特許第6644782号(P6644782)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ジボダン エス エーの特許一覧

特許6644782アルデヒド部分で置換されたフェニルベースの化合物および香料製造におけるそれらの使用
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6644782
(24)【登録日】2020年1月10日
(45)【発行日】2020年2月12日
(54)【発明の名称】アルデヒド部分で置換されたフェニルベースの化合物および香料製造におけるそれらの使用
(51)【国際特許分類】
   C07C 47/228 20060101AFI20200130BHJP
   C11B 9/00 20060101ALI20200130BHJP
   A61K 8/33 20060101ALI20200130BHJP
   A61Q 13/00 20060101ALI20200130BHJP
   D06M 13/00 20060101ALI20200130BHJP
   D06M 13/13 20060101ALI20200130BHJP
【FI】
   C07C47/228CSP
   C11B9/00 K
   A61K8/33
   A61Q13/00 101
   D06M13/00
   D06M13/13
【請求項の数】6
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2017-525063(P2017-525063)
(86)(22)【出願日】2015年10月9日
(65)【公表番号】特表2018-502057(P2018-502057A)
(43)【公表日】2018年1月25日
(86)【国際出願番号】EP2015073374
(87)【国際公開番号】WO2016074865
(87)【国際公開日】20160519
【審査請求日】2018年10月2日
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2014/090675
(32)【優先日】2014年11月10日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】501105842
【氏名又は名称】ジボダン エス エー
(74)【代理人】
【識別番号】100102842
【弁理士】
【氏名又は名称】葛和 清司
(72)【発明者】
【氏名】バウムガートナー,コリンネ
(72)【発明者】
【氏名】デイビー,ポール ニコラス
(72)【発明者】
【氏名】ツォウ,ユエ
【審査官】 高橋 直子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−330653(JP,A)
【文献】 特表2012−511614(JP,A)
【文献】 特表2004−513217(JP,A)
【文献】 特表平08−502520(JP,A)
【文献】 特表平01−503536(JP,A)
【文献】 REGISTRY(STN)[online],,2005.08.16 [検索日 2019.05.27]CAS登録番号 860390-00-7
【文献】 Yoshii, Fumiko; Hirono, Shuichi,Molecular features determining odor qualities of odoriferous molecules,Nippon Aji to Nioi Gakkaishi ,1998年,5(3),287-290
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 47/228
A61K 8/33
A61Q 13/00
C11B 9/00
D06M 13/00
D06M 13/123
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式2:
【化1】
式中、
H、およびCHRCHRCHO、CR=CRCHOまたはC(CH)CHOであり、ここでR、Rはそれぞれ独立して、Hまたはメチルを表すことができ;あるいは
がH、およびCHRCHRCHO、CR=CRCHOまたはC(CH)CHOであり、ここでR、Rはそれぞれ独立して、Hまたはメチルを表すことができ;
および
、イソブチル、またはイソアミルである;
で表される化合物。
【請求項2】
式2:
【化2】
式中
H、およびはCHRCHRCHO、CR=CRCHOまたはC(CH)CHOであり、ここでR、Rはそれぞれ独立して、Hまたはメチルを表すことができ;あるいは
がH、およびはCHRCHRCHO、CR=CRCHOまたはC(CH)CHOであり、ここでR、Rはそれぞれ独立して、Hまたはメチルを表すことができ;
および
、イソブチル、またはイソアミルである;
で表される化合物を放出するのに適したプロ香料であって、
前記プロ香料が、式2で表される化合物と、2−アミノ安息香酸メチル(アントラニル酸メチル)、2−アミノ−アセトフェノン、オルト、メタまたはパラアミノベンゾエート;第1級または第2級脂肪族アミン、C8〜C30直鎖または分枝アルキルアミンまたはアルキルジアミン;エーテルアミン;エチレン−およびプロピレン−アミン;アミノ酸および誘導体;第1級および第2級ポリエーテルアミン、ポリエチレンイミン、ポリプロピレンイミン、ポリアミドアミン、ポリアミノ酸、ポリビニルアミン、ポリ(エチレングリコール)ビス(アミン)、アミノ置換ポリビニルアルコール;N−(3−アミノプロピル)イミダゾール、ニペコタミド、スカトールおよびインドールからなる群から選択されるアミノ化合物との反応によって得られるアミナルおよび/またはエナミンである、前記プロ香料。
【請求項3】
請求項1に記載の化合物および/または請求項2に記載のプロ香料の、香料成分としての使用。
【請求項4】
請求項1に記載の化合物および/または請求項2に記載のプロ香料を含む、香料組成物。
【請求項5】
少なくとも、請求項1に規定の化合物、請求項2に規定のプロ香料、または請求項に規定の香料組成物、を含む、パーソナルケアまたは家庭用ケア組成物。
【請求項6】
ミュゲの匂い特性を高級香水または消費者製品に付与する方法であって、これらに請求項1に規定の化合物および/または請求項2に規定のプロ香料を添加すること、および高級香水または消費者製品から、アルデヒド官能基を含有する置換基に対して環上のオルト位が非置換の任意のアリール置換アルカナール化合物を、選択的に除去すること、のステップを含み、前記選択的添加または除去が、ラットから単離された肝細胞と共にインキュベートされた場合に、前記化合物が酵素的に媒介されてその安息香酸誘導体に分解する感受性に基づいてなされ、前記化合物は、その安息香酸誘導体に分解しないことに基づき添加に適し、一方前記化合物は、その安息香酸誘導体に分解することに基づき除去される、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、香料成分及びそれを含有する香料調製物に関する。特に本発明は、ミュゲ(リリーオブザバレー)の匂い特性の重要な側面であるグリーンの匂い特性を示す、前記香料成分または香料調製物に関する。さらにより詳細には、本発明は、Lilial(商標)を全く含有しない、または実質的に含有しない前記香料調製物に関する。本発明は、さらに、前記香料成分および香料調製物の製造方法、ならびに前記香料成分および香料調製物の、高級香水または消費者製品、例えばパーソナルケアおよび家庭用ケア製品などにおける使用に関する。本発明はまた、前記香料成分または香料調製物を含有する前記高級香水および消費者製品にも関する。
【背景技術】
【0002】
ミュゲの匂い特性を有する化合物は、需要の高い香料成分である。これらの化合物は、フローラルベースにおいて重要な成分であり、多くの異なるタイプの香りの生成にわたって調和剤として作用することができる。このタイプの化合物は、パーソナルケアおよび消費者ケア製品などの消費者製品、ならびに高級香水において広く使用されて、快適な匂いを生成し、または不快な臭気をマスクする。ミュゲの匂い特性の重要な側面の1つは、グリーンの匂い、特にグリーンアルデヒドまたはグリーンフローラルの匂いである。
【0003】
ミュゲの匂いノートで広く評価されている優れた香料成分は、Lilial(商標)である。Lilial(商標)は、アリール置換アルカナール、より具体的にはアリール置換プロパナールの一例である。具体的には、その化学名は3−(4−tert−ブチルフェニル)−2−メチルプロパナール(CAS 80-54-6)である。この化合物は、高級香水ならびにパーソナルケアおよび家庭ケア製品において、広く使用されている。しかしその使用は、雄ラットおよびイヌの生殖器官に毒性作用を示すという最近の知見を考慮して、規制の精査を受けている。マウス、モルモット、および霊長類の研究では影響が見られなかったが、GHS(Global Harmonized System)分類システムでは、この化合物はCMR2物質に分類されている。CMRカテゴリー2の物質については、使用のために提案される量が、消費者にとって無害であることを確認する必要がある。Lilial(商標)の規制状況を考慮すると、これを他の香料成分で置き換えることが必要である。
【0004】
WO2010105 873は、Lilial(商標)の置き換えの問題に取り組んでいる。提案された解決策は、Lilial(登録商標)と実質的に同様の匂い特性を再現するために、香料パレットに一般的に見出される既知の成分の混合物の使用にある。
同様に、WO2009027957は、香料パレットからの既知の香料成分の組み合わせの調合物中に存在する溶液を提案する。
WO2013045301もまたLilial(商標)の代替溶液を提案し、これは、化合物Lilyflore(商標)および特定のインダニルプロパナール化合物を含む成分の混合物を、他の第2香料成分との組み合わせにおいて、選択することにある。
【0005】
本出願人は、香料組成物および消費者製品において香料成分として使用することができる化合物を見出した。より詳細には、本出願人は、望ましいグリーンの匂い特性、特にグリーンアルデヒドまたはグリーンフローラルの匂い特性を有する化合物を見出した。さらにより詳細には、本出願人は、香料製造者がLilial(登録商標)の匂いに関連すると知覚し認識できる匂い特性を有し、したがってLilial(商標)の代替品として役立ち得る化合物を発見した。さらに、これらの化合物は、Lilial(登録商標)と比較して類似の、またはより改善された香料性能を有し得る。最後に、本出願人は、Lilial(登録商標)に関連する規制上の関心を引き寄せない化合物を見出した。特に出願人は、Lilial(登録商標)に構造的に関連しているが、しかしアルデヒド官能基を有する基に対してアリール環上のオルト位またはメタ位に置換基を含むアリール置換アルカナール香料成分が、興味深い匂い特性を有し、驚くべきことにin vitroデータによって示されるように、Lilial(登録商標)に関連するCMR関連の問題を有しないか、またはそれが顕著に少ないことを見出した。
【発明の概要】
【0006】
本発明の第一の側面において、式1:
【化1】
式中、
はHであるか、またはRおよびRがHである場合、RはCHRCHRCHO、CR=CRCHOまたはC(CH)CHOであり、ここでR、Rはそれぞれ独立して、Hまたはメチルを表すことができ;
はHであるか、またはRおよびRがHである場合、RはCHRCHRCHO、CR=CRCHOまたはC(CH)CHOであり、ここでR、Rはそれぞれ独立して、Hまたはメチルを表すことができ;
はHであるか、またはRおよびRがHである場合、RはCHRCHRCHO、CR=CRCHOまたはC(CH)CHOであり、ここでR、Rはそれぞれ独立して、Hまたはメチルを表すことができ;および
