルムシートを備え、この平坦なフィルムシートには、センサ、センサに接続された連携する電流又は電圧供給ユニット、センサデータ処理ユニット、及びアンテナ通信ユニットが埋め込まれ、
プラスチックシート及び/又はポリマーが結合した織物シートにおいて、特に皮膚プラスタ用の平坦なシートを貫通し実質的に中央に配置された窓状の凹部を備え、特定の皮膚の部位を目視観察すること及び/又は外側(as)から人の皮膚に化粧品及び/又は医薬製剤を繰り返して直接塗布することを可能にしており、
少なくとも2個の接触電極が、プラスチックシート及び/又はポリマーが結合した織物シート、特に皮膚プラスタ用の平坦なシートの皮膚側に、センサとして、間隔を置いて配置され、皮膚に直接あてがうことができ、
接触電極はさらに、プラスチックシート及び/又はポリマーが結合した織物シート内に配線された導線によって、NFC技術を用いて外部(as)から電流を供給可能な電圧供給ユニットを介して、同じインピーダンス並びに抵抗及び/若しくは静電容量測定ユニットに接続されており、
インピーダンス並びに抵抗及び/若しくは静電容量測定ユニットから、受動通信ユニットが、抵抗及び/又は静電容量測定データを供給可能にされ、一方、アンテナループが、同様にプラスタのプラスチックシート及び/又はポリマーが結合した織物シート内に配線され、少なくとも窓状の凹部の周囲を取り囲み、平坦なフィルムシートの縁に沿って巡らされており、
受動通信ユニットには、携帯電話、スマートフォン、又は読み取り装置のグループに属するNFCが可能な通信装置により、皮膚の水分及び/又は、皮膚の障害若しくは傷の状態のデータ、及びその経時変化を、外部(as)から直接アクセスすることができる、
皮膚の状態を測定する装置を開示している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明
が取り組む課題は、安価に製
造することができ、観察する皮膚の部位に貼り付けて、より長期間にわたって交換することなしに、相当長い間その部位にとどまり、例えば化粧品による処理の結果としての皮膚の反応又は挙動、適切な場合には何度か繰り返される医学的な処置後の傷などの挙動の目視観察さえも提供する
実地に扱いやすい装置を創出することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の目的は、皮膚の状態を測定する装置であって、
人の皮膚に貼り付けることができ、その皮膚に動かずにぴったりと付着させることのできる平坦なシートとして、この装置が、好ましくは自己接着性の、それ自体が非導電性のプラスチック及び/又は必要に応じてポリマーが結合した皮膚トポグラフィに適応する織物フィルムからなるフィルム、特に皮膚プラスタ用の平坦なシートを有しており、
このフィルム、特に皮膚プラスタ用の平坦なシートは、実質的にその中央に配置され、フィルム、特に皮膚プラスタ用の平坦なシート1を貫通する窓状の凹部2を備え、障害、傷などを有することがある皮膚のそれぞれの場所を目視観察すること、及び/又は外側(as)から人の皮膚9に化粧品及び/又は医薬製剤91を、特に繰り返して直接塗布することを可能にしており、
フィルム、特に皮膚プラスタ用の平坦なシートの下側、すなわち皮膚側に貼り付けることができ、傷つくことがある皮膚に直接あてがうことのできるセンサとして、少なくとも一対の互いに割り当てられた、好ましくは面積が等しい2個の接触電極が、互いに間隔を置いて、正反対の側から互いに向かい合って配置されており、
接触電極は各々、プラスチック及び/又は織物フィルム内に配置された導線を介して、同様に、プラスチック及び/又は織物フィルム内に配置された、外部から電流又は電圧を、特にNFC技術を用いて供給可能な電圧供給ユニットと、電圧供給ユニットと電気的に接続された、少なくとも1個のインピーダンス、抵抗又は静電容量測定ユニットに接続されており、
