特許第6644913号(P6644913)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6644913
(24)【登録日】2020年1月10日
(45)【発行日】2020年2月12日
(54)【発明の名称】蒸発式バーナ
(51)【国際特許分類】
   F23D 3/40 20060101AFI20200130BHJP
【FI】
   F23D3/40 G
【請求項の数】9
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2018-553674(P2018-553674)
(86)(22)【出願日】2017年9月14日
(86)【国際出願番号】JP2017033274
(87)【国際公開番号】WO2018100843
(87)【国際公開日】20180607
【審査請求日】2019年3月20日
(31)【優先権主張番号】特願2016-234337(P2016-234337)
(32)【優先日】2016年12月1日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390010227
【氏名又は名称】株式会社三五
(74)【代理人】
【識別番号】110000213
【氏名又は名称】特許業務法人プロスペック特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉原 申也
(72)【発明者】
【氏名】土屋 由弘
【審査官】 藤原 弘
(56)【参考文献】
【文献】 独国特許出願公開第102004057757(DE,A1)
【文献】 実開昭58−21715(JP,U)
【文献】 特開2003−90512(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第1970624(EP,A2)
【文献】 特開2002−147715(JP,A)
【文献】 特開2002−13706(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0234792(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0102116(US,A1)
【文献】 特開平2−287006(JP,A)
【文献】 特開平2−17306(JP,A)
【文献】 特開平2−106603(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/195046(WO,A1)
【文献】 国際公開第2017/005241(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23D 3/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
底壁と周壁とからなる有底筒状の容器である内側ハウジングによって画定される空間である燃焼室と、
前記燃焼室における前記内側ハウジングの前記底壁側の端部である第1端部に配設され且つ毛細管構造及び/又は多孔質構造を有する部材である含浸部材と、
前記含浸部材に燃料を供給して前記含浸部材に前記燃料を含浸させる燃料供給部と、
前記含浸部材から蒸発する前記燃料の蒸気を加熱して着火させる着火装置と、
を備え、
前記燃焼室に開口し且つ前記燃焼室に空気を供給する複数の給気孔が前記内側ハウジングの前記周壁に形成されている、
蒸発式バーナであって、
少なくとも前記燃料供給部から前記含浸部材へと前記燃料が浸入する前記含浸部材の表面領域である浸入領域に対して前記含浸部材を挟んで対向する前記含浸部材の表面領域である対向領域において、前記燃料の透過率に対応する特性値である燃料透過率が前記含浸部材よりも低い部材である滲出防止部材を更に備え、
前記滲出防止部材の一部が前記含浸部材の内部に埋設され且つ前記滲出防止部材のその他の部分が前記含浸部材の表面から突出しており、
前記内側ハウジングの軸方向に直交する平面への投影図において、前記滲出防止部材の前記含浸部材の内部に埋設されている部分が、前記滲出防止部材の前記含浸部材の表面から突出している部分に含まれ、
前記滲出防止部材の前記含浸部材の表面から突出している部分と前記含浸部材との界面に段差が形成されている、
蒸発式バーナ。
【請求項2】
請求項1に記載の蒸発式バーナであって、
前記滲出防止部材が、前記燃料が透過することができない非透過性の部材である、
蒸発式バーナ。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の蒸発式バーナであって、
前記滲出防止部材は、前記含浸部材とは別個の部材である、
蒸発式バーナ。
【請求項4】
請求項3に記載の蒸発式バーナであって、
前記滲出防止部材は、前記含浸部材と焼結によって接合されている、
蒸発式バーナ。
【請求項13】
請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載の蒸発式バーナであって、
前記内側ハウジングの軸方向が水平方向であり、
少なくとも前記複数の給気孔のうち前記内側ハウジングの軸方向において前記含浸部材に最も近い給気孔と前記含浸部材との距離である第1距離だけ前記含浸部材から前記第2端部側に離れた位置における前記内側ハウジングの前記周壁において、前記燃焼室内における前記着火装置の先端よりも鉛直方向における上側には給気孔が形成されていない、
蒸発式バーナ。
【請求項14】
請求項13に記載の蒸発式バーナであって、
少なくとも前記内側ハウジングの軸方向において前記第1距離だけ前記含浸部材から前記第2端部側に離れた位置における前記内側ハウジングの前記周壁において、前記燃焼室の鉛直方向における中心よりも上側には給気孔が形成されていない、
蒸発式バーナ。
【請求項15】
請求項1乃至請求項4並びに請求項13及び請求項14の何れか1項に記載の蒸発式バーナであって、
前記燃焼室内において前記含浸部材よりも前記燃焼室の前記第1端部とは反対側の端部である第2端部に近い側に前記含浸部材と所定の間隔を空けて配設された仕切部材を更に備え、
前記燃焼室において前記仕切部材よりも前記第1端部側に位置する空間である着火空間と、前記燃焼室において前記仕切部材よりも前記第2端部側に位置する空間である燃焼空間と、が前記仕切部材に形成された間隙及び/又は貫通孔の少なくとも一部を介して連通している、
蒸発式バーナ。
【請求項16】
請求項15に記載の蒸発式バーナであって、
前記滲出防止部材は、前記仕切部材の一部として構成されている、
蒸発式バーナ。
【請求項17】
請求項16に記載の蒸発式バーナであって、
前記仕切部材は、前記内側ハウジングには接合されていない、
蒸発式バーナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸発式バーナに関する。より具体的には、本発明は、燃料の着火及び燃焼の定常化を早期に達成することができる蒸発式バーナに関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼル・エンジン等の内燃機関から排出される排気には、例えば煤の微粒子(PM)及び窒素酸化物(NOx)等の有害物質が含まれる。そこで、地球環境保護等の観点から、例えばPMを捕集するフィルタ(DPF)及びNOx還元触媒等の排気浄化手段を内燃機関の排気通路に設けてPM及びNOxを取り除き、排気を浄化することが広く行われている。
【0003】
ところで、内燃機関の稼働に伴ってDPFにPMが堆積してゆくので、堆積したPMを所定の時期に燃焼させてDPFを再生させる必要がある。また、NOx還元触媒は、例えば内燃機関の冷間始動時等、排気の温度が低い場合、触媒の温度が低く、触媒が活性化されないので、NOxの還元による除去が困難となる。従って、排気に含まれるNOxを取り除くためには、NOx還元触媒が活性化されるのに十分な温度にまでNOx還元触媒の温度を上昇させる必要がある。
【0004】
そこで、当該技術分野においては、排気通路中に配設されたバーナ(燃焼器)において燃料を燃焼させて高温の燃焼ガスを発生させることにより、DPF及びNOx還元触媒等の排気浄化手段に流入する排気の温度を上昇させることが知られている(例えば、特許文献1を参照。)。これによれば、DPFに堆積したPMを燃焼させてDPFを再生させる機会を増やしたり、NOx還元触媒の温度を迅速に上昇させてNOx還元触媒を早期に活性化させたりすることができる。その結果、内燃機関から排出される排気に含まれる有害物質(PM及びNOx)を有効に取り除き、排気を浄化することができる。また、このようなバーナを車両の乗員室を暖房するための車両用ヒータとして用いることも知られている(例えば、特許文献2を参照。)。
