特許第6644804号(P6644804)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6644804
(24)【登録日】2020年1月10日
(45)【発行日】2020年2月12日
(54)【発明の名称】吸着材粒子及び造粒吸着材
(51)【国際特許分類】
   B01J 20/06 20060101AFI20200130BHJP
   B01J 20/28 20060101ALI20200130BHJP
   B01J 20/30 20060101ALI20200130BHJP
   C02F 1/28 20060101ALI20200130BHJP
   C01G 49/02 20060101ALI20200130BHJP
【FI】
   B01J20/06 A
   B01J20/28 Z
   B01J20/30
   C02F1/28 P
   C01G49/02 A
【請求項の数】17
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2017-544197(P2017-544197)
(86)(22)【出願日】2016年10月6日
(86)【国際出願番号】JP2016004495
(87)【国際公開番号】WO2017061115
(87)【国際公開日】20170413
【審査請求日】2018年6月14日
(31)【優先権主張番号】特願2015-200736(P2015-200736)
(32)【優先日】2015年10月9日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】596164744
【氏名又は名称】▲高▼橋金属株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000004307
【氏名又は名称】日本曹達株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107984
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 雅紀
(74)【代理人】
【識別番号】100102255
【弁理士】
【氏名又は名称】小澤 誠次
(74)【代理人】
【識別番号】100096482
【弁理士】
【氏名又は名称】東海 裕作
(74)【代理人】
【識別番号】100188352
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 一弘
(74)【代理人】
【識別番号】100131093
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 真
(74)【代理人】
【識別番号】100150902
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 正子
(74)【代理人】
【識別番号】100141391
【弁理士】
【氏名又は名称】園元 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100198074
【弁理士】
【氏名又は名称】山村 昭裕
(74)【代理人】
【識別番号】100145920
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100096013
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 博行
(72)【発明者】
【氏名】廣川 載泰
(72)【発明者】
【氏名】野一色 剛
(72)【発明者】
【氏名】木村 信夫
(72)【発明者】
【氏名】天池 正登
【審査官】 松本 直子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−050784(JP,A)
【文献】 特開2005−288439(JP,A)
【文献】 特開2011−235222(JP,A)
【文献】 特開2007−117923(JP,A)
【文献】 特開昭55−013153(JP,A)
【文献】 特表2004−509753(JP,A)
【文献】 特開2006−124239(JP,A)
【文献】 特開2012−143741(JP,A)
【文献】 特表2010−539983(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 20/06
B01J 20/28
B01J 20/30
B01D 15/00
C01G 49/02
C02F 1/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
β−オキシ水酸化鉄を主成分とし、平均粒径d50が10〜70μmであり、平均結晶子径が10nm以下である、陰イオン吸着材粒子。
【請求項2】
結晶の形状が粒状である、請求項に記載の陰イオン吸着材粒子。
【請求項3】
