特許第6644816号(P6644816)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ キヤノン ユーエスエイ,インコーポレイテッドの特許一覧 ▶ ザ ブリガム アンド ウィメンズ ホスピタル インコーポレイテッドの特許一覧

特許6644816マニピュレータを制御する方法および装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6644816
(24)【登録日】2020年1月10日
(45)【発行日】2020年2月12日
(54)【発明の名称】マニピュレータを制御する方法および装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 1/005 20060101AFI20200130BHJP
   A61B 1/018 20060101ALI20200130BHJP
   G02B 23/24 20060101ALI20200130BHJP
   B25J 18/06 20060101ALI20200130BHJP
【FI】
   A61B1/005 523
   A61B1/005 522
   A61B1/018
   G02B23/24 A
   B25J18/06
【請求項の数】11
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2017-568172(P2017-568172)
(86)(22)【出願日】2015年6月30日
(65)【公表番号】特表2018-523508(P2018-523508A)
(43)【公表日】2018年8月23日
(86)【国際出願番号】US2015038662
(87)【国際公開番号】WO2017003468
(87)【国際公開日】20170105
【審査請求日】2018年2月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】596130705
【氏名又は名称】キヤノン ユーエスエイ,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】CANON U.S.A.,INC
(73)【特許権者】
【識別番号】503146324
【氏名又は名称】ザ ブリガム アンド ウィメンズ ホスピタル インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】The Brigham and Women’s Hospital, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100090273
【弁理士】
【氏名又は名称】國分 孝悦
(72)【発明者】
【氏名】波多 伸彦
(72)【発明者】
【氏名】加藤 貴久
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼木 清志
(72)【発明者】
【氏名】古瀬 秀和
【審査官】 ▲高▼原 悠佑
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/058893(WO,A1)
【文献】 特開2006−116289(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0164596(US,A1)
【文献】 特開2001−286437(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/114568(WO,A1)
【文献】 特開2001−137257(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/012162(WO,A1)
【文献】 国際公開第2015/012142(WO,A1)
【文献】 特開平08−196541(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/00 − 1/32
A61B 34/30 − 34/37
G02B 23/24 − 23/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の湾曲可能部分を含むマニピュレータの制御装置であって、
前記湾曲可能部分に接続され、前記マニピュレータを湾曲させる、複数の駆動力伝達機構と、
前記駆動力伝達機構に駆動力を印加する複数の駆動源と、
操作部分の操作量に基づいて操作信号を生成する操作量入力ユニットと、
複数の動作モードのうちの1つを選択する動作モード入力ユニットと、
前記操作信号に基づいて前記駆動源に適用される駆動量を計算して出力する計算デバイスであり、前記駆動量が前記動作モードに対応している計算デバイスとを含み、
前記計算デバイスは、
複数の駆動量計算機と、
動作モード入力ユニットからの入力信号に基づいて前記駆動量計算機のうちの1つによって出力される駆動量を出力する動作モード選択ユニットとを含み、
前記操作信号に基づいて前記駆動源に適用される前記駆動量は、選択された前記動作モードに基づいて変化する、制御装置。
【請求項2】
前記駆動量計算機のうちの1つは、前記湾曲可能部分が同じ方向に湾曲するように前記駆動量を計算する、請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記駆動量計算機のうちの前記1つは、前記操作信号を増幅することによって前記駆動量を計算するように構成された複数の第1の増幅器を含む、請求項2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記駆動量計算機のうちの1つは、前記湾曲可能部分の座標系を定めるための1つの座標軸と前記湾曲可能部分のうちの少なくとも1つの遠位端部との間の角度が一定になるように前記駆動量を計算する、請求項1に記載の制御装置。
【請求項5】