【0005】
上記のようなバーナとしては、例えば、燃焼室の一端に配設されたウィック(含浸部材)に燃料を含浸させ、ウィックから発生する燃料の蒸気をウィックの近傍に配設されたグロープラグによって加熱して着火・燃焼させる蒸発式バーナが従来知られている。このようなバーナを用いて、DPFを再生させる機会を増やしたり、NOx還元触媒を早期に活性化させたり、車両の乗員室の暖房を早期に開始したりするためには、バーナにおける燃料の着火及び燃焼の定常化を早期に達成する必要がある。
【0006】
そのためには、ウィック全体に燃料を浸透させてウィックの全面から燃料を蒸発させることが望ましい。しかしながら、例えば着火時等、燃料の供給量が多い場合、ウィック全体に燃料が行き渡る前に、燃料が液体のままウィックを突き抜けて(滲み出して)しまい、ウィックの全面から燃料を蒸発させることが困難となる場合がある。
【0007】
そこで、当該技術分野においては、燃焼式ヒータ(蒸発式バーナ)において、ケーシングの底部内表面にほぼ中心部から放射状に形成された多数の燃料分配溝を含み燃料供給機構からの燃料をウィック全面に分配させる燃料分配手段を、燃料がウィックに達する手前に配置することが知られている(例えば、特許文献3を参照。)。これによれば、ウィック全体に燃料が行き渡る移動時間を早くすると共に、ウィック自身の昇温時間を早くすることにより、燃焼式ヒータの立ち上げを早くすることができるとされている。
【0008】
しかしながら、上記のようにウィック全体に燃料を均等に行き渡らせるための燃料分配手段を新たに設けることは、例えば、蒸発式バーナの構成の複雑化、部品点数の増大及び製造コストの増大等の問題を招く虞がある。また、燃料の供給量が少ない場合、燃料分配溝の全体に燃料が行き渡らず(燃料分配溝が燃料によって満たされず)、燃料分配手段の下方に燃料が滞留する場合がある。その結果、ウィック全体に燃料を均等に行き渡らせて燃料の着火及び燃焼の定常化を早期に達成することが困難となる虞がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】実開平02−140120号公報
【特許文献2】実用新案登録第2553419号公報
【特許文献3】特許第3792116号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述したように、当該技術分野においては、燃料供給部から含浸部材(ウィック)に供給された燃料を含浸部材の内部において均等に分散させて燃料の着火及び燃焼の定常化を早期に達成することができる蒸発式バーナが求められている。本発明は、このような要求に応えるために為されたものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、鋭意研究の結果、上記のような要求に応えるためには、燃料の供給量が多い場合に含浸部材を燃料が液体のまま突き抜けることを防止することが重要であることを見出した。
【0012】
上記に鑑みて、本発明に係る蒸発式バーナ(以降、「本発明バーナ」と称される場合がある。)は、燃焼室と、含浸部材と、燃料供給部と、着火装置と、を備える蒸発式バーナである。
【0013】
燃焼室は、底壁と周壁とからなる有底筒状の容器である内側ハウジングによって画定される空間である。含浸部材は、前記燃焼室における前記内側ハウジングの前記底壁側の端部である第1端部に配設され且つ毛細管構造及び/又は多孔質構造を有する部材である。燃料供給部は、前記含浸部材に燃料を供給して前記含浸部材に前記燃料を含浸させる。着火装置は、前記含浸部材から蒸発する前記燃料の蒸気を加熱して着火させる。更に、前記燃焼室に開口し且つ前記燃焼室に空気を供給する複数の給気孔が前記内側ハウジングの前記周壁に形成されている。
【0014】
加えて、本発明バーナは、前記燃料の透過率に対応する特性値である燃料透過率が前記含浸部材よりも低い部材である滲出防止部材を更に備える。この滲出防止部材は、少なくとも前記燃料供給部から前記含浸部材へと前記燃料が浸入する前記含浸部材の表面領域である浸入領域に対して前記含浸部材を挟んで対向する前記含浸部材の表面領域である対向領域に設けられている。
【0015】
前記滲出防止部材は、前記燃料が透過することができない非透過性の部材であってもよい。また、前記滲出防止部材は、前記含浸部材とは別個の部材であってもよい。この場合、前記滲出防止部材は、前記含浸部材と焼結によって接合され得る。
【0016】
更に、前記滲出防止部材の全体が、前記含浸部材の内部に埋設されていてもよい。或いは、前記滲出防止部材の全体が、前記含浸部材の外部に配置されていてもよい。或いは、前記滲出防止部材の一部が前記含浸部材の内部に埋設され且つ前記滲出防止部材のその他の部分が前記含浸部材の表面から突出していてもよい。この場合、前記内側ハウジングの軸方向に直交する平面への投影図において、前記滲出防止部材の前記含浸部材の内部に埋設されている部分が、前記滲出防止部材の前記含浸部材の表面から突出している部分に含まれていてもよく、加えて、前記滲出防止部材の前記含浸部材の表面から突出している部分と前記含浸部材との界面に段差が形成されていてもよい。
【0017】
本発明の1つの側面において、本発明バーナは、前記燃焼室内において前記含浸部材よりも前記燃焼室の前記第1端部とは反対側の端部である第2端部に近い側に前記含浸部材と所定の間隔を空けて配設された仕切部材を更に備える。そして、前記燃焼室において前記仕切部材よりも前記第1端部側に位置する空間である着火空間と、前記燃焼室において前記仕切部材よりも前記第2端部側に位置する空間である燃焼空間と、が前記仕切部材に形成された間隙及び/又は貫通孔の少なくとも一部を介して連通している。
【0018】
この場合、前記滲出防止部材は、前記仕切部材の一部として構成されていてもよく、加えて、前記仕切部材は、前記内側ハウジングには接合されていなくてもよい。
【0019】
本発明のもう1つの側面において、前記内側ハウジングの軸方向は水平方向である。更に、少なくとも前記内側ハウジングの軸方向において第1距離だけ前記含浸部材から前記第2端部側に離れた位置における前記内側ハウジングの前記周壁において、前記燃焼室内における前記着火装置の先端よりも鉛直方向における上側には給気孔が形成されていない。上記「第1距離」は、前記複数の給気孔のうち前記含浸部材に最も近い給気孔と前記含浸部材との距離である。
【0020】
この場合、少なくとも前記内側ハウジングの軸方向において前記第1距離だけ前記含浸部材から前記第2端部側に離れた位置における前記内側ハウジングの前記周壁において、前記燃焼室の鉛直方向における中心よりも上側には給気孔が形成されていないようにしてもよい。
【発明の効果】
【0021】
上述したように、本発明に係る蒸発式バーナ(本発明バーナ)においては、含浸部材の燃料透過率よりも低い燃料透過率を有する部材である滲出防止部材が、少なくとも対向領域に設けられている。上記「対向領域」は、燃料供給部から含浸部材へと燃料が浸入する含浸部材の表面領域(浸入領域)に対して含浸部材を挟んで対向する含浸部材の表面領域である。これにより、例えば着火時等、燃料の供給量が多い場合においても、燃料が液体のまま含浸部材(ウィック)を突き抜ける(滲み出す)可能性を低減することができる。
【0022】
このように滲出防止部材によって液体のまま含浸部材を突き抜ける(滲み出す)ことが抑制された燃料の少なくとも一部は、滲出防止部材と含浸部材との界面に沿う方向に分散される。換言すれば、含浸部材を透過して滲出防止部材に到達した燃料の少なくとも一部は、含浸部材の内部に広がるように分散される。従って、含浸部材の対向領域への燃料の含浸量(浸透量)は減少するものの、含浸部材の対向領域の周囲(外縁)への燃料の含浸量(浸透量)は増大するので、含浸部材の表面において燃料を蒸発させることができる面積を増大させることができる。
【0023】
その結果、滲出防止部材を備えない従来技術に係る蒸発式バーナ(以降、「従来バーナ」と称される場合がある)に比べて、含浸部材全体に燃料を均等に行き渡らせることができる。従って、本発明バーナによれば、燃料の着火及び燃焼の定常化を早期に達成することができる。
