特許第6644786号(P6644786)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6644786毛細胆管活性の機械的改変およびRhoキナーゼミオシンII経路およびジャンクションの透過性の調節、その検出方法およびその誘導体の使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6644786
(24)【登録日】2020年1月10日
(45)【発行日】2020年2月12日
(54)【発明の名称】毛細胆管活性の機械的改変およびRhoキナーゼミオシンII経路およびジャンクションの透過性の調節、その検出方法およびその誘導体の使用
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/02 20060101AFI20200130BHJP
   C12N 5/071 20100101ALI20200130BHJP
   C12N 9/50 20060101ALI20200130BHJP
   C12N 9/12 20060101ALI20200130BHJP
【FI】
   C12Q1/02
   C12N5/071
   C12N9/50
   C12N9/12
【請求項の数】27
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2017-529161(P2017-529161)
(86)(22)【出願日】2014年8月22日
(65)【公表番号】特表2017-527305(P2017-527305A)
(43)【公表日】2017年9月21日
(86)【国際出願番号】IB2014001843
(87)【国際公開番号】WO2016027117
(87)【国際公開日】20160225
【審査請求日】2017年8月2日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 集会名:2014:53rd Annual Meeting of the Society of Toxicology、開催場所:アメリカ合衆国アリゾナ州フェニックス、開催日:2014年3月24日 〔刊行物等〕集会名:2014:53rd Annual Meeting of the Society of Toxicology、開催場所:アメリカ合衆国アリゾナ州フェニックス、開催日:2014年3月25日 〔刊行物等〕刊行物名及び該当頁:The Toxicologist,Volume 138,Issue 1,315頁、発行日:2014年3月(頒布日:2014年3月23日〜27日)、発行者:The Society of Toxicology
【微生物の受託番号】CNCM  I-2652
(73)【特許権者】
【識別番号】517061842
【氏名又は名称】ビオプレディク アンテルナシオナル
【氏名又は名称原語表記】BIOPREDIC INTERNATIONAL
(74)【代理人】
【識別番号】100107342
【弁理士】
【氏名又は名称】横田 修孝
(74)【代理人】
【識別番号】100155631
【弁理士】
【氏名又は名称】榎 保孝
(74)【代理人】
【識別番号】100137497
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 未知子
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアーヌ、ギィユゾ
【審査官】 田ノ上 拓自
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2006/0234332(US,A1)
【文献】 特表平08−503610(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/158939(WO,A1)
【文献】 Molecular Aspects of Medicine, 2008年,Vol.29,p.290-308
【文献】 Molecular Biotechnology, 2002年,Vol.22,p.51-86
【文献】 Matrix Metalloproteinase Inhibitors in Cancer Therapy, 2001年,XIII,p.39-66,ISBN: 978-0-89603-668-0
【文献】 J. Biol. Chem., 2001年,Vol.276, No.23,p.20572-20578
【文献】 Drug Metab. Pharmacokin., 2003年,Vol.18, No.1,p.16-22
【文献】 Hepatology, 2013年,Vol.57, No.4,pp.1518-1529
【文献】 Toxicology and Applied Pharmacology, Available online 2013年,Vol.274,p.124-136
【文献】 International Journal of Bioassays, 2014年1月,Vol.03, No.1,p.1630-1636
【文献】 Am. J. Physiol. Lung Cell. Mol. Physiol., 2009年,Vol.296,L751-L762
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q 1/0−3/00
C12N 1/00−7/08
C12N 9/00−9/99
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
WPIDS/WPIX(STN)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
毛細胆管機能障害を誘発する候補化合物をスクリーニングするインビトロ方法であって、
細胞培養培地と、肝細胞と、管腔を特徴とする胆管空間を有する毛細胆管構造とを含む細胞培養物を、候補化合物に曝露すること、
胆管空間の形態変化を検出すること、
前記細胞培養物をマーカー化合物に曝露すること、および
下記:
・蓄積した胆管成分を培地内へ迅速に放出させて定量するために前記培養物をマトリックスメタロプロテアーゼに曝露すること、および
・単位時間当たりに細管空間に蓄積したマーカー化合物の量を算出して、細胞内部または細胞外部から毛細胆管内部へと移動することができ、かつ、細管および細管腔内に蓄積することができる小分子または大分子の最大量を測定すること
により管腔内部および/または外部での前記マーカー化合物の移動を検出および測定すること
を含み、前記マトリックスメタロプロテアーゼがMMP2またはMMP9である、前記方法。
【請求項2】
前記肝細胞が、不死化肝細胞、初代培養肝細胞、新たに単離された肝細胞、凍結保存肝細胞およびサンドイッチ培養肝細胞からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記肝細胞が、少なくとも1層の肝細胞、肝細胞の集合体または肝細胞の3次元クラスタを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記肝細胞が、ヒト肝腫株細胞(CNCMにI−2652で寄託)、またはその誘導体若しくはその改変細胞株を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記胆管空間の形態変化の検出が、
前記細胞培養物を画像化すること、および
前記管腔のサイズまたは形状の変化を測定することを含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記管腔が、狭窄した細管腔または膨張した細管腔のいずれかとして特徴付けられる、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記候補化合物が、前記マーカー化合物に曝露される前に前記細胞培養物から除去される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記候補化合物の存在下で前記細胞培養物を前記マーカー化合物に曝露する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記検出および測定が、前記細胞培養物のインサイチュ微速度画像化を行うことにより、前記細胞から前記培養培地内への前記マーカー化合物の時間依存性消失を検出および測定することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
単位時間当たりに前記管腔から流出したマーカー化合物のパーセンテージを算出することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記マーカー化合物が、カルボキシジクロロフルオレセインジアセテート、カルボキシクロロフルオレセイン、BODIPY−C12−スフィンゴミエリンまたはフルオレセイン標識されたタウロコール酸塩などの蛍光色素分子である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記マーカー化合物が、小分子蛍光色素であり、細胞内部から胆管極へと向けられ、かつ、対照細胞および薬物処理細胞の内部の胆汁貯蔵空間に一定の期間蓄積される、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記マーカー化合物が、BODIPY−C12−スフィンゴミエリンなどの大蛍光分子であり、側底ドメインを通って細胞内に受動的に進入することができず、かつ、細胞外部から細管空間を通じて特定的に進入して細管空間に蓄積する、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記候補化合物が、RhoキナーゼアクチベーターまたはRhoキナーゼインヒビターである、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記候補化合物が、胆汁うっ滞薬である、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
毛細胆管機能障害を誘発する候補化合物をスクリーニングするインビトロ方法であって、
細胞培養培地と、肝細胞と、管腔を特徴とする胆管空間を有する毛細胆管構造とを含む細胞培養物を、候補化合物に曝露すること、
前記候補化合物への前記曝露の後に前記細胞培養物を洗浄すること、
前記洗浄した細胞培養物をマーカー化合物に曝露してマーカー化合物を胆管空間に蓄積させ、それにより蓄積させたマーカー化合物を含む細胞培養物を生成すること、
蓄積させたマーカー化合物を含む前記細胞培養物を洗浄すること、
蓄積させたマーカー化合物を含む前記洗浄した細胞培養物を、活性化したマトリックスメタロプロテアーゼに曝露すること、および
前記マーカー化合物の前記培養培地内への放出を検出および定量すること
を含み、前記マトリックスメタロプロテアーゼがMMP2またはMMP9である、前記方法。
【請求項17】
前記細胞培養物を前記候補化合物に約2時間〜約4時間曝露する、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記洗浄した細胞培養物を前記マーカー化合物に約30分間曝露する、請求項16または17に記載の方法。
【請求項19】
