特許第6644901号(P6644901)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6644901ラクチド系コポリマーを含む非反応性ホットメルト接着剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6644901
(24)【登録日】2020年1月10日
(45)【発行日】2020年2月12日
(54)【発明の名称】ラクチド系コポリマーを含む非反応性ホットメルト接着剤
(51)【国際特許分類】
   C09J 167/04 20060101AFI20200130BHJP
   C09J 5/06 20060101ALI20200130BHJP
   C08G 63/02 20060101ALI20200130BHJP
【FI】
   C09J167/04
   C09J5/06
   C08G63/02
【請求項の数】13
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-545226(P2018-545226)
(86)(22)【出願日】2017年3月1日
(65)【公表番号】特表2019-512030(P2019-512030A)
(43)【公表日】2019年5月9日
(86)【国際出願番号】EP2017054782
(87)【国際公開番号】WO2017149019
(87)【国際公開日】20170908
【審査請求日】2018年10月26日
(31)【優先権主張番号】16158479.2
(32)【優先日】2016年3月3日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】504421730
【氏名又は名称】ピュラック バイオケム ビー. ブイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100085545
【弁理士】
【氏名又は名称】松井 光夫
(74)【代理人】
【識別番号】100118599
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 博司
(72)【発明者】
【氏名】シャーケンス,クリス フランソワ フバート
(72)【発明者】
【氏名】ブラーム,ケヴィン ベルナルデュス
(72)【発明者】
【氏名】フェルケルク,ジェシー リチャーダ アンナ
【審査官】 田澤 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2008/044651(WO,A1)
【文献】 特開平11−302521(JP,A)
【文献】 特開平09−040761(JP,A)
【文献】 特開2014−028882(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/026859(WO,A1)
【文献】 特開平05−339557(JP,A)
【文献】 国際公開第2002/070583(WO,A2)
【文献】 特開2004−339419(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00−201/10
C08G 63/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のブロック及び第2のブロックを含むコポリマーを含むホットメルト接着剤であって、
第1のブロックが、乳酸と別の重合性モノマーとの非晶質コポリマーであり、かつ
第2のブロックが、ポリ−L−乳酸(PLLA)及びポリ−D−乳酸(PDLA)から選択されるポリ乳酸ポリマーであり、
第1のブロックが0.5kg/mol以上の数平均分子量を有し、第2のブロックが1kg/mol以上の数平均分子量を有する、ホットメルト接着剤。
【請求項2】
上記別の重合性モノマーが、グリコール酸、コハク酸、トリエチレングリコール、カプロラクトン、他の環状エステルモノマー及びこれらの混合物から選択される、請求項1に記載のホットメルト接着剤。
【請求項3】