【0024】
また、上述したように滲出防止部材の一部が含浸部材の内部に埋設され且つ滲出防止部材のその他の部分が含浸部材の表面から突出している場合、内側ハウジングの軸方向に直交する平面への投影図において、滲出防止部材の含浸部材の内部に埋設されている部分が滲出防止部材の含浸部材の表面から突出している部分に含まれていてもよい。換言すれば、滲出防止部材の含浸部材の表面から突出している部分が含浸部材の表面に沿って(例えば、フランジ状に)延在して(広がって)いてもよい。
【0025】
これによれば、含浸部材を透過して滲出防止部材に到達した燃料が滲出防止部材の含浸部材の内部に埋設されている部分と含浸部材との界面に沿って含浸部材の対向領域の外縁に染み出してきたとしても、滲出防止部材の含浸部材の表面から突出している部分と含浸部材との界面に沿って当該燃料が広がり、その間に当該燃料が含浸部材に再び含浸される現象である「再含浸」が生ずる可能性が高まる。その結果、滲出防止部材の含浸部材の内部に埋設されている部分と含浸部材との界面に沿って含浸部材の対向領域の外縁に燃料が液体のまま染み出す可能性を低減し、より確実に含浸部材の全体に燃料を均等に行き渡らせることができる。
【0026】
更に、上述したように仕切部材を更に備えることにより、例えば内燃機関の出力変動等に伴う排気の圧力変動の影響により燃焼ガスが含浸部材の近傍にまで逆流して、本発明バーナにおける失火及び/又は燃焼不良等の問題が生ずる可能性を低減することができる。また、この場合、上述したように滲出防止部材を仕切部材の一部として構成することにより、仕切部材を内側ハウジングに接合することが不要となるので、本発明バーナの構成部品を減らすことができ、結果として、例えば製造工程の簡素化及び製造コストの削減等を達成することができる。
【0027】
加えて、上述したように、内側ハウジングの軸方向が水平方向となる状態において本発明バーナが使用される場合に含浸部材に最も近い給気孔を着火装置の先端又は燃焼室の中心よりも低い領域(鉛直方向における下方側の領域)にのみ形成することにより、着火装置によって燃料が着火されて発生した火炎が上方から煽られて失火したり燃焼が不安定になったりする可能性を低減することができる。
【0028】
滲出防止部材の全体が含浸部材の外部に配置されている場合、又は、滲出防止部材の一部が含浸部材の表面から突出している場合、上記のように給気孔を配置することにより、滲出防止部材を中心として旋回する空気の流れを生じさせることができる。これにより、着火装置によって燃料が着火されて発生した火炎が滲出防止部材の外縁に沿って容易に燃え広がることができ、より確実に燃料の着火及び燃焼の定常化を早期に達成することができる。
【0029】
本発明の他の目的、他の特徴及び付随する利点は、以下の図面を参照しつつ記述される本発明の各実施形態についての説明から容易に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明の第1実施形態及び第2実施形態に係る蒸発式バーナ(第1バーナ及び第2バーナ)の内側ハウジングの軸を含む平面による模式的な断面図である。
図2】第1バーナを内側ハウジングの軸方向に沿って下流側から観察した場合における模式的な平面図である。
図3図2に示した第1バーナ及び第2バーナの線A−Aを含む平面による模式的な断面図である。
図4】第1バーナ及び第2バーナが備える滲出防止部材の他の具体例を示す模式的な断面図である。
図5】第1バーナ及び第2バーナが備える滲出防止部材の埋設部分の形状の種々の具体例を示す模式的な断面図である。
図6】第1バーナ及び第2バーナが備える滲出防止部材の突出部分の形状の1つの具体例を示す模式的な断面図である。
図7】第1バーナ及び第2バーナが備える滲出防止部材の突出部分の形状のもう1つの具体例を示す模式的な断面図である。
図8】第1バーナ及び第2バーナが備える滲出防止部材の突出部分の形状の更にもう1つの具体例を示す模式的な断面図である。
図9】複数の着火装置を備える第1バーナの1つの変形例を示す模式的な平面図である。
図10】本発明の第3実施形態に係る蒸発式バーナ(第3バーナ)の内側ハウジングの軸を含む平面による模式的な断面図である。
図11】第3バーナを内側ハウジングの軸方向に沿って下流側から観察した場合における模式的な平面図である。
図12】第3バーナが備える仕切部材の1つの変形例を示す模式的な平面図である。
図13】第3バーナが備える仕切部材のもう1つの変形例を示す模式的な平面図である。
図14】第3バーナが備える仕切部材の更にもう1つの変形例を示す模式的な平面図である。
図15】第3バーナが備える仕切部材の更にもう1つの変形例を示す模式的な平面図である。
図16】滲出防止部材が仕切部材の一部として構成されている第3バーナの1つの変形例の内側ハウジングの軸を含む平面による模式的な断面図である。
図17】滲出防止部材が仕切部材の一部として構成されており且つ含浸部材に部分的に埋設されている第3バーナの1つの変形例の内側ハウジングの軸を含む平面による模式的な断面図である。
図18】滲出防止部材が仕切部材の一部として構成されており且つ含浸部材に部分的に埋設されている第3バーナのもう1つの変形例の内側ハウジングの軸を含む平面による模式的な断面図である。
図19】滲出防止部材が仕切部材の一部として構成されており且つ含浸部材に部分的に埋設されている第3バーナの更にもう1つの変形例の内側ハウジングの軸を含む平面による模式的な断面図である。
図20】仕切部材の一部として構成された滲出防止部材を介して仕切部材と含浸部材とが接合されている第3バーナの1つの変形例の模式的な(a)斜視図、(b)内側ハウジングの軸方向に沿って下流側から観察した場合における模式的な平面図、及び(c)上記(b)に示した線A−Aを含む平面による模式的な断面図である。
図21図20に示した滲出防止部材を介して接合された仕切部材及び含浸部材を組み込んだ第3バーナの模式的な(a)内側ハウジングの軸方向に沿って下流側から観察した場合における模式的な平面図及び(b)上記(a)に示した線B−Bを含む平面による模式的な断面図である。
図22】第3バーナが備える仕切部材の構成の1つの変形例を示す模式的な断面図及び部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
《第1実施形態》
以下、本発明の第1実施形態に係る蒸発式バーナ(以下、「第1バーナ」と称される場合がある。)の構成の一例につき、図面を参照しながら、より詳しく説明する。
【0032】
〈バーナの構成〉
図1は、燃焼室を画定する内側ハウジングの軸を含む平面による第1バーナの模式的な断面図である。以下の説明においては、第1バーナが使用される状態(例えば、車両に搭載される状態等)における鉛直方向上側(図1の紙面の上側)を「上方」、その反対側である下側を「下方」とする。更に、図1の紙面に向かって左側(含浸部材側)を「上流側」、その反対側である右側を「下流側」とする。
【0033】
第1バーナは、前述したように、燃焼室と、含浸部材と、燃料供給部と、着火装置と、を備える蒸発式バーナである。燃焼室は、底壁と周壁とからなる有底筒状の容器である内側ハウジングによって画定される空間である。含浸部材は、燃焼室における内側ハウジングの底壁側の端部である第1端部に配設され且つ毛細管構造及び/又は多孔質構造を有する部材である。燃料供給部は、含浸部材に燃料を供給して含浸部材に燃料を含浸させる。着火装置は、含浸部材から蒸発する燃料の蒸気を加熱して着火させる。
【0034】
図1に示した第1バーナ100は、外側ハウジング114と、外側ハウジング114の内側に配設された内側ハウジング113とを備える。外側ハウジング114及び内側ハウジング113の形状は特に限定されず、例えば、第1バーナ100の用途及び使用環境等に応じて適宜設計することができる。本例においては、外側ハウジング114は円筒状の周壁として形成し、内側ハウジング113は外側ハウジング114の周壁と同軸の円筒状の周壁113aと周壁113aの上流側の端部(第1端部)に配設された底壁111とからなる有底筒状の容器として形成した。
【0035】
外側ハウジング114の周壁と内側ハウジング113の周壁113aとの間には、上流側及び下流側の両端が閉じられた空間である給気通路115が形成されている。外側ハウジング114の周壁には開口部である空気導入口114aが形成されており、この空気導入口114aには給気管116が接続され、図示しない給気手段によって外側ハウジング114内の給気通路115に空気が供給されるようになっている。給気通路115に供給される空気の流量は、図示しない流量制御部によって任意に変更することができるようになっている。
