(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
少なくとも1つの前記第1の摩擦部材ブロックと少なくとも1つの前記第2の摩擦部材ブロックとが、前記車軸を中心とする円の径方向の線を対称軸として線対称に配置されている、請求項1〜3のいずれか1項に記載のブレーキライニング。
2つの前記第2の摩擦部材ブロックと、それらを挟むように配置された4つの前記第1の摩擦部材ブロックとが、前記径方向の線を対称軸として線対称に配置されている、請求項4に記載のブレーキライニング。
前記径方向の外側の中央に1つの前記第2の摩擦部材ブロックが配置され、前記径方向の内側の中央に1つの前記第1の摩擦部材ブロックが配置され、更に、前記外側の前記1つの第2の摩擦部材ブロックを挟むように2つの前記第1の摩擦部材ブロックが配置され、前記内側の前記1つの第1の摩擦部材ブロックを挟むように2つの前記第1の摩擦部材ブロックが配置されている、請求項4に記載のブレーキライニング。
【背景技術】
【0002】
近年、鉄道車両の高速化に伴い、鉄道車両の制動装置にはディスクブレーキが多用されている。ディスクブレーキは、ブレーキディスクとブレーキライニングとの摩擦によって制動力を得る装置である。
【0003】
特許文献1(特開2012−251597号公報)は、ブレーキライニングの一例を開示している。具体的には、特許文献1は、互いに隣接する2個の摩擦部材を一組とし、この一組の摩擦部材の裏金が一体であることを特徴とするブレーキライニングを開示している。特許文献1には、このブレーキライニングによって、「制動中のブレーキライニングとブレーキディスクの接触面圧の均一化と、それらの間の摩擦係数の安定化を両立させるとともに、耐久性と信頼性を向上させることができる。」と記載されている。
【0004】
ディスクブレーキを用いた制動では、ブレーキライニングをブレーキディスクに押し当てたときに、ブレーキディスクが振動してブレーキ鳴きといわれる騒音が発生する場合がある。このブレーキ鳴きは、ブレーキライニングをブレーキディスクに押し付けたときに発生する自励振動によって生じると考えられている。このブレーキ鳴きを抑制するための技術が、従来から開示されている。
【0005】
特許文献2(特開2011−214629号公報)は、摩擦部材と、摩擦部材を支持する裏板とを備えるブレーキライニングを開示している。それらの摩擦部材は、ブレーキディスクの半径方向及び周方向に複数に分割配置される。それぞれの摩擦部材は裏板との間に弾性部材を介在させて支持されている。特許文献2のブレーキライニングでは、ブレーキライニングを台車に設置した状態における、ライニングの鉛直方向中心線H部に存在する摩擦部材の支持剛性よりも、当該中心線H部以外の部分に存在する前記摩擦部材の支持剛性を大きくしている。この構成によれば、ブレーキ鳴きが低減されることが特許文献2に記載されている。
【0006】
ディスクブレーキを用いて制動が繰返し行われるとブレーキライニングの摩擦部材が摩耗する。その際、一部の摩擦部材のみが集中的にブレーキディスクと接触して偏摩耗が生じる場合がある。偏摩耗が生じると、ブレーキ性能および摩擦部材の寿命が低下する。そのような偏摩耗を防ぐためには、ブレーキディスクとブレーキライニングとが均一に接触することが好ましい。さらに、ブレーキ鳴きを効果的に抑制できる新たな方法が求められている。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本発明のブレーキライニングの一例を模式的に示す正面図である。
【
図2】
図2は、
図1に示したブレーキライニングの一部の断面を模式的に示す図である。
【
図3】
図3は、本発明のブレーキライニングにおける摩擦部材ブロックの配置の一例について説明する図である。
【
図4A】
図4Aは、実施形態1のブレーキライニングの正面図である。
【
図4B】
図4Bは、実施形態1のブレーキライニングの背面図である。
【
図4C】