は、メチル、または分枝状もしくは直鎖状、飽和もしくは不飽和、非置換もしくは(任意にシクロプロピル基により)置換された、C〜Cアルキルまたはアルケニル残基、好ましくはイソブチル、イソアミルである;
で表される化合物が提供される。
【0007】
本発明の化合物は、特定の匂いおよび良好な性能特性を有し、該化合物はLilial(登録商標)の匂いの再構成のために使用することができ、したがってLilial(登録商標)の代替物として役立ち得る。
さらに、本発明の化合物は、特に実質的で持続的な匂い特性を生成することができ、特に実質的で持続的なミュゲの匂い特性に寄与することができる。
【0008】
特に好ましいのは、式1:
【化2】
式中、
はHであるか、またはRおよびRがHである場合、RはC(CH)CHOであり;
はHであるか、またはRおよびRがHである場合、RはCHRCHRCHO、CR=CRCHOまたはC(CH)CHOであり、ここでR、Rはそれぞれ独立して、Hまたはメチルを表すことができ;
はHであるか、またはRおよびRがHである場合、RはCHRCHRCHO、CR=CRCHOまたはC(CH)CHOであり、ここでR、Rはそれぞれ独立して、Hまたはメチルを表すことができ;および
は、メチル、または分枝状もしくは直鎖状、飽和もしくは不飽和、非置換もしくは(任意にシクロプロピル基により)置換された、C〜Cアルキルまたはアルケニル残基、好ましくはイソブチル、イソアミルである;
で表される化合物を提供することである。
【0009】
本発明の別の側面において、式2:
【化3】
式中、
はHであるか、またはRがHである場合、RはCHRCHRCHO、CR=CRCHOまたはC(CH)CHOであり、ここでR、Rはそれぞれ独立して、Hまたはメチルを表すことができ;
はHであるか、またはRがHである場合、RはCHRCHRCHO、CR=CRCHOまたはC(CH)CHOであり、ここでR、Rはそれぞれ独立して、Hまたはメチルを表すことができ;および
は、メチル、または分枝状もしくは直鎖状、飽和もしくは不飽和、非置換もしくは(任意にシクロプロピル基により)置換されたC〜Cアルキルまたはアルケニル残基、好ましくはイソブチル、イソアミルである;
で表される化合物が提供される。
【0010】
式2で表される化合物は、特定の匂いおよび良好な性能特性を有し、該化合物はLilial(登録商標)の匂いの再構成のために使用することができ、したがってLilial(登録商標)の代替物として役立ち得る。
さらに、本発明の化合物は、特に実質的で持続的な匂い特性を生成することができ、特に実質的で持続的なミュゲの匂い特性に寄与することができる。
【0011】
本発明のさらなる側面において、式3:
【化4】
式中、
はHであるか、またはRおよびRがHである場合、RはC(CH)CHOであり;
はHであるか、またはRおよびRがHである場合、RはC(CH)CHOであり;
はHであるか、またはRおよびRがHである場合、RはC(CH)CHOであり;
および
は、メチル、または分枝状もしくは直鎖状、飽和もしくは不飽和、非置換もしくは(任意にシクロプロピル基により)置換されたC〜Cアルキルまたはアルケニル残基、好ましくはイソブチル、イソアミルである;
で表される化合物が提供される。
【0012】
式1、2または3のうちの1つによって表される本発明の化合物のいくつかは、特に強い効果の香料成分である。香料成分が示す強い効果は、その匂い値(Odour Value)に関連する。匂い値とは、蒸気圧の、検出閾値濃度に対する比である。
いくつかの化合物は、比較的高い匂い値を有する。例えば、構造が関連する化合物:
【化5】
であって、アルデヒド官能基を有する基に対してアリール環上のオルト位に置換基を有する化合物は、559’071の匂い値を有する。関連する香料成分は、比較しても強い効果はない。例えば、Lilial(登録商標)は匂い値が32’978であるのに対し、シクラメンアルデヒドは21’986の匂い値しか有していない。
【0013】
本発明のいくつかの化合物の比較的高い匂い値は、持続可能性の必要性があり、強い効果の香料成分の供給が香料製造者に望ましい香りアコードをより低濃度の物質で作製することを可能にする点で、重要である。
しかし、より低い匂い値の本発明の化合物も、それらの特定の匂いにより、興味深いかもしれない。
本発明のさらなる側面において、驚くべきことに、式2で表されるいくつかの化合物は、3−(4−イソブチル−2−メチルフェニル)プロパナールの匂いを改変できることが見出された。したがって、3−(4−イソブチル−2−メチルフェニル)プロパナールと、式2で表される化合物の総量が20重量%以下、好ましくは15重量%以下、さらにより好ましくは10重量%との混合物を提供することが好ましい。好ましくは、3−(4−イソブチル−2−メチルフェニル)プロパナールとの混合物中の、式2で表される化合物の量は、5重量%以下、さらに好ましくは3.5重量%以下である。特に好ましくは、式2で表される化合物の総量は、1.5重量%以下である。
【0014】
本発明の特定の側面において、3−(4−イソブチル−2−メチルフェニル)プロパナールと3−(2−イソブチル−4−メチルフェニル)プロパナールの、重量比80:20、より好ましくは85:15、さらにより好ましくは95:5での混合物の使用が好ましい。
さらに、本発明の特定の側面において、3−(4−イソブチル−2−メチルフェニル)プロパナールを、3.5重量%以下、または1.5重量%以下の3−(2−イソブチル−4−メチルフェニル)プロパナールとの混合物中で使用することが好ましい。
【0015】
しかしながら、単独でまたは他の香り成分と混合して使用する場合、式2で表される化合物、特に3−(2−イソブチル−4−メチルフェニル)プロパナールの有効量は、顕著に高くなり得る。
Lilial(商標)を取り巻く規制問題は、これがラットおよびイヌにおいてtert−ブチル安息香酸(t−BBA)に酵素的に分解されて、in vitroでグルコース合成および脂肪酸合成を阻害することが知られている、との事実から生じている(McCune et al、 Arch Biochem Biophys(1982)214(1):124-133)。
tert−ブチル安息香酸は、雄ラットにおいて精巣作用を引き起こすことが知られている(Hunter et al. Food Cosmet. Toxicol. 1965, 3: 289-298; Cagen et al. J. Am. Coll. Toxicol. 1989, 8 (5): 1027-1038)。
【0016】
対照的に、本発明の化合物は、in vitroで対応する安息香酸誘導体への酵素媒介性の分解を受けないか、少なくともそれへの感受性が低い。これは、Lilial(商標)との構造的類似性が近いことを考えると、非常に驚くべき結果であった。
アルデヒド官能基を有する基に対して環上のオルト位またはメタ位が置換された、アリール置換アルカナール香料成分が、対応する安息香酸誘導体に変換されないか、またはより少ない量で変換されるとの、出願人の驚くべき発見は、これまで当分野で認識されていなかった見識を提供し、これは香料製造者に、Lilial(登録商標)に構造的に関連している(したがって、著しい嗅覚特性を有する)にも関わらず規制上の問題を提起しない、一群の化合物の使用を可能にする。
【0017】
ラット肝細胞におけるin vitro代謝を研究するために、Lilial(商標)および本発明の化合物を、懸濁液中のラット肝細胞の存在下でインキュベートすることができる。Lilial(登録商標)および本発明の化合物の濃度の低下、および対応する安息香酸誘導体のいずれかの形成は、GC−MSによって分析することができる。
本発明の別の側面において、上で定義した本発明の化合物が提供され、これは、ラットから単離された肝細胞とのインキュベーションの後に、対応する安息香酸分解産物を実質的に含まない。「実質的に含まない」とは、存在する場合は検出レベルより低いことを意味し、例えば1%未満、より特に1%未満〜0%である。したがって本発明の化合物は、非常に興味深い香り成分である。
【0018】
したがって本発明は、別の側面において、上で定義され化合物の、香料成分としての使用を提供する。
本発明は、別の側面において、上で定義された化合物の単独または混合物での香料組成物における使用であって、アリール置換アルカナール着臭剤の、さらに具体的にはアルデヒド官能基を有する置換基に対してアリール環上のオルト位またはメタ位が非置換のアリール置換アルカナール着臭剤の、特にLilial(登録商標)の、代替物としての、前記使用を提供する。
本発明の別の側面において、グリーンの匂い特性を香料組成物に付与する方法が提供され、前記方法は、上で定義の化合物を前記香料組成物に組み込むステップを含む。
【0019】
本発明のさらに別の側面において、上で定義の化合物を含む、香料組成物が提供される。
本発明のさらに別の側面において、上で定義の化合物を含む、ミュゲの匂い特性のグリーンの側面を有する香料組成物が提供される。
本発明のさらに別の側面において、アルデヒド官能基を有する置換基に対してアリール環上のオルト位またはメタ位が非置換の任意のアリール置換プロパノール着臭剤、特にLilial(登録商標)の量が、減少しているか、または存在しない、上で定義の化合物を含む香料組成物が提供される。
【0020】
本発明による香料組成物は、1種以上の本発明の化合物によって完全に構成することができる。しかし香料組成物はまた、1種以上の本発明の化合物に加えて、1種以上の追加の香料成分を含有してもよい。
本発明の化合物は、香料組成物中に、香料製造者が達成したい特定の嗅覚効果に応じて、任意の量で存在し得る。本発明の特定の態様において、本発明の香料組成物は、上で定義の化合物を、前記組成物の0.1〜100重量%の量で含有することができる。
【0021】
1種以上の追加の香料成分を使用する場合、それらは当分野で知られている香料成分から選択することができる。
好ましくは、香料組成物に使用することができる少なくとも1種の追加の香料成分は、3−(4−イソブチル−2−メチルフェニル)プロパナールのように、ミュゲの匂い特性を有する。
【0022】
特に、本発明による香料組成物中で使用してよい香料成分としては、以下を含む:(E/Z)−9−ヒドロキシ−5,9−ジメチルデカ−4−エナール、6−メトキシ−2,6−ジメチルヘプタン−1−アル(メトキシメロナール)、5,9−ジメチル−4,8−デカジエナール(ゲラルデヒド(geraldehyde))、ベータ−メチル−3−(1−メチルエチル)ベンゼンプロパナール(Florhydral)、オクタヒドロ−8,8−ジメチルナフタレン−2−カルバルデヒド(Cyclomyral)、アルファ−メチル−1,3−ベンゾジオキソール−5−プロピオンアルデヒド(helional)、5−メチル−2−(1−メチルブチル)−5−プロピル−1,3−ジオキサン(Troenan)、3−(o−エチルフェニル)−2,2−ジメチルプロピオンアルデヒド(Floralozone)、ファルネソール、3,7,11−トリメチルドデカ−1,6,10−トリエン−3−オール、任意に異性体混合物として(ネロリドール)、2−メチル−4−フェニルブタン−2−オール(ジメチルフェニルエチルカルビノール)、シス−4−(イソプロピル)シクロヘキサンメタノール(Mayol)、1−(1−ヒドロキシエチル)−4−(1−メチルエチル)シクロヘキサン(任意にジアステレオ異性体の混合物として)(mugetanol)、(4−メチル−3−ペンテニル)シクロヘキセンカルバルデヒド(Citrusal)、シクロヘキシルサリチレート、ヘキシルサリチレート、ベンジルサリチレート、アミルサリチレート、3−(p−(2−メチルプロピル)フェニル)−2−メチルプロピオンアルデヒド(Silvial)、3−p−クメニル−2−メチルプロピオンアルデヒド(シクラメンアルデヒド)、次の混合物:シス−テトラヒドロ−2−イソブチル−4−メチルピラン−4−オール;トランス−テトラヒドロ−2−イソブチル−4−メチルピラン−4−オール;(Florol)、クエン酸トリエチルおよびジプロピレングリコール。
