特許第6644739号(P6644739)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6644739
(24)【登録日】2020年1月10日
(45)【発行日】2020年2月12日
(54)【発明の名称】吸盤及び吸盤を用いた器具
(51)【国際特許分類】
   F16B 47/00 20060101AFI20200130BHJP
   A47G 29/00 20060101ALI20200130BHJP
【FI】
   F16B47/00 A
   F16B47/00 B
   F16B47/00 U
   A47G29/00 K
【請求項の数】11
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2017-144253(P2017-144253)
(22)【出願日】2017年7月26日
(65)【公開番号】特開2019-27456(P2019-27456A)
(43)【公開日】2019年2月21日
【審査請求日】2017年7月28日
【審判番号】不服2018-5288(P2018-5288/J1)
【審判請求日】2018年4月18日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】302045602
【氏名又は名称】株式会社レーベン
(74)【代理人】
【識別番号】110000198
【氏名又は名称】特許業務法人湘洋内外特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高部 篤
【合議体】
【審判長】 大町 真義
【審判官】 平田 信勝
【審判官】 内田 博之
(56)【参考文献】
【文献】 実開平3−20719(JP,U)
【文献】 実開平5−24287(JP,U)
【文献】 特開2000−126014(JP,A)
【文献】 実開昭52−29369(JP,U)
【文献】 実開昭52−24176(JP,U)
【文献】 実開昭63−139314(JP,U)
【文献】 実開昭51−3771(JP,U)
【文献】 特開2007−40510(JP,A)
【文献】 実開平3−63108(JP,U)
【文献】 実開昭54−49059(JP,U)
【文献】 実開平6−59621(JP,U)
【文献】 実開昭49−102169(JP,U)
【文献】 特開昭57−6114(JP,A)
【文献】 実開昭60−182518(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 47/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸着面側に凹みを有し、弾性体からなる本体部を有し、
前記本体部の周縁部は相対的に柔軟な吸着部を有しており、
前記吸着部は、前記本体部と異なる材質の軟質部材からなり、前記軟質部材は前記本体部の周縁部のみを内外に亘って囲って二重成形で固着されており、前記本体部の縁より外周方向にはみ出している
ことを特徴とする吸盤。
【請求項2】
請求項1に記載の吸盤であって、
前記本体部は、40度以上の硬度を有し、前記軟質部材は5〜30度の硬度を有していることを特徴とする吸盤。
【請求項3】
請求項2に記載の吸盤であって、
前記本体部の周縁部の端部は円弧状になっており、前記軟質部材は前記端部の円弧の外周に固着されていることを特徴とする吸盤。
【請求項4】
請求項2または3に記載の吸盤であって、
前記本体部の周縁部の端部は円弧状になっており、前記軟質部材は前記端部の円弧の外周から前記本体部の内面にわたって固着されていることを特徴とする吸盤。
【請求項5】
請求項2〜4のいずれか一項に記載の吸盤であって、
前記本体部の表面に略亀甲状の模様の凹み溝が設けられていることを特徴とする吸盤。
【請求項6】
請求項2〜4のいずれか一項に記載の吸盤であって、
前記本体部の表面に略亀裂状の凹み模様または凸模様が設けられていることを特徴とする吸盤。
【請求項7】
請求項2〜6のいずれか一項に記載の吸盤であって、
前記本体部に前記吸盤内部と連通する気抜けセンサー部が設けられていることを特徴とする吸盤。
【請求項8】
請求項2〜7のいずれか一項に記載の吸盤であって、
前記本体部にダンパー部が設けられていることを特徴とする吸盤。
【請求項9】
請求項2〜8のいずれか一項に記載の吸盤であって、
前記吸盤の底面に下吸盤が設けられていることを特徴とする吸盤。
【請求項10】
請求項1〜8のいずれか一項の吸盤を有し、
前記吸盤に管部材が接続され、
前記管部材は弾性体からなる中空の吸引部材に接続され、
前記吸盤の内部と前記管部材内部と前記吸引部材の内部に連通する流路が形成されていることを特徴とする吸盤を用いた器具。
【請求項11】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の吸盤を有し、
前記吸盤に把持部が設けられていることを特徴とする吸盤を用いた器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸盤及び吸盤を用いた器具に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、着脱可能に壁面やガラス面を傷つけることなく、ものを取り付けるのに吸盤が広く使用されている。
【0003】
吸盤は、一般に椀を伏せたような形状の弾性体からなる本体部を有している。吸盤は、その本体部の周縁部を壁面やガラス面(以降「吸着面」という)に当接させ、本体部を壁面に対して押しつけ、しかる後に本体部に対する圧力を取り除くと、弾性体の戻る力と吸着面との間に形成されたシールで、本体部内が負圧になって吸盤が吸着面に吸着する。
【0004】