前記駆動量計算機のうちの前記1つは、前記操作信号を増幅することによって前記駆動量のうちの対応する1つを計算するように構成された第2の増幅器を含み、
前記第2の増幅器は、一定の前記角度を有する遠位端部を有する前記湾曲可能部分のうちの前記少なくとも1つに対応するように構成され、前記第2の増幅器の増幅定数が0に設定される、請求項4に記載の制御装置。
【請求項6】
前記駆動量計算機のうちの1つは、観察対象の座標を受け取り、前記マニピュレータの最も遠位側にある湾曲可能部分から長手方向に延びる直線が前記座標によって指定される位置を通過するように、前記駆動量を計算する、請求項1に記載の制御装置。
【請求項7】
前記駆動量計算機のうちの前記1つは、
前記操作信号を増幅することによって前記駆動量を計算するように構成された複数の第3の増幅器と、
前記観察対象の座標を示す信号を受け取り、前記第3の増幅器の第3の増幅定数を出力する、記憶部とを含み、
前記駆動量は、前記操作信号を前記第3の増幅定数で増幅することによって計算される、請求項6に記載の制御装置。
【請求項8】
前記複数の動作モードは、湾曲動作モード、特定視角動作モード、および遠隔中心動作モードを含む、請求項1に記載の制御装置。
【請求項9】
複数の湾曲可能部分と、前記湾曲可能部分に接続され、マニピュレータを湾曲させる、複数の駆動力伝達機構とを含むマニピュレータ、ならびに、
前記駆動力伝達機構に駆動力を印加する複数の駆動源と、
操作部分の操作量に基づいて操作信号を生成する操作量入力ユニットと、
複数の動作モードのうちの1つを選択する動作モード入力ユニットと、
前記操作信号に基づいて前記駆動源に適用される駆動量を計算して出力する計算デバイスであり、前記駆動量が前記動作モードに対応している計算デバイスと
を含む制御装置を含み、
前記計算デバイスは、
複数の駆動量計算機と、
動作モード入力ユニットからの入力信号に基づいて前記駆動量計算機のうちの1つによって出力される駆動量を出力する動作モード選択ユニットとを含み、
前記操作信号に基づいて前記駆動源に適用される前記駆動量は、選択された前記動作モードに基づいて変化する、マニピュレータシステム。
【請求項10】
前記マニピュレータは、1つまたは複数の内視鏡器具をその中に挿入できるように適合されている、請求項9に記載のマニピュレータシステム。
【請求項11】
前記複数の動作モードは、湾曲動作モード、特定視角動作モード、および遠隔中心動作モードを含む、請求項9に記載のマニピュレータシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の湾曲可能機構を含む可撓性マニピュレータを制御する方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、患者への負担を軽減することができ、治療または検査後の生活の質(QOL)を改善することができる最小侵襲医療が、注目を集めている。内視鏡を用いた外科手術または検査は、最小侵襲医療の代表的な例である。例えば、腹腔鏡手術は、より小さな手術創で行うことができ、その結果、入院期間も短くなり、見た目もそれほど損なわれないので、従来の腹部外科手術より有利である。
【0003】
最小侵襲医療に使用される内視鏡は、おおまかに硬性内視鏡と軟性内視鏡に分類される。硬性内視鏡では、鮮明な画像を得ることができるが、観察対象を観察できる方向が限られている。さらに、硬性内視鏡を、食道、大腸、または尿道など湾曲した器官内に挿入すると、硬性内視鏡の挿入部分がその器官を押圧し、患者が痛みを覚えることになる。これに対して、軟性内視鏡は、湾曲可能部材で構成された挿入部分を含むので、内視鏡の遠位端部の湾曲角を調節することによって、大きな領域を詳細に観察することができる。さらに、挿入経路に沿って挿入部分を湾曲させることにより、患者への負担を軽減することができる。湾曲可能部分の数を増やせば、挿入経路が複雑な湾曲形状を有する場合でも、内視鏡を組織と接触させることなく、内視鏡を身体の深い領域に挿入することができる。したがって、複数の湾曲可能部分を有する軟性内視鏡が、広く研究開発されている。
【0004】
内視鏡を用いた検査および手術には、内視鏡の操作が技術を必要とするという問題がある。このことの1つの理由は、医師が内視鏡の挿入部分の位置を直接観察することができず、操作方向と観察する画像における動きの方向との間の関係を容易には認識することができないことである。特に、湾曲可能部分の数が増えると、挿入部分の位置が複雑に変動し、したがって、操作の難易度はさらに高くなる。その結果として、検査または手術に必要な時間が長くなり、医師および患者への負担もそれに応じて大きくなる。
【0005】
軸方向および径方向の両方の観察を行うカメラを挿入部分に取り付けると、特開12010−12079号公報に記載されるように、湾曲可能部分を操作することなく、挿入経路の表面を観察することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ただし、特開2010−12079号公報による内視鏡では、カメラが挿入部分に固定されるので、依然として湾曲可能部分を操作して観察方向を所望の方向に変化させる必要がある。したがって、大きな領域を容易に観察できる内視鏡を実現するためには、内視鏡の操作性を改善することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の1態様によれば、複数の湾曲可能部分を含むマニピュレータの制御装置は、湾曲可能部分に接続され、マニピュレータを湾曲させる、複数の駆動力伝達機構と、駆動力伝達機構に駆動力を印加する複数の駆動源と、操作部分の操作量に基づいて操作信号を生成する操作量入力ユニットと、複数の動作モードのうちの1つを選択する動作モード入力ユニットと、操作信号に基づいて駆動源に適用される駆動量を計算して出力する計算デバイスであり、駆動量が動作モードに対応している計算デバイスとを含む。計算デバイスは、複数の駆動量計算機と、動作モード入力ユニットからの入力信号に基づいて駆動量計算機のうちの1つによって出力される駆動量を出力する動作モード選択ユニットとを含む。また、操作信号に基づいて駆動源に適用される駆動量は、選択された動作モードに基づいて変化する。