蓄積させたマーカー化合物を含む前記洗浄した細胞培養物を、前記活性化したマトリックスメタロプロテアーゼに約45分〜約60分間曝露する、請求項16〜18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記マーカー化合物が、小分子蛍光色素である、請求項16〜19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
毛細胆管機能障害を誘発する候補化合物をスクリーニングするインビトロ方法であって、
細胞培養培地と、肝細胞と、管腔を特徴とする胆管空間を有する毛細胆管構造とを含む細胞培養物を、候補化合物に曝露すること、
前記候補化合物への前記曝露の後に前記細胞培養物を洗浄すること、
活性化したマトリックスメタロプロテアーゼおよびマーカー化合物に前記洗浄した細胞培養物を曝露してマーカー化合物を胆管空間に蓄積させ、蓄積させたマーカー化合物を含む細胞培養物を生成させ、前記マーカー化合物は、活性化したマトリックスメタロプロテアーゼへの前記細胞培養物の曝露中またはその後に前記細胞培養物に添加すること、
蓄積させたマーカー化合物を含む前記細胞培養物を洗浄すること、
前記細胞培養物をインキュベートして、前記培養培地内にマーカー化合物を蓄積させること、
ポリエチレングリコールp−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−フェニルエーテルなどの非イオン性界面活性剤で前記細胞培養物を破壊すること、および
前記マーカー化合物の前記培養培地内への放出を検出および定量すること
を含み、前記マトリックスメタロプロテアーゼがMMP2またはMMP9である、前記方法。
【請求項22】
前記細胞培養物を前記候補化合物に約2時間〜約4時間曝露する、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記洗浄した細胞培養物を前記マーカー化合物および活性化したマトリックスメタロプロテアーゼに約30分〜約60分間曝露する、請求項21または22に記載の方法。
【請求項24】
前記マーカー化合物が、大蛍光分子である、請求項21〜23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記細胞培養物が、Ca++非含有緩衝液を含まないものである、請求項1〜24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
肝細胞と、管腔を特徴とする胆管空間を有する毛細胆管構造とを含むインビトロ培養物上で管腔の開放およびクリアランスを調節するためのマトリックスメタロプロテアーゼの使用であって、前記マトリックスメタロプロテアーゼがMMP2またはMMP9である、前記使用
【請求項27】
管腔の開放およびクリアランスをインビトロで調節する方法であって、
細胞培養培地と、肝細胞と、管腔を特徴とする胆管空間を有する毛細胆管構造とを含む細胞培養物を準備すること、
前記細胞培養物をRhoキナーゼアクチベーターに曝露し、前記毛細胆管腔は前記曝露の後に収縮させること、および
前記細胞培養物をマトリックスメタロプロテアーゼに曝露し、前記管腔は前記曝露の後に開放かつクリアランスすること
を含み、前記マトリックスメタロプロテアーゼがMMP2またはMMP9である、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、毛細胆管腔のクリアランスを可能にする毛細胆管腔の膨張および収縮の反復機械的運動、並びに、これら運動の分子調節のためのRhoキナーゼ経路およびミオシン軽鎖リン酸化との関係に関する。本発明はまた、管腔クリアランスを調整するRhoキナーゼ経路の活性やジャンクション空間付近の透過性の変化と関連するこれら運動における障害の証拠を伴う胆汁うっ滞性疾患にも及ぶものである。本発明はまた、細管機能活性を誘発する可能性について候補化合物をスクリーニングするため、および、胆汁流動の異常に関連する疾患を検出するために、これらの変化を検出しかつ誘導体を使用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
胆汁うっ滞は、胆汁が肝臓から十二指腸へと流動することができない病気である。肝細胞からの胆汁の良好な流動に関する重要な機能パラメータは毛細胆管の収縮である。急性および慢性胆汁うっ滞は、正常な胆汁形成機構の機能障害から生じる。胆汁うっ滞性疾患の形態の中には薬物によって生じ得るものもある。例えば、クロルプロマジン(CPZ)は、肝内胆汁うっ滞をインビボ(in vivo)で誘発することが知られている。その効果はまた、毛細胆管狭窄の発生の証拠と共に、ヒトHepaRG(登録商標)細胞においてインビトロ(in vitro)で説明された。ここ数年、胆汁うっ滞の副作用のケースは新規薬物と共に幾つか報告されている。故に、今日における至急の課題は、薬物により誘発されるこれらの悪影響をより良好に予測することによって、治療薬の安全性を改善する能力を高めることである。関係する多くの薬物について、提案された説明は主に、肝胆道輸送システムの変化、特に、利用可能な胆汁塩排出ポンプ分子の低減に関するものである。主たる病因および/または増悪因子としての酸化ストレスの役割も研究によって裏付けられている。付随して、細胞骨格の修飾および細胞間ジャンクションの破壊などの他の機構(全て細胞極性に関与することが知られている)が、胆汁うっ滞における胆汁塩流動の変化に関与している可能がある。しかしながら、肝細胞においてこれら一連の事象を制御する分子機構についての理解は乏しい。図1は、肝組織における肝小葉組織を示す。図2は、細管腔周辺のジャンクション複合体、並びにタイト・ジャンクションの構成およびジャンクションタンパク質の局在を示す。
【0003】
薬物性の胆汁うっ滞性障害を検出かつ特徴付けるためのモデルおよび方法が試みられている。1つの問題は、インビトロ研究に適する肝臓モデルを見つけることに関する。毛細胆管形成を伴う肝細胞の極性化は、細胞骨格成分、タイト・ジャンクション成分および細胞内輸送成分を包含する複雑な機構である。ヒトの新たに単離された細胞の入手可能性は限られているため、ヒト細胞株が使用されている。一般に、永続的な肝細胞株は、典型的な毛細胆管ネットワークをインビボで形成することができず、結果として、毛細胆管腔の狭窄および拡大に関与するシグナル伝達経路に関する知識は依然として乏しいままである。以前の研究では細胞極性を説明するのにWIFB9またはヒトHepG2細胞を使用しており、HepG2細胞を用いて実験的に構築した多層の肝細胞索を使用して細管を形成する際に細胞外マトリックスのシグナル伝達が果たす主な役割についての興味深い実証が報告されている。しかしながら、これらの細胞は、輸送機能などの成熟肝細胞の解毒代謝を特徴付けるごくわずかな機能しか発現しない。それに対して、最近の研究では、第1相および2相の薬物代謝酵素およびトランスポーターを発現し、毛細胆管構造を形成する分化ヒトHepaRG細胞を使用して、CPZ処理により誘発された肝内胆汁うっ滞誘発の特徴を模倣し、かつ、病変の開始に関与する機構を特徴付けることができることが示されている。毛細胆管の狭窄およびH産生が主として証明された(Antherieu S. et al., 2013)。
【0004】
胆汁うっ滞性障害を分析するための方法が確立されている。これまでの一般的な前提は、胆汁うっ滞性障害において発生すると予想される主たる障害は肝胆道輸送システムの変化であり、この変化は候補化合物と胆汁塩との間の競合または阻害に起因して、利用可能な胆汁塩排出ポンプ分子の数が低減することに関連しているというものであった。よって、一般的な検出法は、もっぱら以下の事項に焦点を当てたものであった。
【0005】
i)トランスポーター発現レベルの研究および標的トランスポーター上に結合する薬物の探索;
ii)主に関連マーカー候補として放射標識された胆汁塩前駆体であるタウロコール酸塩を使用した薬物流出変化の証明および算出(米国特許第7,604,934号を参照)。
【0006】
この試験では、以下の方程式を使用して胆管流出指数を規定する:
【数1】
【0007】
摂取および排出された化合物の総質量を表す放射標識タウロコール酸塩の総蓄積量はHBSSプラス(+)緩衝液中で測定され、一方、インキュベーション終了時の細胞内部の検体の総質量はマイナス(−)緩衝液中で測定される。(+)緩衝液はCa++緩衝液であり、(−)緩衝液はCa++非含有緩衝液である。
【0008】
しかしながら、このようなアッセイには欠点がある。このようなアッセイの主な制約は、i)主に候補化合物の胆管流出を調査するために設計されており、必ずしも細管からの胆汁流出を調査するものではない;ii)肝細胞から毛細胆管への流動のみを考慮するものであり、毛細胆管の排出については考慮していない;iii)トランスポーター、主にBSEPは、胆汁排泄の調節に関与する主な因子であると考えられている;iv)流出およびクリアランスに関連する収縮/弛緩の動的事象を考慮していない。よって、このようなアッセイは、幾つかの重要な生物学的効果を明らかにすることができない。例えば、細管腔(サイズ)の可能な修飾および細管腔のクリアランスを調整する毛細胆管の機械的活性(収縮運動)の分析については考慮していない;v)指数の算出が終末点である;vi)別の制約は、サンドイッチ条件下で使用されていても寿命が制限されるヒト初代培養物を使用することである。加えて、既知の個体間多様性に起因して、再現性には常に問題がある。
【発明の概要】
【0009】
本発明は、インビトロ方法、アッセイ、キットおよびプロセスに広範に関する。1以上の実施態様において、毛細胆管機能障害を誘発する候補化合物をスクリーニングするインビトロ方法が開示される。当該方法は、細胞培養物を前記候補化合物に曝露すること(ここで、当該細胞培養物は、細胞培養培地と、肝細胞と、管腔を特徴とする胆管空間を有する毛細胆管構造とを含む)、および胆管空間の形態変化を検出することを含む。
【0010】
本明細書では更なる方法が開示される。1以上の実施態様において、当該方法は、細胞培養物を候補化合物に曝露すること(ここで、当該細胞培養物は、細胞培養培地と、肝細胞と、管腔を特徴とする胆管空間を有する毛細胆管構造とを含む)、および胆管空間の形態変化を検出することを含む。候補化合物への曝露の後に細胞培養物を洗浄する。洗浄した細胞培養物をマーカー化合物に曝露してマーカー化合物を胆管空間に蓄積させ、それにより蓄積させたマーカー化合物を含む細胞培養物を産生する。次いで、蓄積させたマーカー化合物を含む細胞培養物を洗浄し、その後、活性化したマトリックスメタロプロテアーゼに曝露し、マーカー化合物の培養培地中への放出を検出および定量する。
【0011】
1以上の実施態様において、当該方法は、細胞培養物を候補化合物に曝露すること含み、当該細胞培養物は、細胞培養培地と、肝細胞と、管腔を特徴とする胆管空間を有する毛細胆管構造とを含む。候補化合物への曝露の後に細胞培養物を洗浄する。次いで、マーカー化合物および活性化したマトリックスメタロプロテアーゼに洗浄した細胞培養物を曝露してマーカー化合物を胆管空間に蓄積させ、それにより蓄積させたマーカー化合物を含む細胞培養物を生成する。次いで、蓄積させたマーカー化合物を含む細胞培養物を洗浄し、その後、細胞培養物をインキュベートして培養培地内にマーカー化合物を蓄積させる。次いで、ポリエチレングリコールp−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−フェニルエーテルなどの非イオン性界面活性剤で前記細胞培養物を破壊して、色素/マーカー化合物を完全に放出させる。その後、マーカー化合物の放出を検出および定量する。