【0023】
前記香料成分はさらに、以下を含んでよい:アミルサリチレート(2050-08-0);Aurantiol(登録商標)(89-43-0);ベンジルサリチレート(118-58-1);シス−3−ヘキセニルサリチレート(65405-77-8);シトロネリルオキシアセトアルデヒド(7492-67-3);Cyclemax(7775-00-0);シクロヘキシルサリチレート(25485-88-5);Cyclomyral(登録商標)(68738-94-3);シトロネロール(106-22-9);ゲラニオール(106-24-1);シクロペントールHc 937165(84560-00-9);Cymal(103-95-7);Dupical(30168-23-1);エチルリナロール(10339-55-6);フローラルスーパー(Floral Super)(71077-31-1);Florhydral(登録商標)(125109-85-5); Florol(登録商標)(63500-71-0);Gyrane(24237-00-1);ヘキシルサリチレート(6259-76-3);Helional(商標)(1205-17-0);ヒドロキシシトロネラール(107-75-5);Linalool(78-70-6);Lyral(登録商標)(31906-04-4);Majantol(登録商標)(103694-68-4);Mayol(登録商標)(13828-37-0);Melafleur(68991-97-9);メロナール(106-72-9);ミュゲタノール(Mugetanol)(63767-86-2);Muguesia(56836-93-2);ミュゲアルコール(13351-61-6);Verdantiol(91-51-0);Peonile(登録商標)(10461-98-0);Phenoxanol(登録商標)(55066-48-3);Rossitol(登録商標)(215231-33-7);Silvial(登録商標)(6658-48-6);Suzural(6658-48-6);Muguol(登録商標)(18479-57-7);テトラヒドロリナロール(78-69-3);Acalea(84697-09-6);ジヒドロイソジャスモン酸(37172-53-5);ヘキシル桂皮アルデヒド(101-86-0);Hedione(登録商標)(24851-98-7);アセトイン(513-86-0);Adoxal(141-13-9);Aldolone(登録商標)(207228-93-1);Ambrocenide(登録商標)(211299-54-6);アンブロキサン(3738-00-9);Azurone(登録商標)(362467-67-2);Bacdanol(登録商標)(28219-61-6);Calone 1951(登録商標)(28940-11-6);Cetalox(登録商標)(3738-00-9);桂皮アルコール(104-54-1);シトラール(5392-40-5);Cyclabute(67634-20-2);Cyclacet(TM)(商標)(5413-60-5);Cyclaprop(商標)(17511-60-3);シクロヘキサデカノリド(109-29-5);シクロヘキサデセノン(3100-36-5);シクロヘプタデカノン(507-72-7);デルタダマスコン(57378-68-4);Ebanol(登録商標)(67801-20-1);Elintaal Forte(40910-49-4);エチルバニリン(121-32-4);
【0024】
エチレンブラシレート(105-95-3);Exaltenone 942008(14595-54-1);Exaltolide Total 935985(106-02-5);Floralozone(67634-14-4);Fructalate(72903-27-6);ガンマデカラクトン(706-14-9);ハバノリド(111879-80-2); Helvetolide(登録商標)(141773-73-1);ヘキサメチルインダノピラン(1222-05-5);Hydroxyambran(登録商標)(118562-73-5);Iso E Super(登録商標)(54464-57-2);イソヘキセニルシクロヘキセニルカルボキシアルデヒド(37677-14-8);ジャスマル(18871-14-2);Javanol(登録商標)(198404-98-7);ラウリンアルデヒド(112-54-9);Mefranal(55066-49-4);Muscenone(63314-79-4);Tonalid(登録商標)(1506-02-1);Nectaryl(登録商標)(95962-14-4);Norlim Banol(70788-30-6);パラヒドロキシフェニルブタノン(5471-51-2 );ピノアセトアルデヒド(33885-51-7);Romandolide(登録商標)(236391-76-7);Sanjinol(28219-61-6);Silvanone(登録商標)Supra(109-29- 5/507-72-7);テルピネオール(8000-41-7);バニリン(121-33-5);およびVelvione(登録商標)(37609-25-9);ここで、括弧内の数字はCAS番号である。
【0025】
香料組成物は、上に挙げた香料成分に限定される必要はない。香料製造において通常使用される他の香料成分を使用することができ、例えば、“Perfume and Flavour Chemicals”, S. Arctander, Allured Publishing Corporation, 1994, IL, USA(これは参照により本明細書に組み込まれる)に記載されている任意の成分を使用することができ、精油、植物抽出物、アブソリュート、レジノイド、天然産物から得た着臭剤などを含む。
【0026】
前記香料組成物に含まれる香料成分は上記されているが、当然のことながら、香料組成物は記載された成分に限定されない。特に、香料混合物は、香料調合物において一般に使用される補助剤を含むことができる。用語「補助剤」は、組成物の嗅覚性能に関連する以外の理由、またはこれと具体的には関連しない理由で、香料組成物に使用され得る成分を指す。例えば補助剤は、1または2種以上の香料成分の加工を助ける働きをする成分であってもよく、あるいは前記の香料成分(複数可)を含有する組成物であってよく、またはそれは、香料成分もしくはこれを含有する組成物の取扱いまたは保管を改善してもよい。それはまた、色または質感を付与するなどの付加的利益を提供する成分であってもよい。それはまた、香料成分もしくはこれを含有する組成物に含有される1種以上の成分に、耐光性または化学安定性を付与する成分であってもよい。香料混合物またはこれを含有する組成物において一般に使用される補助剤の性質および種類の詳細な説明は、網羅的にすることができないが、前記成分は、当業者に周知であることに言及しなければならない。補助剤の例は、溶媒および共溶媒;界面活性剤および乳化剤;粘性およびレオロジー改質剤;増粘およびゲル化剤;保存材料;色素、染料および着色料;増量剤、充填剤および強化剤;熱および光の有害作用に対する安定化剤、嵩高剤、酸味料、緩衝剤および抗酸化剤を含む。
【0027】
さらに、本発明において用いられる任意の1種以上の香料成分または補助剤は、所望の効果を提供することが望まれる場合、送達ビヒクル中に調合され得る。送達ビヒクルは、カプセル化を含むことができる。代替的に、送達ビヒクルは、固体支持体、例えばポリマー支持体の形態であってもよく、その上に1種以上の香料成分または補助剤が、化学的または物理的に結合することができる。さらに、1種以上の香料成分または補助剤は、マトリックス材料中に溶解または分散させることができ、該マトリックス材料は、前記1または2種以上の成分がそこから発する速度を制御するように機能する。さらに代替的態様において、1種以上の成分または補助剤は、シクロデキストリンまたはゼオライトまたは他の無機材料などの多孔質基材上に支持されてもよい。さらなる態様において、1種以上の香料成分はプロ香料の形態で提供されてもよく、これは好適な環境中において、香料成分を制御された様式で放出するよう反応する。
好ましくは、カルボニル官能基を有するさらなる香料成分の場合、対応するプロ香料は、第一および/または第二アミン化合物と香料成分との反応生成物である。
【0028】
特に、香料前駆体としても知られているかかるプロ香料は、適切なアミノ化合物と式1で表される化合物との、反応生成物であることが好ましい:
【化6】
式中、
はHであるか、またはRおよびRがHである場合、RはCHRCHRCHO、CR=CRCHOまたはC(CH)CHOであり、ここでR、Rはそれぞれ独立して、Hまたはメチルを表すことができ;
はHであるか、またはRおよびRがHである場合、RはCHRCHRCHO、CR=CRCHOまたはC(CH)CHOであり、ここでR、Rはそれぞれ独立して、Hまたはメチルを表すことができ;
はHであるか、またはRおよびRがHである場合、RはCHRCHRCHO、CR=CRCHOまたはC(CH)CHOであり、ここでR、Rはそれぞれ独立して、Hまたはメチルを表すことができ;および
は、メチル、または分枝状もしくは直鎖状、飽和もしくは不飽和、非置換もしくは(任意にシクロプロピル基により)置換された、C〜Cアルキルまたはアルケニル残基、好ましくはイソブチル、イソアミルである。
【0029】
かかる反応によって、異なる生成物、例えば対応するイミン、エナミン、ヘミアミナールまたはアミナールを得ることができる。
上記のプロ香料の形成に適したアミノ化合物は、以下からなる群から選択することができる:芳香族アミン、特に2−アミノ安息香酸メチル(アントラニル酸メチル)、2−アミノ−アセトフェノン、オルト、メタまたはパラアミノベンゾエート;第1級または第2級脂肪族アミン、好ましくはC8〜C30直鎖または分枝アルキルアミンまたはアルキルジアミン;エーテルアミン;エチレン−およびプロピレン−アミン;アミノ酸および誘導体;ポリアミン、特に第1級および第2級ポリエーテルアミン、ポリエチレンイミン、ポリプロピレンイミン、ポリアミドアミン、ポリアミノ酸、ポリビニルアミン、ポリ(エチレングリコール)ビス(アミン)、アミノ置換ポリビニルアルコール;N−(3−アミノプロピル)イミダゾール、ニペコタミド、スカトールおよびインドール。
プロ香料は、上記定義の式1で表される化合物を放出するのに適している。
【0030】
好ましい態様において、香料前駆体としても知られているかかるプロ香料は、適切なアミノ化合物と式2で表される化合物との反応生成物である:
【化7】
式中、
はHであるか、またはRがHである場合、RはCHRCHRCHO、CR=CRCHOまたはC(CH)CHOであり、ここでR、Rはそれぞれ独立して、Hまたはメチルを表すことができ;
はHであるか、またはRがHである場合、RはCHRCHRCHO、CR=CRCHOまたはC(CH)CHOであり、ここでR、Rはそれぞれ独立して、Hまたはメチルを表すことができ;および
は、メチル、または分枝状もしくは直鎖状、飽和もしくは不飽和、非置換もしくは(任意にシクロプロピル基により)置換されたC〜Cアルキルまたはアルケニル残基、好ましくはイソブチル、イソアミルである。
【0031】
別の好ましい態様において、かかるプロ香料は、適切なアミノ化合物と式3で表される化合物との反応生成物である:
【化8】
式中、
はHであるか、またはRおよびRがHである場合、RはC(CH)CHOであり;
はHであるか、またはRおよびRがHである場合、RはC(CH)CHOであり;
はHであるか、またはRおよびRがHである場合、RはC(CH)CHOであり;および
は、メチル、または分枝状もしくは直鎖状、飽和もしくは不飽和、非置換もしくは(任意にシクロプロピル基により)置換されたC〜Cアルキルまたはアルケニル残基、好ましくはイソブチル、イソアミルである。
【0032】