【0008】
本発明のこの態様によれば、操作者は、事前に設定された複数の動作パターンから検査または手術の目的に一致する動作パターンを選択し、制御装置は、選択された動作パターンを実現するために必要な駆動量を計算する。したがって、操作者は、選択された動作を実行するのに、簡単な操作を行うだけでよい。
【0009】
この制御装置では、駆動量計算機のうちの1つは、湾曲可能部分が同じ方向に湾曲するように駆動量を計算することがある。
【0010】
この場合には、マニピュレータの遠位端部が大きく動くので、広い領域にわたって観察を行うことができる。
【0011】
駆動量計算機のうちの前記1つは、操作信号を増幅することによって駆動量を計算するように構成された複数の第1の増幅器を含むことがある。
【0012】
この場合には、マニピュレータの位置を正確に測定または予測することができないときでも、マニピュレータの遠位端部の動作速度の変動を低減することができる。
【0013】
この制御装置では、駆動量計算機のうちの1つは、湾曲可能部分の座標系を定めるための1つの座標軸と湾曲可能部分のうちの少なくとも1つの遠位端部との間の角度が一定になるように駆動量を計算することがある。
【0014】
この場合には、壁面に沿った観察を行うことができる。
【0015】
駆動量計算機のうちの前記1つは、操作信号を増幅することによって駆動量のうちの対応する1つを計算するように構成された第2の増幅器を含むことがある。第2の増幅器は、一定の前記角度を有する遠位端部を有する湾曲可能部分のうちの前記少なくとも1つに対応するように構成され、第2の増幅器の増幅定数は、0に設定されることがある。
【0016】
この場合には、マニピュレータの位置を正確に測定または予測することができないときでも、マニピュレータの遠位端部の動作速度の変動を低減することができる。
【0017】
この制御装置では、駆動量計算機のうちの1つは、観察対象の座標を受け取り、マニピュレータの最も遠位側にある湾曲可能部分から長手方向に延びる直線がそれらの座標によって指定される位置を通過するように、駆動量を計算することがある。
【0018】
この場合には、マニピュレータの前側から見えない部分を観察することができる。
【0019】
駆動量計算機のうちの前記1つは、操作信号を増幅することによって駆動量を計算するように構成された複数の第3の増幅器と、観察対象の座標を示す信号を受け取り、第3の増幅器の第3の増幅定数を出力する記憶部とを含むことがある。駆動量は、操作信号を第3の増幅定数で増幅することによって計算することができる。
【0020】
この場合には、マニピュレータの位置を正確に測定または予測することができないときでも、マニピュレータの遠位端部の動作速度の変動を低減することができる。
【0021】
本発明のさらなる特徴は、添付の図面を参照して、以下の例示的な実施形態の説明を読めば明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の1実施形態によるマニピュレータ操作システムを示す概略図である。
図2】複数の湾曲可能部分を含むワイヤ駆動式マニピュレータを示す概略図である。
図3】駆動源のための位置制御装置を示すブロック図である。
図4(a)-(b)】マニピュレータの湾曲可能部分の座標系を示すグラフである。
図5(a)-(c)】3種類の特徴的な動作パターンを示す図である。
図6】第1の実施形態によるマニピュレータ制御装置を示すブロック図である。
図7(a)-(d)】マニピュレータの湾曲角とマニピュレータの遠位端部の位置の間の関係を示す図である。
図8】第2の実施形態によるマニピュレータ制御装置を示すブロック図である。
図9(a)-(c)】第2の実施形態による駆動量計算機を示すブロック図である。
図10】第2の実施形態によるシミュレーション結果を示すグラフである。
図11(a)-(b)】第2の実施形態によるシミュレーション結果を示すグラフである。
図12】第2の実施形態によるシミュレーション結果を示すグラフである。
図13(a)-(b)】第2の実施形態によるシミュレーション結果を示すグラフである。
図14】第2の実施形態によるシミュレーション結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
第1の実施形態
1−1 装置の構造
本発明の第1の実施形態による制御装置は、2つの湾曲可能部分を含むワイヤ駆動式マニピュレータに適用される。図1は、マニピュレータ操作システムを示す概略図である。図1は、本発明の第1の実施形態による制御装置1と、湾曲式マニピュレータ2と、操作量入力ユニット3と、動作モード入力ユニット4と、画像表示デバイス5とを示している。この例示的な実施形態では、動作モード入力ユニット4は、3つの押しスイッチを含み、これらの押しスイッチのうちのいずれかが押されたときに動作モード信号を出力する。操作量入力ユニット3は、単軸ジョイスティックを含み、ジョイスティックの操作量に応じて操作入力Δmを出力する。制御装置1は、動作モード信号に基づいて、予め設定された3種類の動作パターンのうちの1つを選択する。次いで、制御装置1は、操作入力Δmに基づいて、湾曲式マニピュレータ2の駆動源に入力する駆動量Δθ1およびΔθ2を計算する。
【0024】
いくつかの実施形態では、操作量入力ユニット3は、スライド・バー、タッチ・スクリーン、非接触式入力ユニット(例えば医師が指を左から右に動かして入力を制御することができる)、または操作信号を生成するために使用される入力を入力することを可能にするその他の入力デバイスである。同様に、動作モード入力ユニットは、3つの位置を有する単一のトグル・スイッチ、フット・ペダル、3つのモード選択子を有するタッチ・スクリーンなどであってもよい。他の実施形態では、制御装置は、上記に例示した3つのモードの代わりに、2つのモード、3つのモード、4つのモード、またはそれを超える数のモードの選択を可能にする動作モード入力ユニットを含むことがある。
