(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6644793
(24)【登録日】2020年1月10日
(45)【発行日】2020年2月12日
(54)【発明の名称】ばね駆動式薬剤送達装置
(51)【国際特許分類】
A61M 5/315 20060101AFI20200130BHJP
A61M 5/24 20060101ALI20200130BHJP
A61M 5/20 20060101ALI20200130BHJP
【FI】
A61M5/315 550P
A61M5/24 500
A61M5/20 510
【請求項の数】10
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-533435(P2017-533435)
(86)(22)【出願日】2015年12月22日
(65)【公表番号】特表2017-538550(P2017-538550A)
(43)【公表日】2017年12月28日
(86)【国際出願番号】EP2015080904
(87)【国際公開番号】WO2016102526
(87)【国際公開日】20160630
【審査請求日】2018年11月7日
(31)【優先権主張番号】14199612.4
(32)【優先日】2014年12月22日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】15153602.6
(32)【優先日】2015年2月3日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】596113096
【氏名又は名称】ノボ・ノルデイスク・エー/エス
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】プラムベッシー, クリスチャン
(72)【発明者】
【氏名】ヴィンダム, イェスパー ピーター
【審査官】
今関 雅子
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2011/060786(WO,A1)
【文献】
特表2004−516895(JP,A)
【文献】
特開平02−071758(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/00−5/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
− ハウジング(101)と、
− 軸方向を画定し、近位端部および遠位端部を有するねじ付きピストンロッド(102)と、
− 回転可能な駆動チューブ(103)と、
− 前記ピストンロッド(102)と螺合し、前記駆動チューブ(103)に対して回転方向には固定されているが軸方向に移動可能な駆動ナット(104)と、
− 前記ピストンロッド(102)に対して回転方向には固定されているが軸方向に移動可能な駆動部材(107)と、
− 前記ピストンロッド(102)に回転自在に配置され、前記駆動チューブ(103)を軸方向に移動可能にするように配置され、前記ハウジング(101)に対して軸方向に固定配置され、前記駆動チューブ(103)を軸方向に移動可能にするように配置された支持部材(105)と、
− 前記ピストンロッド(102)と前記駆動チューブ(103)との間に配置され、前記駆動ナット(104)と前記支持部材(105)との間に軸方向に配置された圧縮駆動ばね(106)と、
− 使用者が吐出する薬剤の用量を設定することを可能にし、前記用量が設定されるのに対応して前記圧縮駆動ばね(106)が歪められる、用量設定手段(110、111)と
を備え、
− 前記駆動チューブ(103)は、用量設定位置から、前記駆動チューブ(103)が前記駆動部材(107)と回転不能に係合し、一緒に回転できる駆動位置へと、遠位方向に移動できる、薬剤送達装置(100)。
【請求項2】
用量設定中、用量設定方向に前記駆動チューブ(103)を回転させると、前記駆動ナット(104)が前記ピストンロッド(102)において近位方向に移動し、したがって、前記駆動ナット(104)と前記支持部材(105)との間の前記圧縮駆動ばね(106)を歪める、請求項1に記載の薬剤送達装置。
【請求項3】
前記駆動チューブ(103)が前記用量設定位置から前記駆動位置へと遠位方向に移動するときに、
− 前記ピストンロッド(102)、前記駆動チューブ(103)、前記駆動ナット(104)、および前記駆動部材(107)が回転方向について固定され、
− 前記圧縮駆動ばね(106)からの遠位方向に向く力により、前記ピストンロッド(102)、前記駆動チューブ(103)、前記駆動ナット(104)、および前記駆動部材(107)が回転することにより、前記ハウジング(101)内のねじ付き境界面(125)によって前記ピストンロッド(102)が遠位方向に移動する、請求項1または2に記載の薬剤送達装置。