代替的に、式1の化合物、特に式2または3の化合物を放出するのに適したプロ香料は、クネーフェナーゲル縮合またはアルドール縮合反応の生成物として、酸化的に開裂可能なプロ香料(例えば、2−アルキル−1−(4−(4−メトキシフェニル)ブタ−3−エン−1−イル)−4−メチルベンゼン誘導体または3−アルキル−1−(4−(4−メトキシフェニル)ブタ−3−エン−1−イル)−5−メチルベンゼン誘導体として)またはアセタールまたはヘミアセタールとして、提供することができる。
上記を考慮すると、香料組成物は、少なくとも部分的に固体形態、ゲル形態、発泡形態および/または液体形態であってもよいことが理解されるであろう。固体形態で存在する場合は、顆粒、粉末または錠剤の形態を取ることができる。
【0033】
本発明は、その別の側面において、パーソナルケアまたは家庭用ケア組成物などの高級香水または消費者製品であって、式1:
【化9】
式中、
はHであるか、またはRおよびRがHである場合、RはCHRCHRCHO、CR=CRCHOまたはC(CH)CHOであり、ここでR、Rはそれぞれ独立して、Hまたはメチルを表すことができ;
はHであるか、またはRがHである場合、RはCHRCHRCHO、CR=CRCHOまたはC(CH)CHOであり、ここでR、Rはそれぞれ独立して、Hまたはメチルを表すことができ;
はHであるか、またはRがHである場合、RはCHRCHRCHO、CR=CRCHOまたはC(CH)CHOであり、ここでR、Rはそれぞれ独立して、Hまたはメチルを表すことができ;および
は、メチル、または分枝状もしくは直鎖状、飽和もしくは不飽和、非置換もしくは(任意にシクロプロピル基により)置換されたC〜Cアルキルまたはアルケニル残基、好ましくはイソブチル、イソアミルである、
で表される化合物によって賦香される、前記高級香水または消費者製品を提供する。
【0034】
特定の態様において、本発明は、パーソナルケアまたは家庭用ケア組成物などの高級香水または消費者製品であって、式2:
【化10】
式中、
はHであるか、またはRがHである場合、RはCHRCHRCHO、CR=CRCHOまたはC(CH)CHOであり、ここでR、Rはそれぞれ独立して、Hまたはメチルを表すことができ;
はHであるか、またはRがHである場合、RはCHRCHRCHO、CR=CRCHOまたはC(CH)CHOであり、ここでR、Rはそれぞれ独立して、Hまたはメチルを表すことができ;および
は、メチル、または分枝状もしくは直鎖状、飽和もしくは不飽和、非置換もしくは(任意にシクロプロピル基により)置換されたC〜Cアルキルまたはアルケニル残基、好ましくはイソブチル、イソアミルである、
で表される化合物によって賦香される、前記高級香水または消費者製品を提供する。
【0035】
別の特定の態様において、本発明は、パーソナルケアまたは家庭用ケア組成物などの高級香水または消費者製品であって、式3:
【化11】
式中、
はHであるか、またはRおよびRがHである場合、RはC(CH)CHOであり;
はHであるか、またはRおよびRがHである場合、RはC(CH)CHOであり;
はHであるか、またはRおよびRがHである場合、RはC(CH)CHOであり;および
は、メチル、または分枝状もしくは直鎖状、飽和もしくは不飽和、非置換もしくは(任意にシクロプロピル基により)置換されたC〜Cアルキルまたはアルケニル残基、好ましくはイソブチル、イソアミルである、
で表される化合物によって賦香される、前記高級香水または消費者製品を提供する。
【0036】
本発明のさらに特定の態様において、パーソナルケアまたは家庭用ケア組成物などの高級香水または消費者製品であって、3−(3−イソブチル−5−メチルフェニル)プロパナール、3−(2−イソブチル−4−メチルフェニル)プロパナール、(E)−3−(2−イソブチル−4−メチルフェニル)アクリルアルデヒド、および2−(2−イソブチル−4−メチルフェニル)−プロパナールから選択される1種以上の組成物によって賦香される、前記高級香水または消費者製品が提供される。
上記定義の化合物は、パーソナルケアまたは家庭用ケア組成物などの高級香水または消費者製品に添加されると、前記組成物に対して、特徴的な匂い、好ましくはグリーンの匂いを付与する。本発明の別の側面によれば、特定の匂い特性、好ましくはグリーンの匂い特性を、パーソナルケアまたは家庭用ケア組成物などの高級香水または消費者製品に付与する方法が提供され、該方法は、この組成物に、上記定義の化合物、または該化合物を含有する香料組成物を添加するステップを含む。
【0037】
本発明のさらに別の側面において、特定の匂い特性、特にグリーンの匂い特性を、パーソナルケアまたは家庭用ケア組成物などの高級香水または消費者製品に付与する方法が提供され、該方法は、前記高級香水または消費者製品に、上記定義のアリール置換アルカナール化合物を選択的に添加すること、および、前記高級香水または消費者製品から、アルデヒド官能基を含有する置換基に対して環上のオルト位またはメタ位が非置換のアリール置換アルカナール化合物を、選択的に除去すること、のステップを含む。
【0038】
本発明のさらに別の側面において、グリーンの匂い特性を、パーソナルケアまたは家庭用ケア組成物などの高級香水または消費者製品に付与する方法が提供され、該方法は、これに上記定義のアリール置換アルカナール化合物を添加すること、および、前記高級香水または消費者製品から、アルデヒド官能基を含有する置換基に対して環上のオルト位またはメタ位が非置換のアリール置換アルカナール化合物を選択的に除去すること、のステップを含み、前記選択的添加または除去は、ラットから単離された肝細胞と共にインキュベートされた場合に、前記化合物が酵素的に媒介されてその安息香酸誘導体に分解する感受性に基づいてなされ、前記化合物は、試験条件化で安息香酸誘導体に分解しないことに基づき添加に適し、一方前記化合物は、試験条件化で安息香酸誘導体に分解することに基づき除去される。
【0039】
本発明のさらに別の側面において、アルデヒド官能基を有する置換基に対してアリール環上のオルトまたはメタに置換基を有する、アリール置換アルカナール化合物を含む香料組成物を、適切な容器中に、いかなるCMR2分類も含有しないとのラベルと共に、提供する。
【0040】
パーソナルおよび家庭用ケア組成物などの消費者製品としては、限定はされないが、テキスタイル処理製品、アイロン補助品、ふきん、洗濯洗剤、洗浄製品、特に硬いおよび/または柔らかい表面用のもの、家庭用洗剤、ケア製品、洗浄ケア製品、洗濯ケア製品、ルームフレグランス、およびエアフレッシュナー、コンディショナー、着色剤、衣類用コンディショナー、コンディショニング基剤、薬剤、作物保護製品、艶出し剤、食品、化粧品、肥料、建築材料、接着剤、漂白剤、脱灰剤、自動車ケア製品、床ケア製品、調理器具ケア製品、革ケア製品または家具ケア製品、研磨剤、殺菌剤、芳香剤、かび取り剤、および/または前述の製品の前駆体が含まれる。
【0041】
当業者は、香料成分および組成物の、高級香水用途ならびにすべての様式の消費者製品用途への、例えばパーソナルケアおよび家庭用ケア組成物への適用性を十分に認識しており、かかる組成物の非常に詳細な説明は、ここでは必要とされない。しかしながら、言及される具体的組成物としては、洗浄組成物;自動車ケア組成物;化粧品組成物;テキスタイル処理組成物;およびエアフレッシュナーおよび空気ケア組成物が含まれる。
洗浄製品は以下を含む:
便器洗浄剤または化粧室洗浄剤、すなわち水洗便器および男性用小便器を洗浄するための製品であり、これらの製品は好ましくは、粉末、ブロック、錠剤または液体、好ましくはゲルの形態で供給される。界面活性剤などの他の典型的な成分に加えて、これらは一般に、有機酸(例えば、クエン酸および/または乳酸)または、水あかもしくは尿のスケール(urine scale)を除去するための硫酸水素ナトリウム、アミド硫酸またはリン酸を含む;
【0042】
パイプ洗浄製品または排水管洗浄剤。これらは、典型的には強アルカリ性の製品であって、例えば毛髪、脂肪、食物残渣、石鹸堆積物などの有機材料を含むパイプの詰まりを除去するのに、一般に役立つものである。Al粉末またはZn粉末の添加は、泡立ち効果を有するH2ガスを形成するために役立ち得る。可能性のある成分は、一般的にアルカリ、アルカリ塩、酸化剤、および中性塩である。粉末形態の供給形態は、好ましくは、硝酸ナトリウムおよび塩化ナトリウムなどを含む。液体形態のパイプ洗浄製品は好ましくは、次亜塩素酸塩も含んでよい。また、酵素ベースの排水管洗浄剤もある。酸性の製品も同様に可能である;
【0043】
万能または多目的または汎用洗浄剤。これらは、濡れまたは湿りをしっかり拭くことができる、家庭用および商業用のあらゆる硬表面に広く使用される洗浄剤である。一般的に言えば、これらは、中性またはわずかにアルカリ性またはわずかに酸性の製品で、特に液体製品である。多目的または汎用洗浄剤は、一般に、界面活性剤、ビルダー、溶媒およびヒドロトロープ、染料、保存剤等を含む;
特別な消毒剤特性を有する多目的洗浄剤。これらはさらに、活性な抗菌成分(例えば、アルデヒド、アルコール、第四級アンモニウム化合物、両性界面活性剤、トリクロサン)を含む;
【0044】
衛生洗浄剤。これらは、浴室および便器を洗浄するための製品である。アルカリ性衛生洗浄剤は、脂肪汚れを除去するために好適に用いられ、一方酸性衛生洗浄剤は特に、水あかを除去するために使用される。衛生洗浄剤は、有利には、かなりの消毒作用も有し、特に塩素を含む強アルカリ性衛生洗浄剤はそうである;
【0045】
ゲルまたは泡スプレーの形態で供給することができるオーブン洗浄剤またはグリル洗浄剤。これらは一般に、焦げたかまたは炭化した食品残渣を除去するのに役立つ。オーブン洗浄剤は、好ましくは、例えば水酸化ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、2−アミノエタノールを使用した強アルカリ性製剤として与えられる。さらに、これらは一般に、アニオン性および/または非イオン性界面活性剤、水溶性溶剤を含有し、場合によっては、ポリカルボキシレートおよびカルボキシメチルセルロースなどの増粘剤を含有する;
【0046】
金属艶出し剤。これらは、ステンレス鋼または銀などの特定種類の金属の洗浄剤である。ステンレス鋼洗浄剤は好ましくは、酸(好ましくは3重量%まで、例えばクエン酸、乳酸)、界面活性剤(特に5重量%まで、好ましくは非イオン性および/またはアニオン性界面活性剤)、および水の他に、脂肪汚れを除去するための溶媒(好ましくは15重量%まで)および、さらに増粘剤および保存剤などの更なる化合物を含む。非常に微細な研磨構造が、好ましくはステンレス鋼の輝く表面用の製品にさらに含まれる。
【0047】
銀艶出し剤も同様に、酸性の製剤で提供することができる。特に、それらに含まれる硫化銀の黒色付着物を除去するために、それらは好ましくは、錯化剤(例えば、チオ尿素、チオ硫酸ナトリウム)を含む。典型的な供給形態は、艶出し布、浸漬浴、ペースト、および液体である。暗変色(酸化物層)は、銅洗浄剤および非鉄金属洗浄剤(例えば、真鍮および青銅用)を使用して除去する。これらは一般に、弱アルカリ性の調合物を有し(好ましくはアンモニアを含む)、一般的に、艶出し剤と、また好ましくはアンモニウム石鹸および/または錯化剤を含む;
【0048】
ガラス洗浄剤および窓用洗浄剤。これらの製品は好ましくは、ガラス表面から汚れを、特に油脂性の汚れを除去するのに役立つ。好ましくはこれらは以下を含む:化合物、例えばアニオン性および/または非イオン性界面活性剤(特に、5重量%まで)、アンモニアおよび/またはエタノールアミン(特に、1重量%まで)、エタノールおよび/または2−プロパノール、グリコールエーテル(特に、10〜30重量%)、水、保存剤、色素、抗ミスト剤など;および
特殊目的のための洗浄製品、例えばガラスセラミック製のホブ用のもの、およびカーペット洗浄剤およびシミ抜き剤。
【0049】
自動車ケア製品は以下を含む:
塗料保存剤、塗料艶出し剤、塗料洗浄剤、洗浄保存剤、洗車用シャンプー、自動車洗浄およびワックス製品、トリム金属用艶出し剤、トリム金属用保護フィルム、プラスチック洗浄剤、タール除去剤、スクリーン洗浄剤、エンジン洗浄剤など。
