特許第6644887号(P6644887)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6644887
(24)【登録日】2020年1月10日
(45)【発行日】2020年2月12日
(54)【発明の名称】洗浄及び消毒用組成物
(51)【国際特許分類】
   C11D 3/39 20060101AFI20200130BHJP
   C11D 3/386 20060101ALI20200130BHJP
   C11D 1/72 20060101ALI20200130BHJP
   C11D 1/68 20060101ALI20200130BHJP
   C11D 1/75 20060101ALI20200130BHJP
   C11D 3/20 20060101ALI20200130BHJP
   C11D 17/08 20060101ALI20200130BHJP
   A01N 37/16 20060101ALI20200130BHJP
   A01N 25/02 20060101ALI20200130BHJP
   A01P 1/00 20060101ALI20200130BHJP
   A01P 3/00 20060101ALI20200130BHJP
   A61B 1/12 20060101ALI20200130BHJP
   A61L 2/18 20060101ALN20200130BHJP
   A61L 101/36 20060101ALN20200130BHJP
【FI】
   C11D3/39
   C11D3/386
   C11D1/72
   C11D1/68
   C11D1/75
   C11D3/20
   C11D17/08
   A01N37/16
   A01N25/02
   A01P1/00
   A01P3/00
   A61B1/12 510
   !A61L2/18 102
   A61L101:36
【請求項の数】57
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2018-524229(P2018-524229)
(86)(22)【出願日】2016年5月20日
(65)【公表番号】特表2019-504129(P2019-504129A)
(43)【公表日】2019年2月14日
(86)【国際出願番号】US2016033395
(87)【国際公開番号】WO2017082961
(87)【国際公開日】20170518
【審査請求日】2018年12月21日
(31)【優先権主張番号】14/936,775
(32)【優先日】2015年11月10日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】302044247
【氏名又は名称】アメリカン ステリライザー カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】フランシスコビッチ フィリップ ピー.
(72)【発明者】
【氏名】ローゼンハマー ドナルド ジー.
(72)【発明者】
【氏名】フィックス キャサリン エー.
【審査官】 山本 悦司
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2006/0030505(US,A1)
【文献】 欧州特許出願公開第2436265(EP,A2)
【文献】 特開2009−132692(JP,A)
【文献】 特開2009−155270(JP,A)
【文献】 特開2012−140483(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0096720(US,A1)
【文献】 米国特許第05698504(US,A)
【文献】 特表平09−510743(JP,A)
【文献】 国際公開第95/025784(WO,A1)
【文献】 特開2014−031513(JP,A)
【文献】 特表2007−507599(JP,A)
【文献】 特開2008−038079(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C11D 1/00−19/00
A01N 37/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
5重量%〜60重量%の過酢酸から構成される消毒媒体(A)と、
酵素洗浄剤、非酵素洗浄剤、腐食抑制剤及びキレート化剤から構成される補助媒体(B)とから構成され、
前記非酵素洗浄剤は、アルカノールアミン、アルコールエトキシレート、アルキルグルコシド、アルキレングリコール、アルキルジプロピオネート、アルキルジアルキルアミンオキシド、又はそれらの2つ以上の混合物から構成される、生きた微生物に汚染された基板を洗浄及び消毒するための二液型組成物。
【請求項2】
前記消毒媒体(A)はさらに、酢酸、過酸化水素、硫酸、又はそれらの2つ以上の混合物から構成される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記消毒媒体(A)は、15重量%〜45重量%の過酢酸から構成される、請求項1又は請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
補助媒体(B)はさらに、界面活性剤、緩衝剤、pH調整剤又はそれらの2つ以上の混合物から構成される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
前記アルカノールアミンは、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、又はそれらの2つ以上の混合物から構成される、請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
前記非酵素洗浄剤は、アルキルグルコシドから構成され、前記アルキルグルコシドは、デシルグルコシドから構成される、請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
前記非酵素洗浄剤は、アルキルグルコシドから構成され、前記アルキルグルコシドは、アルキルポリグルコシドから構成される、請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
前記非酵素洗浄剤は、アルキレングリコールから構成され、前記アルキレングリコールは、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、又はそれらの混合物から構成される、請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
前記非酵素洗浄剤は、アルキレングリコールから構成され、前記アルキレングリコールは、ポリエチレングリコールから構成される、請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
前記非酵素洗浄剤は、アルキルジプロピオネートから構成され、前記アルキルジプロピオネートは、オクチルジプロピオネートから構成される、請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
前記非酵素洗浄剤は、アルキルジアルキルアミンオキシドから構成され、前記アルキルジアルキルアミンオキシドは、オクチルジメチルアミンオキシドから構成される、請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項12】
前記補助媒体(B)は、0.1重量%〜25重量%の前記非酵素洗浄剤から構成される、請求項1〜11のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項13】
前記酵素洗浄剤は、リパーゼ、アミラーゼ、カルボヒドラーゼ、プロテアーゼ、又はそれらの2つ以上の混合物から構成される、請求項1〜12のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項14】
前記酵素洗浄剤は、タンパク質分解性酵素から構成される、請求項1〜12のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項15】
前記酵素洗浄剤は、スブチリシンから構成される、請求項1〜12のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項16】
前記酵素洗浄剤は、タンパク質加水分解酵素、タンパク質消化酵素、又はそれらの混合物から構成される、請求項1〜12のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項17】
前記補助媒体(B)は、25重量%が上限の前記酵素洗浄剤から構成される、請求項1〜16のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項18】
前記補助媒体(B)は、緩衝剤から構成され、前記緩衝剤は、アルカリ金属リン酸塩、アルカリ金属炭酸塩、又はそれらの混合物から構成される、請求項4に記載の組成物。
【請求項19】
前記補助媒体(B)は、15重量%が上限の前記緩衝剤から構成される、請求項4に記載の組成物。
【請求項20】