塩酸でpHを3.5に調整したリン換算濃度400mg/Lのリン酸二水素カリウム水溶液150mL中に吸着材粒子1gを投入し、室温で撹拌して行う回分式の吸着試験において、1時間後に吸着材1g当たりのリン換算吸着量が22mg以上である、請求項1又は2に記載の陰イオン吸着材粒子。
【請求項4】
塩酸でpHを3.5に調整したリン換算濃度400mg/Lのリン酸二水素カリウム水溶液150mL中に吸着材粒子1gを投入し、室温で撹拌して行う回分式の試験において、1時間後のpHに対し、24時間後のpHが0.5以上上昇することを特徴とする、請求項のいずれかに記載の陰イオン吸着材粒子。
【請求項5】
陰イオンが、リン酸イオン、亜リン酸イオン、次亜リン酸イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、及びフッ化物イオンから選ばれる少なくとも1種である、請求項1〜4のいずれかに記載の陰イオン吸着材粒子。
【請求項6】
オキシ水酸化鉄を主成分とする固体を粉砕し、該粉砕物を水中において5〜20μmの目開きを有するメッシュで分級し、メッシュを通過しない分を回収して得られる請求項1〜5のいずれかに記載の陰イオン吸着材粒子の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜のいずれかに記載の吸着材粒子とバインダーとを含有する、粒径0.1mm以上の陰イオン用造粒吸着材。
【請求項8】
バインダーがpH2.5〜12.5の範囲で安定である、請求項に記載の陰イオン用造粒吸着材。
【請求項9】
吸着材とバインダーとの質量比が、2:1〜100:1である、請求項又はに記載の陰イオン用造粒吸着材。
【請求項10】
バインダーが無機化合物である、請求項又はに記載の陰イオン用造粒吸着材。
【請求項11】
無機化合物が、鉄、ジルコニウム、チタン及びスズから選ばれる少なくとも1種の金属の化合物である、請求項10に記載の陰イオン用造粒吸着材。
【請求項12】
無機化合物がオキシ水酸化鉄を主成分とする、請求項11に記載の陰イオン用造粒吸着材。
【請求項13】
バインダーがポリオレフィン系樹脂である、請求項のいずれかに記載の陰イオン用造粒吸着材。
【請求項14】
塩酸でpHを3.5に調整したリン換算濃度400mg/Lのリン酸二水素カリウム水溶液150mL中に造粒吸着材1gを投入し、室温で撹拌して行う回分式の吸着試験において、1時間後に吸着材1g当たりのリン換算吸着量が22mg以上である、請求項7〜13のいずれかに記載の陰イオン用造粒吸着材。
【請求項15】
塩酸でpHを3.5に調整したリン換算濃度400mg/Lのリン酸二水素カリウム水溶液150mL中に造粒吸着材1gを投入し、室温で撹拌して行う回分式の試験において、1時間後のpHに対し、24時間後のpHが0.5以上上昇することを特徴とする、請求項7〜14のいずれかに記載の陰イオン用造粒吸着材。
【請求項16】
請求項1〜のいずれかに記載の吸着材粒子と、バインダーとを造粒する工程を含む、陰イオン用造粒吸着材の製造方法。
【請求項17】
請求項1〜のいずれかに記載の陰イオン用吸着材粒子、又は請求項15のいずれかに記載の陰イオン用造粒吸着材を、通水性を有し該吸着材粒子又は造粒吸着材を通さない容器に収納してなる、陰イオン用吸着材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オキシ水酸化鉄を主成分とする吸着材粒子、及び該吸着材粒子とバインダーとからなる造粒吸着材に関する。
本願は、2015年10月9日に出願された日本国特許出願第2015−200736号に対し優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
各種の排水から、環境や人体に有害性を有する物質を除去し浄化するため、あるいは希少金属等の有用物質を回収するために、吸着材や、それを用いた吸着方法、吸着物質の脱着・回収方法等が盛んに研究されている。
例えば、リンは肥料成分として、また化学工業にも不可欠の成分であるが、日本においてはほぼ100%を輸入に頼っている。一方で排水中に多量のリンが含まれる場合は、富栄養化の原因となるため、このような排水を排出することは環境に好ましくない。これらの問題を一挙に解決するために、排水中に含まれるリン酸等のリン化合物の除去及び回収が注目されている。
このようなリン化合物を効率的に吸着、回収できる吸着材として、オキシ水酸化鉄からなるものが開発されており、特許文献1、2、3等に記載されている。
特許文献4等には、砒素吸着材として、平均粒子径0.1〜50μm程度でBET比表面積が20〜100m2/gのゲーサイト(α−オキシ水酸化鉄)が記載されている。
また特殊な構造を有するオキシ水酸化鉄吸着材として、特許文献5には、水酸化鉄マトリックス中に埋め込まれたオキシ水酸化鉄からなる粒状の吸着媒体、また特許文献6には、オキシ水酸化鉄からなる多孔性の粒状凝集物が記載されているが、これらは反復使用するための取扱いには困難がある。
