(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ポリ(フェニレンエーテル)が、クロロホルム中25℃で測定した固有粘度が0.3〜0.5dL/gであるポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)であり、
前記ゴム変性ポリスチレンが、その質量に対して、ポリスチレンを80〜96質量%と、ポリブタジエンを4〜20質量%とを含み、
前記ポリ(フェニレンエーテル)の質量%と前記ゴム変性ポリスチレンの質量%との合計が75〜89.6質量%であり、
前記有機リン酸エステルが、トリス((C1−C6−アルキル)フェニル)ホスフェート、レゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート)、ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)、トリフェニルホスフェート、t−ブチルフェニルジフェニルホスフェート、ビス(t−ブチルフェニル)リン酸フェニル、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される請求項1に記載の組成物。
前記ポリジオルガノシロキサンが、ポリジメチルシロキサン、トリメチルシリル末端ポリジメチルシロキサン、ビニルジメチルシリル末端ポリジメチルシロキサン、エポキシシクロヘキシルジメチルシリル末端ポリジメチルシロキサン、グリシドキシプロピルジメチルシリル末端ポリジメチルシロキサン、p−スチリルジメチルシリル末端ポリジメチルシロキサン、メタクリルオキシプロピルジメチルシリル末端ポリジメチルシロキサン、アクリルオキシジメチルシリル末端ポリジメチルシロキサン、アミノプロピルジメチルシリル末端ポリジメチルシロキサン、3−イソシアナトプロピルジメチルシリル末端ポリジメチルシロキサン、3−メルカプトプロピルジメチルシリル末端ポリジメチルシロキサン、3−ウレイドプロピルジメチルシリル末端ポリジメチルシロキサン、エチルジメチルシリル末端ポリジメチルシロキサン、プロピルジメチルシリル末端ポリジメチルシロキサン、ヘキシルジメチルシリル末端ポリジメチルシロキサン、オクチルジメチルシリル末端ポリジメチルシロキサン、デシルジメチルシリル末端ポリジメチルシロキサン、フェニルジメチルシリル末端ポリジメチルシロキサン、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される請求項1乃至2のいずれか1項に記載の組成物。
前記ポリ(フェニレンエーテル)が、クロロホルム中25℃で測定した固有粘度が0.34〜0.46dL/gであるポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)であり、
前記ゴム変性ポリスチレンが、その質量に対して、ポリスチレンを80〜96質量%と、ポリブタジエンを4〜20質量%とを含み、
前記有機リン酸エステルが、レゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート)、ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)、またはそれらの組み合わせを含み、
前記ポリジオルガノシロキサンが、23℃での動粘性率が1,000,000〜5,000,000cStであるポリジメチルシロキサンであり、
前記組成物が、
前記ポリ(フェニレンエーテル)を47〜67質量%と、
前記ゴム変性ポリスチレンを20〜30質量%と、
前記有機リン酸エステルを8〜18質量%と、
前記ポリジオルガノシロキサンを1〜2質量%とを含む請求項1に記載の組成物。
前記ポリ(フェニレンエーテル)が、クロロホルム中25℃で測定した固有粘度が0.34〜0.46dL/gであるポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)であり、
前記ゴム変性ポリスチレンが、その質量に対して、ポリスチレンを80〜96質量%と、ポリブタジエンを4〜20質量%とを含み、
前記有機リン酸エステルが、レゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート)、ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)、またはそれらの組み合わせを含み、
前記ポリジオルガノシロキサンが、23℃での動粘性率が1,000,000〜5,000,000cStであるポリジメチルシロキサンであり、
溶融混合する前のポリジオルガノシロキサンがゴム変性ポリスチレンでのマスターバッチの形態であり、
前記組成物が、
前記ポリ(フェニレンエーテル)を47〜67質量%と、
前記ゴム変性ポリスチレンを20〜30質量%と、
前記有機リン酸エステルを8〜18質量%と、
前記ポリジオルガノシロキサンを1〜2質量%とを含む請求項6または7に記載の組成物の形成方法。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明者は、抜き勾配が小さく、金型接触の面積が大きい物品の射出成形が、ポリ(フェニレンエーテル)と、ゴム変性ポリスチレンと、有機リン酸エステルを含む難燃剤と、高粘度のポリジオルガノシロキサンを含む離型剤とを特定量で含有するが、ポリオレフィンワックスを含まない成形材料によって促進されることを明らかにした。
【0008】
したがって、一実施形態は、組成物の合計質量に対して、ポリ(フェニレンエーテル)を15〜70質量%と、ゴム変性ポリスチレンを15〜70質量%と、有機リン酸エステルを含む難燃剤を10〜20質量%と、23℃での動粘性率が20,000〜5,000,000cStであるポリジオルガノシロキサンを含む離型剤を0.2〜4質量%と、を含み、ポリオレフィンワックスを含まない組成物である。
【0009】
本明細書で、「ポリオレフィンワックス」とは、数平均分子量が500〜10,000Daであるオレフィンホモポリマーおよびコポリマーを指す。一例として、ポリオレフィンワックスは、数平均分子量が500〜10,000Daであるポリエチレンであり得る。ポリオレフィンワックスの他の例は、倉沢らの特開2004−244537号公報に記載されている。下記の実施例で実証されるように、ポリオレフィンワックスを含む比較実施例は、押出成形物の安定なストランドを形成せず、それ故に、押出成形物のペレット化に不適切であったことが明らかとなった。