前記腐食抑制剤は、ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、ベンゾトリアゾールのナトリウム塩、トリルトリアゾールのナトリウム塩、アミノトリメチレンホスホン酸、オクチルベタイン、カルボン酸、エタノールアミン、ホスホノブタントリカルボン酸、又はそれらの2つ以上の混合物から構成される、請求項1〜19のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項21】
前記補助媒体(B)は、1重量%〜10重量%の前記腐食抑制剤から構成される、請求項1〜20のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項22】
前記キレート化剤は、エチレンジアミン四酢酸、ヒドロキシエチリデンジホスホン酸、エチレンジアミン四酢酸のナトリウム塩、ヒドロキシエチリデンジホスホン酸のナトリウム塩、アミノトリメチレンホスホン酸、ポリカルボン酸、イミノジコハク酸四ナトリウム、カルボキシメチルイヌリン、ホウ酸ナトリウム、メチルグリシン二酢酸、又はそれらの2つ以上の混合物から構成される、請求項1〜21のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項23】
前記キレート化剤は、クエン酸から構成される、請求項1〜21のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項24】
前記補助媒体(B)は、0.1重量%〜70重量%の前記キレート化剤から構成される、請求項1〜23のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項25】
前記補助媒体(B)は、緩衝剤から構成され、前記緩衝剤は、リン酸一ナトリウム、リン酸二ナトリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸一カリウム、リン酸二カリウム、リン酸三カリウム、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、又はそれらの2つ以上の混合物から構成される、請求項4に記載の組成物。
【請求項26】
前記補助媒体(B)は、1重量%〜15重量%の前記緩衝剤から構成される、請求項4に記載の組成物。
【請求項27】
前記補助媒体(B)は、界面活性剤から構成され、前記界面活性剤は、界面活性洗浄剤、湿潤剤、乳化剤、発泡剤及び/又は分散剤から構成される、請求項4に記載の組成物。
【請求項28】
前記補助媒体(B)は、界面活性剤から構成され、前記界面活性剤は、少なくとも1つの疎水基及び少なくとも1つの親水基を含む合成物から構成される、請求項4に記載の組成物。
【請求項29】
前記補助媒体(B)は、界面活性剤から構成され、前記界面活性剤は、不水溶性成分及び水溶性成分から構成される、請求項4に記載の組成物。
【請求項30】
前記補助媒体(B)は、界面活性剤から構成され、前記界面活性剤は、陰イオンの、陽イオンの、両性イオンの及び/又は非イオンの化合物から構成される、請求項4に記載の組成物。
【請求項31】
前記補助媒体(B)は、界面活性剤から構成され、前記界面活性剤は、1つ以上のポリアルキレングリコールエーテル、アルキルアリールスルホン酸塩、アミンオキシド、ポリ(オキシアルキレン)化合物、アルキレンオキシド繰り返し単位からなるブロックコポリマー、カルボキシル化アルコールエトキシレート、エトキシル化アルキルフェノール、エトキシル化アミン、エトキシル化アミド、オキシラン、エトキシル化脂肪エステル、エトキシル化油、脂肪エステル、脂肪酸アミド、グリセロールエステル、グリコールエステル、ソルビタンエステル、イミダゾリン及び/又はその誘導体、レシチン及び/又はその誘導体、リグニン及び/又はその誘導体、グリセリド及び/又はその誘導体、オレフィンスルホン酸塩、リン酸エステル及び/又はその誘導体、プロポキシル化及び/又はエトキシル化脂肪酸及び/又はアルコール、アルキルフェノール、ソルビタン及び/又はその誘導体、スクロースエステル及び/又はその誘導体、硫酸塩及び/又はアルコール及び/又は脂肪エステルのエトキシル化アルコール、ドデシル及び/又はトリデシルベンゼンのスルホン酸塩、縮合ナフタレン、スルホスクシネート及び/又はその誘導体、トリデシルベンゼンスルホン酸及び/又はドデシルベンゼンスルホン酸、オクチルベタイン、又はそれらの2つ以上の混合物から構成される、請求項4に記載の組成物。
【請求項32】
前記補助媒体(B)における前記界面活性剤の濃度は、25重量%が上限である、請求項4に記載の組成物。
【請求項33】
前記補助媒体(B)はさらに、1つ以上のスケール抑制剤、安定剤、防腐剤、解凝剤、懸濁剤、金属不動態化剤、増粘剤、等張化剤、又はそれらの2つ以上の混合物から構成される、請求項1〜32のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項34】
前記消毒媒体(A)のpHは、1〜8の範囲である、請求項1〜33のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項35】
前記補助媒体(B)のpHは、6〜14の範囲である、請求項1〜34のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項36】
前記補助媒体(B)の前記消毒媒体(A)に対する体積比は、5:1〜1:5である、請求項1〜35のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項37】
前記消毒媒体(A)はさらに、希釈水から構成され、前記希釈水の体積部が消毒媒体(A)の体積部に対して、1000:1が上限である、請求項1〜36のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項38】
前記補助媒体(B)はさらに、希釈水から構成され、前記希釈水の体積部が補助媒体(B)の体積部に対して、1000:1までが上限である、請求項1〜37のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項39】
請求項1〜38のいずれか1項に記載の前記二液型組成物を用いる、基板を洗浄及び消毒するための方法であって、
前記基板を洗浄及び消毒するために前記基板を前記補助媒体(B)及び前記消毒媒体(A)に接触させる工程を備える方法。
【請求項40】
(1)前記基板を洗浄するために前記基板を前記補助媒体(B)に接触させる工程と、
(2)前記基板を消毒するために前記基板を前記消毒媒体(A)に接触させる工程と、を備える、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
(1)前記基板を洗浄するために前記基板を前記補助媒体(B)及び前記消毒媒体(A)に接触させる工程と、
(2)前記基板を消毒するために前記基板を前記消毒媒体(A)に接触させる工程と、を備える、請求項39に記載の方法。
【請求項42】
(1)前記基板を洗浄するために前記基板を前記補助媒体(B)に接触させる工程と、
(2)前記基板を消毒するために前記基板を前記消毒媒体(A)及び前記補助媒体(B)に接触させる工程と、を備える、請求項39に記載の方法。
【請求項43】
(1)前記基板を洗浄するために前記基板を前記補助媒体(B)及び前記消毒媒体(A)に接触させる工程と、
(2)前記基板を消毒するために前記基板を前記消毒媒体(A)及び前記補助媒体(B)に接触させる工程と、を備える、請求項39に記載の方法。
【請求項44】
工程(1)の次であり、且つ工程(2)に先立つ、前記基板をすすぐ工程を用いる、請求項40〜43のいずれか1項に記載の方法。
【請求項45】
前記基板は、真鍮、銅、アルミニウム、ステンレス鋼、カーボン鋼、プラスティック、ガラス、又はそれらの2つ以上の組合せからなる材料で作られる、請求項39〜44のいずれか1項に記載の方法。
【請求項46】
前記基板は、医療用、歯科用、薬剤用、獣医用又は遺体用の器具又は機器を含む、請求項39〜44のいずれか1項に記載の方法。
【請求項47】
前記基板は、内視鏡を含む、請求項39〜44のいずれか1項に記載の方法。
【請求項48】
前記内視鏡は、硬性内視鏡を含む、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記内視鏡は、軟性内視鏡を含む、請求項47に記載の方法。
【請求項50】
15℃〜60℃の範囲の温度で実施される、請求項39〜49のいずれか1項に記載の方法。
【請求項51】
0.5分〜240分の範囲の時間で実施される、請求項39〜49のいずれか1項に記載の方法。
【請求項52】
工程(1)は、15℃〜60℃の範囲の温度で実施される、請求項40〜43のいずれか1項に記載の方法。
【請求項53】
工程(1)に必要とされる時間は、0.5分〜240分の範囲である、請求項40〜43のいずれか1項に記載の方法。
【請求項54】
工程(2)は、15℃〜60℃の範囲の温度で実施される、請求項40〜43のいずれか1項に記載の方法。
【請求項55】
工程(2)に必要とされる時間は、0.5分〜240分の範囲である、請求項40〜43のいずれか1項に記載の方法。
【請求項56】
前記基板が洗浄及び消毒される、請求項39〜55のいずれか1項に記載の方法。
【請求項57】