第1のブロックが、10〜90重量%乳酸由来のモノマーと、90〜10重量%別の重合性モノマーを含む、請求項1又は請求項2に記載のホットメルト接着剤。
【請求項4】
コポリマーの第1のブロックとコポリマーの第2のブロックとの重量比は、第2のブロックが第1のブロックと第2のブロックの合計の10〜90重量%なすような比である、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のホットメルト接着剤。
【請求項5】
コポリマーが、2〜70kg/molの範囲内数平均分子量を有する、請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のホットメルト接着剤。
【請求項6】
コポリマーの重量を基準に計算して0.5〜20重量%の、コポリマーの第2のブロックの立体化学とは反対の立体化学を有するポリ乳酸単位(PLAU)をさらに含む、請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載のホットメルト接着剤。
【請求項7】
PLAUが、存在する場合には、0.75〜10kg/molの範囲内のMnを有する、請求項6に記載のホットメルト接着剤。
【請求項8】
コポリマー及び、存在する場合には、PLAUが合計で、当該接着剤の50重量%以上なす、請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載のホットメルト接着剤。
【請求項9】
請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載のホットメルト接着剤の製造方法であって、コポリマー及び、存在する場合には、PLAUを混合して液状組成物を形成する工程を含む、方法。
【請求項10】
複数の基材を互いに固定された位置に配置するための方法であって、請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載の非反応性ホットメルト接着剤の所定量を液体の形態で第1の基材の表面に塗布する工程と、該所定量の非反応性ホットメルト接着剤上に第2の基材の表面をあてがう工程と、複数の基材と非反応性ホットメルト接着剤とのアセンブリを該非反応性ホットメルト接着剤の融点未満の温度に冷却する工程とを含む、方法。
【請求項11】
第1のブロック及び第2のブロックを含むコポリマーをホットメルト接着剤に使用する方法であって、
第1のブロックが、乳酸と別の重合性モノマーとの非晶質コポリマーであり、かつ
第2のブロックが、ポリ−L−乳酸(PLLA)及びポリ−D−乳酸(PDLA)から選択されるポリ乳酸ポリマーであり、
第1のブロックが0.5kg/mol以上の数平均分子量を有し、第2のブロックが1kg/mol以上の数平均分子量を有する、使用方法。
【請求項12】
上記別の重合性モノマーが、グリコール酸、コハク酸、トリエチレングリコール、カプロラクトン、他の環状エステルモノマー及びこれらの混合物から選択され、請求項11に記載の使用方法。
【請求項13】
コポリマーの第1のブロックとコポリマーの第2のブロックとの重量比は、第2のブロックが第1のブロックと第2のブロックの合計の10〜90重量%なすような比でありコポリマーが、2〜70kg/molの範囲内数平均分子量を有する、請求項11又は請求項12に記載の使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定のラクチド系コポリマーを含む非反応性ホットメルト接着剤に関する。本発明は、また、ホットメルト接着剤における特定のラクチド系コポリマーの使用、並びに特定のラクチド系コポリマーを含むホットメルト接着剤を用いて複数の基材を一緒に接着する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本明細書で用いる「ホットメルト接着剤」とは、流動可能な粘度の液体を得るために加熱され、基材への塗布後に冷却されて固体となる熱可塑性ポリマー組成物をいう。ホットメルト接着剤がその融解温度未満又はその固化転移温度未満の温度に冷却されて固化した後、基材と接着材料との間に接着結合が形成される。接着剤と、接着剤が塗布された基材との間には本質的に何の共有化学結合も形成されないので、このホットメルト接着剤は、非反応性ホットメルト接着剤と呼ぶことができる。