【0010】
該組成物は、ポリ(フェニレンエーテル)を含む。ポリ(フェニレンエーテル)としては、下式の繰り返し構造単位を含むものが挙げられる。
【化1】
式中、Z
1はそれぞれ独立にハロゲン、非置換または置換C
1−C
12ヒドロカルビル(但し、該ヒドロカルビル基は第三級ヒドロカルビルではない)、C
1−C
12ヒドロカルビルチオ、C
1−C
12ヒドロカルビルオキシ、または少なくとも2個の炭素原子がハロゲン原子と酸素原子を分離しているC
2−C
12ハロヒドロカルビルオキシであり、Z
2はそれぞれ独立に、水素、ハロゲン、非置換または置換C
1−C
12ヒドロカルビル(但し、該ヒドロカルビル基は第三級ヒドロカルビルではない)、C
1−C
12ヒドロカルビルチオ、C
1−C
12ヒドロカルビルオキシ、または少なくとも2個の炭素原子がハロゲン原子と酸素原子を分離しているC
2−C
12ハロヒドロカルビルオキシである。本明細書での「ヒドロカルビル」は、単独であるいは別の用語の接頭辞、接尾辞またはフラグメントとして使用されたとしても、炭素と水素だけを含有する残基を指す。該残基は、脂肪族または芳香族、直鎖、環式、二環式、分岐鎖、飽和あるいは不飽和であってもよい。それはまた、脂肪族、芳香族、直鎖、環式、二環式、分岐鎖、飽和および不飽和の炭化水素部分の組み合わせを含んでいてもよい。しかしながら、該ヒドロカルビル残基が置換と記載された場合、任意選択的に、置換基の残基の炭素員および水素員上にヘテロ原子を含有し得る。このように、置換と具体的に記載された場合、置換と具体的に記載された場合、該ヒドロカルビル残基は、カルボニル基、アミノ基またはヒドロキシル基等の1つ以上も含有し得、また、ヒドロカルビル残基の骨格内にヘテロ原子を含み得る。一例として、Z
1が、3,5−ジメチル−1,4−フェニル基と酸化重合触媒のジ−n−ブチルアミン成分との反応によって形成されたジ−n−ブチルアミノメチル基であり得る。
【0011】
ポリ(フェニレンエーテル)は、典型的にはヒドロキシ基に対してオルト位に位置した1個又は複数のアミノアルキル含有末端基を有する分子を含み得る。また、多くの場合、典型的にはテトラメチルジフェノキノン副生物が存在する2,6−ジメチルフェノール含有反応混合物から得られたテトラメチルジフェノキノン(TMDQ)末端基が存在する。ポリ(フェニレンエーテル)は、ホモポリマー、コポリマー、グラフトコポリマー、イオノマー、またはブロックコポリマー、並びにこれらの組み合わせの形態であり得る。
【0012】
一部の実施形態では、ポリ(フェニレンエーテル)はポリ(フェニレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマーを含む。本明細書において、「ポリ(フェニレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマー」は、少なくとも1つのポリ(フェニレンエーテル)ブロックと、少なくとも1つのポリシロキサンブロックとを含むブロックコポリマーを指す。
【0013】
一部の実施形態では、ポリ(フェニレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマーは酸化共重合方法によって調製される。この方法では、ポリ(フェニレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマーは、一価フェノールとヒドロキシアリール末端化ポリシロキサンとを含むモノマー混合物を酸化共重合するステップを含む方法の生成物である。一部の実施形態では、モノマー混合物は、一価フェノールとヒドロキシアリール末端ポリシロキサンとの合計質量に対して、一価フェノールを70〜99質量部と、ヒドロキシアリール末端ポリシロキサンを1〜30質量部と、を含む。ヒドロキシアリール二末端ポリシロキサンは、下記構造を有する複数の繰り返し単位を含むことができる。ヒドロキシアリール二末端ポリシロキサンは、下記構造を有する複数の繰り返し単位を含むことができる。
【化2】
式中、R
3はそれぞれ独立に、水素、C
1−C
12ヒドロカルビルまたはC
1−C
12ハロヒドロカルビルであり、2個の末端単位は下式の構造を有する。
【化3】
式中、Yは水素、C
1−C
12ヒドロカルビル、C
1−C
12ヒドロカルビルオキシ、またはハロゲンであり、R
4はそれぞれ独立に、水素、C
1−C
12ヒドロカルビルまたはC
1−C
12ハロヒドロカルビルである。非常に特定の実施形態では、R
3およびR
4のそれぞれがメチルであり、Yがメトキシである。
【0014】
一部の実施形態では、一価フェノールは、2,6−ジメチルフェノールを含み、ヒドロキシアリール末端ポリシロキサンは下式の構造を有する。
【化4】
式中、nは平均で5〜100、具体的には30〜60である。
【0015】
酸化共重合法は、目的生成物としてポリ(フェニレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマーを生成し、副生成物としてポリ(フェニレンエーテル)(ポリシロキサンブロックが組み込まれていない)を生成する。ポリ(フェニレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマーからポリ(フェニレンエーテル)を分離する必要はない。したがって、ポリ(フェニレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマーは、ポリ(フェニレンエーテル)とポリ(フェニレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマーとの両方を含む「反応生成物」として利用できる。イソプロパノールからの沈殿などの特定の分離手順によって、反応生成物が、残余のヒドロキシアリール末端ポリシロキサン開始材料を確実に本質的に含まないようにすることができる。すなわち、これらの分離手順は、反応生成物のポリシロキサン内容物が本質的にすべてポリ(フェニレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマーの形態であることを確実にする。ポリ(フェニレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマーを形成する詳細な方法は、Carrilloらの米国特許第8,017,697号明細書およびCarrilloらの米国特許出願公開第2012/0329961号明細書に記載されている。