前記基板が洗浄及び殺菌される、請求項39〜55のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[発明の分野]
本発明は、基板の洗浄及び消毒に有用である組成物に関し、より具体的には、医療機器(例えば内視鏡)というような基板を洗浄及び消毒するための二液型組成物に関する。
[背景技術]
例えば内視鏡というような医療機器は、血液や他の体液にさらされるので、使用毎に洗浄及び消毒が必要となる。この分野における課題は、蒸気殺菌の高温に耐えられない内視鏡のような機器を洗浄及び消毒するために用いることができる洗浄及び消毒システムの必要性に関連する。本発明はその課題の解決策を提供する。
欧州特許出願公開第2436265号は、洗浄及び消毒用であって、敏感な材料、とりわけ特別な織物の物理的性質を守るために、消毒成分(過酢酸、過酸化水素及び酢酸)を洗浄成分(非イオンの界面活性剤、陰イオンの界面活性剤、界面活性洗浄剤及びキレート化剤)と併せて使用することを開示している。 国際特許出願公開第2012/028196号は、プリオンというような従来にない感染性因子によって汚染されている表面を洗浄及び/又は消毒するために、化学式(I)R−NH−(CH)−NHにおいて式中のRは6〜18個の炭素原子を含む直鎖アルキル基であり、化学式(I)に相当するアルキルプロピレンレンジアミンと、化学式(II)R−O−CO−(CH)−CH(NH)−COOHにおいて式中のRは水素又は1〜4個の炭素原子を含むアルキル基であり、化学式(II)に相当する成分とを反応させることによって得られる活性物質の使用を開示している。
[発明の概要]
本発明は、生きた微生物に汚染された基板を洗浄及び消毒するための二液型組成物に関し、過酢酸から構成される消毒媒体(A)と、酵素洗浄剤、非酵素洗浄剤、腐食抑制剤及びキレート化剤から構成される補助媒体(B)とから構成され、非酵素洗浄剤は、アルコールエトキシレート、アルキルグルコシド、アルキレングリコール、アルキルジプロピオネート、アルキルジアルキルアミンオキシド、又はそれらの2つ以上の混合物から構成される。消毒媒体(A)は、部分(A)と称されてもよい。また、補助媒体(B)は、部分(B)と称されてもよい。補助媒体(B)は、洗浄剤及びビルダー剤媒体として用いることができるので、洗浄剤/ビルダー剤媒体と称されてもよい。補助媒体はさらに、酵素洗浄剤から構成されてもよい。補助媒体(B)はさらに、界面活性剤、緩衝剤、pH調整剤、又はそれらの2つ以上の混合物から構成されてもよい。消毒媒体(A)及び補助媒体(B)は、水で希釈されてもよい。
【0002】
本発明は、上記二液型組成物を用いる、基板を洗浄及び消毒するための過程に関する。この過程は、蒸気殺菌の高温に耐えられない、内視鏡を含む医療機器といった基板を、洗浄及び消毒することに適しているという点で有利である。
【0003】
実施形態において、本発明は、上記二液型組成物を用いる、基板を洗浄及び消毒するための1工程を有する過程に関し、その過程は、基板を洗浄及び消毒するために、基板を補助媒体(B)及び消毒媒体(A)に接触させる工程を備える。過程は、15℃〜60℃、又は18℃〜60℃、又は18℃〜56℃、又は18℃〜50℃、又は18℃〜40℃、又は18℃〜30℃、又は18℃〜24℃の範囲の温度で実施されてもよい。接触時間は、0.5分〜240分、又は2分〜60分の範囲であってもよい。
【0004】
実施形態において、本発明は、上記二液型組成物を用いる、基板を洗浄及び消毒するための2工程を有する過程に関し、その過程は、(1)基板を洗浄するために基板を補助媒体(B)に接触させる工程と、(2)基板を消毒するために基板を消毒媒体(A)に接触させる工程とを備える。実施例において、2工程を有する過程は、(1)基板を洗浄するために基板を補助媒体(B)及び消毒媒体(A)に接触させる工程と、(2)基板を消毒するために基板を消毒媒体(A)に接触させる工程とを備えてもよい。実施形態において、2工程を有する過程は、(1)基板を洗浄するために基板を補助媒体(B)に接触させる工程と、(2)基板を消毒するために基板を消毒媒体(A)及び補助媒体(B)に接触させる工程とを備えてもよい。実施形態において2工程を有する過程は、(1)基板を洗浄するために基板を補助媒体(B)及び消毒(A)に接触させる工程と、(2)基板を消毒するために基板を消毒媒体(A)及び補助媒体(B)に接触させる工程とを備えてもよい。その過程は、任意で、工程(1)の次であり、且つ工程(2)に先立つ、基板をすすぐ工程を含んでもよい。工程(1)及び工程(2)の各々は、15℃〜60℃、又は18℃〜60℃、又は18℃〜56℃、又は18℃〜50℃、又は18℃〜40℃、又は18℃〜30℃、又は18℃〜24℃の範囲の温度で実施されてもよい。工程(1)及び工程(2)の各々の接触時間は、0.5分〜240分、又は2分〜60分の範囲であってもよい。
【0005】
実施形態において、上記過程は、胞子、臨床的に深刻であるバクテリア、病原性ウイルスを含む生きた微生物の、4又は5の対数的減少(高いレベルの消毒(HLD:Highlevel disinfection)用)、又は6の対数的減少(殺菌用)を提供するために用いられてもよい。実施形態において、過程は、基板を洗浄及び消毒するために用いられてもよい。実施形態において、過程は、基板を洗浄及び殺菌するために用いられてもよい。
【0006】
実施形態において、上記過程は、患者の汚物(及び又は汚染微生物量において、より悪いケースであるとFDAによって一般的に容認される模擬汚物)の汚染微生物量を、平方センチメートルあたり約6マイクログラム未満のレベルに低下させるために用いられることができる。
【0007】
実施形態において、上記過程は、処理中の基板(例えば、内視鏡)の構造の材質に対する悪影響を最小限にしつつ、同時に、洗浄と消毒という別個である工程を実施するために用いることができる。
【0008】
実施形態において、上記過程は、周囲環境条件(18℃〜24℃)で実施されてもよいので、再使用処理機において、温度制御を伴って、又は温度制御なしに用いられることが可能となる。
【0009】
実施形態において、上記過程は、周囲〜60℃までの温度において用いることができるので、周囲温度から上限60℃までの範囲の温度制御を有する再使用処理機において、用いられることが可能となる。
【0010】
実施形態において、上記過程は、多様な既存の「オープン(非制限的)」な自動化内視鏡再使用処理機において、その内視鏡再使用処理機の適合を最小限に抑えて用いられることができる。
【0011】
実施形態において、上記過程では、室温(18℃〜24℃)で用いられる場合、再使用処理サイクルの曝露段階における濃度に関して、消毒媒体(A)を安定させておくことができる。
【0012】
実施形態において、上記過程では、室温(18℃〜24℃)で用いられる場合、複数回の再使用処理サイクルにおよぶ時間の経過における濃度に関して、消毒媒体(A)を安定させておくことができる。
【0013】
実施形態において、補助媒体(B)には、処理中である基板(例えば内視鏡)のすすぎを促進するためにすすぎを助ける成分が用いられてもよい。
実施形態において補助媒体(B)には、泡立ちを減らすために消泡成分が用いられてもよい。
【0014】
上記二液型組成物は、広範囲の既存の自動化内視鏡再使用処理機(AER)において用いることができる。それらには、オープン(非制限的)システムの製造者や専用の化学物質を使う専用クローズ(制限的)システムの製造者という多数の製造者によって製造されるAERが含まれてもよい。
【0015】
上記過程は、静かに浸け置くという応用例(機械の介在がない)において用いられてもよい。
付属の図面では、同一参照記号によって、同一部品及び同一特徴が示される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明に係る洗浄及び消毒過程において使用される装置の概略図である。
図2図1に示される装置を使用するための操作工程及び例としての過程条件を示すフロー図である。
図3A】過酢酸の安定性が、1消毒サイクルに必要とされる時間の経過で、2つの異なるビルダー剤の製剤及び本発明の補助媒体(B)の有無の関数として示されるグラフである。
図3B】過酢酸の安定性が、1消毒サイクルに必要とされる時間の経過で、2つの異なるビルダー剤の製剤及び本発明の補助媒体(B)の有無の関数として示されるグラフである。
図3C】過酢酸の安定性が、1消毒サイクルに必要とされる時間の経過で、2つの異なるビルダー剤の製剤及び本発明の補助媒体(B)の有無の関数として示されるグラフである。
図3D】過酢酸の安定性が、1消毒サイクルに必要とされる時間の経過で、2つの異なるビルダー剤の製剤及び本発明の補助媒体(B)の有無の関数として示されるグラフである。
図4A】過酢酸の安定性が、1消毒サイクルに必要とされる時間の経過で、消毒用溶液の異なる温度において、2つの異なるビルダー剤製剤及び本発明の補助媒体(B)の有無の関数として示されるグラフである。
図4B】過酢酸の安定性が、1消毒サイクルに必要とされる時間の経過で、消毒用溶液の異なる温度において、2つの異なるビルダー剤製剤及び本発明の補助媒体(B)の有無の関数として示されるグラフである。
図4C】過酢酸の安定性が、1消毒サイクルに必要とされる時間の経過で、消毒用溶液の異なる温度において、2つの異なるビルダー剤製剤及び本発明の補助媒体(B)の有無の関数として示されるグラフである。