図4Cは、実施形態1のブレーキライニングの右側面図である。
【
図4D】
図4Dは、実施形態1のブレーキライニングの左側面図である。
【
図4E】
図4Eは、実施形態1のブレーキライニングの平面図である。
【
図4F】
図4Fは、実施形態1のブレーキライニングの底面図である。
【
図4G】
図4Gは、実施形態1のブレーキライニングの斜視図である。
【
図5A】
図5Aは、実施形態2のブレーキライニングの正面図である。
【
図5B】
図5Bは、実施形態2のブレーキライニングの背面図である。
【
図5C】
図5Cは、実施形態2のブレーキライニングの右側面図である。
【
図5D】
図5Dは、実施形態2のブレーキライニングの左側面図である。
【
図5E】
図5Eは、実施形態2のブレーキライニングの平面図である。
【
図5F】
図5Fは、実施形態2のブレーキライニングの底面図である。
【
図5G】
図5Gは、実施形態2のブレーキライニングの斜視図である。
【
図6A】
図6Aは、実施形態3のブレーキライニングの正面図である。
【
図6B】
図6Bは、実施形態3のブレーキライニングの背面図である。
【
図6C】
図6Cは、実施形態3のブレーキライニングの右側面図である。
【
図6D】
図6Dは、実施形態3のブレーキライニングの左側面図である。
【
図6E】
図6Eは、実施形態3のブレーキライニングの平面図である。
【
図6F】
図6Fは、実施形態3のブレーキライニングの底面図である。
【
図6G】
図6Gは、実施形態3のブレーキライニングの斜視図である。
【
図7A】
図7Aは、発明例1のブレーキライニングにおける摩擦部材ブロックの配置を模式的に示す図である。
【
図7B】
図7Bは、比較例1のブレーキライニングにおける摩擦部材ブロックの配置を模式的に示す図である。
【
図7C】
図7Cは、比較例2のブレーキライニングにおける摩擦部材ブロックの配置を模式的に示す図である。
【
図8】
図8は、実施例におけるブレーキ鳴きの評価結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
鋭意検討した結果、本願発明者らは、複数の締結部材を特定の構成で配置した特定のブレーキライニングを用いることによって上記目的を達成できることを見出した。この発明は、この新たな知見に基づくものである。
【0014】
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、以下の説明では、本発明の実施形態について例を挙げて説明するが、本発明は以下で説明する例に限定されない。以下の説明では、具体的な数値や材料を例示する場合があるが、本発明の効果が得られる限り、他の数値や材料を適用してもよい。
【0015】
(ブレーキライニング)
本発明のブレーキライニングは、鉄道車両用のブレーキライニングである。このブレーキライニングは、鉄道車両の車輪の車軸と共に回転するブレーキディスクの摺動面にブレーキキャリパによって押しつけられる。このブレーキライニングは、少なくとも1つの第1の摩擦部材ブロックと、当該少なくとも1つの第2の摩擦部材ブロックと、複数の締結部材と、複数の締結部材のそれぞれに配置されたばね部材と、ブレーキキャリパに取り付けられる基板と、を含む。基板は、ブレーキキャリパに直接取り付けられてもよいし、他の部材を介してブレーキキャリパに取り付けられてもよい。ブレーキライニングに含まれる第1および第2の摩擦部材ブロックの数に限定はなく、それぞれ、たとえば1〜6の範囲にあってもよい。
【0016】
第1の摩擦部材ブロックは、少なくとも1つの第1の摩擦部材と、当該少なくとも1つの第1の摩擦部材の裏面が固着された第1の裏金とを含む。第1の摩擦部材ブロックが複数の第1の摩擦部材を含む場合、それらの摩擦部材の裏面が1つの第1の裏金に固着される。第1の摩擦部材ブロックは、ばね部材と第1の裏金とを通る2つの締結部材によって基板に弾性的に締結されている。第1の摩擦部材ブロックに含まれる2つの締結部材は、車軸を中心とする円周に沿って配置されている。換言すれば、第1の摩擦部材ブロックに含まれる2つの締結部材が車軸を中心とする円周に沿って配置されるように、第1の摩擦部材ブロックが配置されている。
