特許第6644853号(P6644853)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6644853太陽光発電設備の絶縁監視装置及び太陽光発電設備の絶縁監視方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6644853
(24)【登録日】2020年1月10日
(45)【発行日】2020年2月12日
(54)【発明の名称】太陽光発電設備の絶縁監視装置及び太陽光発電設備の絶縁監視方法
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/50 20200101AFI20200130BHJP
   H02S 50/00 20140101ALI20200130BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20200130BHJP
   H02H 3/16 20060101ALI20200130BHJP
   H02H 3/00 20060101ALI20200130BHJP
   H02J 3/38 20060101ALI20200130BHJP
【FI】
   G01R31/02
   H02S50/00
   H02M7/48 R
   H02M7/48 M
   H02H3/16
   H02H3/00 N
   H02J3/38 130
【請求項の数】2
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2018-190955(P2018-190955)
(22)【出願日】2018年10月9日
【審査請求日】2018年10月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】592175863
【氏名又は名称】一般財団法人中部電気保安協会
(73)【特許権者】
【識別番号】591115291
【氏名又は名称】マルチ計測器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094156
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 民安
(72)【発明者】
【氏名】梅村 正人
【審査官】 田口 孝明
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−145754(JP,A)
【文献】 特開2017−020996(JP,A)
【文献】 特開2012−119382(JP,A)
【文献】 特開2009−150779(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC G01R 31/02−31/06、
31/327−31/34、
H01L 31/04−31/078
H02S 10/00−10/40、
30/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の太陽電池モジュールが接続されてなる太陽光電池パネルから出力される電圧が入力され、P相とN相との間の発電電圧、P相端子の測定器抵抗を介した対地電圧及びN相端子の測定器抵抗を介した対地電圧を切替えて測定する測定手段と、
前記測定手段を制御するとともに、前記測定手段による測定結果に関する演算を行う制御手段と
を備え、
パワーコンディショナを介した連系運転中において、大地から前記P相端子を見た電圧の電圧値を電圧値Vrpとしたとき、前記電圧値Vrpの符号がマイナスならば前記パワーコンディショナの交流側の絶縁抵抗の低下と判別し、前記電圧値Vrpの符号がプラスならば前記パワーコンディショナの直流側のN相側の絶縁抵抗の低下と判別する
ことを特徴とする太陽光発電設備の絶縁監視装置。
【請求項2】
複数の太陽電池モジュールが接続されてなりP側端子及びN側端子を有する太陽光電池パネルと、
前記P側端子に接続されるP相端子と前記N側端子に接続されるN相端子とを有し、前記太陽光電池パネルから出力される電圧が前記P側端子から前記P相端子に入力されるとともに前記N側端子から前記N相端子に入力されるパワーコンディショナと、
を用いる太陽光発電設備の絶縁監視方法であって、