図4D】過酢酸の安定性が、1消毒サイクルに必要とされる時間の経過で、消毒用溶液の異なる温度において、2つの異なるビルダー剤製剤及び本発明の補助媒体(B)の有無の関数として示されるグラフである。
図5A】過酢酸の安定性が、開始時と、複数回の消毒サイクルに必要とされる時間の経過との両方で、使用される2つの異なるビルダー剤及び本発明の補助媒体(B)の有無の関数として示されるグラフである。
図5B】過酢酸の安定性が、開始時と、複数回の消毒サイクルに必要とされる時間の経過との両方で、使用される2つの異なるビルダー剤及び本発明の補助媒体(B)の有無の関数として示されるグラフである。
図5C】過酢酸の安定性が、開始時と、複数回の消毒サイクルに必要とされる時間の経過との両方で、使用される2つの異なるビルダー剤及び本発明の補助媒体(B)の有無の関数として示されるグラフである。
図5D】過酢酸の安定性が、開始時と、複数回の消毒サイクルに必要とされる時間の経過との両方で、使用される2つの異なるビルダー剤及び本発明の補助媒体(B)の有無の関数として示されるグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[発明の詳細な説明]
本明細書及び特許請求の範囲に開示される全ての範囲及び比率の制限は、任意の様式で組合せることができる。別段具体的に示されなければ、「1つの、ある(a)」、「1つの、ある(an)」、及び/又は「当該、この、その(the)」への言及は、1つ以上を含むことができ、そして単数形の項目への言及はまた、複数形の項目への言及を含むことができると理解されるべきである。
【0018】
「及び/又は」という表現は、そのように結合される要素の「いずれか一方又は両方」、すなわち場合によっては、要素は結合的に存在し、他の場合は、要素は分離的に存在すると意味するように理解されるべきである。反対のことが明確に示されていない限り、「及び/又は」の節によって限定して明らかにされる要素以外の要素が、限定して明らかにされるそれらの要素に関係していようといまいと、任意選択的に存在してもよい。したがって、非限定的な例として、「から構成される」などの非限定的言語と組み合わせて使用されるとき、「X及び/又はY」への言及は1つの実施形態ではXだけを指し(Y以外の要素を任意選択的に含む)、別の実施形態ではYだけを指し(X以外の要素を任意選択的に含む)、さらに別の実施形態ではXとYの両方(他の要素を任意選択的に含む)を意味することができる。
【0019】
「又は」は、上記「及び/又は」と同じ意味を持つと理解されるべきである。例えば、リストの項目を分けるとき、「又は」又は「及び/又は」は、包含されるものとして解釈されるべきであり、すなわち、少なくとも1つを含むが、多くの要素又は要素のリストから1つより多くも含む、及び任意でリストに載ってない追加の項目も含むとして解釈されるべきである。対照的に、「1つだけ」、「厳密に1つ」という明らかに指示された用語だけは、多くの要素又は要素のリストから正確に1つの要素を含むことを意味してもよい。一般的に、本明細書で用いられる用語の「又は」は、「何れか」、「1つ」、「1つだけ」又は「厳密に1つ」のような排他性の用語が先に来る場合のみ、排他的な選択肢(すなわち「一方又は他方であって両方ではない」)を示すものとして解釈されるべきである。
【0020】
1つ以上の要素のリストに関連する「少なくとも1つ」という表現は、要素のリスト内の要素の任意の1つ以上から選択された少なくとも1つの要素を意味し、要素のリスト内に具体的に列挙されたありとあらゆる要素の少なくとも1つを必ずしも含むものではなく、要素のリストにおける要素の任意の組み合わせを排除するものではないと理解されるべきである。この定義は、具体的に特定されたこれらの要素に関係していようといまいと、「少なくとも1つ」という表現が指す要素のリスト内において、具体的に特定された要素以外の要素が任意で存在することも可能にする。従って、非限定的な例として、「X及びYの少なくとも1つ」(又は、同等に「X又はYの少なくとも1つ」、又は同等に「X及び/又はYの少なくとも1つ」)は、1つの実施形態では、Yは存在しない(及び任意でY以外の要素を含む)状態で、少なくとも1つ、任意で1つ以上のXを意味し、他の形態では、Xは存在しない(及び任意でX以外の要素を含む)状態で、少なくとも1つ、任意で1つ以上のYを意味し、更に他の実施の形態では、少なくとも1つ、任意で1つ以上のX、及び少なくとも1つ、任意で1つ以上のY(任意で他の要素を含む)を意味することができる。
【0021】
「備える(comprising)」、「含む(including)」、「持つ(carrying)」、「有する(having)」、「含む(containing)」、「伴う(involving)」、「保持する(holding)」のような移行句又は表現は非制限的であり、すなわち、含むが限定されるものではないことを意味すると理解されるべきである。
【0022】
微生物を「死滅させる」(又は「死滅」)という用語は、微生物が栄養成長状態に戻ることを不能にすることを意味する。実施形態において、微生物を死滅させるという用語は、微生物を増殖、代謝及び/又は成長できない状態にさせることを意味する。
【0023】
「対数的減少」という用語は、数学用語であり、本発明の組成物を微生物に接触させることにより死滅させる、生きた微生物の数を示す。「4の対数的減少」は生きた微生物の数が10,000倍少ないことを意味する。「5の対数的減少」は生きた微生物の数が100,000倍少ないことを意味する。「6の対数的減少」は生きた微生物の数が1,000,000倍少ないことを意味する。
【0024】
「酵素洗浄剤」という用語は、有機体によって製造される洗浄剤を意味する。酵素洗浄剤はリパーゼ、アミラーゼ、カルボヒドラーゼ又はプロテアーゼ酵素洗浄剤であってもよい。
【0025】
「非酵素洗浄剤」という用語は、酵素洗浄剤ではない洗浄剤を意味する。
本明細書で提示される二液型組成物は、基板を洗浄し、基板上において栄養成長や感染の状態に戻ることができる又はそれを再開することができる、又は実施例においては、増殖、代謝及び/又は成長できる、好ましくない微生物の数の、少なくとも4の対数的減少、又は少なくとも5の対数的減少、又は6の対数的減少を達成するために用いられてもよい。それらの微生物には、胞子、臨床的に深刻であるバクテリア、病原性ウイルス、それらの2つ以上の混合が含まれる。6の対数的減少が達成される場合は、その過程は殺菌過程としてもよい。6の対数的減少は、6の対数的殺菌としてもよい。4の対数的減少又は5の対数的減少が達成される場合、過程は、厳密さでは殺菌過程より劣るとみなされ得るが、それでも様々な消毒の応用例において有用である。本明細書では、「消毒」(及び「消毒する」)という用語は、例えば高いレベルの消毒(HLD)というような消毒及び殺菌を意味するために使われる。それらには、好ましくない生きた微生物の数における少なくとも4の対数的減少、又は少なくとも5の対数的減少、又は少なくとも6の対数的減少が含まれる。
【0026】
消毒媒体(A)及び補助媒体(B)は、濃縮物として、販売及び任意で使用されてもよい。濃縮物は、使用に先立って又は使用の際に、水で希釈されてもよい。希釈用の水は、任意の供給源からとってもよい。希釈用の水は、脱イオン水、水道水、処理水道水、それらの混合で構成されてもよい。希釈用の水は、軟水から構成されてもよい。本明細書では「軟水」という用語は、硬度が1リットルあたり0〜60ミリグラム(炭酸カルシウム値mg/L)の範囲である水を示す。
【0027】
消毒媒体(A)は、洗浄及び消毒中の基板の消毒又は殺菌を実施するために用いられてもよい。消毒媒体(A)は、水と過酢酸から構成されてもよい。消毒媒体(A)における過酢酸の濃度は、5重量%〜60重量%、又は15重量%〜45重量%、又は30重量%〜40重量%の範囲、又は35.5重量%でもよい。消毒媒体(A)はさらに、酢酸、過酸化水素、硫酸又はそれらの2つ以上の混合物等の、1つ以上の添加成分を任意で含んでもよい。消毒媒体(A)における酢酸の濃度は、62重量%が上限、又は34重量%から62%、又は40重量%から55重量%の範囲でもよい。消毒媒体(A)において過酸化水素の濃度は、60重量%が上限、又は5重量%から60重量%、又は6.5重量%から32重量%の範囲でもよい。消毒媒体(A)における硫酸の濃度は、2重量%が上限、又は0.5重量%から2重量%、又は0.75重量%から1.5重量%の範囲でもよい。消毒媒体(A)における水の濃度は、60重量%が上限、又は5重量%から60重量%、又は10重量%から50重量%の範囲でもよい。消毒媒体(A)として用いることができる市販の入手可能な過酢酸溶液は、ペルアセティックアシッド(Peracetic Acid)35%の商品名でエフエムシーコーポレーション社(FMC Corporation)から入手可能である。その溶液は、35.5重量%の過酢酸、40重量%の酢酸、6.5重量%の過酸化水素、1重量%の硫酸及び17重量%の水を含んでいる。上記の濃度の組成物は、濃縮物として販売される際、及び任意で本発明の洗浄及び消毒過程において使用される際有用である。当該濃度は、使用に先立って又は使用の際に希釈されてもよい。
【0028】