吸盤の吸着が効果的であるためには、吸盤の本体部内の負圧が維持されなければならないため、吸着面が平滑であることが必要である。
【0005】
これに対してある程度の粗面に対しても有効であるとする吸盤が提案されている。特許文献1には、弾性体からなる円形ドーム状の吸盤本体と、該吸盤本体の底面部に接合された軟質な付帯シート材を有し、該付帯シート材は弾性に富み、付帯シート材の底面に接着剤層を有する吸盤が記載されている。
【0006】
また、吸盤の吸着が効果的であるためには、吸盤を吸着面に対して強く加圧する必要がある。これに関して特許文献2には、吸盤の吸着力を増すために、吸盤の外周を押さえる押え椀体を有し、押え椀体の縁部で吸盤の外周を二重に圧接する吸盤付き物掛具が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−250266号公報
【特許文献2】特開平5−220042号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、粗面である吸着面に吸盤を効果的に吸着させるためには、吸盤の吸着部が吸着面の凹凸にぴたりフィットすることが必要である。従来技術のシート材では面接触であるため、シール線を形成することが困難である。たとえば、吸着面が曲面になっている場合には、シート材面の吸着面に十分にフィットすることができない。
【0009】
また、シート材を剥離する時の強度を考えると、ある程度の剛性が必要であるため十分に柔軟にすることができない。そのため、十分な柔軟性を与えることができず、吸着面の凹凸にフィットすることが困難である。
【0010】
さらに、従来技術では、シート材に接着剤を塗布しているため、吸着面に接着剤の跡が残る問題がある。
【0011】
また、吸盤の外周を二重に圧接する従来技術では、吸着面に対する圧力を強くしても吸盤の吸着部が吸着面の凹凸にフィットしなければ、次第に吸着力が弱まる問題がある。
【0012】
本発明は、粗面または曲面に適用可能な吸盤及び吸盤を用いた器具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一態様にかかる吸盤は、吸着面側に凹みを有し、弾性体からなる本体部を有し、
前記本体部の周縁部は、相対的に柔軟な吸着部を有していることを特徴とする。
【0014】
前記吸着部は、前記本体部と異なる材質の軟質部材からなり、前記軟質部材は前記本体部の周縁部に二重成形で固着されているようにすることができる。
【0015】
前記本体部は、40度以上、好ましくは50〜90度の硬度を有し、前記軟質部材は5〜30度、好ましくは10〜25度の硬度を有しているようにすることができる。
【0016】
前記本体部の周縁部の端部は円弧状になっており、前記軟質部材は前記端部の円弧の外周に固着されているようにすることができる。
【0017】
前記本体部の周縁部の端部は円弧状になっており、前記軟質部材は前記端部の円弧の外周から前記本体部の内面にわたって固着されているようにすることができる。
【0018】
前記本体部の周縁部の先端からわずかに内側の本体部内面に溝が形成されており、前記軟質部材は前記溝に装着されているようにすることができる。
【0019】
前記本体部の周縁部は先端に近づくほど薄く形成されており、前記軟質部材は前記周縁部の先端部の周囲に固着されているようにすることができる。
【0020】
前記本体部の周縁部は先端に近づくほど薄く形成され、さらに先端が吸着面に対して反った形状に形成され、前記軟質部材は前記周縁部の先端部の周囲に固着されているようにすることができる。
【0021】
前記軟質部材は幅が不均等な平面視波形の形状に形成されているようにすることができる。
【0022】
前記軟質部材は、吸着面と接する部分が波形の形状に形成されているようにすることができる。
【0023】
前記本体部の周縁部は、不均等な波形に形成されているようにすることができる。
【0024】
前記本体部の表面に放射状に線状の凹み溝が設けられているようにすることができる。
【0025】
前記本体部の表面に略亀甲状の模様の凹み溝が設けられているようにすることができる。
【0026】
前記本体部の表面に略亀裂状の凹み模様または凸模様が設けられているようにすることができる。
【0027】
前記本体部に前記吸盤内部と連通する気抜けセンサー部が設けられているようにすることができる。
【0028】
前記本体部にダンパー部が設けられているようにすることができる。
【0029】
前記吸盤の底面に下吸盤が設けられているようにすることができる。
【0030】
前記吸盤の底面に前記下吸盤と連通する貫通孔が設けられているようにすることができる。
【0031】
本発明の他の態様にかかる吸盤を用いた器具は、前記吸盤を有し、前記吸盤に管部材が接続され、前記管部材は弾性体からなる中空の吸引部材に接続され、前記吸盤の内部と前記管部材内部と前記吸引部材の内部に連通する流路が形成されていることを特徴とする。
【0032】
本発明の他の態様にかかる吸盤を用いた器具は、前記吸盤を有し、前記吸盤の本体部の内部に内吸盤が設けられているようにすることができる。
【0033】
前記吸盤の本体部の内部に内台が設けられているようにすることができる。
【0034】
前記吸盤に把持部が設けられているようにすることができる。
【0035】
前記吸盤の本体部底面に突起部が設けられているようにすることができる。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、粗面や曲面によく吸着することができる吸盤及び吸盤を用いた器具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】本発明の第一実施形態による吸盤の平面図(a)と縦断面図(b)。
