特許第6644713号(P6644713)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6644713
(24)【登録日】2020年1月10日
(45)【発行日】2020年2月12日
(54)【発明の名称】キノンメチドアナログシグナル増幅
(51)【国際特許分類】
   C07D 209/14 20060101AFI20200130BHJP
   C07F 9/12 20060101ALI20200130BHJP
   C07F 9/547 20060101ALI20200130BHJP
   G01N 33/48 20060101ALI20200130BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20200130BHJP
   C12Q 1/68 20180101ALI20200130BHJP
   C12Q 1/42 20060101ALI20200130BHJP
   C12Q 1/34 20060101ALI20200130BHJP
   C12Q 1/28 20060101ALI20200130BHJP
   C12Q 1/54 20060101ALI20200130BHJP
   C09B 43/32 20060101ALN20200130BHJP
   C09B 11/28 20060101ALN20200130BHJP
   C09B 55/00 20060101ALN20200130BHJP
【FI】
   C07D209/14CSP
   C07F9/12
   C07F9/547
   G01N33/48 P
   G01N33/53 Y
   G01N33/53 D
   G01N33/53 M
   C12Q1/68
   C12Q1/42
   C12Q1/34
   C12Q1/28
   C12Q1/54
   !C09B43/32
   !C09B11/28 E
   !C09B55/00 A
【請求項の数】15
【全頁数】97
(21)【出願番号】特願2016-570180(P2016-570180)
(86)(22)【出願日】2015年2月20日
(65)【公表番号】特表2017-512210(P2017-512210A)
(43)【公表日】2017年5月18日
(86)【国際出願番号】EP2015053556
(87)【国際公開番号】WO2015124703
(87)【国際公開日】20150827
【審査請求日】2018年2月19日
(31)【優先権主張番号】61/943,940
(32)【優先日】2014年2月24日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511286517
【氏名又は名称】ヴェンタナ メディカル システムズ, インク.
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ビーニアーツ, クリストファー
(72)【発明者】
【氏名】アシュワース−シャープ, ジュリア
(72)【発明者】
【氏名】ケリー, ブライアン ディー.
(72)【発明者】
【氏名】ポーラスケ, ネイサン
【審査官】 長部 喜幸
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2010/0317831(US,A1)
【文献】 Kalesh, Karunakaran A. 他,Peptide-based activity-based probes (ABPs) for target-specific profiling of protein tyrosine phosphatases (PTPs),Chemical Communications (Cambridge, United Kingdom) ,2010年,46(4),589-591
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 209/00
C07F 9/12
C07F 9/547
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
化合物が、
であり、
が、色素原、蛍光団、発光団又はハプテンである、化合物又はその塩若しくは溶媒和物。
【請求項2】
生物学的試料中の第1の標的を検出する方法であって、
生物学的試料を、第1の標的に特異的な第1の検出プローブと接触させることと、
生物学的試料を、第1の酵素を含む第1の標識コンジュゲートと接触させることと、
生物学的試料を、第1の酵素認識基と第1の検出可能標識とを含む第1のキノンメチドアナログ前駆体と接触させることであって、ここで、第1のキノンメチドアナログ前駆体が、請求項1に記載の化合物であって、ここで第1の酵素が第1の酵素認識基を切断し、それによって第1のキノンメチドアナログ前駆体を、第1の反応性キノンメチドアナログに変換し、これが、生物学的試料に、第1の標的の近位において又は第1の標的に直接的に共有結合し、生物学的試料を接触させることが、
(i)生物学的試料を、所望のレベルの増幅を与えるのに有効な前駆体濃度で第1のキノンメチドアナログ前駆体と接触させること、
(ii)生物学的試料を、7超から14のpHで第1のキノンメチドアナログ前駆体と接触させること、
(iii)生物学的試料を、塩の存在下、0.1Mから2Mの塩濃度で第1のキノンメチドアナログ前駆体と接触させること、
(iv)生物学的試料を、請求項1に記載の化合物と接触させること、又は
(v)これらの任意の組み合わせ
を含むことと、
第1の検出可能標識を検出することによって、第1の標的を検出することと
を含む方法。
【請求項3】
塩が塩化マグネシウムである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
第一のキノンメチドアナログ前駆体の濃度が0超から1mMである、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
生物学的試料が、ホルマリン固定パラフィン包埋組織を含む、請求項2から4の何れか一項に記載の方法。
【請求項6】
第1の検出プローブが、オリゴヌクレオチド、抗体又は抗体断片を含む、請求項2から5の何れか一項に記載の方法。
【請求項7】
第1の標識コンジュゲートが、第1の酵素に結合した抗体を含、請求項2から4の何れか一項に記載の方法。
【請求項8】
第1の標識コンジュゲートが、直接的又は間接的に第1の検出プローブと会合する、請求項2から7の何れか一項に記載の方法。
【請求項9】
第1の検出プローブが、第1の抗種抗体を含み、第1の標識プローブが、第2の抗種抗体を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
第1の検出プローブが、ハプテンを含み、第1の標識プローブが、抗ハプテン抗体を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
第1の酵素が、ホスファターゼ又はホスホジエステラーゼである、請求項2から10の何れか一項に記載の方法。
【請求項12】
生物学的試料を、第2の標的に特異的な第2の検出プローブと接触させることと、
生物学的試料を第2の酵素を含む、第2の標識コンジュゲートと接触させることと、
生物学的試料を、第2の酵素認識基と第2の検出可能標識を含む第2のキノンメチドアナログ前駆体と接触することであって、ここで、第2のキノンメチドアナログ前駆体が、請求項1に記載の化合物であり、第2の酵素が第2の酵素認識基を切断し、それにより第2のキノンメチドアナログ前駆体を、第2の標的の近傍の生物学的試料に共有結合するか又は第2の標的に直接結合する第2の反応性キノンメチドアナログに転換し、
第2の検出可能標識を検出することにより第2の標的を検出することと
を更に含む、請求項2に記載の方法。
【請求項13】
第1の酵素及び第2の酵素が異なる酵素であり、第1の酵素が、第1のキノンメチドアナログ前駆体と選択的に反応し、第2の酵素が、第2のキノンメチドアナログ前駆体と選択的に反応する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
酵素抗体コンジュゲートと、
キノンメチドアナログ前駆体と、
溶媒混合物と、
pH調整溶液と
を含み、
ここで、キノンメチドアナログ前駆体が、請求項1に記載の化合物である、
キット。
【請求項15】
溶媒混合物が、DMSO及びpH2のグリシンバッファーを含み、
pH調整溶液が、pH8からpH10のpH範囲を有するTrisバッファーであり、
塩化マグネシウムを0.5Mから1.25Mの濃度で更に含む、
請求項14に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願とのクロスリファレンス
本出願は、2014年2月24日出願の米国特許仮出願第61/943940号の先の出願日の利益を主張し、その全体が出典明示により本明細書に援用される。
【0002】
本開示は、新規キノンメチドアナログ前駆体、並びにそれを含む方法及びキットの実施態様に関する。
【背景技術】
【0003】
免疫組織化学(IHC)は、特定の抗原に特異的な抗体などの特異的結合部分を使用して、生物学的試料中において、タンパク質などの抗原を、検出する、局在化させる及び/又は定量化するプロセスを指す。IHCは、特定のタンパク質が組織試料内のどこに位置しているかを正確に特定する有意な利点を提供する。組織それ自体を検査する有効な方法でもある。in situハイブリダイゼーション(ISH)は、核酸を検出する、局在化させる及び定量化するプロセスを指す。IHCとISHは両方とも、組織(例えば、新たに凍結され、ホルマリン固定され、パラフィン包埋された)及び細胞学的試料などの様々な生物学的試料において実施することができる。標的の認識は、標的が核酸であっても抗原であっても関係なく、様々な標識(例えば、色素産生性、蛍光性、発光性、放射性)を使用して、検出することができる。存在度の低い細胞マーカーを確信的に検出する能力が診断目的のためにますます重要になっているので、臨床設定において標的をしっかりと検出し、位置を特定し、定量化するために、認識事象を増幅することが望ましい。例えば、単一の抗原検出事象に応答して数百又は数千の標識分子をマーカーの部位に沈着させることは、増幅を介して、認識事象を検出する能力を向上させる。
【0004】
バックグランドシグナルの増加と共に明白になる非特異的シグナルなどの有害事象が、多くの場合、増幅に伴っている。バックグランドシグナルの増加は、低いが臨床的に有意な発現に関連することがある、かすかなシグナルを不明瞭にすることによって、臨床分析を妨げる。したがって、認識事象の増幅は望ましいことであるが、バックグランドシグナルを増加しない増幅方法が、極めて望ましい。1つのそのような方法は、チラミドシグナル増幅(TSA)であり、これは触媒レポーター沈着(CARD)とも呼ばれている。米国特許第5583001号は、検出可能標識シグナルを増幅する触媒レポーター沈着に依存する被分析物依存性酵素活性化系を使用して、被分析物を検出及び/又は定量化する方法を開示する。CARD又はTSA法における酵素の触媒作用は、標識されたフェノール分子を酵素と反応させることによって向上される。TSAを利用する近代的な方法は、IHC及びISHアッセイにより得られるシグナルを有効に増加し、同時に有意なバックグランドシグナルの増幅を生じない(例えば、チラミド増幅試薬に関する開示に関して、その全体が出典明示により本明細書に援用される、米国特許出願第2012/0171668号を参照すること)。これらの増幅手法における試薬は、臨床的に重要な標的に適用されて、以前は得ることができなかったしっかりとした診断能力を提供する(OPTIVIEW(登録商標)Amplification Kit,Ventana Medical Systems,Tucson AZ,Catalog No.760−099)。
【0005】
TSAは、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)とチラミドとの反応を利用する。Hの存在下、チラミドは、タンパク質において電子が豊富なアミノ酸残基と優先的に反応する、高反応性で短命のラジカル中間体に変換される。次に、共有結合した検出可能標識を、様々な色素産生可視化技術により及び/又は蛍光顕微鏡検査法により検出することができる。空間的及び形態的な文脈が高く評価されるIHC及びISHなどの固相イムノアッセイでは、寿命が短いラジカル中間体は、チラミドとタンパク質との共有結合を、生成部位に近接した組織にもたらし、離散した特異的なシグナルを提示する。CARDは、被分析物依存性レポーター酵素(ADRE)を使用して、多数の検出可能標識とタンパク質との共有結合を触媒することを広義に定義し、HRPに基づいたTSAは、商業的に認められた手法である。この分野において代替的な増幅系が強く必要とされているにもかかわらず、代替的なADRE系は存在しない。
【0006】
Bobrowの米国特許第7291474号は、ヒドロラーゼに基づいたCARDの使用を仮定している。特にBobrowは、活性プローブの2−ジフルオロメチルフェニル及びp−ヒドロキシマンデル酸を増幅試薬として使用できると仮説を立てている。2−ジフルオロメチルフェニル及びp−ヒドロキシマンデル酸は、Zhu等(2003)Tetrahedron Letters,44,2669−2672、Lo等(2002)J.Proteome Res.,1,35−40、Cesaro−Tadic等(2003)Nature Biotechnology,21,679−685、Janda等(1997)Science 275,945−948、Halazy等(1990)Bioorganic Chemistry 18,330−344及びBetley等(2002)Angew.Chem.Int.Ed.41,775−777に記載されていた。Bobrowが示唆した構造には以下が含まれ、

,
ここで、Yは、加水分解酵素により切断されうる部分であり、Lは、検出可能標識であり、Xは、連結基であり、Zは、ハロゲンであり、Rは、水素、アルキル又はハロゲンである。特定の実施態様において、Rは水素であり、Z基はフッ素である。これらの構造は、Zhu等(2003)Tetrahedron Letters,44,2669−2672により開示された特定の構造の一般化である。特にZhu等は、以下の構造を既知のホスファターゼ阻害剤として記載している。


これらのホスファターゼ阻害剤に基づいて、Zhu等は、以下の活性プローブを開発した。






Zhuは、タンパク質の活性に基づいたプロファイリングが、プロテオミクス研究における立証済みの強力なツールであり、それにより酵素タンパク質のサブクラスを選択的に特定できることを開示している。このように、Zhuは、活性ホスファターゼ酵素の存在をシグナルする活性プローブを開発した。Zhuの戦略は、異なるクラスの酵素と反応して、粗プロテオーム混合物において他の非反応性タンパク質と容易に区別される、プローブタンパク質共有結合複合体の形成をもたらす、特定のプローブを利用する。
【0007】
Zhu等は、リン酸2−ジフルオロメチルフェニルが、酸及びアルカリホスファターゼを含む広範囲の異なるホスファターゼに対する一般的なホスファターゼ阻害剤であることは既知であったと記述している。阻害は、ホスファターゼがリン酸エステル基の切断を触媒して、フッ化物イオンが離れた後、反応性中間体を生成することによって発生する。反応性中間体は、酵素の活性部位と反応して、蛍光団を酵素活性部位と共有結合させる。しかし、それを行うことによって、リン酸エステルを加水分解的に更に切断する酵素の能力も阻害する。
【0008】
シグナル生成部分を基質に共有結合する増幅スキームに酵素阻害剤を使用することは、結合シグナルの生成が酵素の活性を破壊しうるので、自己制限的であると理解される。性能(例えば、代謝回転、特異性)の改善が酵素活性部位のより効率的な破壊をもたらすので、これらの試薬に向上を追求することは自滅的である可能性があることが、当該技術において認識されている。したがって、複数のシグナル生成部位に結合させることによりシグナル増幅を得るため、最初に複数の酵素を標的の近位に結合させる必要がある。したがって、Zhu等及びBobrowにより開示された化合物は、IHC又はISHの増幅系のための商業的に実現可能な検出試薬として開発されていない。
【0009】
更に、記載された増幅手法は、今日まで蛍光化合物の沈着を可能にしている。蛍光画像化が多くの場合に実施されており、それは極めて感受性が高いからであり、非常に少ない数の蛍光分子の検出は、今や常套的である。しかし、この感受性は、暗視野画像化を使用して達成されており、これはある特定の実用的制限を有している。例えば、明視野一次染色(例えば、ヘマトキシリン及びエオシン染色)を同時発生的に観察することができず、蛍光シグナルを形態学的特徴と相関させることがより困難になる。蛍光に基づいた検出は、吸光度・反射率に基づいた手法(例えば、色素産生性に基づいた検出)より、常套的に1000倍感受性が高いことが知られている。このように、蛍光検出に適切な方法論は、色素産生検出方法論として使用するには1000倍の改善が必要である。酵素に基づいた検出系の性能を1000倍増加することは、簡単なことではない。現在まで、チラミドに基づいた系のみがこの性能の増加に到達している。
【0010】
しっかりとした試薬が利用可能であるが、バックグランドシグナルを増加することなく、しっかりとした増幅を生じる代替的シグナル増幅手法の必要性が存続している。更に、組織試料中において2つ以上の異なる標的の検出を増幅する方法が、望ましい。
【発明の概要】
【0011】
本明細書に開示されているキノンメチドアナログ前駆体(QMP)及びこれらのQMPを使用する実施態様は、先行技術に開示されたものより実質的に優れた結果を提供する。QMPは、分子内において、キノンメチド生成及び求核種安定化機能から、検出可能標識機能を分離する。ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)組織などの組織のIHC及び/又はISH染色にQMPを利用する方法の実施態様も、本明細書に開示されている。発明者たちが知る限りにおいて、これは前に成功裏に実証されていない。組織試料において1つ又は複数の異なる標的の検出を増幅するQMPを使用する方法の実施態様は、以前に知られている非QMP法と比較して改善されたシグナルの質及び低減されたオフターゲット染色を提供する。開示されている方法を使用して複数の標的を同時又は順次の何れかで検出するとき、標的を、色素産生若しくは蛍光に基づいた検出方法又はこれらの組み合わせにより検出することができる。
【0012】
幾つかの実施態様において、QMPは、下記の式:


又はその塩若しくは溶媒和物を有し、式中、Zは、O、S又はNRであり、Rは、酵素認識基であり、又はZRは、酵素認識基であり、Rは、−C(LG)(R)(R)、−R又は−C(LG)(R)(R)であり、R、R11及びR12は、それぞれ独立して、水素、ハロ、シアノ、脂肪族、アルコキシ、NO、N(R、アリール、ハロアルキル、−C(O)アルキル、−C(S)アルキル、−C(O)OH、−C(O)Oアルキル、−C(O)NHR、−C(O)N(R、−Rであるか、又は2つの隣接基は、共に脂肪族環若しくはアリール環を形成し、R10は、水素、ハロ、シアノ、脂肪族、アルコキシ、NO、N(R、アリール、ハロアルキル、−C(O)アルキル、−C(S)アルキル、−C(O)OH、−C(O)Oアルキル、−C(O)NHR、−C(O)N(R、−R、−C(LG)(R)(R)であるか、又はR若しくはR11の一方と共に、脂肪族環若しくはアリール環を形成する。
【0013】
また、式を参照すると、LGは、脱離基であり、又はZR及びLGは、共にホスホジエステルを形成し、Rは、リンカー又は結合であり、Rは、検出可能標識であり、各Rは、独立して、水素、ハロ、シアノ、低級アルキル、低級ハロアルキル、−C(O)アルキル、−C(S)アルキル、−C(O)OH、−C(O)Oアルキル、−C(O)NHR又は−C(O)N(Rであり、各Rは、独立して、水素、ハロ、シアノ、低級アルキル、低級ハロアルキル、−C(O)アルキル、−C(S)アルキル、−C(O)OH、−C(O)Oアルキル、−C(O)NHR又は−C(O)N(Rであり、Rは、水素又は脂肪族であり、各Rは、独立して、水素、アリール、脂肪族若しくはヘテロ脂肪族であるか、又は2つのR分子は、共にヘテロ脂肪族環を形成する。加えて、R及びR10の少なくとも一方は、LGを含み、R及びR10の少なくとも一方は、Rを含み又はRからなり、LGがハロである場合、R及びRはハロではない。
【0014】
ある特定の実施態様において、QMPは、以下:
から選択される式を有する。
【0015】
幾つかの実施態様において、R又はZRは、ホスフェート、アミド、ニトロ、尿素、サルフェート、メチル、エステル、ベータラクタム又は糖である。Zは、Oであっても良く、及び/又はZRは、−OP(O)(OH)、NO、−NHC(O)R、−OC(O)CH、−OC(O)CHCH、−NHC(O)NH、−OS(O)OH、OCH若しくはそれらの塩であっても良い。幾つかの実施態様において、糖は、α−グルコース、β−グルコース、α−ガラクトース、β−ガラクトース、α−グルクロノース又はβ−グルクロノースである。
【0016】
LGは、ハロゲン化物、硫酸エステル、カルボキシレート、無機エステル、チオレート、アミン、アリールオキシ、アルコキシ又はヘテロアリールなどの任意の適切な脱離基でありうる。幾つかの実施態様において、LGは、フッ化物、塩化物、アジド、酢酸エステル、メトキシ、エトキシ、イソプロポキシ、フェノキシド、−OS(O)CH、−OS(O)CH、−OS(O)、−OS(O)CX、−OC、−N、−NH、−NC、−O−アルキル、−OC(O)アルキル、−OC(O)H、−N(R又は1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)であり、ここで、各Xは、独立して、フルオロ、クロロ、ブロモ又はヨードであり、各Rは、独立して、水素又は低級アルキルであるか、あるいは2つのR部分は、共にヘテロ脂肪族環を形成する。ある特定の実施態様において、LGはFである。
【0017】
ある特定の開示されている方法の実施態様は、生物学的試料を、第1の標的に特異的な第1の検出プローブと接触させることを含む。生物学的試料を、第1の酵素を含む第1の標識コンジュゲートと接触させる。また生物学的試料を、第1の酵素認識基と第1の検出可能標識とを含む第1のQMPと接触させる。第1の酵素は、第1の酵素認識基を切断し、それによって第1のQMPを第1の反応性キノンメチドアナログ(QM)に変換し、これは、生物学的試料に、第1の標的の近位において又は第1の標的に直接的に共有結合する。生物学的試料を接触させることは、(i)生物学的試料を、0超から1mMの濃度などの所望のレベルの増幅を与えるのに有効な前駆体濃度で第1のQMPと接触させること、(ii)生物学的試料を、7超から14又は8超から12のpHなどの拡散及び/若しくはオフターゲット染色を所望の量に低減するのに有効なpHで第1のQMPと接触させること、(iii)生物学的試料を、塩化マグネシウムなどの塩の存在下、拡散及び/若しくはオフターゲット染色を所望の量に低減するのに有効な塩濃度、典型的には0.1Mから2M若しくは0.5Mから1.25Mで第1のQMPと接触させること、(iv)生物学的試料を、本明細書に開示されている化合物と接触させること、又は(v)これらの任意の組み合わせを含む。次に第1の標的を、第1の検出可能標識を検出することによって検出する。この方法は、自動化されたプロセスであっても良い。
【0018】
前駆体濃度は、色素産生染色では50μMから500μM又は蛍光染色及びハプテン増幅では50nMから10μMであっても良い。
【0019】
幾つかの例において、第1の標識コンジュゲートは、第1の酵素に結合した抗体を含む。抗体は、抗種又は抗ハプテン抗体であっても良い。第1の標識コンジュゲートは、第1の検出プローブと直接的又は間接的に会合しても良い。第1の検出プローブは、ハプテン又は抗種抗体を含んでも良く、第1の標識プローブは、対応する抗ハプテン又は第2の抗種抗体を含んでも良い。第1の酵素及び第1の酵素認識基は、相互作用してQMを形成する任意の適切な酵素及び酵素認識基でありうる。
【0020】
第1の反応性QMは、生物学的試料、第1の標識コンジュゲート、第1の検出プローブ又はこれらの組み合わせにおいて求核種と反応する。典型的な求核種には、アミノ酸、核酸残基又は炭水化物のアミノ、スルフヒドリル又はヒドロキシル基が含まれる。
【0021】
第1のQMPは、上記に開示された式又は代替的に下記:
から選択される式又はその塩若しくは溶媒和物を有しても良い。これらの式に関して、Z、LG、R、R、R、R、R、R、R及びR−R12は、以前に定義された通りであり、R13−R29は、それぞれ独立してR、R11及びR12の通りに定義され、R−R29の少なくとも一方は、Rを含む又はRからなる。
【0022】
この方法は、多重化された方法であっても良い。幾つかの実施態様において、第1の標的を検出することに加え、方法は、生物学的試料を、第2の標的に特異的な第2の結合部分と接触させることを更に含む。第2の標的を、第2の結合部分を介して第2の酵素により標識する。生物学的試料を第2の検出前駆体化合物と接触させ、それが第2の酵素と相互作用して、第2の検出化合物を第2の標的に直接的に又は第2の標的の近位において沈着させる。次に第2の検出化合物を検出する。第1の酵素及び第2の酵素は、典型的には異なる酵素である。第1及び第2の標的を対応する結合部分と接触させること、並びに/又は第1及び第2の検出化合物を検出することは、順次又は実質的に同時に起こっても良い。
【0023】
ある特定の実施態様において、第1の酵素は、第1のQMPと選択的に反応し、第2の酵素は、第2の検出前駆体化合物と選択的に反応する。特定の実施態様において、第1の酵素は、アルカリホスファターゼであり、第1の酵素認識基は、リン酸エステルである。第2の酵素は、ペルオキシダーゼでありうる。
【0024】
幾つかの実施態様において、第2の検出前駆体化合物は、第2の酵素認識基と第2の検出可能標識とを含む第2のQMPである。第2のQMPは第2の酵素と相互作用して、生物学的試料に、第2の標的の近位において又は第2の標的に直接的に共有結合する第2のQMを形成する。第2の酵素は、第2の酵素認識基がβ−ガラクトシドの場合にβ−ガラクトシダーゼなどのように、典型的には第1と異なる酵素である。
【0025】
当業者は、方法を、追加的な異なる標的の検出を含むように拡大できることを理解する。これは、生物学的試料を、標的に特異的な追加の結合部分と接触させること、結合部分を異なる酵素で標識すること、試料を、酵素のために選択された検出前駆体化合物と接触させること、及び検出化合物を検出することによって、達成することができる。
【0026】
本明細書に開示されている染色増幅化合物を含むキットも、開示される。幾つかの実施態様において、キットは、酵素抗体コンジュゲート、QMP、溶媒混合物及びpH調整溶液を含む。溶媒混合物は、有機溶媒及び水性バッファーを含んでも良い。幾つかの実施態様において、有機溶媒はDMSOである。水性バッファーは、pH0からpH5又はpH1からpH3のpH範囲を有しても良い。幾つかの実施態様において、pH調整溶液は、pH8からpH12のpH範囲を有する。特定の実施態様において、キットは、塩化マグネシウムなどの塩を含み、これは0.25Mから1.5Mの濃度を有しても良い。幾つかの実施態様において、QMPは、本明細書に開示されている化合物であり、溶媒混合物は、DMSO及びpH2のグリシンバッファーを含み、pH調整溶液は、pH範囲がpH8からpH10のTrisバッファーであり、並びに/又はキットは、塩化マグネシウムを0.5Mから1.25Mの濃度で更に含む。
【0027】
本発明の前述及び他の目的、特徴及び利点は、以下の発明を実施するための形態によってより明白になり、これは添付の図面を参照しながら進められる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】検出可能標識を含むQMPを使用して標的を検出することを説明している概略図である。
図2A】例示的なQMPを提供する表である。
図2B】例示的なQMPを提供する表である。
図3A-C】検出可能標識を有するQMPから、標的シグナルを増幅するキノンメチドへの、ホスファターゼ媒介変換を説明する図である。
図4】生物学的組織中の標的検出を増幅する方法の1つの例示的な実施態様を説明する図である。
図5】生物学的組織中の標的検出を増幅する方法の第2の例示的な実施態様を説明する図である。
図6A-C】Bcl−6の扁桃組織における、PEGリンカーを有するQMP−ダブシル誘導体の染色強度の増加を説明する、20×倍率の顕微鏡写真である。
図7A-C】Bcl−6の扁桃組織における、PEGリンカーを有するQMP−Tamra誘導体の染色強度の増加を説明する、20×倍率の顕微鏡写真である。
図8A】Pan−ケラチン(QM−PEG8−ダブシル、黄色)及びHer2(Tyr−TAMRA、紫色)の同時の抗体インキュベーション及び順次の色素産生検出を説明する、10×倍率での乳房組織の二重明視野IHCアッセイの顕微鏡写真である。
図8B】40×倍率に拡大した図8(A)の一部である。
図9】CD8(Tyr−ローダミン−110、栗色)、CD3(QM−Cy5、青色)、FoxP3(Tyr−Tamra、紫色)及びPan−ケラチン(QM−PEG8−ダブシル、黄色)の順次検出を説明する、40×倍率の扁桃組織における四重明視野IHCアッセイの顕微鏡写真である。
図10】FFPE扁桃組織におけるAPに基づいたQMP(Ki67、暗赤色、核)及びHRPに基づいたTSA(Bcl2、明緑色、膜)検出の両方を利用する蛍光二重アッセイの顕微鏡写真である。
図11】pH7.5での乳房組織におけるE−カドヘリンのキノンメチド染色の顕微鏡写真である。
図12】pH10での乳房組織におけるE−カドヘリンのキノンメチド染色の顕微鏡写真である。
図13A-B】ultraView DAB(B)と比較した、モノフルオロ脱離基及び5−ニトロ−3−ピラゾールカルバミド(ニトロピラゾール)検出可能標識を有するQMP(A)による、FFPE扁桃組織におけるKi67の機能的染色増幅を説明する顕微鏡写真である。
図14A-B】モノフルオロ脱離基及び5−ニトロ−3−ピラゾールカルバミド(ニトロピラゾール、NP)検出可能標識を有するQMP、続く抗NP抗体/アルカリホスファターゼコンジュゲート及びファストレッド染色(B)による、FFPE扁桃組織におけるCD−10の機能的染色(A)又はCD−10の増幅(B)を説明する顕微鏡写真である。
図14C-D】モノフルオロ脱離基及び5−ニトロ−3−ピラゾールカルバミド(ニトロピラゾール、NP)検出可能標識を有するQMP、続く抗NP抗体/アルカリホスファターゼコンジュゲート及びファストレッド染色による、FFPE扁桃組織におけるBcl2の増幅(C)又はFFPE乳房組織におけるHer3の増幅(D)を説明する顕微鏡写真である。
図15A-C】モノフルオロ脱離基及びTAMRA検出可能部分(A)、AF700検出可能部分(B)又はニトロピラゾール検出可能部分を有するQMPによる、続いて量子ドット(QD525)標識抗ニトロピラゾール抗体(C)による、FFPE扁桃組織におけるBcl2の機能的染色増幅を説明する顕微鏡写真である。
図16A-B】モノフルオロ脱離基及びダブシル検出可能部分(A)又はTAMRA検出可能部分(B)を有するQMPによる、FFPE扁桃組織におけるKi67の機能的染色増幅を説明する顕微鏡写真である。
図16C-D】モノフルオロ脱離基及びCy5検出可能部分(C)又はローダミン110検出可能部分(D)を有するQMPによる、FFPE扁桃組織におけるKi67の機能的染色増幅を説明する顕微鏡写真である。
図17A-B】ジフルオロ脱離基を有し、ビオチン検出可能標識とコンジュゲートしたQMP(B)と比較した、ultraView 3,3’−ジアミノベンジジン(DAB)(A)によるホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)皮膚組織における上皮増殖因子受容体(EGFR)の機能的染色増幅を説明する顕微鏡写真である。