補助媒体(B)は、基板を洗浄するために用いられてもよい。内視鏡のような医療機器の場合、補助媒体(B)は、残留異物又は血液、排泄物、呼吸器分泌物の汚物の除去に関与してもよい。補助媒体(B)は、水、非酵素洗浄剤、腐食抑制剤及びキレート化剤から構成されてもよい。補助媒体(B)はさらに、酵素洗浄剤を含んでもよい。補助剤(B)はさらに、緩衝剤、界面活性剤、pH調整剤又はそれらの2つ以上の混合物を含んでもよい。他の添加成分が補助媒体(B)にさらに含まれてもよい。補助媒体(B)は洗浄/ビルダー剤製剤と称されてもよい。本明細書において「ビルダー剤」という用語は、洗浄用組成物又は消毒用組成物に含まれてもよい非作用構成成分の組み合わせを意味するよう用いられる。非作用構成成分は、他の目的で使用されるが、洗浄又は消毒という結果を直接的にもたらすことがないため、非作用であるといえるであろう。他の目的には、pH調整、水の軟化(キレート化)、腐食抑制が含まれる。
【0029】
非酵素洗浄剤は、界面活性作用による洗浄や他の洗浄特性を持つ界面活性剤から構成されてもよい。非酵素洗浄剤は、界面活性剤の洗浄剤と称されてもよい。非酵素洗浄剤は、洗浄中の基板から汚物(例として、血液、体液)を取り除くために用いることができる。非酵素洗浄剤は、アルカノールアミン、アルコールエトキシレート、アルキルグルコシド、アルキレングリコール、アルキルジプロピオネート、アルキルジアルキルアミンオキシド、又はそれらの2つ以上の混合物から構成される。アルカノールアミンは、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン又はそれらの2つ以上の混合物から構成されてもよい。用いることができる市販の入手可能なアルコールエトキシレートとしては、ベロール(Berol)508(アクゾノーベル社(Akzo Nobel)から入手可能なアルコールエトキシレート)がある。アルキルグルコシドは、グルコースから派生する任意のグルコシドから構成されてもよい。アルキルグルコシドは、デシルグルコシドから構成されてもよい。アルキルグルコシドは、アルキルポリグルコシドから構成されてもよい。アルキルポリグルコシドは、1つ以上の糖類及び1つ以上の脂肪アルコールから派生してもよい。用いることができる市販の入手可能なアルキルグルコシドは、アクゾノーベル社(Akzo Nobel)から商品名エージー(AG)6206として入手可能である。アルキレングリコールは、100〜5000の範囲の分子量、又は100〜1500の範囲の分子量であるポリアルキレングリコールから構成されてもよい。ポリアルキレングリコールは、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、又はそれらの混合物から構成されてもよい。アルキルジプロピオネートは、オクチルジプロピオネートから構成されてもよい。用いることができる市販の入手可能なオクチルジプロピオネートは、ソルベイローディア社(SolvayRhodia)から商品名マッカム(Mackam)ODP45Mとして入手可能である。アルキルジアルキルアミンオキシドは、オクチルジメチルアミンオキシドから構成されてもよい。補助媒体(B)における非酵素洗浄剤の濃度は、0.1重量%〜25重量%、又は1重量%〜25重量%、又は5重量%〜15重量%の範囲であってもよい。当該濃度は、濃縮物として販売及び任意で本発明の洗浄及び消毒過程で使用されることに適している。当該濃縮物は、使用に先立って又は使用の際に希釈されてもよい。
【0030】
腐食抑制剤は、ベンゾトリアゾール、ベンゾトリアゾールのナトリウム塩、トリルトリアゾール、トリルトリアゾールのナトリウム塩、オクチルベタイン、イルガコー(Irgacro)L―190(ビーエーエスエフ社(BASF)から入手可能な有機カルボン酸)のようなカルボン酸、ホスホノブタントリカルボン酸、又はそれらの2つ以上の混合物から構成されてもよい。用いることができる市販の入手可能なナトリウムベンゾトリアゾールは、40重量%のナトリウムベンゾトリアゾールの水溶液である、商品名コブラテック(Cobratec)40Sが入手可能である。補助媒体(B)における腐食抑制剤の濃度は、1重量%〜10重量%、又は1重量%〜5重量%の範囲であってもよい。当該濃度は、濃縮物として販売及び任意で本発明の洗浄及び消毒過程で使用されることに適している。当該濃度は、使用に先立って又は使用の際に希釈されてもよい。
【0031】
キレート化剤は、エチレンジアミン四酢酸、ヒドロキシエチリデンジホスホン酸、それらの酸うちのどちらかのナトリウム塩、アミノトリメチレンホスホン酸、ホスホノブタントリカルボン酸、ヘキサメタリン酸ナトリウム、ニトリロ三酢酸トリナトリウム一水和物、ポリアクリル酸のナトリウム塩、グルタミン酸二酢酸の四ナトリウム塩、ポリカルボン酸、イミノジコハク酸四ナトリウム、カルボキシメチルイヌリン、ホウ酸ナトリウム、メチルグリシン二酢酸、又はそれらの2つ以上の混合物から構成されてもよい。有用であるエチレンジアミン四酢酸のナトリウム塩は、エチレンジアミン四酢酸四ナトリウム塩四水和物であろう。用いることができる市販の入手可能なエチレンジアミン四酢酸、四ナトリウム塩、四水和物は、アクゾノーベル社(Akzo Nobel)から商品名ディゾルビン(Dissolvine)220―Sとして入手可能である。ディゾルビン(Dissolvine)220―Sは、83〜85重量%のエチレンジアミン四酢酸、四ナトリウム塩、四水和物を含むキレート化剤として、アクゾノーベル社(Akzo Nobel)により規定されている。キレート化剤は、ジカルボン酸及び/又はトリカルボン酸から構成されてもよい。キレート化剤は、クエン酸から構成されてもよい。補助媒体(B)におけるキレート化剤の濃度は、0.1重量%〜70重量%、又は0.3重量%〜60重量%、又は0.5重量%〜55重量%の範囲であってもよい。当該濃度は、濃縮物として販売及び任意で本発明の洗浄及び消毒過程で使用されることに適している。当該濃度は、使用に先立って又は使用の際に希釈されてもよい。
【0032】
酵素洗浄剤は、リパーゼ、アミラーゼ、カルボヒドラーゼ、プロテアーゼ、又はそれらの2つ以上の混合物から構成されてもよい。酵素洗浄剤は、タンパク質加水分解酵素、タンパク質消化酵素、又はそれらの混合物から構成されてもよい。酵素洗浄剤は、タンパク質分解性酵素から構成されてもよい。酵素洗浄剤は、スブチリシンから構成されてもよい。用いることができる市販の入手可能な酵素の例としては、アルカラーゼウルトラ(Alcalase Ultra)2.5L及びサビナーゼ(Savinase)16LタイプEX(両方ともスブチリシンであり、ノボザイムズ社(Novozymes)から入手可能)がある。酵素は、補助媒体(B)の他の構成成分とともに組み合わせて、処理中の汚物(例として、血液、体液、老廃物等)を分解し、汚物を基板から取り除くことを助けるために用いられてもよい。補助媒体(B)における酵素洗浄剤の濃度は、25重量%が上限、又は0.2重量%〜25重量%、又は0.5重量%〜10重量%の範囲であってもよい。当該濃度は、濃縮物として販売及び任意で本発明の洗浄及び消毒過程で使用されることに適している。当該濃度は、使用に先立って又は使用の際に希釈されてもよい。
【0033】
緩衝剤は、アルカリ金属リン酸塩、アルカリ金属炭酸塩、又はそれらの混合物から構成されてもよい。アルカリ金属は、ナトリウム、又はカリウムから構成されてもよい。緩衝剤は、1つ以上のリン酸一ナトリウム、リン酸二ナトリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸一カリウム、リン酸二カリウム、リン酸三カリウム、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム又はそれらの2つ以上の混合物から構成されてもよい。リン酸二ナトリウムが用いられてもよい。補助媒体(B)における緩衝剤の濃度は、15重量%が上限、又は1重量%〜15重量%、又は4重量%〜10重量%の範囲であってもよい。当該濃度は、濃縮物として販売及び任意で本発明の洗浄及び消毒過程で使用されることに適している。当該濃度は、使用に先立って又は使用の際に希釈されてもよい。
【0034】