【0025】
図2は、湾曲式マニピュレータ2の構造を示す図である。湾曲式マニピュレータ2は、挿入部分と、挿入部分に駆動力を印加する駆動源211および212とを含む。挿入部分は、高い剛性を有する材料で構成された剛性部分200と、可撓性材料で構成された湾曲可能部分とを含む。湾曲可能部分は、近位側に設けられた第1の湾曲可能部分201と、遠位側に設けられた第2の湾曲可能部分202とを含む。剛性部分200と湾曲可能部分201および202とは、中空構造を有し、したがって、鉗子、洗浄デバイス、カメラ、切断器具などをその中に通して案内することができる。
【0026】
ワイヤ221は、駆動力伝達機構として機能するものであり、一端が第1の湾曲可能部分のワイヤ固定部分231に固定されており、駆動源212の出力シャフトの周りに巻き付けられている。したがって、駆動源212が回転すると、ワイヤ221が引っ張られて、第1の湾曲可能部分201が湾曲する。同様に、ワイヤ222は、ワイヤ・ガイド230の中を延びており、第2の湾曲可能部分の端部に設けられたワイヤ固定部分232に固定される。さらに、ワイヤ222は、駆動源211の周りに巻き付けられて、駆動源211が駆動されたときに、第2の湾曲可能部分202が湾曲するようになっている。
【0027】
駆動源211および212は、駆動源211および212の回転角を検出するエンコーダ251および252と、回転角を制御する位置制御装置25(図示せず)とを備える。位置制御装置25は、第1および第2の湾曲可能部分201および202の遠位端部の角度θ1およびθ2を、制御装置1から入力された駆動量Δθ1およびΔθ2だけ増大または減少させるように、駆動源211および212の回転角を制御する。図3は、位置制御装置25を示すブロック図である。駆動角計算機26は、数式(1)で表される運動学的計算によって、湾曲可能部分の角度を駆動量Δθ1およびΔθ2だけ増大または低減させるのに必要な駆動源211および212の目標角度駆動量Δφ1refおよびΔφ2refを計算する。
(Δφ1ref,Δφ2ref)=R(Δθ1,Δθ2) (1)
【0028】
位置コントローラ271および272は、エンコーダ251および252によって測定される実際の角度駆動量Δφ1およびΔφ2がそれぞれ目標角度駆動量Δφ1refおよびΔφ2refと等しくなるように、駆動源211および212を駆動する。
【0029】
いくつかの例示的な実施形態では、駆動源211および212は、シャフト・ドライブ、歯車モータ、超音波モータなどのモータである。駆動源は、それぞれが駆動力伝達機構に駆動力を印加することができる。この駆動力の印加の一例は、回転することによってワイヤまたはケーブル(駆動力伝達機構)を前方または後方に動かすことにより、駆動力伝達機構によって制御される湾曲可能部分を湾曲させるモータである。別の実施形態では、駆動力は、回転ではなく直線運動によって与えられる。
【0030】
図2に示す例示的な実施形態では、第2の湾曲可能部分202は、遠位端部にカメラ24を有し、このカメラ24は、その視野方向が第2の湾曲可能部分202の遠位端部の角度と一致するように配置される。カメラ24によって取り込まれた画像は、画像伝送ケーブルを介して伝送され、図1に示す画像表示デバイス5に表示される。操作者は、マニピュレータが所望の動作を行うように、画像表示デバイスで画像を観察しながら操作量入力ユニット3を操作する。カメラ24は、ズーム機能を有し、ズーム比は、制御装置1からのコマンドに応答して変化する。
【0031】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載する複数の湾曲可能部分は、参照によりその全体を本明細書に組み込む米国特許出願公開第2014/0243592号明細書に記載の複数のノード・リングで構成される。
【0032】
1−2 制御システムの設計
制御装置1は、湾曲式マニピュレータ2が3種類の特徴的な動作を行うように、また画像表示デバイス5に表示される画像の移動量が各種類の動作について一定になるように、駆動量Δθ1およびΔθ2を計算する。この項では、駆動量Δθ1およびΔθ2とマニピュレータの遠位端部の移動量との間の関係について説明し、画像の移動量を一定にするために駆動量Δθ1およびΔθ2が満たす必要がある条件を導出する。その後、3種類の特徴的な動作の詳細について説明し、これらの動作についての駆動量Δθ1およびΔθ2を計算する方法を導出する。その後、動作間で切り替えるための制御装置1の構造について説明する。
【0033】
図4(a)および図4(b)は、湾曲可能部分の座標系を示す図である。図4(a)に示すように、第1の湾曲可能部分の長手方向および径方向は、それぞれY軸およびX軸で規定される。X軸と第1の湾曲可能部分の遠位端部の間の角度、およびX軸と第2の湾曲可能部分の遠位端部の間の角度は、それぞれθ1およびθ2として規定される。この場合、第2の湾曲可能部分の遠位端部のx座標およびy座標がそれぞれx2およびy2であるときには、座標x2およびy2と角度θ1およびθ2の間の関係は、動力学的計算に基づいて数式(2)のように表すことができる。
【数1】
【0034】
数式(2)から、第1および第2の湾曲可能部分の角度をそれぞれ駆動量Δθ1およびΔθ2だけ増大させた場合の第2の湾曲可能部分の遠位端部の座標x2’およびy2’は、以下の数式(3)によって決定される。
【数2】
【0035】
したがって、Δθ1およびΔθ2が入力された場合の第2の湾曲可能部分の遠位端部の変位量ΔVは、以下のように表すことができる。
【数3】
【0036】