【0036】
本例においては、燃焼室110の第1端部近傍に空気導入口114aが形成され、この空気導入口114aには給気管116が接続されている。しかしながら、燃焼室110の内部に空気を供給することが可能である限り、給気管116の接続箇所は特に限定されない。
【0037】
尚、上記のように外側ハウジング114の周壁と内側ハウジング113の周壁113aとの間に形成された給気通路115を通じて供給される空気の層は、断熱層として機能することができる。その結果、燃料の燃焼時において燃焼室110内の熱が外側ハウジング114に伝導されて第1バーナ100以外の設備等へ熱による影響を与えることを防止することができる。外側ハウジング114の下流側の端部には、フランジ等からなる取付用部材117が外向きに突出して設けられている。
【0038】
燃焼室110は、内側ハウジング113によって画定される空間である。内側ハウジング113の底壁111側(上流側)の端部である第1端部には含浸部材120が配設されている。従って、実質的には、内側ハウジング113の内部空間の含浸部材120よりも下流側の空間が燃焼室110に該当する。一方、内側ハウジング113の第1端部(上流側端部)とは反対側の端部である第2端部(下流側端部)は、開口部113bとして開口している。
【0039】
尚、本例においては、内側ハウジング113の第2端部にオリフィス118を内嵌固定して、燃焼室110の断面積を小さくした(即ち、燃焼ガスの流路を狭くした)。これにより、燃焼室110の第2端部に到達した燃焼ガスの一部が上流側へと転向して、燃焼室110におけるガスの混合を促進すると共に、未燃燃料を上流側へと環流させて燃焼させることにも繋がる。但し、燃焼室110の下流部における断面積を小さくするための手法は上記に限定されず、例えば、上記のように別個の部品としてのオリフィス118を配設するのではなく、内側ハウジング113の周壁113aを内側に屈曲させてオリフィスを形成してもよい。また、本発明に係る蒸発式バーナにおいて、燃焼室110の第2端部側の断面積を小さくすることは必須の構成要件ではなく、上記のようにオリフィスを形成しなくてもよい。
【0040】
含浸部材120は、耐熱性及び燃料に対する化学的安定性(例えば、耐腐食性等)等を有すると共に、その内部に燃料を含浸させることが可能な材料によって形成される。具体的には、含浸部材120は、例えば金属及びセラミック材料等によって形成され、毛細管構造及び/又は多孔質構造を有する部材である。本例においては、金属繊維及び/又はセラミック繊維を押し固めることによって形成されたウィックを含浸部材120として使用した。
【0041】
また、含浸部材120の形状は、特に限定されないが、本例においては、含浸部材120を円盤状に形成し、内側ハウジング113の軸に直交する平面による燃焼室110の断面全体に亘るように配設した。
【0042】
内側ハウジング113の底壁111には貫通孔111aが形成されており、この貫通孔111aには燃料供給管131が接続されている。これにより、図示しない燃料供給装置から燃料供給管131を通して、含浸部材120の上流側の主面に燃料が供給される。底壁111における貫通孔111aの位置(即ち、燃料供給管131を接続する位置)は、含浸部材120に燃料を供給することが可能である限り、特に限定されない。本例においては、含浸部材120の上流側の主面の中心部に対応する底壁111の位置に燃料供給管131を接続した。尚、上述した燃料供給装置及び燃料供給管131は燃料供給部130を構成する。
【0043】
更に、外側ハウジング114における、含浸部材120の径方向の外側の端部の近傍に対応する位置には、着火装置140が配設されている。具体的には、外側ハウジング114の下側には、着火装置取付部材141が配設されている。着火装置取付部材141の先端(燃焼室110側の端部)は、給気通路115の内部に達しているが、内側ハウジング113とは当接しないように構成されている。これにより、燃料の燃焼時において燃焼室110内の熱が着火装置取付部材141を経由して外側ハウジング114に伝導されて蒸発式バーナ100以外の設備等へ熱による影響を与えることを防止することができる。
【0044】
着火装置取付部材141には着火手段142が固定されている。着火手段142は、含浸部材120から蒸発する燃料の蒸気を加熱して着火させることが可能である限り特に限定されず、例えば点火プラグ等の任意の手段を使用することができる。本例においては、着火手段142としてグロープラグを使用した。
【0045】
着火手段142の配設位置は、含浸部材120から蒸発する燃料の蒸気を加熱して着火させることが可能である限り特に限定されない。典型的には、着火手段142は、含浸部材120の下流側の近傍に配設される。後述するように仕切部材によって燃焼室110が上流側の着火空間と下流側の燃焼空間とに分割される場合は、着火手段142は着火空間に露出するように配設される。本例においては、着火手段142は、含浸部材120の上下方向の中央よりも下側の内側ハウジング113の周壁113aから燃焼室110における含浸部材120の近傍において上方に向かって突出するように配設されている。
【0046】
内側ハウジング113の周壁113aには、燃焼室110の上流側に開口し且つ燃焼室110に空気を供給する第1給気孔110c及び燃焼室110の下流側に開口し且つ燃焼室110に空気を供給する第2給気孔110dが形成されている。以降、第1給気孔110c及び第2給気孔110dを単に「給気孔」と総称する場合がある。本例においては、内側ハウジング113の周壁113aに穿設された小孔からなる第1給気孔110cが、所定の間隔にて周壁113aの周方向の全体に亘って複数形成されている。但し、後述するように、第2給気孔110dを周壁113aの周方向の全体に亘って形成するのではなく、周壁113aの一部(例えば、下部等)のみに形成してもよい。
【0047】
第1バーナ100における内側ハウジング113、外側ハウジング114、給気管116、含浸部材120、燃料供給管131、着火装置取付部材141、及び着火手段142、並びにこれらを構成する部材及びこれらに付随する部材の位置決め及び固定は、例えば溶接等の周知の手法によって行うことができる。
【0048】
また、第1バーナ100を構成する上記を始めとする種々の構成要素を形成する材料等は、第1バーナ100の使用環境及び使用条件において想定される荷重、振動、温度及び圧力等を考慮して適宜選択及び設計することができる。但し、これらの構成要素の材料等については当業者に周知であるので、これ以上の説明は省略する。
【0049】
尚、図1においては、第1バーナ100が備える滲出防止部材は省略されている。滲出防止部材の詳細については後に詳しく説明するが、それに先立ち、含浸部材からの燃料の突き抜け(滲み出し)との関連に着目しながら、含浸部材に求められる性状について以下に説明する。
【0050】
〈含浸部材の性状〉
含浸部材に求められる性状としては、例えば、燃焼室内における着火装置による燃料の着火及び着火後の燃焼の維持に十分な量の燃料の蒸気を発生させることが可能な量の燃料を保持(含浸)することができること、並びに、燃料供給部から供給された燃料を燃料供給部による供給圧力及び/又は毛細管現象によって含浸部材の内部に迅速に分散させることができること等を挙げることができる。
【0051】
上記のような性状は、例えば、含浸部材を構成する材料と燃料との親和性、含浸部材の内部構造の緻密さ及び空隙率、並びに含浸部材の大きさ及び形状(例えば、厚み及び面積等)等によって変化する。しかしながら、現実には、含浸部材を構成する構成要素の材料、大きさ及び形状、並びに含浸部材の製造条件(例えば、構成要素を押し固めるときの圧力等)等には自ずと制約がある。
【0052】
また、含浸部材の内部の空隙率が高いほど、より多くの燃料を含浸部材の内部に保持(含浸)することができると考えられる。しかしながら、空隙率が過度に高い場合、含浸部材の内部に燃料を保持(含浸)することが困難となり、例えば、燃焼室の下方に液体のままの燃料が流れて溜まったり、燃料供給部とは反対側の含浸部材の表面から燃料が液体のまま突き抜けたり(滲み出したり)する虞がある。逆に、空隙率が過度に低い場合、含浸部材の内部に燃料を浸入させるためには燃料供給部による燃料の供給圧力を高める必要があるが、空隙率が低いために含浸部材の内部に保持(含浸)することができる燃料の量が少ないために、やはり燃料供給部とは反対側の含浸部材の表面から燃料が液体のまま突き抜ける(滲み出る)虞がある。