【0012】
また、本明細書に開示されているのは、Rhoキナーゼ分子調節経路の活性化または阻害により毛細胆管腔の機械的運動を調節するための、Rhoキナーゼ経路アクチベーターまたはインヒビターの使用である。
【0013】
毛細胆管腔の機械的運動を調節する方法も本明細書に記載される。当該方法は、細胞培養培地と、肝細胞と、管腔を特徴とする胆管空間を有する毛細胆管構造とを含む細胞培養物を準備すること、および細胞培養物をRhoキナーゼ経路のインヒビターまたはアクチベーターに曝露することを含む。
【0014】
培養物中の肝臓の胆管極性および分化を調節するインビトロ方法も開示される。当該方法は、肝細胞の細胞培養物を準備すること、および細胞培養物をRhoキナーゼアクチベーターに曝露し、それにより分化肝細胞を生成することを含む。
【0015】
毛細胆管機能障害を誘発する候補化合物をスクリーニングするためのキットも開示される。当該キットは、極性化成熟肝細胞(分化HepaRG細胞など)、F−アクチン、マーカー化合物(大分子または小分子の蛍光色素または基質など)、マトリックスメタロプロテアーゼおよびマトリックスメタロプロテアーゼアクチベーターを含む。本明細書に記載されるアッセイに従ってキットを使用するための指示書を含むこともできる。
【0016】
また、本明細書に開示されるのは、標的トランスポーターの存在または非存在下で毛細胆管機能障害を誘発する候補化合物をスクリーニングするためのキットである。当該キットは、調査すべき特定の標的トランスポーターがノックアウトされた極性化成熟肝細胞由来の改変肝細胞と共に、極性化成熟肝細胞(例えば、分化HepaRG細胞)、F−アクチン、マーカー化合物(例えば、大分子または小分子の蛍光色素または基質)、マトリックスメタロプロテアーゼおよびマトリックスメタロプロテアーゼアクチベーターを含む。
【0017】
また、本明細書に開示されるのは、肝細胞と、管腔を特徴とする胆管空間を有する毛細胆管構造とを含むインビトロ培養物上で管腔の開放およびクリアランスを調節するためのメタロプロテアーゼの使用である。
【0018】
管腔の開放およびクリアランスをインビトロで調節する方法も本明細書に記載される。当該方法は、細胞培養培地と、肝細胞と、管腔を特徴とする胆管空間を有する毛細胆管構造とを含む細胞培養物を準備することを含む。当該細胞培養物はRhoキナーゼアクチベーターに曝露され、毛細胆管腔が曝露の後に収縮する。当該細胞培養物は活性化マトリックスメタロプロテアーゼに曝露され、前記管腔は曝露の後に開放かつクリアランスされる。
【0019】
患者における胆汁うっ滞を診断する方法も記載される。当該方法は、患者から収集した生物学的試料を準備すること、および生物学的試料をマトリックスメタロプロテアーゼに関して分析することを含み、試料内に存在するマトリックスメタロプロテアーゼは、閉塞性胆汁うっ滞を示すマーカーである。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、肝組織における肝小葉組織を示す図である。
図2図2は、細管腔周辺のジャンクション複合体、並びにタイト・ジャンクションの構成およびジャンクションタンパク質の局在を示す図(左)および画像(右)である。
図3図3は、Rhoキナーゼ経路の概略図である。
図4図4は、異常なジャンクション複合体透過性の機械的制御を示すための主要な調節因子を全て含む胆管空間の概略図である。
図5図5は、初代ヒト肝細胞と比較したときの、HepaRG細胞における細管極性の免疫蛍光法および画像分析を示す。
図6図6は、側底および頂端トランスポーターの免疫局在の画像である。
図7図7は、極性がRhoキナーゼ経路によって制御されることを示すグラフである。
図8図8は、クロルプロマジンへの曝露後の細管腔の狭窄を示す画像である。
図9図9は、毛細胆管の画像分析を示す。
図10図10は、Rhoキナーゼアクチベーターであるクロルプロマジン(狭窄)またはRhoキナーゼインヒビターであるY27632(膨張/弛緩)の存在下での細胞骨格の再編成を実証する画像である。
図11図11は、様々な胆汁うっ滞剤のRhoキナーゼ経路への関与を実証するグラフである。
図12図12は、他の胆汁うっ滞剤がRhoキナーゼ経路の活性化を必要とすることを実証するグラフである。
図13図13は、膨張した管腔の新たな胆汁うっ滞表現型に関する画像を示しており、ここでは、エンドセリン受容体拮抗薬(ERA)の薬物ファミリーも弛緩および膨張により胆汁うっ滞を誘発する。
図14図14は、クロルプロマジンまたはシクロスポリンA(狭窄)またはファスジル、ANIT若しくはSCA(弛緩/膨張)、およびファロイジン標識F−アクチン、(核をHoechst染色)、および胆管腔に蓄積する蛍光マーカー化合物(CDFDA)を使用して調節した肝細胞の画像を示す。
図15図15は、全ミオシンおよび特定のリン酸化形態P−MYL9に対する抗体を使用するウェスタンブロット(上)およびP−MYL9の相対量を表すヒストグラム(下)を示す。
図16図16は、Rhoキナーゼのインヒビターまたはアクチベーターで処理した細胞におけるジャンクションタンパク質の発現および分布に関する細胞の画像である。
図17図17は、Rhoキナーゼインヒビター(ファスジルおよびY27632)の濃度増大の関数としての、当該細胞(細管空間を含む)内に蓄積された標識タウロコール酸塩の定量グラフである。
図18図18は、マーカー化合物の存在下でRhoキナーゼインヒビターに曝露された細胞の蛍光画像である。
図19図19は、マーカー化合物の胆管クリアランスのために活性化MMPに曝露された細胞の蛍光画像である。
図20図20は、大きなマーカー化合物の存在下でMMPに曝露された細胞の画像である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
1以上の実施態様では、Rhoキナーゼ分子調節経路の活性化または阻害により毛細胆管腔の機械的運動を調節することに関するプロセスが開示される。1以上の実施態様では、Rhoキナーゼ分子調節経路の活性化または阻害により肝臓の胆管極性および分化を調節することに関するプロセスが開示される。1以上の実施態様では、潜在的な胆汁うっ滞の副作用について候補化合物(例えば、生体異物)をスクリーニングするため、および特に反復協調運動の消失や流出に必要とされる管腔の収縮/弛緩および細管腔クリアランスの喪失全体などの管腔収縮または膨張に対する生体異物の作用を予測するためのアッセイが開示される。1以上の実施態様において、生体異物はRhoキナーゼ酵素(クロルプロマジンおよびシクロスポリンAなど)を活性化し、その結果、アクチン収縮に関与するミオシンIIリン酸化を促進する。遊離基を生成させやすい全てのエフェクターが関与している。実際、遊離基、特にNOsは、Rhoキナーゼ酵素の潜在的なアクチベーターである。1以上の実施態様において、生体異物はRhoキナーゼ酵素(ボセンタンなど)を阻害し、その結果、リン酸化ミオシンIIの形成を低減し、アクチン弛緩が生じる。生体異物はRho−経路を直接的に活性化または阻害し、または、エンドセリンなどの他の関連経路若しくは他の増殖因子経路若しくはカルモジュリン媒介物質を介して間接的に活性化または阻害し得る。別の実施態様において、本発明は、MYPT−1、MLCPおよびMLCK酵素並びにeNOSおよびNO、L−グルタミン、アンギオテンシンIIなどのRhoキナーゼおよび/または標的酵素(MYPT.1、MLCPおよびMLCK)の全ての基質を介する、ミオシンリン酸化酵素のRhoキナーゼ依存的活性化または阻害を包含する。当該経路における他の標的としてはリン酸化ミオシン軽鎖(p−MLC)が挙げられ、これは主に毛細胆管腔の収縮および/または膨張を制御する役割を果たす。
【0022】
1つの実施態様において、本発明はまた、p−MLC、収縮およびタイト・ジャンクション機構間の関係を包含する。本発明は、ZO−1、クローディンおよびオクルジンなどのタイト・ジャンクション構成タンパク質の直接的または間接的効果に関与し、これらの効果にはそれらタンパク質のリン酸化レベル、頂端環での細胞層の再編成、および頂端環でのジャンクション複合体の位置決めを含む再編成が含まれる。
【0023】
1以上の実施態様において、メタロプロテアーゼ(MMP)を用いて毛細胆管/管腔の開放およびクリアランスを調節することに関するプロセスが開示される。1以上の実施態様において、MMPは、管腔の開放およびクリアランスを可能にするジャンクション複合体の透過性に繋がるZO−1、クローディンおよびオクルジンなどの幾つかのジャンクション構成タンパク質の特性(主にリン酸化)の変化に寄与する。1以上の実施態様では、MMPは、正常な細管構造で生じる一時的および反復的収縮シグナル伝達に応答してそれらの活性レベルを(直接的または間接的に)調節し、それにより、管腔ポケットの規則的な開放およびクリアランスを可能にする能力を有する。MMPはまた、薬物性の胆汁うっ滞性疾患における管腔流出活性の変化をもたらすジャンクション周辺の透過性の永続的な阻害に寄与する。更に、インヒビター(例えば、TIMP1)などのMMPモジュレーターも、主要なMMP酵素活性化調節因子として調節プロセスに関与する。
【0024】
本発明は特に、毛細胆管クリアランスの機能不全を伴う薬物性の細管機能障害を証明かつ定量するためのインビトロ方法に関する。本発明の根拠は、i)細胞内運動、主に、細管腔のクリアランスおよび規則的な流動活性をサポートする頂端細管ドメインの反復的な収縮事象、ii)細管腔のアクチン収縮または弛緩に関与するRhoキナーゼの活性化または阻害、およびiii)胆汁うっ滞薬(生体異物)の存在下でのこれら事象の変化の間に確立される相関性である。故に、本発明は、十分に制御され、使いやすく、かつ統合された「毛細胆管活性アッセイ」を設定することにより、これらの異なる事象を妨害する可能性(susceptibility)について候補化合物(生体異物)を特徴付け、かつ、スクリーニングするための新規方法を提案する。このアッセイは、好ましくは3つの主要なパラメータの決定を包含する:
−毛細胆管空間の形態変化;
−細管空間からの胆管成分のクリアランス効率;
−細管空間内への胆管成分の最大蓄積量。
【0025】
本発明によれば、胆汁うっ滞性疾患の変化を特徴付け、かつ、毛細胆管機能を変化させる潜在性を有する候補化合物または基質をスクリーニングするための方法が提供される。1以上の実施態様では、当該方法は、機能的肝細胞を伴うインビトロシステムを準備することを含み、ここで、肝細胞培養物は、分析しやすいおよび/または画像化に適する少なくとも1つの(および好ましくは、多数の)毛細胆管構造を含む。培養物は候補化合物に曝露される。この候補化合物としては、胆管機能不全を誘発する潜在性を有する(または有さない)1つまたはそれ以上の化合物が挙げることができる。その後、以下により詳細に説明するような毛細胆管活性アッセイを用いて、毛細胆管活性に対する候補化合物の作用を分析する。一般に、当該アッセイは、胆管空間の形態変化の検出、培養物へのマーカー化合物の投与、細管クリアランス効率(CCE)の測定および細管空間における最大胆管成分蓄積量(MBCA)の測定を含む。
【0026】
