【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、植物が通芽可能な目合いを有し土砂を投入するのに必要な強度を備える袋用ネットを用いて形成された袋本体、および、
前記袋本体の内側面に沿うように配置された、植物が通芽または通根可能でかつ土嚢袋からの土砂の吸い出し防止効果のある吸い出し防止シートを備え、
内部に土砂を投入することにより土嚢が形成され、前記土嚢は自立できるように構成され
るとともに、
前記吸い出し防止シートは、目付量が17〜175g/m2 であり、繊維径が2〜70dtexであり、さらに、
前記繊維径に対する前記目付量の比が1.0〜2.5となる範囲に設定されていることを特徴とする土嚢袋を提供する(請求項1)。
【0009】
前記袋本体は、土砂を投入するのに必要な強度を備えるものであり、植物が通芽可能な目合いの袋用ネットを用いて形成されるので、袋本体の中に土砂を投入したときにこれを収容することができ、かつ、植物種子が発芽したときに通芽を妨げることがない。袋本体は例えば円形又は矩形の底部と、この底部の外周に連設された側面部を有する形状であり、好ましくは、底部から連接して設けた吊ベルトを備える。
【0010】
なお、本発明では、前記土嚢袋内に植物種子を配していてもいなくてもよい。例えば、
図11は、前記土嚢袋内に植物種子を配しておらず、吸い出し防止シート18のみを、袋本体を形成する袋用ネット11の内側に配置する場合を示す。これは、前記土嚢袋に土砂を収納してなる土嚢を例えば河川堤防の法面などの施工部分に設置した場合、流れてくる植物種子が前記袋本体の表面に付着し植物が生育する(待ち受ける形で緑化できる)可能性があるからである。なお、植物が通芽可能な目合いとは1mm以上の目合いを意味し、袋用ネットの素材は柔軟性と強度を兼ね備えた合成樹脂繊維からなることが好ましく、最適はポリプロピレンである。また、底部はフラットヤーンクロスなどのより強度の高い生地を用いて形成されていることが好ましい。さらに、袋本体の口部には1mm程度の大きな目合いを有するシングルラッセルのネットを連設し、開口部を閉じられるように形成することが好ましい。
【0011】
前記土嚢袋は、前記袋本体の内側面に沿うように配置された吸い出し防止シートを備えていることから、例えば前記土嚢袋内に予め植物種子が配合されている場合、前記袋本体に土砂を投入するときには植物種子を土砂による衝撃や、擦れによる脱落から守ることができる。また、本発明は、内部に土砂を投入することにより土嚢が形成され、前記土嚢は自立できるように構成されている。すなわち、河川の護岸、例えば河川堤防の法面などの施工個所に前記土嚢は置かれるだけでそれ自身の重力により自立設置可能であることから、施工個所への固定のための部材が必要で、そのための手間も必要な護岸材に比べて、設置が簡単で手間がかからず、氾濫危険箇所にもスピーディーに設置できる等の利点がある。
【0012】
また、本発明の前記吸い出し防止シートは、植物が通芽または通根可能でかつ吸い出し防止機能を司るよう構成されていることから、前記土嚢袋に土砂を収納してなる土嚢を例えば河川堤防の法面などの施工個所に配置して河川護岸に適用した場合、河川の増水により水位が上昇しても、本発明の前記土嚢袋に投入された土砂が吸い出しを受けるおそれはなく、積み上げた前記土嚢の安定化を図ることができるとともに、河川堤防の法面は保護され、かつ、河川護岸の緑化をも図ることができる。同時に、前記土嚢では、植物種子が発芽し通根すると、植物の根による土嚢の安定化を図ることができるとともに、土砂内に植物の根が張ることにより土砂を止めることができるので、たとえ本発明における土嚢袋が劣化して破れることがあったとしても土砂の流失を防止することができる。
【0013】
そして、本発明は、
前記繊維径に対する前記目付量の比が1.6〜2.0となる範囲に設定されている請求項1に記載の土嚢袋を提供する(請求項2)。また、本発明は、前記吸い出し防止シートは、