図18】ビオチン化ジフルオロQM前駆体を使用したAPに基づいたCARD IHC(FFPE扁桃組織におけるBCL6)、続く様々な濃度のQM前駆体によるDAB検出を説明する顕微鏡写真である。
図19】様々なpHでの染色結果を説明する、20μMのビオチン化ジフルオロQM前駆体を使用したAPに基づいたCARD IHC(FFPE扁桃組織におけるBCL6)、続くDAB検出の顕微鏡写真である。
図20】様々なpHでの染色結果を説明する、250nMのビオチン化モノフルオロQM前駆体を使用したAPに基づいたCARD IHC(FFPE扁桃組織におけるBCL6)、続くDAB検出の顕微鏡写真である。
図21A-D】ピリジン(B)、DABCO(C)又はトリフェニルアミン(D)脱離基を有し、ビオチン検出可能標識とコンジュゲートしたQMPと比較した、ultraViewコントロールによるFFPE扁桃組織におけるKi67の最適な染色増幅(A)を説明する顕微鏡写真である。
図22A-D】酢酸エステル脱離基(C)又はメトキシ脱離基(D)及びビオチン検出可能標識を有するQMPと比較した、ultraView DAB(A)及びモノフルオロ基とビオチン検出可能標識とを有するQMP(B)によるFFPE扁桃組織におけるKi67の最適な機能的染色増幅を説明する顕微鏡写真である。
図23A-C】モノフルオロ脱離基、ビオチン検出可能標識及びそれらの構造が図2により提供されている、アニリンアミドリンカー(化合物7)(A)、安息香酸アミドリンカー(化合物21)(B)又はチラミドアミドリンカー(化合物14)(C)を有するQMPによる、FFPE扁桃組織におけるBcl2の機能的染色増幅を説明する顕微鏡写真である。
図24A-B】図17(B)の顕微鏡写真を更に拡大したものである。
図25A-B】図17(A)の顕微鏡写真を更に拡大したものである。
図26】Trisによるモノフッ化QM前駆体からのQM中間体の捕捉を説明する図である。
図27図24において説明された反応による化合物のHPLCクロマトグラムである。
図28】本明細書に開示されているQMPの例示的な構造を提供する。
図29A-B】塩化マグネシウム濃度の増加を伴う、扁桃組織におけるCD8染色の質の改善を説明する顕微鏡写真である。
図30A-C】β−ガラクトシダーゼ酵素による、並びにβ−ガラクトシド−QMP−Cy5(125uM)と核ファストレッド(Nuclear Fast Red)CS(A)、β−ガラクトシド−QMP−Cy5(125uM)とヘマトキシリンCS(B)及びβ−ガラクトシド−QMP−Cy3(100uM)とヘマトキシリンCS(C)による、20×倍率での扁桃組織におけるKi−67の機能的染色を説明する顕微鏡写真である。
図31】同時抗体インキュベーション及び同時色素産生検出を使用する、ヘマトキシリン対比染色による扁桃組織におけるBcl−6(ホスホ−QM−PEG8−ダブシル、黄色)及びKi67(β−Gal−QM−Cy5、青色)の同時検出を説明する、二重明視野IHCアッセイの顕微鏡写真である。
図32A-B】同時抗体インキュベーション及び同時色素産生検出を使用する、ヘマトキシリン対比染色を用いる、ホスホ−QM−PEG8−ダブシル、β−Gal−QM−Cy5、Tyr−Tamraによる乳房組織におけるHer2、ER、PRの同時検出を説明する、三重明視野IHCアッセイの顕微鏡写真である。
図33】乳房組織におけるHer2(HRP DAB、褐色)、PR(β−Gal−QM−Cy5、青色)、ER(Tyr−Tamra、紫色)及びKi67(ホスホ−QM−PEG8−ダブシル、黄色)の順次検出を説明する、四重明視野IHCアッセイの顕微鏡写真である。
図34】乳房組織におけるHer2(HRP DAB、褐色)、PR(β−Gal−QM−Cy5、青色)、ER(Tyr−Tamra、紫色)及びKi67(ホスホ−QM−PEG8−ダブシル、黄色)の順次検出を説明する、四重明視野IHCアッセイの第2の顕微鏡写真である。
図35】QM緑色(PEG8−ダブシル及びCy5)による扁桃組織(A)及びMCF−7異種移植片(B)における染色体17動原体ISHの顕微鏡写真である。
図36】2つのHRPに基づいた検出系及び2つのAP QMPに基づいた検出系を使用した順次検出により染色した、40×倍率でのFFPE乳房組織における同じバイオマーカー(Her2、Ki−67、ER及びPR)を示す4つの異なる染色プロトコールの顕微鏡写真である。
図37】2つのHRPに基づいた検出系及び2つのAP QMPに基づいた検出系を使用した順次検出により染色した、FFPE扁桃組織における5×倍率でのCD3、CD8、CD20(又はCD68)及びFoxP3の異なる染色プロトコール(A−B又はC−D)の顕微鏡写真である。
図38】10×倍率でのオルト−及びパラ−QMP−TamraによるFFPE乳房組織におけるE−カドヘリンの機能的染色増幅を説明する顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
I.定義
別途示されない限り、技術用語は、従来の用法に従って使用される。分子生物学の一般用語の定義は、Benjamin Lewin,Genes VII,Oxford University Press発行,2000(ISBN 019879276X)、Kendrew等(編),The Encyclopedia of Molecular Biology,Blackwell Publishers発行,1994(ISBN 0632021829)及びRobert A.Meyers(編),Molecular Biology and Biotechnology:a Comprehensive Desk Reference,Wiley,John & Sons,Inc.発行,1995(ISBN 0471186341)、並びに他の類似した参考文献において見出すことができる。
【0030】
本明細書に使用されるとき、単数形の用語「a」、「an」及び「the」は、文脈から別途明示のない限り、複数の参照を含む。同様に、語「又は(or)」は、文脈から別途明示のない限り、「及び(and)」を含むことが意図される。また、本明細書に使用されるとき、用語「含む(comprises)」は、「含む(includes)」を意味する。故に、「A又はBを含む(comprising A or B)」は、AかB又はA及びBを含む(including)ことを意味する。全てのヌクレオチドのサイズ又はアミノ酸のサイズ及び全ての分子量又は分子質量の値は、核酸若しくはポリヌクレオチド又は他の化合物を考慮すると近似値であり、記載中に提供されることが更に理解されるべきである。本明細書に記載されているものに類似又は同等の方法及び材料を、本開示の実施又は試験に使用することができるが、適切な方法及び材料が下記に記載されている。本明細書に記述される全ての出版物、特許出願、特許及び他の参考文献は、その全体が出典明示により援用される。競合する場合、用語の説明を含み、本明細書が支配する。加えて、材料、方法及び例は、説明のためだけであり、限定的であることを意図しない。
【0031】
別途指示のない限り、構成成分、分子量、百分率、温度、時間、濃度などの量を表す全ての数字は、明細書又は特許請求の範囲に使用されるとき、用語「約」により修飾されていると理解されるべきである。したがって、暗示的であっても明示的であっても別途指示のない限り、設定される数値パラメーターは、探求される望ましい特性及び/又は標準的な試験条件/方法下での検出限界に応じて左右されうる近似値である。実施態様を、考察される先行技術と直接的及び明示的に区別するとき、実施態様の数字は、語「約」が引用されない限り、近似値ではない。
【0032】
下記に提供される一般式では、置換基が示されない場合、当業者は、置換基が水素であることを理解する。原子に接続していないが、例えば環系の内部に伸びているように示されている結合は、そのような置換基の位置が変動することを示している。結合を介して描かれている曲線は、幾つかの追加の構造がその位置に結合することを示す。更に、1つ又は複数のキラル中心を有する化合物に立体化学が示されていない場合、全ての鏡像異性体及びジアステレオマーが含まれる。同様に、脂肪族又はアルキル基の列挙では、その構造異性体も全て含まれる。
【0033】
本開示の様々な実施態様の検討を容易にするため、以下の特定の用語の説明を提供する。
【0034】
脂肪族:実質的に炭水化物に基づいた化合物又はそのラジカル(例えばヘキサンラジカルではC13)であり、アルカン、アルケン、アルキンが含まれ、それらの環状型が含まれ、直鎖及び分岐鎖の配置、並びに全ての立体及び位置異性体も更に含まれる。別途明確な記述のない限り、脂肪族基は、1から25個の炭素原子、例えば、1から15個、1から10個、1から6個又は1から4個の炭素原子を含有する。用語「低級脂肪族」は、1−10個の炭素原子を含有する脂肪族基を指す。「非置換脂肪族」と別途明確な参照のない限り、脂肪族基は、非置換又は置換の何れかでありうる。
【0035】
アルキル:飽和炭素鎖を有する炭水化物基である。鎖は、環状、分岐又は非分岐であっても良い。低級アルキルという用語は、鎖が1−10個の炭素原子を含むことを意味する。別途記述のない限り、アルキル基は、置換されていても、非置換であっても良い。
【0036】
アルコキシ:式:−O−アルキルを有する基であり、式中、アルキルは本明細書に定義されている通りである。
【0037】
アナログ:アナログは、親化合物と化学構造が異なる分子であり、例えば、ホモログ(アルキル鎖の長さが異なるなど、化学構造に一定数の差がある)、分子断片、1つ又は複数の官能基が異なる構造、イオン化の変化である。構造的アナログは、多くの場合、Remington(The Science and Practice of Pharmacology,第19版(1995),第28章)に記載されているものなどの技術との定量的構造活性相関(QSAR)を使用して見出される。
【0038】
芳香族又はアリール:別途特定されていない限り6から15個の環原子の、単一環(例えば、フェニル、ピリジル)又は少なくとも1つの環が芳香族である多重縮合環(例えば、キノリン、インドール、ベンゾジオキソールなど)を有する芳香族炭素環式又は複素環式基であり、但し、結合点はアリール基の芳香族部分の原子を介することが条件である。任意の芳香族環部分がヘテロ原子を含有する場合、基は、ヘテロアリールであり、そうでなければ、基は炭素環式アリール基である。アリール基は、単環式、二環式、三環式又は四環式であっても良い。別途記述のない限り、アリール基は、置換されていても、非置換であっても良い。
【0039】
アリールオキシ:式:−O−アリールを有する基であり、式中、アリールは本明細書に定義されている通りである。
【0040】
コンジュゲート:2つ以上の部分が直接的又は間接的に一緒に結合しているものである。例えば、第1の部分は、第2の部分と共有的又は非共有的に(例えば、静電気的に)結合していても良い。「リンカー」(2つの部分の間に位置する分子又は原子の一群)を使用するなどの間接的な結合が可能である。
【0041】
コンジュゲート系:本明細書に使用されるとき、用語「コンジュゲート系」は、非局在化パイ電子を有する重複軌道(典型的には、p軌道)を含む化合物を指す。典型的には、化合物は、交互単及び多重結合を含む。重複p軌道は、隣接する重複p軌道の間に単結合を架橋する。孤立対、ラジカル及びカルベニウムイオンは、系の一部でありうる。系は、環状、非環式又はこれらの組み合わせでありうる。例示的なコンジュゲート系には、ベンゼン、ピラゾール、イミダゾール、ピリジン、ピリミジン、ピロール、フラン、チオフェン、ナフタレン、アントラセン、インドール、ベンゾオキサゾール、ベンゾイミダゾール及びプリンなどの芳香族化合物が含まれるが、これらに限定されない。
【0042】
接触させる:2つ以上の部分の間に会合、特に直接的な物理的会合を、例えば、固体形態及び/又は液体形態の両方において可能にする配置(例えば、本明細書に開示されている組成物を含有する溶液などの組成物と接触する、スライドに固定されている生物学的試料などの生物学的試料の配置)である。
【0043】
検出する:作用物質(シグナル又は特定の抗原、タンパク質若しくは核酸など)が、例えば試料中に存在するか又は不在であるかを決定することである。幾つかの例において、このことは、定量化及び/又は局在化、例えば細胞若しくは特定の細胞区画内での局在化を更に含むことができる。「検出すること」は、標的分子が生物学的試料中に存在するかを決定することなど、何かが存在するか又は存在しないかを決定する任意の方法を指す。例えば、「検出すること」は、視覚的又は機械的な装置を使用して、試料が特定の特徴を示すかを決定することを含むことができる。ある特定の例において、光学顕微鏡法及び他の顕微鏡手段を使用して、標的に結合した又は標的の近位に結合した検出可能標識を検出する。
【0044】
検出可能標識:組織試料などの試料中の標的分子などの標的の存在及び/又は濃度を示す検出可能(視覚的に、電気的に又は他の方法により)シグナルを生じることができる分子又は材料である。標的に直接的に又は標的の近位において結合することができる分子にコンジュゲートさせると、検出可能標識を使用して、標的の位置を特定する及び/又は標的を定量化することができる。これによって、試料中の標的の存在及び/又は濃度を、検出可能標識により生じるシグナルの検出によって検出することができる。検出可能標識を直接的又は間接的に検出することができ、異なる分子にコンジュゲートされた幾つかの異なる検出可能標識を組み合わせて使用して、1つ又は複数の標的を検出することができる。別々に検出されうる複数の検出可能標識を、異なる標的に直接的に又は異なる標的の近位において結合する異なる分子にコンジュゲートさせて、試料中の複数の標的の検出を提供できる多重化されたアッセイを提供することができる。本明細書に使用されるとき、検出可能標識には、着色、蛍光性、リン光性及び発光性の分子及びハプテンが含まれる。
【0045】
電子供与基:電子密度の幾つかをコンジュゲート系に供与できる原子又は官能基である。電子密度は、σ結合(誘導)を介して又はπ結合(共鳴)を介して供与されうる。幾つかの官能基は、一方の機構により供与基であり、他方の機構により求引基である。例示的な電子供与基には、−NH、−NHR、−NR、−OH、−CH=CH、−NHC(O)R、−OR、−Rが含まれるが、これらに限定されず、ここでRは、低級アルキルなどのアルキル(例えば、メチル、エチル)である。
【0046】
電子求引基:電子密度をコンジュゲート系から求引できる原子又は官能基である。電子密度は、σ結合(誘導)を介して又はπ結合(共鳴)を介して求引されうる。幾つかの官能基は、一方の機構により供与基であり、他方の機構により求引基である。例示的な電子求引基には、ハロ、ハロアルキル、−NH、−NO、−CH=CH、−CN、−SOH、−C(O)OH、−C(O)H、−C(O)R、−CN、−C(O)OR、−NRが含まれるが、これらに限定されず、ここでRは、低級アルキルなどのアルキル(例えば、メチル、エチル)である。
【0047】
ヘテロ脂肪族:1個又は複数の炭素がヘテロ原子に代えられている脂肪族化合物である。例示的なヘテロ原子には、O、S、N、P、Si又はBが含まれるが、これらに限定されない。ヘテロ脂肪族部分は、置換されていても、非置換であっても良い。置換は、炭素原子であっても、ヘテロ原子であっても良い。
【0048】
ヘテロアリール:少なくとも1個のヘテロ原子を有する、すなわち、環中の1個又は複数の炭素原子が、少なくとも1つの孤立電子対を有する原子、典型的には、窒素、酸素、リン、ケイ素又は硫黄に代えられている、芳香族化合物又は基である。別途記述のない限り、ヘテロアリール基は、置換されていても、非置換であっても良い。
【0049】
無機エステル:無機酸及びアルコールから誘導されるエステルである。例示的な無機酸には、リン酸、硫酸、硝酸又はホウ酸が含まれるが、これらに限定されない。無機エステルには、硫酸エステル、リン酸エステル、硝酸エステル又はホウ酸エステル、例えばリン酸トリフェニルが含まれるが、これらに限定されない。
【0050】
脱離基:異種溶解結合切断の際に1対の電子により排除される分子断片である。脱離基の他の用語は、核脱離である。脱離基は、アニオンであっても、中性分子であっても良い(脱離基が分子に結合した際に正荷電される場合、1対の電子により脱離するときに中性になる)。分子断片が脱離基になる能力(すなわち、その核移動能(nucleofugality)又は核逃散能(nucleofugacity))は、その安定性と相関する。幾つかの状況において、例えば、脱離基が弱塩基性であるとき、脱離基が離れる能力は、脱離基のコンジュゲート酸のpKと関連することがあり、pKが低いほど、常にとは限らないが多くの場合に、脱離基の良好な能力と相関する。当業者は、脱離基の相対的な核移動能を示す、例えば有機化学の教科書における容易に利用可能な表のことを認識している。
【0051】
実質的非阻害性:QMPは、酵素の反応性部位と反応しないように酵素から拡散するキノンメチドを形成する場合、実質的に非阻害性である。実質的な非阻害性は、特定の酵素及びQMPの機能性試験によって確立することができる。一般に、本明細書に記載されている染色が長時間(例えば、>5分間)にわたって増加する場合、QMPは、実質的に非阻害性である。QMPが酵素を阻害する場合、染色の量は、経時的に又は更なるQMPの添加によって増加しない。
【0052】
求核種:化学反応の際に電子対を正荷電(又は部分的に正荷電)原子に供与して、化学結合を形成することができる化学種である。孤立電子対又は少なくとも1つのパイ結合を有するアニオン及び分子は、求核種として作用することができる。
【0053】
オリゴヌクレオチド:ホスホジエステル結合により結合している、長さが約6個から約300個のヌクレオチドの複数の結合ヌクレオチドである。本明細書に使用されるとき、オリゴヌクレオチドという用語は、DNAオリゴヌクレオチド、RNAオリゴヌクレオチド、合成オリゴヌクレオチド(例えば、非天然に生じるDNA又はRNA配列)及びオリゴヌクレオチドアナログを指す。オリゴヌクレオチドアナログは、オリゴヌクレオチドと同様に機能するが、非天然に生じる一部分を有する部分を指す。例えば、オリゴヌクレオチドアナログは、変更された糖部分などの非天然に生じる一部分又はホスホロチオエートオリゴヌクレオチドなどの糖間連結を含有することができる。天然に生じるポリヌクレオチドの機能的アナログは、RNA又はDNAに結合することができ、ペプチド核酸分子が含まれうる。
【0054】
プローブ:試料中の別の物質を検出又は特定するために使用される物質である。本明細書に使用されるとき、プローブは、抗体、抗体断片、単離された核酸又は組織試料に存在する所望の標的、例えば、標的タンパク質若しくは核酸配列に特異的に結合することができる単離された合成オリゴヌクレオチドでありうる。プローブは、検出可能標識又はレポーター分子(例えば、ハプテン)を含んでも良い。
【0055】
置換されている:典型的には水素原子の代わりに別の原子又は基、すなわち置換基が結合している、アリール若しくは脂肪族化合物又はそのラジカルなどの基本化合物である。例えば、置換されているアリール化合物又は置換基は、トルエンなど、アリール基剤の閉環に結合している脂肪族基を有することができる。ここでも、単なる例として、限定されることなく、長鎖炭水化物は、1個又は複数のハロゲン、ヒドロキシル若しくは=Oなどの酸素、アリール基、環状基、ヘテロアリール基又は複素環基などの、結合している置換基を有することができる。
【0056】
標的:その存在、位置及び/又は濃度が決定される分子である。例示的な標的には、組織試料に存在するタンパク質及び核酸配列が含まれる。
【0057】
チオレート:式:−S−Rを有する部分であり、式中、Rは、アリール、脂肪族又はヘテロ脂肪族部分である。
【0058】
II.キノンメチドアナログ前駆体
A.概観
本開示は、QM及びそれらの前駆体に関連する組成物、キット及び方法に関する。本開示のQMPは、酵素に直接的に又は酵素の近位において結合できる反応性キノンメチドへのキノンメチド前駆体の酵素触媒変換を使用する、検出事象の増幅のために開発された。
【0059】
キノンメチドは、対応するキノンのカルボニル酸素の1個がメチレン基(CH)に代えられてアルケンを形成する、キノンアナログであり、下記に示されている。
(例えば、キノンメチドに関する一般的開示が出典明示により本明細書に援用される、Rokita, Quinone Methides, April 2009, John Wiley & Sons, Inc.を参照すること)。
【0060】
キノンメチドのメチレン部分は、適切な反応性求核種と反応する極めて反応性の高い求電子剤である。反応性求核種は、免疫組織化学用途における染色試薬酵素、酵素がコンジュゲートする抗体及び生物学的試料それ自体によって提供されうる。キノンメチドのin situでの生成は、標識が、マトリックス(例えば、組織)内に存在する求核残基に共有結合できるようにする。例示的な求核残基には、アミノ酸のアミノ、ヒドロキシル及びチオール基(例えば、リシン、チロシン、トレオニン、セリン及びシステイン)、並びに核酸のアミノ、カルボニル及びヒドロキシル基などの、反応性窒素、酸素及び硫黄含有基を含む生体分子が含まれる。
【0061】
キノンメチド(QM)を形成することができる酵素基質を、潜在的な機構に基づいた、ヒドロラーゼ酵素の阻害剤として最初に調査した。例えば、QMPを、生物学的に不活性な硫酸化ステロイドから生物学的に活性なステロイドへの脱硫酸化を触媒する、ステロイドスルファターゼ(STS)の阻害について調査した。この手法によると、STSにより生成されたQMは、STSと反応して、例えば治療手法としてその活性を阻害する(酵素を阻害するQMの使用に関する開示が出典明示により本明細書に援用される、Ahmed等 ChemBioChem. 2009;10:1457)。
【0062】
別の手法によると、Lenger等は、キノンメチド(QM)トラップ(すなわち、活性に基づいたプロテオームプローブ)を使用する活性スルファターゼのプロファイリングを開示する。健康及び疾患における活性スルファターゼをプロファイルするため、スルファターゼに向けられた、活性に基づいたプロテオームツールである、キノンメチド(QM)トラップを、活性に基づいたプロテオームプローブ(ABPP)として評価した。Lenger等により適用されたQMトラップの概念は、酵素阻害剤の酵素代謝回転に依存する反応性QM中間体のin situ生成を伴っていた。フルオロメチルフェノレートスルフェート基質を、QM前駆体として使用してQMを生成し、次にそれをフッ化物排除により自然に断片化させた。QMを使用して、スルファターゼに保存された活性部位残基を捕捉し、代謝回転依存不活性化及び特異的タンパク質標識をもたらした。トラップを、スルファターゼに対して広範囲の反応性を有するように設計した(ABPPへのQMトラップの使用に関する開示が出典明示により本明細書に援用される、Lenger等 Bioorg Med Chem. Jan 15, 2012; 20(2): 622-627)。
【0063】
Lenger等及びAhmed等の手法は、酵素不活性が本実施態様の目的ではないので、本開示の技術に反している。そうではなく、酵素不活性化は、酵素が、QMに基づいた標識の使用による検出を増幅するために使用されるときには、回避されるべきである。検出に使用されるとき、酵素活性の維持は、各酵素がより大きなシグナル伝達を生じることができるので望ましい。一般に、酵素の停止は、本明細書に記載されている増幅目的に反している。換言すると、QM前駆体は、酵素停止を回避するように選択及び/又は設計される。むしろQM前駆体は、QMが酵素の触媒部位から拡散できるように選択及び/又は設計される。酵素を不活性化しない間に、QMは、適切な標的の標識をもたらすために、酵素に近接した求核種と十分に反応性があるべきである。
【0064】
なお別の例において、Qing Shao等による開示は、抗生物質耐性菌の蛍光画像化及び急速なスクリーニングにおけるベータラクタマーゼ活性の共有結合レポーターとしてのQM前駆体の使用を記載した(細菌細胞全体の蛍光標識用のQM標識の使用に関する開示が出典明示により本明細書に援用される、Shao, Q.; Zheng, Y.; Dong, X. M.; Tang, K.; Yan, X. M.; Xing, B. G. Chem-Eur J 2013, 19, 10903)。この手法によると、QMは、ペニシリン及びセファロスポリン系抗生物質を破壊する天然に生じる細菌酵素である耐性関連ベータラクタマーゼにより活性化されうる、蛍光プローブとして使用される。開示されたQMプローブは、反応性キノンメチドの形成と共に、蛍光消光蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)基の切断を必要とし、それから抗生物質耐性菌に結合することができる。この手法は、活性内在性酵素に依存し、抗生物質耐性菌全体を非特異的に標識することを求める。更に、細菌細胞は溶液により染色された。この溶液染色は、溶液中の細胞濃度が細胞間の距離を決め、希釈を使用して細胞間の距離を増加できるので有利である。
【0065】
本開示は、非内在性酵素を使用して、染色プロトコールに偽陰性を作り出すことを回避する。本明細書に開示されているQMPは、酵素を阻害することなく酵素の近位に結合するように設計された(すなわち、QMPは、酵素に対して実質的に非阻害性である)。反応性QM化合物の長い距離の拡散はQing Shao等の手法には無関係であるが、本開示のQM前駆体は、標的からの拡散距離を制限するために十分な反応性があるように選択及び/又は設計される。例えば、ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)組織試料が使用されるとき、反応性種の長距離拡散は、拡散した不鮮明な染色をもたらす。したがって、過度に安定した反応性QM化合物は、組織染色への使用に不適切である。本明細書に含まれる例は、過度に安定したQM化合物反応性化合物を使用すると、この好ましくない染色結果をもたらすことを実証している。
【0066】
Kwan等(蛍光的に標識されたQM標識の使用に関する開示が出典明示により本明細書に援用される、Angew Chem Int Edit 2011, 50, 300)は、同族グリコシダーゼとの反応によりQMを生成するように修飾されたクマリングリコシドを利用する、蛍光植物組織学的染色を報告した。この報告は、生成部位から拡散が最小限である固相タンパク質の共有結合的標識におけるQMの潜在性を実証しており、このことは固相イムノアッセイにおいて不可避であり、現在のTSA技術において重要な特徴である。Kwan等により記載されたプローブの主要な制限は、各レポーター分子が、QM前駆体の機能性を含有するように合成的に修飾される必要性である。すなわち、植物細胞において目的の酵素を標識する際、クマリンは、キノンメチド生成種及び標識の両方になるように修飾された。この手法は、様々な標識の生成に相当な費用及び複雑性を加え、多くの検出可能標識(例えば、キノンメチド生成種を含むように修飾できない構造を有する検出可能標識)にとって不適切である。このように、Kwan等は、キノンメチド生成部分と検出可能標識を別個に有するQM検出可能分子を記載していない。Kwan等は、以前に開発されたQM前駆体が有効性の無いままに実現されたことも確立している。したがって、QM生成部分と検出可能標識を別個に含み、酵素を阻害しないQMをもたらすQM前駆体化合物の必要性が、当該技術において依然として存続している。特にKwan等は、(ジ)ハロメチルフェノールが分解し、それにより生成されたキノンメチドが反応するのに必要な時間が、多くの場合、試薬が活性部位から拡散し、水を含む他の利用可能な求核種と反応しうるのに十分に長いと結論付けている。更にKwan等は、ジフルオロメチル部分を含むQM前駆体化合物を開示し、加溶媒分解に対するジフルオロメチルQM前駆体化合物の大きな安定性及び前駆体化合物から生成されたフルオロQM化合物の大きな安定性に基づいて、モノフルオロメチル誘導体よりも優れていると記載している。
【0067】
現在記載されているキノン前駆体及びこれを使用する方法は、検出可能標識及びキノンメチドの生成、並びに求核種安定化機能が分子内で分かれている一般化された手法を使用する。1つの手法は、ほぼあらゆる検出可能分子への単純なコンジュゲーションを可能にするアミン官能化リンカー基を含有する、単一のQM前駆体足場を使用することである。1つの重要な実施態様は、FFPE組織へのIHCなどの固相イムノアッセイに、CARDを適用することに関する。したがって、リン酸エステル基を使用して酵素切断認識基を例示することは、現在のイムノアッセイにおける同族の酵素アルカリホスファターゼ(AP)の偏在性のため、当然の選択であった。
【0068】
ここで図1を参照すると、IHCにおけるAPに基づいたCARDの適用は、一次抗体(Ab)102と試料とのインキュベーションから始まる。Ab102は、目的の抗原104を認識する。次に試料を、典型的な抗種Ab結合により一次Abに結合する二次Ab106と共にインキュベートする。二次抗体106を、酵素108により、例えばアルカリホスファターゼ(AP)により標識する。次に検出可能に標識したQM前駆体110を適用する。検出可能に標識したQM前駆体110は、レポーター基112及び酵素認識基114(この例では、リン酸エステル)を含む。APは、リン酸エステル基を認識及び切断して、脱離基の放出及びQMの形成をもたらす。これらのQMは、生成部位に近接して固定化組織求核種と反応するか又は反応媒体中の求核種により停止される。次に、組織に共有結合している検出可能な分子は、ハプテンの場合では様々な視覚的技術の1つにより又は蛍光団の場合では蛍光顕微鏡法により検出される。
【0069】
B.化合物
本明細書に使用されるとき、QMPは、酵素認識基と、脱離基と、結合であってもリンカー部分であっても良いリンカーを介して系に接続している検出可能標識とを含むコンジュゲート系を含む。コンジュゲート系は、芳香族系であっても良い。系は、酵素認識基が対応する酵素と相互作用し、脱離基が離れたとき、QMをもたらすようにコンジュゲートしている。
【0070】
酵素認識基は、特定の酵素との相互作用における適合性に基づいて選択される。例えば、ホスファターゼとの適切な相互作用では、酵素認識基は、コンジュゲート系に典型的には酸素、窒素又は硫黄を介して結合しているリン酸エステル(−P(O)(OH))であり、ホスホジエステラーゼでは、酵素認識基は、ホスホジエステルであり、エステラーゼでは、エステルであり、アミダーゼ又はプロテアーゼでは、アミドであり、ニトロレダクターゼでは、ニトロ基であり、ウレアーゼでは、尿素基であり、スルファターゼでは、硫酸エステルであり、チトクロムP450酵素では、典型的にはアルコキシであり、ラクタマーゼでは、酵素認識基は、βラクタム含有部分であり、グルコシダーゼ、ガラクトシダーゼ及びグルクロニダーゼでは、コンジュゲート系に酸素で結合している酵素適合糖(enzyme−appropriate sugar)(例えば、アルファ又はベータグルコース、アルファ又はベータガラクトースなど)である。
【0071】
脱離基及び検出可能標識、並びにリンカーは、コンジュゲート系の同じ置換基の一部であっても良く、幾つかの実施態様において、これらは、酵素認識基に隣接して又は酵素認識基のオルトに配置されている。
【0072】
幾つかの実施態様において、染色増幅組成物は、式I又はII:
I 又は II,
のQMPを含み、式中、Aは、1つ又は複数の環を有する環状コンジュゲート系、非環式コンジュゲート系又は環状と非環式の特徴の組み合わせを有するコンジュゲート系などのコンジュゲート系である。特定の実施態様において、コンジュゲート系Aは、炭素環式アリール又はヘテロアリール環系などの置換又は非置換アリール環系である。ZRは、酵素認識基であるか、又はRは、酵素認識基であり、Zは、O、S又はNRであり、ここでRは、水素又は脂肪族、典型的にはアルキル、幾つかの実施態様では、低級アルキルである。LGは、脱離基であり、−C(LG)(R)(R)及び−C(R)LG−部分は、QMにアルケン(C=C)官能基を形成することができる。RがZから切断されると、移行構造が形成され、これが再編成を行い、LGを排除してQMを形成するように、Z及びLG含有部分はコンジュゲート系の相対的な位置に結合する。あるいは、−C(LG)(R)(R)及びRは、互いにオルトに位置し、共にホスホジエステルを形成し、ここでLG−ZRは、−O−P(O)(OH)O−である。そのような実施態様において、ホスホジエステルがZ及び−C(R)(R)−部分の両方から切断されると、キノンメチドが形成される。