図2】本発明の第一実施形態による吸盤の使用状態の説明図。
図3】本発明の第二実施形態による吸盤の縦断面図。
図4】本発明の第二実施形態による吸盤の使用状態の説明図。
図5】本発明の第三実施形態による吸盤の縦断面図。
図6】本発明の第三実施形態による吸盤の使用状態の説明図。
図7】本発明の第四実施形態による吸盤の縦断面図。
図8】本発明の第四実施形態による吸盤の使用状態の説明図。
図9】本発明の第五実施形態による吸盤の縦断面図。
図10】本発明の第五実施形態による吸盤の使用状態の説明図。
図11】本発明の第六実施形態による吸盤の平面図。
図12】本発明の第七実施形態による吸盤の側面図。
図13】本発明の第八実施形態による吸盤の側面図。
図14】本発明の第九実施形態による吸盤の斜視図。
図15】本発明の第十実施形態による吸盤の斜視図。
図16】本発明の第十一実施形態による吸盤の斜視図。
図17】本発明の一実施形態による吸盤を用いた器具の縦断面図(a)と側面図(b)。
図18】本発明の一実施形態による吸盤を用いた器具の使用状態の説明図。
図19】本発明の第十二実施形態による吸盤の一部を切断した側面図。
図20】本発明の第十三実施形態による吸盤の一部を切断した側面図。
図21】本発明の第十四実施形態による吸盤の側面図。
図22】本発明の吸盤を用いた第二の器具の斜視図。
図23】本発明の吸盤を用いた第三の器具の斜視図。
図24】本発明の吸盤を用いた第四の器具の使用状態を示した斜視図。
図25】本発明の吸盤を用いた第五の器具の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下に本発明の実施形態を、図面を用いて説明する。
【0039】
[吸盤の第一実施形態]
図1は本発明の吸盤の第一実施形態による吸盤1の平面図(a)と縦断面図(b)を示している。
【0040】
図1(a)に示すように本実施形態の吸盤1は、平面視の形状が円形になっている。図1(b)は吸盤1の円形の中心を通って吸盤1を縦に切断した縦断面図を示している。図1(a)(b)から明らかなように、吸盤1は、吸着面側に凹みを有し、全体として椀のような形状(「椀形」という)を有する本体部2を有している。吸盤1は本体部2を、吸着面に対して椀を伏せたような形態で使用する。通常の状態では、本体部2の中心部は吸着面から離れ、周縁部3が吸着面に接近するようになっている。
【0041】
本体部2の中心部にはものを吊り下げるための吊り部4が設けられている。吊り部4には紐や吊り下げ具等を通す、取り付けのための通し孔5が設けられている。
【0042】
本体部2の周縁部3には、本体部2に比して相対的に柔軟な吸着部6が設けられている。本体部2は、弾性体からなり、適度な吸着力を生じるのに十分な弾力を有している。本体部2の弾性体としてはたとえば軟質ゴムや軟質塩化ビニール等がある。本体部2の弾性体はたとえば40度以上の硬度を有し、好適には50〜90度の硬度を有している。なお、ここで硬度とは、測定機が簡便であることから一般に広く普及している「デュロメーター硬さ」のことである。「デュロメーター硬さ」は、測定する対象の表面に鋭利ではない針(押針、インデンタ)を押し込んで、その変形量を測定し数値化する方法であり、針を押し込む力としてスプリングを用いている。中硬さ用にはタイプA、低硬さ用にタイプEが規格化されている。
【0043】
本実施形態の吸着部6は、本体部と異なる材質の軟質部材からなる。吸着部6は該軟質部材を本体部2の周縁部3に二重成形で固着されて形成されている。
【0044】
本実施形態の本体部2の周縁部3の端部は円弧状になっている。吸着部6の軟質部材は周縁部3の端部の円弧の外周に、これを取り囲むように二重成形で固着されている。二重成形は異なる材質の樹脂を一体に形成するための方法であり、この方法によれば工程を簡略化でき、接着を強固にすることができる。しかし、吸着部6は本体部2の周縁部3に固着されればよく、固着の方法は接着剤による接着や溶着、または、二重成形に限られない。また、吸着部6が本体部2と同一材質からなり、硬度が異なるようにしてもよい。
【0045】
吸着部6の軟質部材は、たとえばエラストマー、シリコーン等とすることができる。二重成形する場合、吸着部6の材質は本体部2の材質との相性を考慮して選択される。吸着部6の軟質部材は、本体部2に対して相対的に柔軟であり、たとえば5〜30度の硬度を有し、好適には10〜25度の硬度を有している。
【0046】
また、このように本体部の硬度と、吸着部の硬度は、明確な硬度の差をつけている。例えば本体硬度50度、吸着部20度とする。その差は10度以上、好適には30度以上を有する。
【0047】
さらに、ここでは、吸着部の肉厚は周囲方向で一定であるが、波を打った様に肉厚を変えることで、本体部との結合度を高めたり、曲面に対する吸引効果を高めたりすることができる。
【0048】
なお、吸着部6の硬度は吸盤1の本体部2の硬度との関係で適宜選択される。一般に、硬度が大きい本体部2は吸引力が強いため、硬度が大きい吸着部6の軟質部材を選択することができる。軟質部材は吸盤1の内部の真空度に耐えられる硬度にすることが好ましい。例えば、ナイロン、ビニール、ポリプロピレン、ゴム、シリコンゴム、エラストマーなどが適合する。また、例えばシリコンゴムで構成する場合、肉厚と硬度と本体の大きさの関係から強度を割り出すこととなる。
【0049】
また、吸着部6の軟質部材は、吸着面の粗さとも関係し、吸着面の粗さが大きいものに対して表面の凹凸にフィットさせるためには、柔軟な軟質部材を選択することが好ましい。
【0050】
このように、吸着部6の軟質部材の硬度や材質は、本体部2の弾力、吸着面の粗さ、本体部2の材質との相性等を総合的に考慮して選択される。
【0051】