【0003】
ホットメルト接着剤は、2つの基材を一緒に接合して2つの基材を互いに固定された関係に維持するために多用される。ホットメルト接着剤は、不織層とポリマーフィルム層とを一緒に接合するため不織層を含む物品にも使用される。ホットメルト接着剤はさらに、パッケージ構造の接着、例えばパッケージの構築、パッケージの封鎖又はその両方のため袋、箱、カートン、ケース及びトレイを一緒に接着させるのに使用される。これらは、テープ及びラベル用の感圧接着剤としても使用される。
【0004】
非反応性ホットメルト接着剤は、商業用途に適するように数多くの要件を満たさなければならない。
【0005】
第一に、明らかであろうが、使用時の接着剤の接着特性が良好でなければならない。接着の喪失は、例えばパッケージの開放を引き起こす可能性があるが、これは生産中も生産後も容認できない。
【0006】
さらに、ホットメルト接着剤は慣用的に顆粒又はペレットの形態で提供され、使用前に溶融される。これらの顆粒は保存中に安定でなければならない。すなわち、顆粒の取扱いの妨げとならないように、顆粒同士が接着して大きくなりすぎることがあってはならない。この特性を得るには、ホットメルト接着剤が室温で流動性を示さないように確保することが重要である。
【0007】
ホットメルト接着剤の別の重要な特性は、セットタイム、すなわち接着剤が基材との結合を形成するのに必要な時間である。セットタイムは、接着剤を挟んで2つの基材を押し付け合うのに必要な時間を支配するので、商用作業において重要である。セットタイムは秒のオーダーであり得る。
【0008】
一方、セットタイムはしばしば非常に短くなくてはならないが、接着剤はある程度のオープンタイムを示さなければならない。オープンタイムは、接着剤の高温での塗布後に接着剤が依然として流動特性を有する時間である。これは、接着剤を支持基材に塗布した後に、良好な接着性を得ながらカバー基材を貼り付けることができる時間枠である。
【0009】
ホットメルト接着剤に望まれることがある他の特性は、ある程度の生分解性である。堆肥化される物の製造にホットメルト接着剤が使用される場合、接着剤がその物の残部と同じ時間枠内で分解できることが重要である。この特徴は、ホットメルト接着剤がパッケージ材料の製造に使用される場合に特に関連性がある。
【0010】
さらに、ホットメルト接着剤は、再生可能な資源から少なくとも部分的に誘導できるものであるのが好ましい。
【0011】
当技術分野では、良好な接着性能と低い低温流動性に起因する良好な保存安定性と、いくつかの実施形態では短いセットタイム、を併せもつ非反応性ホットメルト接着剤であって、再生可能な資源から調製できるポリマーに少なくとも部分的に基づく接着剤に対するニーズが存在する。
【発明の概要】
【0012】
本発明は、望ましい特性を示すホットメルト接着剤を提供する。
【0013】
本発明は、第1のブロック及び第2のブロックを含むコポリマーを含むホットメルト接着剤であって、
第1のブロックが、乳酸と別の重合性モノマーとの非晶質コポリマーであり、かつ
第2のブロックが、ポリ−L−乳酸(PLLA)及びポリ−D−乳酸(PDLA)から選択されるポリ乳酸ポリマーであり、
第1のブロックが0.5kg/mol以上の数平均分子量を有し、第2のブロックが1kg/mol以上の数平均分子量を有する、ホットメルト接着剤に関する。
【0014】
本発明のブロックコポリマー中の乳酸は、再生可能な資源から誘導することができる。さらに、ポリ乳酸は生分解性であり、コポリマーの残りのモノマーの性状及びホットメルト組成物中の他の成分に応じて、生分解性の組成物を得ることができる。さらに、本発明のコポリマーを含むホットメルト接着剤は、良好な接着性能と低い低温流動性に起因する良好な保存安定性とを併せもち、短いセットタイムを有し得る。2種類の別個のポリマーの代わりに2つのブロックのコポリマーとすることで、2つのブロックのコポリマーを単一反応器合成で製造できるという追加の利点もある。本発明及びその特定の実施形態のその他の利点は本明細書の以下の記載から明らかとなろう。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明についてさらに詳しく説明する。
