(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6644933
(24)【登録日】2020年1月10日
(45)【発行日】2020年2月12日
(54)【発明の名称】プレキャストPC床版の製造方法
(51)【国際特許分類】
B28B 23/06 20060101AFI20200130BHJP
E01D 1/00 20060101ALI20200130BHJP
E04C 5/10 20060101ALI20200130BHJP
【FI】
B28B23/06
E01D1/00 D
E04C5/10
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2019-135470(P2019-135470)
(22)【出願日】2019年7月23日
【審査請求日】2019年11月12日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (1)開催日:平成30年 9月 7日 集会名(開催場所):一般社団法人プレストレスト・コンクリート建設業協会が主催する平成30年度第1回拡大安全環境部会連絡会議(住所:北海道苫小牧市あけぼの町5丁目9−949) (2)開催日:平成30年 9月28日 集会名(開催場所):公益社団法人日本技術士会北海道本部道央技術士委員会が主催する平成30年度第1回施設見学会(住所:北海道苫小牧市あけぼの町5丁目9−949) (3)ウェブサイトの掲載日:平成30年11月13日 ウェブサイトのアドレス: http://www.kozobutsu−hozen−journal.net/walks/detail.php?id=209
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】591197699
【氏名又は名称】日本高圧コンクリート株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087491
【弁理士】
【氏名又は名称】久門 享
(74)【代理人】
【識別番号】100104271
【弁理士】
【氏名又は名称】久門 保子
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 裕俊
(72)【発明者】
【氏名】水正 信司
【審査官】
手島 理
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−127954(JP,A)
【文献】
特開2018−40168(JP,A)
【文献】
特開昭61−176706(JP,A)
【文献】
実開平1−147005(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B28B 23/06
E01D 1/00
E04C 5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
床版の一方向に並列する複数のPC鋼材に緊張力を導入した状態で、型枠内にコンクリートを打設し、前記コンクリートの養生後に、前記PC鋼材に導入した緊張力を解除して、前記床版のコンクリートにプレストレスを導入するプレテンション方式のプレキャストPC床版の製造方法において、前記プレキャストPC床版の端部から所定間隔おいた位置に、床版の表面位置まで連続し、前記PC鋼材が露出する箱抜き部を設け、前記箱抜き部から前記床版の端部までは前記PC鋼材と打設したコンクリートの付着を切ったアンボンド区間を設け、前記コンクリートの養生後、前記PC鋼材に導入した緊張力を解除することで、前記床版のコンクリートにプレストレスを導入し、その後、前記PC鋼材の前記箱抜き部内に露出した部分を切断し、前記箱抜き部を充填材により閉塞することを特徴とするプレキャストPC床版の製造方法。
【請求項2】
請求項1記載のプレキャストPC床版の製造方法において、前記充填材として無収縮モルタルを使用することを特徴とするプレキャストPC床版の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレテンション方式でプレストレスを導入するプレキャストPC床版の製造方法に関するものであり、例えば橋梁用のプレキャストPC床版や建築物用のプレキャストPC床版の製造に利用される。
【背景技術】
【0002】
例えば、高速道路など道路橋においては、従来の鉄筋コンクリート床版の老朽化が進行しており、より耐久性の高いプレストレストコンクリート床版への取替が検討されている。その場合、プレキャストPC床版が使用されることが多い。
【0003】
図3は、プレテンション方式でプレストレスを導入する場合に従来一般的に行われているプレキャストPC床版1の製造方法を示したものであり、PC鋼材2のかぶりを確保するため、