【0073】
また式I又はIIを参照すると、R及びRは、独立して、水素、ハロ、シアノ、低級アルキル、低級ハロアルキル、−C(O)アルキル、−C(S)アルキル、−C(O)OH、−C(O)Oアルキル、−C(O)NHR又は−C(O)N(Rであり、ここで、Rは、独立して、水素、アリール、脂肪族若しくはヘテロ脂肪族であり、又は2つのR部分は、共にヘテロ脂肪族環を形成する。Rは、リンカー又は結合であり、Rは、検出可能標識である。
【0074】
幾つかの実施態様において、LGは、ハロゲン化物、アルコキシ、カルボン酸エステル、無機エステル、チオレート、アミン、カルボン酸エステル又はフェノキシドである。他の実施態様において、LGは、フルオロ、クロロ、アジド、メトキシ、エトキシ、イソプロポキシ、酢酸エステル、ピリジウム、DABCO(1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン)又はトリエチルアミンである。幾つかの実施態様において、−C(R)LG又は−C(LG)R−は、エポキシド環を形成し、ここでLGは、環中の酸素である。
【0075】
幾つかの実施態様において、QMPは、式III:


III
を有し、式中、各Qは、独立して、炭素又はO、N若しくはSから選択されるヘテロ原子であり、環は、アリール環又は他のコンジュゲート系など、QMの形成を可能にするほどの十分なコンジュゲーションを有し、各Rは、独立して、ZR、LGを含む部分、検出可能標識を含む部分、水素、孤立対、ハロ、シアノ、オキソ(=O)、脂肪族、アルコキシ、NO、N(R、アリール、ハロアルキル、−C(O)アルキル、−C(S)アルキル、−C(O)OH、−C(O)Oアルキル、−C(O)NHR、−C(O)N(Rであるか、又は2つの隣接R基は、共に脂肪族環若しくはアリール環を形成し、mは、0又は1であり、Z、R、LG、R及びRは、式I及びIIにおいて以前に定義された通りである。また、式IIIを参照すると、少なくとも1つのRは、ZRであり、少なくとも1つのRは、LGを含み、QMPは、少なくとも1つの検出可能標識を含む。幾つかの実施態様において、少なくとも1つのRは、検出可能標識を含む。幾つかの実施態様において、LGは、エポキシド環の酸素である。当業者は、各Rが原子価要件を満たすためにも選択されることを理解する。例えば、Qが酸素である場合、Rは、孤立対である。
【0076】
幾つかの実施態様において、コンジュゲート系は、6員環であり、ZR及びLG含有部分は、互いにオルト又はパラにある。
【0077】
特定の実施態様において、QMPは、式IV:


IV
を有し、式中、Zは、O、S又はNRであり、Rは、酵素認識基であるか、又はZRは、酵素認識基であり、Rは、−C(LG)(R)(R)、−R又は−C(LG)(R)(R)であり、R、R11及びR12は、それぞれ独立して、水素、ハロ、シアノ、脂肪族、アルコキシ、NO、N(R、アリール、ハロアルキル、−C(O)アルキル、−C(S)アルキル、−C(O)OH、−C(O)Oアルキル、−C(O)NHR、−C(O)N(R、−Rであるか、又は2つの隣接する基は、共に脂肪族環若しくはアリール環を形成し、R10は、水素、ハロ、シアノ、脂肪族、アルコキシ、NO、N(R、アリール、ハロアルキル、−C(O)アルキル、−C(S)アルキル、−C(O)OH、−C(O)Oアルキル、−C(O)NHR、−C(O)N(R、−R、−C(LG)(R)(R)であるか、又はR若しくはR11の一方と、脂肪族環若しくはアリール環を形成し、各Rは、独立して、水素又は脂肪族、典型的にはアルキル若しくは低級アルキルであり、LGは、脱離基であり、又はZR及びLGは、共にホスホジエステルを形成し、Rは、結合又はリンカーであり、Rは、検出可能標識であり、各Rは、独立して、水素、アリール、脂肪族若しくはヘテロ脂肪族であり、又は2つのR部分は、共にヘテロ脂肪族環を形成し、各Rは、独立して、水素、ハロ、シアノ、低級アルキル、低級ハロアルキル、−C(O)アルキル、−C(S)アルキル、C(O)OH、−C(O)Oアルキル、−C(O)NHR又は−C(O)N(Rであり、各Rは、独立して、水素、ハロ、シアノ、低級アルキル、低級ハロアルキル、−C(O)アルキル、−C(S)アルキル、−C(O)OH、−C(O)Oアルキル、−C(O)NHR又は−C(O)N(Rであり、LGがハロである場合、R及びRは、ハロではない。また、式Vを参照すると、R及びR10の少なくとも一方は、LGを含み、QMPは、少なくとも1つの−R部分を含む。幾つかの実施態様において、R−R12の少なくとも1つは、Rを含み又はRからなり、特定の実施態様において、R及びR10の少なくとも一方は、Rを含む又はRからなる。
【0078】
式IVの幾つかの例示的なアナログには下記:
が含まれ、式中、R13−R20は、それぞれ独立して、水素、ハロ、シアノ、脂肪族、アルコキシ、NO、N(R、アリール、ハロアルキル、−C(O)アルキル、−C(S)アルキル、−C(O)OH、−C(O)Oアルキル、−C(O)NHR、−C(O)N(R、−Rであるか、又は2つの隣接基は、共に脂肪族環若しくはアリール環を形成し、R−R20の少なくとも1つは、Rを含む又はRからなる。
【0079】
式IVの他の特定の例示的なアナログには下記:
が含まれる。
【0080】
LGは、ハロゲン化物、アルコキシ、カルボン酸エステル、無機エステル、チオレート、アミン、カルボン酸エステル又はフェノキシドでありうる。他の例において、LGは、フルオロ、クロロ、アジド、メトキシ、エトキシ、イソプロポキシ、酢酸エステル、ピリジウム、DABCO(1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン)又はトリエチルアミンである。特定の実施態様において、LGは、F、Cl、−OS(O)CH、−OS(O)CH、−OS(O)、−OS(O)CX、−OC、−N、−NH、−NC、−O−アルキル、−OC(O)アルキル、−OC(O)H、−N(R又はDABCOであり、ここで、Xは、F、Cl、Br又はIであり、各Rは、独立して、水素若しくは低級アルキルであるか、又は2つのR部分は、共にヘテロ脂肪族環を形成する。
【0081】
幾つかの実施態様において、Rは、−(CHNH−、−O(CHNH−、−N(H)C(O)(CHNH−、−C(O)N(H)(CHNH−、−(CHO−、−O(CHO−、−O(CHCHO)−、−N(H)C(O)(CHO−、−C(O)N(H)(CHO−、−C(O)N(H)(CHCHO)−、−(CHS−、−O(CHS−、−N(H)C(O)(CHS−、−C(O)N(H)(CHS−、−(CHNH−、−C(O)N(H)(CHCHO)CHCHNH−、−C(O)(CHCHO)CHCHNH−、−C(O)N(H)(CHNHC(O)CH(CH)(CHNH−又は−N(H)(CHNH−であり、ここで各nは、独立して、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11又は12である。特定の実施態様において、Rは、−CHCHNH−、−OCHCHNH−、−NHCO(CHNH−、−CONH(CHNH−、−NHCO(CHNH−、−CONH(CHNH−、−CONH(CHNH−、−(CHCHO)−、−(CHCHO)−、−C(O)N(H)(CHCHO)CHCHNH−、−CO(CHCHO)CHCHNH−、−CO(CHCHO)CHCHNH−又は−C(O)N(H)(CHNHC(O)CH(CH)(CHNH−である。Rは、トリアゾールを含んでも良く、幾つかの実施態様において、Rは、
である。幾つかの実施態様において、−C(LG)R又は−C(LG)R−は、エポキシド環を形成する。
【0082】
は、ハプテン、蛍光団、発光団又は色素原でありうる。特定の例において、−R又はリンカー検出可能標識(−R)は、脂肪族リンカーにより分子にコンジュゲートされたビオチン、ニトロピラゾール(NP)、PEG−8リンカーなどのPEGリンカーを有するNP、TAMRA、DNP、ファストレッド、HQ、PEG−8リンカーなどのPEGリンカーを有するHQ、ベンゾフラザン、Rhod 110、PEG−8リンカーなどのPEGリンカーを有するダブシル又はCyである。
【0083】
幾つかの実施態様において、ZRは、−OP(O)(OH)、−SP(O)(OH)、−NRP(O)(OH)、−OC(=O)R、−N(R)C(=O)R、−NO、−NR−C(=O)−N(R、−OSOH、−OR、−O−βラクタム含有部分、−S−βラクタム含有部分又は糖がアルファ若しくはベータグルコース、アルファ若しくはベータガラクトースなどの酵素適合糖である−O−糖、あるいはこれらの塩である。他の実施態様において、ZR及びLGは、共にホスホジエステルの−OP(O)(OH)O−を形成する。
【0084】
ある特定の実施態様において、LGはFであり、特定の実施態様において、LGはFであり、R又はRとRは、Hである。
【0085】
式IVのある特定の実施態様において、R及びZRは、共にホスホジエステルを形成し、式V:


V
を有するQMPをもたらし、式中、R、R及びR−R12は、式IVにおいて以前に定義された通りであり、R−R12の少なくとも1つは、Rを含む又はRからなる。特定の実施態様において、R10は、Rを含む又はRからなる。
【0086】
式IVのある特定の例示的な実施態様において、QMPは、
から選択される。
【0087】
式IVの他の例示的な実施態様において、QMPは、
から選択される。
【0088】
上記の例において、Rは、ハプテン、蛍光団、発光団又は色素原などの検出可能標識である。当業者は、それぞれの場合に示されているZR、LG及びR部分が、例示的な部分であり、本明細書に開示されている任意のZR、LG及びR部分に代えられていても良いことを理解する。
【0089】
幾つかの例示的な実施態様において、式IVの化合物は、
リン酸二水素2−(2−((6−(アミノ)ヘキシル)アミノ)−1−フルオロ−2−オキソエチル)フェニル、
リン酸二水素2−(2−((2−アミノエチル)アミノ)−1−フルオロ−2−オキソエチル)フェニル、
リン酸二水素1−(2−((6−アミノヘキシル)アミノ)−1−フルオロ−2−オキソエチル)ナフタレン−2−イル、
リン酸二水素2−(2−((4−(アミノメチル)ベンジル)アミノ)−1−フルオロ−2−オキソエチル)フェニル、
(2S,3S,4S,5R,6R)−6−(2−(2−((6−アミノヘキシル)アミノ)−1−フルオロ−2−オキソエチル)フェノキシ)−3,4,5−トリヒドロキシテトラヒドロ−2H−ピラン−2−カルボン酸、
N−(6−アミノヘキシル)−2−フルオロ−2−(2−(((2S,3R,4S,5S,6R)−3,4,5−トリヒドロキシ−6−(ヒドロキシメチル)テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ)フェニル)アセトアミド、
(2S,3S,4S,5R,6S)−6−(2−(2−((6−アミノヘキシル)アミノ)−1−フルオロ−2−オキソエチル)フェノキシ)−3,4,5−トリヒドロキシテトラヒドロ−2H−ピラン−2−カルボン酸、
N−(6−アミノヘキシル)−2−フルオロ−2−(2−(((2R,3R,4S,5R,6R)−3,4,5−トリヒドロキシ−6−(ヒドロキシメチル)テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ)フェニル)アセトアミド、
N−(6−アミノヘキシル)−2−フルオロ−2−(2−(((2R,3R,4S,5S,6R)−3,4,5−トリヒドロキシ−6−(ヒドロキシメチル)テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ)フェニル)アセトアミド、
(6R,7R)−7−アセトアミド−3−((2−(2−((6−アミノヘキシル)アミノ)−1−フルオロ−2−オキソエチル)フェノキシ)メチル)−8−オキソ−5−チア−1−アザビシクロ[4.2.0]オクタ−2−エン−2−カルボン酸、
(6R,7R)−7−アセトアミド−3−(((2−(2−((6−アミノヘキシル)アミノ)−1−フルオロ−2−オキソエチル)フェニル)チオ)メチル)−8−オキソ−5−チア−1−アザビシクロ[4.2.0]オクタ−2−エン−2−カルボン酸、
硫酸水素2−(2−((6−アミノヘキシル)アミノ)−1−フルオロ−2−オキソエチル)フェニル、
N−(6−アミノヘキシル)−2−フルオロ−2−(2−メトキシフェニル)アセトアミド、
プロピオン酸フェニル2−(2−((6−アミノヘキシル)アミノ)−1−フルオロ−2−オキソエチル)フェニル、
リン酸二水素2−(2−((2−(2−(2−アミノエトキシ)エトキシ)エチル)アミノ)−1−フルオロ−2−オキソエチル)フェニル、
リン酸二水素2−(1−((6−アミノヘキシル)アミノ)−2−フルオロ−1−オキソプロパン−2−イル)フェニル、
2−(2−アセトアミドフェニル)−N−(6−アミノヘキシル)−2−フルオロアセトアミド、
N−(6−アミノヘキシル)−2−フルオロ−2−(2−ニトロフェニル)アセトアミド、
N−(6−アミノヘキシル)−2−フルオロ−2−(2−ウレイドフェニル)アセトアミド、
N−(6−アミノヘキシル)−2−フルオロ−2−(2−(((2S,3R,4S,5R,6R)−3,4,5−トリヒドロキシ−6−(ヒドロキシメチル)テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ)フェニル)アセトアミド、
リン酸二水素2−(2−((6−(2,6−ジアミノヘキサンアミド)ヘキシル)アミノ)−1−フルオロ−2−オキソエチル)フェニル、
リン酸二水素2−((1−(2−アミノエチル)−1H−1,2,3−トリアゾール−4−イル)フルオロメチル)フェニル、又は
リン酸二水素2−(フルオロ(1H−1,2,3−トリアゾール−4−イル)メチル)フェニル
から選択される少なくとも1つの検出可能標識及び部分を含む。
【0090】
他の実施態様において、部分は、
リン酸二水素3−(2−((6−アミノヘキシル)アミノ)−1−フルオロ−2−オキソエチル)−[1,1’−ビフェニル]−4−イル、
リン酸二水素2−(2−((6−アミノヘキシル)アミノ)−1−フルオロ−2−オキソエチル)−4−(2−(4−ヒドロキシフェニル)アセトアミド)フェニル、
リン酸二水素2−(2−((6−アミノヘキシル)アミノ)−1−フルオロ−2−オキソエチル)−4−メトキシフェニル、
リン酸二水素2−(2−((6−アミノヘキシル)アミノ)−1−フルオロ−2−オキソエチル)−4−ニトロフェニル、
リン酸二水素4−アセトアミド−2−(2−((6−アミノヘキシル)アミノ)−1−フルオロ−2−オキソエチル)フェニル、
リン酸二水素4−(6−アミノヘキサンアミド)−2−(2−((6−アミノヘキシル)アミノ)−1−フルオロ−2−オキソエチル)フェニル、
リン酸二水素4−(6−アミノヘキサンアミド)−2−(フルオロメチル)フェニル、
リン酸二水素4−((6−アミノヘキシル)カルバモイル)−2−(フルオロメチル)フェニル、
リン酸二水素4−(2−アミノエチル)−2−(フルオロメチル)フェニル、
リン酸二水素4−(6−アミノヘキサンアミド)−2−(1−フルオロエチル)フェニル、
リン酸二水素2−(6−アミノヘキサンアミド)−4−(1−フルオロエチル)フェニル、
リン酸二水素4−(6−アミノヘキサンアミド)−2−(2−(エチルアミノ)−1−フルオロ−2−オキソエチル)フェニル、
リン酸二水素4−(6−アミノヘキサンアミド)−2−(2−(ブチルアミノ)−1−フルオロ−2−オキソエチル)フェニル、
6−アミノ−N−(2−ヒドロキシ−2−オキシド−4H−ベンゾ[d][1,3,2]ジオキサホスフィニン−6−イル)ヘキサンアミド、
リン酸二水素2−(6−アミノヘキサンアミド)−4−(2−(エチルアミノ)−1−フルオロ−2−オキソエチル)フェニル、
リン酸二水素2−(6−アミノヘキサンアミド)−4−(2−(ブチルアミノ)−1−フルオロ−2−オキソエチル)フェニル、又は
リン酸二水素2−((6−アミノヘキシル)カルバモイル)−4−(1−フルオロエチル)フェニルから選択され、
ここで検出可能標識は、ハプテン、蛍光団、発光団又は色素原であり、酵素認識基、脱離基及びリンカー部分は、例示的であり、本明細書に開示されている任意の酵素認識基、脱離基及びリンカー部分に代えられていても良い。
【0091】
コンジュゲート環がフェニルである式IIの他の例において、QMPは、式VI:


VI
を有し、式中、Z、LG、R、R、R、R、R、R及びRは、式IVにおいて以前に定義された通りであり、R21、R22、R23及びR24は、それぞれ独立して、水素、ハロ、シアノ、脂肪族、アルコキシ、NO、N(R、アリール、ハロアルキル、−C(O)アルキル、−C(S)アルキル、−C(O)OH、−C(O)Oアルキル、−C(O)NHR、−C(O)N(R、−Rであるか、又は2つの隣接基は、共に脂肪族環若しくはアリール環を形成する。
【0092】
ある特定の実施態様において、LGはFであり、特定の実施態様において、LGはFであり、R及びR、並びに/又はRは、水素である。
【0093】
式VIの幾つかの実施態様において、QMPは、下記構造を有する。

【0094】
式VIの他の実施態様において、QMPは、下記:
から選択される構造を有する。他の実施態様において、QMPは、以下:
から選択される構造を有する。
【0095】
上記の例の何れかにおいて、Rは、ハプテン、蛍光団、発光団又は色素原などの検出可能標識である。当業者は、それぞれの場合に示されているZR、LG及びR部分が、例示的な部分であり、本明細書に開示されている任意のZR、LG及びR部分に代えられていても良いことを理解する。
【0096】
幾つかの例示的な実施態様において、式IVの化合物は、
リン酸二水素4−(2−((6−アミノヘキシル)アミノ)−1−フルオロ−2−オキソエチル)フェニル、
リン酸二水素4−(2−((2−(2−(2−アミノエトキシ)エトキシ)エチル)アミノ)−1−フルオロ−2−オキソエチル)フェニル、
リン酸二水素4−(1−((6−アミノヘキシル)アミノ)−2−フルオロ−1−オキソプロパン−2−イル)フェニル、
リン酸二水素4−(2−((6−(2,6−ジアミノヘキサンアミド)ヘキシル)アミノ)−1−フルオロ−2−オキソエチル)フェニル、
N−(6−アミノヘキシル)−2−フルオロ−2−(4−(((2S,3R,4S,5R,6R)−3,4,5−トリヒドロキシ−6−(ヒドロキシメチル)テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ)フェニル)アセトアミド、
プロピオン酸フェニル4−(2−((6−アミノヘキシル)アミノ)−1−フルオロ−2−オキソエチル)フェニル、
(2S,3S,4S,5R,6R)−6−(4−(2−((6−アミノヘキシル)アミノ)−1−フルオロ−2−オキソエチル)フェノキシ)−3,4,5−トリヒドロキシテトラヒドロ−2H−ピラン−2−カルボン酸、
N−(6−アミノヘキシル)−2−フルオロ−2−(4−(((2S,3R,4S,5S,6R)−3,4,5−トリヒドロキシ−6−(ヒドロキシメチル)テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ)フェニル)アセトアミド、
(2S,3S,4S,5R,6S)−6−(4−(2−((6−アミノヘキシル)アミノ)−1−フルオロ−2−オキソエチル)フェノキシ)−3,4,5−トリヒドロキシテトラヒドロ−2H−ピラン−2−カルボン酸、
(6R,7R)−7−アセトアミド−3−((4−(2−((6−アミノヘキシル)アミノ)−1−フルオロ−2−オキソエチル)フェノキシ)メチル)−8−オキソ−5−チア−1−アザビシクロ[4.2.0]オクタ−2−エン−2−カルボン酸、
(6R,7R)−7−アセトアミド−3−(((4−(2−((6−アミノヘキシル)アミノ)−1−フルオロ−2−オキソエチル)フェニル)チオ)メチル)−8−オキソ−5−チア−1−アザビシクロ[4.2.0]オクタ−2−エン−2−カルボン酸、
N−(6−アミノヘキシル)−2−フルオロ−2−(4−(((2R,3R,4S,5R,6R)−3,4,5−トリヒドロキシ−6−(ヒドロキシメチル)テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ)フェニル)アセトアミド、
硫酸水素4−(2−((6−アミノヘキシル)アミノ)−1−フルオロ−2−オキソエチル)フェニル、
N−(6−アミノヘキシル)−2−フルオロ−2−(4−メトキシフェニル)アセトアミド、
N−(6−アミノヘキシル)−2−フルオロ−2−(4−(((2R,3R,4S,5S,6R)−3,4,5−トリヒドロキシ−6−(ヒドロキシメチル)テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ)フェニル)アセトアミド、
2−(4−アセトアミドフェニル)−N−(6−アミノヘキシル)−2−フルオロアセトアミド、
N−(6−アミノヘキシル)−2−フルオロ−2−(4−ニトロフェニル)アセトアミド、
N−(6−アミノヘキシル)−2−フルオロ−2−(4−ウレイドフェニル)アセトアミド、
リン酸二水素4−(2−((6−アミノヘキシル)アミノ)−1−フルオロ−2−オキソエチル)−2−メトキシフェニル、
リン酸二水素4−(2−((6−アミノヘキシル)アミノ)−1−フルオロ−2−オキソエチル)−2−ニトロフェニル、
リン酸二水素2−アセトアミド−4−(2−((6−アミノヘキシル)アミノ)−1−フルオロ−2−オキソエチル)フェニル、
リン酸二水素2−(6−アミノヘキサンアミド)−4−(2−((6−アミノヘキシル)アミノ)−1−フルオロ−2−オキソエチル)フェニル、
リン酸二水素4−(2−((6−アミノヘキシル)アミノ)−1−フルオロ−2−オキソエチル)−2−(2−(4−ヒドロキシフェニル)アセトアミド)フェニル、又は
リン酸二水素4−(3−((6−アミノヘキシル)カルバモイル)オキシラン−2−イル)−2,6−ジメトキシフェニルから選択される少なくとも1つの検出可能標識及び部分を含み、
ここで検出可能標識は、ハプテン、蛍光団、発光団又は色素原であり、酵素認識基、脱離基及びリンカー部分は、例示的であり、本明細書に開示されている任意の酵素認識基、脱離基及びリンカー部分に代えられていても良い。
【0097】
図2(A)は、幾つかの追加の例示的なQM前駆体を説明する表を提供する。
【0098】
幾つかの実施態様において、化合物は、
リン酸二水素2−(フルオロメチル)−4−(6−(5−(2−オキソヘキサヒドロ−1H−チエノ[3,4−d]イミダゾール−4−イル)ペンタンアミド)ヘキサンアミド)フェニル、
リン酸二水素4−(6−(2−((2,4−ジニトロフェニル)アミノ)アセトアミド)ヘキサンアミド)−2−(フルオロメチル)フェニル、
リン酸二水素2−(フルオロメチル)−4−(1−(5−ニトロ−1H−ピラゾール−3−イル)−1,29−ジオキソ−5,8,11,14,17,20,23,26−オクタオキサ−2,30−ジアザヘキサトリアコンタン−36−アミド)フェニル、
リン酸二水素(E)−4−(6−(4−((3−((4−クロロ−2−メチルフェニル)カルバモイル)−2−ヒドロキシナフタレン−1−イル)ジアゼニル)ベンズアミド)ヘキサンアミド)−2−(フルオロメチル)フェニル、
リン酸二水素4−(6−(3’,6’−ビス(ジメチルアミノ)−3−オキソ−3H−スピロ[イソベンゾフラン−1,9’−キサンテン]−5−カルボキサミド)ヘキサンアミド)−2−(フルオロメチル)フェニル、
リン酸二水素4−(6−(3’,6’−ジアミノ−3−オキソ−3H−スピロ[イソベンゾフラン−1,9’−キサンテン]−5−カルボキサミド)ヘキサンアミド)−2−(フルオロメチル)フェニル、
1−(6−((6−((3−(フルオロメチル)−4−(ホスホノオキシ)フェニル)アミノ)−6−オキソヘキシル)アミノ)−6−オキソヘキシル)−3,3−ジメチル−2−((1E,3E)−5−((Z)−1,3,3−トリメチルインドリン−2−イリデン)ペンタ−1,3−ジエン−1−イル)−3H−インドール−1−イウム塩化物、
リン酸二水素2−(メトキシメチル)−4−(6−(5−(2−オキソヘキサヒドロ−1H−チエノ[3,4−d]イミダゾール−4−イル)ペンタンアミド)ヘキサンアミド)フェニル、
酢酸ベンジル5−(6−(5−(2−オキソヘキサヒドロ−1H−チエノ[3,4−d]イミダゾール−4−イル)ペンタンアミド)ヘキサンアミド)−2−(ホスホノオキシ)、
1−(5−(6−(5−(2−オキソヘキサヒドロ−1H−チエノ[3,4−d]イミダゾール−4−イル)ペンタンアミド)ヘキサンアミド)−2−(ホスホノオキシ)ベンジル)ピリジン−1−イウム、
1−(5−(6−(5−(2−オキソヘキサヒドロ−1H−チエノ[3,4−d]イミダゾール−4−イル)ペンタンアミド)ヘキサンアミド)−2−(ホスホノオキシ)ベンジル)−1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン−1−イウム、
N,N−ジエチル−N−(5−(6−(5−(2−オキソヘキサヒドロ−1H−チエノ[3,4−d]イミダゾール−4−イル)ペンタンアミド)ヘキサンアミド)−2−(ホスホノオキシ)ベンジル)エタンアミニウム、
ジエチルカルバミン酸ベンジル5−(6−(5−(2−オキソヘキサヒドロ−1H−チエノ[3,4−d]イミダゾール−4−イル)ペンタンアミド)ヘキサンアミド)−2−(ホスホノオキシ)、
リン酸二水素2−(フルオロメチル)−4−((5−(5−(2−オキソヘキサヒドロ−1H−チエノ[3,4−d]イミダゾール−4−イル)ペンタンアミド)ペンチル)カルバモイル)フェニル、又は
リン酸二水素2−(フルオロメチル)−4−(2−(5−(2−オキソヘキサヒドロ−1H−チエノ[3,4−d]イミダゾール−4−イル)ペンタンアミド)エチル)フェニル
から選択される。
【0099】
式IIの他の実施態様において、コンジュゲート環は、ヘテロアリール又は複素環である。例示的な、ヘテロアリール又は複素環には、ピラゾール、イミダゾール、ピリジン、ピリミジン、ピリダジン、ピラジン、ピロール、フラン、チオフェン、インドール、ベンゾオキサゾール、ベンゾイミダゾール、チアゾール、オキサゾール、イミダゾール又はプリンが含まれるが、これらに限定されない。
【0100】
コンジュゲート環がヘテロアリール又は複素環である式IIの幾つかの例示的なアナログには、下記:
が含まれ、ここで、Z、R及びLGは、式IVに関して以前に定義された通りであり、R及びRは、それぞれ独立して、水素、ハロ、シアノ、低級アルキル、低級ハロアルキル、−C(O)アルキル、−C(S)アルキル、−C(O)OH、−C(O)Oアルキル、−C(O)NHR又は−C(O)N(Rであり、R25−R29は、それぞれ独立して、水素、ハロ、シアノ、脂肪族、アルコキシ、NO、N(R、アリール、ハロアルキル、−C(O)アルキル、−C(S)アルキル、−C(O)OH、−C(O)Oアルキル、−C(O)NHR、−C(O)N(R、−Rであるか、又は2つの隣接基は、共に脂肪族環若しくはアリール環を形成し、各Rは、独立して、水素、アリール、脂肪族若しくはヘテロ脂肪族であり、又は2つのR部分は、共にヘテロ脂肪族環を形成し、R、R及びR25−R29の少なくとも1つは、Rを含む又はRからなる。幾つかの実施態様において、LGがハロであるとき、R及びRは、ハロではない。
【0101】
式I−VIの幾つかの実施態様において、Rが−P(O)(OH)であるとき、−C(LG)(R)(R)は、−CHF、CHOH、−CHOCH、−CHOC(O)CH、−CHN(C、−CH(NC又は−CH(DABCO)であり、ここでDABCOは、1.4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンである。ある特定の実施態様において、−C(LG)(R)(R)は、−CHF、−CHOCH又は−CHOCOCHである。
【0102】
i)酵素認識基
酵素認識基は、酵素認識に適した任意の基から選択することができる。実例的な実施態様において、酵素認識基は、リン酸エステル、ホスホジエステル、アミド、ニトロ、尿素、硫酸エステル、メチル、エステル、アルファ又はベータグルコース、ベータラクタム、アルファ又はベータガラクトース、アルファ又はベータラクトース及びアルファ又はベータグルクロン酸から選択される。当業者は、ホスファターゼ、ホスホジエステラーゼ、エステラーゼ、リパーゼ、アミダーゼ、プロテアーゼ、ニトロレダクターゼ、ウレアーゼ、スルファターゼ、チトクロムP450、アルファ又はベータグルコシダーゼ、アルファ又はベータラクタマーゼ、アルファ又はベータグルクロニダーゼ、アルファ又はベータガラクトシダーゼ、アルファ又はベータラクターゼによる認識に適した基など、使用される酵素に基づいて適切な酵素認識基を選択することができる。
【0103】
下記に提供される実施態様は、特定のQMPの例示的な酵素認識基を説明する。
【0104】
ここで図3(A)
を参照すると、標的202を有する試料200が抗体204と接触する。標的202は、抗体204と特異的に結合するように示されている。抗体204は、1つ又は複数の酵素206とコンジュゲートしている。QMP208と接触すると、酵素206は、リン酸エステル基により例示される酵素認識基の、QMP208からの切断を触媒して、フェノール中間体210を生じる。フェノールは、脱離基(LG)を排除して、QMコンジュゲート212を生じる。QMコンジュゲート212は、求核種と反応することができる反応性求電子剤である。
【0105】
ここで図3(B)を参照すると、QMコンジュゲート212は、説明されているように、アミン又はスルフヒドリル基などの、試料200に存在する求核種と反応することができる。QMコンジュゲート212と試料200に共有的に結合している複合体214は、試料において求電子QMコンジュゲートと求核基が反応すると形成される。酵素206は、抗体204を介して標的202の近位に配置されたので、検出可能標識216は、標的202の近位において試料200に共有結合している。したがって、検出可能標識216を検出して、標的202の存在を特定することができる。この反応は、多くの複合体214が各標的において形成されるように繰り返し生じ、それによって、検出事象に関連するシグナルが増幅される。検出可能標識216は、適切な手段で検出されうるハプテン、蛍光団、発光団又は色素原など、そのことに有用な任意の化合物でありうる。酵素206は、標的202に直接的又は間接的に結合しうる。
【0106】
ここで図3(C)を参照すると、当業者は、QMコンジュゲート212と溶媒(例えば、水)との競合反応が非結合化合物218の形成をもたらしうることを理解する。非結合化合物218を洗い流すことができ、それによって試料の他の位置の無差別的な染色が低減される。
【0107】
共有結合化合物214は、式VII又はVIII:
VII 又は VIII
の一般構造を有し、式中、A、Z及びR−Rは、以前に定義された通りである。
【0108】
アルカリホスファターゼ(ALP、ALKP)(EC3.1.3.1)は、ヌクレオチド、タンパク質及びアルカロイドを含む多くの種類の分子からのリン酸エステル基の除去に関与しているヒドロラーゼ酵素である。リン酸エステル基を除去するプロセスは、脱リン酸化と呼ばれる。名称が示唆しているように、アルカリホスファターゼ(塩基性ホスファターゼとも呼ばれる)は、アルカリ性環境下で最も有効である。アルカリホスファターゼは、利用可能な酵素に対して有利な幾つかの特質を有し、例えば、(1)アルカリホスファターゼは、1×10リットル/モル−秒の拡散律速限界に近似するkcat/Kmを有すること、(2)アルカリホスファターゼの最適pHは、後に続くQMの反応に適したpHである9−10であること、(3)アルカリホスファターゼは、大部分の酵素より良好に熱及び化学分解に抵抗する非常に安定した酵素であること、及び(4)アルカリホスファターゼは、適度に小さく、他の生物学的分子にコンジュゲートする方法が開発されていることが含まれる。
【0109】