パワーコンディショナを介した連系運転中において、大地から前記P相端子を見た電圧の電圧値Vrpを測定し、前記電圧値Vrpの符号がマイナスならば前記パワーコンディショナの交流側の絶縁抵抗の低下と判別し、前記電圧値Vrpの符号がプラスならば前記パワーコンディショナの直流側のN相側の絶縁抵抗の低下と判別する
ことを特徴とする太陽光発電設備の絶縁監視方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発電状態のままでパワーコンディショナ前後の絶縁抵抗測定(ないし診断:以下「測定」として表記する。)ができるようにした太陽光発電設備の絶縁監視装置及び太陽光発電設備の絶縁監視方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、太陽光電池パネルと、この太陽光電池パネルから出力される直流電圧が入力される中継端子箱及びパワーコンディショナとを備えた太陽光発電設備が提案されている。
【0003】
このような太陽光発電設備においては、太陽光電池パネルからパワーコンディショナに至る直流回路において漏電が発生すると、正常な発電ができないほか、漏電火災、感電事故に至ることがあるため、直流回路の絶縁抵抗測定を行う必要がある。
【0004】
本出願人は、先に、特許文献1に記載されているように、発電状態のままで絶縁抵抗測定ができるようにした太陽光発電設備の絶縁抵抗測定装置及び太陽光発電設備の絶縁抵抗測定方法を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5603444号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述した太陽光発電設備の絶縁抵抗測定装置及び太陽光発電設備の絶縁抵抗測定方法においては、サージアブソーバを外して覆いを施すことなく、短絡させることもなく、発電状態のままでの直流回路の絶縁抵抗測定を可能とした。したがって、危険を伴わずに絶縁抵抗測定が簡便に行え、今後の太陽光発電設備の普及に貢献するものである。
【0007】
この太陽光発電設備の絶縁監視装置においては、図1に示すように、商用側(図1中右側)と絶縁変圧器8を介した連系運転中に絶縁診断が可能である。パワーコンディショナ(以下、「PCS」という。)7が非絶縁式の場合には、外付けによる絶縁変圧器(混触防止板付)8を介して連系運転する商用周波絶縁方式を用いる。
【0008】
商用周波絶縁方式における監視装置による絶縁診断では、太陽光パネル1から絶縁変圧器8の1次側までが絶縁監視範囲になり、PCS7の交流側(図1中右側)も含まれる。
【0009】
このような連系運転中の絶縁診断では、絶縁低下が起こった場合に、PCS7の直流側(図1中左側)における絶縁低下なのか、PCS7の交流側における絶縁低下なのかを判別することが望まれる。
【0010】
そこで、本発明は、上述の実情に鑑みて提案されるものであって、絶縁抵抗計のような測定前の処置を要せずに、発電状態のままで、抵抗間の電圧を測定することによって、パワーコンディショナ前後の絶縁抵抗測定ができるようにした太陽光発電設備の絶縁監視装置及び太陽光発電設備の絶縁監視方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記課題を解決するために提案されたものであって、第1の発明(請求項1記載の発明)に係る太陽光発電設備の絶縁監視装置は、以下の構成を有するものである。
【0012】
〔構成1〕
複数の太陽電池モジュールが接続されてなる太陽光電池パネルから出力される電圧が入力され、P相とN相との間の発電電圧、P相端子の測定器抵抗を介した対地電圧及びN相端子の測定器抵抗を介した対地電圧を切替えて測定する測定手段と、前記測定手段を制御するとともに、前記測定手段による測定結果に関する演算を行う制御手段とを備え、パワーコンディショナを介した連系運転中において、大地から前記P相端子を見た電圧の電圧値を電圧値Vrpとしたとき、前記電圧値Vrpの符号がマイナスならば前記パワーコンディショナの交流側の絶縁抵抗の低下と判別し、前記電圧値Vrpの符号がプラスならば前記パワーコンディショナの直流側のN相側の絶縁抵抗の低下と判別することを特徴とするものである。
【0013】
第2の発明(請求項2記載の発明)に係る太陽光発電設備の絶縁監視方法は、以下の構成を有するものである。
〔構成2〕
