(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
環状に複数配置したロータメタルの各々に対応して設けられた駆動機構により、前記ロータメタルを個々に回転させて、ボビンを保持したスピンドルランナーを隣り合うロータメタル間で受け渡しながら前記環状に沿って移動させるトーションレース機において、
前記駆動機構は、
前記ロータメタルと同軸に保持される従動ギヤと、
回転を開始してから第1の角度回転したときに前記従動ギヤと噛合して前記従動ギヤを回転させ、前記第1の角度とは異なる第2の角度回転したときに前記従動ギヤとの噛合を解除する駆動ギヤと、
円弧状の切欠き部を有し、前記従動ギヤに保持されるクラッチ板と、
前記駆動ギヤが前記第2の角度回転したときに、前記従動ギヤとともに回転する前記クラッチ板の前記切欠き部に入り込み、前記従動ギヤの回転を停止させる当接部材と、
前記駆動ギヤを回転させる駆動源と、
を含むことを特徴とするトーションレース機。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、トーションレース機の概要について説明する。なお、本実施形態を説明する図面においては、便宜上、ロータメタル20を直線状に配置しているが、実際には、ロータメタル20は環状に配置されている。
図1及び
図2に示すように、トーションレース機10は、環状に配置した複数(例えば64個、又はそれ以上)のロータメタル20を例えば180°回転させて、隣り合うロータメタル20間に配置したスピンドルランナー21を隣り合うロータメタル20に受け渡しながら移動させつつ、各スピンドルランナー21に保持したボビンホルダ25のスピンドル32に保持されたボビン35から引き出した、例えばポリエステル糸30を上記環状の中心に配置した筬打部に集めて筬打ちしながら作り出したレース組織を巻取ドラムに巻き取る装置である。なお、
図1においては、スピンドルランナー21のうち、ボビンホルダ25を設置していないスピンドルランナー21を設けているが、実際には、全てのスピンドルランナー21にボビンホルダ25が設置される。環状に配置されるロータメタル20の外側には、トーションレース機10の中心側に配置した内側ガイド板26と、トーションレース機10の外側に配置した外側ガイド板27とが配置される。
【0019】
ボビンホルダ25は、ホルダ本体31、スピンドル32、押さえ部材33などを有し、ボビン35をスピンドル32に軸支した状態で保持する構成である。押さえ部材33は、スピンドル32に軸支されたボビン35の上端部を押さえる。ボビン35は、例えばポリエステル糸30を巻き取った状態で、ボビンホルダ25に保持される。ボビンホルダ25は、ホルダ本体31を介してスピンドルランナー21に取り付けられる。ボビンホルダ25に巻き取られたポリエステル糸30は、ボビンホルダ25が有する複数の挿通孔に順次通した状態で、上述した筬打部まで引き出される。
【0020】
次に、ロータメタル20の駆動機構50について説明する。以下、ロータメタルを180°回転させるときに、駆動機構50を構成する駆動ギヤ51と従動ギヤ52との回転比を1:1とする場合について、第1実施形態として説明する。上述したように、スピンドルランナー21を移動させるときには、ロータメタル20は180°回転する。したがって、駆動ギヤ51と従動ギヤ52との回転比を1:1にするということは、駆動ギヤ51と従動ギヤ52とを180°回転させることを意味している。
【0021】
<第1実施形態>
図3から
図7に示すように、駆動機構50は、駆動ギヤ51、従動ギヤ52、クラッチ板53及びステッピングモータ(請求項に記載の駆動源に相当)54を含む。駆動機構50は、環状に配置される複数のロータメタル20の各々に対応して設けられ、各ロータメタル20を個別に回転させるものである。
【0022】