界面活性剤は、組成物の構成成分の間又は組成物と組成物によって処理中である基板との間の表面張力(又は界面張力)を下げる化合物から構成されてもよい。界面活性剤は、湿潤剤、乳化剤、発泡剤及び/又は分散剤から構成されてもよい。界面活性剤は、少なくとも1つの疎水基及び少なくとも1つの親水基を含む化合物から構成されてもよい。界面活性剤は、不水溶性(又は油溶性)成分及び水溶性成分の両方から構成されてもよい。界面活性剤は、1つ以上のイオンの(例えば、陰イオンの、陽イオンの及び/又は両性イオンの)及び/又は非イオンの化合物から構成されてもよい。界面活性剤は、1つ以上のポリエチレングリコールエーテル、アルキルアリールスルホン酸塩、アミンオキシド、ポリ(オキシアルキレン)化合物、アルキレンオキシド繰り返し単位から成るブロックコポリマー、カルボキシル化アルコールエトキシレート、エトキシル化アルキルフェノール、エトキシル化アミン、エトキシル化アミド、オキシラン、エトキシル化脂肪酸、エトキシル化脂肪エステル、エトキシル化油、脂肪エステル、脂肪酸アミド、グリセロールエステル、グリコールエステル、ソルビタンエステル、イミダゾリン及び/又はその誘導体、レシチン及び/又はその誘導体、リグニン及び/又はその誘導体、グリセリド及び/又はその誘導体、オレフィンスルホン酸塩、リン酸エステル及び/又はその誘導体、プロポキシル化及び/又はエトキシル化脂肪酸及び/又はアルコール、アルキルフェノール、ソルビタン及び/又はその誘導体、スクロースエステル及び/又はその誘導体、硫酸塩及び/又はアルコール及び/又は脂肪エステルのエトキシル化アルコール、ドデシル及び/又はトリデシルベンゼンのスルホン酸塩、縮合ナフタレン、スルホスクシネート及び/又はその誘導体、トリデシル及び/又はドデシルベンゼンスルホン酸、それらの2つ以上の混合物から構成されてもよい。界面活性剤は、C−C11パレス8(平均8モルのエチレンオキシドを有するC−C11脂肪アルコールの混合物のポリエチレングリコールエーテル)、C11−C15パレス3(平均3モルのエチレンオキシドを有するC11−C15アルコールの混合物のポリエチレングリコールエーテル)、メロキサポール252(オキシラン)、オクチルベタイン、ポリエチレングリコールココアミン、又はそれらの2つ以上の混合物を含んでもよい。界面活性剤は、1つ以上の消泡剤(例えば、水酸化カリウム)、泡増強剤、油除去剤(例えば、水酸化カリウム、ホウ酸ナトリウム)、レオロジー改質(低粘稠化)剤(例えば、ポリアクリル酸)、浸透剤、すすぎ助剤、又はそれらの2つ以上の混合物から構成されてもよい。補助媒体(B)における界面活性剤の濃度は、25重量%が上限、又は1重量%〜25重量%、又は5重量%〜15重量%の範囲であってもよい。当該濃度は、濃縮物として販売及び任意で本発明の洗浄及び消毒過程で使用されることに適している。当該濃度は、使用に先立って又は使用の際に希釈されてもよい。
【0035】
補助媒体(B)はさらに、1つ以上のスケール抑制剤、安定剤(例えば、ラウラミンオキシド)、防腐剤(例えば、ロンザ社(Lonza)から入手可能な抗菌ホルムアルデヒド放出防腐剤(キャス(CAS)番号6440−58−0)であるDMDMヒダントイン)、解凝剤又は懸濁剤(例えば、ポリアクリル酸ナトリウム塩)、金属不動態化剤、増粘剤(例えば、ラウラミンオキシド、ヒドロキシエチルセルロース、プロピレングリコール、又はそれらの2つ以上の混合物)、等張化剤(例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、グルコース)、又はそれらの2つ以上の混合物から構成されてもよい。それら各々の濃度は、25重量%が上限、又は0.1重量%〜10重量%、又は0.1重量%〜5重量%の範囲であってもよい。当該濃度は、使用に先立って又は使用の際に希釈されてもよい。
【0036】
本発明の過程における洗浄工程及び/又は消毒工程で用いることができる消毒媒体(A)の補助媒体(B)に対する体積比は、5:1〜1:5、又は4:1〜1:4、又は3:1〜1:3、又は2:1〜1:2、又は1.5:1〜1:1.5の範囲、又は1:1であってもよい。
【0037】
消毒媒体(A)のpHは、1〜8、又は3〜6の範囲であってもよい。補助媒体(B)のpHは、6〜14、又は6〜9の範囲であってもよい。消毒媒体(A)及び/又は補助媒体(B)のpHは、水酸化ナトリウムもしくは水酸化カリウム、トリエタノールアミン、クエン酸、又はそれらの2つ以上の混合物を使って調整されてもよい。
【0038】
前述のように、本発明の洗浄及び消毒過程に使用される場合、消毒媒体(A)及び補助媒体(B)は、上記濃縮物の濃度で使用されてもよく、又それらは水で希釈されてもよい。消毒媒体(A)の希釈は、水の体積部が消毒媒体(A)の体積部に対して1000まで(つまり、1000:1まで)が上限、又は20:1〜1000:1、又は35:1〜500:1、又は50:1〜250:1の範囲であってもよい。同様に、補助媒体(B)の希釈は、水の体積部が補助媒体(B)の体積部に対して、1000までが上限、又は20:1〜1000:1、又は35:1から500:1、又は50:1〜250:1の範囲であってもよい。
【0039】
消毒媒体(A)及び補助媒体(B)から作られる二液型洗浄及び消毒用組成物は、蒸気殺菌に必要とされる高温に耐え得らない基板を洗浄及び消毒するための過程等、基板(又は物)を洗浄及び消毒するための過程において使用できる。
【0040】
当該過程は、基板を洗浄及び消毒するための1工程を有する過程でもよく、又は基板を洗浄及び消毒するための2工程を有する過程でもよい。過程には、手作業で行われる事前洗浄工程が含まれてもよい。
【0041】
1工程を有する過程は、基板を洗浄及び消毒に有効とされる時間において、基板を補助媒体(B)及び消毒媒体(A)に接触させる工程を備えてもよい。過程は、15℃〜60℃、又は18℃〜60℃、又は18℃〜56℃、又は18℃〜50℃、又は18℃〜40℃、又は18℃〜30℃、又は18℃〜24℃の範囲の温度で実施されてもよい。接触時間は、約0.5分〜240分、又は2分〜60分の範囲であってもよい。
【0042】
2工程を有する過程は、(1)基板を洗浄するために基板を補助媒体(B)に接触させる工程、及び(2)基板を消毒するために基板を消毒媒体(A)に接触させる工程を備えてもよい。当該過程は、(1)基板を洗浄するために基板を補助媒体(B)及び消毒媒体(A)に接触させる工程、及び(2)基板を消毒するために基板を消毒媒体(A)に接触させる工程を備えてもよい。当該過程は、(1)基板を洗浄するために基板を補助媒体(B)に接触させる工程、及び(2)基板を消毒するために基板を消毒媒体(A)及び補助媒体(B)に接触させる工程を備えてもよい。当該過程は、(1)基板を洗浄するために基板を補助媒体(B)及び消毒媒体(A)に接触させる工程、(2)基板を消毒するために基板を消毒媒体(A)及び補助媒体(B)に接触させる工程を備えてもよい。2工程を有する過程は、任意で(1)と(2)の工程の間に基板をすすぐ工程を含んでもよい。
【0043】
(1)及び(2)の各工程中に用いる温度は、15℃〜60℃、又は18℃〜60℃、又は18℃〜56℃、又は18℃〜50℃、又は18℃〜40℃、又は18℃〜30℃、又は18℃〜24℃の範囲のでもよい。(1)及び(2)の各工程は、室温で実施されてもよい。
【0044】
(1)及び(2)の各工程の接触時間は、0.5分〜240分、又は0.5分〜60分、又は0.5分〜10分、又は2分〜8分、又は4分〜8分の範囲、又は6分であってもよい。
【0045】
洗浄及び消毒できる基板には、医療用、歯科用、薬剤用、獣医用又は遺体用の器具及び機器が含まれる。内視鏡も含まれる。基板は、真鍮、銅、アルミニウム、ステンレス鋼、カーボン鋼、プラスティック、ガラス、接着剤、又はそれらの2つ以上の組合せからなる材料で作られていてもよい。
【0046】
医療行為の分野において、内視鏡を使用して多くの診断、治療、又は外科的処置が行われる。内視鏡は、その構成と使用目的によって軟性と硬性という2つの大きな種類に分類される。硬性の内視鏡は、金属の構成部品で構成される傾向にあり、軟性の内視鏡は一般的にはポリマー材料によって構成される。多くの場合、金属及びポリマー材料の両方が使用される。どちらの場合においても、それらの医療機器はさらに、光フィバー、電子機器、又はその他の特徴を備え、それらの特徴によって内視鏡は、高価で且つ取扱いに注意を要するものとなり、特に使用目的で用いられた後、次回の使用のために洗浄及び消毒される際は細心を要する。
【0047】
一般的には、この取扱いには、事後拭取り作業、シンクにおける手作業での事前洗浄作業、及び内視鏡の種類や内視鏡が次に使用される際の処置の種類によって決まる消毒作業か殺菌作業の組み合せが含まれる。
【0048】
例えば内視鏡というような血液に接触する基板は、次の使用の前に通常殺菌される。他の基板又は機器に対しては、高いレベルの消毒(HLD)で充分であろう。一般的には、高いレベルの消毒と殺菌との差異は、使用される殺菌媒質の有効性、作用形態及び曝露時間に関係する。
【0049】
多くの医療機器用の消毒媒質又は殺菌媒質は、蒸気、蒸気化学物質(例えば、蒸気過酸化水素又は蒸気エチレンオキシド)、又は液体化学物質であろう。しかしながら、様々な内視鏡というような多くの高度技術機器は、多くが高熱への曝露に敏感であり、高熱への曝露によって故障する可能性があるため、蒸気を安全に用いることができない。同様に、他の媒質では、時間がかかる工程(例えば、エチレンオキシドに曝露された後のアウトガス作業)、又は手間のかかる準備工程(蒸気過酸化水素への曝露に先立つ広範囲にわたる洗浄と乾燥、及び活発な気体の流れがないためルーメンの長く細い部分内へ到達できないこと)というような他の禁忌事項をもたらすことがある。本発明は、洗浄及び消毒を達成するために、内視鏡といった熱に敏感である機器に、低温液体再使用処理を用いることができるという選択肢を提供する。消毒又は殺菌のどちらに用いられるかにはかかわらず、用いられる媒質は、一般的に殺菌剤として認められるであろう。というのも、本発明の媒質は、その特定の媒質に最も抵抗力のある有機体を、所定の濃度と時間において、6の対数以上死滅させることができるからである。6の対数的減少の達成は、殺菌剤の指定を獲得することに必要とされるものである。消毒にはしばしば殺菌の場合と同じ殺菌剤が使用されるが、一部の機器の使用用途に最適な消毒レベルを達成するという目的においては、より低い濃度又はより短い時間(又はその両方)において消毒が実施されてもよい。
【0050】