【0050】
化粧品は以下を含む:
(a)化粧用スキンケア製品、特に風呂用製品、肌洗浄およびクレンジング製品、スキンケア製品、アイメイク、リップケア製品、ネイルケア製品、デリケートゾーンケア製品、フットケア製品;
(b)特定の効果を有する化粧品、特に日焼け止め剤、日焼け製品、脱色素製品、デオドラント、制汗剤、脱毛剤、シェービング製品、香水;
(c)化粧用デンタルケア製品、特にデンタルおよびオーラルケア製品、トゥースケア製品、義歯用洗浄剤、義歯用接着剤;および
(d)化粧用ヘアケア製品、特にヘアシャンプー、ヘアケア製品、ヘアセッティング製品、整髪製品およびヘアカラー製品。
【0051】
テキスタイル処理製品は以下を含む:
例えば液体または固体形態いずれかの、洗剤および繊維用仕上げ剤。
エアフレッシュナーおよびルームフレグランスは以下を含む:
好ましくは揮発性で通常心地よい香りの化合物を含有し、有利には非常に少量であっても、不快な臭いをマスクすることができる製品。居住エリアのエアフレッシュナーは、特に、天然および合成の精油、例えば松葉油、柑橘油、ユーカリ油、ラベンダー油などを、例えば50重量%までの量で含む。エアロゾルとしてはそれらは、かかる精油より少量の、一例として5重量%未満または2重量%未満を含有する傾向があるが、さらに、例えばアセトアルデヒド(特に、<0.5重量%)、イソプロピルアルコール(特に、<5重量%)、鉱油(特に、<5重量%)、および噴射剤などの化合物も含む。その他の提供形態としては、スティックおよびブロックを含む。それらは典型的には、精油を含むゲル濃縮物を用いて生産される。ホルムアルデヒド(保存用)およびクロロフィル(好ましくは<5重量%)、およびさらなる成分を添加することも可能である。エアフレッシュナーはしかし、居住空間に限定されず、自動車、食器棚、食器洗浄機、冷蔵庫や靴用に意図されてもよく、掃除機での使用も可能である。家庭においては(例えば食器棚において)、例えば、臭気改良剤に加えて殺菌剤も使用され、これらは、好ましくはリン酸カルシウム、タルク、ステアリン、および精油などの化合物を含み、これらの製品は例えば小袋の形態をとる。
【0052】
本明細書上記で言及した消費者製品組成物、特に洗濯または洗浄用途で使用されるものは、1または2種以上の以下の物質を含んでいてもよい:
ビルダー物質、界面活性剤、酵素、漂白剤、例えば好ましくは有機および/または無機の過酸素化合物、過酸素活性剤、水混和性有機溶媒、金属イオン封鎖剤、電解質、pH調整剤、増粘剤、およびさらなる補助剤、例えば防汚活性物質、光学的増白剤、灰色化阻害剤、色移り防止剤、発泡調節剤、および染料。
【0053】
界面活性剤には、アニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、およびそれらの混合物が挙げられるが、カチオン性界面活性剤も適切である。適切な非イオン性界面活性剤は、特に、それぞれが12〜18個の炭素原子をアルキル部分に有し、および3〜20個、好ましくは4〜10個のアルキルエーテル基を有する、アルキルグリコシドおよび/または直鎖状もしくは分枝状アルコールのエトキシル化および/またはプロポキシル化生成物である。さらに使用可能であるのは、N−アルキルアミン、ビシナルジオール、アルキル部分に関して上記長鎖アルコール誘導体に対応する脂肪酸エステルおよび脂肪酸アミド、および5〜12個の炭素原子をアルキル残基中に有するアルキルフェノールの、対応するエトキシル化および/またはプロポキシル化生成物である。
【0054】
好適なアニオン性界面活性剤としては、石鹸、および、好ましくはアルカリイオンをカチオンとして有するスルフェートまたはスルホナート基を含有するものが含まれる。石鹸としては、12〜18個の炭素原子を有する飽和または不飽和脂肪酸のアルカリ塩が挙げられる。かかる脂肪酸はまた、不完全中和された形態で使用することができる。スルフェート型の使用可能な界面活性剤に含まれるのは、12〜18個の炭素原子を有する脂肪アルコールの硫酸半エステルの塩、およびエトキシル化度の低い前記の非イオン性界面活性剤の硫酸化生成物である。スルホナート型の使用可能な界面活性剤に含まれるのは、9〜14個の炭素原子をアルキル部分に有する、直鎖状アルキルベンゼンスルホナート、12〜18個の炭素原子を有するアルカンスルホナート、および対応するモノオレフィンの三酸化硫黄との反応の際に生成される、12〜18個の炭素原子を有するオレフィンスルホナート、ならびに脂肪酸メチルまたはエチルエステルのスルホン化の際に生成される、アルファ−スルホ脂肪酸エステルである。
【0055】
カチオン性界面活性剤としては、エステルクォート(esterquat)、および/または第四級アンモニウム化合物(QAC)が挙げられる。QACは、第三級アミンの、例えば塩化メチル、塩化ベンジル、硫酸ジメチル、臭化ドデシル等のアルキル化剤との、また酸化エチレンとの反応によって製造することができる。長鎖アルキル残基および2個のメチル基を有する第三級アミンのアルキル化は、特に容易に起こり、2個の長い残基および1個のメチル基を有する第三級アミンの四級化もまた、温和な条件下で塩化メチルを用いて行うことができる。3個の長鎖アルキル残基またはヒドロキシ置換されたアルキル残基を有するアミンは、低い反応性を有し、例えば硫酸ジメチルを用いて四級化される。好適なQACは、例えば以下である:塩化ベンザルコニウム(N−アルキル−N,N−ジメチルベンジルアンモニウムクロリド)、ベンザルコンB(m,p−ジクロロベンジルジメチル−C12−アルキルアンモニウムクロリド)、ベンズオキソニウムクロリド(ベンジルドデシル−ビス(2−ヒドロキシエチル)アンモニウムクロリド)、臭化セトリモニウム(N−ヘキサデシル−N,N−トリメチルアンモニウムブロミド)、塩化ベンゼトニウム(N,N−ジメチル−N−[2−[2−[p−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノキシ]エトキシ]エチル]ベンジルアンモニウムクロリド)、ジアルキルジメチルアンモニウムクロリド、例えばジ−n−デシルジメチルアンモニウムクロリド、ジデシルジメチルアンモニウムブロミド、ジオクチルジメチルアンモニウムクロリド、1−セチルピリジニウムクロリド、およびヨウ化チアゾリン、ならびにそれらの混合物。好ましいQACは、C〜C22アルキル残基を有する塩化ベンザルコニウム、特にC12〜C14アルキルベンジルジメチルアンモニムクロリドである。
【0056】
エステルクォートとしては、Stepan companyにより商標Stepantexのもとで市販されている、メチルヒドロキシアルキルジアルキルオキシアルキルアンモニウムメトスルフェート、またはCognis Deutschland GmbHの製品で商品名Dehyquat(商標)として知られているもの、またはGoldschmidt-Witcoの製品Rewoquat(商標)が挙げられる。
【0057】
界面活性剤は、本発明の消費者製品中に5〜50重量%の量で使用することができる。
【0058】
ビルダーとしては、水溶性および/または水不溶性、有機および/または無機ビルダーを含む。特にそれらは、水溶性有機ビルダー物質を含み、これらはポリカルボン酸、より具体的にはクエン酸および糖酸、モノマーおよびポリマーアミノポリカルボン酸、特にメチルグリシン二酢酸、ニトリロ三酢酸、およびエチレンジアミン四酢酸、ならびにポリアスパラギン酸、ポリホスホン酸類、特にアミノトリス(メチレンホスホン酸)、エチレンジアミンテトラキス(メチレンホスホン酸)、および1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸、デキストリンなどのポリマーヒドロキシ化合物、ならびにポリマー(ポリ)カルボン酸、ポリマーアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、およびそれらの混合ポリマーであり、これらはまた、少量のカルボン酸官能基を持たない重合性物質を含むこともできる。
【0059】
それぞれの場合に遊離酸に基づき、不飽和カルボン酸のホモポリマーの相対分子量は、一般に5000〜200,000の間であり、コポリマーの相対分子量は、2000〜200,000の間である。このクラスの好適な化合物は、アクリル酸またはメタクリル酸と、例えばビニルメチルエーテル、ビニルエステル、エチレン、プロピレン、およびスチレンなどのビニルエーテルとのコポリマーであり、ここで酸の割合は、少なくとも50重量%に等しい。水溶性有機ビルダー物質として、2つの不飽和酸および/またはその塩をモノマーとして、および第3のモノマーとしてビニルアルコールおよび/またはビニルアルコール誘導体または炭水化物を含む、ターポリマーを、使用することもできる。第1の酸モノマーまたはその塩は、エチレン性モノ不飽和C〜Cカルボン酸から誘導されてよい。第2の酸モノマーまたはその塩は、C〜Cジカルボン酸の誘導体、例えばマレイン酸であってよい。
【0060】
第3モノマー単位は、ビニルアルコールおよび/またはエステル化されたビニルアルコールで構成されている。ポリマーは、60重量%〜95重量%、特に70重量%〜90重量%の(メタ)アクリル酸または(メタ)アクリレート、ならびに5重量%〜40重量%のビニルアルコールおよび/または酢酸ビニルを含有してよい。特定のポリマーは、マレイン酸またはマレイン酸塩に対する(メタ)アクリル酸および(メタ)アクリレートのそれぞれの重量比が、1:1から4:1の間であるものである。量および重量比両方は、酸に基づく。第2の酸モノマーまたはその塩はまた、2位において、例えばC〜Cアルキルラジカルなどのアルキルラジカルにより置換された、またはベンゼンもしくはベンゼン誘導体から誘導することができる芳香族ラジカルで置換された、アリルスルホン酸の誘導体であることもできる。ターポリマーは、40重量%〜60重量%、特に45重量%〜55重量%の(メタ)アクリル酸または(メタ)アクリレート、特に好ましくはアクリル酸またはアクリレート、および10重量%〜30重量%、好ましくは15重量%〜25重量%のメタアリルスルホン酸またはメタアリルスルホナート、および第3のモノマーとして15重量%〜40重量%、好ましくは20重量%〜40重量%の炭水化物を含むことができる。
【0061】
この炭水化物は、例えば、モノ−、ジ−、オリゴ−またはポリ−サッカライド、例えばショ糖であることができる。ターポリマーは一般に、1000〜200,000の相対分子量を有する。さらに、コポリマーは、モノマーとしてアクロレインおよびアクリル酸/アクリル酸塩、または酢酸ビニルを含むものが挙げられる。特に、液体洗剤の製造のために、有機ビルダー物質を、水溶液の形態で、例えば30〜50重量%の水溶液で使用することができる。すべての上記の酸は、それらの水溶性塩の形態で、特にそれらのアルカリ塩の形態で、使用してよい。
【0062】
有機ビルダー物質は、40重量%までの量で使用することができる。
水溶性無機ビルダー材料は、アルカリケイ酸塩およびポリリン酸塩、例えば三リン酸ナトリウムを含む。結晶性または非晶質アルカリアルミノシリケート、例えば結晶性アルミノケイ酸ナトリウムもまた、水不溶性、水分散性無機ビルダー材料として、例えば50重量%までの量で、用いることができる。アルミノシリケートは典型的には、30μm未満の粒径を有する粒子を含む。
【0063】
結晶質アルカリケイ酸塩もまた、単独で、または非晶質ケイ酸塩と共に、使用することができる。本発明の消費者製品中で洗剤ビルダーとして使用可能なアルカリケイ酸塩は、アルカリ酸化物のSiOに対するモル比として、0.95未満、特に1:1.1〜1:12を有することができ、非晶質または結晶質の様式で存在することができる。アルカリケイ酸塩は、ケイ酸ナトリウム、特に非晶質ケイ酸ナトリウムであってよく、NaO:SiOのモル比として1:2〜1:2.8を有する。