特許文献7には、結着剤として酸化チタンゾルを用い、ゲーサイト(α−FeOOH)を造粒してなるリン吸着材が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−124239号公報
【特許文献2】WO2006/088083号パンフレット
【特許文献3】特開2011−235222号公報
【特許文献4】特開2008−222525号公報
【特許文献5】特表2004−509750号公報(WO2002/026630号パンフレット)
【特許文献6】特表2004−509752号公報(WO2002/026632号パンフレット)
【特許文献7】特開平8−24634号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
吸着材において、短時間で高い吸着効率を得るには、材料として多孔質の吸着材を用いるとともに、吸着材の粒子径を小さくすることが望ましい。しかし、粒子径が1μm程度以下の吸着材を液中で使用すると、分離、回収が容易でなく、実用的ではなかった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、オキシ水酸化鉄からなる吸着材において、高い吸着効率と、吸着材の容易な分離とを両立させるべく多面的に鋭意検討した。
その結果、吸着材を粉砕した上で特定の粒径範囲の粒子を回収することにより、従来品に比較して短時間で高い吸着効率を発揮し、しかも吸着後の回収が容易であり反復使用に適した吸着材が得られることを見出した。
また、オキシ水酸化鉄からなる上記粒子と同じオキシ水酸化鉄からなるナノ分散液とを混合し、乾燥することにより、大粒径で取扱いが容易でありながら高い吸着効率を発揮する吸着材が得られることを見出した。本発明は以上の知見を元に完成されたものである。
【0006】
すなわち、本発明は、以下の発明に関する。
(1)平均粒径d50が10〜70μmである、オキシ水酸化鉄を主成分とする吸着材粒子。
(2)前記オキシ水酸化鉄がβ−オキシ水酸化鉄である、(1)に記載の吸着材粒子。
(3)陰イオン吸着材である、(1)又は(2)に記載の吸着材粒子。
(4)平均結晶子径が10nm以下である、(1)〜(3)のいずれかに記載の吸着材粒子。
(5)結晶の形状が粒状である、(4)に記載の吸着材粒子。
(6)塩酸でpHを3.5に調整したリン換算濃度400mg/Lのリン酸二水素カリウム水溶液150mL中に吸着材粒子1gを投入し、室温で撹拌して行う回分式の吸着試験において、1時間後に吸着材1g当たりのリン換算吸着量が22mg以上である、(3)〜(5)のいずれかに記載の吸着材粒子。
(7)塩酸でpHを3.5に調整したリン換算濃度400mg/Lのリン酸二水素カリウム水溶液150mL中に吸着材粒子1gを投入し、室温で撹拌して行う回分式の試験において、1時間後のpHに対し、24時間後のpHが0.5以上上昇することを特徴とする、(3)〜(6)のいずれかに記載の吸着材粒子。
(8)オキシ水酸化鉄を主成分とする固体を粉砕し、該粉砕物を水中において5〜20μmの目開きを有するメッシュで分級し、メッシュを通過しない分を回収して得られる吸着材粒子の製造方法。
(9)(1)〜(7)のいずれかに記載の吸着材粒子とバインダーとを含有する、粒径0.1mm以上の造粒吸着材。
(10)バインダーがpH2.5〜12.5の範囲で安定である、(9)に記載の造粒吸着材。
(11)吸着材とバインダーとの質量比が、2:1〜100:1である、(9)又は(10)に記載の造粒吸着材。
(12)バインダーが無機化合物である、(10)又は(11)に記載の造粒吸着材。
(13)無機化合物が、鉄、ジルコニウム、チタン及びスズから選ばれる少なくとも1種の金属の化合物である、(12)に記載の造粒吸着材。
(14)無機化合物がオキシ水酸化鉄を主成分とする、(13)に記載の造粒吸着材。
(15)バインダーがポリオレフィン系樹脂である、(9)〜(11)のいずれかに記載の造粒吸着材。
(16)陰イオン吸着材である、(9)〜(15)のいずれかに記載の造粒吸着材。
(17)塩酸でpHを3.5に調整したリン換算濃度400mg/Lのリン酸二水素カリウム水溶液150mL中に造粒吸着材1gを投入し、室温で撹拌して行う回分式の吸着試験において、1時間後に吸着材1g当たりのリン換算吸着量が22mg以上である、(16)に記載の造粒吸着材。
(18)塩酸でpHを3.5に調整したリン換算濃度400mg/Lのリン酸二水素カリウム水溶液150mL中に造粒吸着材1gを投入し、室温で撹拌して行う回分式の試験において、1時間後のpHに対し、24時間後のpHが0.5以上上昇することを特徴とする、(16)又は(17)に記載の造粒吸着材。
(19)(1)〜(7)のいずれかに記載の吸着材粒子と、バインダーとを造粒する工程を含む、造粒吸着材の製造方法。
(20)(1)〜(7)のいずれかに記載の吸着材粒子、又は(9)〜(18)のいずれかに記載の造粒吸着材を、通水性を有し該吸着材粒子又は造粒吸着材を通さない容器に収納してなる、吸着材。
【発明の効果】
【0007】