【0016】
本発明で用いるコポリマーにおいて、第1のブロックは非晶質ブロックであるのに対して、第2のブロックは結晶質ブロックである。ブロックコポリマーをホットメルト接着剤に使用する際に、非晶質ブロックと結晶質ブロックとの組合せは魅力的な性質を生じる。さらに具体的には、非晶質ブロックは製品の柔軟性を確保すると考えられ、一方、結晶質ブロックは良好な低温流動抵抗性、耐熱性及び剛性をもたらすと考えられる。
【0017】
ブロックコポリマーの第1のブロックは、乳酸と別の重合性モノマーとの非晶質コポリマーである。
【0018】
適切な別のモノマーは、乳酸(又はラクチド)と重合させることができてポリマーを形成するモノマーである。適切なモノマーの具体例としては、グリコール酸、コハク酸、トリエチレングリコール、カプロラクトン、並びにグリコリドのような他の環状エステルが挙げられる。カプロラクトンが優れた結果を与えることが判明したので、カプロラクトンの使用が好ましいと考えられる。
【0019】
第1のブロックにおける乳酸は、D−乳酸、L−乳酸又はこれらの組合せとすることができる。広く入手できることから、L−乳酸の使用が好ましいことがある。
【0020】
一実施形態では、第1のブロックは、10〜90重量%の乳酸由来のモノマーと90〜10重量%の別の重合性モノマーを含む。別の重合性モノマーとして2種以上の組合せも可能である。第1のブロックが、25〜75重量%の乳酸由来のモノマーと75〜25重量%の別の重合性モノマーを含んでいるのが好ましいことがある。
【0021】
第1のブロックが、25〜75重量%のL−乳酸由来のモノマーと75〜25重量%のカプロラクトンを含んでいるのが特に好ましいと考えられる。
【0022】
第1のブロックは0.5kg/mol以上の数平均分子量を有する。第1のブロックの分子量が低すぎると、ホットメルト接着剤におけるポリマーの有利な特性が得られなくなる。第1のブロックの数平均分子量が1kg/mol以上、特に2kg/mol以上、とりわけ5kg/mol以上であるのが好ましいことがある。第1のブロックの分子量の上限は、制御可能な範囲に維持すべきである最終ポリマーの粘度に依存する。一般的な最大値として、40kg/molの値を挙げることができる。第1のブロックの数平均分子量が30kg/mol以下、特に20kg/mol以下であるのが好ましいことがある。
【0023】
第1のブロックは非晶質ポリマーである。本明細書の文脈において、非晶質ポリマーは、2.0J/g以下の融解エンタルピーを示すポリマーである。これはDSCによって求めることができる。低い融解エンタルピーで表される低い結晶化度は、接着剤が脆くなるのを防ぎ、接着特性に優れるホットメルト接着剤をもたらすと考えられるので、ブロックコポリマー中の非晶質コポリマーが1.0J/g以下の融解エンタルピーを有しているのが好ましい。第1のブロックの融解エンタルピーは、第1のブロックの合成後に、或いは既存のポリマーについては複製ブロックの合成によって、決定することができる。
【0024】
ブロックコポリマーの第2のブロックは、ポリ−L−乳酸(PLLA)ブロック及びポリ−D−乳酸(PDLA)ブロックから選択されるポリ乳酸ポリマーブロックである。
【0025】
本明細書の文脈において、ポリ乳酸ポリマーブロック(PLA)という用語は、80重量%以上の乳酸モノマー、特に90重量%以上、とりわけ95重量%以上の乳酸モノマーを含むポリマーブロックをいう。ポリ乳酸ポリマーブロックは、常に、第1のコポリマーブロックよりも高い乳酸含有量、コポリマー全体の重量を基準にして一般に10重量%以上、特に15重量%以上高い乳酸含有量を有する。
【0026】