上述のように、操作者は、マニピュレータの遠位端部に配置されたカメラによって取り込まれた画像を観察しながら、操作量入力ユニット3を操作することによって、操作入力Δmの量を制御する。したがって、操作性を改善するためには、マニピュレータの位置に関わらず、操作入力Δmが一定であるときには、画像表示デバイス5に表示される内視鏡画像の移動量は一定であることが望ましい。これを実現するためには、3つの値、すなわち第2の湾曲可能部分の遠位端部の角度θ2ならびに座標x2およびy2が適当な値に設定されるように、第1および第2の湾曲可能部分を操作入力Δmに応じて制御する必要がある。しかし、本実施形態によるマニピュレータは2つしか湾曲可能部分を含まないので、機構の自由度の数は不十分である。したがって、本実施形態では、この不十分な数の自由度を補償するように、カメラ24のズーム比を変化させる。
【0037】
図4(b)を参照すると、カメラ24の視野方向に対して直交する方向への先端の変位量ΔVの成分がΔVx(以下、単に移動量ΔVxと呼ぶ)であるとき、ΔVxは、画像表示デバイス5に表示される内視鏡画像の移動量である。カメラ24の視野方向への変位量ΔVの成分がΔVyであるとき、ΔVyは、内視鏡画像の拡大率または縮小率である。本実施形態では、湾曲可能部分の位置を、移動量ΔVxが操作入力Δmに比例するように制御する。さらに、カメラ24のズーム比は、ΔVyの方向へのマニピュレータの遠位端部の動作によって引き起こされる内視鏡画像の拡大または縮小の影響を打ち消すように制御する。
【0038】
最初に、移動量ΔVxを一定にする駆動量Δθ1およびΔθ2を計算する方法について説明する。移動量ΔVxの操作量Δmに対する比例定数がkであるとき、数式(5)が成り立つ。
ΔVx=kΔm (5)
【0039】
移動量ΔVxの方向の単位ベクトルがUxであるとき、Uxは、以下のように角度θ2を用いて表すことができる。
【数4】
【0040】
移動量ΔVxは、変位量ΔVとベクトルUxの内積として表現することができるので、数式(5)および(6)から以下の数式を導出することができる。
【数5】
【0041】
数式(5)を数式(7)に代入してΔVxを消去することにより、以下の数式が得られる。
【数6】
【0042】
したがって、数式(8)を満たすように操作入力Δmならびに角度θ1およびθ2から駆動量Δθ1およびΔθ2を計算することによって、移動量ΔVxを一定にすることができる。
【0043】
次に、駆動量Δθ1およびΔθ2と移動量ΔVyの間の関係を明確にする。カメラ24の視野方向の単位ベクトルがUyであるとき、Uyは、以下のように角度θ2を用いて表すことができる。
【数7】
【0044】
カメラ24の視野方向の移動量ΔVyは、以下のように先端の変位の量ΔVとベクトルUyの内積として表現される。
ΔVy=[cosθ2sinθ2]{P(θ1+Δθ1,θ2+Δθ2)−P(θ1,θ2)} (10)
【0045】
数式(10)からΔVyを計算し、計算したΔVyを打ち消すようにカメラ24のズーム比を制御することによって、マニピュレータの遠位端部が動いたときでも、画像表示デバイス5に表示される観察画像のサイズを一定に維持することができる。
【0046】
複数のセクションとプリズムジョイントをさらに組み合わせることにより、従属した多数のセクションを最小限に抑えて、内視鏡の視野の位置および方向を完全に制御することが可能になる。プリズムジョイントを追加することで、ロボットは、所期の軌跡に沿ってその先端を自由に位置決めする、または2次元空間内で病巣への注視を維持することができる。
【0047】
具体的には、この位置および方向の完全制御機構を使用することにより、先端位置を以下の動作モードにマッピングすることができる。制御装置1が実行することができる3種類の動作について、図5(a)から図5(c)を参照して説明する。
【0048】
図5(a)に示す第1の動作(以下、湾曲(bending)動作と呼ぶ)では、第1の湾曲可能部分201および第2の湾曲可能部分202が同じ方向に湾曲する。この動作では、マニピュレータの遠位端部の位置および方向を大きく変化させることができる。したがって、湾曲動作は、例えば、体内の大きな領域を観察するのに適している。
【0049】
図5(b)に示す第2の動作(以下、特定視角(angled view)動作と呼ぶ)では、マニピュレータの遠位端部の角度、すなわちカメラ24の視野方向を一定に維持しながら、マニピュレータの遠位端部の位置が動かされる。したがって、特定視角動作は、例えば、マニピュレータの挿入方向に対して角度をなして延びる胃壁または腸壁などの壁面に沿って観察ユニットを動かすのに適している。
【0050】
特定視角モードでは、視野方向に沿った直交平行運動が可能である。この動作モードでは、操作者が視野方向を選択することになり、操作者は、その視野方向に向いたデカルト座標に沿って先端を動かすことができる。したがって、この動作モードは、目標の病巣を含む幅広い範囲の領域を走査するのに有用である。
【0051】
特定視角モードは、参照によりその全体を本明細書に組み込む、Kato T等による「Tendon−Driven Continuum Robot for Endoscopic Surgery:Preclinical Development and Validation of a Tension Propagation Model」、Mechatronics、IEEE/ASME Transactions on、vol.PP、no.99、pp.1、12に、さらに詳細に説明されている。また、参照によりその全体を本明細書に組み込む、Kato T、Okumura I、Kose H、Takagi K、Hata Nによる「Extended kinematic mapping of tendon−driven continuum robot for neuroendoscopy」、Intelligent Robots and Systems(IROS 2014)、2014 IEEE/RSJ International Conference on、vol、no、pp.1997、2002、14−18 Sepも参照されたい。