【0016】
一部の実施形態では、ポリ(フェニレンエーテル)は、2,6−ジメチルフェノール、2,3,6−トリメチルフェノール、およびそれらの組み合わせからなる群より選択されるモノマーのホモポリマーまたはコポリマーを含む。一部の実施形態では、ポリ(フェニレンエーテル)は、ポリ(フェニレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマーを含む。これらの実施形態では、ポリ(フェニレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマーは、例えば、組成物全体に、0.05〜2質量%、具体的には0.1〜1質量%、より具体的には0.2〜0.8質量%のシロキサン基をもたらす。
【0017】
一部の実施形態では、ポリ(フェニレンエーテル)は、クロロホルム中25℃でUbbelohde粘度計によって測定した0.25〜1dL/gの固有粘度を有する。この範囲内で、ポリ(フェニレンエーテル)の固有粘度は、0.3〜0.5dL/g、より具体的には0.36〜0.5dL/g、より具体的には0.36〜0.44dL/gであり得る。特定の実施形態では、ポリ(フェニレンエーテル)は、固有粘度が0.3〜0.5dL/g、具体的には0.36〜0.5dL/g、より具体的には0.36〜0.44dL/gであるポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)である。
【0018】
該組成物は、その合計質量に対して、ポリ(フェニレンエーテル)を15〜70質量%の量で含む。この範囲内で、ポリ(フェニレンエーテル)量は、30〜65質量%、具体的には42〜62質量%、より具体的には47〜57質量%であり得る。
【0019】
ポリ(フェニレンエーテル)に加えて、該組成物は、ゴム変性ポリスチレンを含む。ゴム変性ポリスチレンはポリスチレンおよびポリブタジエンを含む。ゴム変性ポリスチレンは時に「耐衝撃性ポリスチレン」または「HIPS」と称される。一部の実施形態では、ゴム変性ポリスチレンは、その質量に対して、80〜96質量%のポリスチレン、具体的には88〜94質量%のポリスチレンと、4〜20質量%のポリブタジエン、具体的には6〜12質量%のポリブタジエンと、を含む。一部の実施形態では、ゴム変性ポリスチレンの有効ゲル含量は10〜35%である。適したゴム変性ポリスチレンは、例えば、SABIC Innovative Plastics社からHIPS3190として、Idemitsu SM社からHT640として市販されている。
【0020】
該組成物は、その合計質量に対して、ゴム変性ポリスチレンを15〜70質量%の量で含む。この範囲内で、ゴム変性ポリスチレンの量は、20〜50質量%、具体的には23〜43質量%、より具体的には28〜38質量%であり得る。
【0021】
一部の実施形態では、ポリ(フェニレンエーテル)質量%とゴム変性ポリスチレン質量%の合計は、組成物の合計質量に対して75〜89.6質量%である。
【0022】
ポリ(フェニレンエーテル)およびゴム変性ポリスチレンに加えて、該組成物は、有機リン酸エステルを含む難燃剤を含む。典型的な有機リン酸エステル難燃剤としては、フェニル基、置換されたフェニル基、またはフェニル基と置換されたフェニル基との組み合わせを含むホスフェートエステル、レゾルシノールをベースとしたビス−アリールホスフェートエステル(例えばレゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート)など)、並びにビスフェノールをベースとしたビス−アリールホスフェートエステル(例えば、ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)など)が挙げられる。一部の実施形態では、有機リン酸エステルは、トリス(アルキルフェニル)ホスフェート(例えば、CAS登録番号89492−23−9またはCAS登録番号78−33−1)、レゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート)(CAS登録番号57583−54−7)、ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)(CAS登録番号181028−79−5)、トリフェニルホスフェート(CAS登録番号115−86−6)、トリス(イソプロピルフェニル)ホスフェート(例えば、CAS登録番号68937−41−7)、t−ブチルフェニルジフェニルホスフェート(CAS登録番号56803−37−3)、ビス(t−ブチルフェニル)リン酸フェニル(CAS登録番号65652−41−7)、トリス(t−ブチルフェニル)ホスフェート(CAS登録番号78−33−1)、およびそれらの組み合わせから選択される。
【0023】
一部の実施形態では、有機リン酸エステルは、下式構造を有するビス−アリールホスフェートを含む。
【化5】
式中、Rはそれぞれ独立にC
1−C
12アルキレン基であり、R
9とR
10はそれぞれ独立にC
1−C
5アルキル基であり、R
5、R
6およびR
8は独立にC
1−C
12ヒドロカルビル基であり、R
7はそれぞれ独立にC
1−C
12ヒドロカルビル基であり、nは1〜25であり、s1およびs2は、独立に0、1または2の整数である。一部の実施形態ではOR
5、OR
6、OR
7およびOR
8は、独立にフェノール、モノアルキルフェノール、ジアルキルフェノールまたはトリアルキルフェノールから誘導される。
【0024】
当業者には容易に理解されるように、ビス−アリールホスフェートは、ビスフェノールから誘導される。典型的なビスフェノールとしては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)メタンおよび1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタンが挙げられる。一部の実施形態では、ビスフェノールはビスフェノールAを含む。