【請求項4】
前記駆動チューブ(103)は、前記支持部材(105)の一部分(105’)が前記駆動チューブ(103)の外側のハウジング部分(101’)に係合できるようにする開口部(103’)を備える、請求項1から3のいずれか一項に記載の薬剤送達装置。
【請求項5】
前記支持部材(105)は前記ハウジング(101)に対して回転できる、請求項1から4のいずれか一項に記載の薬剤送達装置。
【請求項6】
前記薬剤送達装置(100)は、前記用量設定位置で前記駆動チューブ(103)と回転方向には固定される結合要素(111)を介して前記用量設定方向に前記駆動チューブ(103)を回転させるように構成された薬剤送達作動要素(110)をさらに備え、前記駆動チューブ(103)は前記駆動位置で用量作動されると、遠位方向かつ軸方向に移動し、これにより前記結合要素(111)は前記駆動チューブ(103)と係合しなくなる、請求項2から5のいずれか一項に記載の薬剤送達装置。
【請求項7】
前記結合要素(111)はラチェット要素である、請求項6に記載の薬剤送達装置(100)。
【請求項8】
前記ラチェット要素は、用量作動まで前記駆動チューブ(103)が回転することを防ぎ、用量作動後、前記駆動チューブ(103)は前記駆動位置になり、前記駆動チューブ(103)が前記ラチェット要素からはずれることにより回転して前記駆動部材(107)も回転させる、請求項7に記載の薬剤送達装置(100)。
【請求項9】
前記支持部材(105)は、前記ハウジング(101)または前記ハウジング部分(101’)に係合する複数の近位を向く突起(120)を備える、請求項1から8のいずれか一項に記載の薬剤送達装置(100)。
【請求項10】
薬剤リザーバまたは薬剤リザーバを受け入れるための手段(210)をさらに備え、前記薬剤リザーバは吐出口を備える、請求項1から9のいずれか一項に記載の薬剤送達装置(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、設定用量の液剤を送達するための薬剤送達装置に関する。この薬剤送達装置は、好ましくは、薬剤排出中の駆動チューブが、ピストンロッドを前方に移動させる駆動ばねを使用して回転される種類のものである。
【背景技術】
【0002】
本発明の開示では、主に、インスリンまたはその他の糖尿病薬剤の送達による糖尿病治療に言及しているが、これは本発明の単なる例示的用途である。
【0003】
流体薬剤を皮下投与するための注射装置の形態の薬剤送達装置は、薬剤および生物学的製剤を自己投与しなければならない患者の生活を大いに改善してきた。薬剤注射器具は、注射手段を有するアンプルにすぎない簡単な使い捨て装置を含む多くの形態をとることが可能であり、または複数の機能を有する非常に高度な電子制御式器具である場合もある。その形態にかかわらず、これらは、注射薬および生物学的製剤を患者が自己投与するのを補助するのに大きく役立つことが分かっている。これらはまた、自己注射を行うことができない人に注射剤を投与する際に介護者を大いに補助する。
【0004】
特に、ペン型注射装置は、インスリン等の薬剤および生物学的製剤を投与するための正確かつ便利で、多くの場合個別的である方法を提供することが分かっている。典型的には、注射装置は、対象薬剤、例えば、1.5または3.0mlのインスリンまたは成長ホルモンを含む充填済みのカートリッジを使用する。カートリッジは通常、一端に針穿刺可能膜を有し、注射装置の投薬機構により移動されるように設計された対向するピストンを有する略円筒形の透明アンプルの形態である。注射装置は一般に2つの種類、すなわち、「耐久性のある」装置および「使い捨て」の装置がある。耐久性のある装置は、使用者がカートリッジを別のカートリッジ、典型的には空のカートリッジを新しいカートリッジに取り替えることができるように設計される。対照的に、使い捨ての装置は、使用者が取り替えることができない一体型カートリッジを備え、カートリッジが空になると、装置全体が廃棄される。
【0005】
薬剤用量を吐出する間、力を送達してカートリッジピストンを前方に移動させる駆動手段についてさらなる区別がなされ得る。従来、注射装置は吐出中に使用者が伸縮式ボタンを押すことによって手動で作動されていたが、代わりに、用量設定中に予め歪められるかまたは歪められ、その後解放されるばねによって駆動力が提供され得、これによって薬剤の「自動」投薬が可能になる。
【0006】
それらの利点にもかかわらず、このような自動薬剤送達装置は、いかなる自動投薬特徴もなしで複数回使用するためのより伝統的な装置とサイズの面で「競争」している。したがって、吐出機構の新規の設計によって実現可能なより小型の自動薬剤送達装置を提供することに対する要望がある。