肝細胞培養物は、好ましくは、不死化肝細胞、初代培養肝細胞、新たに単離された肝細胞、凍結保存肝細胞、サンドイッチ培養肝細胞などの生存細胞の人工的なインビトロ培養物である。当該培養物は、少なくとも1層の肝細胞または肝細胞の集合体若しくは3次元クラスタとして構成することができる。肝細胞をヒトおよび/または動物の肝臓から単離することができる。また、複数の供給源から調製されて貯蔵された肝細胞培養物を使用してもよい。本明細書で使用する際、細胞「供給源」は、様々なドナー、バイオプシー、異なる組織試料若しくは異なる組織供給源由来の組織切片から得られた細胞、異なる動物細胞(種)、または一次、二次、不死化若しくは形質転換細胞を指す。当該細胞は、どの哺乳類供給源でもよく、特にヒト、ブタ、サル、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ヒツジ、ウサギまたはネズミ供給源、これらの中からの供給源並びにトリ供給源由来であってもよい。
【0027】
当業者に理解されるように、厳密に制御された細胞骨格依存性運動を介して行われる化合物の細胞内輸送を含む、肝細胞の機械的動態をインビボで模倣する細胞モデルが選択される。故に、本発明にとって好ましい肝臓培養物は、少なくとも1つの(および好ましくは複数の)形態学的に正常(かつ機能的)な毛細胆管構造を形成すべく、ジャンクション部によって共に凝集された形態学的に正常な肝細胞を含有するだろう。「形態学的に正常」という用語は、標準的な、通常の、典型的な、または予想された、天然の/変化していない形態を有することを指す。好ましくは、肝細胞は、長期間機能的に安定であり、解毒機能を含む主要なインビボ肝臓機能の全てを高い率で保存することが実証される。好ましくは、当該細胞は、トランスポーターの特異的発現および局在を含む、毛細胆管極性および毛細胆管活性と関連する特徴を全て証明するはずである。更に、細胞培養物は、管腔空間のクリアランスおよび効率的な流出成分放出に関与するジャンクション部の透過性の制御が維持されることを証明するはずである。よって、代表的なモデルとしては、初代培養物としての、または改変肝細胞株から調製され、かつ完全な肝細胞成熟プロセス(毛細胆管極性機構および機能を含む)を受けることができる、2Dまたは3Dシステムにおける肝細胞が挙げられる。従って、HepaRG(登録商標)(ヒト肝腫株、寄託番号1−2652、米国特許第7,456,018号、参照により本願に援用)またはその誘導体若しくはその改変細胞株が、本発明の方法での使用に好ましい。HepaRG(登録商標)細胞株は、長期間安定性(優先的には14日以上)を有した使いやすいヒト肝細胞を産生する、高度に再現可能なモデルである。更に、これらの細胞は、化合物の異常な吸着および/または画像化用途の制限を引き起こしやすいゲルマトリックスへの埋め込みを必要としない。足場またはゲルマトリックスが所望される場合、このことは使用される可能性がある培養条件での3Dおよび足場構成を除外しない。
【0028】
「候補化合物」という用語は、胆汁うっ滞作用を誘発するか、そうでなければ胆汁排泄を妨害する潜在性を特徴とするいずれかの化合物を指す。従って、細胞の輸送機構を妨害する可能性があり、細胞から細胞へおよび細胞から微環境への交換シグナル伝達、透過性およびバリア保護(胆管極におけるジャンクション複合体の透過性を含む)を調整する細胞骨格運動および関連する動態事象を含むいずれかの化合物が候補化合物であると考えることができる。本発明の方法に従ってスクリーニングされる候補化合物としては、小分子薬物、生物製剤、治療剤、発がん性物質および環境汚染物質などの生体異物、並びにアクチン狭窄および弛緩に直接的または間接的に影響を及ぼす傾向がある全ての化合物が挙げられる。
【0029】
肝細胞による摂取および解毒酵素活性による代謝および/またはトランスポーター若しくは他の細胞内タンパク質への固定を可能にするのに十分な時間、培養物を候補化合物に曝露する。従って、時間ランキングの用量反応動態が確立される。優先的に、しかし排他的にではなく、胆管空間の形態変化が早期に発生することを示すデータがあるため、短期間の曝露が用いられる。
【0030】
1以上の実施態様において、当該方法は、胆管空間の変化を測定することを含む。これは、アクチンおよび/または頂端トランスポーターの局在(pGP、BSEP、MRP2など)および/またはジャンクションタンパク質を使用して、管腔のサイズまたは形状のあらゆる変化を含む胆管空間の形態変化を(例えば、視覚的に)測定することを包含する。画像化定量は、管腔の狭窄または膨張事象を特徴付けるための平均サイズ値を付与することができる。よって、細管腔の収縮または細管腔の膨張を特徴とする2つの潜在的な胆汁うっ滞表現型間の識別を早期に行うことができる。
【0031】
当該方法は更に、細管空間からの胆管成分のクリアランス効率の変化と関連する細管クリアランス活性の機能不全の証拠(もしあれば)を検出することを含む。特に、当該方法は、細管腔内部および/または外部での小分子の運動を定量することによって細管腔クリアランス機能の遅延を検出および測定することを含む。本発明の毛細胆管活性を測定する方法は、「マーカー化合物」の使用を包含する。好ましくは、このマーカー化合物は高スループットの肝取り込みおよび細管胆管活性アッセイのために選択される。この用語は、蛍光または放射線および化学発光分光分析、比色分析などの標準的な検出技術を使用して容易に検出することができる化学的化合物を指す。本発明で使用されるマーカーの例としては蛍光化合物が挙げられるが、他の既知のマーカー基質を排除するものではない。本発明の1つの実施態様は、毛細胆管クリアランス活性の測定であり、胆管流出変化に繋がるいずれかの変化を含む。よって、マーカー化合物は、迅速な細胞内への浸透および毛細胆管への流出、高い蛍光特性を伴う使いやすさ、および他の細胞輸送および運動への低干渉のために選択される。本発明の方法の好ましいマーカーは、蛍光MRP2基質、カルボキシクロロフルオレセイン、好ましくはカルボキシジクロロフルオレセインジアセテートであり、これは迅速かつ受動的に細胞内に浸透して高蛍光生成物に加水分解され、胆管極へ特異的に輸送される前駆体である。あるいは、他のマーカー化合物としては、以下に記載される1つの実験例において示されるようなローダミンを含むミトトラッカーまたはJC1などの他のトランスポーター基質、およびフルオレセイン標識されたタウロコール酸塩のような他の物質が挙げられる。適切な蛍光レベルを得るための時間ランキングを規定する。培養物へのマーカー化合物の添加は、調査すべき項目に応じて、候補化合物の存在下で、または候補化合物を除去した後に行われる。
【0032】
1以上の実施態様において、細胞の頂端ドメインに向けられ、かつ、細管腔から培養培地へおよび細胞の頂端ドメインへと放出される際のマーカー化合物の時間依存性動態を確立することによって、細管腔クリアランスにおける遅延の存在または非存在を評価することができる。胆管クリアランス活性に関する情報を得ることができる。
【0033】
マーカー化合物の細管クリアランスは、本発明の方法では定性的かつ定量的に評価される。1以上の実施態様において、細管クリアランス活性の定量的測定は、インサイチュ(in situ)微速度(time lapse)画像化アプローチによって行われる。これは、細管および細管小胞から培養培地へと徐々にクリアランスされることに起因する細管内マーカー化合物の時間依存性消失を示すものである。微速度画像化は、適切な波長で蛍光発光用に装備した顕微鏡から得られた同一培養物のインキュベーション時間の増加(例えば1時間のうち15分毎)における一連の写真に基づく。例えば、以下の例に示すように、既知の胆汁うっ滞薬であるクロルプロマジンの存在下ではクリアランスが遅延する。遅延の定量は、処理細胞での細管クリアランス効率(CCE)を算出することによって行うことができ、単位時間当たりのCCEとして表すことができる。任意に、対照細胞との比較を行うことができ、パーセンテージを計算することができる。細管クリアランス効率(CCE)の算出により、単位時間当たりに細管および細管腔からクリアランスされる蓄積したマーカー化合物(例えば、蛍光分子)のパーセンテージが得られる。故に、胆汁うっ滞の副作用に対する候補化合物の感受性は、培養培地内に放出されたマーカー化合物の、対照細胞よりも低いパーセンテージと関連するCCEレベルの低下を特徴とし得る。換言すると、これは、管腔クリアランスに必要な機械的運動の喪失を示す。
【0034】
1以上の実施態様において、当該方法は更に、細管空間の形態変化およびクリアランス活性の変化の両方と直接リンクする補足的パラメータを評価することを含む。調査項目は、蓄積した胆管成分を培地へ迅速に放出させて定量するために培養物をジャンクション空間破壊物質へ曝露することによる胆汁貯蔵空間での最大胆管成分蓄積量(MBCA)の算出を使用するものであり、これらの破壊物質は、細管および細管小胞の特異的透過化のために選択される。最大胆管成分蓄積量(MBCA)は、細胞内部または細胞外部から毛細胆管内部へと移動し、細管および細管腔内に蓄積することができる小分子(例えば、細胞透過性、MW<500ダルトン)または大分子(典型的には細胞不透過性、MW>500ダルトン)の最大量を規定する。これは、所定期間(例えば、小分子の場合には30分間、大分子の場合には20時間)の間に細管空間に蓄積したマーカー化合物の量として表される。
【0035】
2つの補足的アプローチを用いて以下の事項を評価する:
−細胞内部から胆管極へと向けられ、かつ、対照細胞および薬物処理細胞内の胆汁貯蔵空間内に一定の期間蓄積された蛍光CDFDAなどの小分子蛍光色素(マーカー化合物)の完全な管腔クリアランス。これは、ジャンクション複合体を特異的に透過化し、それにより、定量に適した培地内への、蓄積された蛍光色素の迅速かつ高度に再現可能な放出を可能にするという活性化MMP9などのメタロプロテアーゼの特性に基づく;および
−側底ドメインを通って細胞内に受動的に進入できず、故に、細胞外部から細管貯留空間を通じて特定的に進入して細管貯留空間に蓄積するBODIPY−C12−スフィンゴミエリンなどの大きな蛍光分子の進入。
【0036】
細管空間に蓄積された最大胆管成分の定量は、本発明の方法の1つの主要なエンドポイントである。CDFDAは、上述のように特定的に細管小胞へ向けられており、ジャンクション破壊物質を使用することによってマーカー化合物の迅速かつ全体的なクリアランスを許容する。これは、輸送および細胞骨格組織における変化の回避を目的とするため、既知のアッセイを超える利点を有する。Ca++を用いない処理はRhoキナーゼのシグナル伝達経路を含む幾つかのシグナル伝達経路を著しく破壊する可能性があるため、本発明にとって好ましいジャンクション破壊物質はメタロプロテアーゼファミリー(MMP)に属する。最近、これらの酵素は、ジャンクション複合体、主にタイト・ジャンクション部で役割を果たすものとして記載された。本発明の範囲において、有利には、成熟肝細胞内でのそれらの主要な位置は、毛細胆管膜ドメインであり、かつ、それらの主な役割は、ジャンクションタンパク質の変化およびジャンクションバリアの破壊/透過化であると報告された。
【0037】
MMP2、MMP7、MMP9などを含む幾つかのMMPがこの役割を果たし得る。これらのMMPは、好ましくは不活性化形態である。故に、使用の前にMMPの活性化が要求される。好ましくは、活性化は、p−アミノフェニル水銀アセテート(APMA)を用いて37℃で一晩インキュベートすること(Vermeer PD et al.,2009)によって得られる。次いで、評価項目の種類に応じてマーカー化合物の添加の直前またはマーカー化合物と同時またはマーカー化合物を蓄積させた後に、MMPを培養物に添加することができる。本発明で使用されるMMPの例としては、MMP9、並びにMMP2などのその他のMMPが挙げられる。