インピーダンス、抵抗又は静電容量測定ユニットから、アンテナループ(7)を有する、トランスポンダとして構成されているのが好ましい受動通信ユニットが、抵抗及び/又は静電容量測定データを供給可能にされ、アンテナループは、受動通信ユニットから始まり、同様に、フィルム、特に皮膚プラスタ用の平坦なシートのプラスチック及び/又は織物フィルム内を、少なくとも窓状の凹部(2)の周囲を取り囲んで巡り、好ましくはフィルム、特に皮膚プラスタ用の平坦なシート(1)の縁(11)に沿って、フィルム、特に皮膚プラスタ用の平坦なシート(1)の縁(11)の近傍に好ましくは配置されており、
それらの測定データに関しては、NFCが可能な通信装置、例えば、適切な「アプリケーション」を備えたNFCが可能な通信装置、特に携帯電話、スマートホンリーダーなどにより、皮膚の水分及び/又は皮膚の障害若しくは皮膚の傷の状態のデータ、並びに適用可能であれば、それらの経時変化を、外部(as)から直接、呼び出すことができることを特徴とする皮膚の状態を測定する装置を提供することである。
【0012】
現在では普通なように、インピーダンス、抵抗及び/又は静電容量の測定値を、例えば、湿り具合又は他の特徴的な皮膚のパラメータデータに変換する適正
な「アプリケーション」を備えた携帯電話、読み取り装置又はスマートフォンなどの通信受信装置が利用できると、測定データ処理及び計算ユニットの、いずれにせよ、非常に小さなハードウェア構成部材を収納するスペースしか得られない、皮膚の水分の測定用に提供された本発明における新規なフィル
ム、特に皮膚プラスタ用の平坦
なシート内への収納
を、一般的に不要にすることができる。
【0013】
本発明による皮膚の状態測定装置の本質的な利点は、特に、フィルム、特に皮膚プラスタ用の平坦なシートを貫通する
新規な凹部にある。この
新規な凹部により、本発明によるフィルム、特に皮膚プラスタ用の平坦なシート全体を、その都度繰り返して皮膚からはがす必要なしに、例えば、検査する化粧品が皮膚に吸収された後、追加の適用量の化粧品を塗布するときに、新たな割当量の化粧品を、露出した、そのため、
新規な凹部を通じて外部からアクセスすることのできる皮膚の領域又は皮膚の損傷した領域に、外部から直接塗布できることが、初めて可能にな
る。
【0014】
凹部
を有する「持続性プラスタ」により、経過、例えば、医療用の軟膏、創傷用の粉剤などの定期的に繰り返される塗布を伴うことのある傷の回復の経過を、観察及びモニタすることができ、今まで必要であったプラスタの交換を不要としたにもかかわらず、例えば回復過程の目視検査が、可能になる。こうした「創傷」の例には、火、切り口に起因する創傷、慢性の創傷、例えば、糖尿病性足病変、圧迫性潰瘍、潰瘍、狼瘡などがある。
【0015】
そのため、本発明におけるフィルム、特に皮膚プラスタ用の平坦なシートは
、化粧品又は創傷治療剤を塗布するたびに用いられる新しいフィルム、特に皮膚プラスタ用の平坦なシート
と、もはや取り代える必要がなく、したがって、このことが、化粧品又は医薬製剤、例えばクリーム又は軟膏などが、以前に、通常は数回、塗布された皮膚のその部位又はその領域において、化粧品の新たな塗布が正確に行えることを十分に確
保される。
【0016】
さらに、測定電極は、連続して行われる測定の各々に関して、常
に一つの同じ場所で、互いに対して同じ距離にあり、測定の準備において高度の一貫性を得ることができる。このことは、インピーダンスが、測定電流の侵入深度、したがって測定する組織の体積だけでなく、電極間の距離にも大きく左右されることが知られているので、非常に重要である。粘着電極を手で貼り付ける場合には、それらの粘着電極の位置を、正確に記憶していなければならず、むしろ、身体のそれぞれの部分に直接「書き込む」方がよいが、交換するたびに、異なる位置、タイプ、経時変化などの結果としての異なる電極特性、変化する圧力などに起因して変動する危険性が非常に高い
。
【0017】
本発明の他の
利点の詳細を、以下に示す。
【0018】
傷の状態の判定に用いるのが、非常に容易になる。
【0019】
本発明によるプラスタを繰り返して取り外す必要がなく、そのため、傷の領域が刺激されることがない。
【0020】
傷は、必要に応じて、覆われていないまま(空気乾燥)でもよく、又は、例えば透明なフィルム、織物などによって覆われていてもよい。
【0021】