【0007】
それに対応して、薬剤を自動で送達するために圧縮駆動ばね等を利用することによってサイズの縮小を目指す薬剤送達装置が提案されてきた。しかしながら、薬剤の送達を作動させる圧縮駆動ばねの力および作動力は両方とも多くの場合、例えば、端部に設置された解放ボタンを有するペン型またはペン状薬剤送達装置の場合、両方向から共通の要素に作用する軸方向に働く力となる。このような装置では、圧縮駆動ばねは、設定用量と線形に増加する軸方向力を提供しさえする。したがって、薬剤送達を作動させたい使用者は、薬剤送達を作動させるために、比較的大きな力に抗し、さらには用量が多ければさらに大きな力でこれに打ち勝たなければならない。
【0008】
一例として、国際公開第2011/060786号は、用量設定中に歪めた圧縮ばねにより駆動される「自動開放」を開示しており、ペンは、ピストンロッドと螺合する駆動ナットを備え、駆動ナットは、駆動チューブに対して回転方向には固定されているが軸方向に移動可能である。圧縮駆動ばねは、駆動チューブ内部に配置され、駆動ナットと駆動チューブの近位端部の間に作用する。設定用量が解放されると、駆動チューブがばねの力に対して遠位方向に移動し、駆動部材と係合し、それによってピストンロッドを回転させる。
【0009】
上記を考慮すると、本発明の目的は、圧縮駆動ばねを備えた吐出機構を解放するために必要とされる軸方向力を低減する自動薬剤送達装置を提供することである。装置は、使用中信頼できるべきであり、費用効果的に提供されるべきである。このような薬剤送達装置のためのある設計には、自動薬剤送達のための回転駆動チューブの使用が伴い、これは状況をさらに複雑にする。したがって、本発明のさらなる目的は、回転駆動チューブを使用した上記の種類の吐出機構を解放するのに必要とされる力を低減することである。
【発明の概要】
【0010】
本発明の開示において、上記目的の1つまたは複数を解決し、または下記開示および代表的実施形態の記述から明らかになる課題を解決する実施形態および態様を説明する。
【0011】
したがって、本発明の第1の態様に従って、ハウジングと、軸方向を画定し、近位端部および遠位端部を有するねじ付きピストンロッドと、回転可能な駆動チューブと、ピストンロッドと螺合し、駆動チューブに対して回転可能に係止されているが軸方向に移動可能な駆動ナットとを備える薬剤送達装置が提供される。装置は、ピストンロッド上に回転自在に配置され、駆動チューブを軸方向に移動させることができ、ハウジングに対して軸方向に固定して配置され、駆動チューブを軸方向に移動させることができる支持部材と、ピストンロッドと駆動チューブとの間に配置され、駆動ナットと支持部材との間に軸方向に配置され、用量が設定されるのに応じて歪められる圧縮駆動ばねと、使用者が1回分の薬剤の吐出用量を設定することを可能にする用量設定手段とをさらに備える。
【0012】
この構成によって、支持部材と駆動チューブとの間で力が伝達されないが、圧縮駆動ばねからの力は支持部材を介してハウジングに向けられ、したがって、使用者が装置を作動させるときに、圧縮駆動ばねからの力に抗して打ち勝つ必要がないことを可能にする薬剤送達装置が提供される。
【0013】
加えて、これは、圧縮駆動ばねを備えていても機能的要素として回転駆動チューブを維持したままで提供される。
【0014】
さらに、これは、回転駆動チューブ内部に配置された圧縮駆動ばねを有し、駆動チューブの外部のみで利用可能なハウジングを有したまま、可能になる。
【0015】
いくつかの実施形態では、用量設定方向に駆動チューブを回転させると、駆動ナットがピストンロッドにおいて近位方向に移動し、したがって、駆動ナットと支持部材との間の圧縮駆動ばねを歪める。
【0016】
いくつかの実施形態では、薬剤送達装置は、ピストンロッドに対して回転方向には固定されているが軸方向に移動可能な駆動部材をさらに備え、駆動チューブは、用量設定位置から、駆動チューブが駆動部材と軸方向に係合でき、駆動チューブおよび駆動部材が互いに対して回転方向には固定されているが両方が一緒に回転できる駆動位置へと、遠位方向に移動できる。
【0017】
いくつかの実施形態では、駆動チューブが用量設定位置から駆動位置へと遠位方向に移動するときに以下が起こる。(i)ピストンロッド、駆動チューブ、駆動ナット、および駆動部材が回転方向について固定され、(ii)圧縮駆動ばねからの遠位方向に向く力により、ピストンロッド、駆動チューブ、駆動ナット、および駆動部材が回転することにより、ハウジング内のねじ付き境界面によってピストンロッドが遠位方向に移動する。
【0018】
いくつかの実施形態では、駆動チューブは、支持部材の一部を駆動チューブ外部のハウジング部分と係合させることができる開口部を備える。
【0019】
いくつかの実施形態では、支持部材はハウジングに対して回転できる。