複数のロータメタル20の各々に対応して設けられる駆動機構50の駆動ギヤ51は、例えば奇数番のロータメタル20は、環状に配置されるロータメタル20の内側(内側ガイド板26側)に、偶数番のロータメタル20は、環状に配置されるロータメタル20の外側(外側ガイド板27側)に、言い換えれば、交互に配置される。なお、各駆動機構50が有する駆動ギヤ51は、内側ガイド板26側、又は外側ガイド板27側のいずれか一方に全て配置することも可能である。
【0023】
駆動ギヤ51は、駆動ギヤ51の下面に固着されるシャフト55を介して、ステッピングモータ54の駆動軸54aに連結される。シャフト55は、上面に位置決め用の円筒部55aを有するフランジ部55bを上端側に有し、駆動ギヤ51に設けた位置決め用の挿通孔51aに円筒部55aを挿入した状態で、ねじ57により固定する。符号51bは、駆動ギヤ51に設けられた段付き孔であり、符号55cは、フランジ部55bに設けたねじ孔である。なお、シャフト55は、支持プレート60に固定される軸受け61に軸支された状態で、ステッピングモータ54の駆動軸54aと継手62を介して連結される。
【0024】
駆動ギヤ51は、第1の歯51cと、第2の歯51dとを有する。駆動ギヤ51は、
図6に示す平面視において、符号L1に示す線を中心とした線対称の形状である。駆動ギヤ51のうち、
図6中、線L1よりも左側に位置する領域の外周部分において、第1の歯51cは、符号L2に示す線を中心として、同一の円ピッチで所定数配置される。第2の歯51dは、同一の円ピッチで所定数配置される第1の歯51cのうち、両端に配置される第1の歯51cと空隙63との間に配置される。第2の歯51dは、第1の歯51cの弦歯厚よりも厚く設定される。なお、
図6中、線L1よりも右側に位置する領域の外周部分においても、右側に位置する領域の外周部分と同様に、第1の歯51c及び第2の歯51dが設けられる。なお、隣り合う第2の歯51dの間は、歯を配置しない空隙63となる。つまり、駆動ギヤ51は、180°間隔を空けて2つの空隙63を有するように、第1の歯51c及び第2の歯51dが配置されている。空隙63は、後述するピンを中心として角度θ
1に設定される。ここで、角度θ
1は、ピッチ円(
図6中二点鎖線で示す円C1)を基準とした場合の角度である。なお、角度θ
1は、駆動ギヤ及び従動ギヤの回転比、これらギヤの大きさ及び歯数に基づいて設定される。
【0025】
駆動ギヤ51が有する第1の歯51c及び第2の歯51dのうち、第2の歯51dは、高周波焼き入れなどの硬化処理を施している。これにより、第2の歯51dの摩耗や破損が防止される。なお、第2の歯51dだけでなく、第1の歯51cに対しても高周波焼き入れなどの硬化処理を施すことも可能である。さらに、駆動ギヤ51全体に高周波焼き入れなどの硬化処理を施すことも可能である。
【0026】
第1実施形態では、同一の円ピッチで配置される複数の第1の歯51cと、これら第1の歯51cのうち、両端部に位置する第1の歯51cと空隙63との間に第2の歯51dとを有する駆動ギヤ51を一例として挙げているが、第1の歯51cを同一の円ピッチで複数配置し、また、180°の間隔を空けて2箇所の空隙を有する駆動ギヤを用いることも可能である。
【0027】
駆動ギヤ51は、2つの空隙63の各々が配置される角度θ
1の範囲内に、2つの当接片(請求項に記載の当接部材に相当)64を上面に有する。これら当接片64の外側に位置する側面64aは、駆動ギヤ51の平面視において、円弧形状である。当接片64は、駆動ギヤ51と噛合する従動ギヤ52に保持されるクラッチ板53の切欠き部53aに入り込み、従動ギヤ52及びクラッチ板53の回転を停止させる。以下、当接片64の側面64aを接触面64aと称する。
【0028】
当接片64は、上面にピン65を立設する。ピン65は、駆動ギヤ51が180°回転したときに、後述するセンサ73により検出される。なお、
図3及び
図4においては、ピン65を円柱状としているが、矩形状のピンであってもよい。
【0029】
従動ギヤ52は、第1の歯52aと、第2の歯52bとを有する。従動ギヤ52は、
図7に示す平面視において、符号L3に示す線を中心とした線対称の形状である。従動ギヤ52のうち、