合成繊維を使用して形成された不織布よりなる請求項1または請求項2に記載の土嚢袋を提供する(請求項3)。本発明の前記吸い出し防止シートは吸い出し防止機能がある素材で構成されており、耐腐食性を有している。そして、本発明の前記吸い出し防止シートとして、耐腐食性材料である例えばナイロン、ビニロンやポリエステル繊維などの合成繊維を使用して形成された不織布よりなる軽量のものを挙げることができる。この不織布の目付量は17〜175g/m2 が好ましく、20〜40g/m2 がより好ましい。また、本発明の前記吸い出し防止シートの繊維径は、7〜70dtex、かつ(目付量/繊維径)=1.0〜2.5となる範囲が好ましく、10〜40dtexがより好ましい。本発明の後述する実施形態では、吸い出し防止シートとして、目付量が20g/m2 、繊維径が12dtexの不織布、すなわち、(目付量/繊維径)の値が1.6程度の不織布を用いている。なお、目付量と繊維径の関係(目付量/繊維径)について、下限値を1.0、上限値を2.5に設定したのは、下限値が1.0より小さければ、前記吸い出し防止シート(不織布)の目合いがスカスカになり、吸い出し防止効果が得られないからであり、上限値が2.5より大きければ、植物が通芽または通根できず生育不良となるからである。
図8には、本発明者らが見出した、(目付量/繊維径)の値に応じた、「吸出し防止」効果の有無・程度および「通芽・通根」の有無・程度の実験結果が記載されている。
図8において、「吸出し防止」の欄の○印は吸出し防止効果有りを示し、「吸出し防止」の欄の◎印は○印のものよりもさらに防止効果の程度が大であることを示し、×印は「吸出し防止」効果が低いことを示している。同様に、「通芽・通根」の欄の○印は通芽および通根有りを示し、「通芽・通根」の欄の◎印は○印のものよりもさらに通芽および通根の程度が良好であることを示し、×印は「通芽・通根」不可を示している。この
図8から、前記吸い出し防止シートの目合いは、容易に植物の芽や根が通り得るように形成されていて、かつ土砂を通さないあるいは通し難い程度の大きさに設定するのがよいことが分かる。このように、本発明の前記吸い出し防止シートとして、軽量で吸い出し防止効果があり、不織布で構成された耐腐食性材料のシートを用いるのが好ましいことが分かる。
【0014】
なお、上記は、植物の生育を考慮して、吸い出し防止シートとして、目付量が20g/m2 、繊維径が12dtexの不織布を示したが、緑化を目的としない場合は目付量が20g/m2 、繊維径が12dtexの前記不織布の他に、一般的に土木資材で吸い出し防止材として用いられる目付量80g/m2 、繊維径が2〜10dtexの不織布等が適用可能である。
【0015】
また、本発明は、前記吸い出し防止シートに植物種子を分散保持させた植生シートを備えたことを特徴とする請求項1に記載の土嚢袋を提供する(請求項4)。
図9(A)、
図9(B)は、植物種子16が吸い出し防止シート18に付いている例を示している。
また、吸い出し防止シート18に植物種子16を付ける場合、植物の通芽または通根が可能な目合いを有する基材ネットおよび/または植物の通芽または通根が可能なシートからなる基布を重合させていてもよく、吸い出し防止シート18と基布を一体化した構造とすることで、前記植生シートを袋本体に装着する際に破損するおそれがなく、取り扱いが容易となるのであり、
図9(C)〜
図9(F)は、吸い出し防止シート18に基布15を重合してなる植生シートを示している。
そして、吸い出し防止シート18に植物種子16を付ける(植物種子16を配する)場合、
図9(B)および
図9(A)にそれぞれ示したように、植物種子16は吸い出し防止シート18の外側および内側のどちらに配されていてもよく、前記基布15も、同様に吸い出し防止シート18の外側〔
図9(C)、
図9(D)〕および内側〔
図9(E)、
図9(F)〕のどちらに配されていてもよい。
なお、
図9(E)、
図9(F)は、袋本体を形成する袋用ネット11と基布15との間に吸い出し防止シート18を配置する例を示す。
また、本発明は、植物の通芽または通根が可能な目合いを有する基材ネットおよび/または植物の通芽または通根が可能なシートからなる基布に植物種子を分散保持させ、前記吸い出し防止シートを重合してなる植生シートを備えたことを特徴とする請求項1に記載の土嚢袋を提供する(請求項5)。
この場合、基布には植物種子が付けられており、
図10は、その例を示している。
すなわち、基布15に植物種子16を付ける場合において、植物種子16は基布15の外側〔
図10(B)、
図10(E)〕および内側〔
図10(A)、
図10(D)〕のどちらに配されていてもよく、さらに、基布15に植物種子16を付ける場合において、
図10(C)、
図10(F)に示すように、例えば2枚の薄紙15cにて植物種子16を挟み込んだシート(植物の通芽または通根が可能なシートの一例)も挙げることができる。
また、基布15に植物種子16を付ける場合、吸い出し防止シート18も、同様に基布15の外側〔
図10(D)、