【0053】
以上のような理由から、従来バーナにおいて上記のような燃料の突き抜け(滲み出し)が起こらないようにするためには、含浸部材の性状に応じて、燃料供給部による燃料の供給速度を所定の閾値未満に抑える必要があった。このため、従来バーナにおいては、例えば着火時等、燃料の供給速度を高める必要がある場合においても、燃料の供給速度を十分に高めることができず、燃料の着火及び燃焼の定常化を早期に達成することが困難であった。
【0054】
〈燃料の突き抜けのメカニズム〉
そこで、本発明者は鋭意研究の結果、以下のような知見を得た。先ず、上記のような燃料の突き抜け(滲み出し)に対しては、含浸部材の厚みによる影響が大きい。具体的には、含浸部材の厚みが大きいほど、上記のような燃料の突き抜け(滲み出し)が起こり難くなる。しかしながら、蒸発式バーナの設計仕様上、含浸部材の厚みを無制限に大きくすることはできない。
【0055】
含浸部材の厚みを一定にした場合、含浸部材の内部構造を緻密にするほど(即ち、空隙率を小さくするほど)、燃料の透過率は下がる(燃料が滲み出し難くなる)。従って、上述したように、燃料の供給速度を所望の程度にて維持するためには、含浸部材の内部構造を緻密にするほど、燃料供給部による燃料の供給圧力をより高くする必要がある。しかしながら、含浸部材の内部構造を緻密にするほど、含浸部材の空隙率が低くなり、含浸部材の内部に保持(含浸)することができる燃料の量が少なくなる。その結果、燃料供給部とは反対側の含浸部材の表面から燃料が液体のまま突き抜ける(滲み出る)虞が高まる。
【0056】
また、上記のように燃料供給部とは反対側の含浸部材の表面から液体のまま突き抜ける(滲み出る)燃料の量は、含浸部材の内部における毛細管現象による燃料の浸透速度によっても影響される。具体的には、上記浸透速度が高いほど、含浸部材の内部における燃料の分散(広がり)が大きくなり、液体のまま含浸部材を突き抜ける(滲み出る)燃料の量が減少する。逆に、上記浸透速度が低いほど、含浸部材の内部における燃料の分散(広がり)が小さくなり、液体のまま含浸部材を突き抜ける(滲み出る)燃料の量が増大する。
【0057】
含浸部材の内部における毛細管現象による燃料の浸透速度は、例えば、含浸部材を構成する材料と燃料との親和性、並びに、含浸部材の内部構造の緻密さ及び空隙率等、様々な要因によって定まる。従って、上記のような燃料の突き抜け(滲み出し)が起こるか否かは、燃料供給部による燃料の供給圧力と含浸部材の性状(具体的には、含浸部材の内部における毛細管現象による燃料の浸透速度及び含浸部材の空隙率等)との兼ね合いによって定まると言うことができる。
【0058】
〈滲出防止部材〉
そこで、第1バーナ100においては、図2及び図3に示すように、含浸部材120の燃料透過率よりも低い燃料透過率を有する部材である滲出防止部材200が少なくとも対向領域に配設される。この「対向領域」は、前述したように、燃料供給部130から含浸部材120へと燃料が浸入する含浸部材120の表面領域(浸入領域)に対して含浸部材120を挟んで対向する含浸部材120の表面領域である。
【0059】
尚、図2及び図3においては、本発明の理解を容易にすることを目的として、燃焼室110、給気孔110c及び110d、内側ハウジング113、含浸部材120、燃料供給部130、着火装置140並びに滲出防止部材200以外の第1バーナ200の構成要素は省略されている。また、図2は、第1バーナ100が備えるこれらの構成要素を、内側ハウジング113の軸方向に沿って下流側(第2端部側)から観察した場合における平面図である。図3は、図2に示す第1バーナ100が備えるこれらの構成要素の線A−Aを含む平面による模式的な断面図である。但し、図3においては、本発明の理解を容易にすることを目的として、本来であれば断面図には現れない給気孔110c及び110dもが描かれている。
【0060】
浸入領域は、図3の左端に描かれた直線の矢印によって示すように燃料供給管131の内部を通して含浸部材120に供給される燃料が含浸部材120の第1端部側の表面に接触する領域に該当する。また、滲出防止部材200が配設される対向領域は、上記浸入領域に対向する含浸部材120の第1端部側の表面領域であり、図2及び図3から明らかであるように、滲出防止部材200と含浸部材120との接触面は当該対向領域を含む。
【0061】
尚、滲出防止部材200は、上記のように、含浸部材120の燃料透過率よりも低い燃料透過率を有する部材である。ここで「燃料透過率」とは、燃料の透過し易さの指標であり、燃料の透過率に対応する特性値である。このような指標の具体例としては、例えば、以下の式(1)によって表されるDarcy則における媒体固有の透過率k等を挙げることができる。
【0062】
【数1】
【0063】
上式中、Qは媒体(含浸部材120及び滲出防止部材200)を通過する流体(燃料)の流量であり、Aは流体が通過する媒体の断面積であり、μは流体の粘性であり、dp/dxは流路に沿った圧力勾配である。
【0064】
但し、燃料透過率は上記に限定されず、媒体(含浸部材120及び滲出防止部材200)における流体(燃料)の透過し易さの指標であり、媒体における流体の透過率に対応する特性値である限り、如何なる他の特性値を燃料透過率として採用することもできる。
【0065】
滲出防止部材200は、耐熱性及び燃料に対する化学的安定性(例えば、耐腐食性等)等を有する材料によって形成される。具体的には、滲出防止部材200は、例えば金属及びセラミック材料等によって形成される。
【0066】
滲出防止部材200は、含浸部材120と同様に、毛細管構造及び/又は多孔質構造を有する部材(例えば、金属繊維及び/又はセラミック繊維を押し固めることによって形成されたウィック等)であってもよく、或いは、流体(燃料)が透過することができない非透過性の部材であってもよい。
【0067】
前者の場合、含浸部材120を透過して滲出防止部材200に到達した燃料の少なくとも一部が滲出防止部材200をも透過して燃焼室110内に蒸散することができる。従って、燃焼室110に供給される燃料の蒸気の量が増えるので、燃料の着火及び燃焼の定常化を早期に達成する観点から望ましい。一方、後者の場合、滲出防止部材200は燃料を透過させないので、例えば着火時等、燃料の供給量が多い場合においても、燃料が液体のまま含浸部材(ウィック)を突き抜ける(滲み出す)可能性をより確実に低減することができる。
【0068】
尚、滲出防止部材200は、含浸部材120とは別個の部材として構成され得る。この場合、滲出防止部材200と含浸部材120とを接合させる方法は特に限定されないが、燃料の燃焼によって発生する熱量及び当該熱量に起因する熱変形に耐え得る方法が望ましい。このような観点から、滲出防止部材200は、含浸部材120と焼結によって接合され得る。具体的には、滲出防止部材200と含浸部材120とを所定の位置関係に配置した組み合わせを、所定の圧力を掛けた状態において、例えば赤外加熱炉等によって、それぞれの材質等に応じた焼結温度にて所定期間に亘って加熱することにより焼結することができる。
【0069】
〈効果〉
上記のような構成を有する第1バーナ100においては、含浸部材120に比べて低い燃料透過率を有する滲出防止部材200が含浸部材120の少なくとも(浸入領域に対向する)対向領域に配設されている。即ち、含浸部材120の第2端部側の表面上において燃料の突き抜け(滲み出し)が起こる可能性が高い領域が、燃料が透過し難い(或いは燃料が透過しない)部材によって覆われている。
【0070】
上記構成により、第1バーナ100においては、例えば着火時等、燃料の供給量が多い場合においても、燃料が液体のまま含浸部材120を突き抜ける(滲み出す)可能性を低減することができる。
【0071】
このように滲出防止部材200によって液体のまま含浸部材を突き抜ける(滲み出す)ことが抑制された燃料の少なくとも一部は、図3に描かれた曲線の矢印によって示すように、滲出防止部材200と含浸部材120との界面に沿う方向に分散される。換言すれば、含浸部材120を透過して滲出防止部材200に到達した燃料の少なくとも一部は、含浸部材120の内部に放射状に広がるように分散される。