複数の太陽電池モジュールが接続されてなりP側端子及びN側端子を有する太陽光電池パネルと、前記P側端子に接続されるP相端子と前記N側端子に接続されるN相端子とを有し、前記太陽光電池パネルから出力される電圧が前記P側端子から前記P相端子に入力されるとともに前記N側端子から前記N相端子に入力されるパワーコンディショナと、を用いる太陽光発電設備の絶縁監視方法であって、パワーコンディショナを介した連系運転中において、大地から前記P相端子を見た電圧の電圧値Vrpを測定し、前記電圧値Vrpの符号がマイナスならば前記パワーコンディショナの交流側の絶縁抵抗の低下と判別し、前記電圧値Vrpの符号がプラスならば前記パワーコンディショナの直流側のN相側の絶縁抵抗の低下と判別することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
上記第1の発明(請求項1記載の発明)に係る太陽光発電設備の絶縁監視装置においては、上記構成1を有することにより、パワーコンディショナを介した連系運転中において、大地からP相端子を見た電圧の電圧値電圧値Vrpの符号がマイナスならば前記パワーコンディショナの交流側の絶縁抵抗の低下と判別し、前記電圧値Vrpの符号がプラスならば前記パワーコンディショナの直流側の絶縁抵抗の低下と判別することができる。
【0015】
上記第2の発明(請求項2記載の発明)に係る太陽光発電設備の絶縁監視方法は、上記構成2を有することにより、パワーコンディショナを介した連系運転中において、大地から前記P相端子を見た電圧の電圧値Vrpの符号がマイナスならば前記パワーコンディショナの交流側の絶縁抵抗の低下と判別し、前記電圧値Vrpの符号がプラスならば前記パワーコンディショナの直流側の絶縁抵抗の低下と判別することができる。
【0016】
すなわち、本発明は、絶縁抵抗計のような測定前の処置を要せずに、発電状態のままで、抵抗間の電圧を測定することによって、パワーコンディショナ前後の絶縁抵抗測定ができるようにした太陽光発電設備の絶縁監視装置及び太陽光発電設備の絶縁監視方法を提供することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明に係る太陽光発電設備の絶縁監視装置及び太陽光発電設備の構成を示すブロック図である。
図2】本発明に係る太陽光発電設備の絶縁監視装置及び太陽光発電設備の構成を示す回路図(P相測定)である。
図3】本発明に係る太陽光発電設備の絶縁監視装置及び太陽光発電設備の構成を示す回路図(N相測定)である。
図4】本発明に係る太陽光発電設備の絶縁監視装置及び太陽光発電設備の構成を示す回路図(交流側絶縁低下なし)である。
図5】本発明に係る太陽光発電設備の絶縁監視方法による絶縁抵抗測定の手順(計測モードによる場合)を示すフローチャートである。
図6】本発明に係る太陽光発電設備の絶縁監視方法による絶縁抵抗測定の手順を示すフローチャート(図5の続き)である。
図7】本発明に係る太陽光発電設備の絶縁監視方法による絶縁抵抗測定の手順(ロガーモードにより絶縁抵抗測定をする場合)を示すフローチャートである。
図8】太陽光電池パネルの構成例(9直列×3並列)を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る太陽光発電設備の絶縁監視装置及び太陽光発電設備の絶縁監視方法の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0019】
図1は、本発明に係る太陽光発電設備の絶縁監視装置及び太陽光発電設備の構成を示すブロック図である。
【0020】
本発明に係る太陽光発電設備の絶縁監視装置は、本発明に係る太陽光発電設備の絶縁監視方法を実行するものである。本発明に係る太陽光発電設備の絶縁監視装置が接続される太陽光発電設備は、図1に示すように、複数の太陽電池モジュールが接続されてなる太陽光電池パネル1と、太陽光電池パネル1から出力される電圧が入力される中継端子2とを備えている。
【0021】
太陽光電池パネル1のP側(+側)端子1pは、中継端子2を経て、PCS7のP相端子に接続され、太陽光電池パネル1のN側(−側)端子1nは、中継端子2を経て、PCS7のN相端子に接続されている。なお、PCS7には、MCCB(Molded Case Circuit Breaker:配線用遮断器)が内蔵されていてもよい。
【0022】