スルファターゼ(EC3.1.6)は、ステロイド、炭水化物及びタンパク質を含む多くの種類の分子における硫酸エステルの加水分解を触媒するエステラーゼ酵素である。これらは、翻訳後酸化により導入される特有の触媒アルデヒドを介して、硫酸エステルを加水分解的に切断する。スルファターゼは、全身にわたる広範囲の組織に分布されている。
【0110】
グルコシドヒドロラーゼとしても知られているグリコシダーゼ(EC3.2.1)は、複合糖のグリコシド結合の加水分解を触媒する。これらは自然界における極めて一般的な酵素であり、O−及びS−グリコシドの両方の加水分解を触媒する。
【0111】
リパーゼは、脂肪の加水分解を触媒する酵素である。これらは、エステラーゼ酵素のサブクラスであり、広範囲の生物体及び組織の種類に見出される。
【0112】
β−ラクタマーゼ(EC3.5.2.6)は、加水分解機構によりβ−ラクタム環を開環する酵素である。これらは幾つかの細菌により産生され、ペニシリンなどのβ−ラクタム抗生物質に対して耐性をもたらしうる。
【0113】
ii)脱離基
脱離基は、QMPが適切な酵素と接触したとき、脱離基として作用してキノンメチドを形成することができる任意の適切な基でありうる。幾つかの実施態様において、脱離基は、形式負電荷を有するアニオンとして離れることができる基である。他の実施態様において、脱離基は、QMPを離れる前に正電荷を有し、中性種として離れる。適した脱離基には、ハロゲン化物、アジド、硫酸エステル、カルボン酸エステル、無機エステル、チオレート、アミン、アリールオキシ、アルコキシ又はヘテロアリールが含まれるが、これらに限定されない。特定の実施態様において、LGは、フッ化物、塩化物、酢酸エステル、メトキシ、エトキシ、イソプロポキシ、フェノキシド、−OS(O)CH、−OS(O)CH、−OS(O)、−OS(O)CX(ここでXは、ハロである)、−OC、−N、−NH、−NC、−O−アルキル、−OC(O)アルキル、−OC(O)H、−N(Rであり、ここで各Rは、独立して、水素又は低級アルキルであるか、あるいは2つのR部分は、共にヘテロ脂肪族環又はDABCOを形成する。
【0114】
iii)検出可能標識
図4及び5に示されているように、QMPは、試料中の標的の存在を決定するため、ハプテン、色素及び他の検出タグ(式I−VIのR)などの多くの異なる検出可能標識又はレポーター部分の使用を可能にするように合成される。適切な検出可能標識には、発光団(リン光体、蛍光団)、発色団及び/又はハプテンが含まれる。発光団は、リン光又は蛍光を含む発光が可能な化合物である。発光は、光子、荷電粒子又は化学変化の形態の励起エネルギーの吸収により引き起こされる化合物による光の放射である。蛍光団は、特定の波長の光を吸収し、より長い波長で光を再放射する蛍光化合物である。発色団は、可視光線を吸収することができる種である。好ましい発色団は、発色団が明視野照明を使用して可視化されうるように、十分な波長特異性を有する十分な量の可視光線を吸収することができる種である。ハプテンは、抗体と特異的に組み合わせることができるが、典型的には、担体分子との組み合わせを除いて、免疫原性であることが実質的に不可能である分子、典型的には小分子である。ある特定の発光団、蛍光団及び発色団も、ハプテンである。幾つかの例示的な検出可能標識が、図2(A)に示されている。
【0115】
網羅的ではないが、その全体が出典明示により本明細書に援用される国際公開第2012024185号は、現在利用可能な発光団及びハプテンに関する開示を提供する。検出可能標識の実施態様には、ピラゾール、特にニトロピラゾールなどのハプテン;ニトロフェニル化合物;ベンゾフラザン:トリテルペン;尿素及びチオ尿素、特にフェニル尿素、更により特定的にフェニルチオ尿素;ロテノン及び本明細書においてロテノイドとも呼ばれるロテノン誘導体;オキサゾール及びチアゾール、特にオキサゾール及びチアゾールスルホンアミド;クマリン及びクマリン誘導体;ポドフィロトキシン及びポドフィロトキシン誘導体により例示されるシクロリグナン;並びにこれらの組み合わせが含まれる。ハプテン、並びにその調製及び使用方法の実施態様は、米国特許第7695929号に開示されており、その全体が出典明示により本明細書に援用される。
【0116】
例示的なハプテンには、BD(ベンゾジアゼピン)、BF(ベンゾフラザン)、DABSYL(約436nmのλmaxを有する4−(ジメチルアミノ)アゾベンゼン−4’−スルホンアミド)、DCC(7−(ジメチルアミノ)クマリン−3−カルボン酸)、DIG(ジゴキシゲニン)、DNP(ジニトロフェニル)、HQ(3−ヒドロキシ−2−キノキサリンカルバミド)、NCA(ニトロケイ皮酸)、NP(ニトロピラゾール)、PPT(ポドフィロトキシン)、Rhod(ローダミン)、ROT(ロテノン)及びTS(チアゾールスルホンアミド)が含まれるが、これらに限定されない。他の適切なハプテンには、ビオチン及びフルオレセイン誘導体(FITC(フルオレセインイソチオシアネート)、TAMRA(テトラメチルローダミン)、テキサスレッド)が含まれるが、これらに限定されない。
【0117】
適切な発色団には、クマリン及びクマリン誘導体が含まれる。例示的なクマリンに基づいた発色団には、DCC及び2,3,6,7−テトラヒドロ−11−オキソ−1H,5H,11H−[1]ベンゾピラノ[6,7,8−ij]キノリジン−10−カルボン酸が含まれる。使用に適した別のクラスの色素産生部分には、約427nmのλmaxを有するタートラジンなどのジアゾ含有色素原が含まれる。
【0118】
なお他の実施態様において、発色団は、トリアリールメタン化合物であっても良い。例示的なトリアリールメタン発色団が下記に提供されている。
【0119】
例示的な環付加発色剤には、下記:
テトラメチルローダミン(TMR、TAMRA及び反応性イソチオシアネート誘導体を含む)、QSY7、QSY9及びQSY21色素などのジアリールローダミン誘導体などの他のローダミン誘導体が含まれるが、これらに限定されない。
【0120】
他の例示的な検出可能標識には、レゾルフィン、DAB、AEC、CN、BCIP/NBT、ファストレッド、ファストブルー、フクシン、NBT、ALK GOLD、カスケードブルーアセチルアジド、ダポキシルスルホン酸/カルボン酸、DY−405、Alexa Fluor(登録商標)405、カスケードイエロー、ピリジルオキサゾール(PyMPO)、パシフィックブルー、DY−415、7−ヒドロキシクマリン−3−カルボン酸、DYQ−425、6−FAMホスホラミダイト、ルシファーイエロー、ヨードアセトアミド、Alexa Fluor(登録商標)430、ダブシル、NBD塩化物/フッ化物、QSY 35、DY−485XL、Cy2、DY−490、オレゴングリーン488カルボン酸、Alexa Fluor(登録商標)488、BODIPY 493/503 C3、DY−480XL、BODIPY FL C3、BODIPY FL C5、BODIPY FL−X、DYQ−505、オレゴングリーン514カルボン酸、DY−510XL、DY−481XL、6−カルボキシ−4’,5’−ジクロロ−2’,7’−ジメトキシフルオレセイン(JOE)、DY−520XL、DY−521XL、BODIPY R6G C3、エリスロシンイソチオシアネート、5−カルボキシ−2’,4’,5’,7’−テトラブロモスルホネフルオレセイン、Alexa Fluor(登録商標)532、6−カルボキシ−2’,4,4’,5’7,7’−ヘキサクロロフルオレセイン(HEX)、BODIPY 530/550 C3、DY−530、BODIPY TMR−X、DY−555、DYQ−1、DY−556、Cy3、DY−547、DY−549、DY−550、Alexa Fluor(登録商標)555、Alexa Fluor(登録商標)546、DY−548、BODIPY 558/568 C3、ローダミンレッド−X、QSY 7、BODIPY 564/570 C3、BODIPY 576/589 C3、カルボキシ−X−ローダミン(ROX)、Alexa Fluor(登録商標)568、DY−590、BODIPY 581/591 C3、DY−591、BODIPY TR−X、Alexa Fluor(登録商標)594、DY−594、カルボキシナフトフルオレセインDY−605、DY−610、Alexa Fluor(登録商標)610、DY−615、BODIPY 630/650−X、エリオグラウシン、Alexa Fluor(登録商標)633、Alexa Fluor(登録商標)635、DY−634、DY−630、DY−631、DY−632、DY−633、DYQ−2、DY−636、BODIPY 650/665−X、DY−635、Cy5、Alexa Fluor(登録商標)647、DY−647、DY−648、DY−650、DY−654、DY−652、DY−649、DY−651、DYQ−660、DYQ−661、Alexa Fluor(登録商標)660、Cy5.5、DY−677、DY−675、DY−676、DY−678、Alexa Fluor(登録商標)680、DY−679、DY−680、DY−682、DY−681、DYQ−3、DYQ−700、Alexa Fluor(登録商標)700、DY−703、DY−701、DY−704、DY−700、DY−730、DY−731、DY−732、DY−734、DY−750、Cy7、DY−749、DYQ−4及びCy7.5が含まれる。
【0121】
幾つかの実施態様において、検出可能標識は、PEG部分などのリンカー部分を含む。ある特定の実施態様において、PEG部分の付加は、染色強度を改善することができる。図6及び7は、それぞれPEGリンカーを有するQMP−ダブシル及びQMP−Tamra誘導体の染色強度の増加を説明する。図6は、リン酸エステル−QMP−ダブシル(250uM)(図6(A))、リン酸エステル−QMP−PEG−ダブシル(250uM)(図6(B))及びリン酸エステル−QMP−PEG−ダブシル(250uM)(図6(C))を使用した、扁桃組織におけるBcl−6染色の20×倍率の顕微鏡写真を提供する。図6が示しているように、リン酸エステル−QMP−ダブシル誘導体にPEGリンカーを含めることは、PEGリンカーを有さないリン酸エステル−QMP−ダブシル誘導体と比較して、染色強度を実質的に増加している(図6(A)−6(C))。加えて、図6(B)及び6(C)は、PEG図6(B))及びPEG図6(C))部分をリン酸エステル−QMP−ダブシル誘導体に組み込んだときの染色強度の差を説明している。また、PEG部分は、PEG部分と比べて染色強度が増加している。
【0122】
同様の結果が図7において示されており、リン酸エステル−QMP−Tamra誘導体へのPEGリンカーの組み込みにより達成された染色強度の増加を説明している。図7は、リン酸エステル−QMP−Tamra(250uM)(図7(A))、リン酸エステル−QMP−PEG−Tamra(250uM)(図7(B))及びリン酸エステル−QMP−PEG−Tamra(250uM)(図7(C))を使用した、扁桃組織におけるBcl−6染色の20×倍率の顕微鏡写真を提供する。
【0123】
図6及び7は、リンカーにPEGを組み込むことが機能的染色の強度の増加をもたらすことを説明している。しかし、とりわけPEGリンカーを有するTamra誘導体のシグナルの拡散の増加ももたらしうる(図7(C))。
【0124】
式I−VIIIを参照すると、特定の実施態様において、検出可能標識−R又はリンカー検出可能標識(−R)は、下記:
である。他の特定の実施態様において、検出可能標識−R又はリンカー検出可能標識(−R)は、脂肪族リンカーを有するビオチン、ニトロピラゾール(NP)、PEG−8リンカーを有するNP、TAMRA、DNP、ファストレッド、HQ、PEG−8リンカーを有するHQ、ベンゾフラザン、Rhod 110、PEG−8リンカーを有するダブシル又はCy5である。量子ドット、ランタニドキレートポリマー、並びに/又は他のポリマーに基づいた色素及び蛍光を使用することもできる。
【0125】
iv)リンカー
式I−VIIIのRリンカーに関して、任意の適切なリンカーを使用し、本明細書に開示されている色素原、ハプテン、蛍光団又は発光団などの検出可能な標識に結合することによって、本開示のコンジュゲートを形成することができる。有用なリンカーは、ホモ又はヘテロ二官能性の何れかでありうるが、より典型的にはヘテロ二官能性である。
【0126】
単なる例として、限定することなく、第1の部類のリンカーには、1つ又は複数の不飽和部位を有する脂肪族炭化水素鎖又はアルキル鎖などの脂肪族化合物が含まれる。脂肪族鎖には、例として、限定されることなく、本明細書に開示されている検出可能標識への結合を促進する、カルボニル反応基、アミン反応基、チオール反応基、炭素反応基又は光反応基を含む末端官能基も、典型的に含まれる。鎖の長さは変わることができるが、典型的には実用的な上限の約30個の原子を有する。約30個を超える炭素原子の鎖連結は、より少ない鎖連結を有する化合物より有効性が低いことが証明されている。したがって、脂肪族鎖リンカーは、典型的には約1個の炭素原子から約30個の炭素原子の鎖長さを有する。しかし、当業者は、特定のリンカーが30個を超える原子を有し、QMPへの検出可能標識の連結に依然として効率的に作動し、コンジュゲートが依然として望ましく機能する場合、そのようなリンカーは、本開示の範囲内であることを理解する。
【0127】
本開示の実施態様の実施に有用な第2の部類のリンカーは、アルキレンオキシドである。アルキレンオキシドは、エチレングリコールなどのグリコールを参照して本明細書に表される。当業者は、酸素原子の数が増加すると、化合物の親水性も増加しうることを理解する。したがって、適切なリンカーは、(−OCHCHO−)の式を有することができ、式中、nは約2から約15であるが、より典型的には、約2から約8である。
【0128】
ある特定の開示された実施態様の実施に有用なヘテロ二官能性ポリアルキレングリコールリンカーは、2006年4月28日出願の米国特許出願第11/413778号、「ナノ粒子コンジュゲート」、2006年4月27日出願の米国特許出願第11/413418号、「抗体コンジュゲート」及び2006年11月21日出願の米国特許出願第11/603425号、「分子コンジュゲート」を含む譲渡人の出願に記載されており、これらの出願は、全て、出典明示により本明細書に援用される。ヘテロ二官能性ポリアルキレングリコールリンカーは、下記に開示されており、その使用は、検出可能標識へのチラミンの結合を参照して例示されている。
【0129】
開示されているコンジュゲートと共に使用されるリンカーの1つの特定の実施態様は、下記:


に示されている一般構造を有するヘテロ二官能性ポリアルキレングリコールリンカーであり、ここで、A及びBは、異なる反応性基を含み、xは、2から10(例えば、2、3又は4)の整数であり、yは、1から50、例えば、3から20又は4から12などの2から30の整数である。1個又は複数の水素原子を、ヒドロキシル基、アルコキシ基(例えば、メトキシ及びエトキシ)、ハロゲン原子(F、Cl、Br、I)、スルファト基、並びにアミノ基(一置換及びジアルキルアミノ基などの二置換アミノ基を含む)などの追加的な官能基で置換することができる。
【0130】
リンカーのA及びBは、独立して、カルボニル反応基、アミン反応基、チオール反応基、炭素反応基又は光反応基などの反応性官能基である。A及びBは、典型的には同じ反応性官能基ではない。カルボニル反応性基の例には、ヒドラジン誘導体及びアミンのような、アルデヒド及びケトン反応性基が含まれる。アミン反応性基の例には、NHS又はスルホ−NHS、イソチオシアン酸エステル、イソシアン酸エステル、アジ化アシル、塩化スルホニル、アルデヒド、グリオキサール、エポキシド、オキシラン、炭酸エステル、ハロゲン化アリール、イミドエステル、無水物などの活性エステルが含まれる。チオール反応性基の例には、非重合性マイケル受容体、ハロアセチル基、(例えば、ヨードアセチル)、ハロゲン化アルキル、マレイミド、アジリジン、アクリロイル基、ビニルスルホン、ベンゾキノン、フルオロベンゼン基(例えば、テトラ及びペンタフルオロベンゼン基)などの、求核置換を受けうる芳香族基、ピリジルジスルフィド基などのジスルフィド基、並びにエルマン試薬により活性化されたチオールが含まれる。炭素反応性基の例には、クロロメチルなどのハロアルキル基が含まれる。光反応性基の例には、アジ化アリール及びハロゲン化されたアジ化アリールが含まれる。あるいは、A及び/又はBは、特定の種類の反応性基と反応する官能基でありうる。例えば、A及び/又はBは、導入された、そうでなければハプテン及び/又はチラミン若しくはチラミン誘導体に存在する対応する反応性基(例えば、それぞれ、アミン反応性基、チオール反応性基又はカルボニル反応性基)と反応するアミン基、チオール基又はカルボニル含有基でありうる。これらの種類の基のそれぞれの追加の例は、当業者に明らかである。1つの種類の反応性基を別のものに交換するための反応条件及び方法に関する更なる例及び情報は、Hermanson,“Bioconjugate Techniques,”Academic Press,San Diego,1996に提供されており、これは出典明示により本明細書に援用される。
【0131】
幾つかの実施態様において、ヘテロ二官能性リンカーは、下記の式:


を有し、式中、A及びBは、異なる反応性基であり、上記に記述された通りであり、x及びyは、上記に記述された通りであり、X及びYは、追加のスペーサー基であり、例えば1から6個の炭素又は1から4個の炭素などの1から10個の炭素を有し、任意選択的に1つ又は複数のアミド連結、エーテル連結、エステル連結などを含有するスペーサー基である。スペーサーX及びYは、同一でありうる又は異なりうる、直鎖、分岐鎖又は環状(例えば、脂肪族若しくは芳香族環状構造)でありうる、非置換でありうる又は置換されうる。スペーサーの置換基でありうる官能基には、カルボニル基、ヒドロキシル基、ハロゲン(F、Cl、Br及びI)原子、アルコキシ基(例えば、メトキシ及びエトキシ)、ニトロ基、並び硫酸エステル基が含まれる。
【0132】
特定の実施態様において、ヘテロ二官能性リンカーは、下記の式:


を有するヘテロ二官能性ポリエチレングリコールリンカーを含み、式中、n=1から50であり、例えば、n=3から20又はn=4から12などのn=2から30である。特定の実施態様において、n=4又は8である。
【0133】
別の部類のリンカーは、アリールリンカーである。アリールリンカーは、フェニル、ピリジル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、トリアゾリル、オキサゾリル又はチアゾリルなどの炭素環式又は複素環式の部分でありうる。ある特定の実施態様において、リンカーは、1,2,3−トリアゾールなどのトリアゾールである。アリール基は、炭素又はヘテロ原子の何れかを介して検出可能標識及び/又はQMP部分に結合することができる。例示的な実施態様において、トリアゾールは、アルキン及びアジド官能化検出可能標識を含むQMP部分又はアルキン及びアジド官能化QMP部分を含む検出可能標識など、アジドとアルキンとの反応により形成される(例えば、実施例2、スキーム11を参照すること)。アジド及び/又はアルキンは、本明細書に開示されているリンカー部分などのリンカー基を介して反応性部分に結合することができる又は共有結合を介して直接結合することができる。幾つかの実施態様において、アジド及び/又はアルキンは、アルキル鎖又は低級アルキル鎖などの脂肪族鎖を介して結合することができる。他の実施態様において、アジド及び/又はアルキンは、ポリアルキレングリコールリンカーを介して結合する。
【0134】
幾つかの例示的なリンカーが、図2(A)の第3パネル及び実施例に示されている。
【0135】
III.使用方法
開示されているQM及びこれらの前駆体の実施態様は、標的の検出、例えば生物学的試料中の標的の検出に有用である。検出は、例えば、免疫組織化学技術及び/又はin situハイブリダイゼーション技術を使用して実施することができる。
【0136】
幾つかの実施態様において、組織内のバイオマーカーなどの標的が検出される。ある特定の実施態様において、組織は、ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)組織である。当業者に理解されるように、「組織」は、本明細書に使用されるとき、子宮頸部細胞スメア、凍結組織、スライドガラス上の循環腫瘍細胞及び血液スメアを更に含むことができる。したがって、例えば、子宮頸部細胞スメアを、細胞学的調製物などに使用することができる。
【0137】
ここで図3(A)−(C)を参照しながら記載し、下記の実施例において更に詳述するように、幾つかの方法の実施態様は、標的202を含む試料200(例えば、組織)を、抗体204と接触させることを含む。幾つかの実施態様において、標的は、酵素にコンジュゲートしていない一次抗体により検出することができ、二次抗体は、標的と会合した一次抗体を検出するために使用される。何れの手法においても、結果は、標的202に近接した酵素206の局在化である。図3の実施態様は、組織を、(i)リン酸エステル又はホスホジエステル基及び(ii)検出可能標識又はレポーター216を含むQMPコンジュゲート208と接触させることを更に含む。抗体として示されているが、任意の適切な結合部分を使用することができ、例えば、ハプテン標識核酸オリゴマーなどの核酸オリゴマー及び標的を認識し、標的に結合することができる抗体である。標的202を酵素206により標識することは、組織を、酵素206が連結する抗体204を含む酵素抗体コンジュゲートと接触させることを含んでも良い。抗体204は、標的を認識し、標的に特異的に結合することができる。QMP208は、酵素206と相互作用してフェノール中間体210を形成し、これが再編成を行ってQM212を形成し、これは、結合部分、酵素206、抗体204又は組織と反応して、検出可能標識216を標的202に直接的に又は標的202の近位において共有結合的に連結させる。次に検出可能標識216は、特定の検出可能標識に適切な方法を使用して検出される。
【0138】
特定の実施態様において、QMPは、リン酸エステル又はホスホジエステル基を含み、酵素は、それぞれホスファターゼ又はホスホジエステラーゼであり、検出可能標識は、色素原、蛍光団、発光団又はハプテンである。幾つかの実施態様において、アルカリホスファターゼを、ホスファターゼ又はホスホジエステラーゼとして使用することができる。他の実施態様において、QMPは、β−ガラクトシドを含み、酵素は、β−ガラクトシダーゼであり、検出可能標識は、色素原、蛍光団、発光団又はハプテンである。
【0139】
幾つかの実施態様において、抗体204は、図3(A)に示されているように、標的202を認識し、標的202に直接結合する。他の実施態様において、抗体は、任意の特定の結合部分に間接的に結合しても良い。例えば、ハプテン標識抗結合部分抗体を最初に結合部分に結合させ、続いて抗ハプテン抗体酵素コンジュゲートに結合させても良い。
【0140】
なお更なる実施態様は、QMPを含む免疫組織化学(IHC)又はin situハイブリダイゼーション(ISH)増幅組成物を形成する方法を伴う。1つの例示的な実施態様は、コンジュゲート系(例えば、芳香族環系)において、炭素又は隣接炭素にそれぞれ共有結合しているリン酸エステル又はホスホジエステル基を切断する工程を含む。QMPがリン酸エステル基を含むとき、電子再編成は、リン酸エステル基のオルト又はパラにある炭素からの脱離基(LG)の排除をもたらす。反応は、QMの形成に適した条件下で実施される。前駆体は、リンカーによりコンジュゲート系に結合した検出可能標識を更に含む。
【0141】
幾つかの実施態様において、脱離基及び/又はQMPコンジュゲートの濃度が何であるかは、標的検出(例えば、染色)特異性に影響を及ぼしうる。QMの反応性は、QM形成の速度、したがってLGの脱離基の能力に少なくとも部分的に依存している。不十分なLGは、低いQM形成速度を有することがあり、高いQM安定性及び生成部位からの大きな拡散によって不十分な特異性をもたらす。幾つかの実施態様において、R及び/又はRが何であるかも、標的検出(例えば、染色)特異性に影響を与える。例えば、R及び/又はRのある特定の基(例えば、大型の基)は、QMの、求核種と反応し、求核種に結合する能力を立体的に妨げることがある。
【0142】
ある特定の実施態様において、脱離基がフッ化物(例えば、LG=F)であるとき、拡大すると、染色領域がはっきりと良好に画定された境界線を有する特定の増幅されたIHC染色がもたらされ、優れた結果が得られた。特定の作動理論に束縛されることなく、フッ化物脱離基は、より反応性のあるQMPを生じることができ、QMへの急速な変換、続く標的の近位への結合をもたらす。反応性の少ないQMPは、酵素認識基の切断と、脱離基の排除、続く求核部位へのQMの沈着及び結合との間の時間に標的から拡散しうる。加えて、ナノモルQMPコンジュゲート濃度(例えば、10nMから100nM)は、特異的染色を促進することができる。
【0143】
更なる方法の実施態様は、試料を、本明細書に開示されている構造の化合物を含む免疫組織化学又はin situハイブリダイゼーション増幅組成物と接触させること、及び増幅組成物を、検出を実施するのに適した条件下で試薬と接触させることを含む、免疫組織化学又はin situハイブリダイゼーション増幅方法に関する。
【0144】
なお他の実施態様は、組織試料中の2つ以上の異なる標的を検出する方法を伴う。1つの例示的な実施態様は、組織を、第1の標的に特異的な第1の結合部分及び第2の標的に特異的な第2の結合部分に接触させることを含む。第1の標的は、第1の結合部分を介して第1の酵素により標識され、第2の標的は、第2の結合部分を介して第2の酵素により標識される。次に組織を、(i)酵素認識基及び(ii)検出可能標識を含むQMP、並びに第2の検出前駆体化合物(例えば、第2のQMP又は標識チラミド化合物)と接触させ、QMPは、第1の酵素と相互作用してQMを形成し、これは組織と反応して、検出可能標識を第1の標的に直接的に又は第1の標的の近位において共有結合的に連結し、第2の検出前駆体化合物は、第2の酵素と相互反応して、第2の検出化合物を第2の標的に直接的に又は第2の標的の近位において沈着させる。次に検出可能化合物が検出される。
【0145】
有利には、まさに記載された方法において、第1の酵素及び第2の酵素は、異なる酵素である。例えば、第1の酵素は、ホスファターゼ又はホスホジエステラーゼであり、第2の酵素は、ペルオキシダーゼでありうる。ある特定の実施態様において、第1の酵素は、アルカリホスファターゼであり、第2の酵素は、ホースラディッシュペルオキシダーゼである。また有利には、第1の酵素は、第2の検出前駆体化合物と相互作用して第2の検出化合物を第1の標的の近位に沈着させることはなく、及び/又は第2の酵素は、QMPと相互作用してQMを形成させることはない。換言すると、第1の酵素は、QMPと特異的に反応し、第2の酵素は、第2の検出前駆体化合物と特異的に反応する。例えば、第1の酵素は、ホスファターゼであり、第2の酵素は、β−ガラクトシダーゼでありうる。この例において、第1の酵素のホスファターゼは、β−ガラクトシダーゼを含むQMPと反応せず、第2の酵素のβ−ガラクトシダーゼは、ホスファターゼを含むQMPと反応しない。有利には、これらの方法は、酵素不活性化工程を含まない。
【0146】
効率のため、実質的に同時に起こるように、組織を第1の標的に特異的な第1の結合部分と接触させ、組織を第2の標的に特異的な第2の結合部分と接触させることによって、2つ以上の標的増幅方法を実施しても良い。また第1及び第2の結合部分を、第1及び第2の酵素と実質的に同時に接触させても良い。加えて、組織を、QMP及び第2の検出前駆体化合物と実質的に同時に接触させても良い。しかし当業者は、組織を、第1の結合部分、続いて第2の結合部分と順次に接触させても良く、その逆も同じであることを理解する。同様に、第1の標的を第1の酵素により標識することができ、続いて第2の標的を第2の酵素により標識することができ、その逆も同じである。また、組織を、QMP、続いて第2の検出前駆体化合物と順次に接触させても良く、その逆も同じである。
【0147】
図8は、同時の抗体インキュベーション、続く連続的色素産生検出の結果を説明する。図8では、Her2は、HRPにコンジュゲートしたGAR抗体により検出され、Pan−ケラチンは、APにコンジュゲートしたGAM抗体と接触する。チラミド−Tamra及びQMP−PEG−ダブシルによる連続的検出の結果は、図8(A)に示されている画像である。図9は、扁桃組織においてCD8(Try−ローダミン−110、栗色)、CD3(QMP−Cy5、青色)、FoxP3(Tyr−Tamra、紫色)及びPan−ケラチン(QMP−ダブシル、黄色)を検出する四重連続検出アッセイの結果を示す。
【0148】
ある特定の実施態様において、2つの標的は、二重アッセイにおいて連続的に又は実質的に同時に検出される。検出前駆体は、例えば、異なる酵素認識基を含む2つのQMP又はHRPに基づいたTSAなどのQMP及び非QMPに基づいた検出方法でありうる。ある特定の実施態様において、二重アッセイは、アルカリホスファターゼ及びHRPそれぞれとの反応のため、リン酸エステルを含むQMPとチラミンとを含む。検出方法は、色素産生又は蛍光IHCである。図10は、APに基づいたQMP及びHRPに基づいたTSA検出の両方を利用するが、酵素死滅工程を用いない蛍光二重アッセイによる顕微鏡写真を提供する。他の実施態様において、二重アッセイは、リン酸エステルを含むQMPとβ−ガラクトシドを含むQMPとを含む。
【0149】
三重アッセイを使用して、3つの標的を検出することができる。三重アッセイは、異なる酵素認識基を有する3つのQMP又はQMPと、HRPに基づいたTSAなどの他の検出方法との組み合わせを使用することができる。ある特定の実施態様において、三重アッセイは、アルカリホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼ及びHRPそれぞれとの反応のため、リン酸エステルを含むQMPと、β−ガラクトシドを含むQMPと、チラミンとを含む。アッセイは、連続的なアッセイ又は実質的に同時のアッセイでありうる。幾つかの実施態様において、検出方法は、色素産生IHCである。
【0150】
四重アッセイを使用して、4つの標的を検出することができる。四重アッセイは、異なる酵素認識基を有する4つのQMP又はQMPと、HRPに基づいたTSAなどの他の検出方法との組み合わせを使用することができる。幾つかの実施態様において、四重アッセイは、アルカリホスファターゼと反応するリン酸エステルを含むQMP、β−ガラクトシダーゼと反応するβ−ガラクトシドを含むQMPの連続的な添加及びそれぞれHRPと反応するチラミンの2つの連続的な添加を含む。他の実施態様において、四重アッセイは、アルカリホスファターゼと反応するリン酸エステルを含むQMP、β−ガラクトシダーゼと反応するβ−ガラクトシドを含むQMP、並びにそれぞれHRPと反応するチラミン及びDABを含む。四重の検出方法は、色素産生IHCでありうる。
【0151】
それぞれの検出工程について異なる酵素を使用する多重化アッセイでは、本記載のアッセイは、酵素死滅工程を必要とせず、それによって時間及び試薬の浪費を低減する。加えて、QM及びTSAが組織の異なる反応性部位に結合するので、同時発現マーカーを、第1の検出工程が第2のための反応性部位を使い果たす可能性なしに明確に検出することができる。
【0152】
幾つかの実施態様は、オリゴヌクレオチドを標識する方法に関する。オリゴヌクレオチドは、本明細書に記載されている(i)酵素認識基及び(ii)検出可能標識を含むQMPと組み合わされる。次に酵素(例えば、ホスファターゼ、ホスホジエステラーゼなど)を、組み合わせたオリゴヌクレオチドとQMPに加える。酵素はQMPから反応性QMへの変換を触媒し、反応性QMはオリゴヌクレオチドと共有結合して、標識されたオリゴヌクレオチドを形成する。幾つかの実施態様において、検出可能標識は、蛍光団などのハプテンである。1つの実施態様において、QMPは、リン酸エステル又はホスホジエステル基を含み、酵素は、アルカリホスファターゼである。幾つかの実施態様において、QMPは、遺伝子増幅を検出するためなどのISH増幅アッセイに使用される。
【0153】