図3(a)に示すように床版端部に切欠き部11を設けている。
【0004】
PC鋼材2を緊張した状態で、型枠へのコンクリート3の打設および養生を行った後、PC鋼材2を切欠き部11で切断し、この切欠き部11に充填材12を後打ちし、全ての切欠き部11に対して充填確認検査を実施している。
【0005】
この他、プレテンション方式によるプレストレスの導入に関して、例えば特許文献1、特許文献2記載の発明がある。
【0006】
特許文献1には、少なくとも3箇所で支持するコンクリートの連続構造体の製造方法であって、構造体の上縁側に負の曲げモーメント抵抗用の緊張材を直線配置し、配置する緊張材はコンクリートへ付着する付着部と、付着しないアンボンド部とを設け、付着部は主に負の曲げモーメントが発生する区間に配置し、付着しないアンボンド部は、負の曲げモーメントが発生しない区間に配置し、緊張材に、プレテンション工法によってプレストレスを導入し、構造体のコンクリートの養生後に、緊張した後の緊張材を、中間に位置する支間において、負の曲げモーメントが発生しない区間のアンボンド部で切断して行う、コンクリート連続構造体の製造方法が開示されている。
【0007】
特許文献2には、プレストレス力の加えられたプレテンション式PC部材の緊張材を、部材中間所要点において切断することによって、あるいは緊張された緊張材の所要区間にコンクリート打設を行う前にあらかじめアスファルトなどの滑り剤を塗布して置くことによって、この部のプレストレス力を解除させあるいはプレストレス力を生じないようにすることを特徴とするプレテンション式PC部材のプレストレス力調整方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−127954号公報
【特許文献2】特公昭40−028419号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来、一般的に行われている
図3の方式の場合、床版端部に設けた切欠き部に充填材を後打ちするための型枠が必要となり、作業量やコストが増加する。また、充填材を後打ちする際には、目視確認ができないため、充填不良が懸念される。脱型後は、床版端部の後打ち部が露出するため、後打ち部の充填材が剥落するリスクも考えられる。
【0010】
また、特許文献1記載の発明の場合、コンクリート連続構造体の内部に配置したPC鋼線を中間支間部で切断するために、コンクリートの存在しない切断用の箱抜空間を形成し、この箱抜空間の内部でPC鋼線を切断する。切断前にジャッキの緊張は解除されているが、箱抜空間の内部のPC鋼線には緊張力が残っており、特許文献1の段落0014では「バーナーの火力によって、負曲げ抵抗用のPC鋼線31を徐々に加熱して切断すると、刃物で瞬時に切断する場合と比較して、PC鋼線31の緊張力を徐々に開放することができ、安全である。」と記載されているものの、箱抜空間内の緊張状態にあるPC鋼線を切断することによって、箱抜空間の断面に衝撃を与え、角部などからひび割れなどを引き起こすことが考えられる。
【0011】
特許文献2記載の発明は、コンクリート中に埋設された鋼管あるいはシースによってPC部材の側面に開口する通孔を設け、その部分で電気切断杆を挿入してPC部材を切断しているが、PC部材は通孔位置では緊張状態にあるため、特許文献1記載の発明と同様に、切断時に切断位置周辺のコンクリートを損傷させる可能性が考えられる。
【0012】
本発明は、上述のような従来技術における課題の解決を図ったものであり、作業量やコストを従来よりも減少させることができ、品質面や安全性を向上させることのできるプレキャストPC床版の製造方法を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、床版の一方向に並列する複数のPC鋼材に緊張力を導入した状態で、型枠内にコンクリートを打設し、前記コンクリートの養生後に、前記PC鋼材に導入した緊張力を解除して、前記床版のコンクリートにプレストレスを導入するプレテンション方式のプレキャストPC床版の製造方法において、前記プレキャストPC床版の端部から所定間隔おいた位置に、床版の表面位置まで連続し、前記PC鋼材が露出する箱抜き部を設け、前記箱抜き部から前記床版の端部までは前記PC鋼材と打設したコンクリートの付着を切ったアンボンド区間を設け、前記コンクリートの養生後、前記PC鋼材に導入した緊張力を解除することで、前記床版のコンクリートにプレストレスを導入し、その後、前記PC鋼材の前記箱抜き部内に露出した部分を切断し、前記箱抜き部を充填材により閉塞することを特徴とするものである。
【0014】
箱抜き部は、プレキャストPC床版の端部から所定の間隔をおいた位置に、床版表面から鉛直方向にPC鋼材が露出する深さまで設ける。また、箱抜き部から床版端部までのPC鋼材はアンボンド区間とし、PC鋼材の外側にシースなどを設けてコンクリートとの付着を切っておく。
