(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
磁気記録媒体の摺動部又は可動部の潤滑方法であって、請求項1〜6のいずれか一項に記載の1つ又は複数の化合物、請求項7に記載の混合物又は請求項8に記載の組成物を前記部に適用する工程を含む方法。
【発明の概要】
【0010】
本発明は、MRMの潤滑に使用するためのホスファゼン誘導体及びそのような誘導体の取得方法をさらに提供する。
【0011】
特に、第1態様では、本発明は、ホスファゼン中心コアを含むホスファゼン化合物[化合物(L)]であって、前記コアの各リン原子が、
a)鎖(A){前記鎖(A)は、(パー)フルオロポリエーテル鎖[鎖(R
f)]と、1つ又は複数の芳香族又はヘテロ芳香族部分と、任意選択的に、1個又は複数個のヒドロキシ基とを含む}及び
b)鎖(B){前記鎖(B)は、(パー)フルオロポリエーテル鎖[鎖(R
f)]と、1個又は複数個のヒドロキシ基とを含む}
から独立して選択される置換基を有し、
ただし、中心コアの少なくとも1個のリン原子が鎖(A)で置換されている化合物(L)に関する。本発明はまた、化合物(L)の混合物に関する。
【0012】
理論に制約されることなく、前記1つ又は複数の芳香族又はヘテロ芳香族部分の存在は、下にあるカーボン表面への潤滑剤の接着性と潤滑剤の移動度との間の最適バランスを提供し、それはMRMの耐久性の増加をもたらすと考えられる。
【0013】
第2態様では、本発明は、化合物(L)及びその混合物の製造方法を提供する。
【0014】
第3態様では、本発明は、MRM(熱支援磁気記録媒体、HAMRを含む)の摺動部又は可動部の潤滑方法であって、化合物(L)又はその混合物をそのような部に適用する工程を含む方法に関する。
【0015】
第4態様では、本発明は、化合物(L)又はその混合物とさらなる原料とを含む潤滑組成物[組成物(C)]に関する。
【0016】
第5態様では、本発明は、組成物(C)の製造方法に関する。
【0017】
第6態様では、本発明は、化合物(L)若しくはその混合物又は組成物(C)を含むMRM又はHAMRに関する。
【0018】
一般的定義
本説明では、範囲が示される場合、範囲端は、特に明記しない限り、含められる。
【0019】
頭字語「PFPE」は、「(パー)フルオロポリエーテル」を表し、名詞として用いられる場合、文脈に依存して、単数形か複数形かのいずれかを意味することを意図する。用語「(パー)フルオロポリエーテル」における接頭辞「(パー)」は、ポリエーテルが完全又は部分フッ素化されていてもよいことを意味する。
【0020】
用語「ハロアルキル」は、1個又は複数個の水素が1個又は複数個のハロゲンで置き換えられている炭化水素基又は化合物を意味する。用語「(パー)ハロアルキル」における接頭辞「(パー)」は、水素原子の一部又は全てがハロゲン原子で置き換えられていてもよいことを意味する。
【0021】
特に明記しない限り、「ハロゲン」又は「ハロ」には、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素が含まれる。
【0022】
例えば「鎖(R
f)」、「鎖(A)」、「鎖(B)」などのような表現での、式を特定する記号又は数字周りの括弧の使用は、本文の残りから記号又は数字をより良く区別するという単なる目的を有し;したがって、前記括弧はまた省略することができよう。
【0023】
本発明による鎖(A)及び(B)中の鎖(R
f)は、繰り返し単位R°を含む、好ましくはR°からなる完全又は部分フッ素化ポリオキシアルキレン鎖であり、前記繰り返し単位は独立して、
(i) −CFXO−(式中、Xは、F又はCF
3である)、
(ii) −CFXCFXO−(式中、出現ごとに等しいか又は異なる、Xは、F又はCF
3であり、ただし、Xの少なくとも1つは−Fである)、
(iii) −CF
2CF
2CW
2O−(式中、互いに等しいか又は異なる、Wのそれぞれは、F、Cl、Hである)、
(iv) −CF
2CF
2CF
2CF
2O−、
(v) −(CF
2)
j−CFZ−O−[式中、jは、0〜3の整数であり、Zは、一般式−OR
f’Tの基であり、ここで、R
f’は、0〜10の数の繰り返し単位を含むフルオロポリオキシアルケン鎖であり、前記繰り返し単位は、以下:−CFXO−、−CF
2CFXO−、−CF
2CF
2CF
2O−、−CF
2CF
2CF
2CF
2O−(Xのそれぞれのそれぞれは独立して、F又はCF
3である)の中から選択され、かつTは、C
1〜C
3パーフルオロアルキル基である]
からなる群から選択される。
【0024】
好ましくは、鎖(R
f)は、次式:
(R
f−I)
−(CFX
1O)
g1(CFX
2CFX
3O)
g2(CF
2CF
2CF
2O)
g3(CF
2CF
2CF
2CF
2O)
g4−
(式中:
− X
1は、−F及び−CF
3から独立して選択され、
− 互いに及び出現ごとに等しいか又は異なる、X
2、X
3は独立して、−F、−CF
3であり、ただし、Xの少なくとも1つは−Fであり;
− 互いに等しいか又は異なる、g1、g2、g3、及びg4は独立して、g1+g2+g3+g4が2〜300、好ましくは2〜100の範囲にあるような、0以上の整数であり;g1、g2、g3及びg4の少なくとも2つがゼロとは異なる場合、異なる繰り返し単位は、鎖に沿って概して統計的に分布している)
に従う。
【0025】
より好ましくは、鎖(R
f)は、式:
(R
f−IIA) −(CF
2CF
2O)
a1(CF
2O)
a2−
(式中:
− a1及びa2は独立して、数平均分子量が400〜10,000、好ましくは400〜5,000であるような0以上の整数であり;a1及びa2は両方とも、好ましくはゼロとは異なり、比a1/a2は好ましくは0.1〜10に含まれる);
(R
f−IIB) −(CF
2CF
2O)
b1(CF
2O)
b2(CF(CF
3)O)
b3(CF
2CF(CF
3)O)
b4−
(式中:
b1、b2、b3、b4は独立して、数平均分子量が400〜10,000、好ましくは400〜5,000であるような0以上の整数であり;好ましくは、b1は0であり、b2、b3、b4は0より大きく、比b4/(b2+b3)は1以上である);
(R
f−IIC) −(CF
2CF
2O)
c1(CF
2O)
c2(CF
2(CF
2)
cwCF
2O)
c3−
(式中:
cw=1又は2であり;
c1、c2、及びc3は独立して、数平均分子量が400〜10,000、好ましくは400〜5,000であるように選択される0以上の整数であり;好ましくはc1、c2及びc3は全て0より大きく、比c3/(c1+c2)は概して0.2より小さい);
(R
f−IID) −(CF
2CF(CF
3)O)
d−
(式中:
dは、数平均分子量が400〜10,000、好ましくは400〜5,000であるような0より大きい整数である);
(R
f−IIE) −(CF
2CF
2C(Hal
*)