図7中、線L3よりも左側に位置する領域の外周部分において、第1の歯52aは、符号L4に示す線を中心として、同一の円ピッチで所定数配置される。
【0030】
ここで、従動ギヤ52が有する第1の歯52aの歯数や駆動ギヤ51が有する第1の歯51cの歯数は、駆動ギヤ51と従動ギヤ52との回転比が1:1、つまり、駆動ギヤ51が180°回転したときに、従動ギヤ52も180°回転するように設定される。なお、第1実施形態に示す駆動ギヤ51の第1の歯51cの歯数は9、従動ギヤ52の第1の歯52aの歯数は10に設定される。
【0031】
第2の歯52bは、同一の円ピッチで所定数配置される第1の歯52aのうち、両端部に位置する第1の歯52aから所定の角度θ
2を空けて配置される。つまり、従動ギヤ52は、180°の角度間隔を空けて2個の第2の歯52bを有する。第1の歯52aと第2の歯52bとの間に設けられる空隙66は、駆動ギヤ51の第2の歯51dが入り込める角度に設定される。
【0032】
第2の歯52bは、第1の歯52aの弦歯厚よりも厚く設定される。第2の歯52bは、高周波焼き入れなどの硬化処理を施している。なお、第2の歯52bだけでなく、第1の歯52aに対しても高周波焼き入れなどの硬化処理を施すことも可能である。さらに、従動ギヤ52全体に高周波焼き入れなどの硬化処理を施すことも可能である。
【0033】
第1実施形態では、同一の円ピッチで配置される複数の第1の歯52aと、複数の第1の歯52aのうち、両端に位置する第1の歯52aから所定の角度を空けて配置される第2の歯52bとを有し、第2の歯52bを第1の歯52aの弦歯厚よりも厚く設定した従動ギヤ52としているが、第2の歯52bが設けられる位置に、第1の歯52aを複数配置した従動ギヤを用いることも可能である。
【0034】
従動ギヤ52は、二面取りされた軸部52cを上面に有する。軸部52cは、クラッチ板53を保持する。符号52dは、保持したクラッチ板53の軸方向への移動を規制するためのCリング67を挿入する溝部である。従動ギヤ52の軸部52cは、上面に溝部52dを有する。溝部52dは、ロータメタル20の軸部20aの下端部に設けた挿入片20bを受容する。これにより、従動ギヤ52が回転すると、ロータメタル20も同時に回転する。符号52eは、支持プレート60に保持されるクラッチギヤシャフト(回転軸)69が挿通される挿通孔である。
【0035】
クラッチ板53は、長手方向の両端部に、円弧形状の切欠き部53aを有する。なお、円弧形状の切欠き部53aに対面する円弧状の側面53bの半径は、駆動ギヤ51の当接片64の接触面64aの半径と同一の半径に設定される。クラッチ板53は、両端部に設けた切欠き部53aのいずれか一方に、駆動ギヤ51が有する当接片64を受容したときに回転を停止する。
【0036】
上述したロータメタル20は、従動ギヤ52の軸部52cの上面に設けた溝部52dに、ロータメタル20の軸部20aに設けた挿入片20bを挿入した後、従動ギヤ52の挿通孔52e、ロータメタル20の挿通孔20cに、支持プレート60に保持されるクラッチギヤシャフト69を挿通させ、最後に、ねじ70をクラッチギヤシャフト69に螺合させることでクラッチギヤシャフト69に軸支する。
【0037】
図8に示すように、駆動機構50は、制御装置71により駆動制御される。制御装置71は、駆動開始信号を受けて、対象となるロータメタル20に対応して設けたステッピングモータ54を同時に駆動する。なお、ステッピングモータ54の駆動は、ドライバ72を介して実施される。また、制御装置71は、駆動ギヤ51が有する2つの当接片64のいずれか一方に設けたピン65を検知したことを示す検知信号がセンサ73から出力されることを受けて、駆動するステッピングモータ54の駆動を停止させる。
【0038】
センサ73は、駆動ギヤ51の当接片64のいずれか一方に設けたピン65を検出する。センサ73は、例えば近接センサ等が用いられる。このセンサ73は、支持プレート60にブラケット74を介して固定される(
図2参照)。
【0039】