本明細書の文脈において、ポリ−L−乳酸ブロック(PLLA)は、乳酸モノマーの90%以上、特に95%以上、とりわけ98%以上がL−乳酸モノマーであるPLAと定義される。逆に、本明細書の文脈において、ポリ−D−乳酸ブロック(PDLA)は、乳酸モノマーの90%以上、特に95%以上、とりわけ98%以上がD−乳酸モノマーであるPLAと定義される。本発明の効果に関して、このパーセンテージが高いほど、PLAブロックの結晶化度が高まり、ホットメルト接着剤の魅力的な性質に寄与すると考えられるので、好ましい。
【0027】
第2のブロックは1kg/mol以上の数平均分子量を有する。第2のブロックの分子量が低すぎると、ホットメルト接着剤におけるポリマーの有利な特性が得られなくなる。第2のブロックの数平均分子量が2kg/mol以上であるのが好ましいことがある。
【0028】
第2のブロックの分子量の上限は、ポリマー全体の分子量によって左右される。一般に、第2のブロックの分子量は50kg/mol以下、特に30kg/mol以下であり、実施形態によっては10kg/mol以下である。
【0029】
コポリマーの第1のブロックとコポリマーの第2のブロックとの重量比は、一般に、第2のブロックが第1のブロックと第2のブロックの合計の10〜90重量%、特に15〜80重量%をなす比である。第2のブロックがポリマーの全重量の20〜60重量%、実施形態によっては25〜40重量%をなすのが好ましいことがある。
【0030】
コポリマーの分子量は一般に2〜100kg/molである。コポリマーの分子量が低すぎると、良好な特性のホットメルト接着剤は得られなくなる。コポリマーの分子量が高すぎると、適切な加工性との関係で組成物の粘度が高くなりすぎてしまうことがある。ポリマーの分子量が5〜75kg/mol、特に5〜50kg/mol、とりわけ10〜30kg/molの範囲内にあるのが好ましいことがある。
【0031】
コポリマーは、乳酸と別の重合性モノマーとの数平均分子量2〜20kg/molの非晶質コポリマーでも、ポリ−L−乳酸(PLLA)及びポリ−D−乳酸(PDLA)から選択される数平均分子量1〜10kg/molのポリ乳酸ポリマーでもない、追加のブロックを含んでいてもよい。このような追加のブロックは本発明の効果に寄与しないと考えられるので、コポリマーの60重量%以上、特に70重量%以上、殊に80重量%以上、とりわけ90重量%以上が第1のブロック及び第2のブロックで構成されているのが好ましい。コポリマーが上述の第1のブロック及び第2のブロックからなるのが好ましい。
【0032】
本発明で用いられるブロックコポリマーは熱可塑性である。本明細書の文脈において、熱可塑性ポリマーという用語は、室温で固体であり、特定の温度を超えると可撓性、成形可能又は液状になり、上記温度未満で固体状態に戻り、これらの加熱及び冷却工程を繰り返すことができるポリマーをいう。
【0033】
本明細書の文脈において、分子量という用語は数平均分子量Mnを指し、これは試料中のすべてのポリマー鎖の統計的平均分子量であり、以下の通り定義される。
Mn=ΣNiMi/ΣNi
式中、Miは鎖の分子量であり、Niはその分子量の鎖の数である。Mnは重合メカニズムによって予測することができ、所定の重量の試料中の分子の数を決定する方法、例えば末端基定量法のような束一的方法によって測定される。分子量分布に関してMnに言及する場合、その分布においてMnの両側に同数の分子が存在する。本明細書の文脈において、Mnは、クロロホルムを溶媒及び移動相として使用し、ポリスチレンを標準として用いる相対的ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって決定される。検出は屈折率による。
【0034】
分子量は合成中又は合成後のポリマーで決定することができる。完成ポリマーしか利用できない場合、質量分析(MS)、NMR、LCを示差走査熱量測定(DSC)及びGPCと組合せて元の構造と相関させることができる。
【0035】
