(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1に、本実施形態に係る電力管理装置10を含む、電力管理システムを例示する。
図1に例示する電力管理システムは、例えばビル等の複数階建築設備の監視制御システムであるBEMS(Building and Energy Manegement System)から構成される。
【0018】
電力管理システムは、電力管理装置10(B−OWS)、サブコントローラ14A〜14C(B−BC)、デジタルコントローラ16A,16B(DDC)、リモートステーション18(RS)を備え、これらがバスに接続される。デジタルコントローラ16A,16B及びリモートステーション18は各電気機器20A〜20Dや各種センサ22A〜22Fに接続される。
【0019】
電気機器20A〜20Dは、ビル内に設置される種々の設備機器であり、例えば照明機器、空調機器、昇降機、衛生機器、防災機器、及び防犯機器等が含まれる。
図1の例では、電気機器20Aは照明機器であり、電気機器20Bは照明操作盤であり、電気機器20Cは空調機であり、電気機器20Dはエレベーター制御盤である。
【0020】
また、センサ22Aは照度センサであり、センサ22Bは照明電力メータであり、22Cは空調機センサであり、センサ22Dは空調電力メータであり、センサ22Eはエレベーター電力メータである。さらにセンサ22Fは需要電力メータであり、要するに電力管理装置10が管理対象とするビルに電気事業者から送電されるビル全体の需要電力を計量するメータである。
【0021】
なお、
図1は紙面の都合上、電力管理装置10の下位に接続されるサブコントローラ14等の機器の一部を例示するものであって、図示した構成の他にも種々の機器が接続されていてよい。
【0022】
電力管理装置10は、例えばいわゆるB−OWS(BACnet Operator Workstation)から構成されており、管理者等により操作監視されるクライアントPCとしての機能と、データ保存やアプリケーション処理等を行うサーバとしての機能を備えている。電力管理装置10では、例えば画面表示や設定操作が行われる。
【0023】
サブコントローラ14は主に制御機能を担う。サブコントローラ14は、例えばいわゆるB−BC(Building Controller)から構成されており、デジタルコントローラ16やリモートステーション18等の端末伝送機器と通信し、ポイントデータやスケジュール制御等を管理する。例えばサブコントローラ14は、空調設備系統、照明設備系統、昇降機系統、衛生設備系統、防犯設備系統等、各機能別系統(サブシステム)ごとに一つずつ設けられる。
【0024】
デジタルコントローラ16はいわゆるDDC(Direct Digital Controller)であってよく、BEMSにおける分散制御を実現するための調節器としての機能を備える。例えばデジタルコントローラ16はサブコントローラ14から送られたスケジュール設定に基づくプログラム制御や、同じくサブコントローラ14から送られた目標値に基づくフィードバック制御等により、接続先の電気機器20C,20Dを制御する。また、デジタルコントローラ16はセンサ22C〜22Eの計測値や電気機器20C,20Dの警告等を上記システムや他のデジタルコントローラ16に送信する。
【0025】
リモートステーション18はアウトステーション、ローカルステーションとも呼ばれ、接続先のセンサ22A,22Bや電気機器20A,20Bの監視や制御を行う。機能的にはデジタルコントローラ16と重複するため、デジタルコントローラ16及びリモートステーション18は接続先の電気機器20A〜20Dやセンサ22A〜22Eに応じて適宜どちらか一方が選択される。
【0026】
電力管理装置10、サブコントローラ14、デジタルコントローラ16、及びリモートステーション18はコンピュータから構成される。例えば代表的に電力管理装置10に示すように、そのいずれにも、CPU26、メモリ28、ハードディスクドライブ(HDD)30、入力部32、出力部34、及び入出力インターフェース36が設けられる。
【0027】
後述するように、電力管理装置10のCPU26、メモリ28及びハードディスクドライブ30によって、
図2に例示されるような機能ブロックが構成される。また、出力部34は例えばディスプレイであって、後述するデマンド制御実行値変更フローにおいて、契約電力の引上げ可否についての問合せ画面が表示される。また入力部32には、問合せに対する回答(引上げ可/否)が入力される。