吸着材を粉砕した上で特定の粒径範囲の粒子を回収することにより、従来品に比較して短時間で高い吸着効率を発揮し、しかも吸着後の回収が容易であり反復使用に適した吸着材が得られる。
また、オキシ水酸化鉄からなる上記粒子と同じオキシ水酸化鉄からなるナノ分散液とを混合し、乾燥することにより、大粒径で取扱いが容易でありながら高い吸着効率を発揮する吸着材が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】オキシ水酸化鉄結晶のTEM像を示す図である。
図2】粉末B、粉末Bのピンミル粉砕品及び粉末Bの10μmメッシュ分級品の粒度分布を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(吸着材粒子)
本発明の吸着材粒子は、
i)平均粒径d50が10〜70μmである、オキシ水酸化鉄を主成分とする吸着材粒子、
ii)鉄化合物含有溶液を塩基と反応させ沈殿物を生成させる工程を含む方法により生成した、オキシ水酸化鉄を主成分とする乾燥ゲルからなり、平均粒径d50が10〜70μmである吸着材粒子、又は
iii)オキシ水酸化鉄を主成分とする固体を粉砕し、該粉砕物を水中において5〜20μmの目開きを有するメッシュで分級し、メッシュを通過しない分を回収して得られる、吸着材粒子である。
本発明の吸着材粒子の平均粒径(d50)は、30〜70μmであることがより好ましい。さらに本発明の吸着材粒子のd10は、5μm以上であることが好ましい。
【0010】
オキシ水酸化鉄は、陰イオンに対する吸着性に優れている。
本発明の吸着材粒子は、主成分オキシ水酸化鉄の含有率が99質量%以上であることが好ましい。オキシ水酸化鉄の含有率が実質的に100質量%であるものが最も好ましい。
オキシ水酸化鉄には、結晶構造の相違によって、α型、β型、γ型、非晶質型等がある。これらのうち、β−オキシ水酸化鉄が、吸着性能の点で特に優れており、リン酸イオン、亜リン酸イオン、次亜リン酸イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、フッ化物イオン等の吸着材に適している。
本発明の吸着材粒子としても、このβ−オキシ水酸化鉄を主成分とするものが好ましい。
β−オキシ水酸化鉄は、一般に、水酸基の一部が塩素イオンにより置換されている。製造又は使用の過程で水と接触すると、この塩素イオンが回収されて小型の空孔が残る。この空孔がフッ素等の陰イオンの吸着に関与すると考えられており、さらに本発明における効率的な陰イオン吸着もこの空孔に由来する特徴であると考えられる。
本発明におけるオキシ水酸化鉄は、β−オキシ水酸化鉄であることが好ましい。さらにβ−オキシ水酸化鉄中における塩素イオンの含有量は、0.5質量%以上であることが好ましく、3質量%以上であることがより好ましい。
【0011】
本発明の吸着材粒子の製造方法としては、必ずしも限定されるものではないが、オキシ水酸化鉄を主成分とする固体を粉砕し、該粉砕物を水中において5〜20μmの目開きを有するメッシュで分級し、メッシュを通過しない分を回収する方法が挙げられる。
【0012】
前記のオキシ水酸化鉄を主成分とする固体としては、鉄化合物含有溶液を塩基と反応させpH9以下で沈殿物を生成させる工程を含む方法により得られる乾燥ゲルが好ましい。
前記の鉄化合物としては、鉄塩、特に3価の鉄塩が好ましい。具体的には、塩化第二鉄、硫酸第二鉄、硝酸第二鉄等を挙げることができ、この中で特に塩化第二鉄が好ましい。
前記の塩基は、酸性の鉄化合物水溶液を中和しオキシ水酸化鉄を含む沈殿を生成させるために使用する。具体的には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、アンモニア、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム等を挙げることができ、この中で特に水酸化ナトリウムが好ましい。
沈殿物の生成の際のpHは、pH3.3〜6の範囲に調整することがより好ましい。
以上の方法で得られたオキシ水酸化鉄を主成分とする沈殿物は、濾別して回収することができ、これを乾燥すれば乾燥ゲルとなる。
【0013】
さらに以上の工程の後に、沈殿物を乾燥させる工程、及び該乾燥物を水と接触させた後、乾燥させる工程を実施することが好ましい。
上記2回の乾燥をさせる工程は、140℃以下で行うことが好ましく、100〜140℃で行うことがより好ましい。乾燥温度は、低温では時間を要し効率的な製造に適しない。また高温では陰イオン吸着サイトが少なくなる傾向があり、さらに高温では酸化鉄に変化するので好ましくない。乾燥は、空気中、真空中、又は不活性ガス中で行うことができる。
乾燥物を水と接触させる工程では、塩化ナトリウム等の不純物が溶出して後に細孔を残し、比表面積が増大するとともに陰イオン吸着サイトも増加すると考えられる。
乾燥物を水と接触させた後、水を回収して、再度乾燥させる。この乾燥工程も上記と同様の条件で行うことが好ましい。
以上の方法により得られる乾燥ゲルは、β−オキシ水酸化鉄を主成分として含む。