そして、本発明に係る太陽光発電設備の絶縁監視装置においては、電源(太陽光電池パネル1)側のP相とN相との間の電圧(太陽光電池パネル1の発電電圧)(V)と、電源(太陽光電池パネル1)側のP相端子4pの対地電圧(Vrp)と、電源(太陽光電池パネル1)側のN相端子4nの対地電圧(Vrn)とを測定する測定手段となる測定部5を備えている。
【0023】
図2は、本発明に係る太陽光発電設備の絶縁監視装置及び太陽光発電設備の構成を示す回路図(P相測定)である。
【0024】
図2は、測定部5を測定器抵抗の一端側をP相端子4pに接続させた状態を示すものであり、測定器抵抗Rの他端側は、接地されている。また、測定部5は、P相、N相の対地間電圧(P−E間電圧値Vrp、N−E間電圧値Vrn)及びP相−N相間の電圧(V)を測定する電圧測定部を有している。電圧測定部は、P相端子4p及びN相端子4nに接続された分圧回路と、分圧回路の出力を増幅するAMPとを有し、このAMPの出力はスイッチ回路SWに入力される。一方、測定器抵抗の両端間の電圧が別のAMPによって増幅されてスイッチ回路SWに入力される。スイッチ回路SWの出力はA/Dコンバータにおいてデジタル信号化されて信号処理回路CPUに入力される。信号処理回路CPUには、表示装置LCDが接続されている。
【0025】
測定部5における測定結果(太陽光電池パネル1の発電電圧値(V)及び測定器抵抗の両端間の電圧値(Vrp、Vrn))は、信号処理回路CPUにより、表示装置LCDにおいて表示される。
【0026】
なお、MCCBがPCS7内に内蔵されている場合には、測定部5は、パワーコンディショナ内のMCCBを開放することなく電源側のP相とN相との間の電圧と、P相端子の測定器抵抗Rを介した対地電圧とN相端子の測定器抵抗Rを介した対地電圧とを測定する。
【0027】
〔PCS7の交流側の絶縁診断〕
表1に示すように、例えば計測モードによる測定では、PCS7の直流側の絶縁低下では、測定器抵抗のP−E間電圧値Vrpはプラス符号を示すが、連系運転時において、PCS7から絶縁変圧器8までの交流側の各相(U、V、W)にて絶縁低下を生じた場合、P−E間電圧値Vrpはマイナス符号を示す。
【表1】
【0028】
したがって、Vrpの符号の見分けから、絶縁低下した区間として、PCS7の直流側か交流側かを判別することができる。
【0029】
図2に示すように、PCS7の非絶縁式は、出力電圧が低下してもインバータ動作を可能とするため、太陽電池パネルからの低直流出力電圧を昇圧するチョッパ回路を設けている。測定器抵抗のP−E間電圧であるVrpの測定時には、交流側各相の何れにて絶縁低下が生じても、昇圧チョッパによる昇圧電圧を起源としたループ電流が、測定器抵抗の接地からP相に向けて通電する。したがって、Vrpはマイナス符号を示す。
【0030】
図4は、本発明に係る太陽光発電設備の絶縁監視装置及び太陽光発電設備の構成を示す回路図(交流側絶縁低下なし)である。
【0031】
図4に示すように、PCS7の直流側の絶縁低下では、測定器抵抗の切換えスイッチをP−E側とした場合、絶縁低下に依存して測定器抵抗に通電する漏洩電流は、P相から接地に向かって通電する。したがって、測定器抵抗間電圧であるVrpはプラス符号を示す。
【0032】
以上のように、Vrpの符号を見分けることによって、絶縁低下がPCS7の直流側か交流側かを見分けることができる。
【0033】
PCS7の交流側にて絶縁低下が生じた場合には、以下のようにして絶縁抵抗値を算出することができる。
【0034】
表1に示すように、PCS7の連系運転にて、交流側各相のうち何れか1相のみ絶縁低下を生じても監視装置の測定器抵抗間のP−E間、N−E間には漏洩電流に依存した電圧として、Vrp及びVrnが検出される。測定器抵抗の切換えスイッチをP−E間とした場合、Vrpの検出は、図2に示すように、昇圧チョッパによる昇圧電圧である160V(V2)を起源として生ずる。そして、以下に示す表2は、測定中における各直流電路に生ずる直流電圧を示すものであり、特に、P−N間は発電電圧が(例えば)180Vとなる。また、以下に示す表3は、測定中における交流電路に生ずる直流電圧を示すものであり、測定器抵抗をP相側とした場合、交流側の各相(U、V、W)と接地間電圧は(例えば)160Vとなり、N相側とした場合には、昇圧チョッパによる昇圧電圧と発電電圧との加算値である340Vとなる。
【表2】
【表3】
【0035】