【0052】
図5(c)に示す第3の動作(以下では、遠隔中心(remote center)動作と呼ぶ)において、カメラ24の視線が常に1つの遠方点を通るように、第2の湾曲可能部分の遠位端部の位置および角度を変化させる。したがって、遠隔中心動作は、例えば、腸壁の折り畳まれた部分の裏側など、前からは見ることができない部分を、裏側から見る場合に適している。
【0053】
いくつかの実施形態では、運動動作(motion movement)モードの遠隔中心により、マニピュレータを目標の病巣の周りで枢動させることができる。湾曲セクション間の運動と平行移動運動の組合せを使用することにより、先端を病巣に向けた状態に保ちながら、先端と標的の間の距離を一定にして、先端が病巣の周りを回ることができる。操作者は、最適な視野が得られるように、または器具が病巣に最適な形で届くように、この距離を選択すればよい。したがって、この動作モードは、様々な角度から病巣を調査し、アクセスするのに特に有用である。
【0054】
次に、湾曲動作、特定視角動作、および遠隔中心動作を行うための駆動量Δθ1およびΔθ2を計算する方法について説明する。本実施形態による湾曲動作では、第1および第2の湾曲可能部分は、駆動量Δθ1とΔθ2の間の比が一定になるように駆動される。この場合には、駆動量Δθ1およびΔθ2は、数式(11)を満たす。
Δθ1=cΔθ2 (11)
【0055】
したがって、湾曲動作のための駆動量Δθ1およびΔθ2は、数式(8)および(11)を連立方程式として解くことによって計算することができる。特定視角動作では、駆動操作は、第2の湾曲可能部分の遠位端部の角度θ2が一定に維持されるように行われる。したがって、駆動量Δθ2は、数式(12)に示すように常に0に設定される。
Δθ2=0 (12)
【0056】
特定視角動作を行うための駆動量Δθ1は、数式(12)を数式(8)に代入することによって計算することができる。遠隔中心動作では、上述のように、カメラ24の視線を、1つの遠方点の周りで動かす。この動作の後のカメラ24の視線を表す直線は、以下のように、第2の湾曲可能部分の遠位端部の座標x2’およびy2’ならびに角度θ2を使用して表すことができる。
【数8】
【0057】
遠隔中心動作の中心のx座標およびy座標がそれぞれxcおよびycであるとき、数式(13)で表される直線は、数式(14)を満たすときに、中心(xc、yc)を通る。
【数9】
【0058】
数式(3)を用いて数式(14)から座標x2’およびy2’を消去し、その結果得られる数式と数式(8)とを連立方程式として解くことにより、遠隔中心動作を行うための駆動量Δθ1およびΔθ2を計算することができる。
【0059】
次に、制御装置1が湾曲動作と、特定視角動作と、遠隔中心動作との間で切替えを行う方法について説明する。この切替え機能は、例えば、湾曲動作を行って広い領域から観察対象を発見し、次いで特定視角動作および/または遠隔中心動作を実行して詳細な観察を行う場合に使用される。図6は、制御装置1を示すブロック図である。制御装置1は、第1の駆動量計算機11と、第2の駆動量計算機12と、第3の駆動量計算機13と、動作モード選択ユニット141および142と、積分器15とを含む。第1の駆動量計算機11は、操作量Δmならびに角度θ1およびθ2を受け取り、数式(8)および(11)を使用して湾曲動作のための駆動量を計算する。同様に、第2の駆動量計算機12は、数式(8)および(12)を使用して特定視角動作のための駆動量を計算する。第3の駆動量計算機13は、操作量Δmならびに座標xcおよびycを受け取り、数式(3)、(8)、および(14)を使用して遠隔中心動作のための駆動量を計算する。駆動モード選択ユニット141および142は、第1、第2、または第3の駆動量計算機から出力される駆動量を選択し、選択した駆動量を出力する。積分器15は、駆動量Δθ1およびΔθ2を積分することによって角度θ1およびθ2を計算する。
【0060】
第2の実施形態
2−1 制御システムの設計
第1の実施形態によれば、制御装置1は、数式(1)および(2)に表される動力学的計算に基づいて移動量ΔVxを一定にするようにΔθ1およびΔθ2を計算する。しかし、実際のマニピュレータでは、ワイヤの伸長、機構の弛み、または摩耗により、動力学的計算によって決定した湾曲可能部分の遠位端部の角度および位置が誤差を含む。これらの誤差により、一定の操作量Δmが入力されたときでも、移動量ΔVxが大きく変動することがあり、操作性が低下することがある。したがって、本実施形態では、最初に、動力学的計算の結果が誤差を含むときに移動量ΔVxが大きく変動する理由について、詳細に説明する。その後、この変動を低減することができる駆動量Δθ1およびΔθ2を計算する制御システムを設計する。
【0061】
2−1−1
数式(7)から明らかであるように、駆動量Δθ1およびΔθ2に対応する移動量ΔVxは、角度θ1およびθ2によって決まる(この特徴を、以下では角度依存性と呼ぶ)。第1の実施形態の制御装置1は、数式(8)に表される動力学的計算によって角度依存性を補償するように駆動量Δθ1およびΔθ2を計算する。しかし、この動力学的計算が大きな誤差を含むときには、角度依存性が補償されずに増幅される。例えば、第1の湾曲可能部分が図7(a)および図7(b)に示すように真っ直ぐである状態から特定視角動作を行うものと仮定する。この場合、第1の湾曲可能部分のみを駆動量Δθ1だけ駆動し、第2の湾曲可能部分の角度を一定に維持すると、第2の湾曲可能部分の遠位端部が、負のX軸方向に動く。第2の湾曲可能部分を図7(a)に示すように湾曲させる場合には、カメラの視野方向の移動量ΔVyが大きく、視野方向に直交する方向の移動量ΔVxが小さい。これに対して、第2の湾曲可能部分が図7(b)に示すように真っ直ぐである場合には、視野方向に直交する方向の移動量ΔVxが大きい。したがって、移動量ΔVxが数式(5)を満たすようにするための駆動量Δθ1は、マニピュレータが図7(b)に示す位置にある場合より、マニピュレータが図7(a)に示す位置にある場合の方が大きい。その結果として、移動量ΔVxが増大する。例えば、マニピュレータの実際の位置は図7(b)に示す位置であるが、動力学的計算の誤差によって図7(a)に示す位置についての駆動量Δθ1を計算したものと仮定する。上述のように、マニピュレータが図7(b)に示す位置にあるときには、駆動量Δθ1が小さいときでも、移動量ΔVxは大きい。さらに、マニピュレータが図7(a)に示す位置にあるという前提に基づいて計算された駆動量Δθ1は、マニピュレータが図7(b)に示す位置にあるときに移動量ΔVxを実現するために必要な駆動量よりも大きい。したがって、遠位端部の位置の実際の移動量が、大きくなりすぎる。