ブロックコポリマーは逐次重合によって得ることができ、第1の工程において、第1又は第2のブロックのいずれかを構成するモノマーを、ポリマーブロックが形成される重合条件下で混合する。次いで、他方のブロックを構成するモノマーを、最初に形成されたブロックとつながった追加のポリマーブロックの形成をもたらす重合条件下で、上記ポリマーブロックに追加する。非晶質ブロックの合成から開始するのが好ましいことがある。(互いに化学結合した)第1及び第2のブロックを含むコポリマーの粘度が、(互いに化学結合していない)個々の第1及び第2のポリマーブロックの混合物の粘度よりも低いことが判明した。これは、第1及び第2のポリマーブロックの混合物よりも、複雑でない装置でコポリマーを製造できるという利点を有する。
【0036】
第1及び第2のブロックは当技術分野で公知のポリマーから構成されるので、それぞれのブロックの形成に適した重合条件を選択することは当業者が適宜なし得る事項である。開始剤及び触媒のような適切な添加剤も当技術分野で公知である。
【0037】
一実施形態では、上述のコポリマーは、ホットメルト接着剤組成物において、該コポリマーの少なくとも1つの第2のブロックの立体化学とは反対の立体化学を有するポリ乳酸単位(PLAU)と組み合わされる。換言すると、第2のブロックがPLLAブロックである場合、PLAUはPDLA単位である。逆に、第2のブロックがPDLAブロックである場合、PLAUはPLLA単位である。
【0038】
このような追加のポリ乳酸単位を添加すると、低減したセットタイムをもたらすことが判明したが、これは多くの用途で有益である。
【0039】
PLAUを使用する場合、PLAUは、ブロックコポリマー全体の重量を基準に計算して、0.5〜20重量%の量で添加される。
【0040】
本発明のこの実施形態において、ブロックコポリマー全体の重量を基準に計算して、PLAUの量が0.5重量%未満であると、組成物のセットタイムの低減は概して得られなくなる。一方、PLAUの量が20重量%を超えると、その存在が組成物の性質に干渉し始め、例えば高すぎる低剪断粘度をもたらすことがある。
【0041】
PLAUがブロックコポリマーの1〜10重量%の量で存在するのが好ましいことがある。
【0042】
上述の通り、PLAUは、コポリマーの第2のブロックの立体化学とは反対の立体化学を有する。技術的観点からはコポリマーの第2のブロックについてPLLAとPDLAのいずれも実現可能な選択肢であるが、コポリマーの第2のブロックをPLLAとし、PLAUをPDLAとするのが好ましいことがある。その理由は、PLLAはD−乳酸よりも市場で入手し易いL−乳酸から得られるからである。組成物にはPLAUよりも第2のブロックの方が多く存在するので、第2のブロックにPLLAを使用し、PLAUにPDLAを使用するのが好ましい。
【0043】
PLLAは、乳酸モノマーの90%以上、特に95%以上、とりわけ98%以上がL−乳酸モノマーであるPLAと定義される。PDLAは、乳酸モノマーの90%以上、特に95%以上、とりわけ98%以上がD−乳酸モノマーであるPLAと定義される。本発明の効果に関して、上記パーセンテージが高いのが好ましい。
【0044】
PLAUは一般に0.75kg/mol以上の数平均分子量を有する。この追加の乳酸ポリマーのMnが低すぎると、望ましい程度までセットタイムを低減する効果が得られなくなる。
【0045】
PLAUが存在する場合、PLAUは、好ましくは0.75〜10kg/molの範囲内のMnを有する。第2の追加の乳酸ポリマーのMnが高すぎると、接着剤組成物中で追加の乳酸ポリマーの均質な存在を確保するのが難しくなりかねない。さらに、最終製品の粘度が高くなりすぎるおそれがある。他方、0.75kg/molの下限よりも高いMnは、組成物のセットタイムを短縮するのに役立ち得る。PLAUが1.5〜7.5kg/molの範囲内のMnを有するのが好ましいことがある。
【0046】
本発明の組成物で使用し得るPLAUは、PLLA又はPDLAポリマーの形態とし得る。ただし、PLAUが、他の単位も包含するポリマー中に存在することも可能である。例えば、PLLA単位がブロックとして存在するポリマー中に、単一種の立体化学の単位を90%未満しか含まない乳酸ポリマーのブロックが含まれていてもよい。かかるブロックの例は、メソ−ラクチド(50%のL−乳酸モノマーと50%のD−乳酸モノマーを含む)の重合によって得られるブロックである。