図3は、本発明に係る太陽光発電設備の絶縁監視装置及び太陽光発電設備の構成を示す回路図(N相測定)である。
【0036】
測定器抵抗の切換えスイッチをN−E側とした場合、PCS7の交流側の絶縁低下における測定器抵抗に通電する漏洩電流は、発電電圧(V1)と昇圧チョッパによる昇圧電圧(V2)を加算した電圧(V1+V2)を起源として生ずる。
以上の関係は、下式により示すことができる。なお、以下に示す式(1)は、図2に示す回路図による測定値であり、式(2)は、図3に示す回路図による測定値である。
Vrp=R・V2/(Rac+R)・・・・・・・・・・・・・・・(1)
Vrn=R・(V1+V2)/(Rac+R)・・・・・・・・・・(2)
(∵Vrp、Vrn:監視装置の計測値、発電電圧V1:監視装置の計測値、測定器抵抗R:既知、昇圧チョッパによる昇圧電圧V2:未知、PCS7の交流側の絶縁抵抗値Rac:未知)
(1)式及び(2)式からRacを求めると、以下の(3)式のようになる。
(3)式から監視装置の計測値をパラメータとして、PCS7の交流側の絶縁抵抗値を算出できる。
Rac=R・(V1+Vrp−Vrn)/(Vrn−Vrp)・・・・(3)
例えば、表1のNO.6に示すように、模擬絶縁抵抗値を1.01MΩとすると、
Rac=5000・(177.8+0.894−1.76)/(1.76−0.894)=1.02MΩ
【0037】
以上のように、絶縁低下した区間の判別として、PCS7の直流側と交流側の見分けは上記計測モードで再測定を行い、Vrpにマイナス符号が付けば、PCS7の交流側の絶縁低下を判定できるほか、絶縁抵抗値を算出できる。測定部5の表示画面として、Vrpにマイナス符号が付いた場合には、画面上にPCS7の交流側及び算出した絶縁抵抗値を表示することができる。
【0038】
さらに、上記計測モードにおいては、絶縁低下区間の特定をすることができる。
【0039】
PCS7の交流側における絶縁低下区間の特定は、PCS稼働(連系運転)にて実施する。
【0040】
測定部5により、PCS7の交流側の絶縁低下を検出した場合は、測定器抵抗間電圧のVrp値はマイナス符号となり、PCS7の交流側の絶縁低下を見分けることができる。PCS7の交流側の絶縁抵抗値は、測定部5の計測モードにより測定を行い、計測する測定器抵抗間電圧(Vrp、Vrn)、発電電圧V1及び測定器抵抗をパラメータとして算出する。なお、雨天時などPCS7が連系運転停止中の場合には、測定部5は、PCS7の交流側の絶縁低下を検出しない。
【0041】
〔PCS7の直流側の絶縁診断〕
また、この太陽光発電設備の絶縁監視装置の計測モードにおいては、測定部5における測定結果に基づいて、太陽光電池パネル1からPCS7に内蔵するMCCBに至る直流回路におけるP相の絶縁抵抗の低下と、この直流回路におけるN相の絶縁抵抗の低下とを、区別して検出し、もしくは、該直流回路におけるP相とN相の両相または太陽電池モジュール間、P相、N相、太陽電池モジュール間を含む複数ヶ所の絶縁抵抗の低下との何れかを検出することができる。この測定は、直流回路が活線である状態で行うことができる。
【0042】
なお、直流側の絶縁診断は、本件出願人が特許文献1(特許第5603444号公報)においてすでに提案している内容である。
【0043】
太陽光電池パネル1からPCS7に至る直流回路において絶縁抵抗が低下した場合には、P相端子4p、または、N相端子4nと測定器抵抗Rを介した対地間には、電圧Vrが生ずる。したがって、この対地間電圧Vrと、太陽光電池パネル1の発電電圧Vとを測定することにより、直流回路の絶縁抵抗を知ることができる。太陽光電池パネル1の発電電圧Vは、太陽光電池パネル1に照射される光量によって変動するので、随時測定する。
【0044】
この太陽光発電設備においては、(1)P相の絶縁低下、(2)N相の絶縁低下、(3)両相が同時の絶縁低下、もしくは、P相、N相、太陽電池モジュール間を含む複数箇所の絶縁低下、または、(4)太陽電池モジュール間における絶縁低下のいずれかが発生する可能性があり、P相またはN相の測定器抵抗Rを介した対地電圧の発生を知ることにより、これらを区別して検出することができる。
【0045】
この太陽光発電設備において、P相の絶縁低下による漏電が起こった場合には、切替スイッチ6をP相端子4pに切り替えたときには、測定器抵抗Rの両端に電圧は発生しない。そして、切替スイッチ6をN相端子4nに切り替えたときには、測定器抵抗Rの両端に、電圧Vnrが発生する。P相のみが絶縁低下した場合には、以下が成立する。