ある特定の実施態様において、オリゴヌクレオチドは、生物学的試料などの試料内の標的を認識することができ、標的に特異的に結合することができる検出プローブである。方法は、試料を、標識されたオリゴヌクレオチドと接触させ、それによって、標識されたオリゴヌクレオチドは標的に結合し、次に標識を検出することより標的を検出することを更に含むことができる。幾つかのオリゴヌクレオチド標識剤(例えば、アジリジニウムに基づいた試薬(例えば、Mirus,Madison,WI))と対照的に、ハプテン又は蛍光団標識QMPのある特定の実施態様は、毒性がない。
【0154】
QMPの機能性染色性能は、反応時間、温度、基質濃度、塩濃度及び反応媒体のpHを含む幾つかの要因に感受性がある。有効なpHは、8から12又は9から11などの7超から14でありうる。QMP濃度は、50nMから500μM、50nMから100μM又は100nMから1μMなどの0超から1mM以上でありうる。色素産生染色に関するある特定の実施態様において、濃度は、10μMから750μM又は50μMから500μMである。蛍光団染色及び/又はハプテン増幅に関するある特定の実施態様において、濃度は、10nMから50μM又は50nMから10μMである。これらの要因は、染色の強度及び拡散率の両方が予測可能に変更することを可能にする。しかし当業者は、染色条件も酵素と適合するべきであることを理解する。例えば、酵素の活性が実質的に低減される程度のバッファー、pH、補助因子などの変化は、QMPの染色性能に対して否定的な影響を有することがある。
【0155】
pH効果の例が図11及び12により説明される。特定の理論に束縛されることなく、相対的に低いpHの7.5では、極小数のヒドロキシド求核種が反応媒体に存在した。結果は、長期間のQM寿命であり、大きな拡散を伴った強力なシグナルをもたらした(図11)。pHを10に増加すると、ヒドロキシド求核種の濃度が増加し、QMの寿命を有効に減少させた。結果は、かなり少ない拡散を有する減少したシグナルであった(図12)。
【0156】
有効塩濃度は、0.1Mから2M、0.25Mから1.5M又は0.5Mから1.25Mなどの0超から少なくとも2Mでありうる。ある特定の実施態様において、塩濃度は約1Mである。塩は、酵素の補助因子として作用して、シグナル強度を改善する及び/又は染色の質を改善するのに有効な任意の塩でありうる。シグナルの質は、シグナルの局在化、離散及び/又は拡散低減における改善によって改善されうる。幾つかの実施態様において、塩は、塩化マグネシウム又は塩化ナトリウムである。
【0157】
IV.キノンメチドアナログコンジュゲート
開示されているQMの実施態様を含むコンジュゲートも、本開示の範囲内である。幾つかの実施態様において、コンジュゲートは、別の基質、例えば、生物学的試料、オリゴヌクレオチド、抗体又は酵素に共有結合しているQMを含む。結合したQMは、式VII又はVIII:
VII 又は VIII
の一般構造を有し、式中、Aは、コンジュゲート系であり、Zは、O、S又はNRであり、ここでRは、水素又は脂肪族、典型的にはアルキルであり、Rは、結合又はリンカーであり、Rは、検出可能標識であり、R及びRは、独立して、水素、ハロ、シアノ、低級アルキル、低級ハロアルキル、−C(O)アルキル、−C(S)アルキル、−C(O)OH、−C(O)Oアルキル、−C(O)NHR又は−C(O)N(Rであり、ここで各Rは、独立して、水素、アリール、脂肪族若しくはヘテロ脂肪族であるか、又は2つのR部分は、共にヘテロ脂肪族環を形成する。ある特定の実施態様において、Rは、ハプテン、色素原、蛍光団又は発光団である。
【0158】
V.自動化の実施態様
当業者は、QMPを使用する本明細書に開示されている方法の実施態様を自動化できることを理解する。Ventana Medical Systems,Inc.は、それぞれ出典明示により本明細書に援用される、米国特許第5650327号、同第5654200号、同第6296809号、同第6352861号、同第6827901号及び同第6943029号、並びに米国特許出願公開第20030211630号及び同第20040052685号を含む、自動化分析を実施する系及び方法を開示する多数の米国特許の譲渡人である。
【0159】
VI.標的
本明細書に開示されているQMP及び方法の実施態様を使用して、多くの異なる生物学的標的を特定及び/又は定量化することができる。本開示の全体にわたって、参照が標的に対して行われるとき、標的は標的タンパク質でありうること、及びそのタンパク質と会合する任意のポリヌクレオチドを標的として使用できることも理解される。標的は、ウイルス、細菌などの病原体又はウイルスゲノムなどの細胞内寄生虫からのタンパク質又は核酸分子でありうる。例えば、標的タンパク質は、疾患と関連する(例えば、相関する、因果的に関係する、など)標的ポリヌクレオチドから産生されうる。ある特定の開示されている実施態様において、目的の標的(1つ又は複数)は、単一のヌクレオチド多形、プロモーターメチル化、mRNA発現、siRNA、特定のコピー数の変化、突然変異、ある特定の発現レベル、再編成又はこれらの組み合わせなどの遺伝子異常を含みうる特定の核酸配列でありうる。幾つかの実施態様において、標的は、血清、血漿及び/又は尿などの生物学的試料から得た可溶性タンパク質である。開示されている方法の幾つかの実施態様を使用して、同じ試料(例えば、同じ組織切片)からの同じ標的(例えば、HER2)のDNA、RNA及びタンパク質を同時に検出及び定量化することができる。
【0160】
開示されている方法を使用して、マイクロRNA(miRNA又はmiR)を検出することができる。マイクロRNAは、翻訳抑制など遺伝子発現を負に調節する小型の非コードRNAである。例えば、miR−205は、胚発生の際に組織再構成を促進するプロセスである上皮間葉移行(EMT)を調節する。しかし、EMTは、腫瘍転移の初期工程である。miR−205などのマイクロRNAの下方調節は、腫瘍進行における重要な工程でありうる。例えば、miR−205の発現は、幾つかの乳癌において下方調節される又は失われる。miR205を使用して、扁平上皮細胞及び非小細胞肺癌を層別化することもできる(J. Clin. Oncol., 2009, 27(12):2030-7)。他のマイクロRNAは、血管新生シグナル伝達カスケードを調整することが見出されている。miR−126の下方調節は、例えば、血管新生及び炎症増加を介して癌の進行を悪化させうる。したがって、マイクロRNA発現レベルは、疾患状態の指標でありうる。
【0161】
標的核酸配列は、サイズが実質的に変わりうる。限定されることなく、核酸配列は、様々な数の核酸残基を有することができる。例えば、標的核酸配列は、少なくとも約10個の核酸残基又は少なくとも約20個、30個、50個、100個、150個、500個、1000個の残基を有することができる。同様に、標的ポリペプチドは、サイズが実質的に変わりうる。標的ポリペプチドは、典型的には、ペプチド特異的抗体に結合する少なくとも1つのエピトープ又はその断片を含む。幾つかの実施態様において、そのポリペプチドは、ペプチド特異的抗体に結合する少なくとも2つのエピトープ又はその断片を含むことができる。
【0162】
特定の非限定例において、標的タンパク質は、新生物(例えば、癌)に関連する標的核酸配列(例えば、ゲノム標的核酸配列)により産生される。多数の染色体異常(転位及び他の再編成、増幅又は欠失を含む)が、B細胞及びT細胞白血病、リンパ腫、乳癌、結腸癌、神経癌などの新生物細胞、とりわけ癌細胞において特定されている。したがって幾つかの例において、標的分子の少なくとも一部は、試料中の細胞の少なくとも1つのサブセットにおいて増幅又は欠失した核酸配列(例えば、ゲノム標的核酸配列)により産生される。1つの例において、ゲノム標的核酸配列は、1つ又は複数の悪性腫瘍(例えば、ヒト悪性腫瘍)において重複される遺伝子(発癌遺伝子)を含むように選択される。発癌遺伝子は、幾つかのヒト悪性腫瘍に関与することが知られている。例えば、染色体の切断領域18q11.2に配置するSTY遺伝子を伴う染色体再編成は、滑膜肉腫軟部組織腫瘍において一般的である。
【0163】
例えば、c−erbB2又はHER2/neuとしても知られているHER2は、細胞増殖の調節において役割を果たす遺伝子である(代表的なヒトHER2ゲノム配列は、GENBANK(商標)受入番号NC_000017、ヌクレオチド35097919−35138441により提供される)。遺伝子は、チロシンキナーゼファミリーのメンバーである185kDaの膜貫通細胞表面受容体をコードする。HER2は、ヒト乳房、卵巣及び他の癌において増幅され、したがってHER2遺伝子(又はHER2遺伝子を含む17番染色体の領域)を、ゲノム標的核酸配列として使用することができる。他の乳癌関連タンパク質には、エストロゲン受容体(ER)及びプロゲステロン受容体(PR)が含まれる。
【0164】
他の例において、悪性細胞において欠失している(失われている)腫瘍抑制遺伝子である核酸配列(例えば、ゲノム標的核酸配列)により産生される、標的タンパク質が選択される。例えば、染色体9p21に配置するp16領域(D9S1749、D9S1747、p16(INK4A)、p14(ARF)、D9S1748、p15(INK4B)及びD9S1752を含む)は、ある特定の膀胱癌において欠失している。1番染色体(例えば、SHGC57243、TP73、EGFL3、ABL2、ANGPTL1及びSHGC−1322を包含する)の短腕の遠位領域、並びに19番染色体(例えば、MAN2B1、ZNF443、ZNF44、CRX、GLTSCR2及びGLTSCR1を包含する)の動原体周囲領域(例えば、19p13−19q13)を伴う染色体欠失は、中枢神経系のある特定の固形腫瘍の特徴的な分子特性である。
【0165】
前述の例は、説明目的のためだけに提示され、制限することは意図されない。新生物形質転換及び/又は増殖と相関する多数の他の細胞学遺伝子学的異常は、当業者に知られている。核酸配列(例えば、ゲノム標的核酸配列)により産生され、新生物形質転換と相関し、本開示の方法に有用である、標的タンパク質。
【0166】
他の例において、標的タンパク質は、疾患又は状態に関連するウイルス又は他の微生物から選択される。細胞又は組織試料におけるウイルス又は微生物誘導標的核酸配列(例えば、ゲノム標的核酸配列)の検出は、生物体の存在の指標である。例えば、標的ペプチド、ポリペプチド又はタンパク質は、発癌性若しくは病原性ウイルス、細菌又は細胞内寄生虫(例えば、熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)及び他のマラリア原虫(Plasmodium)種、リーシュマニア(Leishmania)(種)、クリプトスポリジウム・パルバム(Cryptosporidium parvum)、赤痢アメーバ(Entamoeba histolytica)及びランブル鞭毛虫(Giardia lamblia)、並びにトキソプラズマ(Toxoplasma)、エイメリア(Eimeria)、タイレリア(Theileria)及びバベシア(Babesia)の種)のゲノムから選択されうる。幾つかの例において、標的タンパク質は、ウイルスゲノムの核酸配列(例えば、ゲノム標的核酸配列)から産生される。
【0167】
ある特定の例において、標的タンパク質は、エプスタイン・バー・ウイルス(EBV)又はヒトパピローマウイルス(HPV、例えばHPV16、HPV18)などの発癌性ウイルスの核酸配列(例えば、ゲノム標的核酸配列)から産生される。他の例において、核酸配列(例えば、ゲノム標的核酸配列)から産生される標的タンパク質は、呼吸器多核体ウイルス、肝炎ウイルス(例えば、C型肝炎ウイルス)、コロナウィルス(例えば、SARSウイルス)、アデノウイルス、ポリオーマウイルス、サイトメガロウイルス(CMV)又は単純ヘルペスウイルス(HSV)などの病原性ウイルスからのものである。
【0168】
VII.キット
実例的な実施態様において、キットは、本明細書に開示されているQMPを含む組成物を含む。ある特定の実施態様において、キットは、ホスファターゼ抗体コンジュゲート又はホスホジエステラーゼ抗体コンジュゲートなどの1つ又は複数の酵素抗体コンジュゲートも含む。幾つかの例において、キットは、アルカリホスファターゼ/抗種抗体コンジュゲート又はアルカリホスファターゼ/抗ハプテン抗体コンジュゲートを含む。キットは、また、pH調整剤及び/又は酵素補助因子を含んでも良い。
【0169】
幾つかの実施態様において、QMPは、DMSOなどの有機溶媒中又は有機溶媒/水性バッファー混合物(水性バッファー100%まで)中に貯蔵される。水性バッファー及び/又は貯蔵溶液は、pH0からpH5又はpH1からpH3などの7未満のpHを有しても良く、ある特定の実施態様において、溶液は約2のpHを有する。貯蔵溶液は、また、塩化マグネシウム又は塩化ナトリウムなどの1つ又は複数の塩を含んでも良い。幾つかの実施態様において、塩の濃度は、0.25Mから約1.5M、0.5Mから1.25M又は約1Mなどの0超から2Mである。例示的な実施態様において、QMP貯蔵溶液は、DMSOと10mMのグリシンとのpH2で塩化マグネシウムの濃度が1Mまでの混合物中にQMPを含む。
【0170】
幾つかの実施態様において、pH調整剤は、溶液のpHを、QMPの貯蔵に適したpHから、染色及び/又は増幅アッセイにおけるQMPの有効な使用を可能にするのに適したpHに調整するために適した溶液である。貯蔵pHは、pH0からpH5であっても良く、QMPの有効な使用に適したpHは、pH8からpH12であっても良い。ある特定の実施態様において、pH調整剤は、0.5MのTris溶液などのpHが約10のTris溶液又は0.25mMのTris溶液などのpHが約8のTris溶液を含む。
【0171】
キットの色素原部分の例示的な選択肢には、
3つの分配−(i)100%の有機溶媒中のQMP、(ii)pH調整剤、(iii)酵素補助因子、
3つの分配−(i)有機物/水性バッファーミックス(バッファー100%まで)中のQMP、(ii)pH調整剤、(iii)酵素補助因子、並びに
2つの分配−(i)有機物/水性バッファーミックス(バッファー100%まで)+酵素補助因子中のQMP、(ii)pH調整剤
が含まれるが、これらに限定されない。
【0172】
当業者は、キット中では、酵素及び抗体コンジュゲートは、貯蔵中の不要な反応を防止するため、典型的には別々に貯蔵されることを理解する。
【実施例】
【0173】
VIII.実施例
以下の実施例は、ある特定の作用実施態様の特異的な特性及び一般的なプロトコールを説明するために提供される。本発明の範囲は、以下の実施例により例示される特性に限定されない。
【0174】
実施例1
QMPの合成及び特徴決定
合成材料及び方法。NMRデータは、Topspin(Bruker)を稼働するBruker 400MHz Spectrometerで収集した。化学シフトは、H(CDClでは7.26ppm、DMSO−dでは2.50ppm、CDODでは3.31ppm)及び13C(CDClでは77.0ppm、DMSO−dでは39.51ppm、CDODでは49.15ppm)の重水素化溶媒共鳴を参照した。化学シフトは、31P(HPOでは0ppm)及び19F(トリフルオロ酢酸では76.55ppm)の外部基準を参照した。MSデータは、Mass Center(JEOL)を稼働するJEOL ESI−TOF(AccuTOF JMS−T100LC)により収集した。分取HPLCは、Empower 3(Waters)を稼働するWaters Sunfireカラム(分取C18 OBD 10μm 50×250mm)を有するWaters 2535により実施した。全ての化学薬品は、商業供給者から購入し、別途示されない限り、受け取ったままで使用した。
スキーム1
【0175】
化合物2。5−ニトロサリチルアルデヒド(1)(10.0g、59.8mmol)を、丸底フラスコ中でCHCl(100mL)に懸濁し、続いてトリエチルアミン(12.1g、120mmol)及びクロロリン酸ジエチル(15.5g、89.7mmol)を加えた。反応混合物を室温で1時間撹拌した。次に反応混合物を0.5MのHCl(100mL)で抽出し、有機層を収集し、MgSOで乾燥した。懸濁液を濾過し、濾液を収集し、溶媒を減圧下で除去した。得られた残留物を、フラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン:EtOAc)により2つのバッチで精製して、化合物2を無色の粘性油状物(15.4g、収率85%)として得た。1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 10.37 (s, 1H), 8.70 (dd, J = 8.4 Hz及び1.0 Hz, 1H), 8.42 (dd, J = 9.0 Hz及び2.8 Hz, 1H), 7.69 (dd, J = 9.0 Hz及び1.0 Hz, 1H), 4.28 (m, 4H), 1.37 (m, 6H); 13C NMR (125 MHz, CDCl3) δ 186.2, 156.64, 156.58, 129.9, 127.5, 127.4, 124.5, 122.1, 122.0, 65.7, 65.6, 16.1, 16.0;MS(ESI)m/z(M+H)1115NOの計算値304.1、実測値303.7。
【0176】
化合物3。化合物2(3.50g、11.5mmol)を、丸底フラスコ中でTHF及びMeOH(1:1、40mL)の混合物に溶解し、続いてNaBH(655mg、17.3mmol)を加えた。反応混合物を室温で2時間撹拌した。次に溶液を0.5MのHCl(40mL)で停止させ、得られた溶液をEtOAc(3×100mL)で抽出した。有機層を合わせ、MgSOで乾燥した。懸濁液を濾過し、濾液を収集し、溶媒を減圧下で除去した。得られた残留物を、フラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン:EtOAc)により精製して、化合物3を無色の粘性油状物(2.55g、収率73%)として得た。1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 8.39 (d, J = 2.4 Hz, 1H), 8.13 (dd, J = 9.0 Hz及び2.8 Hz, 1H), 7.38 (dd, J = 9.0 Hz及び1.0 Hz, 1H), 4.73 (s, 2H), 4.24 (m, 4H), 1.37 (m, 6H); 13C NMR (125 MHz, CDCl3) δ 152.6, 152.5, 145.1, 134.6, 134.5, 125.3, 124.3, 121.1, 121.0, 65.65, 65.59, 59.3, 16.12, 16.06;MS(ESI)m/z(M+H)1117NOの計算値306.1、実測値305.7。
【0177】
化合物4。化合物3(2.00g、6.55mmol)を、丸底フラスコ中でEtOAc(50mL)に溶解し、続いてPd/C(200mg)を加えた。フラスコを密閉し、H環境下で16時間撹拌し、その時点で反応混合物をCHCl(10mL)で希釈した。次にへら先のセライトを加え、反応混合物を濾過した。濾液を収集し、溶媒を減圧下で除去して、無色の油状物を得た。油状物を、丸底フラスコ中でDMF(20mL)に溶解し、続いてDMAP(80mg、0.655mmol)、EDAC(1.38g、7.21mmol)及びN−boc−アミノカプロン酸(1.67g、7.21mmol)を加えた。反応混合物を室温で16時間撹拌し、続いてHO(20mL)で停止させた。得られたエマルションをEtOAc(3×100mL)で抽出し、有機層を合わせ、MgSOで乾燥した。懸濁液を濾過し、濾液を収集し、溶媒を減圧下で除去した。得られた残留物を、フラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン:EtOAc)により精製して、化合物4を無色の粘性油状物(2.08g、収率65%)として得た。1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 8.90 (s, 1H), 7.64 (dd, J = 8.4 Hz及び2.4 Hz, 1H), 7.40 (d, J = 2.4 Hz, 1H), 7.04 (dd, J = 9.0 Hz及び1.0 Hz, 1H), 4.84 (br s, 1H), 4.55 (s, 2H), 4.41 (br s, 1H), 4.16 (m, 4H), 3.02 (t, J = 6.8 Hz, 2H), 2.27 (t, J = 7.2 Hz, 2H), 1.63 (m, 2H), 1.44-1.40 (m, 11H), 1.38-1.32 (m, 8H); 13C NMR (125 MHz, CDCl3) δ 172.0, 156.1, 143.6, 143.5, 136.25, 133.01, 132.96, 121.3, 120.69, 120.67, 120.3, 79.0, 65.07, 65.01, 59.5, 40.3, 36.9, 29.6, 28.3, 26.2, 25.1, 16.0, 15.9;MS(ESI)m/z(M+H)2237NaOの計算値511.2、実測値510.5。
【0178】
化合物5。化合物4(600mg、1.23mmol)を、密閉シンチレーションバイアル中でCHCl(10mL)に溶解し、氷浴で0℃に冷却した。次にDeoxo−fluor(登録商標)(三フッ化ビス(2−メトキシエチル)アミノ硫黄、Sigma−Aldrichから入手可能、299mg、1.35mmol)を滴加し、反応容器を密閉した。反応混合物を0℃で1時間撹拌し、続いてHO(10mL)で停止させた。有機層を分離し、MgSOで乾燥した。懸濁液を濾過し、濾液を収集し、溶媒を減圧下で除去した。得られた残留物を、分取RP−HPLC(HO中0.05%のTFA:ACN)により精製して、化合物5を無色の粘性油状物(420mg、収率70%)として得た。1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 8.69 (s, 1H), 7.64 (s, 1H), 7.44 (dd, J = 9.0及び0.8 Hz, 1H), 7.19 (dd, J = 9.0 Hz及び1.0 Hz, 1H), 5.38 (d, J = 76 Hz, 2H), 4.71 (br s, 1H), 4.18 (m, 4H), 3.06 (t, J = 7.2 Hz, 2H), 2.29 (t, J = 7.6 Hz, 2H), 1.66 (m, 2H), 1.47-1.41 (m, 11H), 1.35-1.31 (m, 8H); 13C NMR (125 MHz, CDCl3) δ 171.8, 156.1, 144.06, 144.01, 143.99, 143.94, 135.8, 127.74, 127.67, 127.57, 127.50, 121.3, 120.92, 120.85, 120.06, 80.5, 78.9, 64.9, 64.8, 40.4, 36.9, 29.7, 28.3, 26.3, 25.0, 16.02, 15.95;MS(ESI)m/z(M+H)2237FNの計算値491.2、実測値491.5。
【0179】
化合物6。化合物5(140mg、0.286mmol)を、シンチレーションバイアル中でCHCl(3mL)に溶解し、続いて臭化トリメチルシリル(131mg、0.857mmol)を加えた。反応容器を密閉し、反応混合物を室温で16時間撹拌し、この時点で反応をMeOH(3mL)で停止させた。溶媒を減圧下で除去し、得られた残留物を、分取RP−HPLC(HO中0.05%のTFA:ACN)により直接精製して、化合物6を白色の固体(61mg、収率64%)として得た。1H NMR (400 MHz, CD3OD) δ 7.68 (s, 1H), 7.52 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 7.31 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 5.49 (d, J = 48 Hz, 2H), 2.94 (t, J = 8.0 Hz, 2H), 2.42 (t, J = 8.0 Hz, 2H), 1.78-1.66 (m, 4H), 1.51-1.43 (m, 2H); 31P NMR (162 MHz, CD3OD) δ -4.83; 19F NMR (376 MHz, CD3OD) δ -77.5.MS(ESI)m/z(M+H)1321FNの計算値335.1、実測値334.7。13C NMRは、低い可溶性及びシグナルの欠如によって決定されなかった。
【0180】
化合物6へのコンジュゲーションの例:
化合物7。化合物6(50mg、0.15mmol)を、シンチレーションバイアル中でDMF(2mL)に溶解し、続いてNHS−ビオチン(60mg、0.16mmol)及びトリエチルアミン(76mg、0.75mmol)を加えた。反応容器を密閉し、室温で16時間撹拌した。反応混合物を、分取RP−HPLC(HO中0.05%のTFA:ACN)により直接精製して、化合物7を白色の固体(46mg、収率58%)として得た。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 9.93 (s, 1H), 7.75 (t, J = 5.7 Hz, 1H), 7.70 (s, 1H), 7.53 (d, J = 8.8 Hz, 1H), 7.21 (d, J = 8.8 Hz, 1H), 5.44 (d, J = 47.6 Hz, 2H), 4.36 - 4.24 (m, 1H), 4.17 - 4.06 (m, 1H), 3.09 (q, J = 6.0 Hz, 1H), 3.02 (q, J = 6.5 Hz, 2H), 2.81 (dd, J = 12.4, 5.0 Hz, 1H), 2.57 (d, J = 12.4 Hz, 1H), 2.28 (t, J = 7.4 Hz, 2H), 2.03 (t, J = 7.3 Hz, 2H), 1.67 - 1.18 (m, 12H). 13C NMR (101 MHz, DMSO-d6) δ 171.8, 171.1, 162.7, 135.6, 120.7, 120.4, 119.7, 119.6, 80.5, 78.9, 61.0, 59.2, 55.4, 38.3, 36.2, 35.2, 29.0, 28.2, 28.0, 26.1, 25.3, 24.8. 31P NMR (162 MHz, DMSO-d6) δ -5.21; 19F NMR (376 MHz, DMSO-d6) δ -76.57.MS(ESI)m/z(M−H)2333FNPSの計算値559.2、実測値559.0。
スキーム2
【0181】
化合物9。N−boc−チラミン(10.0g、42.1mmol)8を、還流冷却器を備えた丸底フラスコ中でCHCl(80mL)に溶解し、続いてHO(40mL)を加えた。次に粉末NaOH(16.8g、421mmol)を加え、反応混合物を、油浴中で激しく撹拌しながら60℃に加熱した。1時間後、NaOHの第2の部分(8.4g、210mmol)を加え、撹拌を更に1時間続けた。1時間後、NaOHの第3の部分(8.4g、210mmol)を加え、撹拌を更に5時間続けた。次に反応混合物を0.5MのHClで抽出し、有機層を収集し、MgSOで乾燥した。懸濁液を濾過し、濾液を収集し、溶媒を減圧下で除去した。得られた残留物を、フラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン:EtOAc)により精製して、化合物9をオフホワイトの低融点の固体(5.43g、収率49%)として得た。1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 10.9 (s, 1H), 9.86 (s, 1H), 7.36 (d, J = 20 Hz, 2H), 6.94 (d, J = 20 Hz, 1H), 4.58 (br s, 1H), 3.34 (br s, 2H), 2.79 (t, J = 6.8 Hz, 2H), 1.43 (s, 9H); 13C NMR (125 MHz, CDCl3) δ 196.5, 160.3, 155.9, 137.6, 133.4, 130.4, 120.5, 117.8, 79.4, 41.7, 35.1, 28.4;MS(ESI)m/z(M−H)1418NOの計算値264.1、実測値264.1。
【0182】
化合物10。化合物9(2.00g、7.54mmol)を、丸底フラスコ中でCHCl(50mL)に懸濁し、続いてトリエチルアミン(1.53g、15.1mmol)及びクロロリン酸ジエチル(1.95g、11.3mmol)を加えた。反応混合物を室温で4時間撹拌した。次に反応混合物を0.5MのHCl(50mL)で抽出し、有機層を収集し、MgSOで乾燥した。懸濁液を濾過し、濾液を収集し、溶媒を減圧下で除去した。得られた残留物を、フラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン:EtOAc)により精製して、化合物10を無色の粘性油状物(2.20g、収率73%)として得た。1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 10.3 (s, 1H), 7.66 (s, 1H), 7.38-7.34 (m, 2H), 4.66 (br s, 1H), 4.21 (m, 4H), 3.32 (br s, 2H), 2.78 (t, J = 7.2 Hz, 2H), 1.38-1.30 (m, 15H); 13C NMR (125 MHz, CDCl3) δ 188.4, 155.7, 151.4, 151.3, 136.5, 136.0, 128.6, 127.10, 127.04, 121.17, 121.14, 79.2, 65.03, 64.97, 41.4, 35.3, 28.3, 16.02, 15.95;MS(ESI)m/z(2M+Na)3656NaO14の計算値825.3、実測値825.3。
【0183】
化合物11。化合物10(1.00g、2.49mmol)を、丸底フラスコ中でTHF及びMeOH(1:1、10mL)の混合物に溶解し、続いてNaBH(141mg、3.74mmol)を加えた。反応混合物を室温で3時間撹拌した。次に溶液を0.5MのHCl(10mL)で停止させ、得られた溶液をCHCl(3×25mL)で抽出した。有機層を合わせ、MgSOで乾燥した。懸濁液を濾過し、濾液を収集し、溶媒を減圧下で除去した。得られた残留物を、フラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン:EtOAc)により精製して、化合物11を無色の粘性油状物(540mg、収率53%)として得た。1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 7.29 (s, 1H), 7.14 (s, 2H), 4.65 (s, 2H), 4.60 (br s, 1H), 4.27 (m, 4H), 3.37 (br s, 2H), 2.80 (t, J = 6.8 Hz, 2H), 1.45 (s, 9H), 1.39 (t, J = 6.8 Hz, 6H); 13C NMR (125 MHz, CDCl3) δ 155.8, 146.9, 146.8, 136.8, 133.04, 133.00, 131.4, 129.5, 121.12, 121.10, 79.3, 65.13, 65.07, 60.2, 41.6, 35.5, 28.4, 16.11, 16.04;MS(ESI)m/z(M+H)1831NOの計算値404.2、実測値404.2。
【0184】