【0020】
いくつかの実施形態では、薬剤送達装置は、用量設定位置で駆動チューブと回転可能に係合する結合要素を介して用量設定方向に駆動チューブを回転させるように構成された薬剤送達作動要素をさらに備え、駆動チューブは駆動位置で用量作動されると、遠位方向かつ軸方向に移動し、これにより結合要素は駆動チューブと係合しなくなる。
【0021】
いくつかの実施形態では、結合要素は、設定用量を調整できる両方向ラチェットの一部を成すことができるラチェット要素である。
【0022】
いくつかの実施形態では、結合要素は、用量作動まで駆動チューブが回転することを防ぎ、用量作動後、駆動チューブは駆動位置になり、回転して駆動部材も回転させる。
【0023】
いくつかの実施形態では、支持部材は、ハウジングまたはハウジング部分と係合または嵌合する突起を備える。
【0024】
本明細書で使用する場合、用語「薬剤」は、液体、溶液、ゲル、または微細懸濁液等の制御された方法でカニューレまたは中空針等の送達手段を通過可能な任意の薬剤を含む流動性薬剤を包含することを意味する。代表的な薬剤としては、ペプチド、(例えば、インスリン、インスリン含有薬剤、GLP−1含有薬剤、およびそれらの誘導体)、タンパク質、およびホルモン、生物学的に誘導された作用物質または活性物質、ホルモン剤および遺伝子に基づく作用物質、栄養フォーミュラ、ならびに固体(分配される)または液体の両方の形態の他の物質等の医薬品が挙げられる。例示的実施形態の説明では、インスリン含有薬剤の使用に言及する。同様に、用語「皮下」注入は、被検体への任意の経皮送達方法を含むことを意味する。
【0025】
「注射ペン」とは通常、いくらか筆記用の万年筆に似た楕円形または細長い形状を有する注射装置である。このようなペンは通常、管状断面を有するが、ペンは三角形、矩形、もしくは正方形、またはこれらの幾何形状の任意の変形等の異なる断面を容易に有することができる。「注射ペン」は「薬剤送達装置」の例である。
【0026】
「カートリッジ」は薬剤を含んだコンテナを記述するために使用される用語である。カートリッジは通常、ガラスから製造されるが、任意の好適なポリマーから成形されてもよい。カートリッジまたはアンプルは好ましくは、例えば針カニューレの患者側でない方の端部で穿孔可能な「隔壁」と呼ばれる穿孔可能膜によって、一端が密封される。反対側の端部は典型的には、ゴムまたは好適なポリマーから製造されるプランジャまたはピストンによって閉鎖される。プランジャまたはピストンはカートリッジ内部で摺動可能に移動できる。穿孔可能膜と可動プランジャとの間の空間は、薬剤を保持する。薬剤は、プランジャが薬剤を保持している空間の体積を減少させるにつれ押し出される。しかしながら、剛性または可撓性の任意の種類の容器を使用して、薬剤を収容することができる。
【0027】
注射装置と合わせて用語「自動」を使用することは、注射装置の使用者が薬剤を吐出させるのに必要とされる力を送達することなく注射装置が自動で注射を行うことが可能であることを意味する。力は、本明細書に記載されるばねによって送達できる。ばねは通常、用量設定中に使用者が歪めるが、このようなばねは通常、非常に少ない用量しか送達しないという問題を避けるために予め歪められている。あるいは、ばねは、製造業者により、複数回の用量により薬剤カートリッジを空にするのに十分な予荷重を完全にかけることも可能である。典型的には、使用者は、注射装置にある、例えばボタンの形状のラッチ機構を作動させて、注射を行うときにばねに蓄積された力を解放させる。解放機構は、近位に配置された注射ボタンに結合されてもよい。
【0028】
本明細書にて引用される刊行物、特許出願、および特許を含むすべての参考文献は、あたかもそれぞれの参考文献が個々に具体的に参考として組み込まれることが示され、またその全文が本明細書で説明されるのと同程度に、本明細書にその全文が参考として組み込まれる。
【0029】
本明細書で用いる任意のおよびすべての例、または例を挙げるための言葉(例えば「〜等の」)は、単に本発明を分かりやすく例示することを意図したものであって、別途記載がない限り本発明の範囲を制限するものではない。本明細書中のいずれの言葉も、特許請求の範囲に記載されない何らかの要素を、本発明の実施の必須要件であることを示すものと解釈してはならない。本明細書における特許文献の引用および組み込みは、単に便宜的に行われているのであって、このような特許文献の有効性、特許性および/または権利行使可能性の観点には何ら影響を及ぼさない。
【0030】
本発明は、適用法によって許される限り、添付の特許請求の範囲に記載の主題のすべての変形および均等物を含む。
【0031】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図2】静止状態にあるばね駆動式薬剤送達装置の実施形態の一部を概略的に示す断面図を示す。