ビルダー物質は、本発明の消費者製品組成物に、60重量%までのレベルで含有させてもよい。
【0064】
過酸素化合物としては、フタルイミド過カプロン酸(phthalimidopercapronic acid)、過安息香酸などの有機過酸または有機酸の過酸塩、ジ過ドデカン二酸(diperdodecanedioic acid)の塩、過酸化水素、適用条件下で過酸化水素を放出する無機の塩、例えば過ホウ酸塩、過炭酸塩および/または過ケイ酸塩などが挙げられる。固体過酸素化合物を使用する場合、それらは粉末または顆粒の形態で使用することができ、原理的に既知の方法において閉じ込めることができる。
【0065】
過酸素化合物は、50重量%までの量で使用してよい。少量の知られている漂白剤安定化剤、例えばホスホネート、ホウ酸塩、メタホウ酸塩およびメタケイ酸塩、ならびに硫酸マグネシウムなどのマグネシウム塩の添加も、有用であり得る。
【0066】
過加水分解条件下で、好ましくは1〜10個の炭素原子、特に2〜4個の炭素原子、および/または(必要に応じて置換された)過安息香酸を有する脂肪族ペルオキソカルボン酸を生成する化合物は、漂白活性化剤として使用することができる。前記の数の炭素原子および/または任意に置換されたベンゾイル基を有するN−および/またはN−アシル基を有する物質が適している。複数アシル化アルキレンジアミン、特にテトラアセチルエチレンジアミン(TAED)、アシル化トリアジン誘導体、特に1,5−ジアセチル−2,4−ジオキソヘキサヒドロ−1,3,5−トリアジン(DADHT)、アシル化グリコルリル、特にテトラアセチルグリコルリル(TAGU)、N−アシルイミド、特にN−ノナノイルスクシンイミド(NOSI)、アシル化フェノールスルホナート、特にn−ノナノイルまたはイソノナノイルオキシベンゼンスルホナート(n−またはイソ−NOBS)、カルボン酸無水物、特にフタル酸無水物、アシル化多価アルコール、特にトリアセチン、エチレングリコールジアセテート、2,5−ジアセトキシ−2,5−ジヒドロフラン、およびエノールエステル、ならびにアセチル化ソルビトールおよびマンニトール、それらのそれぞれの混合物(SORMAN)、アシル化糖誘導体、特にペンタアセチルグルコース(PAG)、ペンタアセチルフルクトース、テトラアセチルキシロースおよびオクタアセチルラクトース、ならびにアセチル化、任意にN−アルキル化グルタミンおよびグルコノラクトン、および/またはN−アシル化ラクタム、例えばN−ベンゾイルカプロラクタムを、使用することができる。親水性置換酢酸アシルおよびアシルラクタムも、同様に用いることができる。従来の漂白活性化剤の組み合わせも使用することができる。かかる漂白活性化剤は通常の量の範囲で含有させることができ、好みによって、剤全体に基づき1重量%〜10重量%、特に2重量%〜8重量%の量である。
【0067】
前述の従来の漂白活性化剤に加えて、またはその代わりに、スルホンイミンおよび/または漂白増強遷移金属塩または遷移金属錯体も、漂白触媒として含有させることができる。適切な遷移金属化合物としては、特に、マンガン、鉄、コバルト、ルテニウム、またはモリブデンのサレン錯体、およびそれらの窒素類似体化合物、マンガン、鉄、コバルト、ルテニウム、またはモリブデンのカルボニル錯体、窒素含有三脚リガンドを有するマンガン、鉄、コバルト、ルテニウム、モリブデン、チタン、バナジウム、および銅の錯体、コバルト、鉄、銅、およびルテニウムのアミン錯体が挙げられる。漂白活性化剤と遷移金属漂白触媒の組み合わせも、同様に使用することができる。漂白増強遷移金属錯体、特に中心原子であるMn、Fe、Co、Cu、Mo、V、Ti、および/またはRuを有するものは、従来の量で、例えば消費者製品組成物の重量に基づき1重量%までの量で、使用することができる。
【0068】
組成物に用いることができる好適な酵素は、プロテアーゼ、クチナーゼ、アミラーゼ、プルラナーゼ、ヘミセルラーゼ、セルラーゼ、リパーゼ、オキシダーゼ、およびペルオキシダーゼのクラスからのもの、ならびにそれらの混合物である。真菌または細菌、例えばBacillus subtilis、Bacillus licheniformis、Streptomyces griseus、Humicola lanuginosa、Humicola insolens、Pseudomonas pseudoalcaligenes、またはPseudomonas cepaciaから回収した酵素的に活性な物質も、好適である。適用可能として使用される酵素は、担体物質に吸着させ、および/または包み込み物質内に包埋して、早発の不活性化から保護することができる。これらは、本発明による洗浄製品に、典型的には5重量%未満の量で含まれていてもよい。
【0069】
光学的増白剤には、ジアミノスチルベンジスルホン酸の誘導体またはそのアルカリ金属塩が挙げられる。適当であるのは、例えば、4,4’−ビス(2−アニリノ−4−モルホリノ−1,3,5−トリアジニル−6−アミノ)スチルベン−2,2’−ジスルホン酸、または、モルホリノ基の代わりにジエタノールアミノ基、メチルアミノ基、アニリノ基、もしくは2−メトキシエチル基を有する、類似の構造の化合物である。置換ジフェニルスチリル型の増白剤も存在することができ、例えば4,4’−ビス(2−スルホスチリル)ジフェニルのアルカリ塩、4,4’−ビス(4−クロロ−3−スルホスチリル)ジフェニルのアルカリ塩、または4−(4−クロロスチリル)−4’−(2−スルホスチリル)ジフェニルのアルカリ塩である。上記の光学的増白剤の混合物も使用することができる。
【0070】
発泡防止剤は、オルガノポリシロキサン、およびそれらの極微小の任意にシラン化されたケイ酸との混合物、ならびにパラフィンワックスおよびそれらのシラン化ケイ酸またはビス−脂肪酸アルキレンジアミドとの混合物が挙げられる。異なる発泡防止剤の混合物、例えば、シリコーン、パラフィン、またはワックスから作られたものも、使用することができる。発泡防止剤、特にシリコーンおよび/またはパラフィンを含有する発泡防止剤は、優先的に、水に溶解性または分散性の粒状担体物質に結合する。パラフィンとビステアリルエチレンジアミドの混合物は、特に使用することができる。
【0071】
汚れ放出活性物質は、油脂がテキスタイルから洗い落とされる能力に対して積極的に影響を及ぼす化合物である。この効果は、汚れたテキスタイルが、既に以前にこの油脂放出成分を含む本発明の洗浄剤で数回洗浄されたものであるときに、特に顕著となる。好ましい油脂放出成分としては、例えば、非イオン性セルロースエーテル、例えばそれぞれの場合に非イオン性セルロースエーテルに基づき15〜30重量%の割合のメトキシ基および1〜15重量%の割合のヒドロキシプロポキシル基を有するメチルセルロースおよびメチルヒドロキシプロピルセルロース、ならびに、従来技術から知られているフタル酸および/またはテレフタル酸のポリマーとモノマーおよび/またはポリマージオールを有するそれぞれの誘導体、特にエチレンテレフタレートおよび/またはポリエチレングリコールテレフタレートのポリマーまたはそれらのアニオン性および/または非イオン性修飾誘導体が挙げられる。
【0072】
色移り防止剤は、ビニルピロリドン、ビニルイミダゾール、ビニルピリジン−N−オキシドのポリマー、またはそれらのコポリマーが挙げられる。さらに使用できるのは、15,000〜50,000の分子量を有するポリビニルピロリドン、および1,000,000を超える、特に1,500,000から4,000,000の分子量を有するポリビニルピロリドン、N−ビニルイミダゾール/N−ビニルピロリドンコポリマー、ポリビニルオキサゾリドン、ビニルモノマーおよびカルボン酸アミドに基づくコポリマー、ピロリドン基含有ポリエステルおよびポリアミド、グラフトされたポリアミドアミンおよびポリエチレンイミン、第二級アミンから作られたアミド基を有するポリマー、ポリアミンN−オキシドポリマー、ポリビニルアルコール、およびアクリルアミドアルケニルスルホン酸に基づくコポリマーである。しかしながら、ペルオキシダーゼおよび過酸化水素または水中で過酸化水素を生成する物質を包含する酵素系を使用することも可能である。
【0073】
灰色化阻害剤は、テキスタイル繊維から分離された汚れを、洗浄媒体中に懸濁して保持する物質である。水溶性コロイドは、天然において通常は有機であるが、例えば、デンプン、サイズ、ゼラチン、デンプンもしくはセルロースのエーテルカルボン酸またはエーテルスルホン酸の塩、またはセルロースもしくはデンプンの硫酸エステルの塩に対して、適している。酸基を含有する水溶性ポリアミドも、この目的に適している。上記のもの以外のデンプン誘導体も使用することができ、例えばアルデヒドデンプンである。セルロースエーテル、例えばカルボキシメチルセルロース(ナトリウム塩)、メチルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、および混合エーテル例えばメチルヒドロキシエチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、メチルカルボキシメチルセルロース、およびこれらの混合物を、消費者製品の重量に基づき、例えば0.1〜5重量%の量で、使用することができる。
【0074】
有機溶媒は、1〜4個の炭素原子を有するアルコール類、特にメタノール、エタノール、イソプロパノール、およびtert−ブタノール、2〜4個の炭素原子を有するジオール類、特にエチレングリコールおよびプロピレングリコール、ならびにそれらの混合物、および上記化合物クラスから誘導可能なエーテル類を含む。この種類の水混和性溶媒は、本発明の洗浄製品中に、典型的には30重量%を超えない量で存在する。
【0075】
pH調整剤は、クエン酸、酢酸、酒石酸、リンゴ酸、乳酸、グリコール酸、コハク酸、グルタル酸、および/またはアジピン酸を含み、また鉱酸、特に硫酸、または塩基、特に水酸化アンモニウムまたは水酸化アルカリを含む。この種類のpH調整剤は、本発明の剤の中に、好ましくは20重量%を超えない量で、特に1.2重量%〜17重量%の量で、含まれる。
【0076】
化合物は、特に、上記で定義されたものなどの酵素を含む家庭用製品を香りづけするため、特に洗剤などの酵素を含有するテキスタイル処理製品を香りづけするために、使用してよい。
以下に、本発明をさらに説明するのに役立つ一連の例が続く。
【実施例】
【0077】
例1:3−(3−イソブチル−5−メチルフェニル)プロパナール(1)の合成
本発明の化合物1を、スキーム1に従って調製した。
【化12】
A)イソブチルマグネシウムクロライド(THF中2M、12.0mL)を、THF(8.5mL)中のZnCl(2.34g、17.2mmol)の0℃の懸濁液に加えた。灰白色の濃い懸濁液を25℃で1時間撹拌した後、これをTHF(11.5mL)中の[PdCl(dppf)]・CHCl(93mg、0.11mmol)、CuI(44mg、0.23mmol)、および2−(3−ブロモ−5−メチルフェニル)−1,3−ジオキソラン(2、2.78g、11.4mmol)の懸濁液に加えた。混合物を25℃で2時間撹拌し、さらに1時間、2Mの水性HCl(11.5mL)の添加後に撹拌した。HOを加え、水層をMTBE(2×)で抽出した。有機相をブラインで洗浄し、乾燥し(MgSO)、濾過して、濾液を濃縮した。残留物を「クーゲルロール」オーブン(120℃、0.09mbar)で蒸留精製して、1.93g(96%)の3−イソブチル−5−メチルベンズアルデヒド(3)を無色油状物として得た。
1H NMR (CDCl3, 400 MHz):δ= 9.97 (s, 1H), 7.52 (br. s, 1H), 7.47 (br. s, 1H), 7.25-7.23 (m, 1H), 2.52 (d, J = 7.3 Hz, 2H), 2.41 (d, J = 0.5 Hz, 3H), 1.90 (nonet, J = 6.9 Hz, 1H), 0.92 (d, J = 6.6 Hz, 6H) ppm.