【0028】
また、電力管理装置10により、デマンド制御が実行される。デマンド制御の実行時には、電力管理装置10が配下(管理対象)の電気機器20の、単位時間当たりの消費電力の総和と契約電力との差異に基づいて、適宜電気機器20の運転を制御する。単位時間当たりの消費電力は、例えばデマンド時限当たりの消費電力であってよく、消費電力の30分平均値であってよい。
【0029】
例えば電気機器20の消費電力を30分単位で積算し、その積算値が契約電力値×30分で求められる契約電力量に近接する場合には、電力管理装置10は適宜稼働中の電気機器20の運転状況を抑制側に(例えば空調であれば風量を絞るように)制御する。
【0030】
消費電力の積算値が契約電力量に近接したか否かを判定する値、言い換えるとデマンド制御の実行のトリガーとなる値として、デマンド制御実行値DMctrlが設定される。例えば、消費電力の積算値がデマンド制御実行値DMctrl×30分で求められるデマンド制御実行電力量を超過したときに、デマンド制御が実行される。
【0031】
デマンド制御実行値DMctrlは、例えば初期状態においては契約電力値(デマンド値)未満となるように設定される。さらに本実施形態に係る電力管理装置では、後述するようなベースロード電力BLに基づいて適宜デマンド制御実行値DMctrlが再設定される。
【0032】
この再設定に当たり、本実施形態では、契約電力値以下の領域の値はもちろんのこと、契約電力値を超過する領域の値も、デマンド制御実行値DMctrlの採り得る値として許容する。そして実際に、再設定されたデマンド制御実行値DMctrlが契約電力値を超過した場合には、契約者に対して契約電力値の引上げ可否を問い合わせる。
【0033】
図2には、電力管理装置10の機能ブロックが例示されている。電力管理装置10は、稼働時間帯設定部40、ベースロード時間帯設定部42、単位電力計量部44、電力比較部46、日数カウンタ48、日数カウント比較部50、ベースロード設定部52、ベースロード閾値設定部54、デマンド制御実行値設定部56、契約電力比較部58、引上げ確認部60、契約電力記憶部62、及び日数閾値記憶部64を含んで構成される。これらの機能部は、電力管理装置10のCPU26、メモリ28、ハードディスクドライブ30等の各リソースが割り当てられることで構成される。これら各機能部の機能、作用については後述する。
【0034】
<制御パラメータの説明>
図3、
図4用いて、本実施形態に係るデマンド制御実行値設定フローに用いられる各種パラメータについて説明する。
図3には、電力管理装置10が管理対象とするビルの一日の消費電力の推移が例示されている。消費電力の単位として、縦軸に示されているように単位電力値(30分デマンド値)が示される。つまり、30分平均の消費電力値が示される。30分単位で求められることから、実際には30分刻みのステップグラフとなるが、
図3及び以降のグラフでは便宜上これを曲線で表現している。
【0035】
本実施形態に係る電力管理装置10は、ビルの電力消費が適正である場合の電力消費傾向を求め、この傾向から、契約電力の引上げが適切であるか否かを判定する。例えば、ビルの利用者の増加やビルに設置された電気機器の増加に伴う契約電力の引上げを契約者(ビルオーナー)に提案可能とする。
【0036】
このような提案を行うに当たり、本実施形態では稼働時間帯及びベースロード時間帯が設定される。まず、ビルの消費電力に応じて、稼働時間帯設定部40(
図2参照)により稼働時間帯が求められる。稼働時間帯は、ビルの利用者(テナント従業員等)の、当該ビルにおける活動時間を指す。稼働時間帯は、例えばビルの利用者の8割以上がビルに在籍する時間帯であってよい。
【0037】
例えば各テナントの執務コアタイムが既知であるときには、各テナントのコアタイムが重複する期間を稼動時間帯として設定してもよい。
【0038】
また稼働時間帯は、例えば需要電力メータ22Fの消費電力推移を監視することで求められる。例えば
図3に例示するように、早朝から単位電力値が徐々に立ち上がり、やがて頭打ちとなる。この立ち上がりと頭打ちの境界を稼働時間帯の初期時点と設定することができる。例えば単位電力値の勾配を求め、勾配の極大値を検出したら当該極大値の時点を稼働時間帯の初期時点として設定してもよい。
【0039】
また同様にして、深夜に向かって徐々に単位電力値が減少する。この減少時を捉えて稼働時間帯の終期時点とすることができる。例えば単位電力値の勾配を求め、勾配の極小値を検出したら当該極小値の時点を稼働時間帯の終期時点としてもよい。