図2は、本実施形態の吸盤1の使用状態を示している。この図を用いて本実施形態の作用を説明する。
【0052】
本実施形態の吸盤1を使用するときは、本体部2の周縁部3を吸着面7に当接させ、本体部2の中心部に圧力をかけ、その圧力を取り除くと、本体部2の弾性体の戻る力と吸着面7のシール効果で本体部2の内部が負圧になって吸盤が吸着面に吸着する。
【0053】
本実施形態によれば、図2の拡大部分の矢印に示すように、吸着部6の軟質部材が本体部2の内部の負圧によって内方向と下方向に吸われ、その柔軟性によって吸着面7の凹凸にぴったりフィットする。これにより、シールが形成され、吸着状態を長時間維持することができる。
【0054】
なお、本発明によれば、吸着面7が概略平面になっているときは、本体部2の周縁部3の吸着部6は、吸着面7と円形のシール線を形成する。吸着面7が曲面になっているときは、本体部2のスカート状の部分が曲面にそって変形でき、吸着面7とシール線を形成できる。このため、本発明によれば、自由な曲面に対しても効果的な吸着を実現することができる。
【0055】
[吸盤の第二実施形態]
図3は、本発明の第二実施形態による吸盤1aの縦断面図を示している。
【0056】
本実施形態の吸盤1aは、本体部2と周縁部3と吊り部4と通し孔5と吸着部6aを有している。第一実施形態と同一な部分には同一の符号を付し、必要な場合以外は重複する説明を省略する。この点、以降の他の実施形態についての説明においても同様である。
【0057】
本実施形態の本体部2は、第一実施形態の本体部2と同様に、周縁部3の端部が円弧状に形成されている。ただし、本実施形態の吸着部6aの軟質部材は、周縁部3の端部の円弧の外周から本体部2の内面にわたって固着されている。この実施形態においても、固着の方法として二重成形を採ることが好ましい。
【0058】
図4は、本実施形態の使用状態を示している。図4に示すように、使用時には、本体部2を吸着面7に押しつけ、圧力を取り除くようにする。このとき、吸着部6aと吸着面7が形成するシールと本体部2の戻る力で吸盤1aの内部に負圧が生じ、吸盤1aが吸着面7に吸着する。
【0059】
本実施形態によれば、図4の拡大した部分に示すように、本体部2が使用状態では広がり、吸着部6aの軟質部材がより広い面積で吸着面7に接し、吸着面7の凹凸にフィットする。吸着部6aと吸着面7が広い面積で接することにより、吸着面7の表面粗さの程度によっては吸着を容易に形成することができる。
【0060】
本体部2と吸着部6aの軟質部材の材料、硬度に関しても第一実施形態と同様である。
【0061】
[吸盤の第三実施形態]
図5は、本発明の第三実施形態による吸盤1bの縦断面図を示している。
【0062】
本実施形態の吸盤1bは、本体部2bの周縁部3bの先端からわずかに内側の本体部2bの内面に、溝8が形成されている。この溝8に吸着部6bの軟質部材が装着されている。吸着部6bの軟質部材と溝8の装着は、二重成形の方法によってもよい。また、溝8の内面に軟質部材を接着剤または熱融着によって装着してもよい。
【0063】
図6は第三実施形態の吸盤1bの使用状態を示している。使用時に、本体部2bに圧力をかけて、しかる後に圧力を取り除く点は他の実施形態と同じである。図6の拡大した部分に示すように、本体部2bが使用状態では広がり、周縁部3bが吸着面7に平行に近い状態になるため、溝8に装着された吸着部6bの軟質部材が吸着面7と接触してシールを形成する。
【0064】
なお、ここでは吸着時に内部に空間がある形態を示してあるが、平面状に密着した状態の形状となっても良いものである。
【0065】
本実施形態によれば、吸着部6bの軟質部材が溝8内に装着されているため、軟質部材が柔らかくても溝8内に保持され、水平方向の吸引力に対して変形が少ない。このため、柔らかい軟質部材を使用し、変形による空気漏れを防止し、かつ、吸着面7の凹凸にフィットさせる十分な柔軟材料を使用することができる。
【0066】
本体部2bと吸着部6bの軟質部材の材料に関して第一と第二実施形態と同様である。
【0067】
[吸盤の第四実施形態]
図7は、本発明の第四実施形態による吸盤1cの縦断面図を示している。
【0068】
本実施形態の吸盤1cの本体部2cは、周縁部3cが先端に近づくほど薄く形成されている。これに対して吸着部6cの軟質部材は周縁部3cの先端部の周囲に固着されている。吸着部6cの軟質部材の固着は好ましくは二重成形による。
【0069】
図8は、本実施形態の使用状態を示している。図8に示すように、使用時には、本体部2cを吸着面7に押しつけ、しかる後に圧力を取り除くようにする。このとき本実施形態によれば、本体部2cの周縁部3cは、先端部がなめらかに反って吸着面7に沿うように変形する。これにより、図8の特に拡大部分に明らかに示すように、吸着部6cの軟質部材が広い面積で吸着面7と接触し、シールを形成する。軟質部材がより広い面積で吸着面7に接することにより、シールが形成しやすくなり、吸着を容易にすることができる。また、周縁部3cと吸着面7の接触がソフトになるため、人肌等に吸着するのに好適である。
【0070】
本体部2cと吸着部6cの軟質部材の材料、硬度に関しても第一、第二、第三実施形態と同様である。
【0071】
[吸盤の第五実施形態]
図9は、本発明の第五実施形態による吸盤1dの縦断面図を示している。
【0072】
本実施形態の吸盤1dの本体部2dは、周縁部3dが先端に近づくほど薄く形成され、さらに先端が吸着面7に対して反った形状に形成されている。これに対して吸着部6dの軟質部材は周縁部3dの先端部の周囲に固着されている。吸着部6dの軟質部材の固着は好ましくは二重成形による。
【0073】