【0062】
次に、動作モードを切り替えたときに起こる移動量ΔVxの不連続的な変化について説明する。この不連続的な変化は、動作モード間の角度依存性の違いによって生じる。例えば、湾曲動作の角度依存性が特定視角動作の角度依存性より小さいことを示すために、第1の湾曲部分が図7(c)に示すように真っ直ぐな状態から湾曲動作が行われる場合について説明する。この湾曲動作では、第1および第2の湾曲可能部分が同じ方向に湾曲する。第2の湾曲可能部分が駆動されると、マニピュレータの遠位端部が、ΔVxの方向に動く。したがって、図7(c)に示すように、第1の湾曲可能部分の駆動操作によって生じるΔVxの方向の移動量が小さいときでも、これは、第2の湾曲可能部分の駆動操作によって補償することができる。したがって、数式(5)を満たす駆動量Δθ1およびΔθ2は、湾曲可能部分の角度θ1およびθ2に関わらず、大きく変動しない。これに対して、上述のように、特定視角動作の角度依存性は大きい。したがって、マニピュレータが実際の位置とは異なる位置にあるという前提で計算された駆動量Δθ1およびΔθ2が入力されたときには、先端の移動量が大きく変動する。角度依存性の違いにより、先端の移動量は、動作モードが切り替えられたときに不連続に変動する。例えば、動作モードが湾曲動作から特定視角動作に切り替えられたものと仮定する。さらに、実際のマニピュレータが、第2の湾曲可能部分が図7(b)および図7(d)に示すように真っ直ぐになる位置にあるが、駆動量は第2の湾曲可能部分が図7(a)および図7(c)に示すように湾曲しているという前提で計算されるものと仮定する。この場合には、内視鏡画像の移動の速度は、湾曲動作中には移動量ΔVxが大きく変動しないので一定であるが、動作モードが特定視角動作に切り替えられたときに突然変化する。したがって、操作性が低下する。
【0063】
2−1−2
上記の項で述べたように、第1の実施形態による制御装置1は、角度依存性を補償するように駆動量Δθ1およびΔθ2を計算するが、第2の湾曲可能部分の遠位端部の移動量ΔVxの変動が、動力学的計算の誤差によって増幅されるという危険性がある。したがって、本実施形態では、駆動量Δθ1およびΔθ2が角度θ1およびθ2に関わらず一定になるように、第1、第2、および第3の駆動量計算機を設計する。本実施形態による制御方法では、角度依存性を補償することができないので、操作入力Δmが一定であるときでも、移動量ΔVxを一定にすることができない。しかし、移動量ΔVxの変動は、動力学的計算が大きな誤差を含むときでも低減することができる。
【0064】
図8は、本実施形態による制御装置1を示すブロック図である。制御装置1に含まれる駆動量計算機112、122、および132は、第1および第2の湾曲可能部分の角度θ1およびθ2を使用せずに駆動量が計算される点で、第1の実施形態の対応する計算機と異なる。図9(a)から図9(c)は、それぞれ駆動量計算機112、122、および132を示すブロック図である。駆動量計算機は、操作入力Δmに定数を掛けることによって第1および第2の湾曲可能部分の駆動量を計算する増幅器1121、1122、1221、1222、1321、および1322を含む。増幅器の増幅定数が適切に設定されると、湾曲動作、特定視角動作、および遠隔中心動作を行うことができる。本実施形態では、第1の駆動量計算機112の増幅器1121および1122の増幅定数α1およびα2は、同じ符号を有する定数に設定される。したがって、第1および第2の湾曲可能部分は、一定の速度で同じ方向に駆動されるので、第2の湾曲可能部分の遠位端部を大きく動かす湾曲動作を行うことができる。さらに、第2の駆動量計算機122の増幅器1221の増幅定数β1は、0でない定数に設定され、増幅器1222の増幅定数は0に設定される。駆動量Δθ2が常に0に設定されるので、角度θ2は、動作モードが特定視角動作に切り替えられたときの値から変化せず、一定に維持される。本実施形態では、第3の駆動量計算機132は、動作モードが遠隔中心動作に切り替えられたときの観察中心の座標xcおよびycならびに第1および第2の湾曲可能部分の角度θ1rおよびθ2rを含むテーブル1323をホスト装置から受け取る。テーブル1323は、入力信号に基づいて、角度θ1rおよびθ2rに近い角度での遠隔中心動作についての増幅定数γ1およびγ2を出力する。
【0065】
2−2 シミュレーション
本項では、前項で述べた制御システムによって移動量ΔVxの変動を低減することができることを示すシミュレーション結果について説明する。本項では、例えば、特定視角動作、ならびに特定視角動作と湾曲動作の間の切替えを、角度θ1およびθ2がそれぞれπ radおよび2π radである図10に実線で示す位置(以下では、ターン・アラウンド位置と呼ぶ)の周りで行うものと仮定する。このシミュレーションでは、特定視角動作および湾曲動作のそれぞれにおいて、図10に破線で示す位置を初期位置として設定し、この位置を20秒の時点でターン・アラウンド位置に変化させ、40秒の時点で点線で示す位置に変化させるように駆動操作を行う。数式(5)の定数kは1に設定され、移動量ΔVxは0.05mm/秒に設定され、増幅定数α1、α2、およびβ1は、それぞれ1.0×10-3、2.0×10-3、および1.2×10-2に設定される。このシミュレーションでは、位置の誤差は、第1および第2の湾曲可能部分の遠位端部の角度の検出誤差によるものであり、その角度誤差は、−π/30 radからπ/30 radであるものと仮定する。