【
図3】用量設定状態にある
図2の薬剤送達装置を概略的に示す断面図を示す。
【
図4】駆動状態にある
図2および
図3の薬剤送達装置を概略的に示す断面図を示す。
【
図5】液剤の用量を送達した後の
図2〜
図4の薬剤送達装置を概略的に示す断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0033】
「上部」および「下部」、「右」および「左」、「水平」および「垂直」のような用語または同様の相対的表現を使用する場合、これらは添付の図面のみを基準とするものであり、必ずしも実際の使用状況に対するものではない。示される図面は略図であるため、異なる構造の構成およびそれらの相対的寸法は例示目的のためだけに役に立つことが意図される。その関係で、添付図面における用語「遠位端部」は、
図1Bに示されるような針カニューレを通常有する注射装置の端部を指し示すことが意図され、それに対し、用語「近位端部」は、注射針から離れる方を指す反対側の端部を指し示すことが意図されると定義することが便利であろう。用語「部材」または「要素」を所与の構成部品に使用する場合、これは、記載された実施形態において構成部品が一体型部品であることを一般的に示すが、代わりに、同じ部材または要素が、複数のサブコンポーネントからなってもよく、同じように、記載された構成部品のうち2つ以上が一体型部品として提供され得、例えば単一の射出成形部品として製造され得る。
【0034】
本発明それ自体の実施形態を参照する前に、「一般的な」薬剤送達装置の例、例えば、本発明の例示的実施形態の基礎を提供する装置を説明する。
【0035】
ペン型装置1は、キャップ部7と、主要部とを備える。主要部は、薬剤吐出機構が配置されるかまたは組み込まれたハウジング2を有する近位本体、すなわち駆動アセンブリ部と、カートリッジホルダが近位部分に取り付けられることにより、遠位の針貫通可能膜を有する薬剤充填済み透明カートリッジ13が所定位置に配置または保持される遠位カートリッジホルダ部とを有し、カートリッジホルダは、カートリッジの一部を調べられるようにする開口部を有する。遠位結合手段15により、針アセンブリをカートリッジ内部と流体連通するように着脱可能に設置できる。カートリッジには、吐出機構の一部を形成するピストンロッドによって駆動されるピストンが設けられ、例えば、インスリン、GLP−1または成長ホルモン製剤を含むことができる。最も近位の回転可能な用量設定部材10は、表示ウィンドウ5に示された所望の用量の薬剤を手動で設定するように機能し、その後、薬剤はボタン11が作動されると吐出され得る。あるいは、用量設定部材および作動部材は、用量設定および作動兼用部材の形態であってもよい。図示される装置は、用量設定中に歪められた後、解放ボタンが作動されたときにピストンロッドを駆動するように解放される駆動ばねを備えた吐出機構を備える。
【0036】
図1Aおよび
図1Bは、充填済みの種類の薬剤送達装置を示しており、すなわち、これには予め設置されたカートリッジが与えられており、カートリッジが空になったときに廃棄されるが、別の実施形態では、薬剤送達装置は、装填されたカートリッジを交換することを可能にするように、例えば、カートリッジホルダが装置本体部分から取り外されるように構成された「後面装填式の」薬剤送達装置の形態で、あるいは、カートリッジが装置の本体部から着脱不能に取り付けられるカートリッジホルダ内の遠位開口部を通って挿入される「前面装填式の」装置の形態で、設計されてもよい。
【0037】
図2は、静止状態にある薬剤送達装置の一実施形態の一部を概略的に示す断面図である。より具体的には、
図2は、薬剤送達装置100の様々な構成部品を包含するハウジングまたはフレーム101(本文全体を通して単にハウジングと呼ばれる)を含む薬剤送達装置100の一部を示す。ハウジング101は、薬剤送達装置100の外部ハウジングもしくはハウジング全体の一部であっても、またはこれらにより構成されてもよい。
図1〜
図4において、遠位は左を向いており、近位端部は右を向いている。
【0038】
図示されているように、薬剤送達装置100は、ねじ付きピストンロッド102、回転可能な駆動チューブ103、駆動ナット104、支持部材105、および圧縮駆動ばね106をさらに備える。投薬中のピストンロッドは、送達される液剤を含むカートリッジ内のプランジャまたは他の何らかの適切な薬剤送達機構を作動させる。
【0039】
駆動ナット104は、用量設定中にピストンロッドに対して回転されたとき、駆動ナットが軸方向に移動するように、ピストンロッド上の雄ねじと駆動ナット上の雌ねじによってピストンロッド102と螺合している。駆動ナットは、スプライン結合を介して駆動チューブ103に対して回転方向には固定されているが、軸方向に移動可能である。