2O)
e1−(CF
2CF
2CH
2O)
e2−(CF
2CF
2CH(Hal
*)O)
e3−
(式中:
− 出現ごとに等しいか又は異なる、Hal
*は、フッ素及び塩素原子から選択されるハロゲン、好ましくはフッ素原子であり;
− 互いに等しいか又は異なる、e1、e2、及びe3は独立して、(e1+e2+e3)合計が2〜300に含まれるような0以上の整数である)
の鎖から選択される。
【0026】
さらにより好ましくは、鎖(R
f)は、下記の式(R
f−III):
(R
f−III) −(CF
2CF
2O)
a1(CF
2O)
a2−
(式中:
− a1、及びa2は、数平均分子量が400〜10,000、好ましくは400〜5,000であるような0より大きい整数であり、比a2/a1は概して0.1〜10、より好ましくは0.2〜5に含まれる)
に従う。
【0027】
典型的には、鎖(A)及び(B)中の鎖(R
f)は、2つの鎖末端を有し、それらのうちの1つは、下に詳細に説明されるように、鎖(R
f)をシクロホスファゼン環の1個のリン原子に結び付ける架橋基[基(G)]を有し、かつ他の1つは、遊離の末端基[基(E)]を有する。鎖(A)において、1つ又は複数の芳香族又はヘテロ芳香族部分が、基(G)中に若しくは基(E)中又は両方のいずれかに含まれることができ、前記基のそれぞれが、1個又は複数個のヒドロキシ基を任意選択的にさらに含み:好ましくは、1つ又は複数の芳香族又はヘテロ芳香族部分が、基(E)中に含まれる。鎖(B)において、1個又は複数個のヒドロキシ基が、基(G)若しくは(E)中又は両方のいずれかに含まれることができ;好ましくは、1個又は複数のヒドロキシ基が、基(E)中に又は基(E)中及び基(G)中の両方に含まれる。
【0028】
化合物(L)
本発明による化合物(L)は、シクロホスファゼン中心コアであって、前記コアの各リン原子が、
a)鎖(A){前記鎖(A)は、(パー)フルオロポリエーテル鎖[鎖(R
f)]と、1つ又は複数の芳香族又はヘテロ芳香族部分[部分(Ar
m)]と、任意選択的に、1個又は複数個のヒドロキシ基とを含む}及び
b)鎖(B){前記鎖(B)は、(パー)フルオロポリエーテル鎖[鎖(R
f)]と、1個又は複数個のヒドロキシ基とを含む}
から独立して選択される置換基を有し、
ただし、中心コアの少なくとも1個のリン原子が鎖(A)で置換されている
中心コアを含む。
【0029】
ホスファゼンコアは、好ましくはシクロトリホスファゼンコア及びシクロテトラホスファゼンコアから選択され;より好ましくは、シクロホスファゼンコアは、シクロトリホスファゼンコアである。
【0030】
芳香族部分(Ar
m)は典型的には、6〜10個の炭素原子を含む芳香環であり、前記環は任意選択的に、1つ又は複数のさらなる芳香環に結合しているか又はそれらと縮合している。好ましい芳香環は、フェニル、ナフチル及びビフェニルである。一実施形態によれば、芳香族部分はフェニル部分である。
【0031】
ヘテロ芳香族部分(Ar
m)は典型的には、N、O及びSから独立して選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含む5〜10員ヘテロ芳香環であり、前記環は任意選択的に、上に定義されたような1つ又は複数の芳香環又はヘテロ芳香環に結合しているか又はそれらと縮合している。本発明の好ましい実施形態によれば、ヘテロ芳香族部分はピリジル部分である。
【0032】
芳香族又はヘテロ芳香族部分はまた、飽和又は部分飽和の5〜6員環と任意選択的に縮合していることができ、前記環は任意選択的に、N、O及びSから独立して選択される1つ又は複数のヘテロ原子を含む。
【0033】
芳香族又はヘテロ芳香族部分は任意選択的に置換されている、すなわち、それはまた、
− 直鎖又は分岐の(パー)ハロアルキル基、好ましくはC
1〜C
5−(パー)ハロアルキル基、より好ましくはC
1〜C
5−パーフルオロアルキル基;
− ハロゲン、好ましくはフッ素;及び
− ニトロ基
から独立して選択される1つ又は複数の置換基[置換基(S)]を有することができる。
【0034】
好ましい置換基は、フッ素、トリフルオロメチル及びニトロから独立して選択される。
【0035】
化合物(L)は、下の一般式(L−1):
(式中:
− x及びyは、0、1又は2であり、ただし、x+y=2であり、
− zは、少なくとも3の整数であり、
− 鎖(A)及び(B)は、上に定義された通りである)
で図式的に描くことができる、
ただし、少なくとも1つの鎖(A)が、式(L−1)中に存在する。
【0036】
好ましくは、zは、3〜7の範囲にわたり、好ましくは3及び4から選択され;より好ましくはzは3である。
【0037】
化合物(L)は、各シクロホスファゼン環上の鎖(A)及び(B)の数及び/又は種類の点で互いに異なる化合物(L)を典型的には含む混合物の形態にあり得る。化合物(L)の混合物はまた、シクロホスファゼン環の種類の点で互いに異なる化合物(L)を含んでもよい。
【0038】
化合物(L)はまた、1つ又は複数の鎖(B’)をまた含有する化合物との混ぜ物の状態にあってもよく、前記鎖(B’)は、上に定義されたような鎖(R
f)を含み、ここで、鎖(R
f)の両末端は、シクロホスファゼン環の同じリン原子に結合しているか、下に詳細に定義されるように、1つ又は複数の芳香族若しくはヘテロ芳香族部分及び/又は1個又は複数個のヒドロキシ基を含む架橋基(G)を介してシクロホスファゼン環の2つの異なるリン原子に結合しているかのいずれかである。前者の化合物は、本明細書では以下、「スピロ化合物」と言われ、一方、後者は、本明細書では以下、「アンサ化合物」と言われる。言い換えれば、スピロ及びアンサ化合物は、シクロホスファゼン中心コアであって、
前記コアの各リン原子が、
a)鎖(A){前記鎖(A)は、(パー)フルオロポリエーテル鎖[鎖(R
f)]と、1つ又は複数の芳香族又はヘテロ芳香族部分[部分(Ar
m)]と、任意選択的に、1個又は複数個のヒドロキシ基とを含む}及び
b)鎖(B){前記鎖(B)は、(パー)フルオロポリエーテル鎖[鎖(R
f)]と、1個又は複数個のヒドロキシ基とを含む}
及び
c)少なくとも1つの鎖(B’){前記鎖(B’)は、(パー)フルオロポリエーテル鎖(R
f)を含み、ここで、鎖(R
f)の両末端は、シクロホスファゼン環の同じリン原子に結合しているか、架橋基(G)を介してシクロホスファゼン環の2個の異なるリン原子に結合しているかのどちらかであり、前記基(G)は、1つ又は複数の芳香族若しくはヘテロ芳香族部分及び/又は1個又は複数個のヒドロキシ基を含む}
から独立して選択される置換基を有し、
ただし、少なくとも1つの鎖(A)又は、1つ又は複数の芳香族又はヘテロ芳香族部分(Ar
m)を架橋基(G)が含む少なくとも1つの鎖(B’)が存在する。
【0039】
典型的には、スピロ化合物は、次式:
[式中、x、y及びz、鎖(A)、(B)及び(B’)は、上に定義された通りであり、ただし、少なくとも1つの鎖(A)又は、1つ又は複数の芳香族又はヘテロ芳香族部分(Ar