【0014】
本発明の吸着材粒子の主成分であるオキシ水酸化鉄は、BET比表面積が200m2/g以上であることが好ましく、またBJH法により算出した細孔容量の面積分布(dV/dR)が100〜300mm3/g/nmであることが好ましい。
【0015】
本発明の吸着材粒子の製造工程で、オキシ水酸化鉄を主成分とする固体を粉砕する場合、乾式粉砕を用いることが好ましい。
また本発明の吸着材粒子の製造工程では、粒径を適切な範囲とするために、メッシュによる分級を行うことが好ましい。
この分級の方法としては、該粉砕物を水中において5〜20μmの目開きを有するメッシュで分級し、メッシュを通過しない分を回収する方法が簡便で好ましい。このメッシュの目開きとしては、10μmが特に好ましい。
【0016】
本発明の吸着材粒子は、気相中で、例えば排ガス中の有害物質等を吸着するために使用することもできるが、液相中で使用することがより好ましい。
一般に、液相中で吸着材を使用する場合、液体に含まれる成分が拡散により細孔中に達するには時間を要するため、吸着平衡に達するのには時間を要する。
本発明の吸着材粒子は、従来の吸着材に比較して、一定量の吸着に要する時間を大幅に短縮し、これにより効率的な吸着を行うことができる。
上記の液相としては、吸着材以外の部分が均一な液相であれば問題なく使用可能であり、例えば有機溶媒溶液も用いることができるが、前記課題として記載したように、有害物質の回収、有用物質の回収等を目的として、水溶液中で使用することが好ましい。
また、本発明の吸着材粒子は、液相を撹拌すれば分散し、液相を静置すれば速やかに沈降して容易に回収できるものであるから、流動床において使用するのに特に適している。
【0017】
本発明の吸着材粒子は、結晶の形状が粒状であることが好ましい。ここで粒状とは、針状あるいは板状ではないということを意味し、より具体的には、結晶の長径/短径の比が3以下である。
【0018】
本発明の吸着材粒子は、平均結晶子径が10nm以下であることが好ましく、5nm以下であることがより好ましい。
この平均結晶子径が小さいほど、水中でリン酸吸着材として使用する場合のリン酸吸着速度が大きいことが、本発明者らにより明らかにされた。
平均結晶子径Dは、X線回折でβ−オキシ水酸化鉄に特徴的な2θ=35°付近の回折線から、下記のシェラーの式を用いて計算される。
D=Kλ/βcosθ
ただし、βは装置に起因する機械幅を補正した真の回折ピークの半値幅、Kはシェラー定数、λはX線の波長である。
【0019】
(造粒吸着材)
本発明の吸着材粒子は、そのまま吸着材として使用するほかに、新たな吸着材を製造する材料として使用することができる。
例えば、適切なバインダーを用いて、本発明の吸着材粒子どうしを結合し造粒することにより、該吸着材粒子と同等の吸着性能を有しながら、より大きなサイズを有し取り扱いの容易な吸着材(造粒吸着材)を製造することができる。この造粒吸着材は、粒径が0.1mm以上であることが好ましく、0.25mm以上であることがより好ましい。
また、他種の吸着材と結合することにより、本発明の吸着材粒子と異なる性能を有する吸着材を製造することも可能である。
【0020】
前記バインダーは、pH2.5〜12.5の範囲で安定であることが好ましい。後述のように、陰イオンを脱着させる際にはアルカリ性にする必要があるので、バインダーはpH2.5〜14の範囲で安定であることがより好ましい。
また、吸着材粒子とバインダーとの質量比は、2:1〜100:1であることが好ましく、2:1〜20:1であることがより好ましく、4:1〜9:1であることが特に好ましい。
【0021】
またバインダーは、吸着材の表面を覆うことによって吸着性能を下げるものであってはならない。
バインダーの材質は、以上の条件に合致すれば特に限定されないが、例えば無機化合物を用いることができる。無機化合物は一般に粒子状の形状をとるため、吸着材の表面を覆うことが少なく、バインダーに適している。
バインダーが無機化合物である場合、その一次粒子径が0.1μm以下のものが好ましい。この場合には、該粒子が液中に分散してなる分散液を用いて、造粒吸着物を製造することが好ましい。
また、無機化合物であるバインダー自体が吸着材であってもよい。
【0022】
前記無機化合物としては、鉄、ジルコニウム、チタン及びスズから選ばれる金属の化合物が例示される。特に、上掲の金属の酸化物又は水酸化物が好ましい。
このうち特に、オキシ水酸化鉄を主成分とすることが好ましい。バインダーにおけるオキシ水酸化鉄の含有率は、前述の本発明の吸着材粒子と同様、99質量%以上であることが好ましく、オキシ水酸化鉄の含有率が実質的に100質量%であるものが最も好ましい。
オキシ水酸化鉄は、リン酸イオン、亜リン酸イオン、次亜リン酸イオン、硝酸イオン、フッ化物イオン等に対する吸着性に優れている。
オキシ水酸化鉄には、結晶構造の相違によって、α−オキシ水酸化鉄、β−オキシ水酸化鉄、γ−オキシ水酸化鉄、又は非晶質オキシ水酸化鉄がある。これらのうち、β−オキシ水酸化鉄の吸着性能が特に優れている。