【0040】
なお、
図3に示すように、昼休憩時の節電動作等、日中にも単位電力値が減少する時間帯が含まれる。これを稼働時間帯の終期時点と検出することを防ぐために、例えば稼働時間帯設定部40に時計機能を持たせ、日中の終期時点検出を禁止するようにしてもよい。
【0041】
また、稼働時間帯の初期時点及び終期時点の設定に当たり、電力管理装置10の管理下にある電気機器20の動作状況を利用してもよい。例えばエレベーター制御盤20Dからエレベーター装置の運転状況が得られる。例えばエレベーター装置が待機状態にある場合、つまり、エレベーターのかごが所定時間(例えば3時間)移動しなかったり、エレベーターフロアの呼びボタンが押されない状態が所定時間継続する場合、当該エレベーター装置が設置されたビル内の利用者は殆どいないものと推定できる。つまり稼働時間帯外にあるものと推定できる。
【0042】
このことから、稼働時間帯設定部40は、エレベーター制御盤20Dの制御信号を取得して、エレベーター装置(昇降機)が所定期間に亘って待機状態であるときに、当該所定期間のカウント起算時点を稼働時間帯の終期時点として設定してもよい。
【0043】
同様にして、稼働時間帯設定部40は、稼働時間帯外の休止時間帯において、エレベーター制御盤20Dから制御信号を取得したときに、これを稼働時間帯の初期時点と設定してもよい。例えば、休止時間帯においてエレベーター制御盤20Dからエレベーターかごの停止階情報を取得し、全ての停止階にエレベーターかご(昇降機)が停止した時点を、稼働時間帯の初期時点として設定してもよい。
【0044】
なお、ビルの所定のフロアが空きテナントである場合、エレベーター制御盤20Dに対して、当該フロアを停止階から除外するように設定される場合がある(停止階スキップ設定)。このような場合には、エレベーターかご(昇降機)が当該停止スキップ階を除く全停止階に停まった時点を、稼働時間帯の初期時点として設定してもよい。
【0045】
次に、ベースロード時間帯dBL及びベースロード電力BLが求められる。ベースロード時間帯設定部42(
図2参照)は、稼働時間帯におけるベースロード時間帯dBLを設定する。ベースロード時間帯とは、稼働時間帯における単位消費電力の変化が定常的となる時間帯を指し、電力消費のパターンが外的環境(気温等)の影響を受けにくい時間帯を指す。
【0046】
稼動時間帯における単位消費電力の変化が定常的となる時間帯(ベースロード時間帯)の例として、例えば、節電が十分に行われている時間帯を挙げることができる。つまり、節電が十分に行われている環境下の消費電力が契約電力に近接していたり、またデマンド制御実行値に近接している場合、一層の節電を図るよりは契約電力を引上げ更新した方がテナント利用者の利便性向上に繋がると考えられる。
【0047】
例えばベースロード時間帯dBLは、稼働時間帯における、昼休憩時間帯に対応してよい。当該時間帯は一般的に執務外時間となり、節電が励行される。例えば当該時間帯は空調機器が停止(オフ)される空調停止時間帯となる。これにより、外的環境により動作条件が変化する(非定常な)電気機の動作が停止される。
【0048】
例えばベースロード時間帯設定部42は、稼働時間帯であって、かつ、空調電力メータ22Dから得られた単位消費電力値が所定の値(0である必要はない)以下となったときをベースロード時間帯dBLの初期時点とする。その後、空調電力メータ22Dから得られた単位消費電力値が所定の値を超過したときを、ベースロード時間帯dBLの終期時点とする。
【0049】
ベースロード時間帯dBLにおける、ビルの総消費電力が、ベースロード電力値BLとして求められる。ベースロード電力値BLは、契約電力(デマンド値)と同様に、30分単位の平均消費電力値[kW]であってよい。
【0050】
なお、
図1に示すように、機器系統ごとにサブコントローラ14が設けられている場合には、例えばビルに設けられた照明機器の単位電力をベースロード電力としてもよい。例えばサブコントローラ14Aに接続された照明電力メータ22Bから、ビル内のすべての照明機器の消費電力を求めて、これをベースロード電力とする。この場合、稼動時間帯=ベースロード時間帯となる。
【0051】
また、ベースロード時間帯を求めてからベースロード電力を求める代わりに、単位電力の変化に基づいてベースロード電力を求めてもよい。例えば、過去の一定期間(例えば一ヶ月)の稼動時間帯の単位消費電力をデマンド時限ごとに抽出し、その分散を求める。分散が最も小さいデマンド時限の単位消費電力をベースロード電力BLとする。