【0072】
上記の結果、含浸部材120の対向領域への燃料の含浸量(浸透量)は減少するものの、含浸部材120の対向領域の周囲(外縁)への燃料の含浸量(浸透量)は増大する。従って、含浸部材120の表面において燃料を蒸発させることができる領域の面積が増大する。このようにして、第1バーナ100は、滲出防止部材200を備えない従来バーナに比べて、含浸部材120の全体に燃料を均等に行き渡らせることができる。即ち、第1バーナ100によれば、燃料の着火及び燃焼の定常化を早期に達成することができる。
【0073】
〈第1バーナの変形例〉
図3に示した例においては、滲出防止部材200の全体が、含浸部材120の外部に配置されている。換言すれば、図3に示した例においては、滲出防止部材200は含浸部材120の表面上に配置されている。しかしながら、滲出防止部材200の配設様式(即ち、滲出防止部材200の含浸部材120に対する位置関係)は上記に限定されない。
【0074】
例えば、図4の(a)に示すように、滲出防止部材200の全体が含浸部材120の内部に埋設されていてもよい。但し、図4の(a)においては、滲出防止部材200の1つの表面が、含浸部材120の下流側(第2端部側)の表面と面一となるように露出している。
【0075】
或いは、図4(b)に示すように、滲出防止部材200の一部が含浸部材120の内部に埋設され、且つ、滲出防止部材200のその他の部分が含浸部材120の表面から突出していてもよい。
【0076】
図4の(a)及び(b)に示した例のように滲出防止部材200の全体又は一部が含浸部材120の内部に埋設されている場合、図3に示したように滲出防止部材200が含浸部材120の表面上に配置されている場合に比べて、滲出防止部材200と含浸部材120との接触面積がより大きいので、これらの接合強度を高めることができる。
【0077】
更に、燃料透過率が相対的に低い部材である滲出防止部材200の埋設部分が含浸部材120の対向領域の内部に入り込んでいるため、浸入領域から含浸部材120の内部に浸入した燃料は、この埋設部分を回避するように含浸部材120の内部に浸透してゆく。このように、埋設部分を設けることにより、より確実に含浸部材全体に燃料を均等に行き渡らせることができる。
【0078】
尚、滲出防止部材200の含浸部材120の内部に埋設されている部分(以降、単に「埋設部分」と称される場合がある。)の形状は特に限定されない。滲出防止部材200の全体が含浸部材120の内部に埋設されている場合、内側ハウジング113の軸を含む平面による埋設部分の断面の形状は、図4の(a)に示したように矩形であってもよく、図5の(a)及び(b)に示すように半円形及び三角形であってもよく、或いは図5の(c)に示すような形状を含む様々な形状であってもよい。
【0079】
滲出防止部材200の一部が含浸部材120の内部に埋設され且つ滲出防止部材200のその他の部分が含浸部材120の表面から突出している場合もまた、内側ハウジング113の軸を含む平面による埋設部分の断面の形状は、図4の(b)に示したように矩形であってもよく、図5の(d)及び(e)に示すように半円形及び三角形であってもよく、或いは図5の(f)に示すような形状を含む様々な形状であってもよい。
【0080】
尚、図5においては、滲出防止部材200の埋設部分の断面形状についての理解を容易にすることを目的として、第1バーナ100の構成要素のうち滲出防止部材200及び含浸部材120のみを抜き出して記載した。
【0081】
ところで、前述したように、含浸部材120を透過して滲出防止部材200に到達した燃料の少なくとも一部は、含浸部材120の内部に広がるように分散される。滲出防止部材200の埋設部分が含浸部材120の対向領域の内部に入り込んでいる場合、この効果はより顕著となる。即ち、浸入領域から含浸部材120の内部に浸入した燃料は、この埋設部分を回避するように含浸部材120の内部に浸透してゆく。換言すれば、滲出防止部材200によって液体のまま含浸部材120を突き抜ける(滲み出す)ことが抑制された燃料の少なくとも一部は、滲出防止部材200と含浸部材120との界面に沿う方向に分散される。
【0082】
このとき、含浸部材120を透過して滲出防止部材200に到達した燃料が、滲出防止部材200の含浸部材の内部に埋設されている部分(埋設部分)と含浸部材120との界面に沿って、含浸部材120の対向領域の外縁に染み出してくる場合がある。この場合、染み出してきた燃料の少なくとも一部は含浸部材120の表面に再び含浸される。しかしながら、染み出してきた燃料の量が多い場合は、含浸部材120の表面に再び含浸されずに含浸部材120の表面に沿って流れ落ち、燃焼室110の下方に溜まる虞がある。
【0083】
上記のような含浸部材120の対向領域の外縁への燃料の染み出しを防止する観点からは、内側ハウジング113の軸方向に直交する平面への投影図において、滲出防止部材200の含浸部材120の内部に埋設されている部分(埋設部分)が、滲出防止部材200の含浸部材120の表面から突出している部分に含まれることが望ましい。換言すれば、例えば、図6乃至図8に示すように、滲出防止部材200の含浸部材120の表面から突出している部分が含浸部材120の表面に沿って(例えば、フランジ状に)延在して(広がって)いることが望ましい。
【0084】
これによれば、含浸部材120を透過して滲出防止部材200に到達した燃料が滲出防止部材200の含浸部材120の内部に埋設されている部分(埋設部分)と含浸部材120との界面に沿って含浸部材120の対向領域の外縁に染み出してきたとしても、滲出防止部材200の含浸部材120の表面から突出している部分(以降、単に「突出部分」と称される場合がある。)と含浸部材120との界面に沿って当該燃料が広がり、その間に当該燃料が含浸部材120に再び含浸される現象である「再含浸」が起こる可能性が高まる。
【0085】
上記の結果、滲出防止部材200の含浸部材120の内部に埋設されている部分(埋設部分)と含浸部材120との界面に沿って含浸部材120の対向領域の外縁に燃料が液体のまま染み出す可能性を低減し、より確実に含浸部材120の全体に燃料を均等に行き渡らせることができる。
【0086】
上記「再含浸」が起こる可能性は、含浸部材120を透過して滲出防止部材200に到達した燃料が滲出防止部材200の埋設部分と含浸部材120との界面に沿って含浸部材120の対向領域の外縁に染み出してくるまでの経路が長いほど高まる。このような観点から、滲出防止部材200の突出部分と含浸部材120との界面に例えば凹凸及び段差等を形成して、相互に嵌合させてもよい。更に、滲出防止部材200の突出部分と含浸部材120との界面に所謂「ビード」を形成して、当該界面における燃料の通過を困難にしてもよい。加えて、滲出防止部材200の突出部分と含浸部材120との界面に所謂「液溜まり」(凹部)を形成して、当該界面を通過する燃料を収容するようにしてもよい。
【0087】
ところで、滲出防止部材を備えない従来バーナにおいては、第1バーナ100に比べて、燃料の突き抜け(滲み出し)を低減しつつ含浸部材の全体に燃料を均等に行き渡らせることが困難である。従って、従来バーナにおいては、含浸部材の内部に含浸された燃料が重力の作用によって含浸部材の鉛直方向における下方に偏って存在しがちである。この場合、燃料の着火性を高める観点からは、1つの着火装置を含浸部材の鉛直方向における下方の近傍に配置することが望ましい。或いは、従来バーナにおいては、含浸部材を突き抜けた液体のままの燃料が含浸部材の第2端部側(下流側)の表面に沿って下方に流れて燃焼室の底部(下方)に溜まる場合がある。このような場合は、液体のままの燃料で着火装置が濡れることを防止する観点からは、着火装置を含浸部材の鉛直方向における下方の近傍以外の位置に配置することが望ましい。
【0088】
同様に、第1バーナ100についても、図2に示した例においては、1つの着火装置140が含浸部材120の鉛直方向における下方の近傍に配置されているが、着火装置140の数及び配置は上記に限定されない。例えば、図9に示すように、複数(図9においては2つ)の着火装置140を配設して燃料の着火性を高めてもよく、滲出防止部材200の鉛直方向における下方以外の位置に着火装置140を配設してもよい。更に、上述したように第1バーナ100は含浸部材120の全体に燃料を均等に行き渡らせることができるので、従来バーナに比べて、着火装置140の配置における自由度がより高い。具体的には、例えば、含浸部材120の鉛直方向における下方のみならず側方及び/又は上方の近傍に着火装置140を配置してもよい。