【0017】
第2の摩擦部材ブロックは、少なくとも1つの第2の摩擦部材と、当該少なくとも1つの第2の摩擦部材の裏面が固着された第2の裏金とを含む。第2の摩擦部材ブロックが複数の第2の摩擦部材を含む場合、それらの摩擦部材の裏面が1つの第2の裏金に固着される。第2の摩擦部材ブロックは、ばね部材と第2の裏金とを通る3つの締結部材によって基板に弾性的に締結されている。第2の摩擦部材ブロックにおいて、3つの締結部材は通常、間隔をおいて直線上(またはほぼ直線上)に配置される。第2の摩擦部材ブロックにおいて両脇に存在する2つの締結部材は、車軸を中心とする円周に沿って配置されている。換言すれば、第2の摩擦部材ブロックにおいて両脇に存在する2つの締結部材が車軸を中心とする円周に沿って配置されるように、第2の摩擦部材ブロックが配置される。
【0018】
締結部材に特に限定はなく、リベットを用いてもよい。ばね部材に特に限定はなく、皿ばね、板ばね、またはコイルばねを用いてもよい。基板に特に限定はなく、金属板を用いてもよい。
【0019】
第1および第2の摩擦部材ブロックのそれぞれは、ブレーキディスクの摺動面に対向するように配置された摩擦部材を含む。摩擦部材(第1および第2の摩擦部材)に特に限定はなく、公知の摩擦部材を用いてもよい。摩擦部材の材料の例には、銅系の焼結材や樹脂系材料が含まれる。摩擦部材の平面形状に限定はない。摩擦部材の平面形状の例には、円形、楕円形および多角形(四角形および六角形など)が含まれる。なお、第1および第2の摩擦部材はそれぞれ、複数の摩擦部材が連結された形状を有してもよい。たとえば、第1の摩擦部材は2つの摩擦部材(円板状その他の形状の摩擦部材)が連結された形状を有してもよく、第2の摩擦部材は3つの摩擦部材(円板状その他の形状の摩擦部材)が連結された形状を有してもよい。本発明のブレーキライニングの典型的な一例では、摩擦部材を含む構成要素が、第1の摩擦部材ブロックと第2の摩擦部材ブロックのみである。
【0020】
1つの第1の摩擦部材ブロックにおいて、複数の第1の摩擦部材が分離している場合、第1の裏金の平面形状に特に限定はない。例えば、第1の裏金において、隣接する摩擦部材の間に相当する部分は、細くくびれていてもよい。また、第1の裏金において、隣接する摩擦部材の間に相当する部分は、一定の幅の帯状であってもよいし、膨らんでいてもよい。
【0021】
摩擦部材ブロックと基板とを締結する締結部材のそれぞれには、ばね部材が配置されている。また、締結部材は、摩擦部材ブロックを移動可能に基板に締結する。この構成によれば、摩擦部材ブロックを弾性的に基板に取り付けることができる。この構成では、ブレーキディスクの表面に応じて摩擦部材が移動するため、制動時においてブレーキディスクとブレーキライニングとの接触面圧のばらつきを抑制できる。
【0022】
1つの観点では、本発明のブレーキライニングは、摩擦部材ブロックを基板に弾性的に締結する弾性締結部材を含む。弾性締結部材は、締結部材とばね部材とを含む。第1の摩擦部材ブロックは2つの弾性締結部材によって基板に弾性的に締結され、第2の摩擦部材ブロックは3つの弾性締結部材によって基板に弾性的に締結される。
【0023】
複数の摩擦部材ブロックのそれぞれの配置の基準となる円周は、同じであってもよいし異なってもよい。たとえば、複数の摩擦部材ブロックの締結部材は、異なる円周に沿って配置されてもよいし、1つの円周に沿って配置されてもよい。
【0024】