なお、制御装置71は、駆動ギヤ51が有する2つの当接片64のいずれか一方に設けたピン65を検知したことを示す検知信号がセンサ73から出力されることを受けて、ステッピングモータ54の駆動を停止させる構成としているが、例えば駆動ギヤが180°回転するときのステップ数分、ステッピングモータ54を駆動させ、ステッピングモータ54の駆動停止時にセンサ73がピン65を検出しているか否かにより、実際に駆動ギヤ51が180°回転しているか否かを判定するようにしてもよい。なお、ステッピングモータ54により駆動ギヤが180°回転するときのステップ数は、1ステップ当たりの回転角度などから算出できる。
【0040】
次に、ロータメタル20の回転時における、駆動ギヤ51及び従動ギヤ52の動作について
図9を用いて説明する。なお、
図9においては、駆動ギヤ51及び従動ギヤ52を実線、ロータメタル20を二点鎖線、クラッチ板53を点線で示す。
【0041】
図9(a)に示すように、ロータメタル20の停止時には、駆動ギヤ51の空隙63に従動ギヤ52の第2の歯52bが入り込んだ状態で保持される。このとき、従動ギヤ52の第1の歯52a及び第2の歯52bのいずれもが、駆動ギヤ51の第1の歯51c及び第2の歯51dとは噛合していない。また、ロータメタル20の停止時には、ピン65がセンサ73により検出されている。ステッピングモータ54が駆動すると、駆動ギヤ51が
図9中A方向に回転する。このとき、駆動ギヤ51に設けた当接片64は、クラッチ板53の切欠き部53aの接触面53bに沿って移動する。
【0042】
図9(b)に示すように、駆動ギヤ51が
図9中A方向に例えば20°回転すると、駆動ギヤ51の第2の歯51dが従動ギヤ52の第2の歯52bに接触し、従動ギヤ52の第2の歯52bを押圧する。したがって、従動ギヤが
図9中B方向に回転し始める。駆動ギヤ51の回転に伴った従動ギヤ52の回転により、クラッチ板53は、従動ギヤ52と同様に、B方向に回転する。その結果、駆動ギヤ51の当接片64の接触面64aとクラッチ板53の接触面53bとの接触が解除される。
【0043】
なお、駆動ギヤ51が
図9中A方向に例えば20°回転したときに、駆動ギヤ51の当接片64の接触面64aとクラッチ板53の接触面53bとの接触が解除されるようにしているが、駆動ギヤ51の当接片64の接触面64aとクラッチ板53の接触面53bとの接触が解除されるときの駆動ギヤ51の回転角度は、駆動ギヤ51や従動ギヤ52における各歯の歯厚や円ピッチ、空隙63が設けられる角度等により決定される。
【0044】
図9(c)に示すように、駆動ギヤ51の第1の歯51cの各々と、従動ギヤ52の第1の歯52aの各々が噛み合いながら、駆動ギヤ51がA方向に、従動ギヤ52がB方向に各々回転する。
図9(d)に示すように、従動ギヤ52が180°回転すると、従動ギヤ52に保持されたクラッチ板53の切欠き部53aに、駆動ギヤ51の当接片64が入り込む。したがって、クラッチ板53の接触面53bと駆動ギヤ51の当接片64の接触面64aとが当接され、クラッチ板53及び従動ギヤ52の回転が停止する。
【0045】
駆動ギヤ51は、引き続きA方向に回転している。このとき、駆動ギヤ51に設けた当接片64は、クラッチ板53の切欠き部53aに沿って移動する。駆動ギヤ51が180°回転すると、センサ73は、駆動ギヤ51の当接片64に設けたピン65を検出する。その結果、ステッピングモータ54の駆動が停止され、駆動ギヤ51の回転も停止される。なお、駆動ギヤ51をA方向とは逆方向に回転させる場合も、同様である。
【0046】
このように、駆動ギヤ51が例えば所定の角度回転したときに、駆動ギヤ51と従動ギヤ52とが噛合し、駆動ギヤ51の回転が従動ギヤ52の回転に伝達される。このとき、駆動ギヤ51の回転速度は、一定速度に保持されている。したがって、駆動ギヤ51の回転に伴って回転する従動ギヤ52は一定速度で回転する。
【0047】