m)を架橋基(G)が含む少なくとも1つの鎖(B’)が存在する]
で図式的に表すことができる。
【0040】
典型的には、アンサ化合物は、次式:
[式中、x、y及びz、鎖(A)、(B)及び(B’)は、上に定義された通りであり、鎖(A)/(B)は、鎖(A)か鎖(B)かのいずれかがリン原子に結合することができることを示し、ただし、少なくとも1つの鎖(A)又は、1つ又は複数の芳香族又はヘテロ芳香族部分(Ar
m)を架橋基(G)が含む少なくとも1つの鎖(B’)が存在する]
で図式的に表すことができる。
【0041】
好ましくは、鎖(A)は、下式(A−1):
(A−1)−G
*−O−R
f−E
*
[式中:
− G
*は、部分フッ素化された、かつ1個又は複数個の酸素原子を含有する、二価の架橋基であり、前記基は、1個又は複数個のヒドロキシ基を任意選択的に含み;
− R
fは、上に定義された通りであり;
− E
*は、部分フッ素化された、かつ1個又は複数個の酸素原子を含有する、炭化水素基を表し、前記基は、1個又は複数個のヒドロキシ基を任意選択的に含み、
式中、(G
*)又は(E
*)のいずれかは、1つ又は複数の芳香族又はヘテロ芳香族部分(Ar
m)を含む]
に従う。好ましくは、部分(Ar
m)は、基(E
*)中に含まれる。
【0042】
基(G
*)の好ましい例は、下式(i
*)〜(vii
*):
(i
*) −(OCH
2CH
2)
nOCH
2XFC−;
(ii
*) −[OCH(CH
3)CH
2)]
nOCH
2XFC−;
(iii
*) −(OCH
2CH
2)
nOCH
2CF
2CF
2−;
(iv
*) −[OCH
2CH(OH)CH
2]
n’OCH
2XFC−;
(v
*) −[OCH(CH
2OH)CH
2]
n’OCH
2XFC−;
(vi
*) −[OCH
2CH(OH)CH
2]
n’OCH
2CF
2CF
2−;及び
(vii
*) −[OCH(CH
2OH)CH
2]
n’OCH
2CF
2CF
2−,(式中:
Xは、F又はCF
3であり、nは、0〜5の範囲にわたり、n’は、1〜3の範囲にわたり、
式(i
*)〜(vii
*)の左側の酸素原子は、シクロホスファゼンコアのリン原子に結合しており、右側の−CFX−又は−CF
2−基は、−O−R
f−部分の酸素原子に結合していることが理解される)
に従う。
【0043】
好ましくは、架橋基(G
*)は、
− 式(i
*)(式中、XはFであり、nは、0、1及び2から選択され;好ましい一実施形態では、nは0である)に;又は
− 式(iv
*)(式中、XはFであり、n’は1である)に
従う。
【0044】
基(E
*)の好ましい例は、下式(viii
*)〜(xii
*):
(viii
*) −CFXCH
2O(CH
2CH
2O)
n(CH
2)
pAr
m;
(ix
*) −CFXCH
2O[CH
2CH(CH
3)O]
n(CH
2)
pAr
m;
(x
*) −CF
2CF
2CH
2O(CH
2CH
2O)
n(CH
2)
pAr
m;
(xi
*) −CFXCH
2O[CH
2CH(OH)CH
2O]
n’(CH
2)
pAr
m及び
(xii
*) −CF
2CF
2CH
2O[CH
2CH(OH)CH
2O]
n’(CH
2)
pAr
m、(式中:
Xは、F又はCF
3であり、n及びn’並びにAr
mは、上に定義された通りであり、pは、0又は1である)
に従う。
【0045】
好ましくは、基(E
*)は、
− 式(viii
*)(式中、XはFであり、nは、0、1及び2から選択され、pは0であり;好ましい一実施形態によれば、nは0である)に;又は
− 式(xi
*)(式中、XはFであり、n’は1であり、pは0である)に
従う。
【0046】
好ましくは、基(E
*)において、(Ar
m)は、上に定義されたような、より好ましくはフッ素、トリフルオロメチル及びニトロから独立して選択される1つ又は複数の置換基を好ましくは有する、フェニル又はピリジルから選択される。
【0047】
好ましくは、鎖(B)は、下式(B−1):
(B−1) −G
**−O−R
f−E
**
(式中:
− G
**は、部分フッ素化された、かつ1個又は複数個の酸素原子を含有する、二価の架橋基であり、前記基は、1個又は複数個のヒドロキシ基を任意選択的に含み;
− R
fは、上に定義された通りであり、
− E
**は、部分フッ素化された、かつ1個又は複数個の酸素原子を任意選択的に含む、炭化水素基を表し、前記基は、1個又は複数個のヒドロキシ基を含む)
に従う。
【0048】
基(G
**)の好ましい例は、基(G
*)について上に示された式(i
*)〜(vii
*)に従う。
【0049】
基(E
**)の好ましい例は、下式(viii
**)〜(xii
**):
(viii
**) −CFXCH
2O(CH
2CH
2O)
nH;
(ix
**) −CFXCH
2O[CH
2CH(CH
3)O]
nH;
(x
**) −CF
2CF
2CH
2O(CH
2CH
2O)
nH;
(xi
**) −CFXCH
2O[CH
2CH(OH)CH
2O]
n’H及び
(xii
**) −CF
2CF
2CH
2O[CH
2CH(OH)CH
2O]
n’H
(式中:
XはF又はCF
3であり、n及びn’は上で定義された通りである)
に従う。
【0050】
好ましくは、基(E
**)は、
− 式(viii
**)(式中、XはFであり、nは、0、1及び2から選択され;より好ましくは、nは0である)又は
− 式(xi
**)(式中、XはFであり、n’は1である)
に従う。
【0051】
好ましくは、鎖(B’)は、下式(B’−1):
(B’−1) −G
**−O−R
f−G
***−
[式中、(G
**)は、上に定義された通りであり、(G
***)は、下式(i
***)〜(vii
***):
(i
***) −CFXCH
2O(CH
2CH
2O)
n−;
(ii
***) −CFXCH
2O[CH
2CH(CH
3)O]
n−;
(iii
***) −CF
2CF
2CH
2O(CH
2CH2)
n−;
(iv
***) −CFXCH
2O[CH
2CH(OH)CH
2O]
n’−;
(v
***) −CFXCH
2O[CH
2CH(CH
2OH)O]
n’−;
(vi
***) −CF
2CF
2CH
2O[CH
2CH(OH)CH
2O]
n’−及び
(vii
***) −CF
2CF
2CH
2O[CH
2CH(CH
2OH)O]
n’−
(式中、Xは、F又はCF
3であり、nは、0〜5の範囲にわたり、n’は、1〜3の範囲にわたる)
から選択され、
基(G
***)において、左側の−CFX−又は−CF
2−基は、(R
f)に結合しており、式(i
***)〜(vii
***)の右側の酸素原子はシクロホスファゼン部分のリン原子に結合していることが理解される]
に従う。
【0052】
好ましくは、鎖(A−1)、(B−1)及び(B’−1)において、(R