【0052】
次に、所定時点におけるベースロード電力値BLに基づいて、ベースロード上限閾値BLth_max及びベースロード下限閾値BLth_minが求められる。
図4に例示するように、ベースロード上限閾値BLth_maxはベースロード電力値BLから所定幅ΔW3高い値に設定される。またベースロード下限閾値BLth_minはベースロード電力値BLから所定幅ΔW4低い値に設定される。この幅ΔW3及びΔW4は、例えば上述した過去の一定期間の稼動時間帯の単位消費電力から求めた標準偏差から設定してもよい。
【0053】
後述するように、一旦設定されたベースロード上限閾値BLth_max及びベースロード下限閾値BLth_minで囲まれた領域からベースロード電力値BLが超過する場合、つまりベースロード電力値BLがベースロード上限閾値BLth_maxより高い値を取る場合及びベースロード下限閾値BLth_minより低い値を取る場合に、デマンド制御実行値DMctrlの再設定が実行される。
【0054】
また、ベースロード電力値BL、ベースロード上限閾値BLth_max及びベースロード下限閾値BLth_minの少なくともいずれかに基づいて、デマンド制御実行値DMctrlが設定される。デマンド制御実行値DMctrlは後述するデマンド制御実行値設定部56により設定される。例えば
図4に示されているように、デマンド制御実行値DMctrlは、ベースロード上限閾値BLth_maxから所定幅ΔW2高い値に設定される。
【0055】
なお、ベースロード上限閾値BLth_maxが未設定の初期状態においては、契約電力CNTに基づいてデマンド制御実行値DMctrlを設定してもよい。例えば契約電力CNTから所定幅ΔW1低い値をデマンド制御実行値DMctrl(の初期値)に設定してもよい。
【0056】
デマンド制御実行値DMctrlの初期値設定後は、契約電力CNTを参照せずにベースロード上限閾値BLth_maxに基づいてデマンド制御実行値DMctrlの再設定(更新)を行ってもよい。
【0057】
<デマンド制御実行値設定フロー(嵩上げ時)>
図5、
図6を参照し、本実施形態に係る電力管理装置10のデマンド制御実行値設定フローを説明する。
図5にはデマンド制御実行値設定フローチャートが例示され、
図6にはデマンド制御実行値設定フローのタイムチャートが例示されている。
図6の横軸は時間を示し、縦軸は単位電力値(30分デマンド値)を示す。
【0058】
まず、初期条件として、例えば
図6のday1のベースロード電力BLに基づいてベースロード上限閾値BLth_max1及びBLth_min1が設定される。稼働時間帯設定部40は、需要電力メータ22Fからビル全体の消費電力(電力事業者からの需要電力)を取得して、現在時が稼働時間帯に含まれるか否かを判定する(S10)。または、稼働時間帯設定部40は、エレベーター制御盤20Dからエレベーター装置の制御信号を取得して、エレベーターかごが全停止階(停止スキップ階を除く)に停まったか否かに基づいて、現在時が稼働時間帯に含まれるか否かを判定する。
【0059】
現在時が稼働時間帯に含まれない場合は、再びステップS10に戻る。現在時が稼働時間帯に含まれる場合、稼働時間帯設定部40は、ベースロード時間帯設定部42に対して現在時が稼働時間帯に含まれる旨の指令を送信する。
【0060】
稼働時間帯設定部40から指令を受けると、ベースロード時間帯設定部42は、現在時がベースロード時間帯dBLに含まれるか否かを判定する(S12)。例えば上述したように、空調電力メータ22Dから得られた単位消費電力値が所定の値以下となったときをベースロード時間帯dBLの初期時点とする。
【0061】
現在時がベースロード時間帯dBLに含まれない場合、ステップS10まで戻る。一方、現在時がベースロード時間帯dBLに含まれる場合、ベースロード時間帯設定部42は、単位電力計量部44に対して単位電力の計量を許可する許可指令を送信する。
【0062】
許可指令を受けた単位電力計量部44は、需要電力メータ22Fから、ビル全体の消費電力である、単位電力値DMD(30分デマンド値)を監視する(S14)。上述したように、単位電力値DMDは、単位時間当たりのビルの平均消費電力を指す。単位電力計量部44は、需要電力メータ22Fの代わりに、各サブコントローラ14に接続された各種電力メータからの単位消費電力値の総和を求めて、これを単位電力値DMDとしてもよい。
【0063】