内視鏡のために用いることができる洗浄及び消毒過程は、手作業で行われる事後拭取りから開始されてもよい。過程はそこから、手作業で行う事前洗浄工程及び手作業で行う消毒工程へと、その順序で進むことができる。これは最も費用がかからない内視鏡再使用処理の選択肢といってもよいが、一般的には消毒剤の中での曝露により長い時間が必要とされ、用いられる化学物質に作業者が接触する危険性が高くなるか、又は汚染された機器自体に作業者が曝露される可能性がある。そのような過程が最も一般的に用いられてきているが、内視鏡の洗浄及び消毒するための過程としては、減ってきている方法ともいえる。
【0051】
その対極として、ほぼ全ての手作業工程を省くことができる完全に自動化された機械(再使用処理機)が入手可能である。しばしばその自動化システムは、完全統合された再使用処理方法を提供するために、専用消毒剤としての化学物質とともに共同開発され、共同実証されてきている。そして、完全に自動化されたシステム及びそれ専用の消毒剤としての化学物質は、最も高価な選択肢であり、現在用いられている再使用処理手法全体において、実質的により少ない部分を占めている。
【0052】
近年、多くの「オープン(非制限的)」再使用処理機が、内視鏡の洗浄及び消毒用の市場に出てきている。それらは、内視鏡の手作業で行われる再使用処理に関連する工程の、全部ではないとしてもその多くを自動化する一方で、一般的には専用の消毒用化学物質製剤とは共同開発されず、1つ以上の従前の化学物質を用いて使用されるよう設計されている。それらの処理機は、アルデヒド、過酸化物、過酢酸ベース化学物質を含む様々な消毒剤とともに用いてもよいという点で自由度が高い。それらの機器は、完全統合されたシステムに用いることができる化学物質の範囲より広い範囲の化学物質を半自動化された処理と組み合わせるという選択肢を提供できる。そして、手作業の方法より幾分高価ではあるものの、オープンシステムは、実施されている処理の数に関して増えつつある。
【0053】
完全に自動化されたシステムは、その他の方法と比べてより制御されたアプローチを提供するが、一方オープンシステムの場合は、選択できて入手可能である化学物質の範囲がより広い。これは、各内視鏡が特定の化学物質に対して異なる反応をすることがある点で重要となり得る。つまり、ある1つの化学物質を使用する場合に、特定の内視鏡は他の内視鏡よりも損傷を受けやすいことがある。しばしば、購入される完全自動化システムは、購入者が使用する特定の内視鏡に基づき決定され、且つ、システムに排他的に使用される専用化学物質が、処理される予定の内視鏡へ適用できるかどうかに基づき決定される。
【0054】
本発明の利点は、本発明による二液型の洗浄及び消毒用組成物が、専用のシステムにおいて用いられることができ、又は手作業のシステムかオープンシステムでの使用に適合させることができることである。本発明の二液型組成物は、同じシステムにおいて、高いレベルの消毒又は殺菌のどちらをも、助け、実施するために用いることができる。本発明の二液型組成物は、内視鏡との幅広い組み合わせにおいて使用でき、任意の内視鏡における特定の要求に応じて、容易に適合させることができる。
【0055】
本発明の二液型組成物は自動分配が可能であり、静かに浸け置く方法であるような、混合又は希釈が手作業で行われる殺菌剤との接触という使用者の曝露を減少する。
消毒媒体(A)及び補助媒体(B)は、安定性を高めるため、及び有効性が減少する又は場合によっては望まない副反応物を生み出すかもしれない構成成分の相互反応を避けるため、使用に先立って別々の容器に保存されてもよい。
【0056】
前述の再使用処理手順では、洗浄は消毒に先行する。この慣例は、多くの再使用処理機の作業ファームウェアが、それらの作業を、少なくとも1回の任意のすすぎサイクルによって分けられる個々の工程として取り扱うという点で重要である。
【0057】
本発明の洗浄及び消毒の過程は、適合できるいかなる洗浄及び消毒装置を使用して実施されてもよい。それらの例は、米国特許第5,077,008号、米国特許第8,530,184B2号及び米国特許第8,691,562B2号、米国特許出願公開第2012/0230870A1号に開示されている。
【0058】
消毒媒体(A)及び補助媒体(B)を用いる2工程を有する洗浄及び消毒の過程は、図1に概略的に示される装置を使用して実施されてもよい。図1に参照される装置には、洗浄されて消毒される基板(例えば、内視鏡)を収容するための浸漬槽10と、消毒媒体(A)(図では部分A)を収容するためのタンク又は液体容器12と、補助媒体(B)(図では部分B)のための別のタンク又は液体容器14と、タンク又は液体容器12及び14を浸漬槽10に接続するための配管又はパイプと、浸漬槽10に水を加えるための水供給部16と、水供給部16から浸漬槽10への水流を調整するためのバルブ18と、浸漬槽10からドレイン21へ排液される液体の流れを調整するためのバルブ20と、浸漬槽10への消毒媒体(A)の流れを調整するための薬注ポンプ22と、浸漬槽10への補助媒体(B)の流れを調整するための薬注ポンプ24と、マイクロプロセッサが使用可能である、バルブ18及び20、ヒータ(図示せず)並びに薬注ポンプ22及び24を制御するためのコントローラ26とを含む。
【0059】
図1に示される装置を動作させるための保守モードの選択肢が、図2に例示される。図2に示されるB/A比率は、補助媒体(B)の消毒媒体(A)に対する体積比率である。図2に用いられている用語「軟水」及び「硬水」は、水における炭酸カルシウムの濃度に関する専門用語である。この開示のために、本明細書では、アメリカ地質調査所が用いる軟水及び硬水を構成する成分による分類を用いる。アメリカ地質調査所は、0〜60mg/Lの炭酸カルシウムを含む水を軟水、61〜120mg/Lの炭酸カルシウムを含む水を中硬水、121-180mg/Lの炭酸カルシウムを含む水を硬水、181mg/L以上の炭酸カルシウムを含む水を超硬水、と分類している。
【0060】
以下の実施例において、消毒媒体(A)は、65重量%の水と、35重量%の過酢酸(PAA)とを含む。補助媒体(B)は、3重量%のトリエタノールアミンと、2.2重量%のエタノールアミンと、2重量%のポリアルキレングリコールと、3重量%のオクチルジメチルアミンオキシドと、4重量%のアルカラーゼウルトラ2.5Lと、4重量%のサビナーゼ16LタイプEXと、1重量%のトリルトリアゾールと、1重量%の腐食抑制剤と、3重量%のクエン酸と、1.1重量%のオキシランと、2重量%のポリエチレングリコールココアミンと、20重量%のプロピレングリコールと、0.005重量%の消泡剤と、0.15重量%の塩化カルシウムと、0.0125重量%の香料と、残り部分には軟水とを含む。以下の実施例においてB/A比率は体積比率である。
【0061】
実施例1
洗浄及び消毒の過程は、第1の洗浄工程で補助媒体(B)を使用し、そして第2の消毒工程では部分(A)と部分(B)の組み合わせを使用して実施される。4つの異なるオプションが消毒工程で用いられる。洗浄及び消毒工程の両方とも室温にて実施される。(B)の(A)に対する比率は、使用される水の硬度に応じて調整される。
【0062】
【表1】
この実施例は、消毒の間に使用される部分(B)の割合を変化させることによって、現地の水の硬度を調整するために、使用者が部分(B)の硬度調整成分を利用できることを示す。
【0063】
実施例2
本発明の二液型組成物は、従来の自動化内視鏡再使用処理機(AER)の消毒において使用されてもよい。部分(B)と水を組み合わせて、AERにある既存のファームウェアによって制御される、個々の洗浄の段階において使用される洗浄用溶液が作られる。使用者又は作業システムのソフトウェアによる、作業工程へのいかなる修正も必要ではなく、部分(B)は処理機の制御システムよって、単に洗浄剤として見なされる。その工程に続いて、従来の、しかしこの応用例においては不要である、すすぎサイクルをシステムが実施することを可能にしてから、部分(A)及び部分(B)が消毒用溶液として併せて使用される。既存の手順又はプログラミングステップに何の変更も加える必要はない。部分(B)の使用が、先行技術において使用される消毒用溶液の従来のビルダー剤に取って代わり、費用と複雑さを省く。この構成はさらに、使用者にすすぎの段階を回避させることを可能とし(ソフトウェアが許容する場合)、さらなる利益として時間と光熱費を節約する。この実施例では、洗浄、続いて液の排出、そして消毒という標準AER運転作業が用いられる。
【0064】
【表2】
部分(B)は消毒工程において使用されるので、すすぎ工程が必要ではない。洗浄用溶液は排出され、そこで消毒用溶液が使用される。
【0065】
実施例3
医療機器の消毒又は殺菌を成功させるためには、医療機器の効果的な洗浄が必要とされる。洗浄工程は、部分(B)を使用して又は部分(B)を部分(A)と組み合わせて使用し実施することができる。手作業又は異なった洗浄装置の助けを得て実施されてもよい、必要とされる洗浄工程の後に,温度に敏感な特定の内視鏡の必要条件に適合させておいた過程で、高度な消毒又は殺菌のために、部分(A)及び部分(B)を用いることができる。本発明の化学物質における消毒が便宜上1:1の割合(例として、部分(B)及び部分(A)が各々80mLs)で用いられると概念的に説明されているが、異なる消毒の使用希釈条件を満たすために、相対的割合は様々に調整することができる。説明のため、1:1の比率を、50℃で実施される消毒作業において用いられるのに好ましいとして設定している。特定の内視鏡が従来の低い温度(例えば50℃)の消毒又は殺菌作業の熱に特別に敏感である場合でも、消毒の有効性を維持しつつより低い温度が用いることができるように、部分(B)の部分(A)に対する比率を調整できる。このことは、予定した50℃である消毒温度に達しない場合にも好都合である。部分(B)の部分(A)に対する1:1.2の比率は、より低い温度(40℃)で用いることができ、微生物における効果に対して熱の減少がもたらすかもしれない影響を相殺する追加の殺菌剤を提供する。1:1.5の比率は30℃にて使用できる。好ましい作業条件が室温(例えば20℃)の場合は、例えば1:2の割合を使用できる。