化合物12。化合物11(250mg、0.620mmol)を、密閉シンチレーションバイアル中でCHCl(5mL)に溶解し、氷浴で0℃に冷却した。次にDeoxo−fluor(登録商標)(三フッ化ビス(2−メトキシエチル)アミノ硫黄、Sigma−Aldrichから入手可能、151mg、0.682mmol)を滴加し、反応容器を密閉した。反応混合物を0℃で15分間撹拌し、続いてHO(5mL)で停止させた。有機層を分離し、MgSOで乾燥した。懸濁液を濾過し、濾液を収集し、溶媒を減圧下で除去した。得られた残留物を、分取RP−HPLC(HO中0.05%のTFA:ACN)により精製して、化合物12を無色の粘性油状物(110mg、収率44%)として得た。1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 7.30-7.25 (m, 2H), 7.15 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 5.45 (d, J = 48 Hz, 2H), 4.70 (br s, 1H), 4.25-4.17 (m, 4H), 3.34 (br s, 2H), 2.78 (t, J = 7.2 Hz, 2H), 1.42 (s, 9H), 1.34 (t, J = 6.8 Hz, 6H); 13C NMR (125 MHz, CDCl3) δ 155.8, 146.91, 146.86, 146.84, 146.79, 136.0, 130.3, 129.7, 129.6, 127.6, 127.5, 127.4, 127.3, 119.9, 80.5, 79.2, 78.8, 64.82, 64.76, 41.6, 35.3, 28.2, 16.0, 15.9;MS(ESI)m/z(M+H)1830FNOの計算値406.2、実測値405.7。
【0185】
化合物13。化合物12(110mg、0.247mmol)を、シンチレーションバイアル中でCHCl(1mL)に溶解し、続いて臭化トリメチルシリル(TMSB)(113mg、0.740mmol)を加えた。反応容器を密閉し、反応混合物を室温で16時間撹拌し、この時点で反応をMeOH(1mL)で停止させた。溶媒を減圧下で除去し、得られた残留物を、分取RP−HPLC(HO中0.05%のTFA:ACN)により直接精製して、化合物13を白色の固体(45mg、収率72%)として得た。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 7.25 (d, J = 9.6 Hz, 2H), 7.17 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 5.38 (d, J = 48 Hz, 2H), 3.00 (t, J = 7.6 Hz, 2H), 2.83 (t, J = 7.6 Hz, 2H); 31P NMR (162 MHz, DMSO-d6) δ 0.22; 19F NMR (376 MHz, DMSO-d6) δ -75.6.MS(ESI)m/z(M−H)12FNOの計算値248.0、実測値248.0。13C NMRは、低い可溶性及びシグナルの欠如によって決定されなかった。
【0186】
化合物13への検出可能標識コンジュゲーションの例:
化合物14。化合物13(15mg、0.060mmol)を、シンチレーションバイアル中でDMF(2mL)に溶解し、続いてNHS−ビオチン(23mg、0.066mmol)及びトリエチルアミン(18mg、0.18mmol)を加えた。反応容器を密閉し、室温で16時間撹拌した。反応混合物を、分取RP−HPLC(HO中0.05%のTFA:ACN)により直接精製して、化合物14を白色の固体(25mg、収率86%)として得た。1H NMR (400 MHz, CD3OD) δ 7.33-7.21 (m, 3H), 5.42 (d, J = 48 Hz, 2H), 4.52-4.49 (m, 1H), 4.31-4.28 (m, 1H), 3.43-3.40 (m, 2H), 3.19-3.17 (m, 1H), 2.96-2.92 (m, 1H), 2.83-2.79 (m, 2H), 2.72 (d, J = 13 Hz, 1H), 2.15 (t, J = 7.2 Hz, 2H), 1.71-1.57 (m, 4H), 1.48-1.38 (m, 2H); 13C NMR (125 MHz, CD3OD) δ 176.3, 166.3, 149.15, 149.09, 149.04, 137.4, 131.4, 130.9, 130.8, 129.7, 129.6, 129.5, 129.4, 121.5, 81.8, 80.1, 63.6, 61.8, 57.1, 41.8, 41.2, 36.9, 35.8, 29.8, 29.6, 27.1; 31P NMR (162 MHz, CD3OD) δ -5.12; 19F NMR (376 MHz, CD3OD) δ -77.3.MS(ESI)m/z(M−H)1926FNPSの計算値474.1、実測値474.0。
【0187】
化合物13への検出可能標識コンジュゲーションの追加の例が、スキーム3に示されている
スキーム3
追加のQMPは、スキーム4−10に従って合成することができる。
スキーム4
【0188】
化合物15を、THF及びメタノール中の水素化ホウ素ナトリウムで処理して、化合物16を形成する。次に化合物16を、最初に、DMF中において1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDAC)などのカルボジイミド架橋剤の存在下でN−ヒドロキシスクシンイミドにより処理して、活性化された酸を形成する(示されず)。次に、活性化された酸を、DMF中においてトリエチルアミンなどの塩基の存在下で1−BOCペンタンジアミンと反応させて、化合物17を形成する。次に化合物17を、上記のスキーム2において化合物10を作製するのに使用された方法により、ジクロロメタン中のクロロリン酸ジエチル及びトリエチルアミンと反応させて、化合物18を形成する。次に化合物18を、ジクロロメタン中のDeoxo−fluor(登録商標)と反応させて、化合物19を形成し、これを次に臭化トリメチルシリル(TMSB)と反応させて、脱保護アミン化合物20を形成する。次に化合物20をビオチンにコンジュゲートして、化合物21を形成する。化合物19、20及び21を作製する方法は、上記のスキーム2において化合物12、13及び14に使用されたものと同じである。
スキーム5
【0189】
化合物23。フェノール(22)(75.3g、800mmol)、グリオキシル酸一水和物(9.21g、100mmol)、トリブチルアミン(17.6g、22.6mL、95mmol)、Al(SO(3.33g、5mmol)及びHO(4mL)を丸底フラスコ中で合わせ、反応混合物を50℃で8時間加熱した。反応混合物を室温に冷却し、続いて1MのNaOH(100mL)を加え、1,2−ジクロロエタン(3×100mL)で抽出した。次にNaOH層を、濃HClの注意深い添加によりpH=2に酸性化した。得られた溶液をEtOAc(5×200mL)で抽出した。有機物を収集し、合わせ、MgSOで乾燥した。次に溶媒を減圧下で除去して、化合物23を粘性の明褐色油状物(13.4g、収率80%)として得た。
【0190】
化合物24。化合物23(12.0g、71.4mmol)及びN−boc−ジアミノヘキサン(23.2g、107mmol)をDMF(125mL)に溶解し、続いてHOBt(965mg、7.14mmol)、EDAC(20.5g、107mmol)及び最後にDIEA(13.8g、18.6mL、107mmol)を連続して加えた。反応混合物をN下で16時間撹拌し、続いて減圧下でDMFを約25mLに低減した。次に得られた混合物を1MのHCl(100mL)で停止させ、EtOAc(3×100mL)で抽出した。有機物を収集し、合わせ、MgSOで乾燥した。溶媒を減圧下で除去し、得られた残留物を、フラッシュクロマトグラフィー(Biotage Snap 50、ヘキサン:EtOAcの1:0から5:95)により3つの別々の等しい部分で精製して、化合物24を無色の粘性油状物(16.0g、収率61%)として得た。MS(ESI)m/z(M+2H−boc)1423の計算値267.2、実測値266.6。
【0191】
化合物25。化合物24(13.0g、35.5mmol)をEtOAc(25mL)に溶解し、N下で氷浴により0℃に冷却した。次にトリエチルアミン(10.8g、14.8mL、107mmol)を加え、10分間撹拌した。次にクロロリン酸ジエチル(6.73g、7.69mL、39.0mmol)を5分間かけて滴加した。反応混合物を氷浴から取り出し、N下で4時間撹拌した。次に反応混合物を1MのHCl(200mL)で停止させ、EtOAc(3×200mL)で抽出した。有機物を収集し、合わせ、MgSOで乾燥した。溶媒を減圧下で除去し、得られた残留物をフラッシュクロマトグラフィー(Biotage Snap 340、ヘキサン:EtOAcの1:0から5:95)により精製して、化合物25を無色の粘性油状物(16.2g、収率91%)として得た。MS(ESI)m/z(M+H)2340の計算値503.5、実測値503.2。
【0192】
化合物26。化合物25(13.0g、25.9mmol)を無水CHCl(100mL)に溶解し、続いてN下で氷浴により−40℃に冷却した。次にDeoxo−fluor(登録商標)(6.02g、5.01mL、27.2mmol)を、15分間かけて滴加した。反応混合物を氷浴から取り出し、N下で1時間撹拌した。次に反応混合物を飽和NaHCO溶液で停止させ、続いてCHCl(3×100mL)で抽出した。有機物を収集し、合わせ、MgSOで乾燥した。溶媒を減圧下で除去し、得られた残留物をフラッシュクロマトグラフィー(Biotage Snap 340、CHCl:MeOHの1:0から92:8)により精製して、化合物26を明黄色の粘性油状物(11.5g、収率85%)として得た。MS(ESI)m/z(M+2H−boc)1831FNの計算値405.2、実測値405.0。
【0193】
化合物27。化合物26(11.0g、21.8mmol)を無水CHCl(20mL)に溶解し、続いてN下で氷浴により0℃に冷却した。次にTMSBr(16.7g、14.3mL、109mmol)を、10分間かけて滴加した。次に反応混合物を氷浴から取り出し、N下で16時間撹拌した。反応混合物をMeOH(50mL)で停止させ、溶液を減圧下で除去した。残留物を、分取RP−HPLC(C18、50×250mm、40mL/分、HO中0.05%のTFA:CHCNの40分間かけて99:1から5:95)を使用して5つの等量で精製して、化合物27を白色の固体(4.20g、収率55%)として得た。MS(ESI)m/z(M+H)1422FNの計算値349.3、実測値348.9。
【0194】
化合物27へのコンジュゲーションの例:化合物28。5(6)−カルボキシテトラメチルローダミン(500mg、1.16mmol)を無水DMSO(5mL)に溶解し、続いてDMAP(213mg、1.74mmol)及び炭酸N,N’−ジスクシンイミジル(327mg、1.28mmol)を加えた。反応容器を密閉し、反応混合物を室温で30分間撹拌した。次に化合物27(446mg、1.28mmol)を加え、続いてDIEA(750mg、1.01mL、5.80mmol)を加えた。得られた混合物を室温で2時間撹拌した。反応混合物をMeOH(5mL)で希釈し、分取RP−HPLC(HO中0.05%のTFA:ACNの40分間かけて99:1から5:95)により精製して、化合物28を暗紫色の固体(625mg、収率71%)として得た。MS(ESI)m/z(M+H)3943FNの計算値761.3、実測値761.3。
【0195】
化合物29は、化合物21と同じ方法で作製され、化合物30は、下記の化合物37と同じ方法で作製される。
スキーム6
【0196】
化合物32。4−ヒドロキシマンデル酸(31)(11.0g、59.1mmol)及びN−boc−ジアミノヘキサン(141.1g、65.0mmol)をDMF(125mL)に溶解し、続いてHOBt(800mg、5.91mmol)、EDAC(17.0g、88.7mmol)及び最後にDIEA(11.5g、15.4mL、88.7mmol)を連続して加えた。反応混合物をN下で16時間撹拌し、続いて減圧下でDMFを約25mLに低減した。次に得られた混合物を1MのHCl(100mL)で停止させ、EtOAc(3×100mL)で抽出した。有機物を収集し、合わせ、MgSOで乾燥した。溶媒を減圧下で除去し、得られた残留物を、フラッシュクロマトグラフィー(Biotage Snap 50、ヘキサン:EtOAcの1:0から5:95)により3つの別々の等しい部分で精製して、化合物32を無色の粘性油状物(18.7g、収率86%)として得た。1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 8.28 (s, 1H), 7.07 (d, 2H, J = 8.4 Hz), 6.81 (br s, 1H), 6.64 (d, 2H, J = 8.4 Hz), 4.87 (s, 1H), 4.78 (br s, 1H), 4.57 (br s, 1H), 3.23-3.11 (m, 2H), 2.99-2.97 (m, 2H), 1.42-1.35 (m, 13H), 1.18 (br s, 4H); 13C NMR (101 MHz, CDCl3) δ 173.4, 162.7, 157.0, 128.2, 115.8, 79.4, 73.8, 40.34, 39.2, 36.5, 31.5, 29.7, 29.2, 28.4, 26.2, 26.1.MS(ESI)m/z(M+2H−boc)1423の計算値267.2、実測値266.6。
【0197】
化合物33。化合物32(18.5g、50.5mmol)をEtOAc(25mL)に溶解し、N下で氷浴により0℃に冷却した。次にトリエチルアミン(25.6g、35.2mL、253mmol)を加え、10分間撹拌した。次にクロロリン酸ジエチル(9.15g、7.69mL、53.0mmol)を5分間かけて滴加した。反応混合物を氷浴から取り出し、N下で4時間撹拌した。次に反応混合物を1MのHCl(200mL)で停止させ、EtOAc(3×200mL)で抽出した。有機物を収集し、合わせ、MgSOで乾燥した。溶媒を減圧下で除去し、得られた残留物をフラッシュクロマトグラフィー(Biotage Snap 340、ヘキサン:EtOAcの1:0から5:95)により精製して、化合物33を無色の粘性油状物(22.6g、収率89%)として得た。1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 7.36 (d, 2H, J = 8.4 Hz), 7.14 (d, 2H, J = 8.4 Hz), 6.66 (br s, 1H), 4.85 (s, 1H), 4.64 (br s, 2H), 4.20-4.13 (m, 4H), 3.24-3.20 (m, 2H), 3.08-3.03 (m, 2H), 1.40-1.25 (m, 23H); 13C NMR (101 MHz, CDCl3) δ 172.1, 156.1, 150.5, 150.4, 136.9, 128.1, 120.04, 119.99, 79.1, 73.2, 64.8, 64.71, 64.65, 40.1, 39.1, 29.8, 29.2, 28.4, 26.04, 25.98, 16.07, 16.00; 31P NMR (162 MHz, CDCl3) δ -5.9.MS(ESI)m/z(M+H)2340の計算値503.5、実測値503.2。
【0198】
化合物34。化合物33(21.5g、42.3mmol)を無水CHCl(100mL)に溶解し、続いてN下で氷浴により0℃に冷却した。次にDeoxo−fluor(登録商標)(10.4g、8.68mL、47.1mmol)を、15分間かけて滴加した。反応混合物を氷浴から取り出し、N下で1時間撹拌した。次に反応混合物を飽和NaHCO溶液で停止させ、続いてCHCl(3×100mL)で抽出した。有機物を収集し、合わせ、MgSOで乾燥した。溶媒を減圧下で除去し、得られた残留物をフラッシュクロマトグラフィー(Biotage Snap 340、CHCl:MeOHの1:0から92:8)により精製して、化合物34を明黄色の粘性油状物(14.9g、収率69%)として得た。 1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 7.36 (d, 2H, J = 8.4 Hz), 7.17 (d, 2H, J = 8.4 Hz), 6.81 (br s, 1H), 5.67 (d, 2H, J = 48 Hz), 4.73 (br s, 1H), 4.20-4.10 (m, 4H), 3.26-3.20 (m, 2H), 3.05-2.98 (m, 2H), 1.50-1.20 (m, 23H); 13C NMR (101 MHz, CDCl3) δ 168.2, 168.0, 155.9, 151.28, 151.25, 151.21, 151.18, 131.7, 131.5, 128.03, 127.97, 119.95, 119.90, 91.9, 90.0, 78.7, 64.55, 64.48, 40.1, 38.7, 29.7, 29.1, 28.2, 26.07, 25.98, 15.90, 15.83; 19F NMR (376 MHz, CDCl3) δ -175.5; 31P NMR (162 MHz, CDCl3) δ -6.0.MS(ESI)m/z(M+2H−boc)1831FNの計算値405.2、実測値405.0。
【0199】
化合物35。化合物34(3.20g、6.34mmol)を無水CHCl(20mL)に溶解し、続いてN下で氷浴により0℃に冷却した。次にTMSBr(4.85g、4.19mL、31.7mmol)を10分間かけて滴加した。次に反応混合物を氷浴から取り出し、N下で16時間撹拌した。反応混合物をMeOH(20mL)で停止させ、溶液を減圧下で除去した。残留物をMeOH(10mL)に取り、得られた混合物を、氷水(100mL)の撹拌フラスコに滴加して、高粘度の白色沈殿物をもたらした。固体を真空濾過により収集し、冷水で洗浄した。得られた白色の固体を高真空下で乾燥させて、化合物35を白色の固体(1.50g、収率68%)を得た。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 8.32 (t, 1H, J = 5.4 Hz), 8.17 (br s, 3H), 7.36 (d, 2H, J = 8.4 Hz), 7.16 (d, 2H, J = 8.4 Hz), 5.72 (d, 2H, J = 48 Hz), 3.13-3.07 (m, 2H), 2.29 (br s, 2H), 1.35-1.20 (m, 4H), 1.05-1.00 (m, 2H), 0.90-0.84 (m, 2H); 13C NMR (101 MHz, DMSO-d6) δ 168.3, 168.1, 154.7, 129.6, 129.4, 127.23, 127.18, 91.4, 89.6, 38.3, 37.1, 28.6, 26.9, 25.5, 24.9;19F NMR (376 MHz, DMSO-d6) δ -174.2;31P NMR (162 MHz, DMSO-d6) δ -4.8.MS(ESI)m/z(M+H)1422FNの計算値349.3、実測値348.9。
【0200】
化合物35へのコンジュゲーションの例:化合物36。5(6)−カルボキシテトラメチルローダミン(500mg、1.16mmol)を無水DMSO(5mL)に溶解し、続いてDMAP(213mg、1.74mmol)及び炭酸N,N’−ジスクシンイミジル(327mg、1.28mmol)を加えた。反応容器を密閉し、反応混合物を室温で30分間撹拌した。次に化合物35(446mg、1.28mmol)を加え、続いてDIEA(750mg、1.01mL、5.80mmol)を加えた。得られた混合物を室温で2時間撹拌した。反応混合物をMeOH(5mL)で希釈し、分取RP−HPLC(HO中0.05%のTFA:ACNの40分間かけて99:1から5:95)により精製して、化合物36を暗紫色の固体(625mg、収率71%)として得た。MS(ESI)m/z(M+H)3943FNの計算値761.3、実測値761.3。
【0201】
化合物37。アミノ−peg−酸(511mg、1.16mmol)を、無水DMSO(10mL)及びDIEA(449mg、605μL、3.47mmol)の溶液に加え、続いて澄んだ溶液が観察されるまで超音波処理した。次に塩化ダブシル(750mg、2.32mmol)を15分間かけて10個の等しい部分で加えた。反応容器を密閉し、反応混合物を室温で1時間撹拌した。次にDMAP(212mg、1.74mmol)を加え、続いて炭酸N,N’−ジスクシンイミジル(327mg、1.28mmol)を15分間かけて10個の等しい部分で加えた。反応容器を密閉し、反応混合物を室温で15分間撹拌した。次に化合物35(446mg、1.28mmol)を加え、続いてDIEA(750mg、1.01mL、5.80mmol)を加えた。得られた混合物を室温で2時間撹拌した。反応混合物をMeOH(5mL)で希釈し、分取RP−HPLC(HO中0.05%のTFA:ACNの40分間かけて99:1から5:95)により精製して、化合物37を暗橙色の粘性油状物(735mg、アミノ−peg−酸に基づいて収率60%)として得た。MS(ESI)m/z(M+2H)2+4774FN16PS2+の計算値530.2、実測値530.3。
スキーム7
【0202】
化合物38。化合物32(4.49g、12.3mmol)をEtOAc(25mL)に溶解し、続いてイミダゾール(2.08g、30.6mmol)及びTBS−Cl(4.61g、30.6mmol)を加えた。反応容器を密閉し、室温で4時間撹拌した。次に溶媒を減圧下で除去し、得られた残留物をMeCN:HO(10:1、20mL)の混合物に取った。次にDBU(1.87g、12.3mmol)を加え、反応混合物を室温で16時間撹拌した。次に反応混合物をEtOAc(50mL)及び1MのHCl(3×50mL)で抽出した。有機層を収集し、MgSOで乾燥し、溶媒を減圧下で除去した。得られた残留物をフラッシュクロマトグラフィー(Biotage Snap 50、ヘキサン:EtOAcの1:0から1:4)により精製して、化合物38を無色の油状物(5.10g、収率86%)として得た。1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 7.89 (br s, 1H), 7.06 (d, 2H, J = 8.4 Hz), 7.01 (t, 1H, J = 5.6 Hz), 6.54 (d, 2H, J = 8.4 Hz), 4.95 (s, 1H), 4.62 (br s, 1H), 3.30-3.20 (m, 2H), 3.09-3.01 (m, 2H), 1.55-1.46 (m, 13H), 1.28 (s, 4H), 0.88 (s, 9H), 0.05 (s, 3H), -0.12 (s, 3H); 13C NMR (101 MHz, CDCl3) δ 173.3, 156.7, 130.5, 127.6, 115.6, 79.2, 75.6, 40.4, 38.8, 29.9, 29.5, 28.4, 26.3, 25.7, 18.1, -4.7, -5.3.MS(ESI)m/z(M+H)2545Siの計算値481.3、実測値481.3。
【0203】
化合物39。化合物38(1.75g、3.64mmol)、TBABr(2.35g、7.28mmol)及びアセトブロモ−α−D−ガラクトシド(2.99g、7.28mmol)を丸底フラスコ中で合わせ、CHCl(25mL)に溶解した。次にNaOH(5wt%、12mL)の水溶液を加え、反応混合物を室温で4時間激しく撹拌した。次に反応混合物をブライン(50mL)で希釈し、CHCl(3×50mL)で抽出した。有機層を収集し、MgSOで乾燥し、溶媒を減圧下で除去した。得られた残留物をフラッシュクロマトグラフィー(Biotage Snap 50、ヘキサン:EtOAcの1:0から1:4)により精製して、化合物39を無色の油状物(2.45g、収率83%)として得た。1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 7.34 (dd, 2H, J = 8.8 Hz及び2.0 Hz), 6.93 (d, 2H, J = 8.8 Hz), 6.82-6.78 (m, 1H), 5.49-5.41 (m, 2H), 5.06 (dd, 1H, J = 14 Hz及び3.6 Hz), 5.03-5.00 (m, 2H), 4.55 (br s, 1H), 4.25-4.00 (m, 3H), 3.33-3.25 (m, 1H), 3.17-3.02 (m, 3H), 2.16 (s, 3H), 2.04 (s, 6H), 1.99 (s, 3H), 1.50-1.40 (m, 13H), 1.29 (br s, 4H), 0.91 (s, 9H), 0.06 (s, 3H), -0.06 (s, 3H);13C NMR (101 MHz, CDCl3) δ 171.9, 170.3, 170.2, 170.0, 169.3, 156.66, 156.64, 155.9, 134.86, 136.84, 127.34, 127.28, 116.7, 99.60, 99.57, 79.0, 75.1, 75.0, 70.92, 70.89, 70.8, 68.6, 66.8, 61.3, 40.3, 38.7, 29.9, 29.5, 28.4, 26.4, 26.3, 25.7, 20.7, 20.6, 20.5, 18.1, -4.8, -5.4.MS(ESI)m/z(M+H)396314Siの計算値811.4、実測値811.7。
【0204】
化合物40。化合物39(2.15g、2.65mmol)をTHF(20mL)に溶解し、続いてNでパージし、氷浴で0℃に冷却した。次にTBAF(THF中1M、2.65mL、2.65mmol)を5分間かけて滴加した。反応混合物をN下において0℃で15分間撹拌し、続いて飽和NaHCO溶液(25mL)で停止させた。得られた懸濁液をEtOAc(3×50mL)で抽出した。有機物を合わせ、MgSOで乾燥し、溶媒を減圧下で除去した。得られた残留物をフラッシュクロマトグラフィー(Biotage Snap 50、ヘキサン:EtOAcの1:0から1:9)により精製して、化合物40を無色の油状物として得て、それを高真空に曝露すると白色の泡状物になった(1.55g、収率84%)。1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 7.35 (d, 2H, J = 8.4 Hz), 6.99 (d, 2H, J = 8.4 Hz), 6.36 (d, 1H, J = 5.6 Hz), 5.50-5.43 (m, 2H), 5.10 (dd, 1H, J = 10 Hz及び3.2 Hz), 5.05-4.98 (m, 2H), 4.57 (br s, 1H), 4.25-4.02 (m, 3H), 4.04 (br s, 1H), 3.30-3.20 (m, 2H), 3.21-3.03 (m, 2H), 2.18 (s, 3H), 2.05-2.00 (m, 9H), 1.53-1.33 (m, 13H), 1.32-1.20 (m, 4H); 13C NMR (101 MHz, CDCl3) δ 172.1, 170.4, 170.2, 170.1, 169.4, 157.0, 156.1, 134.65, 134.63, 128.2, 117.2, 117.1, 99.62, 99.60, 79.2, 73.53, 73.49, 71.0, 70.8, 68.6, 66.8, 61.3, 40.0, 39.2, 29.8, 29.2, 28.4, 25.9, 20.70, 20.65, 20.64, 20.56.MS(ESI)m/z(M+H)334914の計算値697.3、実測値697.5。
【0205】
化合物41。化合物40(1.22g、1.75mmol)を無水CHCl(20mL)に溶解し、続いてN下で氷浴により0℃に冷却した。次にDeoxo−fluor(登録商標)(426mg、355μL、1.93mmol)を5分間かけて滴加した。反応混合物を氷浴から取り出し、N下で15分間撹拌した。次に反応混合物を飽和NaHCO溶液(20mL)で停止させ、続いてCHCl(3×50mL)で抽出した。有機物を収集し、合わせ、MgSOで乾燥した。溶媒を減圧下で除去し、得られた残留物をフラッシュクロマトグラフィー(Biotage Snap 50、ヘキサン:EtOAcの1:0から1:9)により精製して、化合物41を無色の油状物として得て、それを高真空に曝露すると白色の泡状物になった(840mg、収率69%)。1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 7.35 (d, 2H, J = 8.4 Hz), 6.99 (d, 2H, J = 8.4 Hz), 6.63 (br s, 1H), 5.69 (d, 1H, J = 5.6 Hz), 5.50-5.41 (m, 2H), 5.08 (dd, 1H, J = 10 Hz及び3.6 Hz), 5.03 (d, 1H, J = 8.0 Hz), 4.58 (br s, 1H), 4.23-4.01 (m, 3H), 4.04 (br s, 1H), 3.30-3.23 (m, 2H), 3.12-3.01 (m, 2H), 2.16 (s, 3H), 2.02-1.96 (m, 9H), 1.58-1.25 (m, 17H); 13C NMR (101 MHz, CDCl3) δ 170.3, 170.1, 170.0, 169.3, 168.4, 168.2, 162.4, 157.62, 157.60, 157.57, 156.0, 129.94, 129.91, 129.75, 129.72, 128.31, 128.24, 128.18, 116.90, 116.89, 99.3, 92.27, 92.23, 90.40, 90.37, 79.0, 70.99, 70.98, 70.7, 68.5, 66.8, 61.3, 40.2, 38.9, 36.4, 31.2, 29.9, 29.3, 28.3, 26.2, 26.1, 20.62, 20.57, 20.48; 19F NMR (376 MHz, CDCl3) δ -175.2, -175.6.MS(ESI)m/z(M+Na)3347FNNaO13の計算値721.3、実測値721.2。
【0206】
化合物42。化合物41(300mg、0.429mmol)をTEA:MeOH:HO(1:8:1、2mL)の混合物に溶解し、室温で4時間撹拌した。溶媒を減圧下で除去し、続いてTFA:CHCl(1:1、5mL)の溶液を加えた。反応容器を密閉し、室温で1時間撹拌した。溶媒を減圧下で除去し、得られた残留物を、分取RP−HPLC(HO中0.05%のTFA:ACNの60分間かけて99:1から5:95)により精製して、化合物42を白色の固体(75mg、収率41%)として得た。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 8.43 (t, 1H, J = 5.6 Hz), 7.67 (br s, 3H), 7.35 (d, 2H, J = 8.0 Hz), 7.05 (d, 2H, J = 8.0 Hz), 5.77 (d, 1H, J = 48 Hz), 5.18 (s, 1H), 4.95-4.80 (m, 2H), 4.67 (s, 1H), 4.53 (s, 1H), 3.70 (s, 1H), 3.60-3.25 (m, 7H), 3.20-3.05 (m, 2H), 1.55-1.38 (m, 4H), 1.37-1.20 (m, 4H); 13C NMR (101 MHz, DMSO-d6) δ 168.8, 167.7, 158.0, 129.2, 129.0, 128.6, 128.5, 116.1, 100.6, 91.50, 91.45, 89.69, 89.63, 75.5, 73.3, 70.2, 68.1, 60.3, 38.8, 38.1, 28.7, 26.9, 25.7, 25.4; 19F NMR (376 MHz, CDCl3) δ -170.4, -170.5.MS(ESI)m/z(M+H)2032FNの計算値431.2、実測値431.1。