【0025】
一部の実施形態では、有機リン酸エステルは、トリス((C
1−C
6−アルキル)フェニル)ホスフェート、レゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート)、ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)、トリフェニルホスフェート、t−ブチルフェニルジフェニルホスフェート、ビス(t−ブチルフェニル)リン酸フェニル、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される。一部の実施形態では、有機リン酸エステルは、レゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート)、ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される。
【0026】
一部の実施形態では、難燃剤は、有機リン酸エステルからなる。他の実施形態では、難燃剤は1つ以上の追加の難燃剤をさらに含む。これらの実施形態では、追加の難燃剤は、例えば、金属ジアルキルホスフィナート(例えば、アルミニウムトリス(ジエチルホスフィナート)、窒素含有難燃剤(例えば、メラミンホスフェート、ピロリン酸メラミン、ポリリン酸メラミン、メラミンシアヌレート)、金属水酸化物(例えば、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化コバルト)、ホスファゼン(例えば、直鎖および環式ビス(フェノキシ)ホスファゼン)、それらの組み合わせであり得る。
【0027】
該組成物は、その合計質量に対して、難燃剤を10〜20質量%の量で含む。この範囲内で、難燃剤の量は8〜18質量%、具体的には9〜17質量%であり得る。
【0028】
ポリ(フェニレンエーテル)、ゴム変性ポリスチレンおよび難燃剤に加えて、組成物は、ポリジオルガノシロキサンを含む離型剤を含む。ポリジオルガノシロキサンの23℃での動粘性率は20,000〜5,000,000cStである。この範囲内で、動粘性率は100,000〜5,000,000cSt、具体的には200,000〜5,000,000cSt、より具体的には500,000〜5,000,000cSt、さらにより具体的には1,000,000〜5,000,000cStであり得る。動粘性率は、ISO2555:1989に準拠してブルックフィールド粘度計によって決定できる。例えば、動粘性率は、ISO2555:1989に準拠して、23℃でブルックフィールド型粘度計,モードl LVDV−I Prime(Brookfield Engineering Laboratories社)およびタイプLV−4スピンドルを用いて決定できる。
【0029】
一部の実施形態では、ポリジオルガノシロキサンは、下式の構造のジオルガノシロキサン繰り返し単位を含む。
【化6】
式中、R
1およびR
2はそれぞれ独立にC
1−C
12ヒドロカルビルである。一部の実施形態では、R
1およびR
2はそれぞれ独立にメチルまたはフェニルである。一部の実施形態では、R
1およびR
2はそれぞれメチルである。
【0030】
ポリジオルガノシロキサンの末端基は特に限定されない。例えば、末端基は反応性(例えば、ビニル、スチリル)または非反応性(例えば、メチル、フェニル)であり得る。一部の実施形態では、ポリジオルガノシロキサンは、ポリジメチルシロキサン、トリメチルシリル末端ポリジメチルシロキサン、ビニルジメチルシリル末端ポリジメチルシロキサン、エポキシシクロヘキシルジメチルシリル末端ポリジメチルシロキサン、グリシドキシプロピルジメチルシリル末端ポリジメチルシロキサン、p−スチリルジメチルシリル末端ポリジメチルシロキサン、メタクリルオキシプロピルジメチルシリル末端ポリジメチルシロキサン、アクリルオキシジメチルシリル末端ポリジメチルシロキサン、アミノプロピルジメチルシリル末端ポリジメチルシロキサン、3−イソシアナトプロピルジメチルシリル末端ポリジメチルシロキサン、3−メルカプトプロピルジメチルシリル末端ポリジメチルシロキサン、3−ウレイドプロピルジメチルシリル末端ポリジメチルシロキサン、エチルジメチルシリル末端ポリジメチルシロキサン、プロピルジメチルシリル末端ポリジメチルシロキサン、ヘキシルジメチルシリル末端ポリジメチルシロキサン、オクチルジメチルシリル末端ポリジメチルシロキサン、デシルジメチルシリル末端ポリジメチルシロキサン、フェニルジメチルシリル末端ポリジメチルシロキサン、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される。一部の実施形態では、ポリジオルガノシロキサンは、ポリジメチルシロキサンを含む。
【0031】
一部の実施形態では、離型剤は、ポリジオルガノシロキサンからなる。他の実施形態では、離型剤は、脂肪酸エステル、一部けん化脂肪酸エステル、数平均分子量が10,000Da超であるポリオレフィン、テトラフルオロエチレン、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される追加の離型剤をさらに含む。但し、離型剤はポリオレフィンワックスを含まない。
【0032】
該組成物は、その合計質量に対して離型剤を0.2〜4質量%の量で含む。この範囲内で、離型剤の量は、0.7〜3質量%、または0.25質量%超〜2.5質量%未満、または0.3〜2質量%、または1〜2質量%であり得る。
【0033】
該組成物は、任意選択的に、熱可塑性プラスチック分野で既知の添加剤を1つ以上さらに含む。例えば、該組成物は、任意選択的に、安定化剤、加工助剤、液滴抑制剤、UVブロッカー、染料、顔料、酸化防止剤、帯電防止剤、鉱油、金属不活性化剤、およびそれらの組み合わせから選択される添加剤をさらに含み得る。そのような添加剤は、存在する場合、組成物の合計質量に対して、5質量%以下、具体的には2質量%以下、より具体的には1質量%以下の合計量で典型的には使用される。
【0034】
該組成物は、任意選択的に、本明細書で必要と記載されたもの以外の成分を除くことができる。例えば、該組成物は、任意選択的に、ホモポリスチレン、アルケニル芳香族化合物と共役ジエンとのブロックコポリマー、アルケニル芳香族化合物と共役ジエンとの水素化ブロックコポリマー、ポリオレフィン、ポリアミド、およびポリエステルの1つ以上を除くことができる。一部の実施形態では、該組成物は、ポリ(フェニレンエーテル)、ゴム変性ポリスチレンおよびポリジオルガノシロキサン以外のいずれのポリマーも含まない。