計量された単位電力値DMDは電力比較部46に送信される。電力比較部46は、受信した単位電力値DMDがベースロード上限閾値BLth_maxを超過するか否かを判定する(S16)。ベースロード上限閾値BLth_maxはベースロード閾値設定部54から送られる。
【0064】
DMD > BLth_maxである例が
図6のday4〜day6に示される。一方、DMD ≦ BLth_maxである例が
図6のday1〜day3に示される。DMD ≦ BLth_maxである場合、ステップS10に戻り単位電力値の監視が継続される。一方、DMD > BLth_maxである場合、電力比較部46は日数カウントkd_uのインクリメント指令を日数カウンタ48に送信する。
【0065】
日数カウンタ48は、監視対象日(例えばday4)中に、すでに日数カウントkd_uがインクリメントされているか否かを判定(確認)する(S18)。既にインクリメントされている場合はそれ以上のインクリメントを行わず、フローはステップS10まで戻る。まだ監視対象日中にインクリメントが行われていない場合、日数カウンタ48は日数カウントkd_uをインクリメントする(S20)。
【0066】
インクリメント後の日数カウントkd_uは日数カウント比較部50に送られる。日数カウント比較部50は、受信した日数カウントkd_uがカウント閾値kd_uth以上であるか否かを判定する(S22)。カウント閾値kd_uthは日数閾値記憶部64に予め記憶され日数カウント比較部50に呼び出される。カウント閾値kd_uthは例えば入力部32(
図1参照)から予め管理者等によって入力される。例えばカウント閾値kd_uth=3(3日)に設定される。
【0067】
kd_u < kd_uthである場合、フローはステップS10まで戻る。一方、kd_u ≧ kd_uthである場合、まず日数カウント比較部50は日数カウントkd_uをリセット(0に戻す)して次回に備える(S24)。さらに日数カウント比較部50はベースロード設定部52にベースロード電力BLの更新指令(再設定指令)を送信する。
【0068】
ベースロード設定部52には、ベースロード電力BLの更新指令の他に、単位電力計量部44から単位電力値が送られる。ベースロード設定部52は、更新指令を受けた時点から直近の単位電力値すなわちベースロード電力BL(
図6にてBL2で示す)をベースロード閾値設定部54に送信する。または、日数カウンタ48による日数カウントkd_uのインクリメントが始まってから日数カウント閾値kd_uthに至るまでの日(day4〜day6)までのベースロード時間帯dBLの単位電力に基づいて(例えば平均値)ベース電力BLを求めてもよい。
図6に示されるように、更新後のベースロード電力BL2は更新前のベースロード電力BL1と比較して嵩上げされる(S26)。
【0069】
ベースロード閾値設定部54では、受信したベースロード電力BLに基づいてベースロード上限閾値BLth_max2及び下限閾値BLth_min2を再設定(更新)する。
図5、
図6の例ではday4〜day6のベースロード電力BL(BL2)がday1〜day3のベースロード電力BL(BL1)よりも高くなっているから、ベースロード上限閾値BLth_max及び下限閾値BLth_minは嵩上げされる(S28)。
【0070】
嵩上げされたベースロード上限閾値BLth_max及び下限閾値BLth_minは電力比較部46に送られる。またベースロード上限閾値BLth_maxはデマンド制御実行値設定部56にも送られる。デマンド制御実行値設定部56は、受信したベースロード上限閾値BLth_maxに基づいてデマンド制御実行値DMctrlを再設定(更新)する(S30)。
図5、
図6の例では、ベースロード上限閾値BLth_maxは嵩上げされているのでこれに応じてデマンド制御実行値DMctrlも嵩上げされる。
【0071】
なお、ベースロード上限閾値BLth_max、下限閾値BLth_min、及びデマンド制御実行値DMctrlの嵩上げ幅は、例えばステップS16におけるDMD > BLth_maxの両者の比に基づいてもよい。例えばDMctrl2=DMD/BLth_max×DMctrl1であってよい。
【0072】
嵩上げされたデマンド制御実行値DMctrl2は契約電力比較部58に送られる。契約電力比較部58は、嵩上げされたデマンド制御実行値DMctrl2が契約電力CNTを超過するか否かを判定する(S32)。契約電力CNTの値は契約電力記憶部62から取得する。
【0073】