f)は、上に定義されたような式(R
f−I)に、より好ましくは式(R
f−IIA)〜(R
f−IIE)に、さらにより好ましくは式(R
f−III)に従う。
【0053】
化合物(L)の特に好ましい群は、シクロトリホスファゼン中心コアと、上に定義されたような鎖(A−1)及び(B−1)とを含む。この群の化合物は、下式(L−2):
[式中、(G
*)、(E
*)、(G
**)及び(E
**)、x及びyは、上に定義された通りである]
に従う。
【0054】
化合物(L−2)はまた、下式スピロ(L−2)及びアンサ(L−2):
(式中、(G
*)、(E
*)、(G
**)、(G
***)及び(E
**)、(R
f)、x及びyは、上に定義された通りである)
で典型的には表されるスピロ化合物及び/又はアンサ化合物との混ぜ物の状態にあってもよい。
【0055】
好ましい化合物(L−2)並びに対応するスピロ(L−2)及びアンサ(L−2)化合物は、
− (R
f)が、上に定義されたような式(R
f−III)に従い;
− 基(G
*)及び(G
**)が、式(i
*)(式中、XはFであり、nは、0、1及び2から選択され;好ましい実施形態では、nは0である)に従い;
− 基(G
***)が、式(i
***)(式中、XはFであり、nは、0、1及び2から選択され;好ましい実施形態では、nは0である)に従い;
− 基E
*が、上に定義されたような式(viii
*)(式中、XはFであり、nは、0、1及び2から選択され、pは0であり;(Ar
m)は、任意選択的に置換されたフェニル又はピリジル基であり;好ましい実施形態では、nは0である)に従い;
− 基(E
**)が、式(viii
**)(式中、XはFであり、nは、0、1及び2から選択され;好ましい実施形態では、nは0である)に従う
ものである。
【0056】
化合物(L)の製造方法
本発明はさらに、化合物(L)の製造方法を含む。
【0057】
本発明による化合物(L)は、パーハロシクロホスファゼンと、
− 上に定義されたような(パー)フルオロポリエーテル鎖(R
f)[前記鎖は、1つの鎖末端が少なくとも1個のヒドロキシ基と、任意選択的に、1つ又は複数の芳香族又はヘテロ芳香族部分(Ar
m)とを含み、他の鎖末端が1つ又は複数の芳香族又はヘテロ芳香族部分(Ar
m)と、任意選択的に、1個又は複数個のヒドロキシ基とを含む、2つの鎖末端を有する]を含むPFPEアルコール[本明細書では以下、「Ar−PFPE−OH」]
及び、任意選択的に、
− 上に定義されたような(パー)フルオロポリエーテル鎖(R
f)(前記鎖は、各鎖末端が少なくとも1個のヒドロキシ基を含む、2つの鎖末端を有する)を含むPFPEポリオール[本明細書では以下、「PFPE−Pol」]
との反応を含む方法で便利に製造することができる。
【0058】
典型的には、本方法は、パーハロシクロホスファゼンと、Ar−PFPE−OH及びPFPE−Polの両方を含む混合物[本明細書では以下、混合物(M−1)]との反応を含む。
【0059】
本発明の方法を実施するのに好適なパーハロシクロホスファゼンは、下記の式(CP−1):
(式中、Halは、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素から選択されるハロゲンを表し、好ましくは塩素、zは、3以上の、好ましくは3〜7の範囲の整数である)
に従う。好ましくは、パーハロシクロホスファゼンは、下記の式(CP−1A)又は(CP−1B):
(式中、Halは、上に定義された通りである)
のものから選択される。好ましくは、Halは塩素である。
【0060】
本発明の方法において、より多くのパーハロシクロホスファゼンの混合物、特に上に定義されたような(CP−1A)と(CP−1B)との混合物を使用することもまた可能である。しかしながら、たった一つのパーハロシクロホスファゼンを使用することが好ましく;式(CP−1A)のパーハロシクロホスファゼンの使用が特に好ましく;より好ましくは、(CP−1A)は、ヘキサクロロシクロホスファゼンである。
【0061】
パーハロシクロホスファゼン(CP−1A)及び(CP−1B)は、商業的に入手可能であり、例えば、Strem Chemicals,Incから入手することができる。
【0062】
好ましい実施形態によれば、本方法は、以下の工程:
(a)上に定義されたような混合物(M−1)を提供する工程;
(b)混合物(M−1)を、上に定義されたようなパーハロシクロホスファゼン化合物(CP−1)と反応させて混合物(M−2)を提供する工程;
(c)任意選択的に混合物(M−2)を精製経路にかける工程
を含む。
【0063】
典型的には、工程(a)は、PFPE−Polと、置換芳香族又はヘテロ芳香族化合物[化合物(Ar)]との求核試薬反応を含む、すなわち、芳香族又はヘテロ芳香族化合物は、求核置換を受けることができる少なくとも1つの基を有する。
【0064】
好ましいPFPE−Polは、一般式(Pol−I):
Y−O−R
f−Y (Pol−I)
[式中、(R
f)は、上に定義されたようなフルオロポリオキシアルキレン鎖であり、Yは、少なくとも1個のヒドロキシ基を含有する炭化水素基(前記炭化水素基は、部分フッ素化され、かつ1個又は複数個の酸素原子を任意選択的に含有する)を表す]
に従う。
【0065】
(Pol−I)の好ましい例は、互いに等しいか又は異なる、基Yが、基(E
**)について上に示された式(viii
**)〜(xii
**)から選択されるものである。
【0066】
好ましくは、鎖(R
f)は、上の式(R
f−III)に従う。
【0067】
(Pol−I)の好ましい一実施形態[本明細書では以下、(Pol−I
a)]では、鎖(R
f)は、上の式(R
f−III)に従い、両方の基Yは、式(viii
**)(式中、XはFであり、nは、0、1及び2から選択され;好ましくは、nは0である)に従う。(Pol−I
a)は、Solvay Specialty Polymers Italyから商業的に入手可能であるか又はそれらの−OH官能性を適切に増やす、かつ所望の平均分子量近くでそれらの分子量分布を狭くする(すなわち、それらの多分散性指数M
w/M
nを低減する)ためにそのような製品の多数回蒸留及び精製によって得ることができる。
【0068】
(Pol−I)の別の好ましい実施形態[本明細書では以下、(Pol−I
b)]では、鎖(R
f)は、上の式(R
f−III)に従い、1つの基Yは、式(viii
**)(式中、XはFであり、nは0である)に従い、他の1つは、式(xi
**)(式中、XはFであり、n’は1である)に従う。
【0069】
(Pol−I)の別の好ましい実施形態[本明細書では以下、(Pol−I
c)]では、鎖(R
f)は、上の式(R
f−III)に従い、両方の基Yは、式(xi
**)(式中、XはFであり、n’は1である)に従う。
【0070】
ポリオール(Pol−I