【0015】
コンクリートを養生した後、PC鋼材に導入していた緊張力を解除して、床版のコンクリートにプレストレスを導入する。その後、箱抜き部内でPC鋼材を切断し、切断したPC鋼材を除去し、箱抜き部に充填材を注入して閉塞する。
【0016】
箱抜き部から端部までにアンボンド区間を設け、緊張力を解除すると、PC鋼材の箱抜き部に露出している部分も確実に緊張力が解除されているため、箱抜き部内でPC鋼材を切断しても衝撃がなく安全である。コンクリートにプレストレスを導入した後の端部のPC鋼材の処理も容易であり、箱抜き形状のため、後打ちのための型枠を用意する必要もない。
【0017】
箱抜き部に注入する充填材としては、例えば無収縮モルタルを使用することができる。箱抜き部に注入する充填材は、強度や耐久性などに問題がないものであれば特に限定されないが、無収縮モルタルを使用すれば箱抜き部内での収縮を抑え箱抜き部の内面に密着し、より安全である。
【発明の効果】
【0018】
本願発明のプレキャストPC床版の製造方法は、PC鋼材を切断するために箱抜き部を設けることによって、従来のプレキャストPC床版の端部に設けていた切欠き部が不要となるため、後打ちするための型枠が不要となる。
【0019】
箱抜き部に充填材を後打ちする際に目視確認できるため、充填不良のリスクが低減される。後打ち部の充填材が露出されず、箱抜き部に収まっているため、充填材が剥落するリスクがない。全体的にプレキャストPC床版端部の処理が容易になり、作業量やコストを減少させることができる。
【0020】
また、床版端部から所定の位置に箱抜き部を設け、箱抜き部から床版端部までアンボンド区間としていることで、PC鋼材への緊張力を解除した時に、箱抜き部に露出しているPC鋼材の緊張力が確実に解除されるため、箱抜き部内でPC鋼材を切断する際にも衝撃がなく、箱抜き部のコンクリートを損傷することもなく、安全に作業を行うことができる。PC鋼材を箱抜き部内で切断した後の処理も容易であり、床版端部からPC鋼材とアンボンド部材を抜き、箱抜き部内に充填材を注入すればよい。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明のプレキャストPC床版の製造方法におけるプレキャストPC床版の一実施形態を概略的に示した斜視図である。
【
図2】
図1の実施形態におけるプレキャストPC床版の端部構造の概要を示しており、(a)はPC鋼材を緊張して、コンクリートの打設・養生した状態の断面図、(b)はPC鋼材の緊張を解除してプレストレスを導入した後に、PC鋼材を切断した状態の断面図、(c)はPC鋼材を切断した後、端部のPC鋼材とアンボンド部材を除去した状態の断面図、(d)は箱抜き部とアンボンド部材を除去した部分に充填材を注入した状態の断面図である。
【
図3】従来のプレテンション方式のプレキャストPC床版の製造方法における端部構造の概要を示したもので、(a)はPC鋼材を切断した後の断面図、(b)は切欠き部に充填材を注入した後の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を添付した図面に基づいて説明する。なお、本願発明は、以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
【0023】
図1は、本発明のプレキャストPC床版1の製造方法によって製造されるプレキャストPC床版1の一実施形態を概略的に示したものである。プレキャストPC床版1内にはPC鋼材と鉄筋が配置されている(図示省略)。
【0024】
プレキャストPC床版1端部の側枠には、PC鋼材の端部を処理した跡があり、充填材5で埋められている。プレキャストPC床版1表面の手前側と奥側の端部には、箱抜き部4が橋軸方向に複数並んでおり、それぞれの箱抜き部4に充填材5が注入されている。
【0025】
図2は、
図1の実施形態におけるプレキャストPC床版1において、床版端部の構造を示した概要図である。
図2(a)は、PC鋼材を緊張してコンクリートを打設し、養生した後の断面図である。プレキャストPC床版1内には、PC鋼材2が上下に通っている。床版端部には、床版の表面から鉛直方向に、床版内を貫通しているPC鋼材2が露出する深さまで箱抜き部4が設けられている。
【0026】
箱抜き部4から床版端部までのPC鋼材2外側にはシース6などを設け、PC鋼材2とコンクリート3とを縁切りし、アンボンド区間とする。アンボンドに用いられるものとしては、例えば、ポリエチレン製シースが挙げられ、その他にもPC鋼材とコンクリートとの付着をなくすことができ、強度や耐久性に問題がないものであればよい。
【0027】
図2(b)には、箱抜き部4に露出しているPC鋼材2を切断した際の断面図を示した。PC鋼材2の緊張力を解除し、コンクリート3内にプレストレスを導入した後、箱抜き部4の中に切断機を挿入し、PC鋼材2を切断する。