【0078】
B)エチル2−(ジエトキシホスホリル)アセテート(3.1mL、15.4mmol)を、THF(8mL)中のNaH(鉱油中50%分散液、0.74g、15.4mmol)の0℃の懸濁液に添加した。懸濁液を25℃で30分間撹拌し、0℃に再冷却した後、THF(7mL)中の3−イソブチル−5−メチルベンズアルデヒド(3、2.46g、14.0mmol)を加え、混合物を25℃で5時間撹拌した。HOを25℃で加えた後、水層をMTBE(2×)で抽出した。有機相をHOおよびブラインで洗浄し、乾燥し(MgSO)、濾過して、濾液を濃縮した。残留物を「クーゲルロール」オーブン(130℃、0.09mbar)で蒸留精製して、2.38g(69%)の(E)−エチル3−(3−イソブチル−5−メチルフェニル)アクリレート(4)を、淡黄色油状物として得た。
1H NMR (CDCl3, 400 MHz):δ= 7.66 (d, J = 16.1 Hz, 1H), 7.18 (br. s, 1H), 7.12 (br. s, 1H), 7.00 (br. s, 1H), 6.43 (d, J = 16.1 Hz, 1H), 4.27 (q, J = 7.1 Hz, 2H), 2.46 (d, J = 7.3 Hz, 2H), 2.35 (s, 3H), 1.87 (nonet, J = 6.9 Hz, 1H), 1.35 (t, J = 7.1 Hz, 3H), 0.92 (d, J = 6.6 Hz, 6H) ppm.
【0079】
C)Pd/C(5重量%、0.21g)を、EtOH(17mL)中の(E)−エチル3−(3−イソブチル−5−メチルフェニル)アクリレート(4、2.11g、8.57mmol)の溶液に加えた。懸濁液をH(1気圧)下、25℃で3時間撹拌し、セライトパッドで濾過し、ヘキサンで洗浄した。濾液を濃縮し、残留物を「クーゲルロール」オーブン(130℃、0.08mbar)で蒸留精製して、1.91g(90%)のエチル3−(3−イソブチル−5−メチルフェニル)プロパノエート(5)を、甘くフルーティーでキャンディーの匂いを有する、無色油状物として得た。
1H NMR (CDCl3, 400 MHz):δ= 6.85 (br. s, 1H), 6.82 (br. s, 1H), 6.79 (br. s, 1H), 4.14 (q, J = 7.1 Hz, 2H), 2.92-2.88 (m, 2H), 2.63-2.59 (m, 2H), 2.41 (d, J = 7.1 Hz, 2H), 2.31 (d, J = 0.5 Hz, 3H), 1.84 (nonet, J = 6.9 Hz, 1H), 1.25 (t, J = 7.1 Hz, 3H), 0.90 (d, J = 6.6 Hz, 6H) ppm.
【0080】
D)DIBAL−H(CHCl中1M、4.0mL)を、CHCl(16mL)中のエチル3−(3−イソブチル−5−メチルフェニル)プロパノエート(5、1.01g、4.03mmol)の−78℃の溶液に加え、混合物を−78℃で3時間撹拌した。0℃に加温した後、MTBEを加え、反応を、HO(0.2mL)、3Mの水性NaOH(0.2mL)およびHO(0.4mL)でクエンチし、10分間激しく撹拌した。MgSOを添加し、混合物をさらに10分間撹拌し、白色固体を濾過により除去した。濾液を濃縮し、残留物を「クーゲルロール」オーブン(120℃、0.07mbar)で蒸留精製して、0.77g(94%)の3−(3−イソブチル−5−メチルフェニル)プロパナール(1)を、無色の油状物として得た。
1H NMR (CDCl3, 400 MHz):δ= 9.83 (t, J = 1.6 Hz, 1H), 6.85 (br. s, 1H), 6.84 (br. s, 1H), 6.79-6.77 (m, 1H), 2.91 (t, J = 7.5 Hz, 2H), 2.79-2.75 (m, 2H), 2.42 (d, J = 7.1 Hz, 2H), 2.31 (d, J = 0.7 Hz, 3H), 1.85 (nonet, J = 6.9 Hz, 1H), 0.91 (d, J = 6.6 Hz, 6H) ppm. 13C NMR (CDCl3, 100 MHz):δ= 201.8 (d), 142.0 (s), 139.9 (s), 137.8 (s), 127.9 (d), 126.4 (d), 126.2 (d), 45.4 (t), 45.3 (t), 30.2 (d), 28.1 (t), 22.4 (2q), 21.3 (q) ppm. MS (EI): m/z (%) = 204 (M+・, 23), 176 (9), 161 (12), 148 (18), 133 (53), 119 (100), 105 (44), 91 (33), 77 (12), 43 (14), 41 (19), 29 (9).
匂いの説明:グリーンアルデヒド、柑橘類のジューシーなオレンジ
【0081】
例2:(E)−3−(2−イソブチル−4−メチルフェニル)アクリルアルデヒド(6)および3−(2−イソブチル−4−メチルフェニル)プロパナール(7)の合成
化合物6および7をそれぞれ、4つまたは5つのステップで、スキーム2に従って調製した。
【化13】
A)ZnCl(53.9g、395mmol)、1−イソブチル−3−メチルベンゼン(8、293g、1.98mol)、パラホルムアルデヒド(66.3g、2.21mol)およびAcOH(230mL)の混合物を、Ar下、40℃までゆっくり加温した。塩化水素ガスを、1−イソブチル−3−メチルベンゼンの消費が完了するまで40℃で2時間、反応溶液にバブルした。反応混合物を25℃に冷却した。HOを加え、反応混合物をMTBE(3×)で抽出した。合わせた有機層を、HO(5×)、飽和NaHCO水溶液およびブラインで洗浄した。有機層を乾燥し(MgSO)、濾過し、濃縮した。粗生成物を真空下で蒸留して、無色の液体(275g、収率70%)を得た:これは、1−(クロロメチル)−2−イソブチル−4−メチルベンゼン(9)と1−(クロロメチル)−4−イソブチル−2−メチルベンゼンの、22:78の比率の混合物である。
1−(クロロメチル)−2−イソブチル−4−メチルベンゼン:
1H NMR (CDCl3, 300 MHz):δ= 7.20 (d, J = 7.4 Hz, 1H), 7.02 (d, J = 7.4 Hz, 1H), 6.98 (s, 1H), 4.60 (s, 2H), 2.57 (d, J = 7.6 Hz, 2H), 2.32 (s, 3H), 1.96-1.81 (m, 1H), 0.95 (d, J = 6.6 Hz, 6H) ppm.
1−(クロロメチル)−4−イソブチル−2−メチルベンゼン:
1H NMR (CDCl3, 300 MHz): δ= 7.20 (d, J = 7.4 Hz, 1H), 7.02 (d, J = 7.4 Hz, 1H), 6.98 (s, 1H), 4.60 (s, 2H), 2.43 (d, J = 7.4 Hz, 2H), 2.40 (s, 3H), 1.89-1.79 (m, 1H), 0.90 (d, J = 6.6 Hz, 6H) ppm.
【0082】
B)EtOH(300mL)およびHO(200mL)中の、1−(クロロメチル)−2−イソブチル−4−メチルベンゼン(9)と1−(クロロメチル)−4−イソブチル−2−メチルベンゼン(273g、1.39mol、22:78の比)、ヘキサメチレンテトラミン(ウロトロピン、292g、2.08mmol)、およびAcOH(120g、2.00mol)の混合物を、Ar下で10時間還流した。反応物を25℃に冷却し、有機相を分離した。水相をMTBE(3×)で抽出した。合わせた有機層を、HO(3×)、飽和NaHCO水溶液およびブラインで洗浄した。有機層を乾燥し(MgSO)、濾過し、濃縮した。粗生成物を真空下で蒸留して、無色液体(180g)を得、これは、2−イソブチル−4−メチルベンズアルデヒドと4−イソブチル−2−メチルベンズアルデヒドの22:78の比の混合物であった。生成物をさらに分留して、純粋な2−イソブチル−4−メチルベンズアルデヒド(10、15.0g、収率6%)および4−イソブチル−2−メチルベンズアルデヒド(95.0g、収率39%)を得た。
2−イソブチル−4−メチルベンズアルデヒド:沸点:98〜101℃/0.15mbar;1H NMR (CDCl3, 300 MHz):δ= 10.22 (s, 1H), 7.73 (d, J = 7.8 Hz, 1H), 7.14 (d, J = 7.8 Hz, 1H), 7.02 (s, 1H), 2.85 (d, J = 7.1 Hz, 2H), 2.38 (s, 3H), 1.92-1.77 (m, 1H), 0.93 (d, J = 6.6 Hz, 6H) ppm.
匂いの説明:グリーンの革様、スパイシーなサフラン
4−イソブチル−2−メチルベンズアルデヒド:沸点102〜108℃/0.15mbar;1H NMR (CDCl3, 300 MHz):δ= 10.20 (s, 1H), 7.70 (d, J = 7.8 Hz, 1H), 7.13 (d, J = 7.8 Hz, 1H), 7.03 (s, 1H), 2.64 (s, 3H), 2.49 (d, J = 7.2 Hz, 2H), 1.99-1.81 (m, 1H), 0.91 (d, J = 6.6 Hz, 6H) ppm.