ここで、「2つの締結部材が円周に沿って配置される」という意味について説明する。2つの締結部材のうち、一方の締結部材の中心を点Aとし、他方の締結部材の中心を点Bとし、それらを結ぶ線AB、およびその線ABの中点Mを仮定する。さらに、車軸の中心Cを中心とし中点Mを通る円Rを仮定し、中点Mにおける円Rの接線Sを仮定する。そして、線ABと接線Sとがなす角度(90°ではない場合には鋭角の角度)を角度αとする。この明細書において「2つの締結部材が円周に沿って配置される」とは、角度αが、0〜30°の範囲(たとえば0〜20°、0〜10°、または0〜5°の範囲)にあることを意味する。なお、角度αが0°であるとは、線ABが接線Sと平行であることを意味する。典型的な一例では、点Aおよび点Bの両方が、車軸を中心とする1つの円の円周上に配置される。この場合、角度αは0°となる。角度αの具体例については、
図3で説明する。
【0025】
少なくとも1つの第1の摩擦部材と少なくとも1つの第2の摩擦部材とは、同じ摩擦部材であってもよいし、異なる摩擦部材であってもよい。たとえば、ブレーキライニングに含まれるすべての摩擦部材の材質および形状が同じであってもよい。第1および第2の摩擦部材は、ブレーキディスクの摺動面に対向するように配置される。第1および第2の摩擦部材ブロックの少なくとも一方が複数の摩擦部材を含む場合、当該複数の摩擦部材は、互いに間隔をおくように配置される。
【0026】
本発明のブレーキライニングは、以下の構成(1)および(2)を有してもよく、構成(1)〜(4)を有してもよく、構成(1)〜(5)を有してもよい。
(1)第1の摩擦部材ブロックに含まれる第1の摩擦部材の数が2である。2つの第1の摩擦部材は、間隔をおいて配置される。
(2)第2の摩擦部材ブロックに含まれる第2の摩擦部材の数が3である。3つの第2の摩擦部材は通常、間隔をおいて直線上(またはほぼ直線上)に配置される。
(3)第1の摩擦部材ブロックに含まれる2つの第1の摩擦部材のそれぞれの中心部に、締結部材が配置されている。なお、摩擦部材が円形ではない場合、摩擦部材の中心部とは、その平面形状の重心の位置を意味する。
(4)第2の摩擦部材ブロックに含まれる3つの第2の摩擦部材のそれぞれの中心部に、締結部材が配置されている。
(5)第1および第2の摩擦部材が、円板状の摩擦部材である。
【0027】
構成(1)の第1の摩擦部材ブロックは、基板に弾性的に締結されて独立に移動する2つの摩擦部材を含む。構成(2)の第2の摩擦部材ブロックは、基板に弾性的に締結されて独立に移動する3つの摩擦部材を含む。構成(1)および(2)では、複数の摩擦部材が個々にブレーキディスクと接触するため、制動時においてブレーキディスクとブレーキライニングとの接触面圧のばらつきを特に抑制できる。構成(3)〜(5)によれば、摩擦部材の偏摩耗を防止できると共に、摩擦部材の回転の影響を抑制できる。
【0028】
本発明のブレーキライニングの一例(以下、「例(A)」という場合がある)では、少なくとも1つの第1の摩擦部材ブロックと少なくとも1つの第2の摩擦部材ブロックとが、車軸を中心とする円の径方向の線(基板の周方向の中心と車軸の中心とを結ぶ線)を対称軸として線対称に配置されている。つまり、すべての摩擦部材ブロックが配置されている領域の周方向の中心と車軸の中心とを結ぶ直線を対称軸として摩擦部材ブロックの配列が左右対称(線対称)である。この構成によれば、ブレーキライニングの組立が簡易になるので、組立時の工数を低減できる。さらに、車輪の正転時および逆転時に、同じブレーキ性能を提供できる。
【0029】
上記の例(A)のブレーキライニングでは、第2の摩擦部材ブロックを中央に配置し、それを挟むように第1の摩擦部材ブロックを配置してもよい。たとえば、2つの第2の摩擦部材ブロックと、それらを挟むように配置された4つの第1の摩擦部材ブロックとが、上記径方向の線を対称軸として線対称に配置されていてもよい。また、上記の例(A)のブレーキライニングでは、第1の摩擦部材ブロックを中央に配置し、それを挟むように第2の摩擦部材ブロックを配置してもよい。また、上記の例(A)のブレーキライニングでは、上記径方向の外側の中央に1つの第2の摩擦部材ブロックを配置し、上記径方向の内側の中央に1つの第1の摩擦部材ブロックを配置してもよい。この場合、上記外側の1つの第2の摩擦部材ブロックを挟むように2つの第1の摩擦部材ブロックを配置し、上記内側の1つの第1の摩擦部材ブロックを挟むように2つの第1の摩擦部材ブロックを配置してもよい。