傷を、凹部を通じて何時でも、点検することができ、クリーム、粉剤などで処置することができる。
【0022】
それでもなお、これまで普通に行われてきた個々の粘着電極の手で行う貼り付けと比較して、測定準備が、自動的に一定している。
【0023】
本発明による新規な装置の応用分野に関しては、一方で、特に化粧品と医薬品の分野における科学的な研究開発があり、もう一方では、人に対する実地検査、特にこれらの人の治療、すなわち、特に傷の判定に関連して、もっと広い範囲まで適用できる。
【0024】
本発明によるフィルム、特に皮膚プラスタ用の平坦なシートにおける凹部が、実質的に長方形若しくは正方形、円形、楕円形又は八角形の形状を有していると好ましく、可能な範囲で、互いに対になって割り当てられた測定電極の、互いに向かい合って配置された、特に直線状の境界部すなわち縁が互いに平行に延びているとさらに好ましい。
【0025】
本発明の好ましい実施の形態によれば、凹部の正反対の側から向かい合う縁と、測定電極の正反対の側から向かい合う凹部側の縁との間の距離が2〜10mmであり及び/又は凹部の縁の間の凹部の開口幅と、接触電極の互いに向かい合う互いに平行な縁の間隔との比率が少なくとも3〜10であり、個々の接触電極の凹部の縁側の縁の長さが、縁が直線状の凹部の辺の長さ又は円形凹部の円の測定電極の数に対応する弦に対する長さの75〜125%である。
【0027】
この点で、凹部の上記の形状は、
きわめて重要なことが強調されるべきである。
【0028】
電極又は対の電極
の好ましい配置は、以下の通りである:
並列になっていて、余裕性を持たせ、又は一次元の離散化(one−dimensional discretization)をもたらす、複数の対(2線式)又は四つ組(4線式)、
(異方性の検知及び評価に有用な)互いに直角な2以上の対(2線式)又は四つ組(4線式)、
より好ましくは、円形の凹部の周囲に八角形又は円状に配置され、数学的な方法(例えば、線形背面投影:linear rear projection)を用いて2次元のマップを構成する8個の対又は四つ組の電極。具体的用途:例えば、傷の大きさの推移のモニタリング。
【0029】
電極への通電に関しては、この目的で、例えば以下の種類及び方法:直流及び交流、定電流法及び定電圧法、単一周波数、多重周波数或いは「掃引」(0〜2MHzが典型的である)が、考えられる。
【0032】
さらに、複対の電極のうちの少なくとも一対が、各々2個の副電極
、一方が電力入力用でもう一方が電圧測定用の副電極を、電極当たり備えていることが好ましい。
【0036】
導電性材料からなる細かい網又はフィルムの形態
をした平坦な遮蔽ユニットが、一方では、電極の上面
、電圧供給ユニット、測定ユニット、通信ユニット及びそれらの導電性
の接続部と、もう一方では、平坦な
フィルムシートの外
縁又は凹部
の近傍の、凹部の縁と電極の凹部側の縁との間のスペース内にあるリング状の内蔵NFCアンテナとの間の層内に配置され、外部の影響による測定結果における影響及び乱れを
可能な限り防止することが好ましい。
【0038】
測定電極と検査をする各人の皮膚との間
の良好な表面接触を確保することにより再現可能な結果を得ることが好ましく、これは、
検査をする人の皮膚に直接
あてがう電極の下面に、接触強化層を備えること又は備えてもよいことで達成することができる。
【0039】
特に、スペースの理由で、インピーダンス、抵抗若しくは静電容量測定ユニット、必要に応じて中央データ処理ユニット、及び通信ユニットが、共通のチップ内に配置されていることが好ましい。
したがって、アンテナは、本発明によるプラスタにおいて測定ユニットの隣に配置してよく、こうすると、実際に本発明によるプラスタの面積を大きくするが、実際面ではプラスタの邪魔にはならない。
【0040】
さらに、測定
ユニット及び他の構成要素の電力供給が、外側からの通信装置を通じた誘導結合又は電磁結合により、又は
適切な場合には、本発明によるフィルム、特に皮膚プラスタ用の平坦なシートに組み込まれた小型電池
を用いることにより行われることに、留意されるべきである。