【0047】
一般に、PLAUは、乳酸由来のモノマーを、PLAU中又はPLAU以外のポリマー中のいずれかに、70重量%以上含むポリマー中に存在する。PLAUが、乳酸由来のモノマーを80重量%以上、特に90重量%以上含むポリマー中に存在するのが好ましいことがある。
【0048】
一実施形態では、ポリマー中に存在するPLAUは、そのポリマーの80重量%以上、特に90重量%以上をなす。
【0049】
ホットメルト組成物は、ホットメルト接着剤組成物に添加される当技術分野で公知の添加剤を含むことができる。適切な添加剤には、組成物の接着特性を改善する粘着付与剤、組成物のTgを低下させる可塑剤、セットタイムの改善及び粘度の低下に役立つワックス、粘度を調整するための油、組成物にボリュームを与えるための充填剤、組成物の安定性を高めるための酸化防止剤のような安定剤、着色剤、流動挙動を調整するためのレオロジー剤などが包含される。
【0050】
これらの成分及びそれらの効果は当技術分野で公知であり、ここでこれ以上説明する必要はない。
【0051】
接着剤組成物は、各種成分を液相で組合せることによって製造できる。
【0052】
一実施形態では、第1の工程でブロックコポリマーを液相で用意し、これに、組成物の追加の成分、例えば、使用する場合には追加のポリ乳酸、及び使用する場合には上述の追加成分の1種以上を、固相又は液相のいずれかで添加して、液状組成物を形成する。
【0053】
追加の乳酸ポリマーを使用する場合、好ましくは成分の素早い混合を確保する混合条件下で比較的高温の液相で添加される。
【0054】
ブロックコポリマー及び存在する場合には上述のPLAUが合計で、非反応性ホットメルト接着剤の50重量%以上、好ましくは60重量%以上、特に70重量%以上、とりわけ80重量%以上をなすのが好ましいことがある。幾つかの実施形態では、ホットメルト接着剤はその90重量%以上、さらにはその95重量%以上がブロックコポリマー及び、存在する場合には、PLAUからなる。
【0055】
本発明は、また、複数の基材を一緒に接合するための、本発明の非反応性ホットメルト接着剤組成物の使用に関する。そこで、本発明は、複数の基材を互いに固定された位置に配置するための方法であって、上述の非反応性ホットメルト接着剤組成物の所定量を液体の形態で第1の基材の表面に施与する工程と、前記所定量の非反応性ホットメルト接着剤組成物上に第2の基材の表面をあてがう工程と、複数の基材と非反応性ホットメルト接着剤組成物とのアセンブリを非反応性ホットメルト接着剤組成物の融点未満の温度に冷却する工程とを含む方法に関する。
【0056】
本発明のホットメルト接着剤組成物は、多種多様な基材を一緒に接着するのに適している。適切な基材には、厚紙又は紙基材が包含され、場合によってポリマーコーティング材料(例えば、ポリオレフィン、さらに好ましくはポリエチレン、又はポリラクチド)の層が設けられていてもよい。適切な基材には、プラスチック、特にポリオレフィン又はポリ乳酸などからなる物、織物、包装に使用される箔(例えば花又は植物の包装に使用される箔)だけでなく、カーペットの裏地も包含される。適切な基材には、金属箔もさらに包含される。
【0057】
一実施形態では、基材はパッケージの一部である。
【0058】
本発明の接着剤組成物は、その潜在的な生分解性のため、それ自体も生分解性である基材(例えば紙及び厚紙のようなセルロース系基材、及びポリ乳酸ポリマーを含む基材のような生分解性プラスチック基材)の接着に使用するのに特に魅力的である。
【0059】
互いに排他的なものでない限り、本発明の様々な実施形態を組合せることができることは当業者には明らかであろう。
【0060】
以下の実施例によって本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0061】
実施例1:ポリマーの合成及び特性
非晶質ε−カプロラクトン/乳酸ポリマーの第1のブロックとポリ−L−乳酸の第2のブロックとを含むコポリマーを以下の通り合成した。