【0030】
(ディスクブレーキ)
本発明のディスクブレーキは、鉄道車両用のディスクブレーキである。このディスクブレーキは、鉄道車両の車輪の車軸と共に回転するブレーキディスクと、ブレーキキャリパと、ブレーキキャリパに取り付けられた本発明のブレーキライニングとを含む。ブレーキキャリパおよびブレーキディスクに特に限定はなく、公知のものを用いてもよい。ブレーキキャリパは、油圧または空圧などによってブレーキライニングをブレーキディスクに押し付け、それによって車輪を制動する。ブレーキディスクは鉄道車両の車輪の車軸の回転に伴って回転するディスクである。ブレーキディスクは通常、車輪または車軸に固定される。ブレーキディスクの中心は、車軸の中心と一致する。そのため、この明細書において、「主軸を中心とする円周」を、「ブレーキディスクの中心を中心とする円周」と読み替えることが可能である。
【0031】
(実施形態)
本発明の実施形態の一例について、以下に説明する。本実施形態では、第1の摩擦部材ブロックが2つの摩擦部材を含み、第2の摩擦部材ブロックが3つの摩擦部材を含む一例について説明する。本実施形態のブレーキライニング10を
図1に示す。
図1は、ブレーキディスク側からブレーキライニング10を見た時の正面図である。また、
図1の線II−IIにおける第1の摩擦部材ブロック21の断面図を、
図2に模式的に示す。なお、
図2には、ブレーキディスク100の配置を示す。
【0032】
ブレーキライニング10は、4つの第1の摩擦部材ブロック21と、2つの第2の摩擦部材ブロック22と、複数の締結部材(リベット)31と、複数のばね部材(皿ばね)32と、1枚の基板41とを含む。基板41の形状は横長の概ね長方形である。
【0033】
第1の摩擦部材ブロック21は、円板状の2つの摩擦部材(第1の摩擦部材)20と、1枚の裏金21aとによって構成されている。2つの摩擦部材20の裏面は裏金21aに固着されている。裏金21aには、締結部材31が通る2つの貫通孔が形成されている。裏金21aにおいて、隣接する摩擦部材20の間に相当する部分は細くくびれている。摩擦部材20のそれぞれの中心部には、裏金21aの貫通孔およびばね部材32を通る締結部材31が配置されている。第1の摩擦部材ブロック21と締結部材31とは固定されておらず、摩擦部材ブロック21は、締結部材31およびばね部材32によって弾性的に基板41に締結されている。
【0034】
第2の摩擦部材ブロック22は、円板状の3つの摩擦部材(第2の摩擦部材)20と、1枚の裏金22aとによって構成されている。本実施形態では、第2の摩擦部材ブロック22に含まれる摩擦部材20と第2の摩擦部材ブロック21に含まれる摩擦部材20とが同じである一例について説明する。摩擦部材ブロック22において、3つの摩擦部材20は、1つの直線上に一定の間隔を置いて配置される。同様に、3つの締結部材31は、1つの直線上に一定の間隔を置いて配置される。裏金22aには、締結部材31が通る3つの貫通孔が形成されている。裏金22aにおいて、隣接する摩擦部材20の間に相当する部分は細くくびれている。摩擦部材20のそれぞれの中心部には、裏金22aの貫通孔およびばね部材32を通る締結部材31が配置されている。第2の摩擦部材ブロック22と締結部材31とは固定されておらず、摩擦部材ブロック22は、締結部材31およびばね部材32によって弾性的に基板41に締結されている。3つの締結部材31によって弾性的に基板に締結された第2の摩擦部材ブロック22を用いることによって、ブレーキ鳴きを特に抑制できる。
【0035】
図1および
図2に示されるように、摩擦部材20は、互いに間隔をおいて配置されている。また、摩擦部材20は、ブレーキディスク100の摺動面100aに対向するように配置されている。ブレーキライニング10の基板41は、一例では、案内板(図示せず)を介してブレーキキャリパ(図示せず)に取り付けられる。本発明のディスクブレーキは、ブレーキライニング10、ブレーキキャリパ、およびブレーキディスク100を含む。