最後に、本発明によるフィルム、特に皮膚プラスタ用の平坦なシートは、下側すなわち皮膚側が、皮膚に優しい自動接着性の材料で覆われていると、特に本発明による新規なプラスタ状装置によって、多くの場合に敏感である皮膚への刺激ができる限り防止される。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図1】例えば、皮膚の水分測定用の、本発明の代表例としてのプラスタ状装置100の断面図を示している。
【
図2】例えば、皮膚の水分測定用の、本発明の代表例としてのプラスタ状装置100の平面図を示している。
【
図3】本発明のプラスタ状装置における電極の配置と凹部の他の可能な構成を示している。
【
図4】本発明のプラスタ状装置における電極の配置と凹部の他の可能な構成を示している。
【発明を実施するための形態】
【0042】
本発明を、図面を参照して、詳細に説明する。
【0043】
図1及び
図2は、例えば、皮膚の水分測定用の、本発明の代表例としてのプラスタ状装置100の断面図及び平面図を示しており、この本発明の代表例としてのプラスタ状装置においては、フィルム、特に皮膚プラスタ用の平坦なシート1が、接着剤又は(自己)接着性層13によって、例えば、人の検査される皮膚9の領域に、ぴったりと貼り付けられる。一方、
図3及び
図4は、電極の配置及び凹部の様々な他の可能な構成を示している。
【0044】
図1及び
図2から、非導電性のプラスチック又は織物シートを備えたフィルム、特に皮膚プラスタ用の平坦なシート1
の中央部を、この実施の形態では略正方形の凹部2が
貫通しており、
この非導電性のプラスチック又は織物シート
を備えたフィルム
、特に皮膚プラスタ用の平坦なシートにおいては、凹部のそれぞれ互いに平行に向き合った縁21、21’に沿って、互いに
連携する電極3、3’のそれぞれ互いに平行に向き合った縁31、31’が延びており、これらの測定電極は、下
側すなわち皮膚側(hs)に接触強化層33を有しており、そのため、直接又は接触強化層33を介して、皮膚9との電気的接触状態になることが明確に示されている。
【0045】
例えば、より長い期間にわたって検査する水分を含んだ化粧品91の層が、皮膚9、すなわち凹部2の底部における皮膚の領域に塗布され、この皮膚の領域は、凹部2を通じて外側(as)から観察することができる。
【0046】
同様に、凹部2を皮膚9の傷全体にわたって配置してもよく、この箇所にも、医療用の軟膏、粉剤などを定期的に傷に塗布してよい。
【0047】
測定電極3、3’は、導線50を介して、インピーダンス、抵抗又は静電容量測定ユニット4、測定データ処理及び計算ユニット5並びに通信ユニット6に接続され、これらのユニットには、導線ループ又はアンテナ7が接続されており、この導線ループ又はアンテナは、凹部2の周囲を巡って、外部の受信機(図示せず)、例えば、携帯電話、読み取り装置又はスマートフォンなど
と(無線
)接続されており、それにより、緊急の皮膚水分値又は皮膚状態値が得られ、その際、遮蔽グリッド8などを、構成要素3〜6又はそれらの上面(Os)と導線ループ7との間に設けてもよい。
【0048】
図3及び
図4は、本発明による新規なプラスタ状装置100の凹部2の別の形態、及び
凹部2の縁21、21’の周囲でシート材料に埋め込まれた下面が露出した測定電極3、3’のあり得る本発明による配置を示している。
【0049】
図3は、八角形の形状を有する凹部2を示しており、この実施の形態では、長方形の測定電極3、3’が、この実施の形態では、同じ長さの八角形の辺(s)と実質的に平行に配置されている。
【0050】
この実施の形態では、測定電極3、3’は、それらの凹部
側の縁すなわち境界部31、31’が、個々の八角形の辺
(s)の長さ(Is)の約100%の長さの範囲(Ir)を有している。
【0051】
図4は、この図において、六角形の切断弦(section chord)(s)を有する6角形とともに描かれている円形の凹部2と、縁21、21’又は凹部から距離a、a’をおいた6個の測定電極3、3’を示している。この実施の形態では、これらの測定電極の長さの範囲(lr)は、円に内接する個々の切断弦(s)の長さ(l
s)の75%に相当する。