【0040】
支持部材105は、ハウジング101に対して軸方向に固定された状態で配置されながらも、ピストンロッド102上では回転自在に配置されている。さらに、支持部材105は、回転可能な駆動チューブ103が支持部材およびハウジングに対して軸方向に移動することを可能にするように配置される。略管状の圧縮駆動ばね106は、ピストンロッド102と駆動チューブ103との間に周方向に、かつ駆動ナット104と支持部材105との間に軸方向に配置されている。
【0041】
特定の実施形態では、
図2に示すように、支持部材105は、ハウジング101に対して回転することが可能であり、一方、駆動チューブ103および支持部材は互いに対して接線方向に係止されている(例えば、いくつかの点で互いに回転可能に係合していれば、いくらかの滑りまたは遊びがあり得る)。これにより、支持部材および駆動チューブは一緒に回転することが可能であるが、駆動チューブが支持部材およびハウジングに対して軸方向に移動する状態で、互いに軸方向にのみ移動することができる。
【0042】
図示された実施形態では、支持部材105は、駆動チューブの対応する長手方向開口部103’を通って配置された複数の側方突起105’を有し、各突起は、周囲の内部フランジ部分101’の遠位に面する表面に係合する近位に面する面を有し、この2つの構造は、圧縮ばね106によって係合して保持される。図示される実施形態では、支持部材突起105’は、ハウジングの内部フランジ101’と(1つまたは複数の支持面として)回転係合または嵌合する小さな突起120等を備える。摩擦を低減するために、突起の代わりに支持部材105とハウジング/ハウジング部分101、101’との間に軸受等を挿入してもよい。
【0043】
図示される実施形態では、駆動チューブ103は、一般に、後述されるように、少なくとも駆動ナット104、駆動部材107、およびインジケータ要素115を係合させるために遠位部分に形成された溝またはトラック、例えばスプラインを有するさらに小さな近位シリンダ部分に隣接するより小さな中間シリンダ部分に隣接する遠位シリンダ部分として形成される。
【0044】
当然ながら、駆動チューブ103、支持部材105、および薬剤送達装置ハウジング101の他の要素の形状は、異なる実施形態、構成および実装形態において変更してもよいことが理解されるべきである。
【0045】
図2に示す薬剤送達装置の実施形態は、用量または薬剤送達作動要素110、例えば、これらの特定の例示的実施形態では、使用者が遠位方向に軸方向に押すことによって、使用者が作動させる近位に配置されたボタン等をさらに備える。付勢ばねまたは他の弾性部材112が存在して、作動要素110を
図2に示すその静止位置に押し戻す。薬剤送達作動および実際の送達は、
図4に関連してさらに示され、説明される。ここで、薬剤送達装置100は、明細書および特許請求の範囲全体にわたって駆動位置とも呼ばれる位置で示されている。後で
図4に関連してさらに説明するように、作動および送達には回転駆動チューブ103の使用が伴う。用量設定インジケータ要素115は、どの送達用量が現在選択されているかを使用者に示す。用量設定要素110を使用して用量を設定すると、インジケータ要素115は、駆動チューブ103の回転により、それに応じて移動し(
図2および
図3を参照)、インジケータ要素は、駆動チューブとスプライン結合され、ハウジングの内面に螺旋状に結合されている。
【0046】
図示および説明したように、圧縮駆動ばね106は、支持部材105を近位方向に軸方向に係合し、それによって、使用者の作動力が遠位方向に軸方向に向けられている間に(圧縮されたために)その作用力を支持部材105に伝達させる。しかしながら、支持部材105がハウジング101に対して軸方向に係止されている、すなわち、ハウジング101に軸方向に係合しているため、圧縮駆動ばね106の作用力は、ハウジング101のみが外側で利用可能であるが、圧縮駆動ばね106が駆動チューブ103の内側にそれぞれ配置されている薬剤送達装置の構成において、支持部材105を介してハウジング101に伝達される。
【0047】
支持部材105は、回転駆動チューブ103に軸方向に拘束されるのではなく、互いに対して軸方向に自由に移動できるので、支持部材105から回転駆動チューブ103には(圧縮駆動ばね)力が伝達され得ない。薬剤送達中の駆動チューブ103が1回転より多く回転することが必要とされる実施形態では、駆動チューブ103および支持部材105は、薬剤送達機構が適切に機能するために、
図2に示すように依然として回転方向に拘束されるべきである。好ましくは、駆動チューブ103は、支持部材105の部分105’が駆動チューブ103の外側のハウジング部分101’に容易に係合できるようにする開口部103’を備える。
【0048】