図10は、本実施形態の使用状態を示している。図10に示すように、使用時には、本体部2dを吸着面7に押しつけ、しかる後に圧力を取り除く。このとき、本実施形態によれば、本体部2dの周縁部3dは、先端がなめらかに反って吸着面7に沿うように滑らかに変形し、さらに先端が反っているため、一層柔らかく吸着面7に接触することができる。このため、本実施形態によれば特にソフトな吸着を要する場合、例えば人肌等に吸着させる場合に好適である。
【0074】
本体部2dと吸着部6dの軟質部材の材料、硬度に関しても第一、第二、第三、第四実施形態と同様である。
【0075】
[吸盤の第六実施形態]
図11は、本発明の第六実施形態による吸盤1eの平面図を示している。
【0076】
本実施形態の本体部2は、これに限られないが、第一実施形態と同様に、周縁部3の端部が円弧状に形成されている。ただし、本実施形態の吸着部6eは、図11に例示するように、周縁部が上から見て不均等な波形になっている。不均等な波形とは幅が不均等の意であり、不規則な形状を含むものとする。
【0077】
これにより、吸着される対象物に多少の凹凸がある場合でも、吸着部6eが吸着面にフィットすることができ、吸着力が増す。
【0078】
また、吸着面に凹凸がある場合に、吸盤1e全体を回転させながら、吸着部6eが凹凸にフィットして吸着しやすい方向を探すことができる。これにより、凹凸のある吸着面に対してもより吸着させることができる。
なお、周縁部は、均等な波形形状であってもよい。
【0079】
[吸盤の第七実施形態]
図12は、本発明の第七実施形態による吸盤1fの側面図を示している。
【0080】
本実施形態の本体部2は、これに限られないが、第一実施形態と同様に、周縁部3の端部が円弧状に形成されている。ただし、本実施形態の吸着部6fは、図12に例示するように、下部が横から見て不均等な波形になっている。不均等な波形とは吸着部6fの上下の幅が不均等という意味である。
【0081】
下部が不均等な波形になっている吸着部6fにより、吸着される対象物に多少の凹凸がある場合でも、フィットすることができ、吸着力が増す。
【0082】
また、吸着面に凹凸がある場合に、吸盤1f全体を回転させながら、吸着しやすい方向を探すことができる点は第六実施形態と同様である。
なお、吸着部6fは、不均等に限らず、均等な波形形状であってもよい。
【0083】
[吸盤の第八実施形態]
図13は、本発明の第八実施形態による吸盤1gの側面図を示している。
【0084】
本実施形態の本体部2gは、その周縁部3gが不均等な波形になっている。吸着部6gは周縁部3gに固着される。周縁部3gが不均等な波形になっているため、吸着部6gと周縁部3gの接合面が増大し、吸着部6gと周縁部3gをより強固に固着させることができる。周縁部3gの不均等な波形は波形の山の高さが不均等という意味であり、不規則に変化してもよい。
【0085】
また、吸着部6g自体の下面や周縁部は均一な形状として説明しているが、吸着部6g自体の下面や周縁部が不均等または不規則な波形でもよい。
【0086】
[吸盤の第九実施形態]
図14は、本発明の第九実施形態による吸盤1hの斜視図を示している。
【0087】
本実施形態の吸盤1hは、本体部2hの表面に放射線状の凹み溝21hが設けられている。凹み溝21hは、本体部2hの中央(吊り部4)の周囲には設けられておらず、下に向かって幅が徐々に広くなっている。本体部2hの表面に放射線状の凹み溝21hを設けることにより、より曲面に対する本体の自由度高めることができる。これによって吸着効果を高めるものである。なお、ここでは直線状の凹み溝であるが、波状の線やギザギザ状の線状でもよい。さらにはこれらの組み合わせでも良い。
【0088】
また、吸着部6自体の下面や周縁部は均一な形状として示しているが、吸着部6自体の下面や周縁部が不均等または不規則な波形でもよい。
【0089】
[吸盤の第十実施形態]
図15は、本発明の第十実施形態による吸盤1iの斜視図を示している。
【0090】
本実施形態の吸盤1iは、本体部2iの表面に略亀甲状の模様の凹み溝21iが設けられている。本体部2iの表面に略亀甲状の模様の凹み溝21iを設けることにより、より曲面に対する本体の自由度高めることができる。なお、ここでは均等な亀甲状の凹み溝であるが、不規則な大きさの亀甲を組み合わせても良い、また、他の直線や波状の線やギザギザ状の線の凹み溝と組み合わせても良い。また、亀甲状の凹み溝21iを本体部2iの全体に設けてもよいし、中央部を除いた部分に設けたり、または、吸着部6に近い部分のみに設けてもよい。
【0091】
また、吸着部6自体の下面や周縁部は均一な形状として示しているが、吸着部6自体の下面や周縁部が不均等または不規則な波形でもよい。
【0092】
[吸盤の第十一実施形態]
図16は、本発明の第十一実施形態による吸盤1jの斜視図を示している。
【0093】
本実施形態の吸盤1jは、本体部2jの表面に亀裂状模様の凹み21jを設けられている。本体部2jの表面に亀裂状模様の凹みを設けることにより、より曲面に対する本体の自由度高めることができる。
【0094】
なお、亀裂はここでは六角形を示すが、三角形や四角形、五角形、八角形などや円形状、網目状などの模様でも良い。各亀裂は重なっているが、間隔を開けて設けても良い。
【0095】
また、ここでは本体部2jの外面に凹み21jを設けたものを示すが、本体部2jの内面であっても良い。さらに、ここでは、本体部2jの周辺部に設けているが、本体部全体にわたって設けられても良いし、模様も組み合わされても良い。
【0096】
さらには、これらの模様の凸模様としても良い。
【0097】
また、吸着部6自体の下面や周縁部は均一な形状として示しているが、吸着部6自体の下面や周縁部が不均等または不規則な波形でもよい。
上記の本体部の表面の凹み溝、凹みは、異なる形状のものを組み合わせてもよい。例えば、吸着部6付近を亀甲状の凹み溝として、それより中央側を、放射状の凹み溝としてもよい。