【0089】
尚、以上の説明においては、内側ハウジング113の軸方向が水平方向となる状態において第1バーナ100が使用される場合について述べたが、第1バーナ100が使用される状態における第1バーナ100の姿勢(内側ハウジング113の軸方向)は水平方向に限定されるものではない。即ち、第1バーナ100は、内側ハウジング113の軸方向が水平方向であっても、鉛直方向であっても、更には、これらの方向に対して傾斜している斜め方向であっても、何ら問題無く使用することができ、本発明によって解決しようとする課題を良好に解決することができる。
【0090】
内側ハウジング113の軸方向が水平方向以外の方向となる状態において第1バーナ100が使用される場合は、内側ハウジング113の軸方向における含浸部材120側が「上流側」となり、その反対側が「下流側」となる。また、この場合、内側ハウジング113の軸方向に直交する方向のうち水平方向と直交する方向が「上下方向」となり、当該「上下方向」において鉛直方向の上側に向かう側が「上方」となり、鉛直方向の下側に向かう側が「下方」となる。
【0091】
《第2実施形態》
以下、本発明の第2実施形態に係る蒸発式バーナ(以下、「第2バーナ」と称される場合がある。)の構成の一例につき、図面を参照しながら、より詳しく説明する。
【0092】
〈バーナの構成〉
第2バーナの基本的な構成は、以下に説明する点を除き、図1を参照しながら上述した第1バーナ100と同様である。従って、第2バーナの基本的な構成についての説明は、ここでは省略する。
【0093】
〈滲出防止部材〉
第1バーナ100についての説明において上述したように、本発明バーナが備える滲出防止部材200は、その全体が含浸部材の内部に埋設されていてもよく、その全体が含浸部材の外部に配置されていてもよく、或いは、その一部が含浸部材の内部に埋設され且つその他の部分が含浸部材の表面から突出していてもよい。
【0094】
第2バーナが備える滲出防止部材200は、図3図4の(b)、図5の(d)乃至(f)及び図6乃至図8に示した例のように、滲出防止部材200の少なくとも一部が含浸部材120の表面から第2端部側に向かって突出している「突出部分」を有する。
【0095】
〈効果〉
滲出防止部材200の突出部分は、着火装置140による燃料の着火直後において火炎が広がることができる空間における障害物となり、火炎は突出部分が存在しない空間に露出している含浸部材120の表面から供給される燃料の蒸気に燃え広がることとなる。即ち、着火装置140による燃料の着火が起こる燃焼室110の上流側(含浸部材120の近傍)の空間においては、滲出防止部材200の突出部分の存在により、燃料の蒸気が供給される領域と、火炎が伝播することができる領域と、が良好に一致する。この結果、着火装置140による燃料の着火後、火炎が速やかに伝播するので、燃焼の定常化を早期に達成することができる。
【0096】
上記効果を達成するためには、滲出防止部材200の突出部分の含浸部材120からの高さ(内側ハウジング113の軸方向における寸法)は、ある程度大きいことが望ましい。具体的には、突出部分の高さは、着火装置140によって燃料が着火されたとき及びその後に発生する火炎の大きさ(内側ハウジング113の軸方向における寸法)と同等程度又はそれ以上であることが望ましい。また、この火炎の大きさは、例えば含浸部材120と着火装置140との位置関係、燃料供給部130による燃料の供給速度、及び給気孔110c(及び110d)からの空気の供給速度等によって影響される。従って、突出部分の具体的な高さは、例えば第2バーナの設計仕様及び運転条件等を反映した予備実験等によって定めることができる。
【0097】
《第3実施形態》
以下、本発明の第3実施形態に係る蒸発式バーナ(以下、「第3バーナ」と称される場合がある。)の構成の一例につき、図面を参照しながら、より詳しく説明する。
【0098】
〈バーナの構成〉
第3バーナの基本的な構成は、仕切部材を更に備える点を除き、上述した第1バーナ100及び第2バーナと同様である。従って、第3バーナの構成については、仕切部材に着目して以下に説明する。従って、図10においても、図1と同様に、第3バーナ103が備える滲出防止部材200は省略されているが、第3バーナ103は、上述した第1バーナ100及び第2バーナが備え得る滲出防止部材200及び後述する第3バーナ103の変形例が備え得る滲出防止部材200を始めとする種々の滲出防止部材200を備えることができる。
【0099】
〈仕切部材〉
第3バーナ103は、図10に示すように、燃焼室110の内部において含浸部材120よりも燃焼室110の(第1端部とは反対側の端部である)第2端部に近い側(下流側)に含浸部材120と所定の間隔を空けて配設された仕切部材150を更に備える。そして、燃焼室110において仕切部材150よりも第1端部側(上流側)に位置する空間である着火空間110aと、燃焼室110において仕切部材150よりも第2端部側(下流側)に位置する空間である燃焼空間110bと、が仕切部材150に形成された間隙及び/又は貫通孔の少なくとも一部を介して連通している。
【0100】
尚、第3バーナ103のように仕切部材150を備える本発明バーナにおいては、着火空間110aに開口している給気孔を第1給気孔110cと称し、燃焼空間110bに開口している給気孔を第2給気孔110dと称するものとする。
【0101】
図11は、第3バーナ103を内側ハウジング113の軸方向に沿って第2端部側(下流側)から観察した場合における模式的な平面図である。図11に示した仕切部材150は、多数の貫通孔150zが形成された板状の部材である。しかしながら、例えば、図12に示すように、(a)多数の貫通孔150zの配列及び(b)貫通孔150zの形状が異なる仕切部材150を使用することもできる。
【0102】
また、例えば、図13及び図14に示すように、内側ハウジング113の軸方向及び/又は内側ハウジング113の軸方向に直交する方向において互いに間隙を空けて配設された複数の構成要素である仕切要素151a乃至151c並びに仕切要素153a及び153bによって仕切部材150が構成されていてもよい。この場合、図中に示されている仕切要素同士の間に存在する間隙である貫通領域150aを介して、着火空間110aと燃焼空間110bとが連通している。即ち、この場合は、上述した貫通孔150zの機能を貫通領域150aが果たしている。
【0103】
尚、図13及び図14に示した仕切部材150においては、個々の仕切要素151a乃至151c並びに仕切要素153a及び153bが内側ハウジング113の軸方向に延在する柱状の形状を有する部分である支持部151s及び支持部153sを備えており、支持部151s及び支持部153sが含浸部材120に挿入されることにより個々の仕切要素151a乃至151c並びに仕切要素153a及び153bが支持されている。しかしながら、個々の仕切要素151a乃至151c並びに仕切要素153a及び153bを支持するための具体的な方法は、上記に限定されない。
【0104】
更に、例えば、図15に示すように、連結部材155を介して隣接する仕切要素154同士が互いに係合されることによって仕切部材150が構成されていてもよい。加えて、仕切部材150は、これらを始めとする種々の構成の組み合わせを有するものであってもよい。即ち、仕切部材150の具体的な構成は、上記要件を満足する限りにおいて特に限定されず、例えば第3バーナ103の設計仕様及び運転条件等に応じて、多種多様な構成の中から適宜選択することができる。
【0105】
〈効果〉
上記のような構成を有する第3バーナ103においては、含浸部材120及び仕切部材150を下流側から観察した場合、仕切部材150によって含浸部材120の下流側の主面が少なくとも部分的に覆われており、含浸部材120の露出面積が低減されている。その結果、例えば、内燃機関の出力変動等に伴う排気の圧力変動の影響により燃焼ガスが燃焼室110内にある含浸部材120の近傍にまで逆流して失火及び/又は燃焼不良等の問題を招く可能性を低減することができる。
【0106】
また、燃焼室110における燃料の燃焼時に火炎によって加熱された仕切部材150からの輻射熱により、含浸部材120を効果的に暖めて、含浸部材120からの燃料の蒸発を促進させることができ、結果として、当該バーナの着火性を高めることができる。