図10(E)〕および内側〔
図10(A)、
図10(B)〕のどちらに配されていてもよい。
なお、
図10(D)〜
図10(F)は、袋本体を形成する袋用ネット11と基布15との間に吸い出し防止シート18を配置する例を示す。
このように前記請求項2、請求項3は、
図9、
図10を用いて詳述したように、吸い出し防止シートと基布は、植物種子との位置関係によって、それぞれ通根できればよい場合と通芽可能である必要がある場合とがあることを含んでいる。
なお、本発明では、
図9(A)、
図9(C)、
図10(D)あるいは
図10(F)に示すように、植生シートの内側に植物種子が露出する場合は、植物種子の例えば脱落防止のため別途保護シートを植生シートのさらに内側に設けることも可能である。
【0016】
また、本発明は、請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の土嚢袋に土砂を収納してある土嚢を、岸に設置することを特徴とする護岸工法を提供する(請求項6)。
【0017】
前記吸い出し防止シートおよび前記基布は、植物の種子が通芽または通根することを妨
げることがなく、かつ、植物種子を所定の位置に保持することができる。また、基布を構成する基材ネットは例えば平織りネットや絡み織りネットであることが好ましい。植物種子は土砂の内部に深く通根可能な植物の種子であると、植物の生長に伴って土砂内に通根することにより土嚢の強度を高めることができるので好ましい。
【0018】
加えて、植物の通芽または通根が可能なシートは例えば基材ネットの内側面にシート状に整形された状態で覆い被さっている薄綿であることが好ましい。また、植物の通芽または通根が可能なシートとして、例えば基材ネットに絡ませてシート状に整形された薄綿であってよく、さらにこれらに代えて水溶性や水解性のシート、水溶性の糊剤によってシート状に重合させた非水溶性の繊維や不織布であっても植物種子の通芽または通根を妨げないものであればよい。
【0019】
上記構成の土嚢袋内に現地の土砂を内部に投入することにより土嚢を形成することができ、土留めや土塁を形成できると共に長期的には現地の緑化と、植物の根による土嚢の安定化を図ることができるので、景観保護に大いに寄与することができる。
【0020】
前記植生シートは袋本体の内側面に水溶性の糊剤によって貼着してあってもよく、袋本体を構成するネットと植生シートの一体化を図ることができ、取り扱いが容易となる。すなわち、管理や運搬にかかるコストを引き下げることができる。土砂投入時には袋本体を構成するネットと植生シートの位置ズレを防止できるので、それだけ見栄えの良い土嚢を形成することができる。
【0021】
また、水溶性の糊剤は降雨などによって容易に保持力を失うので植物種子の生育を妨げるものではなく、むしろ、糊剤が保水剤としての機能を果たしたり、植物の生育に用いることができる栄養分とすることもできる。
【0022】
また、前記植生シートは袋本体の開口縁部においてのみ、脱落可能に固定してある場合には、植生シートは袋本体の開口縁部からいわばぶら下がっているだけであるから、土砂の投入時に袋本体との位置ズレを防止すると共に、植生シートが礫に挟まれるなどして土砂と共に引きずり込まれて過大な力がかかるときには袋本体から脱落することにより、植生シートの捩れや皺等による変形が生じにくく、袋本体が歪んで外観が悪くなることを防止できる。
【0023】
また、植生シートは袋本体の開口縁部のみで袋本体に取付けられるものであるから、その製造コストを引き下げることができる。なお、袋本体に対する植生シートの取り付けはステープルによって簡易的に行なうことにより、ステープルが袋本体から外れることによっても植生シートが脱落可能であるのでより好ましい。
【0024】
前記植生シートは施工後に表となる面に配置され、下および裏となる面には配置しないことが好ましい。すなわち、植生シートを効率よく土嚢の表面に配置させて、無駄なく土嚢の緑化を図ることができる。また、袋本体内に土砂を投入する際も植生シートを設ける部分が小さいほど作業効率が良くなる。
【0025】
前記の土嚢袋内に土砂を投入した土嚢は、海岸、河川、湖岸、池および堤防などの水際部における土塁や土留めを早急に形成するのに適しており、長期的には現地の緑化を図り景観を良くすることもできるので好ましい。植物種子が発芽し通根すると、土砂内に植物の根が張ることにより土砂を止めることができるので、たとえ土嚢袋が劣化して破れることがあったとしても土砂の流失を防止することができる。