c)は、参照により本明細書に援用される、欧州特許出願公開第2197939A号明細書(SOLVAY SOLEXIS S.P.A.)2010年6月23日に開示されているように、(Pol−I
a)と、活性化及び保護形態の式:
のグリセリン(活性化保護グリセリン=「APG」)との反応、引き続く保護基の除去を含む方法によってnが0であるポリオール(Pol−I
a)から製造することができる。欧州特許出願公開第2197939号明細書に開示されている保護基及び活性化基は、本発明の目的にとって好ましい。
【0071】
欧州特許出願公開第2197939号明細書に開示されている手順はまた、PFPEの混合物[nが0である(Pol−I
a)、(Pol−I
b)及び(Pol−I
c)]を便利に製造することを可能にし、混合物はそのようなものとして、本発明による工程(a)に使用することができ、それによって最終的に、異なる種類の鎖(A)及び(B)を持った化合物(L)を提供する。そのような混合物は、nが0である(Pol−I
a)とAPGとの間の反応が、nが0である(Pol−I
a)のヒドロキシ末端基が対応する保護ジオール末端基へ100%転化するまで進行することを可能にしない場合に得ることができる。特に、Solketal[(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−イル)メタノール]のメシル誘導体と、nが0であるPFPE(Pol−I
a)との反応を含む、欧州特許出願公開第2197939号明細書の実施例1の手順に従って、かつ100%よりも低い転化率まで反応を進行させることによって、
− 未反応のnが0である(Pol−I
a)と;
− 式(xi
**)(式中、XはFであり、n’は1である)に従う、基Y中の2個のビシナルヒドロキシ基がイソプロピリデンケタールで保護されている(Pol−I
b)と、
− 両方の基Y中の2個のビシナルヒドロキシ基がイソプロピリデンケタールで保護されている(Pol−I
c)と
を含有する混合物。
【0072】
nが0である(Pol−I
a)と、(Pol−I
b)と(Pol−I
c)との混合物であって、(Pol−I
b)及び(Pol−I
c)が保護されている混合物はそのようなものとして、工程(a)に使用することができ、保護基の除去は、工程(a)の終わりに又は工程(b)の終わりに実施することができる。
【0073】
典型的には、混合物(M−1)の製造に使用するための置換芳香族化合物(Ar)は、6〜10個の炭素原子を有する芳香環(前記環は任意選択的に、1つ又は複数のさらなる芳香環に結合しているか又はそれらと縮合している)を含むものから選択される。好ましい芳香族化合物は、置換されたベンゼン、ナフタレン及びビフェニルである。より好ましくは、置換芳香族化合物は、置換ベンゼンである。
【0074】
典型的には、置換ヘテロ芳香族化合物(Ar)は、N、O、及びSから選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含む5〜10員ヘテロ芳香族環(前記環は任意選択的に、上に定義されたような1つ又は複数の芳香環又はヘテロ芳香環に結合しているか又はそれと縮合している)を含む。本発明の好ましい実施形態によれば、置換ヘテロ芳香族化合物(Ar)は、置換ピリジンである。
【0075】
置換芳香族又はヘテロ芳香族化合物(Ar)はまた、飽和又は部分飽和の5〜6員環(前記環は任意選択的に、N、O及びSから独立して選択される1つ又は複数のヘテロ原子を含む)と任意選択的に縮合していてもよい。
【0076】
「置換芳香族又はヘテロ芳香族」は、化合物(Ar)が求核置換を受けやすい1つの置換基[置換基(S’)]を有することを意味し;典型的には、置換基(S’)は、ハロゲン、好ましくは塩素、又は求核置換を受けることができる少なくとも1つの置換基を有する直鎖又は分岐アルキル鎖、好ましくはC
1〜C
5ハロアルキル、より好ましくはクロロメチルである。
【0077】
化合物(Ar)はまた、部分(Ar
m)に関して上に示されたものから独立して選択される1つ又は複数のさらなる置換基[置換基(S)]で任意選択的に置換されていてもよい。特に、1つ又は複数のそのようなさらなる置換基(S)は、置換基(S’)がハロゲンである場合に存在する。好ましいさらなる置換基(S)は、フッ素、トリフルオロメチル及びニトロである。
【0078】
置換芳香族及びヘテロ芳香族化合物(Ar)の好ましい例は、2−クロロ−2,4−ジニトロベンゼン及び2−クロロ−5(トリフルオロメチル)ピリジンである。
【0079】
混合物(M−1)の製造の目的のためには、PFPE−Polと化合物(Ar)との反応は、炭酸塩、ter−ブチレート又は水酸化物などの、塩基の存在下で実施される。典型的には、1つ又は複数のPFPE−Pol及び化合物(Ar)は、選択された塩基と組み合わせられ、60℃〜90℃の範囲の温度で加熱される。より多くのヒドロキシ基がPFPE−Polの1末端に存在する場合には、そのような基はまた、例えば(Pol−I
a)〜(Pol−I
c)の混合物に関連して上に説明されたように、保護することができる。塩基の存在は、化合物(Ar)と反応して対応するAr−PFPE−OHを提供する求核試薬化学種として働く対応する塩化PFPE−Polを得ることを可能にする。PFPE−Pol、塩基及び化合物(Ar)の量は、Ar−PFPE−OHへの所望の転化百分率に応じてケースバイケースで当業者によって決定されるであろう。任意選択的に保護形態での、PFPE−Polは、通常、遊離ヒドロキシ基の当量が塩基の当量に対して過剰の状態にあるような量で使用され、一方、化合物(Ar)は、典型的には塩基の当量に対して1:1〜2:1の範囲の量で使用される。
【0080】
PFPE−Polと化合物(Ar)との間の反応が完了すると、生じた混合物(M−1)は室温まで冷却され、鉱酸、典型的にはHClで中和され、かつ、相分離後に、残留溶媒は、減圧下の蒸留によって除去される。PFPE−Polが保護形態で使用される場合には、保護基を除去することができる。
【0081】
典型的には、工程(a)において得られる混合物(M−1)は、式:
Y−O−R
f−Z (M−1)
[式中、Yは、上に定義された通りであり、一方、Zは、上に定義されたような基Yであるか、又は1個又は複数個の酸素原子を含む部分フッ素化炭化水素基であり、前記基は、芳香族部分(Ar
m)と、任意選択的に、1個又は複数個のヒドロキシ基とを含む]
に従う化合物を含む。好ましくは、ZがY以外である場合、それは、基(E
*)について上に報告された式(viii
*)〜(xii
*)に従う。
【0082】
好ましい混合物(M−1)は、置換芳香族又はヘテロ芳香族化合物(Ar)との、好ましくは置換ベンゼン又は置換ピリジンとの、(Pol−I
a)の反応によって得られるもの、並びに任意選択的に保護形態での、nが0である(Pol−I
a)と、(Pol−I
b)と(Pol−I
c)との混合物の反応によって得られたものである。
【0083】