また、駆動ギヤ51が回転を開始してから所定の角度、又は駆動ギヤ51が停止する前の所定の角度の間は、従動ギヤ52及びロータメタル20は停止している。その結果、回転するロータメタル20の回転方向を反転させてスピンドルランナー21を元の位置に戻す場合や、隣のロータメタル20を回転させることによりスピンドルランナー21を一方向に移動させる場合に、スピンドルランナー21を停止させる時間が確保できる。したがって、回転するロータメタル20がスピンドルランナー21に衝突するときの衝撃を小さくすることができる。その結果、ロータメタル20やスピンドルランナー21の消耗を低減させることができ、同時に、ロータメタル20がスピンドルランナー21に衝突するときの音(騒音)を小さくすることが可能になる。さらに、ロータメタルを回転させる駆動源として、大容量のモータを用いなくとも、ロータメタルを高速で回転させることが可能なる。その結果、スピンドルランナー21を高速で移動させることが可能となり、レース組織の生産性を向上させることが可能となる。
【0048】
第1実施形態では、駆動機構50を構成する駆動ギヤ51と従動ギヤ52との回転比を1:1とした場合を説明しているが、駆動ギヤと従動ギヤとの回転比は1:1に限定する必要はなく、例えば、駆動ギヤと従動ギヤとの回転比を2:1としてもよい。
【0049】
駆動ギヤと従動ギヤとの回転比を2:1とした場合の実施形態を、第2実施形態と称して説明する。なお、第2実施形態においては、第1実施形態と同一の構成については、同一の符号を付し、また、説明を省略する。上述したように、スピンドルランナー21を移動させるときには、ロータメタル20は180°回転する。したがって、駆動ギヤ51と従動ギヤ52との回転比を2:1にするということは、ロータメタル20を180°回転させる場合に、駆動ギヤ51を360°回転させ、また、従動ギヤ52を180°回転させることを意味している。
【0050】
<第2実施形態>
図10から
図13に示すように、駆動機構50’は、駆動ギヤ81、従動ギヤ82、クラッチ板83及びステッピングモータ54を含む。駆動機構50’は、環状に配置される複数のロータメタル20の各々に対応して設けられ、各ロータメタル20を個別に回転させるものである。
【0051】
駆動ギヤ81は、駆動ギヤ81の下面に固着されるシャフト85を介して、ステッピングモータ54の駆動軸54aに連結される。シャフト85は、上面に位置決め用の円筒部85aを有するフランジ部85bを上端側に有し、駆動ギヤ81に設けた位置決め用の挿通孔81aに円筒部85aを挿入した状態で、ねじ86により固定する。符号81bは、駆動ギヤ81に設けられた段付き孔であり、符号85cは、フランジ部85bに設けたねじ孔である。なお、シャフト85は、支持プレート60に固定される軸受け61に軸支された状態で、ステッピングモータ54の駆動軸54aと継手62を介して連結される。
【0052】
駆動ギヤ81は、角度θ
3の範囲で空隙86を有するように、複数の歯81cが同一円ピッチで配置される。なお、角度θ
3は、ピッチ円(
図7中二点鎖線で示す円C3)を基準とした場合の角度である。なお、角度θ
3は、駆動ギヤ81や従動ギヤの回転比、これらギヤの大きさ及び歯数に基づいて設定される。
【0053】
なお、駆動ギヤ81に設けられる複数の歯81cのうち、両端部に位置する歯81cは、高周波焼き入れなどの硬化処理を施している。これにより、両端部に位置する歯81cの摩耗や破損が防止される。なお、複数の歯81cのうち、両端部に位置する歯81cだけでなく、全ての歯81cに対しても高周波焼き入れなどの硬化処理を施すことも可能である。さらに、駆動ギヤ81全体に高周波焼き入れなどの硬化処理を施すことも可能である。
【0054】
駆動ギヤ81は、空隙86の各々が配置される角度θ
3の範囲内に、当接片(請求項に記載の当接部材に相当)87を上面に有する。当接片87の外側に位置する側面87aは、駆動ギヤ81の平面視において、円弧形状である。当接片87は、駆動ギヤ81と螺合する従動ギヤ82に保持されるクラッチ板83の切欠き部83aに入り込み、従動ギヤ82及びクラッチ板83の回転を停止させる。以下、当接片87の側面87aを接触面87aと称する。