DMctrl2 ≦ CNTである場合、契約電力CNT未満の領域でデマンド制御が実行されるため、契約電力の引上げ更新は不要となる。この場合、フローはステップS10まで戻る。
【0074】
一方、DMctrl2 > CNTである場合、契約電力CNTを超過した領域でデマンド制御が実行されるため、そのままデマンド制御実行値DMctrl2を設定すると契約者の意図しない形でビルの消費電力が契約電力を上回るおそれがある。このような場合に、契約電力比較部58は引上げ確認部60に対して、引上げ更新の問い合わせの発報指令を出力する(S34)。引上げ確認部60は、電力管理装置10の出力部34(
図1参照)に、引上げ更新を提案する画面を出力させる。
【0075】
例えば出力部34には、節電が十分に実施されている条件下で、なお契約電力の引上げ更新が必要である旨のメッセージを出力し、また必要に応じてベースロード電力BLの時系列データと契約電力とを比較するグラフ等を出力する。さらに契約電力の引上げ幅を提示するとともに(例えば嵩上げされたデマンド制御実行値DMctrl2の110%)、この提案を了承するボタンと却下するボタンとを表示させる(S36)。
【0076】
契約電力の引上げ更新の提案が却下された場合、引上げ確認部60は当該却下回答をデマンド制御実行値設定部56に送信する。デマンド制御実行値設定部56では、嵩上げ前のデマンド制御実行値DMctrl1に戻して(S40)、これをデマンド制御の実行部に送信する。デマンド制御実行部は例えば電力管理装置10内に設けられる。
【0077】
一方、契約電力の引上げ更新の提案が了承された場合、引上げ確認部60は当該了承回答をデマンド制御実行値設定部56に送信する(S38)。デマンド制御実行値設定部56は、嵩上げ後のデマンド制御実行値DMctrl2をデマンド制御実行部に送信する。
【0078】
ビルの消費電力が嵩上げ後のデマンド制御実行値DMctrl2に未達の段階ではデマンド制御は実行されず、その結果、消費電力が契約電力を上回る。これにより、契約電力は自動的に引上げ更新される。
【0079】
以上説明したように、本実施形態に係る電力管理装置によれば、ビルの利用状況に応じて適正な消費電力(ベースロード電力BL)を推定するとともに、これに応じた契約電力の引上げ更新をビルオーナー等の契約者に提案可能となる。
【0080】
<デマンド制御実行値設定フロー(引き下げ時)>
図7、
図8を参照し、本実施形態に係る電力管理装置10のデマンド制御実行値設定フローを説明する。この例では、ベースロード電力の低下に伴うデマンド制御実行値の引き下げ処理が実行される。
【0081】
図7にはデマンド制御実行値設定フローチャートが例示され、
図8にはデマンド制御実行値設定フローのタイムチャートが例示されている。
図7の横軸は時間を示し、縦軸は単位電力値(30分デマンド値)を示す。
【0082】
まず、初期条件として、例えば
図8のday1のベースロード電力BLに基づいてベースロード上限閾値BLth_max1及びBLth_min1が設定される。稼働時間帯設定部40は、需要電力メータ22Fからビル全体の消費電力を取得して、現在時が稼働時間帯に含まれるか否かを判定する(S50)。または、稼働時間帯設定部40は、エレベーター制御盤20Dからエレベーター装置の制御信号を取得して、エレベーターかごが全停止階(停止スキップ階を除く)に停まったか否かに基づいて、現在時が稼働時間帯に含まれるか否かを判定する。
【0083】
現在時が稼働時間帯に含まれない場合は、再びステップS50に戻る。現在時が稼働時間帯に含まれる場合、稼働時間帯設定部40は、ベースロード時間帯設定部42に対して現在時が稼働時間帯に含まれる旨の指令を送信する。
【0084】
稼働時間帯設定部40から指令を受けると、ベースロード時間帯設定部42は、現在時がベースロード時間帯dBLに含まれるか否かを判定する(S52)。例えば上述したように、空調電力メータ22Dから得られた単位消費電力値が所定の値以下となったときをベースロード時間帯dBLの初期時点とする。
【0085】
現在時がベースロード時間帯dBLに含まれない場合、ステップS50まで戻る。一方、現在時がベースロード時間帯dBLに含まれる場合、ベースロード時間帯設定部42は、単位電力計量部44に対して単位電力の計量を許可する許可指令を送信する。
【0086】
許可指令を受けた単位電力計量部44は、需要電力メータ22Fから、ビル全体の消費電力である、単位電力値DMD(30分デマンド値)を監視する(S54)。または、各サブコントローラ14に接続された各種電力メータからの単位消費電力値の総和を求めて、これを単位電力値DMDとしてもよい。