混合物(M−1)は、アルコールAr−PFPE−OHの量を増やし、かつPFPE−Polの量を減らす、又は完全に除去するために精製にかけることができるか、又はそのようなものとして工程(b)に、すなわち、パーハロシクロホスファゼンとの反応に使用することができる。この反応は典型的には、混合物(M−1)の製造について上に示されたものから通常選択される、塩基の存在下で実施される。典型的には、混合物(M−1)は、塩基の溶液と接触させられ、水の完全除去まで減圧下に加熱される。通常、温度は70〜80℃の範囲にわたる。通常、混合物(M−1)が、PFPE−Polを依然として含むか、又はPFPE鎖の両末端で遊離ヒドロキシ基を持ったAr−PFPE−OHを含む場合、塩基の量は、PFPE鎖の両末端での塩化ヒドロキシ基の量を最小限にするように選択されるであろう。このようにして、スピロ及びアンサ生成物の形成並びに前記塩化基と2つの異なるパーハロシクロホスファゼンとの反応から生じる副生成物(前記副生成物は、「架橋した」副生成物と本明細書では以下定義されるであろう)の形成をまた減らすことができる。適切な温度は、選択された塩基及び混合物(M−1)に応じて当業者によって選択することができる。生じた混合物は次に、適切な溶媒中のパーハロシクロホスファゼンの溶液と接触させられ、適切な溶媒は典型的には、3M
TM Novec
TM HFEのような、ハイドロフルオロエーテル(HFE)、ハイドロフルオロカーボン(HFC)及びヘキサフルオロキシレンから選択され、好ましい溶媒はヘキサフルオロキシレンである。溶媒の種類及び量は、選択されたパーハロシクロホスファゼンに従って当業者によって選択されるであろう;しかしながら、溶媒の量は典型的には、パーハロシクロホスファゼンの濃度が1〜10w/w%の範囲にわたるように調節される。
【0084】
その後、反応混合物は、P−Hal基の完全な消失、典型的にはP−OCH
2−基へのP−Hal基の転化を
31P−NMRが明らかにするまで典型的には70℃〜90℃の範囲の温度で反応させられる。この転化は、17ppmでのシングレットの出現によって明らかにされる。
【0085】
反応の終わりに、反応混合物は室温まで冷却され、鉱酸、典型的にはHClで中和され、次に、相分離後に、いかなる残留溶媒も、減圧下での蒸留によって除去される。
【0086】
生じた反応生成物は典型的には、上に定義されたような式(L−1)で表される化合物(L)、過剰の未反応混合物(M−1)、スピロ及びアンサ化合物並びに架橋した副生成物を含む。この混合物は本明細書では以下、「混合物(M−2)」と言われる。ヘキサクロロシクロトリホスファゼンのような、ヘキサハロシクロホスファゼンが使用される場合、化合物(L)が上に定義されたような化合物(L−2)であり、かつ任意のスピロ及びアンサ化合物が式スピロ(L−2)及びアンサ(L−2)に従う混合物(M−2)を得ることができる。工程(b)の前に(M−1)が、いかなる未反応PFPE−Polをも完全に除去するように、かつPFPE鎖の両末端に遊離ヒドロキシ基を持ったAr−PFPE−OHが混合物(M−1)中に全く存在しないように精製される場合には、スピロ及びアンサ化合物又は架橋した副生成物は反応生成物中に全く含まれないであろうし、化合物(L)は鎖(A)のみを含むであろう。
【0087】
混合物(M−2)は次に、未反応混合物(M−1)、スピロ及びアンサ化合物並びに架橋した副生成物から化合物(L)を分離するために1つ又は複数の精製工程[工程(c)]にかけることができる。
【0088】
典型的には、混合物(M−2)は、クロマトグラフ技術での精製に、又は超臨界二酸化炭素(scCO
2)での分別にかけられ;この技術によって、未反応混合物(M−1)は低圧で除去され、一方架橋した副生成物は高圧で除去される。中間画分は、化合物(L)並びにスピロ及びアンサ化合物を含む。中間画分のうち、最初に溶離されるものは、より高い量のスピロ及びアンサ化合物を含有し、一方、最後に溶離されるものは、より高い量の化合物(L)を含有する。全ての中間画分を一緒にプールし、そのようなものとして使用することができる;さもなければ、選択された画分を一緒にプールし、化合物(L)からスピロ及びアンサ化合物をさらに分離するためにscCO
2での分別に又はクロマトグラフ技術に再びかけることができる。このプロセスは、意図される使用に応じて化合物(L)の純度を上げるために何回でも好きなだけ繰り返すことができる。
【0089】
化合物(L)を含む組成物及びそれらの使用を含む方法
化合物(L)及びそれらの混合物は、熱支援磁気記録(HAMR)で使用される媒体の摺動部又は可動部などの、MRMの摺動部又は可動部用の潤滑剤として使用することができる。
【0090】
化合物(L)又はそれらの混合物はまた、それらの対応するスピロ及びアンサ化合物との混ぜ物で使用することができる。
【0091】
したがって、本発明のさらなる目的は、MRMの摺動部又は可動部(HAMRについてのものを含む)の潤滑方法であって、前記方法が、任意選択的にそれらの対応するスピロ及びアンサ化合物との混ぜ物で、化合物(L)又はそれらの混合物を前記部に適用する工程を含む方法である。
【0092】
任意選択的にそれらの対応するスピロ及びアンサ化合物との混ぜ物での、化合物(L)又はそれらの混合物はまた、HAMR用のMRMなどの、MRMを潤滑するための組成物に典型的に使用される1つ又は複数の潤滑剤との混ぜ物で使用することができる。そのような潤滑剤の例は、Fomblin(登録商標)Z DOL PFPE、Fomblin(登録商標)Z Tetraol 2000S PFPE、Fomblin(登録商標)Z Tetraol GT PFPEなど。
【0093】
したがって、本発明は、任意選択的に対応するスピロ及びアンサ化合物との混ぜ物での、1つ又は複数の化合物(L)と、1つ又は複数の潤滑剤とを含む潤滑組成物[組成物(C)]に、並びに組成物(C)の製造方法であって、前記方法が、任意選択的に対応するスピロ及びアンサ化合物との混ぜ物での、1つ又は複数の化合物(L)を、1つ又は複数の潤滑剤と混合する工程を含む方法に関する。
【0094】
本発明のさらなる目的は、1つ又は複数の化合物(L)又は組成物(C)が適用されている摺動部又は可動部を含む、HAMR用の媒体などの、MRMである。
【0095】
参照により本明細書に援用される任意の特許、特許出願及び刊行物のいずれかの開示が、用語を不明瞭にし得る程度まで本出願の記載と矛盾する場合、本記載が優先するものとする。
【0096】
本発明は、以下の実験の部に含有される実施例によってより詳細に本明細書で以下に説明される;実施例は、例示的であるに過ぎず、本発明の範囲を限定するものとして決して解釈されるべきではない。
【実施例】
【0097】
原材料
実施例1及び2に使用されるPFPE−Polは、Solvay Specialty Polymers Italyから商業的に入手可能な製品の多数回蒸留及び精製によって得た。
【0098】