図1に示すブレーキライニング10では、2つの第2の摩擦部材ブロック22が中央に配置されており、それらを挟むように4つの第1の摩擦部材ブロック21が配置されている。これらの4つの摩擦部材ブロック21と2つの摩擦部材ブロック22とは、車軸を中心とする円の径方向の線Tを対称軸として対称(線対称)に配置されている。
【0036】
摩擦ブロックの配置の一例を
図3に示す。
図3に示す一例では、第1の摩擦部材ブロックである第1の摩擦部材ブロック121aが、車軸を中心とする円周からわずかに傾いて配置されている。また、第2の摩擦部材ブロックである第2の摩擦部材ブロック122aが、上記角度αが0°となるように配置されている。
【0037】
第1の摩擦部材ブロック121aの配置について説明する。第1の摩擦部材ブロック121aの2つの締結部材31のうち、一方の締結部材31の中心を点A1とし、他方の締結部材31の中心を点B1とする。点A1と点B1とを結ぶ線A1B1の中点を中点M1とする。車軸の中心Cを中心とし中点M1を通る円を円R1とする。さらに、中点M1における円R1の接線を接線S1とする。線A1B1と接線S1とがなす角度α1が、上述した角度αとなる。角度α1(角度α)は、上述した範囲にある。点A1および点B1が共に、車軸を中心とする1つの円の円周上に存在する場合には、角度α1は0°となる。なお、本実施形態では、締結部材31の中心は、摩擦部材20の中心に等しい。そのため、本実施形態のブレーキライニング10は、上記構成(1)〜(5)を有する。
【0038】
図3に示す第2の摩擦部材ブロック122aは、角度αが0°となるように配置されている。第2の摩擦部材ブロック122aの3つの締結部材31のうち両脇に存在する2つの締結部材31について、一方の端の締結部材31の中心を点A2とし、他方の端の締結部材31の中心を点B2とする。点A2と点B2とを結ぶ線A2B2の中点を中点M2とする。車軸の中心Cを中心とし中点M2を通る円を円R2とする。さらに、中点M2における円R2の接線を接線S2とする。
図3の例では、線A2B2と接線S2とは重なる。そのため、上述した角度αは0°である。
【0039】
(他の実施形態)
他の実施形態1〜3のブレーキライニングを以下に示す。
【0040】
実施形態1のブレーキライニング10を
図4A〜4Gに示す。
図4Aは、ブレーキディスク側からブレーキライニング10を見た時の正面図である。
図4Bは背面図である。
図4Cは右側面図である。
図4Dは左側面図である。
図4Eは平面図である。
図4Fは底面図である。
図4Gは、ブレーキディスク側からブレーキライニング10を斜めから見た時の斜視図である。
【0041】
実施形態1のブレーキライニング10は、
図1及び2に示すブレーキライニング10と比較して以下の点で異なる。
図4A〜4Gを参照し、ブレーキライニング10は、5つの第1の摩擦部材ブロック21と、1つの第2の摩擦部材ブロック22とを含む。
【0042】
実施形態1のブレーキライニング10では、1つの第1の摩擦部材ブロック21と1つの第2の摩擦部材ブロック22が中央に配置されている。その1つの第2の摩擦部材ブロック22は、車軸を中心とする円の径方向の外側に配置されている。その1つの第1の摩擦部材ブロック21は、上記径方向の内側に配置されている。上記外側の1つの第2の摩擦部材ブロック22を挟むように2つの第1の摩擦部材ブロック21が配置されている。上記内側の1つの第1の摩擦部材ブロック21を挟むように2つの第1の摩擦部材ブロック21が配置されている。これらの5つの摩擦部材ブロック21と1つの摩擦部材ブロック22とは、上記径方向の線Tを対称軸として対称(線対称)に配置されている。
【0043】
第1の摩擦部材ブロック21の裏金21aにおいて、隣接する摩擦部材20の間に相当する部分は、摩擦部材20の幅よりも細くくびれている。第2の摩擦部材ブロック22の裏金22aにおいて、隣接する摩擦部材20の間に相当する部分は、摩擦部材20の幅よりも細くくびれている。
【0044】