さらに、(軸方向反対への)作動力は、回転駆動チューブ103の使用を伴うため、圧縮駆動ばね106および使用者の作動からの反対方向の力は存在せず、したがって、圧縮駆動ばねからの力が支持部材105を介してハウジング101に分流されるため、装置を作動させるときに、使用者は圧縮駆動ばねからの力に抗して打ち勝つ必要はない。
【0049】
さらに、これは、その利点を有する作動および薬剤送達との関連でも機能的要素としての回転駆動チューブ103を維持したままで提供される。さらに、これは、回転駆動チューブ103の内側に配置される圧縮駆動ばね106を有し、駆動チューブの外側でのみ利用可能なハウジング101を有しながらも可能になる。(作動中にばね力に打ち勝たなければならないという問題を解決する)これらの構成部品は、一般に、異なるピストン駆動システム、異なる圧縮システム等で使用され得る。
【0050】
圧縮駆動ばね106は、特定の実施態様に応じて多くの異なるシステムを使用して圧縮させることができる。これは圧縮駆動ばね106にエネルギーを蓄積し、再び解放されたときに薬剤送達を作動する。
【0051】
図2の実施形態に示すように、駆動チューブ103が(使用者により)用量設定方向に回転されると、駆動チューブ103が駆動ナット104に回転可能に係合することによって、駆動ナット104がピストンロッド102の近位に移動する(これは、駆動ナット104が駆動チューブ103に対して軸方向に移動することができ、ピストンロッド102と螺合しているからである)。ピストンロッド102上の駆動ナット104のこの近位方向の移動は、装置の薬剤を自動で送達するのに使用される圧縮駆動ばねの蓄積エネルギーを歪ませる。用量設定中の薬剤送達装置100は
図3にさらに示され、説明される。
【0052】
特定の実施形態では、
図2に示すように、薬剤送達装置100は、ピストンロッド102に対して回転方向には固定されているが軸方向に移動可能な駆動部材107をさらに備え、駆動チューブ103は、用量設定位置(
図3参照)から、駆動部材107に回転不能に係合することができる駆動位置(
図4参照)へと遠位方向に移動できる。
【0053】
駆動部材103が用量設定位置から駆動位置まで遠位方向に移動すると、次のことが起こる。駆動チューブ103が移動して、駆動部材107と回転方向について固定係合し、それにより、駆動チューブ103は、駆動部材107を回転させることができる。この状態では、ピストンロッド102、駆動チューブ103、駆動ナット104、および駆動部材107はすべて回転方向について固定されている。圧縮駆動ばね106から遠位に向けられた力、すなわち、駆動ナットに作用する用量設定中にその中に蓄積されたエネルギーからの力は、駆動ナット104に作用して、したがってピストンロッド102、駆動チューブ103、および駆動部材107が回転し、これにより、ハウジング内のねじ付き境界面125がピストンロッド102を遠位方向に移動させ、これによって液剤が好適な送達システムを用いて送達されるが、好適な送達システムは特定の実装形態によって異なり得る。
【0054】
いくつかの実施形態では、
図2に示すように、薬剤送達装置は、ハウジング101の近位端部に回転可能に設置された用量設定要素110をさらに備え、この要素によって、使用者は注射する特定の用量を設定することができる。あるいは、用量設定要素は他の場所に配置されてもよい。
図2の特定の実施形態では、用量設定要素と用量作動要素は同一である。あるいは、2つの別個の要素を使用してもよい。
【0055】
特定の実施形態では、やはり
図2に示すように、用量設定要素110は、例えば
図2の示すラチェット要素のような好適な結合要素111を介して駆動チューブ103に結合されてもよい。ラチェット要素は、両方向ラチェット機構の一部を形成することができ、これにより、用量設定要素を所定の用量設定方向に回転させることによって、駆動チューブを回転させることによって、用量を設定し、駆動ナットを近位方向に移動させ、それによって駆動ばねを圧縮することによって、ばねをこれに対応して歪ませ、ラチェット要素は、設定用量に対応して、駆動チューブおよび歪んだばねが「留まり」得るようにする。同様に、用量設定要素の反対方向への回転は、設定された用量を減少させる。
【0056】
図2の図示された要素の機能は、用量設定、用量作動および送達、ならびに薬剤送達の終了をそれぞれ
図3〜
図5に示す。
【0057】
図3は、用量が設定された状態の