2−クロロ−5−(トリフルオロメチル)ピリジン、2−クロロ−2,4−ジニトロベンゼン、カリウムtert−ブトキシド、tert−ブチルアルコール(TBA)、HCl、KOH、イソブチルアルコール、炭酸カリウム、水酸化テトラメチルアンモニム及びアセトニトリルは、Sigma−Aldrich(登録商標)から入手し、受け取ったまま使用した。
【0099】
ヘキサクロシクロトリホスファゼン(HCP)は、Strem Chemicals,Inc.から購入した。
【0100】
1,3−ヘキサフルオロキシレン(HFX)は、Miteni S.p.A.から入手し、受け取ったまま使用した。
【0101】
方法
NMR分光法
31P、
19F、
1H及び
13C NMRスペクトルは、
31Pについては121.40MHz、
19Fについては470.30MHz、
1Hについては499.86MHz及び
13Cについては125.70MHzで動作するAgilent(登録商標)System 500を用いて25℃で記録した。試料は、混合物3:1v/vのCFC113/Methanol−d
4(CD
3OD)99.9原子%Dに約10w/w%で溶解させて取得した。
【0102】
比Rの定義及び測定
Rは、=P−OCH
2−基(Pは、シクロホスファゼン環中のリン原子である)と、遊離末端基の全体量との間の比と定義される。
【0103】
比Rの概算は、=POCH
2−及び遊離末端基について明確なピークを示すフッ素、プロトン及び任意選択的にカーボンスペクトルを用いることによって行った。
【0104】
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)
分子量分布及び多分散指数(M
w/M
n)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定した。GPCシステムは、Waters HPLC 515ポンプ、3つのPL−Gelカラム(1つのMixed−D及び2つのMixed−E)並びにWaters 2414屈折率検出器を備えていた。カラム及び検出器を35℃で温度自動調節した。移動相は、1.0ml/分で流される、1,3−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼンとイソプロパノールとの混合物(80/20容積)であった。試料は、完全な溶解まで(約1時間)室温で攪拌下に移動相に1重量/容積%濃度で溶解させた。分析のために200μlの溶液を注入した。検量線は、NMR分析から既知の範囲461〜6878に入る分子量の8つのFomblin(登録商標)Z DOL PFPEの狭い画分を使用することによって得た。取得及び計算は、Waters Empowerソフトウェアを用いて行った。
【0105】
超臨界CO
2(scCO
2)での分取
scCO
2での分取は、300mlのSFT−150 Supercritical CO
2 Extraction System(SFT−150超臨界CO2抽出システム)を用いて実施した。
【0106】
実施例1
工程(a)−混合物(M−1)の製造[PFPE−Polと2−クロロ−5−(トリフルオロメチル)ピリジンとの反応](ターゲット転化率=10%)
1000.0gの式HO−CH
2CF
2O(CF
2CF
2O)
a1(CF
2O)
a2CF
2CH
2−OHのPFPE−Pol
(MW=925g/モル、a1/a2=0.96、EW=464g/当量;2155ミリ当量)
及び43.0gの式Cl(C
5H
3N)CF
3の2−クロロ−5−(トリフルオロメチル)ピリジン(237ミリ当量)を、機械撹拌機、滴下漏斗、温度計及び冷却器を備えた5リットルの丸底フラスコへ装入した。生じた非均質混合物を乾燥窒素下に置き、攪拌下に60℃で加熱した。別個のフラスコ中で、25.4gのカリウムtert−ブトキシド(95%、215ミリ当量)を260gのtert−ブチルアルコール(TBA)に溶解させ;生じた無色透明の溶液を、両頭針によって滴下漏斗中へ移し、4.5時間65℃で攪拌下にPFPE−Polと2−クロロ−5−(トリフルオロメチル)ピリジンとの混合物にゆっくり添加し;この時間後に、KClの沈澱が観察された。65℃で攪拌下のさらなる60分後に、
19F−NMR分光法によって確認されるように、10%転化率が達成された。冷却後に、混合物を4000gの蒸留水及び20gのHCl 37w/w%水溶液で4回洗浄した。毎回、生じた2相を2、3分間室温で激しく攪拌し、分離後に、有機下層を集めた。溶媒(TBA及び微量の水)を減圧(残留圧力=2Pa)下に70℃での蒸留によって除去してヒドロキシ当量EW=478.5g/当量の、かつ式:
X
*−OCH
2CF
2O(CF
2CF
2O)
a1(CF
2O)
a2CF
2CH
2O−X(式中、X
*=H(モル基準で90%)又はX
*=(C
5H
3N)CF
3(モル基準で10%)
を有する1016gの粗生成物を得た。
【0107】
工程(b)−混合物(M−1)及びヘキサクロロシクロホスファゼンからの混合物(M−2)の製造
1000.0gの工程(a)から得られた混合物(M−1)(EW=478.5g/当量;2090ミリ当量)を、機械撹拌機、滴下漏斗、温度計及び冷却器を備えた5リットルの丸底フラスコへ装入し、次に73gのKOH(554ミリ当量;水中の42.5%溶液)を添加した。混合物を攪拌下に加熱し、70℃に維持し、次に水の完全な除去まで(P=3kPaで約60分)機械式ポンプを用いてフラスコに真空を適用して均質な溶液を得た。別個のフラスコ中で、14.6gのヘキサクロロシクロトリホスファゼン(HCP、252ミリ当量)を500gの1,3−ヘキサフルオロキシレン(HFX)に溶解させ;生じた溶液を、両頭針によって滴下漏斗中へ移し、6.5時間、78℃で攪拌下に、(M−1)及びKOHの溶液にゆっくり添加した。反応混合物を攪拌下に78℃に維持し、
31P−NMR分析によって時々転化率を監視した。60分後に、転化は定量的であり(
31P−NMRスペクトルにおける17ppmでのシングレット)、反応を停止させた。室温まで冷却した後、混合物に510gの蒸留水、45gのHCl 37w/w%水溶液及び34gのイソブチルアルコールを添加した。2つの相を激しく攪拌し、分離後に、有機下層を集めた。この手順を、510gの代わりに425gの蒸留水を使用して、繰り返した。分離後に、溶媒(HFX及びイソブチルアルコール)を減圧(P=2Pa)下に70℃での蒸留によって除去して958gの粗生成物を得、それを、過剰の未反応混合物(M−1)のほとんどを除去するために薄層蒸留にかけた。120℃(P=2Pa)及び140℃(P=0.6Pa)での2つの通過によって、
31P−NMRスペクトルにおけるシグナルの不在によって確認されるように、未反応混合物(M−1)のみの2つの留分(それぞれ、75重量%及び7重量%)が除去され、170gの高沸点の、低揮発度残留物を残し、それを、
19F−NMR、
1H−NMR及び