匂いの説明:弱い、グリーンの香り、タイムとオレガノ、樹脂、わずかにイソブチル安息香酸;
【0083】
C)2−イソブチル−4−メチルベンズアルデヒド(10、11.0g、62.4mmol)と三フッ化ホウ素エーテラート(0.044g、0.31mmol)の混合物に、Ar下で、トリメトキシメタン(7.95g、74.9mmol)を、25℃で33分かけて滴下した。添加が完了した後、反応物を25℃で20分間撹拌した。エトキシエテン(5.40g、74.9mmol)を、20分かけて30〜35℃で滴下し、反応物を30分間撹拌した。NaHCO(1.0g)およびHO(0.50mL)を、撹拌しながら2分間かけて添加し、次いで撹拌を停止した。清浄な溶液をデカントし、HO(5.0ml)中のメタンスルホン酸(0.090g、0.94mmol)を添加した。反応混合物を加熱還流し、揮発物を、ポット温度が105℃に達するまで留去した。反応物を90℃に冷却し、トルエン(40ml)を加えた。得られた混合物をHSO水溶液(63%)、ブラインおよびHOで順番に洗浄した。有機層を乾燥し(MgSO)、濾過し、濃縮した。粗生成物を、カラムクロマトグラフィーと続いてクーゲルロール蒸留により精製して、(E)−3−(2−イソブチル−4−メチルフェニル)アクリルアルデヒド(6、7.50g、収率59%)を、無色液体として得た。
沸点:145−150℃/0.15mbar.1H NMR (CDCl3, 300 MHz):δ= 9.70 (d, J = 7.7 Hz, 1H), 7.76 (d, J = 15.7 Hz, 1H), 7.53 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 7.06 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 7.02 (s, 1H), 6.64 (dd, J = 15.7, 7.7 Hz, 1H), 2.62 (d, J = 7.2 Hz, 2H), 2.36 (s, 3H), 1.88-1.77 (m, 1H), 0.93 (d, J = 6.6 Hz, 6H) ppm. 13C NMR (CDCl3, 75 MHz):δ= 193.9 (d), 150.5 (d), 141.9 (s), 141.2 (s), 132.2 (d), 129.8 (s), 128.5 (d), 127.5 (d), 126.8 (d), 42.3 (t), 30.7 (d), 22.4 (q), 22.4 (q), 21.5 (q) ppm. MS: m/z (%) = 77 (3), 91 (13), 105 (3), 115 (20), 131 (23), 145 (100), 159 (20), 171 (2), 187 (3), 202 (6) [M+].
匂いの説明:グリーン、フローラル。
【0084】
D)EtOAc(35mL)中の、Pd/C(5重量%、0.30g)、酢酸ナトリウム(2.00g、24.4mmol)および(E)−3−(2−イソブチル−4−メチルフェニル)アクリルアルデヒド(6、7.00g、34.6mmol)の混合物を、H(1気圧)下、25℃で一晩撹拌した。反応混合物をSiOパッドで濾過し、MTBEで洗浄した。濾液を濃縮した。粗生成物を、カラムクロマトグラフィーと続いてクーゲルロール蒸留により精製して、3−(2−イソブチル−4−メチルフェニル)プロパナール(7、3.50g、17.1mmol、収率50%、純度>99%)を、無色液体として得た。
沸点:145〜150℃/0.15mbar.1H NMR (CDCl3, 300 MHz): δ= 9.83 (s, 1H), 7.02 (d, J = 7.7 Hz, 1H), 6.95 (d, J = 7.7 Hz, 1H), 6.94 (s, 1H), 2.92 (t, J = 7.7 Hz, 2H), 2.71 (t, J = 7.7 Hz, 2H), 2.45 (d, J = 7.2 Hz, 2H), 2.29 (s, 3H), 1.91-1.77 (m, 1H), 0.93 (d, J = 6.5 Hz, 6H) ppm. 13C NMR (CDCl3, 75 MHz):δ= 201.8 (d), 139.3 (s), 135.6 (s), 135.2 (s), 131.1 (d), 128.7 (d), 126.9 (d), 45.2 (t), 41.9 (t), 29.9 (d), 24.4 (t), 22.6 (q), 22.6 (q), 21.0 (q) ppm. MS: m/z (%) = 77 (6), 91 (15), 105 (18), 119 (100), 133 (12), 143 (28), 161 (30), 171 (2), 186 (10), 204 (5) [M+].
匂いの説明:グリーンフローラル、アニマリックコスタス(animalic costus)。
【0085】
例3:2−(2−イソブチル−4−メチルフェニル)プロパナール(11)の合成
化合物11を、2ステップでスキーム3に従って調製した。
【化14】
A)EtO(550ml)中の1−ブロモ−2−イソブチル−4−メチルベンゼン(12、182g、0.80mol、75%)を、EtO(50ml)中のMg(22.4g、0.92mol)に添加して、グリニャール試薬を形成した。CuI(9.06g、48.1mmol)を25℃で添加し、混合物を40分間撹拌した。EtO(100ml)中のプロパルギルアルコール(18.0g、0.32mol)を、温度を30℃未満に維持しながら、30分かけて滴下した。80分間還流させた後、混合物を一晩撹拌し、次いで飽和NHCl水溶液(400ml)および氷水(400ml)でクエンチした。水相をEtO(2×)で抽出し、合わせた有機相をHOで洗浄した(2×、pH6〜7まで)。有機相を乾燥し(MgSO)、濾過し、蒸発させて、粗2−(2−イソブチル−4−メチルフェニル)プロパ−2−エン−1−オール(13、126g)を得、これをVigreuxカラムで分留して精製し、108〜111℃、0.07mbarで沸騰する画分を収集した(25.5g、収率39%)。
【0086】
B)2−(4−イソブチル−2−メチルフェニル)プロパ−2−エン−1−オール(13、11.9g、58.3mmol)を、CHCl(500ml)にAr下で溶解した。CBr(5.17g、15.6mmol)およびPPh(4.09g、15.6mmol)を一緒に少しずつ添加して、温度を25℃未満に制御した。125時間撹拌後、混合物を氷水でクエンチし、水相をCHClで抽出した。有機相をHOで洗浄し、乾燥し(MgSO)、濾過し、溶媒を蒸発させて、粗生成物(18.2g)を得た。粗生成物をクーゲルロール蒸留(115℃、0.07mbar)で精製し、続いてヘキサン/MTBEで溶離するSiO上でのフラッシュクロマトグラフィーを行い、2−(2−イソブチル−4−メチルフェニル)プロパナール(11、3.40g、29%収率、純度93%)を得た。
1H NMR (CDCl3, 400 MHz): δ= 9.64 (d, J = 1.0 Hz, 1H), 7.03 (dd, J = 7.8, 1.2 Hz, 1H), 7.01 (br. s, 1H), 6.91 (d, J = 7.8 Hz, 1H), 3.84 (qd, J = 6.9, 1.0 Hz, 1H), 2.57-2.46 (m, 2H), 2.32 (s, 3H), 1.82 (nonet, J = 6.9 Hz, 1H), 1.37 (d, J = 6.9 Hz, 3H), 0.95 (d, J = 6.6 Hz, 3H), 0.95 (d, J = 6.6 Hz, 3H) ppm. 13C NMR (CDCl3, 100 MHz):δ= 201.4 (d), 140.0 (s), 136.7 (s), 133.2 (s), 131.9 (d), 127.8 (d), 127.5 (d), 48.2 (d), 42.2 (t), 30.3 (d), 22.5 (q), 22.5 (q), 21.1 (q), 15.5 (q) ppm. MS: m/z (%) = 55 (20), 77 (5), 91 (14), 105 (14), 115 (15), 119 (21), 133 (100), 161 (9), 175 (39), 204 (12) [M+].
【0087】
例4:2−(4−イソブチル−2−メチルフェニル)プロパナール(14)
【化15】
1−ブロモ−4−イソブチル−2−メチルベンゼンを、例3に記載の手順に従って、2−(2−イソブチル−4−メチルフェニル)プロパ−2−エン−1−オールを介して2−(4−イソブチル−2−メチルフェニル)プロパナール(14)に変換した。
1H NMR (CDCl3, 400 MHz):δ= 9.64 (d, J = 1.2 Hz, 1H), 7.01 (br. s, 1H), 7.00 (dd, J = 7.8, 1.7 Hz, 1H), 6.95 (d, J = 7.6 Hz, 1H), 3.80 (qd, J = 7.1, 1.2 Hz, 1H), 2.43 (d, J = 7.3Hz, 2H), 2.33 (s, 3H), 1.85 (nonet, J = 6.9 Hz, 1H), 1.39 (d, J = 7.1 Hz, 3H), 0.92 (d, J = 6.6 Hz, 6H) ppm. 13C NMR (CDCl3, 100 MHz):δ= 201.3 (d), 141.0 (s), 136.3 (s), 133.5 (s), 131.8 (d), 127.4 (d), 127.3 (d), 49.0 (d), 45.0 (t), 30.2 (d), 22.4 (q), 22.4 (q), 19.7 (q) 14.3 (q) ppm. MS: m/z (%) = 57 (12), 77 (5), 91 (14), 105 (14), 117 (17), 133 (26), 175 (100), 204 (9) [M+].
【0088】
例5:in vitro代謝試験。本発明の化合物とLilial(商標)の比較。
雄のラット(Sprague Dawley; Lifetechnologies)からの凍結保存肝細胞を解凍し、Cyrreserved Hepatocytes Recovery培地(CHRM; Lifetechnologies)中で洗浄し、Williams E培地(WEM;Lifetechnologies)に懸濁した。Lilial(商標)または本発明の化合物(最終濃度:100μM)を、細胞(1×106生存細胞/ml)に加え、懸濁液を37℃で4時間まで、振とう器上でデュプリケートでインキュベートした。テストステロンの代謝を、陽性対照としてモニターした。試験化合物の減少および対応する安息香酸誘導体の形成を、メタノール中のトリメチルシリルジアゾメタン(Sigma-Aldrich)による誘導体化の後に形成されたメチルエステルのGC−MS分析によって決定した。試験化合物をジアゾメタンと反応させて、メチルケトンを得、これをLilial(商標)および式(I)の化合物の定量に使用した。代謝を、氷冷した1MのHClで停止させ、試料をtert−ブチルメチルエーテル(MTBE)で抽出し、GC−MSで分析した。対照としてのテストステロンを含むインキュベーションも、氷冷した1MのHClで停止させ、遠心分離して細胞を分離し、濾過し、テストステロンの減少をLC−MSで分析した。試験物質の減少および安息香酸代謝産物の形成を定量するために、参照物質(Lilial(商標)および本発明の化合物、tert−ブチル安息香酸(Fluka)の較正曲線を、肝細胞インキュベーション培地中で調製し、肝細胞試料と同様に分析した。
【0089】
陽性対照としてのテストステロンの急速な減少が観察され、肝細胞が代謝的に活性であることが示された。本発明の化合物およびLilial(商標)は、ラット肝細胞において迅速に代謝され、4時間後における1つの化合物での2%の残留化合物以外に、残留化合物は測定されなかった。tert−ブチル安息香酸が、Lilial(商標)の代謝産物として検出されたのに対し(3.4〜3.9μM)、本発明の化合物からは、安息香酸誘導体は形成されなかった(表1)。検出限界は<1μMであった。
【0090】
表1(下記)は、ラット肝細胞における4時間のインキュベーション内での、Lilial(商標)および本発明の化合物、ならびに対応する安息香酸代謝産物の濃度を示す。0時間のインキュベーションにおける初期試験濃度は、100μMであった。
表1に示されるデータから、本発明の化合物のベンゼン環におけるオルトまたはメタ置換基が、in vitroで対応する安息香酸誘導体の形成に影響を及ぼすことは明らかである。Lilial(商標)からのtert−ブチル安息香酸などの安息香酸誘導体は、雄のラットに生殖毒性を引き起こすが、雄のラットにおけるこれらの毒性効果は、本発明の化合物のオルト置換基によって防止され、メタ置換基によって減少される。
【0091】
【表1】