Rp=R〔{(V−Vpr)/Vnr}−1〕 ・・・・(ただし、Vpr≒0)
【0046】
この太陽光発電設備において、N相の絶縁低下による漏電が起こった場合には、切替スイッチ6をP相端子4pに切り替えたときには、測定器抵抗Rの両端に、電圧Vprが発生する。そして、切替スイッチ6をN相端子4nに切り替えたときには、測定器抵抗Rの両端に電圧は発生しない。N相のみが絶縁低下した場合には、以下が成立する。
Rn=R〔{(V−Vnr)/Vpr}−1〕 ・・・・(ただし、Vnr≒0)
【0047】
この太陽光発電設備において、P相及びN相の両相、もしくは、P相、N相、太陽電池モジュール間を含む複数箇所にて絶縁低下による漏電が起こった場合には、切替スイッチ6をP相端子4pに切り替えたときには、測定器抵抗Rの両端に、電圧Vprが発生する。そして、切替スイッチ6をN相端子4nに切り替えたときには、測定器抵抗Rの両端に、電圧Vnrが発生する。P相及びN相の両相、もしくは、P相、N相、太陽電池モジュール間を含む複数箇所にて絶縁低下した場合には、以下が成立する。
Rp=R〔{(V−Vpr)/Vnr}−1〕
Rn=R〔{(V−Vnr)/Vpr}−1〕
Rpn=(Rgp・Rgn)/(Rgp+Rgn)=R〔{V/(Vpr+Vnr)}−1〕
【0048】
この太陽光発電設備において、太陽電池モジュール間にて絶縁低下による漏電が起こった場合には、切替スイッチ6をP相端子4pに切り替えたときには、測定器抵抗Rの両端に、電圧Vprが発生する。そして、切替スイッチ6をN相端子4nに切り替えたときには、測定器抵抗Rの両端に、電圧Vnrが発生する。
【0049】
つまり、測定器電圧Vpr,VnrがP相及びN相の両相にて発生する場合は、P相及びN相の両相にて絶縁低下しているか、もしくは、P相、N相、太陽電池モジュール間を含む複数箇所にて絶縁低下しているか、または、太陽電池モジュール間にて絶縁低下している場合である。太陽電池モジュール間にて絶縁低下した場合には、以下が成立する。
Rpn=R〔{V/(Vpr+Vnr)}−1〕
【0050】
このように、本発明に係る太陽光発電設備の絶縁監視装置においては、測定器抵抗Rの両端電圧Vrと、太陽光電池パネル1の発電電圧Vとを測定することにより、絶縁抵抗Rpnを知ることができる。また、測定器抵抗Rの両端電圧Vrの発生状況(P相発生、N相発生、P相及びN相の両相発生)と太陽電池パネルモジュールの直列枚数を知ることにより、絶縁低下している区間を判別することができる。
【0051】
〔フローチャート〕
図5は、本発明に係る太陽光発電設備の絶縁監視方法による絶縁抵抗測定の手順を示すフローチャートである。また、図6は、本発明に係る太陽光発電設備の絶縁監視方法による絶縁抵抗測定の手順を示すフローチャート(図5の続き)である。
【0052】
本発明に係る太陽光発電設備の絶縁監視装置により本発明に係る太陽光発電設備の絶縁監視方法を実行して、太陽光発電設備における絶縁抵抗を測定するには、図5に示すように、測定部5のCPUは、ステップst1で処理を開始すると、ステップst2に進み、測定部5のスイッチが投入されていると、ステップst3に進む。ステップst3では、測定器抵抗Rの自動測定を行い、ステップst4で太陽光電池パネル1の発電電圧Vを測定し、ステップst5に進む。ステップst5では、切替スイッチ6をP相側に切り替えて、測定器抵抗Rの両端電圧Vrpを測定し、ステップst6に進む。
【0053】
ステップst6で太陽光電池パネル1の発電電圧Vを測定し、ステップst7に進む。ステップst7では、切替スイッチ6をN相側に切り替えて、測定器抵抗Rの両端電圧Vrnを測定し、ステップst8に進む。ステップst8で太陽光電池パネル1の発電電圧Vを測定し、ステップst9に進む。ステップst9では、電圧値Vrpの値が例えば50mV以上であるかを判別し、50mV以上であればステップst10に進み、50mV以上でなければステップst15に進む。ステップst10では、電圧値Vrpの符号がマイナスであるかを判別し、マイナスであればステップst11に進み、プラスであればステップst15に進む。
【0054】