【0035】
該組成物の特定の実施形態では、ポリ(フェニレンエーテル)が、クロロホルム中25℃で測定した固有粘度が0.34〜0.46dL/gであるポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)であり、ゴム変性ポリスチレンが、その質量に対して、ポリスチレンを80〜96質量%と、ポリブタジエンを4〜20質量%とを含み、有機リン酸エステルが、レゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート)、ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)、またはそれらの組み合わせを含み、ポリジオルガノシロキサンが、23℃での動粘性率が1,000,000〜5,000,000cStであるポリジメチルシロキサンであり、組成物が、ポリ(フェニレンエーテル)を47〜67質量%と、ゴム変性ポリスチレンを20〜30質量%と、有機リン酸エステルを8〜18質量%と、ポリジオルガノシロキサンを0.3〜2質量%とを含む。
【0036】
一実施形態は組成物の形成方法である。該方法は、組成物の合計質量に対して、ポリ(フェニレンエーテル)を15〜70質量%と、ゴム変性ポリスチレンを15〜70質量%と、有機リン酸エステルを含む難燃剤を10〜20質量%と、23℃での動粘性率が20,000〜5,000,000cStであるポリジオルガノシロキサンを含む離型剤を0.2〜4質量%と、を含む成分を溶融混合して、組成物を形成するステップを含み、溶融混合する前のポリジオルガノシロキサンが、ポリスチレン、ゴム変性ポリスチレン、シリカ、またはそれらの組み合わせにおけるマスターバッチの形態であり、マスターバッチが23℃、1気圧で固体であり、組成物がポリオレフィンワックスを含まない。
【0037】
該組成物は、組成物の成分を溶融混合または溶融混練することによって調製できる。溶融混合または溶融混練は、リボンブレンダー、HENSCHEL(商標)ミキサー、BANBURY(商標)ミキサー、ドラムタンブラー、単軸スクリュー押出機、二軸スクリュー押出機、多軸スクリュー押出機、コニーダーなどの通常の機器を用いて行うことができる。例えば、本組成物は、二軸スクリュー押出機内で、270〜300℃、具体的には280〜290℃の温度で、成分を溶融混合することによって調製できる。
【0038】
一部の実施形態では、ポリジオルガノシロキサンは、室温で固体である材料中のマスターバッチの形態で溶融混合装置に供される。そのような材料は、ホモポリスチレン、ゴム変性ポリスチレン、ポリプロピレン、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリアミド、ポリオキシメチレン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンコポリマー、ポリ(ブチレンテレフタレート)、熱可塑性ポリエステルエラストマー、シリカ、およびそれらの組み合わせを含む。これらの実施形態では、マスターバッチは、好ましくは、ポリジオルガノシロキサンを20〜80質量%と、他の材料を20〜80質量%と、を含む。特定の実施形態では、ポリジオルガノシロキサンは、ポリジオルガノシロキサンを25〜75質量%と、ゴム変性ポリスチレンを25〜75質量%とを含むマスターバッチの形態で、溶融混合装置に供される。
【0039】
組成物に関して説明したバリエーションのすべてが組成物の形成方法にも同様に適用される。
【0040】
該方法の特定の実施形態では、ポリ(フェニレンエーテル)が、クロロホルム中25℃で測定した固有粘度が0.34〜0.46dL/gであるポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)であり、ゴム変性ポリスチレンが、その質量に対して、ポリスチレンを80〜96質量%と、ポリブタジエンを4〜20質量%とを含み、有機リン酸エステルが、レゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート)、ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)、またはそれらの組み合わせを含み、ポリジオルガノシロキサンが、23℃での動粘性率が1,000,000〜5,000,000cStであるポリジメチルシロキサンであり、溶融混合する前のポリジオルガノシロキサンがゴム変性ポリスチレンでのマスターバッチの形態であり、組成物が、ポリ(フェニレンエーテル)を47〜67質量%と、ゴム変性ポリスチレンを20〜30質量%と、有機リン酸エステルを8〜18質量%と、ポリジオルガノシロキサンを0.3〜2質量%とを含む。
【0041】
別の実施形態は組成物を含む物品である。したがって、一実施形態は、組成物の合計質量に対して、ポリ(フェニレンエーテル)を15〜70質量%と、ゴム変性ポリスチレンを15〜70質量%と、有機リン酸エステルを含む難燃剤を10〜20質量%と、23℃での動粘性率が20,000〜5,000,000cStであるポリジオルガノシロキサンを含む離型剤を0.2〜4質量%と、を含み、かつポリオレフィンワックスを含まない組成物を含む物品である。
【0042】
該物品は、突出力の負荷を示す射出成形物品に特に有用である。一部の実施形態では、そのような物品は、少なくとも10mmの長さと0〜0.5°の抜き勾配を特徴とする円筒状または円錐状部分を備えると特徴付けることができる。そのような物品の例は、射出成形したリチウムバッテリーホルダーである。
図1は、そのようなバッテリーホルダー10の立面図であり、該バッテリーホルダー10は、ホルダー壁20と、後にリチウムバッテリーが充填される空隙30とを備える。抜き勾配θの概念は、リチウムバッテリーホルダーの
図1に示される平面AAでの断面図である
図2に図示されている。