31P−NMRによってキャラクタリゼーションした。GPCクロマトグラムは、それぞれ1280、4550、7550及び10100ダルトンのピーク分子量を有する4つの主成分を示した。第1成分は、残存未反応混合物(M−1)に相当し、第2成分は、生じた化合物(L−2)並びに対応するスピロ(L−2)及びアンサ(L−2)化合物に帰属され、一方、最後の2つの成分は、架橋した副生成物に帰属される可能性が最も高い。
【0108】
工程(c)−超臨界二酸化炭素(scCO
2)での混合物(M−2)の分取
工程(b)から得られた混合物(M−2)を、300mlのSFT−150 Supercritical CO
2 Extraction Systemへ装入し、100℃で加熱した。段階的な圧力増加(19から50MPaへ)及び4Nl/分のCO
2流量での運転によって、化合物(L−2)並びに対応するスピロ(L−2)及びアンサ(L−2)を単離した。いかなる残存未反応混合物(M−1)も、scCO
2低圧で容易に除去され、一方、架橋した副生成物は、高圧で選択的に集められた。各画分を、
31P−NMR、
19F−NMR、
1H−NMR、
13C−NMR及びGPCによってキャラクタリゼーションした。化合物(L−2)のみ並びに対応するスピロ(L−2)及びアンサ(L−2)を含有する画分を一緒にプールした(34.6重量%)。P−CH
2CF
2O−と、−OCF
2X末端基(
19F−NMR、
1H−NMR及び
13C−NMRによって測定される、X=−CH
2OH、−CH
2O(C
5H
3N)CF
3、−F又は−H)との間の比Rは、41%(L−2)及び59%スピロ(L−2)+アンサ(L−2)のモルパーセント組成に相当する、1.25であることが分かった。−CH
2OHと−CH
2O(C
5H
3N)CF
3末端基との間のモル比は、1分子当たり0.51の−CH
2O(C
5H
3N)CF
3末端基に相当する、8.27であるという結果になった。
【0109】
実施例2
工程(a)−混合物(M−1)の製造[PFPE−Polと2−クロロ−2,4−ジニトロベンゼンとの反応](ターゲット転化率=31%)
600.0gの式:HO−CH
2CF
2O(CF
2CF
2O)
a1(CF
2O)
a2CF
2CH
2−OH
のPFPE−Pol(MW=1027g/モル、a1/a2=0.95、EW=515g/当量;1165.0ミリ当量)、73.4gの式ClC
6H
3(NO
2)
2の2−クロロ−2,4−ジニトロベンゼン(362.4ミリ当量)、112.5gの炭酸カリウム(814ミリモル)、4.98gの水酸化テトラメチルアンモニウム溶液(H
2O中の25重量%、13.7ミリモル)及び300.0gのアセトニトリルを、磁気撹拌機、温度計及び冷却器を備えた2リットルの3口丸底フラスコへ装入した。生じた非均質混合物を乾燥窒素下に置き、攪拌下に70℃で加熱した。70℃の内部温度で攪拌下の7時間の反応後に、転化率は、
19F−NMR分光法によって確認されるように、28.7%であった。反応を停止させ、混合物を室温まで冷却した。混合物を先ず蒸留水(1200g)で、次に1000gの蒸留水及び20gのイソブタノールで3回洗浄した。毎回、生じた2相を2、3分間室温で激しく攪拌し、分離後に、有機下層を集めた。溶媒(イソブタノール、アセトニトリル及び微量の水)を減圧(残留圧力=2Pa)下に60℃での蒸留によって除去してヒドロキシル当量EW=769g/当量の、かつ式:
X
*−OCH
2CF
2O(CF
2CF
2O)
a1(CF
2O)
a2CF
2CH
2O−X
*
(式中、X
*=H(モル基準で71.3%)又はX
*=(C
6H
3)(NO
2)
2(モル基準で28.7%)
を有する649gの粗生成物を得た。
【0110】
工程(b)−混合物(M−1)及びヘキサクロロシクロホスファゼンからの混合物(M−2)の製造
647.7gの工程(a)から得られた混合物(M1)(EW=769g/当量;842ミリ当量)を、磁気撹拌機、滴下漏斗、温度計及び冷却器を備えた2リットルの3口丸底フラスコへ装入し、次に29.4gのKOH(222.7ミリ当量;水中の42.5%溶液)を添加した。混合物を攪拌下に80℃に加熱し、水の完全な除去まで(P=2Paで約40分)機械式ポンプを用いてフラスコに真空を適用しながら、この温度に保って均質な溶液を得た。別個のフラスコ中で、5.9gのヘキサクロロシクロトリホスファゼン(HCP、102ミリ当量)を184gの1,3−ヘキサフルオロキシレン(HFX)に溶解させた。生じた溶液を、両頭針によって滴下漏斗中へ移し、4時間の間に77〜78℃で攪拌下に、(M1)及びKOHの溶液にゆっくり添加した。反応混合物を攪拌下にこの温度に保ち、
31P−NMR分析によって時々転化率を監視した。3時間後に、転化は定量的であり(
31P−NMRスペクトルにおける17ppmでのシングレット)、反応を停止させた。室温で冷却した後、混合物に143gの蒸留水、22gのHCl 37w/w%水溶液及び21gのイソブチルアルコールを添加した。2つの相を激しく攪拌し、分離後に、有機下層を集めた。第2洗浄を500gの蒸留水及び20gのイソブチルアルコールで実施した。相分離後に、溶媒(HFX及びイソブチルアルコール)を減圧(P=2Pa)下に80℃での蒸留によって除去して636gの粗生成物を得、それを薄層蒸留にかけた。160℃(P=0.8Pa)及び190℃(P=0.8Pa)での2つの通過によって、
31P−NMRスペクトルにおけるシグナルの不在によって確認されるように、未反応混合物(M−1)のみの2つの留分が除去され、161gの高沸点の、低揮発度残留物を残し、それを、
19F−NMR、
1H−NMR及び
31P−NMRによってキャラクタリゼーションした。残留物を、GPCによって確認されるように未反応混合物(M−1)を定量的に除去するために250℃及びP=0.8Paでのさらなる蒸留工程にかけた。
【0111】
工程(c)−超臨界二酸化炭素(scCO
2)での混合物(M−2)の分取
工程(b)から得られた混合物(M−2)を、300mlのSFT−150 Supercritical CO
2 Extraction Systemへ装入し、100℃で加熱した。段階的な圧力増加(18から40MPaへ)及び4Nl/分のCO
2流量での運転によって、19の画分を集めた。化合物(L−2)並びに対応するスピロ(L−2)化合物及びアンサ(L−2)化合物を、高圧で選択的に集められる、架橋した副生成物から分離した。各画分を、
31P−NMR、
19F−NMR、
1H−NMR、
13C−NMR及びGPCによってキャラクタリゼーションした。画分10〜12(16.53g)を一緒にプールし、P−OCH
2CF
2O−と−OCF
2X末端基(X=−CH
2OH、−CH
2O(C
6H
3)(NO
2)
2、−F又は−H)との間の比Rを、
19F−NMR及び
1H−NMRによって測定した。Rは、63%の(L−2)及び37%のスピロ(L−2)+アンサ(L−2)のモルパーセント組成に相当する、1.14であることが分かった。−CH
2OHと−CH
2O(C
6H
3)(NO
2)
2末端基との間のモル比は2.95であるという結果になった。