【0207】
化合物42へのコンジュゲーションの例:化合物43。化合物42(5mg、12μmol)を無水DMSO(1mL)に溶解し、続いてトリエチルアミン(6mg、8μL、58μmol)及び最後にCy5−NHSエステル(7mg、12μmol)を加えた。反応容器を密閉し、反応混合物を室温で1時間撹拌した。反応混合物をMeOH(1mL)で希釈し、分取RP−HPLC(HO中0.05%のTFA:ACNの40分間かけて99:1から5:95)により直接精製して、化合物43(TFA塩)を青色の固体(8mg、収率68%)として得た。MS(ESI)m/z(M)5268FNの計算値895.5、実測値895.2。
スキーム8
【0208】
化合物44。化合物32(200mg、0.546mmol)を、丸底フラスコ中でEtOAc(1mL)に溶解し、続いてトリエチルアミン(166mg、1.64mmol)及び塩化プロピオニル(56mg、0.600mmol)を加えた。反応混合物を室温で1時間撹拌した。次に反応混合物を0.5MのHCl(5mL)及びEtOAc(3×10mL)で抽出し、有機層を収集し、MgSOで乾燥した。懸濁液を濾過し、濾液を収集し、溶媒を減圧下で除去した。得られた残留物をフラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン:EtOAcの1:0から1:9)により精製して、化合物44を白色の固体(210mg、収率91%)として得た。1H NMR (400 MHz, CD3CN) δ 7.42 (d, 2H, J = 8.4 Hz), 7.14 (br s, 1H), 7.06 (d, 2H, J = 8.4 Hz), 5.34 (br s, 1H), 4.96 (d, 1H, J = 4.0 Hz), 4.51 (d, 1H, J = 4.0 Hz), 3.15 (q, 2H, J = 6.8 Hz), 2.97 (q, 2H, J = 6.8 Hz), 2.58 (q, 2H, J = 7.6 Hz), 1.42-1.30 (m, 13H), 1.29-1.12 (m, 7H); 13C NMR (101 MHz, CD3CN) δ 174.1, 173.0, 157.0, 151.6, 139.5, 128.8, 122.7, 78.98, 74.2, 41.0, 39.6, 30.7, 30.2, 28.7, 28.2, 27.07, 27.03, 9.36.MS(ESI)m/z(M+Na)2234NaOの計算値445.2、実測値445.2
【0209】
化合物45。化合物44(200mg、0.473mmol)を、密閉シンチレーションバイアル中でCHCl(5mL)に溶解し、氷浴で0℃に冷却した。次にDeoxo−fluor(登録商標)(110mg、0.497mmol)を滴加し、反応容器を密閉した。反応混合物を0℃で1時間撹拌し、続いて0.5MのHCl(5mL)で停止させた。有機層を分離し、MgSOで乾燥した。懸濁液を濾過し、濾液を収集し、溶媒を減圧下で除去した。得られた残留物をフラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン:EtOAcの1:0から1:9)により精製して、化合物45を白色の固体(155mg、収率77%)として得た。1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 7.39 (d, 2H, J = 8.4 Hz), 7.04 (d, 2H, J = 8.4 Hz), 6.81 (br s, 1H), 5.68 (d, 1H, J = 48 Hz), 4.77 (br s, 1H), 3.21 (q, 2H, J = 6.0 Hz), 3.00-2.95 (m, 2H), 2.52 (q, 2H, J = 7.6 Hz), 1.42-1.30 (m, 13H), 1.29-1.11 (m, 7H); 13C NMR (101 MHz, CDCl3) δ172.5, 168.1, 167.9, 155.9, 151.19, 151.17, 132.4, 132.2, 127.53, 127.47, 121.5, 91.9, 90.0, 78.6, 40.02, 38.65, 29.7, 29.1, 28.2, 27.4, 26.0, 25.9, 8.7;19F NMR (376 MHz, CDCl3) δ -178.0.MS(ESI)m/z(M+Na)2233FNNaOの計算値447.2、実測値447.1。
【0210】
化合物46。化合物45(100mg、0.236mmol)を、シンチレーションバイアル中でCHCl:TFAの1:1混合物(1mL)に溶解した。バイアルを密閉し、室温で30分間撹拌した。次に溶媒を減圧下で除去し、得られた残留物は、続く合成工程に適した純度であることが見出された。化合物46を粘性油状物として得て、TFA塩と決定された(100mg、収率97%)。少量の試料を、分取RP−HPLC(HO中0.05%のTFA:ACNの40分間かけて99:1から5:95)により精製して、分析試料を得た。1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 7.42 (d, 2H, J = 7.6 Hz), 7.09 (d, 2H, J = 7.6 Hz), 6.98 (br s, 1H), 5.72 (d, 1H, J = 48 Hz), 3.23 (br s, 2H), 2.57 (q, 2H, J = 7.6 Hz), 1.60-1.40 (m, 4H), 1.39-1.15 (m, 7H); 13C NMR (101 MHz, CDCl3) δ 173.1, 169.0, 168.8, 151.52, 151.50, 132.5, 132.3, 128.0, 127.9, 121.9, 91.9, 90.1, 39.6, 38.7, 28.7, 27.6, 26.9, 25.5, 25.2, 8.9; 19F NMR (376 MHz, CDCl3) δ-177.5.MS(ESI)m/z(M+H)1726FNの計算値325.2、実測値325.2。
【0211】
化合物46へのコンジュゲーションの例:化合物47。化合物46(TFA塩、10mg、23μmol)を無水DMSO(1mL)に溶解し、続いてトリエチルアミン(7mg、10μL、68μmol)及び最後にCy5−NHSエステル(15mg、25μmol)を加えた。反応容器を密閉し、反応混合物を室温で1時間撹拌した。反応混合物をMeOH(1mL)で希釈し、分取RP−HPLC(HO中0.05%のTFA:ACNの40分間かけて99:1から5:95)により直接精製して、化合物47(TFA塩)を青色の固体(12mg、収率58%)として得た。MS(ESI)m/z(M)4962FNの計算値789.5、実測値789.1。
スキーム10
レゾルフィンを、クロロホルム及び水中の水酸化ナトリウムで処理して、アルデヒド48を形成する。次にアルデヒド48を、シアノ水素化ホウ素ナトリウムなどの適切な還元剤の存在下で化合物20と反応させて、化合物49を形成する。
スキーム11
【0212】
アジドアルキン「クリック」化学による、1,2,3−トリアゾリルリンカーを含有するQMの合成
化合物57は、スキーム11に示されている反応順序により調製される。最初に、サリチルアルデヒド(50)を、臭化エチニルマグネシウム(51)と反応させて、化合物52を得る。次に化合物52を、クロロリン酸ジエチル(53)及びDeoxofluor(登録商標)と順に反応させて、化合物54を得る。化合物54をTMSBrで脱保護して、リン酸アリール55を得る。最後に、化合物55を末端アジド官能化レポーター分子(N−R、化合物56)と反応させて、1,2,3−トリアゾリルリンカーを含有するQMレポーターコンジュゲート(57)を得る。
【0213】
実施例2
QMPを使用する標的検出
QMPの一般的免疫組織化学(IHC)プロトコール。別途特定のない限り、全てのIHC染色実験は、VENTANA BenchMark(登録商標)XT自動組織染色プラットフォームにより実施し、これらのプラットフォームに使用された試薬は、Ventana Medical Systems,Inc.(Tucson,AZ,USA、“Ventana”)からのものであった。ポリクローナルヤギ抗ウサギ抗体、ヤギ抗マウス抗体、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)及びアルカリホスファターゼ(AP)は、Roche Diagnostics(Mannheim,Germany)から得た。
【0214】
以下の共通の工程を実施した。(1)EZ Prep洗剤溶液(Ventana Medical Systems,Inc.(VMSI)、#950−101)による脱パラフィン(75℃、20分間)、(2)Reaction Buffer(VMSI #950−300)による洗浄、(3)Cell Conditioning 1(VMSI #950−124)による抗原回収(100℃、時間は目的の抗原に応じて決まる)、(4)洗浄(工程2と同じ)、(5)後に続くHRP検出工程のプロトコールのため、内在性ペルオキシダーゼを、iVIEW阻害剤(VMSI,E253−2187)の使用により不活性化した(37℃、4分間)、(6)洗浄(工程2と同じ)、(7)一次抗体(Ab)インキュベーション(37℃、時間は、一次抗体に応じて、8−32分間)及び(8)洗浄(工程2と同じ)。後に続く全ての試薬インキュベーション工程は、工程(2)の洗浄によって別々に分けられた。
【0215】
図4及び5に説明されているように、2つの実験染色プロトコールを使用した。一次抗体(抗標的抗体)インキュベーション及び洗浄の後には、APにコンジュゲートしたヤギポリクローナル抗種抗体を用いる二次抗体インキュベーションが続いた(37℃、8分間)(図4)。一次抗体インキュベーション及び洗浄の後には、ニトロピラゾール(NP)によりハプテン標識されたヤギポリクローナル抗種抗体を用いる二次抗体インキュベーションが続いた(37℃、8分間)。洗浄した後、APコンジュゲートマウス抗NPモノクローナル抗体を加えた(37℃、8分間)(図5)。
【0216】
検出1−HRP DAB。APコンジュゲートとインキュベートした後、スライドをSpecial Stains洗浄液(VMSI #860−015)で洗浄した。QMP試薬を100mMのCHES(3−シクロ−ヘキシルアミノ−エチルスルホン酸)、pH10.0、0.05%のBrij−35に溶解した。QMP代謝回転は、100μLのAP Enhancer(VMSI #253−2182)、続く100μLのハプテン標識QMPの添加及び37℃で16分間のインキュベーションによって達成した。化合物29は、この方法に使用できる例示的なハプテンQMPである。沈着したハプテンを、続いてマウス抗ハプテンHRPコンジュゲート(又はストレプトアビジンHRP)により結合させ(37℃、8分間)、過酸化水素及びDABの添加(37℃、8分間)によりHRPから生じた褐色沈殿物によって可視化した。硫酸銅の添加(37℃、4分間)により、DABの色調を強めた。染色組織切片を、修飾メイヤーヘマトキシリン(Hematoxylin II,VMSI #790−2208)により対比染色し(37℃、4分間)、次にBluring Reagent(VMSI #760−2037)と共にインキュベートした(37℃、4分間)。次にスライドを、一連の段階的なエタノールで脱水し、キシレンで透徹し、手作業によりカバーガラスで覆った。図13(A)は、この方法により染色されたスライドの例示的な顕微鏡写真を示す。
【0217】
検出2−APレッド。APコンジュゲートとインキュベートした後、スライドをSpecial Stains洗浄液で洗浄した。QMP試薬を100mMのCHES、pH10.0、0.05%のBrij−35に溶解した。QMP代謝回転は、100μLのAP Enhancer、続く100μLのハプテン標識QMPの添加及び37℃で16分間のインキュベーションによって達成した。化合物29は、この方法に使用できる例示的なハプテンQMPである。沈着したハプテンを、続いてマウス抗ハプテンAPコンジュゲート(又はストレプトアビジンAPコンジュゲート)により結合させ(37℃、8分間)、検出は、100μLのAP Enhancer、続く100μLのナフトールAS−TRリン酸エステル及び200μLのファストレッドKLの添加(37℃、16分間)により達成した。染色組織切片を、修飾メイヤーヘマトキシリンにより対比染色し(37℃、4分間)、次にBluring Reagentと共にインキュベートした(37℃、4分間)。スライドを洗剤水混合物ですすぎ、空気乾燥し、手作業によりカバーガラスで覆った。図14(B)−14(D)は、この方法により染色されたスライドの例示的な顕微鏡写真を示す。
【0218】
検出3−量子ドット。APコンジュゲートとインキュベートした後、スライドをSpecial Stains洗浄液で洗浄した。QMP試薬を100mMのCHES、pH10.0、0.05%のBrij−35に溶解した。QMP代謝回転は、100μLのAP Enhancer、続く100μLのハプテン標識QMPの添加及び37℃で16分間のインキュベーションによって達成した。化合物29は、この方法に使用できる例示的なハプテンQMPである。沈着したハプテンを、続いて、マウス抗ハプテン量子ドットコンジュゲート(又はストレプトアビジン量子ドットコンジュゲート)とのインキュベーション(37℃、32分間)により可視化した。スライドをReaction Bufferで洗浄し、一連の段階的なエタノールで脱水し、キシレンで透徹し、手作業によりカバーガラスで覆った。図15Cは、この方法により染色されたスライドの例示的な顕微鏡写真を示す。
【0219】
検出4−蛍光団。APコンジュゲートとインキュベートした後、スライドをクエン酸ナトリウムバッファー(saline sodium citrate buffer)(SSC、VMSI#950−110)で洗浄した。QMP試薬を250mMのTris、pH10.0、0.05%のBrij−35に溶解した。QMP代謝回転は、100μLのAP Enhancer、続く100μLの蛍光団標識QMP(濃度<50μM)の添加及び37℃で16分間のインキュベーションによって達成した。化合物28は、この方法に使用できる例示的な蛍光団QMPである。スライドをReaction Bufferで洗浄し、一連の段階的なエタノールで脱水し、キシレンで透徹し、手作業によりカバーガラスで覆った。スライドを、適切なフィルターセットを使用する蛍光顕微鏡法により観察した。図15Aは、この方法により染色されたスライドの例示的な顕微鏡写真を示す。
【0220】
検出5−色素産生QMP。APコンジュゲートとインキュベートした後、スライドをSSCで洗浄した。QMP試薬を250mMのTris、pH10.0、0.05%のBrij−35に溶解した。QMP代謝回転は、100μLのAP Enhancer、続く100μLの発色団標識QMP(濃度>50μM)の添加及び37℃で16分間のインキュベーションによって達成した。化合物30は、この方法に使用できる例示的な色素原QMPである。幾つかの場合において、染色組織切片を、修飾メイヤーヘマトキシリンにより対比染色し(37℃、4分間)、次にBluring Reagentと共にインキュベートした(37℃、4分間)。スライドを洗剤水混合物ですすぎ、次に一連の段階的なエタノールで脱水し、キシレンで透徹し、手作業によりカバーガラスで覆った。スライドを明視野顕微鏡法により観察した。図16(A)は、この方法により染色されたスライドの例示的な顕微鏡写真を示す。
【0221】
実施例3
ジフルオロQMPビオチンにより増幅されたHRP DAB(図17
(a)ultraViewコントロール(図17(A))。組織を一般手順に記載されたように脱パラフィンし、続いてProtease 1(VMSI #760−2018)により抗原を回収した(37℃、8分間)。マウス抗EGFR抗体インキュベーション(37℃、32分間)及び洗浄の後には、HRPにコンジュゲートしたヤギポリクローナル抗マウス抗体を用いる二次抗体インキュベーション(37℃、8分間)が続いた。抗原を、過酸化水素及びDABの添加(37℃、8分間)によりHRPから生じた褐色沈殿物によって可視化した。硫酸銅の添加(37℃、4分間)により、DABの色調を強めた。染色組織切片を、修飾メイヤーヘマトキシリンにより対比染色し(37℃、4分間)、次にBluring Reagentと共にインキュベートして(37℃、4分間)、ヘマトキシリン色相を青色に変えた。次にこれらを一連の段階的なエタノールで脱水し、キシレンで透徹し、手作業によりカバーガラスで覆った。
【0222】
(b)QMP増幅DAB(図17(B))。組織を一般手順に記載されたように脱パラフィンし、続いてProtease 1により抗原を回収した(37℃、8分間)。マウス抗EGFR抗体インキュベーション(37℃、32分間)及び洗浄の後には、APにコンジュゲートしたヤギポリクローナル抗マウス抗体を用いる二次抗体インキュベーション(37℃、12分間)が続いた。APコンジュゲートとインキュベートした後、スライドをSpecial Stains洗浄液で洗浄した。ジフルオロQMPビオチンを100mMのCHES、pH10.0、0.05%のBrij−35に溶解して、最終濃度を100nMにした。QMP代謝回転は、100μLのAP Enhancer、続く100μLのビオチン標識QMPの添加及び37℃で16分間のインキュベーションによって達成した。沈着したハプテンを、続いてストレプトアビジンHRPコンジュゲートにより結合させ(37℃、8分間)、過酸化水素及びDABの添加(37℃、8分間)によりHRPから生じた褐色沈殿物によって可視化した。硫酸銅の添加(37℃、4分間)により、DABの色調を強めた。染色組織切片を、修飾メイヤーヘマトキシリンにより対比染色し(37℃、4分間)、次にBluring Reagentと共にインキュベートした(37℃、4分間)。次にこれらを一連の段階的なエタノールで脱水し、キシレンで透徹し、手作業によりカバーガラスで覆った。
【0223】
IHC染色についてQM前駆体を評価すると、脱離基が何であるかがQMPの活性に影響を及ぼしたことが見出された。2つのリン酸エステル保護オルトQM前駆体を、ベンジルモノフルオロ(スキーム1、化合物7)及びベンジルジフルオロ(化合物58)の官能基を含有する4−ニトロサリチルアルデヒド出発材料に基づいて調製した。
【0224】
両方の化合物は、フッ化物を脱離基として利用するが、ジフルオロ化合物58から誘導されるQMの反応性は、ジェミナルフッ素原子により提供される電子安定性に起因して、モノフルオロ7より顕著に低いはずである。事実、以前の報告は、幾つかのモノフルオロ前駆体から誘導されたQMが、酵素活性のプローブとして過剰な反応性があり、活性部位標識、続く酵素阻害をもたらしうることを示唆している。したがって、ジフルオロQM前駆体化合物58を、最初に、FFPE扁桃組織への核マーカーBCL6をモデル系として使用して、FFPE組織へのIHC染色性能について評価した。ビオチン標識ジフルオロQM前駆体は、後に続くジアミノベンジジン(DAB)検出を使用したビオチン可視化により明らかなように、試料に成功裏に結合した。図18は、pH=8.5でのTrisバッファー中のジフルオロQM前駆体の様々な濃度での検出レベルを説明する顕微鏡写真提供する(A−DABコントロール、B−1μM、C−10μM及びD−20μM)。加えて、20μMを超えるジフルオロQM前駆体化合物58のスライド上での濃度が利用されたとき、DABコントロール試料と比較して、シグナルの有意な増幅が観察された。しかし、シグナル拡散の増加も全ての場合において観察され、顕著な望ましくないオフターゲット染色をもたらした。
【0225】
ジフルオロQM前駆体によるシグナルの拡散は、2つの動力学的要因の組み合わせによって生じうることが示唆された。(1)リン酸エステル基の切断後の脱離基放出及び後に続くQM形成の速度、並びに(2)組織の求核種による又は反応媒体におけるQM停止の速度。ジフルオロQM前駆体化合物58の場合では、ジェミナルフッ素原子が、両方の要因を減速したかもしれない安定化を提供し、標的部位からの許容されない拡散をもたらした。反応媒体のpHを増加することによって、QM形成と停止の両方の速度は加速され、より良好な染色結果をもたらしうると仮定された。(1)では、よりアルカリ性のpHが、リン酸エステルの切断後に脱プロトン化フェノールの集団を増加し、したがってフッ化物放出及びQM形成を助長する。(2)では、pHの増加が水及びバッファー(Tris)の両方からの利用可能な失活種の集団を増加し、QMが、求核種と反応する前に標的から拡散できる距離を有効に減少する。
【0226】
シグナル拡散に対するpHの効果を試験するため、ジフルオロQM前駆体化合物58をAPの作用範囲内の様々なpHレベルで前述のように沈着させた(7−12であり、pH=8.5及び11に最大活性の2つの肩があった)。FFPE扁桃組織への核マーカーBCL6をモデルとして再び選択した。陽性染色が全てのpH範囲にわたって観察されたが、全体的なシグナルと拡散の均衡が見られた。図19(A)−19(H)は、様々なpHのTrisバッファー中の20μMのQM前駆体の検出レベルの顕微鏡写真を提供する。(A)DABコントロール、(B)pH=7.0、(C)pH=8.0、(D)pH=8.5、(E)pH=9.0、(F)pH=10.0、(G)pH=11.0、(H)pH=12.0。拡散は、pHが増加すると減少するように思われる。pH7では、オンターゲット染色はほとんど観察されず、ほぼ均一のシグナルが組織切片全体にわたって見られた。pHが上昇すると、オフターゲット染色は徐々に減少したが、全体的なシグナル拡散及びオフターゲット染色は、pH12でも有意のままであった。増幅のレベルは、pHが8.5に上昇したときのみに増加し、残りの範囲では徐々に減少した。この効果は、酵素活性と、反応媒体中のQM失活種の集団との組み合わせに起因しうる。最適なAP反応条件をはるかに下回るpHレベル(7.0)では、APの活性は減少し、低いシグナルをもたらした。pHは増加したが(8.0−8.5)、TrisのほぼpKa(8.1)のままであると、APの活性は、反応媒体中の失活種の集団より速く増加し、シグナルの有意な増加をもたらした。pHを更に上昇させると(9−10)、失活種集団が増加し、同時にAP活性が減少し、シグナルの減少をもたらした。APはTris中においてpH11で最大活性を有したが、染色強度に僅かな減少が観察され、それは、増加したAP活性により克服できなかった過剰に多い失活種の集団に起因する可能性が最も高い(8.5から11へのpHの上昇は、[Tris塩基]を約50%増加し、AP活性はわずか約20%しか増加しない)。pH範囲の上限であっても、ジフルオロQM前駆体化合物58からの拡散は、IHCの臨床的使用には依然として大きすぎたことが決定された。これは、ジフルオロに基づいたQMPがIHC試薬としての使用に適していると示唆したBobrowの開示と対照的である。
【0227】
より安定性の低いモノフルオロQM前駆体7を利用することによって、拡散は上記に記載された理由によって低減されうることが示唆された。IHC染色を、最初に典型的なAP IHC条件下(Trisバッファー中pH8.5)でFFPE扁桃組織に核マーカーBCL6を使用して広い濃度範囲にわたって実施して、モノフルオロQM前駆体7の最適濃度を決定した(データ示されず)。驚くべきことに、ジフルオロQM前駆体58(20μM)と比較したとき、はるかに低い濃度のモノフルオロQM前駆体7(250nM)が、所望の増幅レベルを得るために必要であった。加えて、全体的な拡散は、ジフルオロQM前駆体58と比較して大きく低減されたが、幾らかの拡散及びオフターゲット染色がpH=8.5で依然として明白であった。拡散及びオフターゲット染色を低減する努力において、pH範囲(7−12)をTrisバッファーにおいて試験した(図20A−20(H):(A)DABコントロール、(B)pH=7.0、(C)pH=8.0、(D)pH=8.5、(E)pH=9.0、(F)pH=10.0、(G)pH=11.0、(H)pH=12.0)。低いpH(7.0−8.0)では、有意な拡散が見られ、ジフルオロQM前駆体58において観察されたものと類似した染色を作り出した。しかし、拡散及びオフターゲット染色は、pHが上昇すると、シグナル全体に許容されない減少を有することなく徐々に低減された。pH10では、拡散及びオフターゲット染色はほぼ排除され、DABコントロールに匹敵する特異性を伴った高レベルのシグナルを有する染色を生じた。pHを更に11−12に増加すると、より鮮明な青色ヘマトキシリン対比染色により明白なように、僅かに綺麗になった染色をもたらした。しかし、シグナル全体の僅かな低減が、これらの高いpHレベルにおいて観察された。
【0228】
実施例4
第四級アミン脱離基を有するQMPビオチンにより増幅されたHRP DAB(図21
(a)ultraViewコントロール(図21(A))。組織を、一般手順に記載されたように脱パラフィンし、回収した。ウサギ抗Ki−67抗体インキュベーション(37℃、16分間)及び洗浄の後には、HRPにコンジュゲートしたヤギポリクローナル抗ウサギ抗体を用いる二次抗体インキュベーション(37℃、8分間)が続いた。抗原を、過酸化水素及びDABの添加(37℃、8分間)によりHRPから生じた褐色沈殿物によって可視化した。硫酸銅の添加(37℃、4分間)により、DABの色調を強めた。染色組織切片を、修飾メイヤーヘマトキシリンにより対比染色し(37℃、4分間)、次にBluring Reagentと共にインキュベートして(37℃、4分間)、ヘマトキシリン色相を青色に変えた。次にこれらを一連の段階的なエタノールで脱水し、キシレンで透徹し、手作業によりカバーガラスで覆った。
【0229】
(b)キノンメチドアナログ前駆体増幅DAB(図21(B)−(D))。組織を、一般手順に記載されたように脱パラフィンし、回収した。ウサギ抗Ki−67抗体インキュベーション(37℃、16分間)及び洗浄の後には、APにコンジュゲートしたヤギポリクローナル抗ウサギ抗体を用いる二次抗体インキュベーション(37℃、12分間)が続いた。APコンジュゲートとインキュベートした後、スライドをSpecial Stains洗浄液で洗浄した。ピリジンQMPビオチン(100μM)(図21(B))又はDABCO QMPビオチン(100μM)(図21(C))又はトリエチルアミンQMPビオチン(100μM)(図21(D))を、100mMのCHES、pH10.0、0.05%のBrij−35に溶解して、最終濃度を100nMにした。QMP代謝回転は、100μLのAP Enhancer、続く100μLのビオチン標識QMPの添加及び37℃で16分間のインキュベーションによって達成した。沈着したハプテンを、続いてストレプトアビジンHRPコンジュゲートにより結合させ(37℃、8分間)、過酸化水素及びDABの添加(37℃、8分間)によりHRPから生じた褐色沈殿物によって可視化した。硫酸銅の添加(37℃、4分間)により、DABの色調を強めた。染色組織切片を、修飾メイヤーヘマトキシリンにより対比染色し(37℃、4分間)、次にBluring Reagentと共にインキュベートした(37℃、4分間)。次にこれらを一連の段階的なエタノールで脱水し、キシレンで透徹し、手作業によりカバーガラスで覆った。
【0230】
これらの結果は、コントロールと比較したとき、この用途におけるLGとしての第四級アミンの準最適性能を実証している。ピリジン、DABCO及びトリエチルアミンQMPビオチン誘導体は、コントロールスライド(図21(A))と比較すると、全て、はるかに低い染色強度及び大きな拡散シグナルを示した(図21(B)−(D))。
【0231】
実施例5
様々な脱離基を有するQMPビオチンにより増幅されたHRP DAB(図22
(a)ultraViewコントロール(図22(A))。実施例4(a)を参照すること。
【0232】
(b)QMP増幅DAB(図22(B)−22(D))。組織を、一般手順に記載されたように脱パラフィンし、回収した。ウサギ抗Ki−67抗体インキュベーション(37℃、16分間)及び洗浄の後には、APにコンジュゲートしたヤギポリクローナル抗ウサギ抗体を用いる二次抗体インキュベーション(37℃、12分間)が続いた。APコンジュゲートとインキュベートした後、スライドをSpecial Stains洗浄液で洗浄した。モノフルオロQMPビオチン(400μM)(図22(B))又は酢酸エステルQMPビオチン(100μM)(図22(C))又はメトキシQMPビオチン(100μM)(図22(D))を、100mMのCHES、pH10.0、0.05%のBrij−35に溶解して、最終濃度を100nMにした。QMP代謝回転は、100μLのAP Enhancer、続く100μLのビオチン標識QMPの添加及び37℃で16分間のインキュベーションによって達成した。沈着したビオチンを、続いてストレプトアビジンHRPコンジュゲートにより結合させ(37℃、8分間)、過酸化水素及びDABの添加(37℃、8分間)によりHRPから生じた褐色沈殿物によって可視化した。硫酸銅の添加(37℃、4分間)により、DABの色調を強めた。染色組織切片を、修飾メイヤーヘマトキシリンにより対比染色し(37℃、4分間)、次にBluring Reagentと共にインキュベートした(37℃、4分間)。次にこれらを一連の段階的なエタノールで脱水し、キシレンで透徹し、手作業によりカバーガラスで覆った。
【0233】
2つの準最適及び1つの最適なLGがこの実施例に示されている。酢酸エステルLGを有するQMPビオチン(図22(C))は、弱い非常に拡散されたシグナルを生成し、メトキシLGを有するQMPビオチンは、十分に分解されたシグナルを示すが、低い強度を有した(図22(D))。QMPビオチンのモノフルオロLG誘導体(図22(B))は、コントロールスライド(図22(A))以上の強度を有する十分に分解されたシグナルを実証している。評価した全てのLG基のうち、モノフルオロが最良の性能を提示する。
【0234】
実施例6
異なるリンカーを有するQMPビオチンにより増幅されたHRP DAB(図23
組織を、一般手順に記載されたように脱パラフィンし、回収した。マウス抗Bcl−2抗体インキュベーション(37℃、16分間)及び洗浄の後には、APにコンジュゲートしたヤギポリクローナル抗マウス抗体を用いる二次抗体インキュベーション(37℃、12分間)が続いた。APコンジュゲートとインキュベートした後、スライドをSpecial Stains洗浄液で洗浄した。モノフルオロQMPビオチン(アニリンアミドを有する(図23(A))、安息香酸アミド(図23(B))又はチラミドアミドリンカー(図23(C))(100nM)を、100mMのCHES、H10.0、0.05%のBrij−35に溶解して、最終濃度を100nMにした。QMP代謝回転は、100μLのAP Enhancer、続く100μLのビオチン標識QMPの添加及び37℃で16分間のインキュベーションによって達成した。沈着したビオチンを、続いてストレプトアビジンHRPコンジュゲートにより結合させ(37℃、8分間)、過酸化水素及びDABの添加(37℃、8分間)によりHRPから生じた褐色沈殿物によって可視化した。硫酸銅の添加(37℃、4分間)により、DABの色調を強めた。染色組織切片を、修飾メイヤーヘマトキシリンにより対比染色し(37℃、4分間)、次にBluring Reagentと共にインキュベートした(37℃、4分間)。次にこれらを一連の段階的なエタノールで脱水し、キシレンで透徹し、手作業によりカバーガラスで覆った。
【0235】
この実験は、QMPビオチンの機能性染色性能に対する、穏やかな電子求引基(EWG)及び電子供与基(EDG)の繊細な効果を実証している。安息香酸アミドリンカー(化合物21、図21(A))は、穏やかなEWGであり、より多くの拡散、より少ない分解シグナルをもたらす。中性(アニリンアミド(化合物7、図2(A)))又は穏やかなEDG(チラミドアミド(化合物14、図2(A)))である他のリンカーは、十分に分解したシグナルを生成する。強いEDG(例えば、メトキシ)又はEWG(例えば、ニトロ)による他の実験(ここに含まれない)は、染色性能に対してはるかに多くの有害作用を示す。このことは、QMP中間体の反応性に対する電子の影響及び染色性能に対する効果を説明している。