また、ステップst11では、PCS7の交流側の絶縁抵抗を演算し、ステップst12に進む。ステップst12では、この絶縁抵抗値が20MΩ未満であるか否かを判別し、20MΩ未満である場合には、ステップst13に進み、このステップst13では、PCS7の交流側の絶縁抵抗値Racを表示装置LCDに表示する。一方、上記ステップst12において上記抵抗値が20MΩ以上であると判別された場合には、ステップst14に進み、OVER(絶縁)であることを表示装置LCDに表示する。また、ステップst15では、PCS7の直流側の絶縁抵抗Rp、Rnの演算を開始する。ステップst16では、切替スイッチ6をN相側、P相側に切り替えて、絶縁抵抗Rp、Rnを測定し、それぞれが20MΩ以上であれば、ステップst17に進み、それぞれが20MΩ以上でなければ、ステップst18に進む。ステップst17では、絶縁抵抗Rp、RnがOVER(絶縁)であることを表示する。
【0055】
また、ステップst18では、絶縁抵抗Rpが20MΩ以上で、Rnが1MΩ未満であればステップst19に進み、そうでなければステップst20に進む。
【0056】
また、ステップst19では、絶縁抵抗RpがOVER(絶縁)であること及びRnの値を表示する。ステップst20では、絶縁抵抗Rpが20MΩ以上で、Rnが1〜19.99MΩであればステップst21に進み、そうでなければステップst22に進む。ステップst21では、絶縁抵抗RpがOVER(絶縁)であること及びRnの値を表示する。ステップst22では、絶縁抵抗Rpが1MΩ未満で、Rnが20MΩ以上であればステップst23に進み、そうでなければステップst24に進む。ステップst23では、絶縁抵抗Rpの値及びRnがOVER(絶縁)であることを表示する。ステップst24では、絶縁抵抗Rpが1〜19.99MΩで、Rnが20MΩ以上であればステップst25に進み、そうでなければ図6のステップst26に進む。ステップst25では、絶縁抵抗Rpの値及びRnがOVER(絶縁)であることを表示する。
【0057】
また、ステップst26では、表示を点滅させ、モジュールの直列枚数の入力を求め、ステップst27に進む。ステップst27では、入力されたモジュールの直列枚数を受信し、ステップst28に進む。ステップst28では、電圧値と抵抗値が一致しているか否かを判別し、一致していればステップst29に進み、一致していなければステップst32に進む。ステップst29では、モジュール間の抵抗が1MΩ未満であるかを判別し、1MΩ未満であればステップst30に進み、1MΩ未満でなければステップst31に進む。ステップst30では、絶縁低下箇所がモジュール間であること及び抵抗値Rpnを表示する。ステップst31では、絶縁低下箇所がモジュール間であること及び抵抗値Rpnを表示する。
【0058】
また、ステップst32では、絶縁抵抗Rpが1MΩ未満で、Rnが1MΩ未満であればステップst33に進み、そうでなければステップst34に進む。ステップst33では、絶縁抵抗Rp、Rn、Rpnの値を表示する。
【0059】
ステップst34では、絶縁抵抗Rpが1〜19.99MΩで、Rnが1MΩ未満であればステップst35に進み、そうでなければステップst36に進む。ステップst35では、絶縁抵抗Rp、Rn、Rpnの値を表示する。
【0060】
また、ステップst36では、絶縁抵抗Rpが1MΩ未満で、Rnが1〜19.99MΩであればステップst37に進み、そうでなければステップst38に進む。ステップst37では、絶縁抵抗Rp、Rn、Rpnの値を表示する。ステップst38では、絶縁抵抗Rp、Rn、Rpnの値を表示する。
【0061】
図7は、本発明に係る太陽光発電設備の絶縁監視方法による絶縁抵抗測定の手順(ロガーモードにより絶縁抵抗測定をする場合)を示すフローチャートである。
【0062】
本発明に係る太陽光発電設備の絶縁監視装置においては、計測モード以外に、絶縁測定結果を読み取って表示(記録)するロガーモードによっても、PCS7交流側の絶縁抵抗を測定することができる。ロガーモードによる場合は、図7に示すように、測定部5のCPUは、ステップst41で処理を開始すると、ステップst42に進み、測定部5のスイッチが投入されていると、ステップst43に進む。ステップst43では、測定器抵抗Rの自動測定を行い、ステップst44で太陽光電池パネル1の発電電圧Vを測定し、ステップst45に進む。ステップst45では、切替スイッチ6をP相側に切り替えて、測定器抵抗Rの両端電圧Vrpを測定し、ステップst46に進む。