【0055】
駆動ギヤ81は、当接片87に対峙する位置にピン88を立設する。ピン88は、駆動ギヤ81が360°回転したときに、後述するセンサ73により検出される。なお、
図10及び
図11においては、ピン88を円柱状としているが、矩形状のピンであってもよい。なお、第2実施形態では、駆動ギヤ81を360°回転させることを前提にしている。したがって、ピン88の高さは、当接片87の高さよりも高く設定される。また、センサ73は、当接片87よりも高い位置でピン88を検出するように設置される。
【0056】
従動ギヤ82は、外周面の全周に亘って、同一の円ピッチで複数の歯82aを有する。ここで、駆動ギヤ81が有する歯81cの歯数及び従動ギヤ82が有する歯82aの歯数は、駆動ギヤ81と従動ギヤ82との回転比が2:1、つまり、駆動ギヤ81が360°回転したときに、従動ギヤ82が180°回転するように設定される。なお、第2実施形態に示す駆動ギヤ81の歯81cの歯数は9、従動ギヤ82の歯82aの歯数は20に設定される。
【0057】
従動ギヤ82は、二面取りされた軸部82bを上面に有する。軸部82bは、クラッチ板83を保持する。符号82cは、保持したクラッチ板83の軸方向への移動を規制するためのCリング67を挿入する溝部である。従動ギヤ82の軸部82bは、上面に溝部82dを有する。溝部82dは、ロータメタル20の軸部20aの下端部に設けた挿入片20bを受容する。これにより、従動ギヤ82が回転すると、ロータメタル20も同時に回転する。符号82eは、支持プレート60に保持されるクラッチギヤシャフト69が挿通される挿通孔である。
【0058】
クラッチ板83は、長手方向の両端部に、円弧形状の切欠き部83aを有する。なお、円弧形状の切欠き部83aに対面する円弧状の側面83bの半径は、駆動ギヤ81の当接片87の接触面87aの半径と同一の半径に設定される。クラッチ板83は、両端部に設けた切欠き部83aのいずれか一方に、駆動ギヤ81が有する当接片87を受容したときに、回転を停止する。
【0059】
上述したロータメタル20は、従動ギヤ82の軸部82bの上面に設けた溝部82cに、ロータメタル20の軸部20aに設けた挿入片20bを挿入した後、従動ギヤ82の挿通孔82d、ロータメタル20の挿通孔20cに、支持プレート60に保持されるクラッチギヤシャフト69を挿通させ、最後に、ねじ70をクラッチギヤシャフト69に螺合させることでクラッチギヤシャフト69に軸支する。
【0060】
次に、ロータメタル20の回転時における、駆動ギヤ81及び従動ギヤ82の動作について
図14を用いて説明する。なお、
図14においては、駆動ギヤ81及び従動ギヤ82を実線、ロータメタル20を二点鎖線、クラッチ板83を点線で示す。
【0061】
図14(a)に示すように、ロータメタル20の停止時には、駆動ギヤ81の空隙86に従動ギヤ82の歯82aが入り込んだ状態で保持される。このとき、従動ギヤ82の歯82aのいずれもが、駆動ギヤ81の歯81cとは噛合していない。また、ロータメタル20の停止時には、ピン88がセンサ73により検出されている。ステッピングモータ54が駆動すると、駆動ギヤ81が
図14中D方向に回転する。このとき、駆動ギヤ81に設けた当接片87は、クラッチ板83の切欠き部83aの接触面83bに沿って移動する。
【0062】
図14(b)に示すように、駆動ギヤ81が
図14中D方向に例えば30°回転すると、駆動ギヤ81の歯81cが従動ギヤ82の歯82aに接触し、従動ギヤ82の歯82aを押圧する。したがって、従動ギヤ82が
図14中E方向に回転し始める。駆動ギヤ81の回転に伴った従動ギヤ82の回転により、クラッチ板83は、従動ギヤ82と同様に、
図14中E方向に回転する。その結果、駆動ギヤ81の当接片87の接触面87aとクラッチ板83の接触面83bとの接触が解除される。
【0063】
なお、駆動ギヤ81が