【0028】
床版端部から所定の位置に箱抜き部4を設け、箱抜き部4から床版端部までアンボンド区間としているため、PC鋼材2への緊張力を解除した時に、箱抜き部4に露出しているPC鋼材2の緊張力が確実に解除されており、箱抜き部4内でPC鋼材2を切断する際に衝撃がなく、安全である。
【0029】
図2(c)は、PC鋼材2の端部とシース6を除去した後の断面図である。PC鋼材2を切断した後、箱抜き部4から床版端部にかけてのPC鋼材2とシース6を除去する。PC鋼材2を切断した後、床版端部からPC鋼材2とシース6を抜くだけの処理も容易である。
【0030】
図2(d)は、箱抜き部4と箱抜き部4から床版端部までのシース6を抜いた部分に充填材5を注入した状態を示した断面図である。箱抜き部4から充填材5を後打ちすればよく、後打ちするための型枠も必要ない。
【0031】
〔プレキャストPC床版1の製造手順〕
本発明のプレキャストPC床版1の製造方法における一実施例を、
図2を参照して説明する。ただし、以下に説明する実施手順に限定されるものではない。
【0032】
(1) 型枠の清掃と準備
プレキャストPC床版1の型枠の寸法や形状を確認する。型枠を清掃し、所定の位置に型枠を配置する。
【0033】
(2) 鉄筋の配置
プレキャストPC床版1の型枠内に鉄筋を配置し、固定する。
【0034】
(3) 型枠とPC鋼材2を配置
(2)で配置した鉄筋を固定し、PC鋼材2を配置する。鉄筋とPC鋼材2を固定した後、プレキャストPC床版1の型枠を組み立てる。また、プレキャストPC床版1の端部から所定の間隔をおいた位置に、箱抜き部4を設けるためのブロックを配置する。
【0035】
箱抜き部4を設けるためのブロックは、この後コンクリート3を打設した後に取り外せる物で、コンクリートに箱抜きの形状ができればよく、例えば発砲スチロールの外側に防水を施したものなどでもよい。
【0036】
PC鋼材2は、箱抜き部4で露出される部分から床版端部までをアンボンド区間にするため、PC鋼材2外側にポリエチレン製シース6などを巻いて、コンクリート3とPC鋼材2とを縁切りする。
【0037】
(4) PC鋼材2を緊張
例えば、油圧ジャッキなどとPC鋼材2の端部とを連結し、PC鋼材2に緊張力を導入する(
図2(a))。緊張力を導入するのは油圧ジャッキ以外のものでも、PC鋼材2に緊張力を導入できるものであればよい。
【0038】
(5) コンクリート3打設
型枠内に所定の品質のコンクリート3を打設し、表面を整える。
【0039】
(6) 養生
型枠の外側を養生設備で取り囲み、蒸気養生をする。蒸気養生の条件としては、例えば、50℃の蒸気養生に5時間以上行うと品質が安定してよい。
【0040】
(7) 脱型とプレストレス導入
養生を終えて養生設備を外した後に、PC鋼材2の緊張力を解除し、PC床版1のコンクリート3にプレストレスを導入する。PC床版1の型枠を外して、所定の位置で保管する。
【0041】
(8) 箱抜き部4を設ける
プレキャストPC床版1の端部から所定の位置に埋めておいたブロックを取り外し、PC鋼材2を露出させる箱抜き部4を形成して、PC鋼材2を切断するための箱抜き状の孔を作る。
【0042】
(9) PC鋼材2の切断
箱抜き部4に、例えばプラズマ切断機のようなPC鋼材2を切断できる機械を挿入し、PC鋼材2を切断する(
図2(b))。切断したPC鋼材2とシース6を床版端部から抜く(
図2(c))。
【0043】
(10) 箱抜き部4に充填材5注入
箱抜き部4から充填材5を注入し、箱抜き部4の内部を埋める(
図2(d))。充填材5は、強度や耐久性に問題がなければ特に限定されないが、例えば無収縮モルタルが好ましい。
【符号の説明】
【0044】
1…プレキャストPC床版、2…PC鋼材、3…コンクリート、4…箱抜き部、5…充填材、6…シース、
11…切欠き部、12…充填材
【要約】 (修正有)
【課題】作業量やコストを従来よりも減少させることができ、品質面や安全性を向上させることのできるプレキャストPC床版の製造方法を提供する。
【解決手段】プレテンション方式のプレキャストPC床版1の製造方法において、プレキャストPC床版1の端部から所定間隔おいた位置に、床版表面位置まで続き、PC鋼材2を露出させる箱抜き部4を設ける。箱抜き部4と床版1の端部までは、PC鋼材2と打設したコンクリート3の付着を切ったアンボンド区間を設け、コンクリート3の養生後、PC鋼材2に導入した緊張力を解除することで、床版1のコンクリート3にプレストレスを導入する。その後、PC鋼材2の箱抜き部内に露出した部分を切断し、箱抜き部4を充填材5により閉塞する。PC鋼材2の緊張力を解除すると、箱抜き部4に露出しているPC鋼材2は確実に緊張力が解除され、箱抜き部4内でPC鋼材2を安全に切断することができる。
【選択図】
図2