【0063】
ステップst46で太陽光電池パネル1の発電電圧Vを測定し、ステップst47に進む。ステップst47では、切替スイッチ6をN相側に切り替えて、測定器抵抗Rの両端電圧Vrnを測定し、ステップst48に進む。ステップst48で太陽光電池パネル1の発電電圧Vを測定し、ステップst49に進む。ステップst49では、電圧値Vrpの値が例えば50mV以上であるかを判別し、50mV以上であればステップst50に進み、50mV以上でなければステップst55に進む。ステップst50では、電圧値Vrpの符号がマイナスであるかを判別し、マイナスであればステップst51に進み、プラスであればステップst55に進む。
【0064】
ステップst51では、PCS7の交流側の絶縁抵抗を演算し、ステップst52に進む。このステップst52では、上記絶縁抵抗値が、10MΩ未満であるか否かを判別し、10MΩ未満である場合には、ステップst53に進む。このステップst53では、PCS7の交流側の絶縁抵抗値Rac(MΩ)を表示装置LCDに表示する。また、上記絶縁抵抗値が、10MΩ以上である場合には、ステップst54において、OVER(絶縁)であることを表示装置LCDに表示する。また、ステップst55では、PCS7の直流側の絶縁抵抗Rpnを演算し、次いで、ステップst56では、上記PCS7の直流側の絶縁抵抗Rpnが10MΩ未満であるか否かを判別し、この絶縁抵抗Rpnが10MΩ未満である場合には、ステップst57において、その絶縁抵抗値Rpn(MΩ)を表示装置LCDに表示する。一方、上記絶縁抵抗Rpnが10MΩ以上である場合には、ステップst58において、OVER(絶縁)であることを表示装置LCDに表示する。
なお、PCSが複数ある場合には、PCSごとに順次(繰返し)測定を行う。
また、上記説明では、先ず太陽光発電設備における絶縁抵抗を計測モードにて測定する順序を説明し、その後に上記ロガーモードにて計測する順序を説明したが、ロガーモードにて計測した後に、上記計測モードにて測定することが実際的である。
【0065】
図8は、太陽光電池パネルの構成例(9直列×3並列)を示す平面図である。
【0066】
図8に示すように、太陽電池モジュール11は、例えば、9個直列に接続されたものを3列備えた太陽光電池パネル1を考えている。この太陽光電池パネル1においては、太陽電池モジュール11が直列に接続されたものは、それぞれに対応する断路器12の負荷側において、並列接続されている。なお、太陽電池モジュール11とは,数十枚の太陽電池セルを直列接続したものをいう。太陽電池モジュール11は、一般的には、受光面となるガラスなどの透明基板を支持板とし、この支持板の下に透明な充填材料及び裏面シートにより数十枚の太陽電池セルを封止し、周囲を枠により密封した構造となっている。太陽電池セル同士は、インナーコネクタを介して、半田付けにより接続されている。インナーコネクタの接続不良(断線)は起こり得るが、太陽電池セルは封止されているので、地絡の虞はない。太陽電池モジュール11の端子は、各太陽電池モジュール11の外部に設けられた端子ボックス内に設けられている。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明は、発電状態のままで絶縁抵抗測定ができるようにした太陽光発電設備の絶縁監視装置及び太陽光発電設備の絶縁監視方法に適用される。
【符号の説明】
【0068】
1 太陽電池パネル
2 中継端子
4p P相端子
4n N相端子
5 測定部
6 切替スイッチ
7 パワーコンディショナ
8 絶縁変圧器
11 太陽光モジュール
12 断路器
【要約】
【課題】抵抗間の電圧を測定することによって、パワーコンディショナ前後の絶縁抵抗測定ができるようにした太陽光発電設備の絶縁監視装置及び太陽光発電設備の絶縁監視方法を提供する。
【解決手段】パワーコンディショナ7を介した連系運転中において、大地からP相端子4pを見た電圧をVrpとしたとき、電圧値Vrpの符号がマイナスならばパワーコンディショナ7の交流側の絶縁抵抗の低下と判別し、電圧値Vrpの符号がプラスならばパワーコンディショナ7の直流側の絶縁抵抗の低下と判別する。
【選択図】 図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8