本発明に用いるオキシ水酸化鉄は、BET比表面積が200m2/g以上であることが好ましく、またBJH法により算出した細孔容量の面積分布(dV/dR)が100〜300mm3/g/nmであることが好ましい。
【0023】
本発明の造粒吸着材は、気相中で使用することもできるが、液相中で使用することが好ましい。
一般に、液相中で吸着材を使用する場合、液体に含まれる成分が拡散により細孔中に達するには時間を要するため、吸着平衡に達するのには時間を要する。一方吸着材をナノ粒子として液中に分散させれば速やかに吸着平衡に達するが、ナノ粒子の分離、回収に問題がある。本発明の造粒吸着材は、これらの問題を同時に解決する目的を有するものであるから、液相中で使用するのに特に適している。
上記の液相としては、造粒吸着材以外の部分が均一な液相であれば問題なく使用可能であり、例えば有機溶媒溶液も用いることができるが、前記課題として記載したように、有害物質の回収、有用物質の回収等を目的として、水溶液中で使用することが好ましい。
【0024】
一方、バインダーはポリオレフィン系樹脂であってもよい。樹脂には、吸着材の表面を覆う恐れがあるものもあるが、ポリオレフィン系樹脂は、樹脂が疎水性であるため、このような恐れがない。また造粒吸着材の製造が容易である点から、ポリオレフィン系樹脂は、エマルジョン形態であることが好ましい。
ポリオレフィン系樹脂としてとしては、ポリエチレン(直鎖状低密度ポリエチレン等の低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン等)、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン又はプロピレンと他のα−オレフィンとの共重合体、さらにエチレン又はプロピレンと(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、酢酸ビニル、ビニルアルコール、スチレン等の不飽和単量体との共重合体等が例示される。
【0025】
(吸着速度)
本発明の吸着材粒子及び造粒吸着材は、吸着速度が高い特徴を有する。
この吸着速度は、次のような回分式吸着試験により測定できる。
塩酸でpHを一定に調整したリン換算濃度400mg/Lのリン酸二水素カリウム水溶液150mLを準備する。この中に吸着材1gを投入し、室温で撹拌する。一定時間後に水溶液をサンプリングしてリン酸イオン濃度を測定し、吸着量を求める。
また以上の試験において、経時的にリン酸イオン吸着量を求め、経時変化がなくなった時点での吸着量により、最終的吸着量を見積もることができる。より簡便には、24時間後の吸着量により最終的吸着量を見積もることができる。
本発明の吸着材粒子及び造粒吸着材は、この方法において、水溶液のpHを3.5に調整した場合、24時間後にリン換算吸着量が22mg以上、より好ましくは30mg以上となる。
【0026】
また本発明の吸着材粒子及び造粒吸着材は、水中で陰イオン吸着材として使用する過程で、pHが顕著に上昇することを特徴とする。これは、具体的には次の方法で示される。
塩酸でpHを一定に調整したリン換算濃度400mg/Lのリン酸二水素カリウム水溶液150mLを準備する。この中に吸着材1gを投入し、室温で撹拌する。一定時間後に水溶液をサンプリングしてpHを測定する。
本発明の吸着材粒子及び造粒吸着材は、この方法において、水溶液のpHを3.5に調整した場合、1時間後の水溶液のpHに対して24時間後の水溶液のpHが0.5以上上昇する。
ところが、本発明の吸着材粒子の材料として用いられるβ−オキシ水酸化鉄は、粒子径がある程度微小でないと、吸着材として使用してもほとんど水溶液のpHの変化をもたらさない。
【0027】
これらの原因は、次のように推察される。粉砕等の処理をしていないβ−オキシ水酸化鉄では、水酸基がリン酸イオンのような大きな陰イオンの容易に到達し得ない細孔中にある。このような細孔は、特に塩素イオンが離脱することにより形成されるものである。一方、本発明の吸着材は、このような細孔構造が破壊されているため、リン酸イオンも容易に該水酸基の近傍に到達する。
粒度の調整をしていないβ−オキシ水酸化鉄でも、大型の空孔があるため、吸着速度は遅いもののリン酸イオンの吸着は可能である。
本発明の吸着材においては、これに続き、吸着された陰イオンが水酸基と置換し、吸着材に該陰イオンが直接結合した形に変化し、それとともに、水酸基は水酸イオンとして水中に放出されるため、水溶液のpHは上昇する。しかし粉砕等の処理をしていないβ−オキシ水酸化鉄では、このような置換は起こらず、従ってpHの上昇も起こらないものと推察される。
以上により、本発明の吸着材は、陰イオンを単に吸着するのみでなく、その後陰イオンは吸着材に結合して容易に解離しない状態となるため、高い吸着効率を発揮するものと考えられる。
【0028】
本発明の吸着材は、陰イオン吸着後に、水中で塩基と接触させてアルカリ性とすることにより、該陰イオンを脱着させることができる。