【0098】
[吸盤を用いた第一の器具]
図17は、本発明の吸盤を用いた第一例の器具の縦断面図(a)と側面図(b)を示している。
【0099】
図17に示すように、本実施形態の器具は吸盤1aを有し、該吸盤1aに第一管部材10と第二管部材11と中空の吸引部材12が接続されている。吸盤1aの内部と第一管部材10と第二管部材11と吸引部材12の内部を連通する流路13が形成されている。第二管部材11は好ましくは硬質素材から形成され、例えばポリプロピレンやABS樹脂等が用いられる。第一管部材10と吸引部材12は弾性部材からなり、たとえば軟質ゴムや軟質塩化ビニールから形成されている。
【0100】
第一管部材10は吸盤1aに接続され、図17の例では吸盤1aと一体的に形成されているが、これに限られず、別個に形成された後に接続されるようにしてもよい。吸盤は一例として第二実施形態の吸盤1aを示したが、第一乃至第十一の実施形態のいずれの吸盤でもよい。
【0101】
第一管部材10と吸引部材12は弾性部材からなり、第二管部材11は硬質素材からなるため、図示するように第二管部材11の両端部を第一管部材10と吸引部材12の接続部分に押し込んで係合させる。
【0102】
図17(b)は本実施形態による吸盤を用いた器具を、ジャガイモ14に吸着させるところを示している。図17(b)に示すとおり、本器具の吸盤1aの吸着部6aをジャガイモ14の周囲に当接させ、指等によって吸引部材12を押圧し、しかる後に圧力を取り除くと、吸盤1aの吸着部6aとジャガイモ14の間に形成されたシールと吸引部材12の内部の負圧によって、ジャガイモ14が吸着される。
【0103】
前述したとおり、本発明による吸盤1aは、吸盤本体のスカート状の部分が吸着面の曲面にそって変形できるため、吸着面7とシール線を形成できる。また、吸着部6aが柔軟な軟質部材からなるため、ジャガイモ14の表面の凹凸にしっかりフィットして確実な吸着を実現することができる。
【0104】
図18はジャガイモ14を吸着させた器具を用いてジャガイモ14の皮を剥くところを示している。図18に示すように、ジャガイモ14を吸着させた後は、ジャガイモ14はしっかり吸盤1aに吸着されているため、吸引部材12から手15を離し、器具全体とジャガイモ14を例えば図のように把持することができる。このように器具とジャガイモ14を把持した後に、ピーラー16等によって、ジャガイモ14の皮を剥くようにすることができる。この例によれば、ジャガイモ14は安定し、かつ、指がピーラー16から遠いため、安全にジャガイモ14の皮を剥くことができる。
【0105】
なお、ここでは流路13を介して吸引部材12で吸引しているが、吸引は吸引機を用いても良い。例えば、出荷場でのメロンやトマトなどの仕分け時に、自動化した、仕分け吸引部として使用しても良い。
【0106】
なお、吸着の対象は、ジャガイモに限られず、使用可能な任意のものとすることができる。例えば、玉ねぎ、大根、ニンジン、キュウリ等の食材であってもよい。また、食材に限定されない。
[吸盤の第十二実施形態]
図19は、本発明の第十二実施形態による吸盤1kの一部を切断した側面図を示している。
【0107】
本実施形態の吸盤1kは、本体部2kの一部に気抜けセンサー部20を有している。気抜けセンサー部20は、弾性体の中空な膨出部からなり、その内部は吸盤1kの内部と連通している。気抜けセンサー部20は、好ましくは本体部2kよりも柔軟に形成されている。
【0108】
図19(a)は気抜けセンサー部20が本体部2kと一体に形成された例を示している。気抜けセンサー部20を本体部2kに比して柔軟に形成するために、本体部2kと同じ材質で本体部2kより薄肉に形成しても良いし、材質の変化によって本体部2kより柔軟な材質で形成しても良いし、あるいはその両方を組み合わせても良い。気抜けセンサー部20の柔軟性は内部の負圧が減少すると元の形に膨らむ程度とする。
【0109】
また、図19(b)に示すように、気抜けセンサー部20’は本体部2kと別部材で形成するようにしても良い。図19(b)の例では、気抜けセンサー部20’は本体部2kとは別の部材で形成し、本体部2kに開設した嵌着孔に嵌着させる。気抜けセンサー部20’を嵌着させた後は、接合部分は接着剤または熱溶着によって気密に固着させるのが好ましい。気抜けセンサー部20’の材質としては、例えばナイロン、ビニール、ポリプロピレン、ゴム、シリコンゴム、エラストマーなどを使用することができる。
【0110】
気抜けセンサー部20,20’は、本体部2kより柔軟に形成されているため、吸盤1kが吸着時に内部が負圧になると、本体部2kの内部と連通して潰れた状態になる。しかし、何らかの原因で、例えば時間の経過によってシール部から空気が漏れると、本体部2kの内部の圧力が上昇し、気抜けセンサー部20,20’は弾性によって元の膨らんだ状態に戻る。したがって、気抜けセンサー部20,20’を目視することによって吸盤1k内部の圧力の状態や圧力の上昇を検知することができる。
【0111】
なお、図19の例では、気抜けセンサー部20,20’を除いた部分では第一の実施形態の吸盤を用いて説明したが、本実施形態の気抜けセンサー部20,20’はこれに限られず、第一乃至第十一の実施形態のいずれの吸盤と組み合わせても良い。・
【0112】
[吸盤の第十三実施形態]
図20は、本発明の第十三実施形態による吸盤の一部を切断した側面図を示している。
【0113】