【0236】
実施例7
モノフルオロ−QMP−NPにより増幅されたAPファストレッド(図14
ファストレッドコントロール(図14(A))。組織を、一般手順に記載されたように脱パラフィンし、回収した。ウサギ抗CD−10抗体インキュベーション(37℃、16分間)及び洗浄の後には、ニトロピラゾール(NP)によりハプテン標識されたヤギ抗ウサギポリクローナル抗体によるインキュベーション(37℃、8分間)が続いた。洗浄した後、APコンジュゲートマウス抗NPモノクローナル抗体を加えた(37℃、12分間)。検出は、100μLのAP Enhancer、続く100μLのナフトールAS−TRリン酸エステル及び200μLのファストレッドKLの添加(37℃16分間)によって達成した。染色組織切片を、修飾メイヤーヘマトキシリンにより対比染色し(37℃、4分間)、次にBluring Reagentと共にインキュベートした(37℃、4分間)。スライドを洗剤水混合物ですすぎ、空気乾燥し、手作業によりカバーガラスで覆った。
【0237】
QMP増幅ファストレッド(図14(B)−14(D))。組織を、一般手順に記載されたように脱パラフィンし、回収した。ウサギ抗CD−10、マウス抗Bcl−2又はマウス抗Her3抗体インキュベーション(37℃、32分間)及び洗浄の後には、ニトロピラゾール(NP)によりハプテン標識されたヤギポリクローナル抗ウサギ又は抗マウス抗体によるインキュベーション(37℃、8分間)が続いた。洗浄した後、APコンジュゲートマウス抗NPモノクローナル抗体を、三次抗体として使用した(37℃、12分間)。APコンジュゲートとインキュベートした後、スライドをSpecial Stains洗浄液で洗浄した。モノフルオロQMP−NP(100nM)を、100mMのCHES、pH10.0、0.05%のBrij−35に溶解して、最終濃度を100nMにした。QMP代謝回転は、100μLのAP Enhancer、続く100μLのNP標識QMPの添加及び37℃で16分間のインキュベーションによって達成した。沈着したハプテンを、続いてマウス抗ハプテンAPコンジュゲートにより結合させ(37℃、12分間)、検出は、100μLのAP Enhancer、続く100μLのナフトールAS−TRリン酸エステル及び200μLのファストレッドKLの添加(37℃、16分間)により達成した。染色組織切片を、修飾メイヤーヘマトキシリンにより対比染色し(37℃、4分間)、次にBluring Reagentと共にインキュベートした(37℃、4分間)。スライドを洗剤水混合物ですすぎ、空気乾燥し、手作業によりカバーガラスで覆った。
【0238】
この実施例は、いったんレポーター(この場合ではNPハプテン)が、QMP方法論により沈着されると、DABに代替する検出系も使用できることを実証している。この場合、抗NP APコンジュゲートを使用して、APファストレッド化学により標的を可視化している。図14(B)は、コントロールスライド(図14(A))よりもシグナルに有意な増幅を示している。図14(C)及び14(D)は、通常は弱く可視化されるビオマーカーBcl2及びHer3の強い強度での染色を示している。
【0239】
実施例8
モノフルオロ−QMP蛍光団及びモノフルオロ−QMP−NPにより増幅された量子ドット(図15
(a)QMP蛍光団(図15(A)、15(B))。組織を、一般手順に記載されたように脱パラフィンし、回収した。マウス抗Bcl−2抗体インキュベーション(37℃、16分間)及び洗浄の後には、ニトロピラゾール(NP)によりハプテン標識されたヤギポリクローナル抗マウス抗体を用いる二次抗体インキュベーション(37℃、8分間)が続いた。洗浄した後、APコンジュゲートマウス抗NPモノクローナル抗体を加えた(37℃、12分間)。APコンジュゲートとインキュベートした後、スライドをSpecial Stains洗浄液で洗浄した。モノフルオロQMP−TAMRA(図15(A))又はモノフルオロQMP−Alexa Fluor(登録商標)700(図15(B))を、100mMのCHES、pH10.0、0.05%のBrij−35に溶解した。QMP代謝回転は、100μLのAP Enhancer、続く100μLの蛍光団標識QMPの添加及び37℃で16分間のインキュベーションによって達成した。スライドをReaction Bufferで洗浄し、一連の段階的なエタノールで脱水し、キシレンで透徹し、手作業によりカバーガラスで覆った。スライドを、適切なフィルターセットを使用する蛍光顕微鏡法により観察した。
【0240】
(b)QMP増幅量子ドット(図15(C))。組織を、一般手順に記載されたように脱パラフィンし、回収した。マウス抗Bcl−2抗体インキュベーション(37℃、16分間)及び洗浄の後には、ニトロピラゾール(NP)によりハプテン標識されたヤギポリクローナル抗マウス抗体を用いる二次抗体インキュベーション(37℃、8分間)が続いた。洗浄した後、APコンジュゲートマウス抗NPモノクローナル抗体を加えた(37℃、12分間)。APコンジュゲートとインキュベートした後、スライドをSpecial Stains洗浄液で洗浄した。モノフルオロQMP−NPを100mMのCHES、pH10.0、0.05%のBrij−35に溶解した。QMP代謝回転は、100μLのAP Enhancer、続く100μLのNP標識QMPの添加及び37℃で16分間のインキュベーションによって達成した。沈着したハプテンを、続いて、マウス抗NP量子ドット525コンジュゲートとのインキュベーション(37℃、32分間)により可視化した。スライドをReaction Bufferで洗浄し、一連の段階的なエタノールで脱水し、キシレンで透徹し、手作業によりカバーガラスで覆った。スライドを、適切なフィルターセットを使用する蛍光顕微鏡法により観察した。
【0241】
蛍光団をQMP分子においてレポーターとして使用すると(図15(A)及び15(B))、結果を、増幅された蛍光シグナルを生成する任意の更なる検出化学により可視化することができる。QMP−NPは、ストレプトアビジン量子コンジュゲートを使用して、蛍光的に検出することができる、このことは、実施例3−6に概説されているHRP/DAB法と比較して、沈着したハプテンを検出する代替的な方法を提供する。このことは、QMP方法論が、明視野及び暗視野(蛍光)増幅シグナルの両方を生成するために使用できること、並びに現存の検出化学と連動するように容易に適合されることを説明している。
【0242】
実施例9
QMP−NPにより増幅されたHRP DAB(図13、24−25)
(a)ultraViewコントロール(図13(B)、図24(A)−24(B);24(B)は黒色枠で区別された24(A)の領域をより高い倍率で示す)。実施例4(a)を参照すること。
【0243】
(b)QMP増幅DAB(図13(A)、図25(A)−25(B);24(B)は黒色枠で区別された25(A)の領域をより高い倍率で示す)。組織を、一般手順に記載されたように脱パラフィンし、回収した。ウサギ抗Ki−67抗体インキュベーション(37℃、16分間)及び洗浄の後には、APにコンジュゲートしたヤギポリクローナル抗ウサギ抗体を用いる二次抗体インキュベーション(37℃、12分間)が続いた。APコンジュゲートとインキュベートした後、スライドをSpecial Stains洗浄液で洗浄した。モノフルオロQMP−NP(100nM)を、100mMのCHES、pH10.0、0.05%のBrij−35に溶解して、最終濃度を100nMにした。QMP代謝回転は、100μLのAP Enhancer、続く100μLのNP標識QMPの添加及び37℃で16分間のインキュベーションによって達成した。沈着したハプテンを、続いてマウス抗NP HRPコンジュゲートにより結合させ(37℃、8分間)、過酸化水素及びDABの添加(37℃、8分間)によりHRPから生じた褐色沈殿物によって可視化した。硫酸銅の添加(37℃、4分間)により、DABの色調を強めた。染色組織切片を、修飾メイヤーヘマトキシリンにより対比染色し(37℃、4分間)、次にBluring Reagentと共にインキュベートした(37℃、4分間)。次にこれらを一連の段階的なエタノールで脱水し、キシレンで透徹し、手作業によりカバーガラスで覆った。
【0244】
この実施例は、QMP−NPを使用するシグナルの増幅、続くHRP/DAB検出を実証している。シグナル強度は大きいが、追加的なバックグランドは生成されず、シグナル局在化はコントロールスライドと同等である。
【0245】
実施例10
発色団検出可能標識部分を有するQMP(図16
発色団検出可能標識部分を有するQMP(図16(A)−16(D))。組織を、一般手順に記載されたように脱パラフィンし、回収した。ウサギ抗Ki−67抗体インキュベーション(37℃、16分間)及び洗浄の後には、ニトロピラゾール(NP)によりハプテン標識されたヤギポリクローナル抗ウサギによる二次インキュベーション(37℃、8分間)が続いた。洗浄した後、APコンジュゲートマウス抗NPモノクローナル抗体を加えた(37℃、12分間)。APコンジュゲートとインキュベートした後、スライドをSSCで洗浄した。モノフルオロQMP−PEG8−ダブシル(250μM)(図16(A))又はモノフルオロQMP−TAMRA(250μM)(図16(B))又はモノフルオロQMP−Cy5(250μM)(図16(C))又はモノフルオロQMPローダミン110(250μM)(図16(D))を、250mMのTris、pH10.0、0.05%のBrij−35に溶解した。QMP代謝回転は、100μLのAP Enhancer、続く100μLの適切なQMPの添加及び37℃で32分間のインキュベーションによって達成した。染色組織切片を、修飾メイヤーヘマトキシリンにより対比染色し(37℃、4分間)、次にBluring Reagentと共にインキュベートした(37℃、4分間)。次にスライドを一連の段階的なエタノールで脱水し、キシレンで透徹し、手作業によりカバーガラスで覆った。
【0246】
実施例2−9は、QMPレポーターを現存の検出化学(HRP/DAB及びAP/ファストレッド)により、並びに蛍光により直接的に、可視化できることを実証した。この実施例は、大きな消衰係数を有する発色団がレポーター分子である場合、増幅QMPシグナルを明視野顕微鏡法により直接見ることができることを実証している。異なる吸収波長を有する発色団を選択することによって、広範囲の別々の色を作り出すことができる(図16(A)−(D))。複数の色素産生検出系を生成するために異なるレポーターを有する単一のコア分子(QMP)を使用する能力は、多重適用において基本的に重要なものである。以前は、新たな色素産生検出系を生成するために、新たな化学を発明する必要があり、それぞれの酵素には異なる手法が必要であった。異なるレポーター分子及び/又は異なる酵素認識基を有する単一のQMPコア分子を使用する能力は、多重明視野(及び蛍光)アッセイにおける新たなツールを提供する。
【0247】
実施例11
捕捉実験
染色及び停止の機構を探求するため、染色実験で利用したものと類似した条件下で、溶液相においてモノフルオロQM前駆体7により形成されたQM中間体を捕捉する試みを行った(図26)。QM前駆体7をpH10のTrisバッファーに溶解し、続いて触媒量のAPを加えた。反応の進行をHPLC−MSでモニターした(図27)。10分以内に、Tris付加物7−トリスへの完全な変換が観察された(図27(C))。APの不在下では、反応は発生せず、所望の反応条件下での高レベルの安定性を示唆した(図27(B))。これらの結果は、QM媒介染色の提案された機構を強く支持し、Tris塩基がIHC染色条件下での失活種の主な供給源であることを解明している。
【0248】
追加の捕捉実験を実施して、リン酸エステル、ガラクトシド及び酵素認識基として酢酸エステルを含むQM前駆体から、溶液中にキノンメチドを生成し、捕捉する能力を実証した。それぞれのQM前駆体を、対応する酵素により溶液中で処理し、反応進行をHPLC−MSによりモニターした(データ示されず)。それぞれの基質を、同族酵素に適したpH(アルカリホスファターゼでは10、β−ガラクトシダーゼでは8.0及びリパーゼでは8.0)で250mMのTris溶液中で1mMに希釈し、続いて溶液中の酵素の最終濃度が1mMになるように同族酵素を加えた。反応を室温で30分間インキュベートし、この時点でHPLC−MSを実施した。それぞれの場合において、Tris付加物が検出され、QMが成功裏に形成されたことを実証した。
【0249】
実施例12
安定性
本開示の1つの態様は、活性化酵素との相互作用において反応が素早く進行すべきという点で、十分に不安定な化合物が好まれるが、この不安定性は、本明細書に記載されているように、意図される使用の範囲内で有用な組成物を作製する目的と均衡しなければならない。特に、自動IHC及びISHにおける検出試薬としてのこれらの試薬の使用は、有意な期間にわたって試薬を貯蔵及び使用できる臨床医に輸送することができるように、試薬が容器内で十分に安定していることが必要である。この種類の組成物の関連する貯蔵寿命は、12か月間、18か月間、24か月間又はそれ以上の安定性である。貯蔵条件は特定的でありうるが、臨床機器への試薬の使用は、多くの場合、試薬が十分な室温安定性を有することが必要となる。1つの実施態様において、本開示の組成物は、自動IHC及びISHに適した安定性を有する。自動ISH及びIHCへの適合性は、絶対安定性を必要とせず、むしろ、試薬の使用が試薬の分解により悪影響を受けないように、確立された時間の後に実質的な量の化合物が残っていることに留意するべきである。
【0250】
ここで図28を参照すると、適切な安定性について試験された化合物の4つの構図が示されている。図28(A)は、TAMRAにコンジュゲートしたパラ二置換QMPであり、(B)は、ダブシルにコンジュゲートしたパラ二置換QMPであり、(C)は、ダブシルにコンジュゲートしたオルト二置換QMPであり、(D)は、Cy5にコンジュゲートしたオルト二置換QMPである。ここで表1を参照すると、図28(A)及び(B)に示されている化合物の常温(20−25℃)での水中安定性が示されている。QMP色素コンジュゲートの分解は、色素が何であるかとは無関係であると思われる。特定の理論又は機構に限定されることなく、分解の主な様式は、水によるフッ化物の置き換えが、組織を染色する能力を有さない化合物を生成することであると理解された。スキーム14は、代表的なQMPのAが加水分解によって、非染色化合物Bになることを示す。
スキーム14
化合物は、素早く分解しすぎて、バッファーされていない水溶液に貯蔵できないことが見出された。特に、図28(A)のQMPの約42%及び図28(B)のQMPの約44%のみが、12日後に残っていることが観察された。試薬を自動染色液に使用し、新たに合成された試薬と比較して、シグナルが減少したことが確認された。

加水分解の問題を回避するため、1つの解決策は、化合物を、無水の非求核有機溶媒(例えば、DMSO又は炭酸プロピレン)に貯蔵することであった。表1は、図28(A)及び(B)の化合物を3つの高温(30、45及び60℃)で貯蔵した加速安定性試験のデータを示す。ここでも、異なる色素コンジュゲートの動作は、化合物のQMP部分が同一に保たれると、非常に類似している。高温では、異なる分解経路が観察された(スキーム15)。特に、微量の水を有するDMSO中の高温でのQMPの分解は、フルオロ基及びリン酸エステルの両方を加水分解することが見出された。DMSO中に貯蔵したとき、QMP材料を、使用時に近づいた染色バッファーで希釈した。幾つかの自動染色液は、試薬を調製する前希釈工程が可能であり、したがって、この手法は、化合物の意図される使用の範囲内で稼働できる様式で必要とされる長期間の安定性を提供することが理解される。
スキーム15
【0251】
これらの化合物の水性安定性を更に調査するため、図28(A)の化合物を3つの異なるバッファーに様々なpHで貯蔵した(表2を参照すること)。バッファー溶液のpHが低いと、活性染色化合物の貯蔵寿命を延ばすことが観察された。
分解経路及び特徴を理解するため、溶媒系を、QMP化合物の貯蔵寿命を延長する目的で設計した。本明細書のバッファーAと呼ばれる、DMSOと10mMのグリシンとの50/50混合物のバッファー(pH2.0)を含む溶媒系は、適切な安定性を示すことが発見された。表3は、化合物が異なる温度(2、25、37及び45℃)で、DMSOと10mMのグリシンとの50/50混合物のバッファー(pH2.0)に貯蔵された加速安定性試験のデータを示す。高温では、図3Cに記載されている分解経路が依然として観察された。しかし、通常の貯蔵条件(2−25℃)では、QMの分解速度は、100%水性系と比較して低減されている。
表3は、同じDMSOと10mMのグリシンとの50/50混合物のバッファー(pH2.0)中における代替的なQMP化合物(図28(C)及び(D)に示されている)の安定性データも示す。初期データは、オルトQMPがこれらの貯蔵条件下でパラQMPよりも改善された安定性を有することを示している。
【0252】
実施例13−塩及び補助因子
マグネシウムは、アルカリホスファターゼ(AP)に必要な補助因子であり、したがって、APによるQMPの代謝回転速度は、マグネシウムの濃度によって左右されることが予測される。しかし、染色の質に対するマグネシウム塩の濃度の驚くべき効果が発見された。ここでも、シグナル強度は、マグネシウムの補助因子としての役割によって、マグネシウムの濃度が増加すると改善されることが理解された。しかし、シグナルの質が改善されることは予測されなかった。特に、改善された質は、シグナル局在化、離散及び拡散低減であった。事実、これらの質は、より大きなシグナル強度が標的位置からにじみ出す可能性がある又はにじみ出るのを見ることができるようになる可能性があるので、マグネシウムの増加により実際に減少しうることが予測された。ここで図29(A)−29(B)を参照すると、0.125Mの塩化マグネシウム(図29(B))及び1.05Mの塩化マグネシウム(図29(A))の単一変動要因を有する、QMP−TAMRAを有するCD8の存在により染色された扁桃組織の顕微鏡写真が示されている。顕微鏡写真及びその複写は、望むほど劇的に有意な差を示さないが、1.05Mの塩化マグネシウム試料は、0.125Mのマグネシウム試料と比較して、はるかに良好な染色の質を示した。実例的な実施態様において、本開示の方法及び組成物は、約0.1M、0.25M、0.5M、1.0M又は1.25Mを超える、塩化マグネシウムなどの塩を含む。他の実施態様において、本開示の方法及び組成物は、約0.1Mから約2M、約0.25Mから1.5M、約0.5Mから約1.25M又は約1.0Mの塩化マグネシウムを含む。類似した効果も、NaCl濃度に関して観察されたが、効果はそれほど大きくなかった。
【0253】
塩化マグネシウム濃度研究と組み合わせた、この組み合わせデータは、少なくとも2つの構成成分が存在しうる現在のキット配置をもたらし、第1は、pH調整剤(0.5MのTris、pH10.0)であり、第2は、有機溶媒(例えば、DMSO)及び10mMのグリシン(pH2.0)と1.0Mまでの塩化マグネシウムとの組み合わせで処方されたQMPである。
【0254】
実施例14
β−ガラクトシダーゼトリガー及び発色団レポーター部分を有するQMP(図30
組織を、一般手順に記載されたように脱パラフィンし、回収した。ウサギ抗Ki−67抗体インキュベーション(37℃、16分間)及び洗浄の後には、ビオチンによりハプテン標識されたヤギポリクローナル抗ウサギによる二次インキュベーション(37℃、8分間)が続いた。洗浄した後、β−ガラクトシダーゼ(β−Gal)コンジュゲートストレプトアビジン(Life Technologies #S−931)を加えた(37℃、32分間)。β−Galコンジュゲートとインキュベートした後、スライドをSSCで洗浄した。モノフルオロβ−Gal−QMP−Cy5(125μM)(図30(A)−30(B))又はβ−Gal−QMP−Cy3(100μM)(図30(C))を、250mMのTris、pH8.0、0.05%のBrij−35に溶解した。QMP代謝回転は、100μLのAP Enhancer、続く100μLの適切なβ−Gal−QMPの添加及び37℃で32分間のインキュベーションによって達成した。染色組織切片を、修飾メイヤーヘマトキシリンにより対比染色し(37℃、4分間)、次にBluring Reagent(37℃、4分間)(図30(B)−30(C))又はRed Counterstain II(VMSI #780−2218)(37℃、4分間(図30(A))と共にインキュベートした。次にスライドを洗剤水混合物ですすぎ、一連の段階的なエタノールで脱水し、キシレンで透徹し、手作業によりカバーガラスで覆った。
【0255】
β−ガラクトシダーゼは、以前は検出試薬として5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル−β−D−ガラクトピラノシド(BCIG)を用いるIHC検出における酵素であった。しかし、1つの色のみが利用可能であり、一定しておらず、不十分な感受性しかなく、スライドの処理後に徐々に消失する(又は洗い流される)傾向がある。図30(A)−30(C)の例は、アルコール脱水に感受性がなく、良好な感受性を有し、広範囲の色を生成するように容易に修飾できるβ−ガラクトシダーゼに基づいた色素産生IHC検出系を示す。
【0256】
実施例15
AP及びβ−Gal誘発性QMPの同時検出による二重染色(図31
組織を、一般手順に記載されたように脱パラフィンし、回収した。ウサギ抗Ki−67抗体及びマウス抗Bcl−6抗体とのインキュベーション(37℃、16分間)、並びに洗浄の後には、ビオチンにコンジュゲートしたヤギポリクローナル抗ウサギ抗体及びAPにコンジュゲートしたヤギポリクローナル抗マウス抗体を用いる二次抗体インキュベーション(37℃、12分間)が続いた。その後にスライドをβ−Galコンジュゲートストレプトアビジンと共にインキュベートし(37℃、32分間)、続いてSSCで洗浄した。ホスホ−QMP−Cy5及びβ−Gal−QMP−Peg8−ダブシルを、250mMのTris、pH8.0、0.05%のBrij−35に溶解して、最終濃度をそれぞれ250μMにした。QMP代謝回転は、100μLのAP Enhancer、続く100μLのQM混合物の添加及び37℃で60分間のインキュベーションによって達成した。染色組織切片を、修飾メイヤーヘマトキシリンにより対比染色し(37℃、4分間)、次にBluring Reagentと共にインキュベートした(37℃、4分間)。次にこれらを洗剤水混合物ですすぎ、一連の段階的なエタノールで脱水し、キシレンで透徹し、手作業によりカバーガラスで覆った。
【0257】
多重アッセイに複数の酵素を使用する幾つかの利点は、アッセイ時間の全体的な低減及び酵素不活性下/溶出工程の低減である。この実施例は、両方の酵素検出が同時に実施される二重色素産生IHC検出系を示す。この結果は、それぞれのQMPの同族酵素への特異性及び検出が両方とも妨げられることなく生じるのに十分な結合部位が利用可能であることも実証している。
【0258】
実施例16
HRP、AP及びβ−Gal基質の同時検出による三重染色(図32
組織を、一般手順に記載されたように脱パラフィンし、回収した。ウサギ抗PRインキュベーション(37℃、16分間)及び洗浄の後には、ビオチンにコンジュゲートしたヤギポリクローナル抗ウサギ抗体(37℃、8分間)、その後にウサギ血清(37℃、8分間)を用いる二次抗体インキュベーションが続いた。洗浄した後、ベンゾフラン(BF)標識ウサギ抗ER及びジニトロフェノール(DNP)標識ウサギ抗HER2を、同時にインキュベートした(37℃、16分間)。次に3つの酵素コンジュゲート:β−Galコンジュゲートストレプトアビジン、マウス抗BFにコンジュゲートしたHRP及びマウス抗NPにコンジュゲートしたAPを適用し(37℃、32分間)、続いてSSCで洗浄した。β−Gal−QMP−Cy5及びホスホ−QMP−PEG8−ダブシルを、250mMのTris、pH8.0、0.05%のBrij−35に溶解して、最終濃度をそれぞれ300μMにした。色素原代謝回転は、100μLのAP Enhancer、続く100μLのQMP混合物、100μLのDISCOVERY Purple(VMSI #760−229)及び100μLのH(0.01%)の添加、並びに37℃で32分間のインキュベーションによって達成した。染色組織切片を、Hematoxylin IIにより対比染色し(37℃、4分間)、次にBluring Reagentと共にインキュベートした(37℃、4分間)。次にこれらを洗剤水混合物ですすぎ、一連の段階的なエタノールで脱水し、キシレンで透徹し、手作業によりカバーガラスで覆った。
【0259】
この実施例は、全ての酵素検出が同時に実施される三重色素産生IHC検出系を示す。この結果は、それぞれのQMPの同族酵素への特異性を裏付けている。QMP検出が妨げられることなく生じるのみならず、HRP/チラミド検出が依然として進行しうるという事実も、十分な結合部位が利用可能であることを示している。
【0260】
実施例17
HRP(2回)、AP及びβ−Gal基質の連続検出による四重染色(図33−34)
組織を、一般手順に記載されたように脱パラフィンし、回収した。ウサギ抗PRインキュベーション(37℃、16分間)及び洗浄の後には、ビオチンにコンジュゲートしたヤギポリクローナル抗ウサギ抗体(37℃、8分間)、その後にウサギ血清(37℃、8分間)を用いる二次抗体インキュベーションが続いた。洗浄した後、ベンゾフラザン(BF)標識ウサギ抗ER、NP標識ウサギ抗Ki67及びジニトロフェノール(DNP)標識ウサギ抗HER2を、同時にインキュベートした(37℃、16分間)。マウス抗DNPにコンジュゲートしたHRPを加え(37℃、8分間)、過酸化水素及びDABの添加(37℃、8分間)によりHRPから生じた褐色沈殿物を介して、それを硫酸銅により更に色調を強めることによって可視化した。次にストレプトアビジンにコンジュゲートしたβ−Gal、マウス抗BFにコンジュゲートしたHRP及びマウス抗NPにコンジュゲートしたAPを適用した(37℃、32分間)。HRPを、100μLのDISCOVERY Purple(VMSI #760−229)及び100μLのH(0.01%)の添加(37℃、32分間)により検出し、続いてSSCで洗浄した。β−Gal−QMP−Cy5及びホスホ−QMP−PEG8−ダブシルを、250mMのTris、pH8.0、0.05%のBrij−35に溶解して、最終濃度をそれぞれ300μMにした。色素原代謝回転は、100μLのAP Enhancer、続く100μLのQM混合物の添加及び37℃で32分間のインキュベーションによって達成した。染色組織切片を、Hematoxylin IIにより対比染色し(37℃、4分間)、次にBluring Reagentと共にインキュベートした(37℃、4分間)。次にこれらを洗剤水混合物ですすぎ、一連の段階的なエタノールで脱水し、キシレンで透徹し、手作業によりカバーガラスで覆った。
【0261】
実施例18
色素産生ISH(図35(A)−35(B))
組織を、一般手順に記載されたように脱パラフィンし、続いてCell Conditioning 2(VMSI #950−123)(90℃、28分間)で前処理し、Protease 3(VMSI #780−4149)(37℃、20分間)で処理した。DIG標識した17番染色体プローブ(VMSI #760−1224)を組織に適用し、変性させ(80℃、20分間)、44℃で6時間かけてハイブリダイズした。SSCによる76℃での3回の厳密な洗浄の後、試料を、マウス抗DIG抗体(37℃、20分間)、続いてAPコンジュゲートヤギ抗マウス抗体(37℃、24分間)と共にインキュベートした。ホスホ−QMP−PEG8−ダブシル及びホスホ−QMP−Cy5を、1:1のDMSO:10mMグリシンのバッファー(pH2.0)に溶解して、最終濃度を、120μMのQMP−ダブシル及び1mMの塩化マグネシウムを有する30μMのQMP−Cy5にした。SSCで洗浄した後、200μLのpH調整溶液(500mMのTris、pH10.0)及び100uLのQMP混合物を加えた(37℃、32分間)。染色組織切片を、Hematoxylin IIにより対比染色し(37℃、4分間)、次にBluring Reagentと共にインキュベートした(37℃、4分間)。次にこれらを洗剤水混合物ですすぎ、一連の段階的なエタノールで脱水し、キシレンで透徹し、手作業によりカバーガラスで覆った。
ISH増幅では、オルトQMP化合物は、パラQMP化合物よりも良好な性能を示した。パラQMP化合物は、ISHシグナルを生成したが、強度は低く、染色された細胞の数(細胞適用範囲)は、一定ではなく、シグナルの質は最適ではなかった。オルトQMP化合物は、細胞適用範囲の増加及び分散が低減したはるかに良好なシグナル分解を有する強い強度のシグナルを生成した。
【0262】
実施例19
HRP(2回)及びAP(2回)の連続検出による四重染色(図36
図36は、交換された及び/又は異なる色の組み合わせによる、同じバイオマーカー(FFPE乳房組織におけるHer2(膜)、Ki−67(核)、ER(核)及びPR(核))を示す4つの異なる染色プロトコール(A−D)の例を提供する(40×倍率)。3つの核マーカー及び1つの膜マーカーであったので、幾つかプロトコールにおいてDABをHer2膜染色に使用して、DABと他の色との重複を回避することが可能であった。核検出のミックス(黄色、青色及び紫色)は、強度に応じて異なる色の組み合わせを生成した。
【0263】
アッセイは、2つのHRPに基づいた検出及び2つのAP QMPに基づいた検出を使用したバイオマーカーの連続検出を含んだ。これは、開示されている検出系の柔軟性及び交換可能性を実証した。
【0264】
実施例20
HRP(2回)及びAP(2回)の連続検出による四重染色(図37
図37は、交換された及び/又は異なる色の組み合わせによる、同じバイオマーカー(FFPE扁桃組織におけるCD3(膜)、CD8(膜)、CD20(膜)(又はCD68(膜))及びFoxP3(核))を示す異なる染色プロトコール(A−B又はC−D)の例を提供する(5×倍率)。2つのHRPに基づいた検出及び2つのAP QMPに基づいた検出を使用した連続検出を利用し、開示されている検出系の柔軟性及び交換可能性を更に実証した。
【0265】
実施例21
実施例10に概説されたプロトコールに従って、乳房組織を、濃度500μMの化合物36(図38(A))又は濃度400μMの化合物28(図38(B))の何れかを使用して、マウス抗Eカドヘリンモノクローナル一次抗体(Ventana #790−4497)により染色した。両方とも同等の結果を与えることが予測されたが、驚くべきことに、化合物28(オルトQMP)は、化合物36(パラQMP)よりも良好な性能を示した。染色の質(シグナル局在化及び離散)は、両方の化合物で同じであったが、染色強度は、化合物36より20%低い濃度で使用しても、化合物28の方が高かった。
【0266】
オルトQMP化合物は、以前に記載された何れの化合物と比較しても、IHC染色性能、ISH染色性能における有意な改善及び改善された水性安定性を提供する。
【0267】
開示されている発明の原理が適用されうる多くの可能な実施態様を考慮すると、実例実施態様は、本発明の単なる好ましい例であり、本発明の範囲を限定するものと受け止めるべきではないことが認識されるべきである。むしろ、本発明の範囲は、以下の特許請求の範囲により確定される。したがって、本発明は、全て特許請求の範囲及びその精神の範囲内にあることが主張される。
図1
図2A
図2B
図3A-C】
図4
図5
図6A-C】
図7A-C】
図8A-B】
図9
図10
図11
図12
図13A-B】
図14A-B】
図14C-D】
図15A-C】
図16A-B】
図16C-D】
図17A-B】
図18
図19
図20
図21A-B】
図21C-D】
図22A-B】
図22C-D】
図23A-C】
図24A-B】
図25A-B】
図26
図27
図28
図29A-B】
図30A-C】
図31
図32A-B】
図33
図34
図35
図36
図37
図38