図2では、バッテリーホルダー10は、上面22と底面24とをそれぞれ有するホルダー壁20を備える。バッテリーホルダー10は、角度θを特徴とする円錐形状で示される空隙30をさらに含み、角度θは、シリンダー壁32の輪郭と、上面22および底面24に対する垂線34で定められる。θが0°である場合、空隙は円筒状形状であるか、または有する。θが0°超〜0.5°以下である場合、空隙は、円錐の断面の形状を有する。いずれの場合(すなわち、θが0〜0.5°の値を有する場合)、上面22および底面24に対して垂直な方向に金型からバッテリーホルダー10が排出されるのは、バッテリーホルダー10と金型との接触の面積が大きく、接触領域が射出方向と平行またはほぼ平行であることによってより困難となる。
【0043】
したがって、該組成物は、少なくとも10mmの長さと0〜0.5°の抜き勾配を特徴とする円筒状または円錐状部分を含む射出成形物品に特に有用である。そのような物品としては、例えば、バックアップ電源用のバッテリーホルダーが挙げられる。
【0044】
物品の非常に特定の実施形態では、ポリ(フェニレンエーテル)がクロロホルム中25℃で測定した固有粘度が0.34〜0.46dL/gであるポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)であり、ゴム変性ポリスチレンが、その質量に対して、ポリスチレンを80〜96質量%と、ポリブタジエンを4〜20質量%とを含み、有機リン酸エステルが、レゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート)、ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)、またはそれらの組み合わせを含み、ポリジオルガノシロキサンが、23℃での動粘性率が1,000,000〜5,000,000cStであるポリジメチルシロキサンであり、組成物が、ポリ(フェニレンエーテル)を47〜67質量%と、ゴム変性ポリスチレンを20〜30質量%と、有機リン酸エステルを8〜18質量%と、ポリジオルガノシロキサンを0.3〜2質量%とを含む。
【0045】
下記の実施例で実証されるように、該組成物は、非常に有効な離型をもたらす。具体的には、該組成物の高粘度ポリジオルガノシロキサンが、ポリジオルガノシロキサン以外の離型剤およびより低い粘度のポリジオルガノシロキサンと比較して、より有効な離型剤である。
【0046】
本発明は、少なくとも以下の実施形態を含む。
【0047】
実施形態1:組成物の合計質量に対して、ポリ(フェニレンエーテル)を15〜70質量%と、ゴム変性ポリスチレンを15〜70質量%と、有機リン酸エステルを含む難燃剤を10〜20質量%と、ISO2555:1989に準拠して23℃で測定した23℃での動粘性率が20,000〜5,000,000cStであるポリジオルガノシロキサンを含む離型剤を0.2〜4質量%と、を含み、かつポリオレフィンワックスを含まない組成物。
【0048】
実施形態2:ポリ(フェニレンエーテル)が、クロロホルム中25℃で測定した固有粘度が0.3〜0.5dL/gであるポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)である実施形態1の組成物。
【0049】
実施形態3:ゴム変性ポリスチレンが、その質量に対して、ポリスチレンを80〜96質量%と、ポリブタジエンを4〜20質量%とを含む実施形態1または2の組成物。
【0050】
実施形態4:ポリ(フェニレンエーテル)の質量%とゴム変性ポリスチレンの質量%との合計が75〜89.6質量%である実施形態1〜3のいずれか1つの組成物。
【0051】
実施形態5:有機リン酸エステルが、トリス((C
1−C
6−アルキル)フェニル)ホスフェート、レゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート)、ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)、トリフェニルホスフェート、t−ブチルフェニルジフェニルホスフェート、ビス(t−ブチルフェニル)リン酸フェニル、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される実施形態1〜4のいずれか1つの組成物。
【0052】
実施形態6:有機リン酸エステルが、レゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート)、ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される実施形態1〜5のいずれか1つの組成物。
【0053】
実施形態7:難燃剤が有機リン酸エステルからなる実施形態1〜6のいずれか1つの組成物。
【0054】
実施形態8:ポリジオルガノシロキサンが下式の構造:
【化7】
(式中、R
1およびR
2はそれぞれ独立にC
1−C
12ヒドロカルビルである)を有するジオルガノシロキサン繰り返し単位を含む実施形態1〜7のいずれか1つの組成物。
【0055】
実施形態9:ポリジオルガノシロキサンが、ポリジメチルシロキサン、トリメチルシリル末端ポリジメチルシロキサン、ビニルジメチルシリル末端ポリジメチルシロキサン、エポキシシクロヘキシルジメチルシリル末端ポリジメチルシロキサン、グリシドキシプロピルジメチルシリル末端ポリジメチルシロキサン、p−スチリルジメチルシリル末端ポリジメチルシロキサン、メタクリルオキシプロピルジメチルシリル末端ポリジメチルシロキサン、アクリルオキシジメチルシリル末端ポリジメチルシロキサン、アミノプロピルジメチルシリル末端ポリジメチルシロキサン、3−イソシアナトプロピルジメチルシリル末端ポリジメチルシロキサン、3−メルカプトプロピルジメチルシリル末端ポリジメチルシロキサン、3−ウレイドプロピルジメチルシリル末端ポリジメチルシロキサン、エチルジメチルシリル末端ポリジメチルシロキサン、プロピルジメチルシリル末端ポリジメチルシロキサン、ヘキシルジメチルシリル末端ポリジメチルシロキサン、オクチルジメチルシリル末端ポリジメチルシロキサン、デシルジメチルシリル末端ポリジメチルシロキサン、フェニルジメチルシリル末端ポリジメチルシロキサン、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される実施形態1〜8のいずれか1つの組成物。
【0056】