【0038】
このアッセイは、胆管空間における最大胆管成分蓄積量(mBCA)の定量を可能にする。この定量は「胆管空間」に依存する。この用語は、細管腔容量を概算する手段としての、細管の狭い表面およびより大きな表面を含む細管ネットワーク内側の全表面を指す。優先的には、mBCAを、候補化合物に曝露された(化合物に応じて2〜4時間)分化肝細胞から算出し、次いで洗浄し、胆管空間に色素を蓄積させるためにマーカー化合物に曝露(色素に応じて約30分間)し、次いで洗浄し、培地内への色素分子の完全な放出のために活性化MMP(優先的にはMMP9)で透過化し(約45〜60分間)、その後、上澄みなどでの蛍光発光を即座に定量する。
【0039】
任意に、メタロプロテアーゼによるジャンクション部の透過化は、それを促進すべく大きな蛍光分子が進入している間に行うことができる。この後者の試験は、アッセイにおいてメタロプロテアーゼ透過化の有効性を制御することを可能にし、また、MMP処理後のジャンクション空間透過性の検証を可能にする。好ましくは、BODYPY−C12−スフィンゴミエリンなどの、BODIPYファミリーに属する大きな蛍光分子を使用することができる。それらの分子は、細管空間内を除き、細胞内部に移動することができず、MMPによる透過化は色素の進入を大きく促進する。色素マーカー化合物の分子サイズが大きいために、数時間後には最大蓄積量が得られ、それにより工程の順序が異なる。優先的には、上述のように、分化した細胞を候補化合物に曝露し、次いで、細胞を洗浄し、同時に大きなサイズのマーカー分子および活性化MMPに曝露する(約45〜60分間)か、またはMMPへの曝露後に大きなサイズのマーカー化合物を細胞培養物に曝露し、次いで洗浄し、培養培地内へ色素を蓄積するためにインキュベートし(添加後、約20時間)、次いでトリトンX100溶液で破壊して、培地中への完全な色素の放出および蛍光定量を行う。
【0040】
本発明はまた、インサイチュ免疫局在またはウェスタンブロッティング分析ストラテジーを用いてリン酸化形態で蓄積されたミオシン軽鎖を検出することを含む補足的アッセイを想定する。このアッセイは、異常なRhoキナーゼ経路活性の徴候を規定する。アクチン収縮に関与する蓄積されたリン酸化ミオシンII形態の定量に基づきRhoキナーゼ活性を測定するために、市販のキットを使用することもできる(Merck−Milliporeにより販売されているキット)。更に、HCSまたは微速度ストラテジーを用いた画像分析は、効率的なスクリーニングに適合し得る。
【0041】
「胆管腔および/またはジャンクション部の障害の検出」という用語は、管腔のサイズまたは形状、アクチン狭窄または弛緩、ジャンクション複合体におけるジャンクションタンパク質の発現および分布、MMP発現/活性化、並びに、膜または細胞内局在におけるあらゆる変化を指す。好ましくは、ファロイジン染色を用いて傍細管環周辺のF−アクチン組織を評価する。しかしながら、アクチン分布は頂端極に限定されず、有利には、トランスポーターによって胆管極まで運ばれる蛍光マーカー化合物は全て、画像分析を伴うハイコンテントスクリーニングのためにも使用することができる。CDFDAをマーカー化合物として使用して、典型的なアッセイを行った。特定の頂端トランスポーター、特定のジャンクションタンパク質、MMPまたはp−ミオシン軽鎖を特異的に局在化させるために、免疫染色などの更なるツールを選択することができる。
【0042】
本発明の様々な実施態様の更なる利点は、本明細書の開示および以下の実施例を検討することにより、当業者には明らかであろう。本明細書に記載された様々な実施態様は、特に断らない限り、必ずしも相互排他的ではないことが理解されよう。例えば、1つの実施態様に記載または図示される特徴は、他の実施態様に含まれてもよいが、必ずしも含まれる必要はない。したがって、本発明は、本明細書に記載の特定の実施態様の様々な組み合わせおよび/または統合を包含する。
【0043】
本明細書で使用する際、「および/または」という句は、2つ以上の項目のリストで使用される場合、列挙された項目のいずれか1つが単独で使用され得ること、または列挙された項目の2つ以上の任意の組み合わせが使用され得ることを意味する。例えば、組成物が成分A、Bおよび/またはCを含有または除外するものとして記載されている場合、当該組成物はAを単独で、Bを単独で、Cを単独で、AとBを組み合わせて、AとCを組み合わせて、BとCを組み合わせて、またはA、BおよびCを組み合わて含有または除外することができる。
【0044】
本明細書が数値範囲を使用して本発明の様々な実施態様に関連する特定のパラメータを定量化する限りにおいて、そのような範囲は、当該範囲のより低い値のみを記載する請求項の限定、並びに、当該範囲のより高い値のみを記載する請求項の限定を文字通りに裏付けるものと解釈されるべきである。例えば、「約10〜約100」という数値範囲が開示される場合、「約10よりも大きい」(上限なし)を記載する請求項、および「約100未満」(下限なし)を記載する請求項を文字通りに裏付けるものである。
本発明は以下の通りである。
[1]毛細胆管機能障害を誘発する候補化合物をスクリーニングするインビトロ方法であって、
細胞培養培地と、肝細胞と、管腔を特徴とする胆管空間を有する毛細胆管構造とを含む細胞培養物を、候補化合物に曝露すること、および
胆管空間の形態変化を検出すること
を含む方法。
[2]前記肝細胞が、不死化肝細胞、初代培養肝細胞、新たに単離された肝細胞、凍結保存肝細胞およびサンドイッチ培養肝細胞からなる群から選択される、上記[1]に記載の方法。
[3]前記肝細胞が、少なくとも1層の肝細胞、肝細胞の集合体または肝細胞の3次元クラスタを含む、上記[1]または[2]に記載の方法。
[4]前記肝細胞が、HepaRG細胞、またはその誘導体若しくはその改変細胞株を含む、上記[1]〜[3]のいずれかに記載の方法。
[5]前記胆管空間の形態変化の検出が、
前記細胞培養物を画像化すること、および
前記管腔のサイズまたは形状の変化を測定することを含む、上記[1]〜[4]のいずれかに記載の方法。
[6]前記管腔が、狭窄した細管腔または膨張した細管腔のいずれかとして特徴付けられる、上記[5]に記載の方法。
[7]前記細胞培養物をマーカー化合物に曝露することを更に含む、上記[1]〜[6]のいずれかに記載の方法。
[8]前記候補化合物が、前記マーカー化合物に曝露される前に前記細胞培養物から除去される、上記[7]に記載の方法。
[9]前記候補化合物の存在下で前記細胞培養物を前記マーカー化合物に曝露する、上記[7]に記載の方法。
[10]管腔内部および/または外部での前記マーカー化合物の移動を検出および測定することを更に含む、上記[7]〜[9]のいずれかに記載の方法。
[11]前記検出および測定が、前記細胞培養物のインサイチュ微速度画像化を行うことにより、前記細胞から前記培養培地内への前記マーカー化合物の時間依存性消失を検出および測定することを含む、上記[10]に記載の方法。
[12]単位時間当たりに前記管腔から流出したマーカー化合物のパーセンテージを算出することを更に含む、上記[10]または[11]に記載の方法。
[13]蓄積した胆管成分を培地内へ迅速に放出させて定量するために前記培養物をジャンクション空間破壊物質に曝露すること(ここで、前記破壊物質は、細管および細管小胞の特異的透過化のために選択される)、および
単位時間当たりに細管空間に蓄積したマーカー化合物の量を算出して、細胞内部または細胞外部から毛細胆管内部へと移動することができ、かつ、細管および細管腔内に蓄積することができる小分子または大分子の最大量を測定することを更に含む、上記[10]〜[12]のいずれかに記載の方法。
[14]前記マーカー化合物が、蛍光CDFDAなどの小分子蛍光色素であり、細胞内部から胆管極へと向けられ、かつ、対照細胞および薬物処理細胞の内部の胆汁貯蔵空間に一定の期間蓄積される、上記[13]に記載の方法。
[15]前記マーカー化合物が、BODIPY−C12−スフィンゴミエリンなどの大蛍光分子であり、側底ドメインを通って細胞内に受動的に進入することができず、かつ、細胞外部から細管空間を通じて特定的に進入して細管空間に蓄積する、上記[13]に記載の方法。
[16]マーカー化合物の蓄積前に、それと同時に、またはその後にマトリックスメタロプロテアーゼを前記培養物に添加することを更に含む、上記[13]〜[15]のいずれかに記載の方法。
[17]毛細胆管機能障害を誘発する候補化合物をスクリーニングするインビトロ方法であって、
細胞培養培地と、肝細胞と、管腔を特徴とする胆管空間を有する毛細胆管構造とを含む細胞培養物を、候補化合物に曝露すること、
前記候補化合物への前記曝露の後に前記細胞培養物を洗浄すること、
前記洗浄した細胞培養物をマーカー化合物に曝露してマーカー化合物を胆管空間に蓄積させ、それにより蓄積させたマーカー化合物を含む細胞培養物を生成すること、
蓄積させたマーカー化合物を含む前記細胞培養物を洗浄すること、
蓄積させたマーカー化合物を含む前記洗浄した細胞培養物を、活性化したマトリックスメタロプロテアーゼに曝露すること、および
前記マーカー化合物の前記培養培地内への放出を検出および定量すること
を含む方法。
[18]前記細胞培養物を前記候補化合物に約2時間〜約4時間曝露する、上記[17]に記載の方法。
[19]前記洗浄した細胞培養物を前記マーカー化合物に約30分間曝露する、上記[17]または[18]に記載の方法。
[20]蓄積させたマーカー化合物を含む前記洗浄した細胞培養物を、前記活性化したマトリックスメタロプロテアーゼに約45分〜約60分間曝露する、上記[17]〜[19]のいずれかに記載の方法。
[21]前記活性化したマトリックスメタロプロテアーゼが、MMP2、MMP7およびMMP9からなる群から選択される、上記[17]〜[20]のいずれかに記載の方法。
[22]前記マーカー化合物が、蛍光CDFDAなどの小分子蛍光色素である、上記[17]〜[21]のいずれかに記載の方法。
[23]毛細胆管機能障害を誘発する候補化合物をスクリーニングするインビトロ方法であって、
細胞培養培地と、肝細胞と、管腔を特徴とする胆管空間を有する毛細胆管構造とを含む細胞培養物を、候補化合物に曝露すること、
前記候補化合物への前記曝露の後に前記細胞培養物を洗浄すること、
活性化したマトリックスメタロプロテアーゼおよびマーカー化合物に前記洗浄した細胞培養物を曝露してマーカー化合物を胆管空間に蓄積させ、蓄積させたマーカー化合物を含む細胞培養物を生成すること(ここで、前記マーカー化合物は、活性化したマトリックスメタロプロテアーゼへの前記細胞培養物の曝露中またはその後に前記細胞培養物に添加される)、
蓄積させたマーカー化合物を含む前記細胞培養物を洗浄すること、
前記細胞培養物をインキュベートして、前記培養培地内にマーカー化合物を蓄積させること、
ポリエチレングリコールp−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−フェニルエーテルなどの非イオン性界面活性剤で前記細胞培養物を破壊すること、および
前記マーカー化合物の前記培養培地内への放出を検出および定量すること
を含む方法。
[24]前記細胞培養物を前記候補化合物に約2時間〜約4時間曝露する、上記[23]に記載の方法。
[25]前記洗浄した細胞培養物を前記マーカー化合物および活性化したマトリックスメタロプロテアーゼに約30分〜約60分間曝露する、上記[23]または[24]に記載の方法。