【0066】
仮に部分(A)の量がそこまで大きくなることで、特別敏感である機器に、複数回の消毒サイクルが過度の腐食をもたらす場合は、割合を2:1.5又は2:2.0に調整することができ、それにより、より低い温度を相殺するために用いられる、特別な量の消毒剤を一方で提供しつつ、腐食を減少させるために部分(B)によって提供される腐食抑制の度合いを増加させることができる(実施例4も参照のこと)。
【0067】
【表3】
この実施例は、消毒効率と適切な水の硬度調整を維持しつつも、作業者が、使用できる温度の選択肢を有することを示す。使用される部分(A)の割合を増やすことで、曝露を延長する場合と比べてより短い時間で、望ましい滅菌を達成するために、より低い温度を選択することが可能である。
【0068】
実施例4
部分(A)及び(B)は、腐食に敏感である内視鏡を処理する際用いることができる。 機器が熱には別段敏感ではないが、腐食に非常に敏感である材質で構成されている場合、部分(B)の部分(A)に対する比率は、例えば2:1又は3:1のように、部分(A)は正常の量が用いられるが、一方でより多い量の部分(B)が加えられるというように調整することができる。腐食を弱めるために、部分(B)がより多く投入される。
【0069】
【表4】
この実施例は、一方では効果的な死滅をもたらすために必要とされる部分(A)のレベルを維持しつつ、使用される部分(B)の割合を増加させることによって、特別な腐食への抵抗力を提供することができることを示す。これは、前述の実施例3のオプションや、より多い部分(A)を用いることが指示される又は望まれるといういかなる場合にも適用できる。
【0070】
実施例5
内視鏡を消毒するのが困難である場合に、以下に例示される比率で部分(A)及び部分(B)を併せて使用することができる。機器が熱には別段敏感ではないが、標準レベルの消毒剤に対して強いという背景(例えば、特別な材質で構成されている、又は汚染有機物が消毒剤に効果的に曝露されることを妨げてしまう特別複雑なデザインで構成されている)を持っている場合、部分(B)の部分(A)に対する比率は、腐食に対する敏感さに応じて、1:2又は2:2に調整でき、より高い一般的な温度で処理できる。
【0071】
【表5】
この実施例は、始めは機器を消毒することが困難であったとしても、用いられる部分(A)の量を増加(倍増)させることによって、効果的な死滅をもたらす可能性を引き出すことができることを示す。それに応じて、用いられる部分(B)も同様に調整できる。
【0072】
以下の実施例6〜8において, 部分(A)及び部分(B)は、実施例1〜5に説明されたとおりである。ビルダー剤1は、2つのリン酸ナトリウム、ベンゾトリアゾール、四ナトリウムエチレンジアミン四酢酸、1つのモリブデン酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、1つのエトキシ化ポリオキシプロピレン、1つのポリアクリレート、1つのリン酸ナトリウム及び水を含む。ビルダー剤2は、1つのリン酸ナトリウム1つのナトリウムベンゾトリアゾール及びエチレンジアミン四酢酸の1つのナトリウム塩を含む。
【0073】
実施例6
図3A〜3Dは、過酢酸が単体で使用される(図3A)、又は先行技術のビルダー剤1と組み合わせて使用される(図3B)、加えてビルダー剤2とも組み合わせて使用される(図3C)、又は本発明の補助媒体の部分(B)の中において使用される(図3D)場合の1消毒サイクルに必要とされる時間の経過における、過酢酸の安定性(短期安定性)を示す。傾きは、安定性の時間による変化(逆に言えば、PAAにおける分解の性質)を理解するのに役立ち得る。傾きが0(水平に変化がない直線)は観察時間帯における完全な安定性を示し、傾きがマイナス1は即時分解を示し、傾きがマイナス0.00005(図3A)は、前述の時間の尺度において、PAA(過酢酸)溶液が単独で安定していることを示す。しかしながら、マイナス0.0013の傾き(図3B)は、実例のビルダー剤1の構成成分によって引き起こされる、PAAの幾分比較的急激な分解を表している。図3Cにあるマイナス0.0027の傾きは、この組み合わせにおけるPAA成分が、図3Bの場合とほぼ同じレベルであることを示す。本発明の補助媒体の部分(B)の効果(図3D)は、マイナス0.0005の傾きとして示され、補助媒体の部分(B)によってPAA成分の安定性が、図3Aに示されているPAAのみの場合とほぼ同じレベルに回復することを表している。
【0074】
実施例7
図4A〜4Dは、過酢酸が単体で使用される(図4A)、又は先行技術のビルダー剤1と組み合わせて使用される(図4B)、又はビルダー剤2と組み合わせて使用される(図4C)、又は本発明の補助媒体の部分(B)と組み合わせて使用される(図4D)という場合の、1消毒サイクルに必要とされる時間の経過における、異なる消毒溶液温度においての、過酢酸の安定性(安定性)を示す。各直線の傾向は、安定性の時間による変化(逆に言えば、PAA分解の割合と量)を理解するのに役立ち得る。図4Aにおけるそれぞれの直線の傾向から見ると、低い温度で良好な安定性が示されているが、観察時間帯において温度が上がるにつれて溶液濃度が下がり安定性が低い。PAA溶液は、単体で使用される場合(図4A)、比較的安定しているが、この条件では、ビルダー剤によってもたらされる、必要とされる緩衝能力、耐腐食能力又はキレート化能力が提供されない。図4B及び4Cでは、先行技術のビルダー剤を使用する場合、溶液の温度が上がるにつれて最初の溶液濃度と、それに続くPAAの分解の割合との両方に著しい変化が見られる。図4Bは、ビルダー剤1の構成成分によって引き起こされるPAAの急激な分解を表している。PAA溶液は、ビルダー剤1及びビルダー剤2が存在する場合、比較的不安定である。図4Dは、図4Aで示される安定性と同様であるPAA溶液の安定性を示す。本発明のビルダー剤を使用する場合、濃度は図4Aに示されるレベルとほぼ同じである。本発明の補助媒体の部分(B)の効果(図4D)として、その溶液の安定性が図4Aに示されるPAAのみの場合とほぼ同じレベルであることだけではなく、部分(B)によってもたらされる緩衝能力、耐腐食能力及びキレート化能力というさらなる利点があることが示されている。図4A図4Dの両方において、最初も最後も濃度がより高い。
【0075】
実施例8
図5A〜5Dは、過酢酸が単体で使用される(図5A)、又は先行技術のビルダー剤1と組み合わせて使用される(図5B)、又は先行技術のビルダー剤2と組み合わせて使用される(図5C)、又は本発明の補助媒体の部分(B)と組み合わせて使用される(図5D)という場合の、複数回の消毒サイクルに必要とされる時間の始まりと経過における過酢酸の安定性(安定性)を示す。好ましい実施例において本発明の組成物の安定性は、補充が必要となるまでに複数回のサイクルを助けることができるものである。そのようにするためには、結果としてもたらされる消毒用溶液濃度が、実施される各サイクルにおいて消毒/殺菌のための推奨最低濃度を上回る高さとなる、十分な安定性が必要とされる。消毒/殺菌のための実際の曝露時間が、例えばたった5〜7分であっても、過程における全ての他の工程を終了するには、各サイクルに30〜45分以上かかる可能性があるため、実施できるサイクルの回数は、すべての作業時間と各作業間の時間の合計時間に作られる各溶液の全体的な安定性によって決まる。本データには、計算のために1時間を1サイクル時間として用いている。図5Aのデータを提供した実験において過酢酸のみの場合は、1時間かかるサイクルが10回まで実施可能である。しかしながら、ビルダー剤がもたらす利点は何ひとつもたらされないにもかかわらず、図5B及び図5Cでは、1サイクルのみしか実施できないことが示されている。図5Dのデータを提供した実験からは、本発明の補助媒体の部分(B)の効果が、PAAのみの場合にみられる効果と匹敵する、又はそれを超えるので、10時間で10サイクルまで実施されることを可能とし、さらに補助媒体(B)を使用する際のすべての利益ももたらすことが示される。加えて、先行技術のビルダー剤2が、PAAのみの場合(図5A)と同様に開始時に高い濃度を有する(図5C)一方で、図5Dで見られるように部分(B)を使用する本発明も、開始時に高い濃度を有することは注目されるべきである。
【0076】
様々な実施例を参照として本発明は説明されてきたが、本明細書を読むことにより当業者にとっては本発明の変更が明らかになってくるであろうことは、理解されるべきである。したがって、本文で特定される発明の範囲には、別記請求項の範囲内となる可能性があるすべての変更を含むことが意図されていることは、理解されるべきである。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図4A
図4B
図4C
図4D
図5A
図5B
図5C
図5D