実施形態10:ポリ(フェニレンエーテル)とゴム変性ポリスチレンと有機リン酸エステルとを含む連続相と、ポリジオルガノシロキサンを含む分散相とを含み、分散相が150〜500nmのドメイン長さを特徴とする分散相ドメインを含む実施形態1〜9のいずれか1つの組成物。
【0057】
実施形態11:ポリ(フェニレンエーテル)が、クロロホルム中25℃で測定した固有粘度が0.34〜0.46dL/gであるポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)であり、ゴム変性ポリスチレンが、その質量に対して、ポリスチレンを80〜96質量%と、ポリブタジエンを4〜20質量%とを含み、有機リン酸エステルが、レゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート)、ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)、またはそれらの組み合わせを含み、ポリジオルガノシロキサンが、23℃での動粘性率が1,000,000〜5,000,000cStであるポリジメチルシロキサンであり、組成物が、ポリ(フェニレンエーテル)を47〜67質量%と、ゴム変性ポリスチレンを20〜30質量%と、有機リン酸エステルを8〜18質量%と、ポリジオルガノシロキサンを0.3〜2質量%とを含む実施形態1の組成物。
【0058】
実施形態12:組成物の合計質量に対して、ポリ(フェニレンエーテル)を15〜70質量%と、ゴム変性ポリスチレンを15〜70質量%と、有機リン酸エステルを含む難燃剤を10〜20質量%と、23℃での動粘性率が20,000〜5,000,000cStであるポリジオルガノシロキサンを含む離型剤を0.2〜4質量%と、を含む成分を溶融混合して、組成物を形成するステップを含み、溶融混合する前のポリジオルガノシロキサンが、ポリスチレン、ゴム変性ポリスチレン、シリカ、またはそれらの組み合わせでのマスターバッチの形態であり、マスターバッチが23℃、1気圧で固体であり、組成物がポリオレフィンワックスを含まない組成物の形成方法。
【0059】
実施形態13:組成物が、ポリ(フェニレンエーテル)とゴム変性ポリスチレンと有機リン酸エステルとを含む連続相と、ポリジオルガノシロキサンを含む分散相とを含み、分散相が150〜500nmのドメイン長さを特徴とする分散相ドメインを含む実施形態12の方法。
【0060】
実施形態14:ポリ(フェニレンエーテル)が、クロロホルム中25℃で測定した固有粘度が0.34〜0.46dL/gであるポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)であり、ゴム変性ポリスチレンが、その質量に対して、ポリスチレンを80〜96質量%と、ポリブタジエンを4〜20質量%とを含み、有機リン酸エステルが、レゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート)、ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)、またはそれらの組み合わせを含み、ポリジオルガノシロキサンが、23℃での動粘性率が1,000,000〜5,000,000cStであるポリジメチルシロキサンであり、溶融混合する前のポリジオルガノシロキサンがゴム変性ポリスチレンでのマスターバッチの形態であり、組成物が、ポリ(フェニレンエーテル)を47〜67質量%と、ゴム変性ポリスチレンを20〜30質量%と、有機リン酸エステルを8〜18質量%と、ポリジオルガノシロキサンを0.3〜2質量%とを含む実施形態12または13の方法。
【0061】
実施形態15:組成物の合計質量に対して、ポリ(フェニレンエーテル)を15〜70質量%と、ゴム変性ポリスチレンを15〜70質量%と、有機リン酸エステルを含む難燃剤を10〜20質量%と、23℃での動粘性率が20,000〜5,000,000cStであるポリジオルガノシロキサンを含む離型剤を0.2〜4質量%と、を含み、組成物がポリオレフィンワックスを含まない組成物を含む物品。
【0062】
実施形態16:組成物が、ポリ(フェニレンエーテル)とゴム変性ポリスチレンと有機リン酸エステルとを含む連続相と、ポリジオルガノシロキサンを含む分散相とを含み、分散相が150〜500nmのドメイン長さを特徴とする分散相ドメインを含む実施形態15の物品。
【0063】
実施形態17:ポリ(フェニレンエーテル)がクロロホルム中25℃で測定した固有粘度が0.34〜0.46dL/gであるポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)であり、ゴム変性ポリスチレンが、その質量に対して、ポリスチレンを80〜96質量%と、ポリブタジエンを4〜20質量%とを含み、有機リン酸エステルが、レゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート)、ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)、またはそれらの組み合わせを含み、ポリジオルガノシロキサンが、23℃での動粘性率が1,000,000〜5,000,000cStであるポリジメチルシロキサンであり、組成物が、ポリ(フェニレンエーテル)を47〜67質量%と、ゴム変性ポリスチレンを20〜30質量%と、有機リン酸エステルを8〜18質量%と、ポリジオルガノシロキサンを0.3〜2質量%とを含む実施形態15または16の物品。
【0064】
実施形態18:少なくとも10mmの長さおよび0〜0.5°の抜き勾配を特徴とする円筒状または円錐状部分を含む実施形態15〜17のいずれか1つの物品。
【0065】
実施形態19:物品がバックアップ電源用のバッテリーホルダーである実施形態15〜18のいずれか1つの物品。
【0066】
本明細書において開示されるすべての範囲は端点を含み、端点はそれぞれ独立して組み合わせ可能である。本明細書において開示されるそれぞれの範囲は、開示された範囲内にある任意の点またはサブ範囲の開示を構成する。
【0067】
本発明を以下の非限定的な実施例によってさらに例証する。
【0068】
(実施例1〜14、比較例1〜13)
成形組成物を形成するのに使用した材料を表1に要約する。
【表1】
【0069】