反応容器内で、所定量のL−ラクチド(Corbion Purac社からPuralact B3という商品名で市販、光学純度>95%)及びε−カプロラクトン(Perstorp社(英国)から市販)を、重合開始剤として用いた1−ヘキサデカノール及び0.20重量%の酸化防止剤Irgafos 126(BASF社製)と室温で混合した。容器は窒素で繰返しフラッシングした。反応混合物を約5℃/分の速度で160℃に加熱した。固体の融解によって撹拌が可能となった時点で、混合物を150〜200rpmで撹拌した。混合物の温度が160℃に達した時点で、触媒として50ppmのエチルヘキサン酸スズ(II)を加えた。温度を約5℃/分の速度で180℃に上げた。温度が180℃に達した時点で反応温度に達する。この時点をt=0と設定した。
t=2h及びt=3.5hに、追加量として50ppmの触媒を添加した。最大速度400rpmでの連続的混合下で反応を継続させた。反応は180℃で4時間、次いで160℃で一晩続けた。これによって第1のブロックが合成され、その組成はGPC、LC及びDCS分析によって確認した。
【0062】
第2のブロックを合成するため、追加量のラクチドモノマーを添加し、エチルヘキサン酸スズ(II)触媒濃度を150ppmに調整した。反応温度は160℃に保った。2.5時間後に、225ppmの触媒失活剤ADK STAB AX−71を添加した。混合物を300〜400rpmで30分間反応させた。30分後に、1時間真空に引いて生成物から過剰の遊離モノマー及び窒素を除去した。次いで、真空を解いて、1.0重量%の熱安定剤Stabaxol Iを添加した。混合物は30分間300〜400rpmに保った。次いで、生成物を反応容器から取り出し、室温に冷却した。DSC分析は、TA Instrument Q−serie DSC 2000で、以下のプログラム:−50℃、10℃/分で180℃まで、−10℃/分で−50℃まで、10℃/分で180℃まで、で行った。
【0063】
上述の方法で製造した様々なポリマーの組成及び特性を以下の表1に示す。
【0064】
【表1】
【0065】
実施例2:接着剤組成物及び試験
配合物は以下の出発材料から製造した。熱可塑性樹脂として、50:50カプロラクトン:L−乳酸のモノマー重量比で12kg/molの第1ブロック、及び4kg/molのPLLAの第2ブロックを含む、カプロラクトンと乳酸のブロックコポリマーを使用した。コポリマーは、16kg/molの分子量Mnを有していた。ポリマーは実施例1に記載の方法で調製した。
さらに、PLAUとして、2.0kg/molのMnを有するPDLA(セチルアルコールで開始)を用いた。Mnはクロマトグラフィー技術によって測定した。
【0066】
3種類の組成物、すなわち上記コポリマーを含んでいたがPLAUは含んでいなかった組成物A、並びに上記コポリマーと異なる量のPLAUとを含む組成物B及びCを調製した。すべての組成物は、撹拌下で均質混合物が得られるまで、熱可塑性樹脂をPLAUと液相で混合することによって調製した。
【0067】
これらの組成物を以下の手動法によって試験した。段ボール基材上に、その波形構造に垂直に、試験すべき接着剤配合物の長さ50mmのラインを165℃で施与した。1秒以内にボール紙を折り重ねることによって第2の基材を適用し、中程度の圧力を接合部に加えた。所定のセットタイム後に、圧力を解除し、接合部を引き剥がした。次いで、接合部を調べて50%以上の繊維引裂が達成されたか否か及び接着剤が無傷なままであったか否かをチェックした。この試験を繰り返し行って、セットタイム、すなわち50%の繊維引裂が得られる最短時間を求めた。1秒以内のセットタイムに実験を狭める際には、試験は確認のため3回行った。手動試験であったので小さなバラツキは容認した。
【0068】
【表2】
【0069】
表2から明らかな通り、いずれもPLAUを含む組成物B及びCは、組成物Aのセットタイムと比較して実質的に改善されたセットタイムを示す。組成物BよりもPLAU含有量が若干高い組成物Cは一段と低いセットタイムを有していた。