[26]前記活性化したマトリックスメタロプロテアーゼが、MMP2、MMP7およびMMP9からなる群から選択される、上記[23]〜[25]のいずれかに記載の方法。
[27]前記マーカー化合物が、大蛍光分子である、上記[23]〜[26]のいずれかに記載の方法。
[28]前記細胞培養物が、Ca++非含有緩衝液を含まないものである、上記[1]〜[27]のいずれかに記載の方法。
[29]Rhoキナーゼ分子調節経路の活性化または阻害により毛細胆管腔の機械的運動を調節するための、Rhoキナーゼ経路アクチベーターまたはインヒビターの使用。
[30]毛細胆管腔の機械的運動をインビトロで調節する方法であって、
細胞培養培地と、肝細胞と、管腔を特徴とする胆管空間を有する毛細胆管構造とを含む細胞培養物を準備すること、および
前記細胞培養物をRhoキナーゼ経路のインヒビターまたはアクチベーターに曝露すること
を含む方法。
[31]前記インヒビターまたはアクチベーターが、Rhoキナーゼ活性を直接的に阻害または活性化させる、上記[30]に記載の方法。
[32]前記インヒビターまたはアクチベーターが、Rhoキナーゼ分子調節経路内のRhoキナーゼの上流または下流で酵素を阻害または活性化させることによってRhoキナーゼ活性を間接的に阻害または活性化させる、上記[30]に記載の方法。
[33]前記細胞培養物が、ボセンタンなどのRhoキナーゼインヒビターに曝露され、前記毛細胆管腔が前記曝露の後に弛緩する、上記[30]に記載の方法。
[34]前記細胞培養物が、クロルプロマジンまたはシクロスポリンAなどのRhoキナーゼアクチベーターに曝露され、前記毛細胆管腔が前記曝露の後に収縮する、上記[30]に記載の方法。
[35]培養物中の肝臓の胆管極性および分化を調節するインビトロ方法であって:
肝細胞の細胞培養物を準備すること、および
前記細胞培養物をRhoキナーゼアクチベーターに曝露し、分化肝細胞を生成することを含む方法。
[36]毛細胆管機能障害を誘発する候補化合物をスクリーニングするためのキットであって、
極性化成熟肝細胞、
F−アクチン、
マーカー化合物、
マトリックスメタロプロテアーゼ、および
マトリックスメタロプロテアーゼアクチベーターを含む、キット。
[37]前記極性化成熟肝細胞が、HepaRG細胞である、上記[36]に記載のキット。
[38]標的トランスポーターの存在または非存在下で毛細胆管機能障害を誘発する候補化合物をスクリーニングするためのキットであって、
極性化成熟肝細胞、
前記極性化成熟肝細胞由来の改変肝細胞であって、前記標的トランスポーターがノックアウトされた改変肝細胞、
F−アクチン、
マーカー化合物、
マトリックスメタロプロテアーゼ、および
マトリックスメタロプロテアーゼアクチベーターを含む、キット。
[39]肝細胞と、管腔を特徴とする胆管空間を有する毛細胆管構造とを含むインビトロ培養物上で管腔の開放およびクリアランスを調節するためのメタロプロテアーゼの使用。
[40]管腔の開放およびクリアランスをインビトロで調節する方法であって、
細胞培養培地と、肝細胞と、管腔を特徴とする胆管空間を有する毛細胆管構造とを含む細胞培養物を準備すること、
前記細胞培養物をRhoキナーゼアクチベーターに曝露すること(ここで、前記毛細胆管腔は前記曝露の後に収縮する)、および
前記細胞培養物をマトリックスメタロプロテアーゼに曝露すること(ここで、前記管腔は前記曝露の後に開放かつクリアランスされる)
を含む方法。
[41]患者における胆汁うっ滞を診断する方法であって、
患者から収集した生物学的試料を準備すること、および
前記生物学的試料をマトリックスメタロプロテアーゼについて分析すること(ここで、前記試料内に存在するマトリックスメタロプロテアーゼは閉塞性胆汁うっ滞を示すマーカーである)
を含む方法。
[42]前記生物学的試料が血清である、上記[41]に記載の方法。
【実施例】
【0045】
以下の例は本発明による方法について記載する。しかしながら、これらの例は例証として与えられるものであり、その中のいずれも本発明の範囲全体に対する限定として取られるべきではないことを理解すべきである。以下の実験例は、胆管クリアランス活性の変化と毛細胆管の形態学的および機械的障害との相関関係の確立に関する。
【0046】
序論
毛細胆管腔の発生に関与するとともに肝細胞におけるそれらの極性化組織に寄与する形態形成動態が、表面配向型頂端膜輸送を推進する高度に制御されたシグナル伝達カスケードを伴うことは十分に確立されている。これら制御における主要なプレーヤーとしては、細胞骨格組織および細胞運動性に関するRabタンパク質、RhoGTPアーゼ(Rhoキナーゼを含む)およびアクチン分布が挙げられる。Rhoキナーゼ経路は、肝細胞内での頂端極性の確立に寄与することが報告されている。しかしながら、その細管腔機能および胆汁塩流動や薬物クリアランスに対する寄与については全く研究されておらず、認識されていない。
【0047】
血管収縮および血管緊張の調節におけるRhoキナーゼ経路の役割(図3)は、血管平滑筋収縮に関する重大事象として、Rhoキナーゼ経路活性化の結果とともに記録されている。例えば、肺動脈高血圧(PAH)治療のための新規候補薬物が現在入手可能である最も強力な抗PAH薬物のうちの2種よりも優れていることを実証する幾つかの説得力のある実験研究を通じて、PAHに対する特異的療法の見識がここ5年の間に主張された。この治療ストラテジーは、当該疾患の発症機序において重要な役割を担うと考えられている酵素であるRhoキナーゼの阻害を含むものであった。実際、この経路活性化の第1工程は、Gタンパク質共役型血管収縮受容体を介する収縮作用物質を伴う。これら受容体は、小さな単量体GTPアーゼであるRhoAを活性化させる。その後、RhoAがRhoキナーゼを活性化させ、次いでミオシン軽鎖ホスファターゼ(MLC−ホスファターゼ)を阻害し、結果として、アクチンと相互作用するリン酸化ミオシンIIの蓄積が増大して収縮反応を誘発する。しかしながら、Rhoキナーゼインヒビター治療の概念に基づく大半の薬物は、胆汁うっ滞の副作用を引き起こしやすいようである。ボセンタンおよびファスジルは、これら薬物の主要な代表的候補として考えることができる。
【0048】
血管収縮受容体インヒビターはどのように胆汁うっ滞機序と関連し得るのであろうか。Rhoキナーゼは、ヒト硬変肝および胆管結紮ラットにおける肝内血管緊張の調節を仲介することが示されている。しかしながら、毛細胆管活性の変化と関連する肝内障害の発症におけるRhoキナーゼ経路の直接的な寄与は、これら薬物を用いては実証されていない。
【0049】
上皮層の頂端環収縮に関与するアクトミオシン複合体の活性化はRhoキナーゼ依存性ミオシン軽鎖リン酸化により仲介される。それに対して、管腔ポケットのクリアランスのために頂端ドメインにある頂端ジャンクション複合体によって形成される物理的バリアの開放を制御する機構は依然として疑問のままである。以前よりCaco2およびMDCKIIなどの上皮細胞モデルを用いて様々な研究が行われている。しかしながら、極性化肝細胞はこれに関連して分析されず、ミオシンリン酸化と関連する毛細胆管腔の収縮性を含む概念は考慮も認識もされなかった。
【0050】
これらバリアの形成および維持は、一連の細胞間接触に依存している。細胞間接触は、各細胞の頂端−側縁の境界を定め、個々の細胞間の強力な接着界面を促進するアドヘレンス・ジャンクション(AJ)と、イオン、マクロ分子、免疫細胞および病原体間の細胞間移動に対する物理的バリアを形成するタイト・ジャンクション(TJ)を含む。AJおよびTJはいずれも、表層アクチン細胞骨格と密接に関連し、かつ、周辺のアクトミオシンフィラメントによって機能的に調節される。
【0051】
分子レベルでは、ZOタンパク質などのジャンクション構成タンパク質が頂端狭窄に関与することが示された。故に、MDCKII細胞におけるこれらZOタンパク質の実験的なノックダウンは、タンパク質レベルを変えることなく、ROCK−1、全MLCまたは1p−MLCなどのアクトミオシン収縮の活性化に通常関与するマーカーの再分布を引き起こすことが示されている。実際、これらの研究においては、AJCにはあったとしてもわずかである1p−MLCが正常細胞で検出された。
【0052】
要約すると、ミオシン軽鎖リン酸化は、アクトミオシン狭窄の活性化に寄与するとともにZO−1、クローディンおよびオクルジンタンパク質のような構成タンパク質の関与によりタイト・ジャンクション機構を調節し、それにより、小分子に対する上皮頂端環の傍細胞空間の透過性をある程度まで制御するようである。大分子に関して、それら分子が一時的な裂け目を通過することができ、経時的な透過性が、連続して幾つかの裂け目を横切る運動の総計であるという1つのモデルが提案される。ジャンクション周縁のアクトミオシン環の収縮によりこのような一時的な裂け目が生じ得ることが提案されている。
【0053】
この収縮制御に関する他の重要なパートナーは、メタロプロテアーゼ酵素ファミリーに代表され得る。これら酵素の役割は、細胞外マトリックスの堆積および機構を制御することに限定されてきた。しかしながら、ここ10年の間、これら酵素は、ミオシン軽鎖分解やアクトミオシン環を形成するタンパク質への直接的な役割などの多くの他の機能を果たすものとして説明されている。興味深いことに、最近になって、メタロプロテアーゼMMP2は心不全の状況における異常な収縮活性を調節することができるものと示された。MMP2、3、7、9は高度に発現し、主に毛細胆管の頂端ドメイン、つまり、ジャンクション複合体近くに局在している(図4)。細管ジャンクションバリアの透過性に関するそれらの役割は確立されておらず、MMPおよび肝臓内への毛細胆管腔の透過性に関するそれらの役割については何も知られていない。
【0054】
実施例1:前駆細胞および分化HepaRG細胞と、初代ヒト肝細胞単層(HH)でサンドイッチしたコラーゲン層(S−HH)との比較
Rhoキナーゼ経路の制御をアクチベーターとインヒビター:ROCKi(Y27632)とミオシン重鎖ATPアーゼインヒビター(BDM)により行いつつ、当該細胞をCPZおよび異なる胆汁うっ滞薬で処理した。細胞極性を説明するために免疫蛍光法および画像分析を行った。細管流出を測定するために、胆汁酸であるタウロコール酸塩の取り込みおよび放出を行った。Rhoキナーゼ経路の誘発または阻害を分析した。
【0055】
1 頂端毛細胆管の形成
1.1 HepaRG細胞対ヒト肝細胞における細管極性の発生
細胞培養物。10%ウシ胎児血清、100U/mLペニシリン、100mg/mLストレプトマイシン、5mg/mLインスリン、2mMグルタミンおよび50mMヘミコハク酸ヒドロコルチゾンを補充したウィリアムズE培地において24ウェルプレートから300,000細胞/ウェルの密度でHepaRG細胞を播種した。1週間後、最大機能活性を有するコンフルエントな分化培養物を得るため、1.7%ジメチルスルホキシドを補充した同培地にHepaRG細胞を更に2週間移した。この時、これら培養物は始原胆管細胞に囲まれた成熟肝細胞様細胞を含有していた。
【0056】
1.2 細胞極性の測定