従来、リン酸イオン等の陰イオンの回収法としては、水難溶性の化合物として回収する方法が多く用いられており、この方法は単に回収する場合には適していたが、回収物を再利用するための処理に手間がかかっていた。しかし本発明の吸着材を用いれば、水溶性の塩の高濃度水溶液として回収することが可能であり、その後の処理も容易である。
前記の脱着に用いる塩基としては、特に限定されないが、上記の処理の容易さから、脱着処理により生成する塩の水溶解度が高いものである方が好ましく、また陰イオンの種類や後処理方法に応じて選択することができる。例示すれば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属炭酸塩、アンモニア等を使用することができる。
これらの塩基を水溶液とし、陰イオンを吸着させた本発明の吸着材と接触させることにより、該陰イオンを脱着させ水溶液中に溶出させることができる。この水溶液のpHとしては、10以上であることが好ましく、13以上であることが特に好ましい。
【0029】
本発明の吸着材粒子又は造粒吸着材は、通水性を有し、該吸着材粒子又は造粒吸着材を通さない容器に収納して、使用することもできる。これにより、吸着材の回収、吸着物質の脱着、及び吸着の反復使用が容易になる。
この通水性を有し吸着材粒子又は造粒吸着材を通さない容器としては、孔径が吸着材粒子粒径又は造粒吸着材より小さい細孔、好ましくは10μm以下、より好ましくは5μm以下である細孔を多数有する容器を用いることができる。具体的には細孔を有するセラミック、合成樹脂等からなる容器、不織布からなる袋、また通水孔部分を不織布で覆った容器等が挙げられる。
【実施例】
【0030】
次に、本発明の実施例によってさらに詳細に説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。
【0031】
測定方法
(粉末X線回折)
X線回折(XRD)パターンは、X線回折装置Ultima IV(リガク社製)を用いて測定した。測定にはCuKα管球を使用した。平均結晶子径はXRDよりシェラーの式に従って算出した。
(比表面積)
比表面積測定装置MacsorbHM 1210(マウンテック社製)を使用して、ガス吸着法により比表面積を測定した。
(TEM観察及びFFT解析)
試料のTEM(透過電子顕微鏡)観察は、透過型電子顕微鏡JEM 2010F(JEOL社製、加速電圧200kV)を用いて行った。またこれによるFFT(高速フーリエ変換)解析は、Gatan社製Digital Micrographを用いて行なった。
(オキシ水酸化鉄中の塩素イオンの含有量)
オキシ水酸化鉄試料を3M硫酸に溶解した後、アルカリ溶液で希釈して鉄分を沈殿させ、フィルターでろ過してろ液を回収し、イオンクロマトグラフ法(日本ダイオネクス社製DX-500型)により定量した。
(分散液の粘度)
20℃で、音叉型振動式粘度計SV−10(エー・アンド・デイ社製)により測定した。
(分散液の粒度分布)
ミクロン単位の分散液の粒子径に関しては、レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置LA-920(堀場製作所製)を使用して、体積基準の累積50%粒子径(D50)、及び体積基準の累積90%粒子径(D90)を測定した。
ナノ分散液の粒子径、粒度分布、累積50%粒子径(D50)、及び累積90%粒子径(D90)は、動的光散乱粒度分布測定装置ゼータサイザーナノS(スペクトリス社製)を使用して測定した。
(分散粒子のゼータ電位)
ゼータ電位は、ナノトラック(Nanotrac Wave UZ152、日機装社製)を用いて測定した。
【0032】
参考例1(オキシ水酸化鉄の製造)
塩化第二鉄(FeCl)水溶液に、室温でpH6以下に調整しながら水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液を滴下し、NaOHの最終添加量をNaOH/FeCl(モル比)=2.75として反応させ、オキシ水酸化鉄の粒子懸濁液を得た。得られた懸濁液中の粒子の平均粒子径d50は17μmであった。
懸濁液を濾別後、空気中120℃で乾燥し、イオン交換水で洗浄し、さらに空気中120℃で乾燥し、オキシ水酸化鉄の粉末を得た。
以上により得られたオキシ水酸化物粉末(粉末A)の粒子径は0.25mm〜5mmであった。X線回折により、結晶構造はβ−オキシ水酸化鉄であり、平均結晶子径は5nmであることを確認した。
透過電子顕微鏡(TEM)観察での様子を図1に示す。結晶形状は粒状であった。TEM観察による結晶子径は5〜10nm、個々の結晶は粒状であり、これらが凝結して粒子を形成していた。
また比表面積は280m/g、塩素イオン含有量は、5.8wt%であった。
【0033】
参考例2(オキシ水酸化鉄吸着材粒子の製造)
オキシ水酸化鉄粉末(粉末A)をピンミルで乾式粉砕し、図2に示す粒度分布の粉末(粉末B)を得た。粉末Bの粒子径範囲は0.6〜300μm、平均粒子径26.5μmであった。
【0034】
実施例1〜3(オキシ水酸化鉄吸着材分級品)