【0107】
更に、含浸部材120から蒸発する燃料の蒸気と第1給気孔110cを介して着火空間110a内に供給される空気との混合気が着火空間110aから燃焼空間110bへと仕切部材150を介して流れることができる。このとき、上記混合気が仕切部材150の間隙及び/又は貫通孔を通過することにより、上記混合気における燃料の濃度を均一化することができる。
【0108】
〈第3バーナの変形例〉
第3バーナ103において、滲出防止部材200は、仕切部材150の一部として構成されていてもよい。例えば、図16に示すように、仕切部材150の一部(中央部)を上流側(第1端部側)が凸になるように屈曲させた部分を滲出防止部材200とし(図中、破線によって囲まれた部分)、これを含浸部材120に当接させてもよい。
【0109】
或いは、図17乃至図19に示すように、仕切部材150の一部(中央部)を上流側(第1端部側)が凸になるように屈曲させた部分を滲出防止部材200とし(図中、破線によって囲まれた部分)、この一部を含浸部材120に埋設させてもよい。この場合も、滲出防止部材200の埋設部分の断面形状は、矩形であっても(図17)、三角形であっても(図18)、半円形であっても(図19)、その他の形状であってもよい。
【0110】
上記によれば、滲出防止部材200と仕切部材150とを一体的に製造することができるので、第3バーナ103の部品点数及び組み立て工数を削減することができ、結果として製造コストの削減に繋がる。また、燃焼室110における燃料の燃焼時に火炎によって加熱された仕切部材150から、輻射熱に加えて、熱伝導によっても、含浸部材120を効果的に暖めて、含浸部材120からの燃料の蒸発を促進させることができるので、結果として第3バーナ103の着火性を高めることができる。
【0111】
ところで、上記のように滲出防止部材200を仕切部材150の一部として構成する場合においても、滲出防止部材200と含浸部材120とは、例えば焼結等の方法によって互いに接合される。即ち、この場合、仕切部材150の一部である滲出防止部材200を介して、仕切部材150と含浸部材120とが接合される。
【0112】
上記の場合、仕切部材150は、例えば、図20に示すように、仕切部材150の一部である滲出防止部材200を介して、含浸部材120によって支持される。従って、仕切部材150は、内側ハウジング113には接合されていなくてもよい。例えば、図21に示すように、滲出防止部材200を介して仕切部材150を含浸部材120によって支持し、内側ハウジング113の内壁の所定の箇所にストッパ250を形成し、これに仕切部材150の周縁部を当接させることによって、内側ハウジング113の軸方向における位置決めを行ってもよい。ストッパ250としては、例えば、内側ハウジング113の内壁にスリットを入れて内側に突出させた「切り起こし」を挙げることができる。但し、切り起こしに代えて、内側ハウジング113の内壁の所定の箇所に個別の部材を固定してもよい。これにより、第3バーナ103の部品点数及び組み立て工数を削減することができ、結果として製造コストの削減に繋がる。
【0113】
尚、図20及び図21においては、含浸部材120に凹部が形成されており、着火装置140の一部が当該凹部の内部に配置されているが、このような配置は本願発明の必須の構成要件ではなく、例えば図1図3図4図6乃至図10、及び図16乃至図19に示した構成のように、着火装置140が含浸部材120の第2端部側(下流側)に離れた位置に配置されていてもよい。
【0114】
ところで、板状の仕切部材を採用する場合、例えば仕切部材を構成する板材の厚み及び面積等によっては、仕切部材全体としての剛性を維持することが困難となる場合がある。このような場合において、仕切部材の剛性を高めるための方策として、所謂「バーリング」を挙げることができる。例えば、図22に示すように、仕切部材150の貫通孔150zの周縁部を立ち上げてバーリング加工を施すことにより(一点鎖線によって囲まれた部分及びその拡大図Bを参照)、例えば仕切部材の肉厚化等の対策を施すこと無く仕切部材の剛性を高めることができる。
【0115】
《第4実施形態》
以下、本発明の第4実施形態に係る蒸発式バーナ(以下、「第4バーナ」と称される場合がある。)の構成の一例につき、図面を参照しながら、より詳しく説明する。
【0116】
例えば、図1に示した第1バーナ100においては、第1給気孔110cが内側ハウジング113の全周に亘って形成されている。このような構成においても、例えばバーナへの給気量が比較的少ない場合及び内側ハウジング113の径が大きい場合等においては、特に問題無く燃料を着火・燃焼させることができる。
【0117】
しかしながら、例えばバーナへの給気量が比較的多い場合及び内側ハウジング113の径が小さい場合等においては、内側ハウジング113の上側から吹き込む空気の流れによって、せっかく着火装置140によって燃料が着火して発生した火炎が消えてしまう場合がある。
【0118】
〈バーナの構成〉
そこで、第4バーナにおいては、内側ハウジング113の軸方向が水平方向であり、且つ、少なくとも複数の第1給気孔110c及び第2給気孔110dのうち内側ハウジング113の軸方向において含浸部材120に最も近い第1給気孔110cと含浸部材120との距離である第1距離だけ含浸部材120から第2端部側(下流側)に離れた位置における内側ハウジング113の周壁において、燃焼室110の内部における着火装置140の先端よりも鉛直方向における上側には給気孔110cが形成されていない。
【0119】
より好ましくは、第4バーナにおいて、少なくとも内側ハウジング113の軸方向において第1距離だけ含浸部材120から第2端部側(下流側)に離れた位置における内側ハウジング113の周壁において、燃焼室110の鉛直方向における中心よりも上側には給気孔110cが形成されていない。
【0120】
換言すれば、第4バーナにおいては、内側ハウジング113の軸方向が水平方向となる状態において、着火装置140の先端又は燃焼室の中心よりも低い領域(鉛直方向における下方側の領域)にのみ含浸部材120に最も近い給気孔110cが形成される。このような構成は、例えば、図16乃至図19図21及び図22に示されている。
【0121】
〈効果〉
上記によれば、例えばバーナへの給気量が比較的多い場合及び内側ハウジング113の径が小さい場合等においても、内側ハウジング113の上側から吹き込む空気の流れによって、せっかく着火装置140によって燃料が着火して発生した火炎が消えてしまう可能性が低減される。また、下側から給気が行われることにより、火炎が安定するという効果もある。
【0122】
また、上述したように滲出防止部材200が含浸部材120の表面から第2端部側(下流側)に突出している突出部分を有する場合、上記のように着火装置140の近傍における給気孔を下側に限定することにより、含浸部材120の近傍において突出部分を中心とする旋回流れが生じ、着火した後の火炎の伝播が促進されるという効果もある。
【0123】
以上、本発明を説明することを目的として、特定の構成を有する幾つかの実施形態及び変形例につき、時に添付図面を参照しながら説明してきたが、本発明の範囲は、これらの例示的な実施形態及び変形例に限定されると解釈されるべきではなく、特許請求の範囲及び明細書に記載された事項の範囲内で、適宜修正を加えることが可能であることは言うまでも無い。
【符号の説明】
【0124】
100……蒸発式バーナ、110…燃焼室、110a…着火空間、110b…燃焼空間、110c及び110d…給気孔、111…内側ハウジングの底壁、111a…底壁の貫通孔、113…内側ハウジング、113a…内側ハウジングの周壁、113b…開口部、114…外側ハウジング、114a…空気導入口、115…給気通路、116…給気管、117…取付用部材、120…含浸部材、130…燃料供給部、131…燃料供給管、140…着火装置、141…着火装置取付部材、142…着火手段、150…仕切部材、150a…貫通領域、150z…貫通孔、151a、151b、151c、153a及び153b…仕切要素、151s及び153s…支持部、154…仕切要素、155…連結部材、160…枠、200…滲出防止部材、並びに250…ストッパ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
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図22