分化プロセス中の様々な時間のHepaRG細胞が選択された:2日目は初期の前駆細胞に相当し、6日目は後期の前駆細胞に相当する。高濃度のF−アクチンが裏打ちされた毛細胆管腔によって毛細胆管を検出した。F−アクチン、トランスポータータンパク質pGP、MRP2およびMRP3並びにジャンクションタンパク質ZO−1を染色するべく、細胞を4%パラホルムアルデヒド(HBSS中での重量/体積、pH7.2)内に20分間固定した。3回洗浄した後、0.1%トリトンX−100(HBSS中での重量/体積)で細胞を室温で5分間透過化した。細胞を洗浄し、1%BSA(HBSS中での重量/体積、pH7.4)で室温にて30分間ブロックした。BSAを除去し、一次mAbを用いて細胞を室温にてインキュベートした。細胞を洗浄し、Alexa−fluor−488または596(HBSS中1/400に希釈)と結合した二次抗体(2μg/ml)を用いて室温にて45分間インキュベートした。細胞を洗浄し、Zeissの顕微鏡で観察した。任意に、細胞をHoechst溶液で対比染色した。図5および図6を参照。
【0057】
1.3 Rhoキナーゼ経路により制御される胆管極性
細胞を上述のように培養した。播種から2日後、特異的ROCKインヒビターであるY27632(2.5μM)の非存在または存在下で未分化の前駆細胞を培養し、分化の進行について毎日観察した。並行して、Rhoキナーゼキット(Merk−Millipore)を用いて製造業者に従ってRhoキナーゼ活性を測定した。図7を参照。、6日目の分化HepaRGおよび初代ヒト肝細胞における毛細胆管腔の分布は同じである。Rhoキナーゼは両モデルにおける頂端極性の確立に寄与する。
【0058】
2 Rhoキナーゼインヒビターにより阻害された細管のCPZ誘発性狭窄
2.1 HepaRG細胞におけるCPZによる狭窄の誘発
2週間DMSO処理したHepaRG培養物を50μMのCPZに2時間曝露し、曝露中の様々な時間に分析した。狭窄はファロイジンを用いたF−アクチン染色により証明された。図8を参照。
【0059】
2.2 HepaRG細胞におけるCPZによる流出の変化
タウロコール酸塩(TA)の流出。最初に、細胞を[3H]−TAに30分間曝露し、次いでPBSで洗浄し、Ca2+およびMg2+を含む標準的な緩衝液中でCPZを用いてまたは用いずに異なる時間(0〜6時間)でインキュベートした。インキュベーション時間後、細胞をPBSで洗浄し、Ca2+およびMg2+非含有緩衝液を用いて5分間インキュベートして細管のタイト・ジャンクションを破壊した。次いで、それらを0.1NのNaOH中でこそぎ取り、残存する放射標識基質をシンチレーション計測により測定してTA流出を測定した。側底流出および細管流出を区別するために、残存する放射標識TAを測定する前に、標準的な緩衝液またはCa2+およびMg2+非含有緩衝液のいずれかの中で並行して細胞をTA取り込み後から30分間インキュベートした。以下の方程式を用いて細管流出を算出した。細管流出:流出培地としてのCa2+およびMg2+非含有緩衝液中の放射能−流出培地としての標準的な緩衝液中の放射能。放射標識TAを添加する前に、分化細胞をCPZ(50μMで2時間)に曝露した、または曝露しなかった。図9を参照。
【0060】
2.3 細胞骨格の再編成
対照細胞と、CPZおよびY27632で2時間処理した培養物との細胞骨格組織の比較。ファロイジンを用いて胆管に蓄積されたF−アクチン繊維を標識し、Hoechst染色により核の対比染色を行った。図10を参照。
【0061】
2時間後、細管腔の狭窄をCPZの存在下で観察した。薬物により誘発された収縮(CPZ)または膨張(Y27632)事象に従って胆管腔を形成する細胞の再編成。CPZ存在下でのタウロコール酸塩流出の低減を伴う、毛細胆管活性の欠如と相関する形態変化。CPZと共にRHOKiが存在することによりタウロコール酸塩流出活性の回復が誘発される。
【0062】
要約すると、Rhoキナーゼインヒビター存在下での細管腔の狭窄または膨張は、細胞単層の再編成および細胞内細胞骨格の再編成と関連しており、これらは結果として細胞の正常な運動の変化をもたらし、主に管腔ポケットのクリアランスを引き起こす。
【0063】
3 ROCKの活性化はCPZにより誘発される収縮を模倣する
3.1 Rhoキナーゼ経路の関与
投与量を増加させたCPZ(1〜50μM)に分化HepaRG細胞を2時間曝露し、製造業者に従ってRhoキナーゼ活性を測定した(Merck−Milliporeのキット)。未処理細胞およびRhoキナーゼインヒビターY27632(10μM)に曝露された細胞を対照として使用した。
【0064】
リン酸化軽鎖ミオシンの蓄積は、(P)−MYl2抗体を用いてウェスタンブロッティング法によって実証した。対照細胞、CPZで2時間処理した細胞およびy27632で2時間処理した細胞を比較した。細胞溶解産物を調製した。図11を参照。Rhoキナーゼの用量依存的活性化をCPZを用いて観察し、リン酸化ミオシン(p−MY12)、Rhoキナーゼインヒビター(Y27632)、ミオシンリン酸化インヒビター(BDM)に特異的な抗体を用いた免疫ブロッティングにより示されるように、活性化はミオシン軽鎖リン酸化の蓄積と関連している。
【0065】
3.2 他の胆汁うっ滞剤はRhoキナーゼ経路の活性化を必要とする
対照の分化HepaRG培養物と培養物を、シクロスポリンA(1〜50μM)およびタクロリムス(1μMおよび50μM)の濃度を上昇させて2時間処理して収穫し、上述のように溶解物を調製し、Rhoキナーゼ活性のために使用した。図12を参照。これらの胆汁うっ滞剤は全て管腔狭窄を誘発している。シクロスポリンA(CsA)、タクロリムス(Fk)、およびAnitは全て、胆汁うっ滞作用を誘発することが知られている。これらはRhoキナーゼ活性を活性化させる。
【0066】
実施例2
実施例で使用する材料および方法
細胞株および細胞培養物
第12継代〜第16継代のサブコンフルエントなHepaRG細胞を5分間、トリプシン−EDTA溶液によって分離し、以前に記載されたような(Gripon P et al.,2002、Pernelle K.,2011)ヘミコハク酸ヒドロコルチゾン(10−6M)、インスリン(4μg/ml)および10%FCFを含有するウィリアムズE培地で24ウェルプレートに300,000細胞/ウェルの密度で再播種した。当該細胞を1週間維持し、コンフルエントとした。この段階で、それらは肝細胞分化に決定付けられた。1.7%DMSOを加えた同培地においてそれらを更に2週間維持した。DMSOにより当該細胞は成熟プログラムを完了した。成熟細胞をDMSOへ2週間曝露した後に使用して候補化合物を試験した。培地は週に3回新品と交換した。
【0067】
候補化合物への曝露
候補化合物は、クロルプロマジン、シクロスポリンBおよびエフェクチンまたはファスジルなどの胆汁うっ滞薬であった。供給者の推奨に従って、化合物を水またはDMSOに溶解した。実証のために、クロルプロマジン(CPZ)を準毒性用量50μMで使用して1〜4時間曝露した(Antherieu S.,2013)。Y27632(エフェクチン(EF)ともいう)などのRhoキナーゼに対する拮抗分子を陰性対照として使用した。実証のために、EFを水で希釈した後に10μMで使用し、−20℃で保持した。
【0068】
2週齢の分化HepaRG細胞培養物を新鮮な培地で1回洗浄し、上記濃度でまたは濃度を上昇させて培地に添加した候補化合物に曝露して、用量反応動態を確立した。実験に応じて、曝露は30分〜4時間続けた。
【0069】
胆管空間の変化を伴う、細胞運動における機械的障害の検出
以下の2つの補足的アプローチを行った。
i)微速度画像化による対照細胞および処理細胞の機械的運動の分析。これにより、顕微鏡(AxioVision,Zeiss)を用いて位相コントラスト下で生細胞をインサイチュで観察することが可能となる。4時間の観察期間にわたって収集した一連の画像を含む3つのフィルム、即ち、対照細胞、CPZ処理細胞およびEF処理細胞のフィルムを作成した。
【0070】
ii)ファロイジンおよび蛍光CDFDA染色を用いたF−アクチン組織および胆管腔の変化の分析。候補化合物への曝露の後、細胞を2回洗浄し、パラホルムアルデヒド(4%)固定剤で20分間固定し、洗浄し、ファロイジンで10分間染色した。CDFDA染色に関し、詳細を以下に示す。
【0071】
顕微鏡で得られた画像を使用して、処理した後の胆管腔のサイズを算出した。セロミクス装置を使用して定量するのに適したアルゴリズムが開発されている。CPZの存在下で狭窄を検出し、一方、EFでは膨張を観察した。
【0072】
トランスポーター(pGP、MRP2など)、ジャンクションタンパク質(ZO−1、クローディンおよびオクルジン)の分析は、特異的抗体を用いた免疫局在により行われた。p−Myl抗体を用いたウェスタンブロッティングによってリン酸化ミオシン軽鎖の蓄積を行った。
【0073】
胆管クリアランス活性
第1工程はマーカー化合物を用いたインキュベーションであった。CDFDAを優先的に使用した。洗浄後、24ウェルプレートからウェル内にプレーティングした分化細胞を、HBSS緩衝液で2回洗浄し、Ca++緩衝液を含有するHBSS緩衝液(pH7.4)中で3μMの最終濃度で調製したCDFDA溶液250μlを用いてインキュベートした。30分後、細胞を同緩衝液で洗浄した。胆管空間からのCDFDAクリアランス動態の後、390〜420の波長にて蛍光染色用に装備された顕微鏡を用いて15分間毎1時間画像化したところ、蛍光色素が徐々に消失していくのが確認された。培地中の蛍光色素の定量を行う。
【0074】
対照(未処理)と、CPZ処理細胞およびEF処理細胞との間で比較進化が確立された。色素のクリアランスにおける遅延が明瞭に観察された。放出された蛍光色素分子の量の算出を分光分析によって行い、単位時間当たりの細管クリアランス効率(CCE)を測定した。
【0075】
ローダミン123をマーカー化合物として使用して別のアッセイを行った。CPZおよびEFの両候補化合物を用いて、色素クリアランスにおいても遅延を観察し、それにより、試験のために別のマーカー化合物を使用する可能性を確認した。予想したように、細胞内の赤色蛍光のバックグラウンドが、色素によるミトコンドリア標識に起因して維持されたことが分かる。
【0076】
胆管空間における最大胆管成分蓄積量
胆管活性アッセイの本最終工程は、マーカー化合物を用いたインキュベーションを包含し、先のようにCDFDAを優先的に使用した。30分後、細胞を同HBSS緩衝液で洗浄した。次いで、ジャンクション空間のメタロプロテアーゼによる透過化を30分間行った。MMP9を優先的に使用した。原液をトリス緩衝液において10mMで調製した。Vermeer PD et al. (2009)に記載されるように、MMP9の活性化が要求された。p−アミノフェニル水銀アセテート(APMA)を用いて37℃で一晩(20時間)インキュベートすることによって活性化を行った。APMA溶液をDMSOに溶解し、10mMの濃度で使用した。それをMMP9溶液と混合することによって10倍に希釈して、1mMの最終濃度APMAを得た。活性化の後即座に、活性化MMP9溶液を0.54μMの最終濃度で培地内に使用した。候補化合物による非処理細胞または候補化合物で処理した細胞を次いでマーカー化合物(本アッセイではCDFDA)を用いて30分間インキュベートし、Ca++含有HBSS緩衝液で2回洗浄し、即座に活性化MMP9溶液を用いて30分間インキュベートした。蛍光マーカーの培地への放出された後、15分間毎に観察した。色素放出は、MMP9陰性ウェルと比較してMMP9の存在下では非常に迅速であった。これは、酵素処理の有効性を示している。培地内へ放出された色素を分光分析により定量することによって、10細胞/単位時間の最大胆管成分蓄積量(mBCA)を測定した。
【0077】
スフィンゴミエリン−BODIPYアッセイ