実施形態2のブレーキライニング10を
図5A〜5Gに示す。
図5Aは、ブレーキディスク側からブレーキライニング10を見た時の正面図である。
図5Bは背面図である。
図5Cは右側面図である。
図5Dは左側面図である。
図5Eは平面図である。
図5Fは底面図である。
図5Gは、ブレーキディスク側からブレーキライニング10を斜めから見た時の斜視図である。
【0045】
実施形態2のブレーキライニング10は、
図4A〜4Gに示す実施形態1のブレーキライニング10と比較して以下の点で異なる。
図5A〜5Gを参照し、第1の摩擦部材ブロック21の裏金21aにおいて、隣接する摩擦部材20の間に相当する部分は、摩擦部材20の幅と同じ一定幅の帯状である。第2の摩擦部材ブロック22の裏金22aにおいて、隣接する摩擦部材20の間に相当する部分は、摩擦部材20の幅と同じ一定幅の帯状である。
【0046】
実施形態3のブレーキライニング10を
図6A〜6Gに示す。
図6Aは、ブレーキディスク側からブレーキライニング10を見た時の正面図である。
図6Bは背面図である。
図6Cは右側面図である。
図6Dは左側面図である。
図6Eは平面図である。
図6Fは底面図である。
図6Gは、ブレーキディスク側からブレーキライニング10を斜めから見た時の斜視図である。
【0047】
実施形態3のブレーキライニング10は、
図4A〜4Gに示す実施形態1のブレーキライニング10と比較して以下の点で異なる。
図6A〜6Gを参照し、第1の摩擦部材ブロック21の裏金21aにおいて、隣接する摩擦部材20の間に相当する部分は、摩擦部材20の幅よりも太く膨らんでいる。第2の摩擦部材ブロック22の裏金22aにおいて、隣接する摩擦部材20の間に相当する部分は、摩擦部材20の幅よりも太く膨らんでいる。
【実施例】
【0048】
本発明について、実施例によってさらに詳細に説明する。以下の実施例では、有限要素解析によって、本発明および比較例のブレーキライニングについて評価した。解析では、新幹線(登録商標)に使用されているディスクブレーキをモデルとした。
【0049】
この解析では、ブレーキディスクとして、新品のディスク、反り形状を有するディスク、熱変形したディスクの3種類を用いた場合について解析を行った。新品のディスクは、摺動面が平面であるディスクである。反り形状を有するディスクは、ブレーキの負荷が繰返しかかることによってディスクの外周部分がブレーキライニング側に向かって反っているディスクである。熱変形したディスクは、ブレーキ中にディスク中央部の領域がブレーキライニング側に向かって膨らんだ状態を再現したディスクである。
【0050】
発明例1、比較例1、および比較例2のブレーキライニングにおける摩擦部材ブロックの配置をそれぞれ、
図7A、7Bおよび7Cに示す。
図7A〜7Cに示す発明例および比較例のブレーキライニングにおいて、摩擦部材ブロック(第1の摩擦部材ブロックおよび第2の摩擦部材ブロック)は、径方向の線を中心として線対称に配置した。第1および第2の摩擦部材ブロックはそれぞれ、上記実施形態で説明した第1および第2の摩擦部材ブロックの構成を有する。発明例および比較例は、摩擦部材ブロックの個数および配置が異なることを除いて同じとした。
【0051】
図7Aに示すように、発明例1のブレーキライニングは、4つの第1の摩擦部材ブロック(摩擦部材ブロック121aおよび121bとそれらの対称)と、2つの第2の摩擦部材ブロック(摩擦部材ブロック122aおよび122b)とを含む。摩擦部材ブロック122aおよび122bの角度αは0°とした。摩擦部材ブロック121aおよび121bの角度αはそれぞれ、2.5°および8.3°とした。すなわち、発明例1における角度αはいずれも0〜30°の範囲(より詳細には0〜10°の範囲)とした。
【0052】
図7Bに示すように、比較例1のブレーキライニングは、7つの第1の摩擦部材ブロック(摩擦部材ブロック121c、121d〜121fとそれらの対称)を含む。摩擦部材ブロック121c、121d、121e、および121fの角度αはそれぞれ、90°、11.1°、47°、および0.2°とした。