図2の薬剤送達装置を概略的に示す断面図である。用量設定中、使用者は用量設定方向に用量設定要素110(薬剤送達作動要素としても機能する)を回転させ、これによって、結合要素/ラチェット111を介して駆動チューブ103を回転させる。用量設定中の駆動チューブの回転により駆動ナット104(および支持部材105)が回転し、これにより、駆動ナットは、駆動ナット104をピストンロッド102の近位方向に移動させ、これにより、駆動ナットと支持部材の間に位置する圧縮駆動ばね106を歪ませ、後に装置の薬剤を自動的に送達する際に使用されるエネルギーを蓄積する。用量作動が行われるまで、結合要素またはラチェット111は、駆動チューブ103が後方に回転するのを防止する。用量設定状態では、駆動チューブの回転は、駆動部材107(および、したがって、ピストンロッド102)が係合していないときにこれらを回転させない。送達される所望の用量の液剤(例えば、これも駆動チューブ103によって回転される用量設定インジケータ要素115によって示されるように)に対応して用量設定要素110を回転させると、
図4に関連して説明されるように、使用者は薬剤送達を作動できる状態となる。
【0058】
図4は、初期駆動状態の
図2および
図3の薬剤送達装置を概略的に示す断面図である。設定用量の薬剤を吐出するために、使用者は、用量設定および薬剤送達兼用の作動要素110(結合/ラチェット要素でもある)を遠位方向に押すことによって用量設定および薬剤送達兼用の作動要素110を作動させ、それによって駆動チューブ103も遠位方向に移動させる。こうすることにより、以下のことが起こる。まず、作動要素がハウジングに係合して、作動要素およびラチェットをハウジングに対して回転方向について固定し、それによって一切の意図しない用量調整を防止し、第2に、駆動チューブが駆動部材107に係合して駆動部材を駆動チューブ103に回転方向について固定し、第3に、駆動チューブがラチェットから外れて、駆動チューブがハウジングに対して回転することが可能になり、駆動チューブは、駆動ナット104が軸方向に伸長する駆動ばねによって遠位方向に移動することによって回転される。駆動ナット、駆動チューブ、駆動部材、およびピストンロッドが互いに対して回転方向について固定されると、ピストンロッドも回転し、その結果、ピストンロッドはハウジングとの螺合125により遠位方向に移動する。薬剤送達の間、用量設定インジケータ要素115は、駆動チューブおよびハウジングとの係合を介して徐々に回転して戻る。
【0059】
作動中、支持部材105は、駆動チューブ103に軸方向に係止されていないので遠位方向には移動せず、それによって駆動チューブは支持部材に対して遠位方向に移動する。これらは、依然として回転して互いに追従する。支持部材105は、回転中に常にハウジング部分101’に支えられるかまたは当接する。
【0060】
圧縮ばねが伸長すると、駆動ナット104がピストンロッド上で回転し、ピストンロッドはハウジングに対して再び回転し、それにより駆動ナットはスプライン結合を介して駆動チューブに対して遠位方向に移動する。駆動ナット104(および他の要素)が(ピストンロッドから離れた)その初期位置に達し、それによって、
図5に示すように薬剤送達が停止するまで、圧縮駆動ばねの伸張は継続される。同時に、用量設定インジケータ要素115は、ハウジング101に対して静止位置に達する。
【0061】
図示する実施形態では、使用者は、結合/ラチェット要素111と駆動チューブ103との係合を解除したままで投与が行われる限り、作動要素110を押さえたままにする必要がある。しかし、これは他の実施形態では異なっていてもよい。
【0062】
図5は、設定用量の液剤を送達した後の
図2〜4の薬剤送達装置を概略的に示す断面図である。
【0063】
設定された薬剤送達を終えた後、薬剤送達装置は、
図2に示すその静止位置に単にリセットするだけでよい。図示された実施形態では、これは単に、ばねまたは他の弾性部材112が単に作動要素を駆動チューブ103と一緒に
図2に示すその静止位置に押し戻すため、使用者が薬剤送達作動要素110を押すのを止めることを伴う。
【0064】
いくつかの特徴を列挙する特許請求の範囲において、これらの特徴の一部またはすべては、まったく同一の要素、構成部品、または物品によって具現化されてもよい。特定の手段が互いに異なる独立請求項に挙げられているか、または異なる実施形態に記載されているという単なる事実は、これらの手段の組み合わせが効果的に使用できないということを示唆しない。
【0065】
本明細書中で使用されるときの用語「含む(comprises/comprising)」は、述べられた特徴、要素、ステップ、または構成部品の存在を明示するために用いられるが、1つまたは複数の特徴、要素、ステップ、構成部品、またはそれらの群の存在または追加を排除するものではない。
【0066】
好ましい実施形態の上記の説明では、異なる構成部品について説明した機能を提供する異なる構造および手段は、本発明の概念が当業者には明らかとなる程度で記載されている。異なる構成部品の詳細な構成および仕様は、本明細書に記載された文章に沿って当業者によって行われる通常の設計手順の対象と考えられる。