組成物を表2に要約する。表2中、成分量は、組成物の合計質量に対する質量%で表される。実施例1〜10および比較実施例1〜13の組成物を、軸回転速度300rpmおよびスループット約100kg/hで運転する内径53mmのToshiba TEM50A二軸スクリュー押出機で配合することによって調製した。押出機は、供給口からダイスまで、150℃/270℃/280℃/280℃/280℃/280℃/280℃/280℃/280℃/280℃/280℃/290℃の温度の11の区域(9つの穴を有する)を利用した。実施例11並びに比較実施例14および15を調製するのに使用した手順は、ダイスが5つの穴を有し、ダイスとペレタイザーとの距離を、ペレット化前により大きいストランドの冷却を達するように増加させたこと以外は、同様であった。
【0070】
物理特性試験のための成形物品は、Toyo Machinery & Metal社 Toyo Paster Ti−80G射出成形機にてバレル温度230℃および成形温度50℃で射出成形した。
【0071】
離型試験用の成形物品は、Sumitomo Heavy Industry社のSE75DUZ射出成形機にて、バレル温度設定を270℃/280℃/290℃/290℃/280℃とし、成形温度80℃で射出成形した。8mm内径および14mm外径のシリンダーに沿ってそれぞれ高さが12mmである16個のボスを有する成形するツールを設計した。全体の成形物品は、長さ80mm×幅100mm×厚さ2.14mmであった。表2中、「突出力(kgf)」という特性は、25秒の冷却時間後に2%速度で成形ツールから成形した部品を押し出すのに必要な排出ピンのkg重の単位での測定した突出力である。表2中の突出力の値は、組成物ごとの10回の測定の平均である。「比較実施例1に対する相対的な突出力(%)」は、比較実施例1の突出力に対して正規化された所与の試料の突出力である。成形した部品の質量は、比較実施例1を参照として使用して、射出機のシリンダー内のクッションを調整することで、36gであるように調整した。
【0072】
表2中、組成の「PDOS含量,XRF(質量%)」という特徴は、組成物の合計質量に対してのポリジオルガノシロキサンの質量%であり、X線蛍光(XRF)で決定されるケイ素元素の質量%から計算した。XRFの測定値は、NORYL(商標)731樹脂中の0、2、4、6、8および10質量%のゼオライト(シリカ含量:20質量%)からなる試料で較正した。
【0073】
表2中、組成の「PDOS含量,calc.(質量%)」という特徴は、組成物の質量に対するポリジオルガノシロキサンの質量%であり、組成物および組成物中のポリジオルガノシロキサン含有成分の量に基づいて計算した質量%である。
【0074】
表2中、「ハンドリング(混合および供給能力)」という特性は、成分を混合し、ホッパーから押出機まで供給するように通常運転することによって決定した。成分を、60Lプラスチック袋内で、2つのブレードを備えたSUPER FLOATER(商標)SFC−50(Kawata Mfg社)を用いて混合した。ブレンドを、フィーダーによって押出機(内径53mmであるToshiba TEM50A二軸スクリュー押出機)に供給した。「O」の評価は、成分が円滑に量られ、適切に混合されたことに相当する。「X」の評価は、成分を容器から取り出すこと、量ること、他の成分と混合することが困難であることに相当する。最も高い粘度の純ポリジメチルシロキサン(PDMS8)は、予備押出混合中に、他の成分と良好に混合されなかった。代わりに、それは分離したままであり、ボール様の塊を形成した。
【0075】
「加工性(ストランドの垂れがない)」という特性は、押出成形物が押出機のダイス穴に存在することを視覚的に観察することによって決定した。「O」の評価は、ストランドの垂れがない安定なストランド形成に相当する。「X」の評価は、ストランドの垂れの発生および安定なストランド形成が存在しないことに相当する。
【0076】
「層間剥離,目視検査」という特性は、1.2mm厚さを有する成形した棒の表面を視覚的に調べることによって決定した。「O」の評価は、不均一さがない平らな表面に相当する。「X」の評価は、成形部品の表面に見られた深刻な層間剥離(不均一性)に相当する。
【0077】
「シリコーンドメイン長さ(nm)」という特性は、Zeiss Supra 40 VPでの走査透過電子顕微鏡法によって決定される、5つのポリジオルガノシロキサン分散相ドメインの平均の長さ(ナノメートルの単位で表される)である。試料を、クライオミクロトーム(cryomicrotome)によって調製し、OsO
4で15分間、RuO
4で45秒間染色した。
【0078】
「125℃での揮発性シリコーン(ppm)」という特性は、溶液の合計質量に対しての質量ppmの単位での、D3、D4およびD5として既知の環式シリコーンオリゴマーなどの揮発性シリコーン化合物の濃度である。該濃度は、質量分析の検出を備える熱脱着ガスクロマトグラフィー(TDS−GC/MS)によって決定した。ある量の試料(約20mg)を量り、125℃で10分間、スプリットレスモードで熱脱離した。吸収した溶質は、CIS4 PTV入口にて100℃でクライオフォーカスした。脱離後、PTV入口を、12℃/分で350℃まで温度を徐々に上昇させるようにプログラム化し、GC(キャリアは1mL/分のヘリウム)中に捕らえた溶質を移すように10分間保持した。スプリットモード(スプリット比125〜1)で注入を行った。ガスクロマトグラフィーカラムは、CP VF−1ms(30m×250μm×0.25μm)であり、40℃で加熱し(2分)、10℃/分で250℃まで徐々に上昇させ、その後、25℃/分で325℃まで徐々に上昇させた。
【0079】
表2の結果は、発明の実施例1〜14の組成物が、それぞれ、比較実施例1に対して離型が向上したことを示し、これは、67〜99%(または67〜85%、あまり好ましくない実施例7を除外する場合)の範囲の相対突出力によって証明される。あまり好ましくない実施例8を除いて、発明の実施例は、表面層間剥離を示さなかった。また、実施例9および10以外の発明の実施例は、良好なハンドリング特性を示した。すべての実施例は、揮発性シリコーンが低濃度であることを示した。比較的長いシリコーンドメイン長さの値が、それらを測定した発明の実施例で見られた。ドメイン長さの増加は、離型の向上と相関している。
【表2-1】
【表2-2】
【表2-3】
【表2-4】
【表2-5】