粉末Bを篩で分級し、以下の各粉末を得た。
粉末C−1:粒度10〜32μm
粉末C−2:粒度32〜45μm
粉末C−3:粒度45〜75μm
【0035】
比較例1
粉末Bを篩で分級し、粒度150〜250μmの粉末C−4を得た。
【0036】
実施例4(10μmアンダーを回収した粒子の製造)
粉末Bを篩目10μmのナイロンメッシュで包み、イオン交換水に入れ、十分に洗浄して粒径10μm以下を回収し、粒子径範囲8〜300μm、平均粒子径40.3μmの粉末(粉末D)を得た。
以上の粉末B、粉末D(メッシュ残存物)及びメッシュ通過品(上記の除去分)の粒径分布を図2に示した。
【0037】
参考例3(オキシ水酸化鉄のナノ分散液の製造)
粉末Bをイオン交換水中に固形分濃度10質量%となるように混合した後、ビーズミル(ジルコニアビーズ、ビーズ径1mm)で30分間粗粉砕し懸濁液とした。これをさらに、ビーズミル(ジルコニアビーズ、ビーズ径0.1mm)で60分間粉砕し、分散液Eを得た。この粉砕により、茶色に懸濁していた液が黒色で透明なナノ分散液Eへ変化した。
ナノ分散液EのpHは3.1、平均粒子径d50は0.15μm、d90は0.27μm、等電点はpH7.1であった。
また本分散液Eを50℃で乾燥した粉末の結晶構造はβ−オキシ水酸化鉄、結晶子径は2nmで、比表面積は285m/gであった。
【0038】
実施例5〜7(造粒品の製造)
吸着材である粉末Dと、以下に示す各種バインダーとを所定の質量比で混合した後、120℃で乾燥し、更に篩で0.25mm〜0.5mmの大きさに整粒し、造粒品群(造粒品F1〜F3)を調製した。
<バインダーの種類及び比率>
吸着材としては粉末Dを、バインダーとしては下記の各分散液を使用し、これらを下記の質量比として造粒品を得た。
・造粒品F1: 前記分散液E(吸着材:バインダー=9:1)
・造粒品F2: 前記分散液E(吸着材:バインダー=8:2)
・造粒品F3: ジルコニアナノ分散液(分散液E2、粒径60〜100nm、pH7.0〜8.0、固形分濃度10質量%)(吸着材:バインダー=9:1)
【0039】
測定例1(吸着材粒子のリン酸吸着試験)
リン酸二水素カリウムをイオン交換水に溶解し、塩酸によりpHを3.5に調整し、濃度400mg−P/L(リンとしての濃度)の試験液Gを調製した。試験液Gの150mLに、粉末A、B、C−1〜5、D〜Fの各1gを添加後、撹拌し吸着試験を行った。所定の時間後に液を採取し、フィルタシリンジで固形分と分離し、溶液中のリン濃度をICP(誘導結合プラズマ)により分析し、吸着量を算出した。同時にpHを測定した。結果を表1及び表2に示した。
【0040】
【表1】
【0041】
【表2】
【0042】
以上からわかるように、平均粒径d50を10〜70μmとした分級品は、24時間後のpHが4以上となった。また、造粒品も含めて、24時間後のpHが4以上となる吸着材粉末は、吸着速度が顕著に高く、1時間後の吸着量が22mg−P/g以上であった。
【0043】
測定例2(メッシュ袋入り吸着材粒子のリン酸吸着試験)
実施例4で得られた吸着材粒子(粉末D)を使用した。袋状の目開き10μmのナイロンメッシュに粉末D1.0gを入れ、袋口をヒートシールにて封をした。
測定例1と同様に試験液Gを調製した。試験液Gの150mLに、上記吸着材入りメッシュ袋1個を入れ撹拌し、測定例1と同様に吸着試験を行った。所定の時間後に液を採取し、溶液中のリン濃度をICP(誘導結合プラズマ)により分析し、吸着量を算出した。同時にpHを測定した。結果を表3に示した。
【0044】
【表3】
【0045】
以上のように、メッシュ袋入り吸着材を用いても、吸着時間24時間では測定例1と同程度の吸着量を示し、pHの上昇も見られた。
【0046】
実施例8(塩素イオン含有量調整品)
参考例2(粉末B)と同様にして得られたオキシ水酸化鉄吸着材粒子を、篩で分級し、粒子径範囲10〜200μm、平均粒子径49.9μmの粉末(粉末C’)を得た。
粉末C’をカラムに詰め、10wt%水酸化ナトリウム水溶液を通液した後、pH2.5の希塩酸を通液し、粉末C−5を得た。
【0047】
実施例9(塩素イオン含有量調整品)
実施例8と同様に粉末C’をカラムに詰めて10wt%水酸化ナトリウム水溶液及びpH2.5希塩酸の通液を行った。さらにこれに純水を通液し、流出液に塩素が含まれなくなるまで純水の通液を行い、粉末C−6を得た。
粉末C−5及びC−6の比表面積、全細孔容量、平均結晶子径、及び塩素イオン含有量を測定した結果を表4に示した。
【0048】
【表4】
【0049】
測定例3(塩素イオン含有量調整品のリン酸吸着試験)
測定例1と同様にして、試験液G150mLに、粉末C−5及びC−6の各1gを添加後、撹拌し吸着試験を行い、リン酸吸着量及びpHの変化を測定した。結果を表5に示した。
【0050】
【表5】
【0051】
以上から、塩素イオン含有量が高い方(特に3wt%程度以上)が吸着量及び吸着速度に関して好ましいことがわかる。またこの特長は比表面積等の構造的要因によるものではないことが示唆される。
図1
図2