本実施形態の吸盤1mは、本体部2mの一部にダンパー部21を有している。ダンパー部21は本体部2mの一部に設けられている。ダンパー部21は、弾性材を蛇腹状に形成し、圧縮すると弾力的に元の状態に戻るように形成した部分からなる。ダンパー部21は、バネのような形状により、吸盤本体部の椀形形状より弾力的に弾発するように形成することができる。ダンパー部21は、吸盤1mを吸着面に押し当てる力の方向に対して蛇腹の軸が平行になるように設けられている。たとえば図20の例のように、ダンパー部21は、本体部2mの中間に周方向に設けるようにすることができる。
【0114】
ダンパー部21を設けることにより、本体部2mの圧縮のストロークが大きくなり、復元する力を大きくすることができる。したがって、ダンパー部21を設けた吸盤1mによれば、より強い吸引力を有する吸盤を提供することができる。
【0115】
なお、図20の例では、第一の実施形態の吸盤にダンパー部21を設けた例で説明したが、本実施形態のダンパー部21はこれに限られず、第一乃至第十二の実施形態のいずれの吸盤と組み合わせても良い。・
【0116】
[吸盤の第十四実施形態]
図21は、本発明の第十四実施形態による吸盤1nの側面図を示している。
【0117】
本実施形態の吸盤1nは、吸盤1nを上向きに使用し、該吸盤1nを台上やテーブル上に固定できるように、吸盤1nの反対側下部に下吸盤22を有している。下吸盤22は、円錐台形の形状に限られず、四角錐台形、皿形などいずれの公知の形状の吸盤でもよい。
【0118】
図21(a)の例では、吸盤1nの本体部2nはダンパー部21を有し、強い吸引力を生じることができるようになっている。本実施形態の吸盤1nによれば、本体部2n側に茹で卵、プチトマト、剥きトマト、巨峰等を吸着させ、転がらないように下吸盤22でテーブル等に吸着させておくことができる。なお、吸着するものや食材によっては、ダンパー部21nを省略しても良い。
【0119】
図21(b)は図21(a)の吸盤にさらに貫通孔23を設けた例を示している。
【0120】
図21(b)のように、本体部2nの底部に下吸盤22と連通する貫通孔23を設けることにより、吸着時に本体部2nと下吸盤22の内部が同じ圧力になる。したがって、吸盤を取り外すときに、上側または下側の吸盤の一方の吸着を解除すれば、両方の吸盤を一度に取り外せて便利である。
【0121】
例えばテーブルに下吸盤22を吸い付かせ、その上に茹で卵やトマトや果物などを吸盤により固定したり、さらに、吸盤の上に例えば、食材を飾り盛り付けるお皿を吸引し固定することでお皿を安定させて食卓に並べることができる。少し高い位置に盛り付けることで、高級感を出したり、高齢者がお皿を転がしたりせずに食することができるようになる。
【0122】
なお、図21(a),(b)の例では、第十三実施形態の吸盤に下吸盤22を設けた例で説明したが、本実施形態の下吸盤22はこれに限られず、第一乃至第十三の実施形態のいずれの吸盤と組み合わせても良い。
【0123】
[吸盤を用いた第二の器具]
図22は、本発明の吸盤を用いた第二の器具の斜視図である。
【0124】
本実施形態の器具は、吸盤1pの下部に台座部24を有している。台座部24は第十四実施形態のように吸盤になっていても良いし、側面視概略台形の中実の部材からなるようにしても良い。図22(a)の例は、上部が吸盤1pになっている場合を示している。吸盤1pは、本体部2pを有し、その内部にさらに内吸盤25を有している。吸盤1pの本体部2pの周縁部は吸着部6pになっており、柔軟な素材からなり、凹凸面や曲面に吸着できるようになっている。内吸盤25は、好ましくは吸盤1pと同心状に設けられているが、これに限られず吸盤1pに対して偏心して設けられていても良い。内吸盤25は本体部2pと同一の弾性部材からなるようにしても良いし、本体部2pより柔軟な素材からなるようにしても良い。
【0125】
図22(b)には内吸盤を複数設けたものを示す。より繊細な複数の吸盤のそれぞれ弱い吸引力で吸引するが、全体としては安定的に吸引力を示す。吸盤と反対面は例えばテーブルなどに安定的に座らせる座面を有する。また、座面は吸盤でも良い。これにより、上記吸盤の第十四実施形態と同様な効果がある。
【0126】
内吸盤25が柔軟な素材からなる場合は、内吸盤25を軟質材で本体部2pの底面部に二重成形するようにしても良いし、吸着部6pから本体部2pの内面及び内吸盤25を軟質材で二重成形するようにしても良い。
【0127】
本実施形態の器具は、卵など割れやすいものを吸引するのに好適である。例えば、殻を有する茹で卵を吸着させ、殻を剥くのに好適である。内吸盤25のみを吸盤とし、本体部2pは吸盤とせずに単なる落下防止用の側壁とすることもできる。
【0128】
内吸盤25と吸着部6pの少なくとも一方を柔軟な素材によって形成した場合は、傷つきやすい物の吸着に好適である。たとえば、殻を剥いた茹で卵や熟れたトマトや皮を剥いたトマトを吸引するのに好適である。また、メロンや瓜等の皮を剥くのに好適である。
【0129】
なお、図22の例では、第一実施形態の吸盤の内部に内吸盤25を設けた例で説明したが、本実施形態の内吸盤25は、第一乃至第十四の実施形態のいずれの吸盤と組み合わせても良い。
【0130】
[吸盤を用いた第三の器具]
図23は、本発明の吸盤を用いた第三の器具の斜視図である。
【0131】
本実施形態の器具は、吸盤1qの下部に台座部24qを有している。台座部24qは吸盤になっていても良いし、側面視概略台形の中実の部材からなるようにしても良い。吸盤1qは、本体部2qを有し、周縁部が柔軟な吸着部6qになっている。本体部2qの内部には、内台26が設けられている。内台26は過度の吸引によって吸着物が傷つくのを防止するものであり、所定の高さを有し、吸引時に吸着物が当接してそれ以上吸引されないようになっている。内台26は図23のように環状になっていても良いし、台状になっていても良い。また、内台26は本体部2qの底面と同心状に設けられていても良いし、偏心して設けられていても良いし、あるいは複数個に分散して設けられていても良い。内台26が台状に形成されている場合は、柔軟な素材によって形成するのが好ましい。内台26が環状に形成されている場合は、図23に示すように、その側壁に貫通孔を設けるのが好ましい。貫通孔を設けることにより、クッション性が増すことがある。また、貫通孔を設けることにより、内台26内部と本体部2qの内部の圧力が均一になり、吸着物を傷めることを防止することができる。