【0087】
計量された単位電力値DMDは電力比較部46に送信される。電力比較部46は、受信した単位電力値DMDがベースロード下限閾値BLth_minを(負側に)超過するか(割り込むか)否かを判定する(S56)。ベースロード下限閾値BLth_minはベースロード閾値設定部54から送られる。
【0088】
DMD < BLth_minである例が例えば
図8のday3〜day5に示される。一方、DMD ≧ BLth_minである例が例えば
図8のday1,day2に示される。DMD ≧ BLth_minである場合、ステップS50に戻り単位電力値の監視が継続される。一方、DMD < BLth_minである場合、電力比較部46は日数カウントkd_dのインクリメント指令を日数カウンタ48に送信する。
【0089】
日数カウンタ48は、監視対象日(例えばday3)中に、すでに日数カウントkd_dがインクリメントされているか否かを判定(確認)する(S58)。既にインクリメントされている場合はそれ以上のインクリメントを行わず、フローはステップS50まで戻る。まだ監視対象日中にインクリメントが行われていない場合、日数カウンタ48は日数カウントkd_dをインクリメントする(S60)。
【0090】
インクリメント後の日数カウントkd_dは日数カウント比較部50に送られる。日数カウント比較部50は、受信した日数カウントkd_dがカウント閾値kd_dth以上であるか否かを判定する(S62)。カウント閾値kd_dthは日数閾値記憶部64に記憶される。カウント閾値kd_dthは例えば入力部32(
図1参照)から予め管理者等によって入力される。例えばカウント閾値kd_dth=3(3日)に設定される。
【0091】
kd_d < kd_dthである場合、フローはステップS50まで戻る。一方、kd_d ≧ kd_dthである場合、まず日数カウント比較部50は日数カウントkd_dをリセット(0に戻す)して(S64)次回に備える。さらに日数カウント比較部50はベースロード設定部52にベースロード電力BLの更新指令(再設定指令)を送信する。
【0092】
ベースロード設定部52には、ベースロード電力BLの更新指令の他に、単位電力計量部44から単位電力値が送られる。ベースロード設定部52は、更新指令を受けた時点から直近の単位電力値すなわちベースロード電力BL(
図8にてBL3で示す)をベースロード閾値設定部54に送信する。または、日数カウンタ48による日数カウントkd_dのインクリメントが始まってから日数カウント閾値kd_dthに至るまでの日(day3〜day5)までのベースロード時間帯dBLの単位電力に基づいてベース電力BLを求めてもよい。
図8に示されるように、更新後のベースロード電力BL3は更新前のベースロード電力BL1と比較して引下げられる(S66)。
【0093】
ベースロード閾値設定部54では、受信したベースロード電力BLに基づいてベースロード上限閾値BLth_max3及び下限閾値BLth_min3を再設定(更新)する。
図7、
図8の例ではday3〜day5のベースロード電力BL(BL3)がday1,day2のベースロード電力BL(BL1)よりも低くなっているから、ベースロード上限閾値BLth_max及び下限閾値BLth_minは引下げられる(S68)。
【0094】
引下げられたベースロード上限閾値BLth_max3及び下限閾値BLth_min3は電力比較部46に送られる。またベースロード上限閾値BLth_maxはデマンド制御実行値設定部56にも送られる。デマンド制御実行値設定部56は、受信したベースロード上限閾値BLth_maxに基づいてデマンド制御実行値DMctrlを再設定(更新)する(S70)。
【0095】
なお、ベースロード上限閾値BLth_max、下限閾値BLth_min、及びデマンド制御実行値DMctrlの引下げ幅は、例えばステップS56におけるDMD < BLth_minの両者の比に基づいてもよい。例えばDMctrl3=DMD/BLth_min×DMctrl1であってよい。
【0096】
再設定されたデマンド制御実行値DMctrl3は設定前のデマンド制御実行値DMctrl1より低い値であるため、契約電力CNTよりも低い値となる。このため契約電力と再設定されたデマンド制御実行値DMctrl3との比較は不要となり、デマンド制御実行値DMctrl3はそのままデマンド制御実行部(図示せず)に送信される。