BODIPY−C12−スフィンゴミエリンをマーカー化合物として使用して、mBCA算出の代案を行った。Vermeer PD et al. (2009)に記載されるように、このマーカーを調製した。P緩衝液(145mMのNaCl、10mMのHEPES、pH7.4、1mMのピルビン酸Na、10mMのグルコース、3mMのCaCl)中10mgのBSAを用いてBODIPY−FL−C12−スフィンゴミエリン(Invitrogen-Molecular Probes, Carlsbad, CA)を30分間氷上でインキュベートし、スフィンゴミエリン−BODIPY−BSAを生成した。分化HepaRG細胞を冷P緩衝液で3回洗浄した。スフィンゴミエリン−BODIPY−BSAを10〜15分間細胞に適用し、その後吸引し、細胞を氷冷P緩衝液で2回洗浄した。細胞を氷上で1時間維持し、その後、顕微鏡で分析した。規定の実験を行うため、スフィンゴミエリン−BODIPYを添加する直前に、細胞を37℃で30分間活性化MMP9で処理した。トリトンX−100溶液で細胞を破壊し、培地内での蛍光発光を分析することによってmBCAの算出を行うことができる。
【0078】
結果
これらの結果は、2つの別個の胆汁うっ滞表現型の証拠を示す。実施例1は管腔狭窄を伴う胆汁うっ滞表現型を実証する。実施例2は、管腔膨張を伴う新たな胆汁うっ滞表現型を実証する。図13に示すように、エンドセリン受容体拮抗薬(ERA)の薬物ファミリーも、胆汁うっ滞を誘発する。胆汁うっ滞を誘発する他の例は、ファスジル、ANITおよびデオキシコール酸(DCA)などのRhoキナーゼインヒビターである。
【0079】
これらの結果はまた、F−アクチン標識を用いた細管空間の変化を実証する。図14は、CPZおよびCsAによる管腔の狭窄、並びにファスジル、ANITおよびSCAによる膨張を示す。位相コントラストによって観察した生細胞は毒性を含んでいない。F−アクチンをファロイジンで標識する(核をHoechst染色した)。示されるように、蛍光CDFDA化合物が胆管腔内に蓄積する。
【0080】
これらの結果はまた、細管の狭窄/弛緩におけるRhoキナーゼ経路の直接的な寄与を示している。これは実施例1からも分かる。更に、実施例2および図15に示されるように、Rhoキナーゼアクチベーター(CPZおよびCsA)の存在下でP−ミオシンが蓄積し、1時間後、Rhoキナーゼインヒビター(エフェクチンおよびBDM)の存在下でP−ミオシンリン酸化が阻害される。全ミオシンおよび特定のリン酸化形態P−MYL9に対する抗体を用いたウェスタンブロッティングも示される。ヒストグラムは、P−MYL9の相対量を表す。
【0081】
このデータはまた、ジャンクション複合体の機構および透過性制御におけるメタロプロテアーゼの役割に関する情報を示す。図16は、特異的一次抗体を用いた、Rhoキナーゼアクチベーター(CPZおよびCsA)およびインヒビター(ファスジル、AnitおよびDCA)で処理した細胞培養物中での、1つのジャンクションタンパク質であるZO−1の発現および分布を示す。全培養物において、胆管極でのタンパク質の分布は正常のようであることに留意されたい。それに対して、RhoキナーゼインヒビターであるファスジルおよびY27632の存在下では、標識タウロコール酸塩の蓄積が異常であることが判明した。図17は、細管空間を含む細胞内に蓄積された標識タウロコール酸塩の定量を、対照条件と比較して、ファスジルおよびY27632化合物の増大する濃度の関数として示す。多数の膨張した管腔に寄与するファスジルの最も高い値に留意されたい。
【0082】
また、RhoキナーゼインヒビターY27632の存在下での胆管クリアランスの遅延が実証された。図18は、対照細胞では主に細管空間に蓄積されたCDFDAが迅速に放出され、30分または1時間Y27632に曝露された細胞ではこの放出が遅延することを示す。Y27632での処理および洗浄の後にCDFDAを添加し、30分間全ての培養物中に受動的に入れて蓄積させ、その後除去し、フェノールレッド非含有培養培地と交換した。しかしながら、細胞をMMP9に曝露すると、CDFDA分子の細管クリアランス効率が増大した。これは図19に示されており、同図は、対照細胞と比較した、MMP9の存在下での胆管クリアランス効率を示している。細胞をRhoキナーゼインヒビターであるエフェクチン(10μM)で1時間処理し、次いで洗浄し、全ウェル内においてCDFDA溶液に30分間入れ替え、次いで洗浄し、フェノールレッドを含まず、かつ、必要であれば活性化MMP9が添加された培地と交換した。MMP9の存在下での迅速なクリアランスにより、我々は更なる実験においてMMP9濃度を限定することに留意されたい。更に、図20に示されるように、細胞外部から細管空間内への大分子の最大蓄積を実証した。HepaRG細胞をエフェクチンで1時間処理し、次いで洗浄し、活性化MMP9を用いてインキュベートした。その後、細胞に10分間BODYPI−スフィンゴミエリン色素を受容させ、その後観察した。
【0083】
考察
肝細胞分化中の頂端膜極性の形態形成、細管の機械的運動および胆汁うっ滞中の機能不全を制御するRhoキナーゼ経路の直接的な寄与の実証。
本発明の1つの主な態様は、胆管極に形成された毛細胆管腔の収縮および弛緩の反復的な機械的運動がこれら運動の分子調節経路としてのRhoキナーゼ経路と直接関係していることの実証である。これを以下の手順によって評価した。
【0084】
−胆管極の機構を含むHepaRG肝細胞の極性を設定におけるRhoキナーゼの主な役割の実証。実際、胆汁うっ滞の肝組織において誘発された頂端管腔障害の機序の分析を更に進める前に、分化HepaRG細胞を、正常なヒト肝細胞におけるような特定の細管腔の発生に付随することが知られている形態形成動態を再生成するそれらの能力について分析した。Rhoキナーゼ活性の阻害がHepaRG肝細胞分化プロセスを阻止した。
【0085】
−微速度撮影技法によって生肝細胞コロニーを4時間観察すると、毛細胆管腔が狭窄および膨張の反復運動(例えば、HepaRG肝細胞においては45〜60分間毎)を行うことが分かった。管腔クリアランスに対するこれら規則的な収縮運動の直接的な役割が提案された。
【0086】
−Rhoキナーゼ自体、またはRhoキナーゼの上流または下流に対する異なるインヒビターを用いた、これら規則的な細管運動の制御におけるRhoキナーゼ経路の直接的な寄与の証明。リン酸化形態(p−MLC)でのミオシン軽鎖タンパク質の存在が、Rhoキナーゼ活性の結果としてのこれら運動と関連していた。
【0087】
本発明の別の主要な態様は、ミオシンリン酸化、ジャンクション複合体機構ならびに細管腔内部から外部へ小分子および大分子が移動するために透過性を制御する物理的バリアの間の関係性の確立である。これは、以下の事項によって支持された:
−Rhoキナーゼインヒビターを使用したp−MLC蓄積の阻害を目的とする実験は、閉鎖型限局性小胞での再編成と共に、アクチオミオシン環の弛緩および細管腔の膨張を示した;
−蛍光MRP2基質であるCDFDA流出の時間動態によって立証され、また、培地中に放出された蛍光色素および代替物としての放出された放射標識タウロコール酸塩の実際の経時変化(real time course)を用いることによって測定もされる、これら条件下での流出活性の遅延;
−タイト・ジャンクションタンパク質複合体の特性を変化させる活性化メタロプロテアーゼへの曝露(例えば活性化MMP9への曝露)による、効率的な放出活性の回復と関連する迅速な透過性。
【0088】
本発明はまた、胆汁うっ滞における毛細胆管活性の機能不全とRhoキナーゼ活性の変化との関係に関する証拠を提供し、結果として、2種類の胆汁うっ滞表現型を説明する。以下の事項により評価された:
−胆汁うっ滞性障害に伴う重要な形態形成変化の実証。これらの変化としては、薬物に応じて、異常で永続的な管腔狭窄(クロルプロマジンによる例)か、異常で長期間の細管腔膨張(ボセンタンの存在下での例)を含む。細管腔の形状およびサイズは、管腔周辺に環を形成するF−アクチン繊維の付着および蓄積によって規定される;
胆汁塩前駆体および/またはトランスポーター関連基質の管腔外への放出の遅延により示されるような毛細胆管機能活性の変化の証拠。一連のアッセイは、CDFDA特異的MRP2トランスポーター基質を用いてこの細管活性の変化を特定的に定量するべく開発されている;
−形態変化と、微速度画像化により観察される細胞骨格における重要な再編成(細胞から細胞への移動における一般的な障害を引き起こす)との関連;
−ジャンクション領域の再編成との関連。この再編成により、細管構造は、これら細管小胞管腔の反復的膨張および収縮の欠如およびクリアランス能の欠如を伴う閉鎖型円形小胞を形成するか、またはクリアランス能の欠如と関連する反復的収縮運動の欠如も伴う巨大な拡張した管腔ポケットを形成する(実証のためにフィルムを利用できる)。
【0089】
様々なアッセイおよびキットを作成するのにデータを適用することができる。例えば、当該データは以下のものに適用可能である:
−胆汁うっ滞の誘発しやすさについて、新たな治療剤、生化学物質、生体内生物質または食物栄養素(例えば、脳、肺血管、筋肉などにバソプレッション(血管収縮)を導く薬物および生化学物質など)をスクリーニングするための試験;
−これらスクリーニングアッセイを容易にするためのキットであって、例えば極性化された成熟HepaRG細胞と、F−アクチンと、1つの蛍光マーカー化合物とMMP9およびそのアクチベーターを含むもの;
−標的トランスポーターの存在または非存在下で胆汁うっ滞薬を特徴付けるためのスクリーニング試験およびそのためのキットであって、例えば、疾患におけるトランスポーターの寄与を測定するために、所与のトランスポーター(BSEPおよび/またはMRP2など)のための2種類の細胞、即ち、野生型HepaRGおよびHepaRG由来細胞KOを含むもの;
−インシリコ(in silico)アプローチを用い、かつ、分子制御としてのRhoキナーゼ経路を考慮する胆汁うっ滞作用、細胞骨格および機械的障害に関するメタロプロテアーゼの予測試験;
−メタロプロテアーゼマーカー、メタロプロテアーゼ活性およびインヒビター(TIMP−1など)を用い、かつ、コンダクタンス測定による透過性、検量された標識(蛍光など)分子、プラスミドおよびレポーター構築物に対する透過性を検出することによる、小分子および大分子移動のための傍細胞空間の透過性並びに胆管腔クリアランス、細菌、ウイルスおよび寄生生物に対する透過性の試験;および
−寄生生物およびウイルスの感染、プラスミドまたは他の構築物のトランスフェクションを促進するためのプロセスとしての、メタロプロテアーゼにより誘発される透過性。
【0090】
−血清中のマトリックスメタロプロテアーゼは、患者における閉塞性胆汁うっ滞を診断するための診断マーカーとしても使用することができる。典型的には、スクリーニング試験は、潜在的な胆汁うっ滞化合物を投与されている患者、および/またはそうでなければ胆汁うっ滞の徴候を示す患者に対して使用される。あるいは、患者が胆汁うっ滞の症状を示す前に、潜在的な胆汁うっ滞を同定するべくスクリーニング試験を使用することができるであろう。生物学的試料(例えば、血液)を患者から収集する。血液から血清を分離し、マトリックスメタロプロテアーゼの存在について分析する。血清中のマトリックスメタロプロテアーゼの存在は、潜在的な閉塞性胆汁うっ滞を示すマーカーである。
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