【0053】
図7Cに示すように、比較例2のブレーキライニングは、6つの第1の摩擦部材ブロック(摩擦部材ブロック121g、121h、121iおよび121jとそれらの対称)を含む。摩擦部材ブロック121g、121h、121i、および121jの角度αは、それぞれ、0°、0°、1.6°、および2.1°とした。
【0054】
発明例1、比較例1、および比較例2に含まれる摩擦部材の総数(締結部材の総数)はそれぞれ、14個、14個、および12個とした。また、発明例1、比較例1、および比較例2に含まれる摩擦部材の摺動面積(摩擦部材のブレーキディスク側の面の面積の合計)はそれぞれ、27552mm
2、27552mm
2、および23616mm
2とした。
【0055】
この解析では、ブレーキキャリパによって、ブレーキライニングの背面側から所定の荷重をブレーキライニングに与えた。具体的には、新品ディスクの場合には13.65kN、反り形状ディスクの場合には6.8kN、熱変形ディスクの場合には6.2kNの荷重を与えた。そして、その荷重によるブレーキ鳴きについて評価を行った。また、その荷重による接触面積(ブレーキディスクと摩擦部材との接触面積の合計)、および最大接触面圧について評価を行った。
【0056】
ブレーキ鳴きについての評価結果を
図8に示す。
図8のグラフの縦軸は、最大鳴き指標を表す。鳴き指標は、比較例1の解析モデルで発生する自励振動の減衰比を1としたときの比で表した。
図8から明らかなように、摩擦部材ブロックが円周に沿って配置されていない比較例1のブレーキライニングに比べて、摩擦部材ブロックが円周に沿って配置されている発明例1および比較例2のブレーキライニングでは、ブレーキ鳴きが低減された。特に、第1の摩擦部材ブロック21と第2の摩擦部材ブロック22とが混在している発明例1のブレーキライニングでは、ブレーキ鳴きの抑制効果が極めて高かった。
図8に示すグラフにおいて、鳴き指標が0.1下がることは音圧が50%低下することに相当する。そのため、
図8の結果は、発明例1のブレーキライニングによって、極めて高いブレーキ鳴き抑制効果が得られることを示している。
【0057】
ブレーキディスクと摩擦部材との接触面積についての解析結果を表1に示す。さらに、ブレーキディスクと摩擦部材との最大接触面圧についての解析結果を表2に示す。接触面積が大きいことは、ブレーキディスクと摩擦部材とが均一に接触していること、すなわち、摩擦部材の偏摩耗が少ないことを意味する。同様に、最大接触面圧が小さいことは、摩擦部材の偏摩耗が少ないことを意味する。
【0058】
【表1】
【0059】
【表2】
【0060】
表1において、新品ディスクの接触面積が発明例1と比較例1とで異なるのは、ブレーキキャリパのピストンで押される位置と摩擦部材の配置との関係によるものである。表1に示すように、発明例1のブレーキライニングは、摩擦部材の数が同じである比較例1のブレーキライニングと比較して、接触面積が1〜5%大きかった。また、発明例1のブレーキライニングは、比較例1および2のブレーキライニングと比較して、最大接触面圧が小さかった。この結果は、発明例1のブレーキライニングを用いることによって、摩擦部材の偏摩耗を抑制できることを示している。
【0061】
図8に示したようにブレーキ鳴きを抑制するには、摩擦部材ブロックを円周に沿って配置することが重要である。比較例2のブレーキライニングでは第1の摩擦部材ブロック21が円周に沿って配置されているが、第1の摩擦部材ブロック21のみを用いて14個の摩擦部材を配置することはサイズの関係で困難である。一方、第1の摩擦部材ブロック21のみを用いて接触面積を大きくするには、比較例1のような配置とする必要がある。しかし、比較例1の配置にすると、
図8に示したようにブレーキ鳴きが大きくなる。これに対して、摩擦部材ブロック21と摩擦部材ブロック22とを組み合わせた発明例1のブレーキライニングでは、ブレーキ鳴きの抑制と偏摩耗の抑制とを同時に達成することが可能である。