【0132】
本器具は、たとえば殻付きの卵を吸引するときに、殻が破損することを防止することができる。
【0133】
なお、図23の例では、第一実施形態の吸盤の内部に内台26を設けた例で説明したが、本実施形態の内台26は、第一乃至第十四の実施形態のいずれの吸盤と組み合わせても良い。
【0134】
[吸盤を用いた第四の器具]
図24は、本発明の吸盤を用いた第四の器具の使用状態を示した斜視図である。
【0135】
本実施形態の器具は、吸盤1rの下部に把持部27を有している。吸盤1rは本体部2rを有し、本体部2rにはダンパー部21rが設けられている。ダンパー部21rは蛇腹形状に形成された弾発部分になっており、これによって吸盤1rは強くものを吸引することができるようになっている。吸盤1rの周縁部は吸着部6rになっており、吸着部6rは柔軟材料によって形成され、凹凸面や曲面によく吸着するようになっている。
【0136】
把持部27は、指掛け部28と指通し孔29を有している。指掛け部28は吸盤1rの底部近傍で指をかけるのに好適なくびれ部からなる。指通し孔29は好ましくは指掛け部28の下部に設けられ、指を通すのに好適なリング状になっている。
【0137】
この器具の用い方が図24に示されている。吸盤1r上には吸着対象物、例えばジャガイモ14が吸着されている。符号15は使用者の手を示しており、指掛け部28と指通し孔29にそれぞれ図24に示すように指をかけることによって本器具をしっかり把持することができる。本器具によれば、通常は把持しにくい傷つけやすいものをしっかり把持することができる。例えば、ジャガイモやリンゴ等の加工に好適に使用することができる。
【0138】
さらに、ナイフやピーラーなどで加工する際に、吸盤が食材と手の位置を離し、さらに吸盤が手の上部を覆う形となるため吸盤が手を保護する役割を果たし、安全性が向上する。
【0139】
なお、図24の例では、第十三実施形態の吸盤の下部に把持部27を設けた例で説明したが、本実施形態の把持部27は、第一乃至第十四の実施形態のいずれの吸盤と組み合わせても良い。
【0140】
[吸盤を用いた第五の器具]
図25は、本発明の吸盤を用いた第五の器具の斜視図である。
【0141】
本実施形態の器具は、吸盤1sの下部に把持部27sを有し、さらに吸盤1sの底面に立設した突起部30を有している。突起部30は、吸盤1sの底面から直角に所定の長さ突出し、比較的剛性の高い部材からなり、先端が尖っている。吸盤1sの本体部2sにはダンパー部21sが設けられ、吸着対象物を強く吸引できるようになっている。把持部27sの指掛け部28sと指通し孔29sの構造や作用は第四の器具で説明した通りである。
【0142】
図25(b)は、本器具の使用状態を示している。図示するように、本実施形態の器具は、突起部30を食材31に突き刺し、吸盤1sの吸着部6が食材31に当接すると、吸盤1sによってさらに食材31を吸着固定する。本器具によれば、吸着対象物、例えば食材等をしっかり固定することができ、食材等の加工に好適である。
【0143】
なお、突起部30は一本の棒状の突起物で説明したが、突起部30は複数の棒状の突起物でも良いし、横断面形状も円形に限られず任意の形状とすることができる。また、図25の例では、吸盤1sの下部には把持部27sが設けられているが、把持部27の代わりに下吸盤や台座部とすることもできる。
【0144】
また図25の例では、第四の器具に突起部30を設けた例で説明したが、本実施形態の突起部30は、第一乃至第十四の実施形態のいずれの吸盤と組み合わせても良い。
【0145】
本発明の趣旨は、必ずしも強力な吸着力を得るものでなくとも、滑らかな平面以外でも確実に吸着力を保持し続ける吸盤を目的としたものであり、この例の様に食材の吸着ばかりでなく、やさしく傷つけないで吸着できる効果がある。
【0146】
上記の記載に基づいて、当業者であれば、本発明の追加の効果や種々の変形を想到できるかもしれないが、本発明の態様は、上述した実施形態に限定されるものではない。特許請求の範囲に規定された内容及びその均等物から導き出される本願発明の概念的な思想と趣旨を逸脱しない範囲で種々の追加、変更及び部分的削除が可能である。
【0147】
例えば、吸盤の本体部は、図1のような平面図において円形の椀型に限られず、平面図において多角形(例えば、角が丸い四角形)であって、吸着面側に凹みがあるものであってもよい。
【符号の説明】
【0148】
1,1a,1b,1c,1d,1e,1f,1g,1h,1i,1j,1k,1m,1n,1p,1q,1r,1s 吸盤
2,2b,2c,2d,2g,2h,2i,2j,2k,2m,2n,2p,2q,2r,2s 本体部
3,3b,3c,3d,3g 周縁部
4 吊り部
5 通し孔
6,6a,6b,6c,6d,6e,6f,6g,6p,6q,6r,6s 吸着部
7 吸着面
8 溝
10 第一管部材
11 第二管部材
12 吸引部材
13 流路
14 ジャガイモ
15 手
16 ピーラー
20,20’ 気抜けセンサー部
21,21n,21r,21s ダンパー部
22 下吸盤
23 貫通孔
24,24q 台座部
25 内吸盤
26 内台
27,27s 把持部
28,28s 指掛け部
29,29s 指通し孔
30 突起部
31 食材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25