【0066】
最初に、本実施形態による制御方法によって特定視角動作についての駆動量を計算することによって、どのようにして移動量ΔVxの変動を低減することができるかを説明する。図11(a)および図11(b)は、特定視角動作における駆動量Δθ1およびΔθ2を示す図である。図11(a)および図11(b)では、実線は、本実施形態による方法によって計算した駆動量(以下、一定駆動量と呼ぶ)を示し、破線は、第1の実施形態で説明した動力学に基づく方法によって計算した駆動量(以下、可変駆動量と呼ぶ)を示している。これは、以降の図面にも当てはまる。図11(a)の破線から分かるように、第1の湾曲可能部分の可変駆動量は、20秒の時点で大きく増大する。これは、上述のように、角度依存性が補償されたからである。これに対して、実線で示される一定駆動量は、一定である。特定視角動作では第2の湾曲可能部分は駆動されないので、図11(b)に破線および実線で示すように、駆動量Δθ2は、0に維持される。
【0067】
図12は、特定視角動作における移動量ΔVxを示す図である。図12の実線および破線から分かるように、一定駆動量および可変駆動量がデバイスに入力される各場合には、移動量ΔVxは一定ではない。しかし、実線の傾きは一定であり、このことは、一定駆動量が入力されたときに移動量ΔVxが一定の割合で変化することを示している。したがって、操作者は、表示される内視鏡画像を観察しながら、移動量ΔVxの増大に応じて操作入力Δmを低減することによって、容易に先端の移動の速度を一定に維持することができる。したがって、内視鏡が実時間画像(real−time image)を提供する実施形態では、その画像は、一定の画像(constant image)を有することができる。
【0068】
図12の破線から分かるように、シミュレーションが、変動駆動量が入力されることを含むときには、2.0秒前後の時点で、移動量ΔVxが突然増大する。これは、実際の位置がターン・アラウンド位置と異なるにもかかわらず、図11(a)には破線で示すように、大きな駆動量Δθ1が第1の湾曲可能部分に入力されることによるものである。操作者は移動量ΔVxの突然の変化がいつ起こるかを予測することができないので、操作者が表示される画像に基づいて先端の動作速度を一定に維持するように操作入力Δmを変化させることは困難である。したがって、このモードでは、操作性が低下する可能性がある。
【0069】
次に、本実施形態による制御装置を使用することによって、動作モードの切替えによる先端の移動の速度の不連続的な変化をどのようにして抑制することができるかを説明する。図13(a)および図13(b)は、20秒の時点で動作モードが湾曲動作から特定視角動作に切り替えられる場合の駆動量Δθ1およびΔθ2を示す図である。図13(a)および図13(b)の実線および破線から分かるように、駆動量Δθ1およびΔθ2は、湾曲動作が行われる0秒から20秒の期間は実質的に一定である。これは、上述のように、湾曲動作の角度依存性が小さいからである。さらに、図11(a)と同様に、特定視角動作がターン・アラウンド位置で行われる20秒の時点で可変駆動量が増大することは、図13(a)の破線から明らかである。したがって、駆動量Δθ1は、20秒前後の期間に不連続に変動する。これに対して、20秒の前後の一定駆動量の変化は、可変駆動量の変化より小さいことは、図13(a)の実線から明らかである。
【0070】
図14は、角度誤差があるときに図13(a)および図13(b)に示す駆動量が入力される場合の移動量ΔVxを示す図である。図14の実線から明らかであるように、一定駆動量が入力されたときには、移動量ΔVxは、動作モードが切り替えられる20秒の時点でも大きくは変化しない。したがって、本実施形態による制御装置を使用することによって、角度誤差があるときでも、先端の移動の速度が動作モードの切替え時に突然変化することを防止することができる。したがって、操作性は低下しない。これに対して、可変駆動量が入力されるときには、移動量ΔVxが20秒の時点で不連続かつ突然に増大することは、図14の破線から明らかである。したがって、操作入力Δmが一定であっても、動作モードが切り替えられたときに、内視鏡画像の移動の速度が大きく変動する。したがって、操作性が低下する。
【0071】
本明細書に記載する制御装置および内視鏡の1つの特に有利な特徴は、それらの使い易さである。外科手術中には、その手術の手順中に、医師またはその他の臨床者は、患者、複数の器具、殺菌機器、およびその他のデバイスを操作し、しばしば制御しなければならない。したがって、内視鏡デバイスを片手で、または1つの方向に沿った動作で簡単に制御することができるように内視鏡デバイスの制御を簡略化すると、特に有利である。動作モードを選択できることと、1方向(上下または左右)の動作しかないこともあるジョイスティック、タッチ・スクリーン、フット・ペダル、または音声作動制御装置(例えば数値単位を音声入力する)を使用することとにより、覚えるのが容易である可能性がある簡略化した動作を可能にしながら、目標画像の見方をかなり柔軟にすることもできる。なぜなら目標が何であるか、および何がなされる必要があるかに応じて操作者がいくつかの異なる動作モードのうちの1つを選択できるからである。
【0072】
例示的な実施形態を参照して本発明について説明したが、本発明は、開示した例示的な実施形態に限定されないことを理解されたい。以下の特許請求の範囲には、全てのこのような修正形態ならびに等価な構造および機能を包含するように最も広範に解釈されるものとする。
図1
図2
図3
図4(a)-(b)】
図5(a)-(c)】
図6
図7(a)-(d)】
図8
図9(a)-(c)】
図10
図11(a)-(b)】
図12
図13(a)-(b)】
図14