図14中D方向に例えば30°回転したときに、駆動ギヤ81の当接片87の接触面87aとクラッチ板83の接触面83bとの接触が解除されるようにしているが、駆動ギヤ81の当接片87の接触面87aとクラッチ板83の接触面83bとの接触が解除されるときの駆動ギヤ81の回転角度は、駆動ギヤ81や従動ギヤ82における各歯の歯厚や円ピッチ、空隙86が設けられる角度等により決定される。
【0064】
図14(c)に示すように、駆動ギヤ81の歯81cの各々と、従動ギヤ82の歯82aの各々が噛み合いながら、駆動ギヤ81が
図14中D方向に、従動ギヤ82が
図14中E方向に各々回転する。
図14(d)に示すように、従動ギヤ82が180°回転すると、従動ギヤ82に保持されたクラッチ板83の切欠き部83aに、駆動ギヤ81の当接片87が入り込む。したがって、クラッチ板83の接触面83bと駆動ギヤ81の当接片87の接触面87aとが当接され、クラッチ板83及び従動ギヤ82の回転が停止する。このとき、駆動ギヤ81の回転角度は、330°である。
【0065】
駆動ギヤ81は、引き続き
図14中D方向に回転している。このとき、駆動ギヤ81に設けた当接片87は、クラッチ板83の切欠き部83aに沿って移動する。駆動ギヤ81が360°回転すると、センサ73は、駆動ギヤ81に設けたピン88を検出する。その結果、ステッピングモータ54の駆動が停止され、駆動ギヤ81の回転も停止される。
【0066】
なお、駆動ギヤ81を
図14中D方向とは逆方向に回転させる場合も、同様である。
【0067】
第2実施形態の場合も、第1実施形態と同様に、駆動ギヤ81が例えば所定の角度回転したときに、駆動ギヤ81と従動ギヤ82とが噛合し、駆動ギヤ81の回転が従動ギヤ82の回転に伝達される。このとき、駆動ギヤ81の回転速度は、一定速度に保持されている。したがって、駆動ギヤ81の回転に伴って回転する従動ギヤ82は一定速度で回転する。
【0068】
また、駆動ギヤ81が回転を開始してから所定の角度、又は駆動ギヤ81が停止する前の所定の角度の間は、従動ギヤ82及びロータメタル20は停止している。その結果、回転するロータメタル20の回転方向を反転させてスピンドルランナー21を元の位置に戻す場合や、隣のロータメタル20を回転させることによりスピンドルランナー21を一方向に移動させる場合に、スピンドルランナー21を停止させる時間が確保できる。したがって、回転するロータメタル20がスピンドルランナー21に衝突するときの衝撃を小さくすることができる。その結果、ロータメタル20やスピンドルランナー21の消耗を低減させることができ、同時に、ロータメタル20がスピンドルランナー21に衝突するときの音(騒音)を小さくすることが可能になる。さらに、ロータメタルを回転させる駆動源として、大容量のモータを用いなくとも、ロータメタルを高速で回転させることが可能なる。その結果、スピンドルランナー21を高速で移動させることが可能となり、レース組織の生産性を向上させることが可能となる。
【0069】
上述した第1実施形態及び第2実施形態においては、モータとしてステッピングモータを用いているが、ステッピングモータに限定される必要はなく、サーボモータなど、他のモータを使用することも可能である。
【0070】
第1実施形態では、駆動ギヤ51と従動ギヤ52との回転比を1:1とし、ロータメタル20が180°回転する場合、駆動ギヤ51が20°回転したときに駆動ギヤ51と従動ギヤ52とが噛合し、駆動ギヤ51が160°回転したときに駆動ギヤ51と従動ギヤ52との噛合が解除されるようしている。また、第2実施形態では、駆動ギヤ81と従動ギヤ82との回転比を2:1とし、ロータメタル20が180°回転する場合、駆動ギヤ81が30°回転したときに駆動ギヤ81と従動ギヤ82とが噛合し、駆動ギヤ81が330°回転したときに駆動ギヤ81と従動ギヤ82との噛合が解除されるようしている。
【0071】
しかしながら、駆動ギヤと従動ギヤとが噛合するときの駆動ギヤの回転角や駆動ギヤと従動ギヤとの噛合が解除されるときの駆動ギヤの回転角は、上記に限定されるものではなく、駆動ギヤ及び従動ギヤに設けられる歯の歯数やモジュールに応じて適宜設定されるものである。