特許第6644974号(P6644974)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6644974コンクリート構造物の補修方法および同補修方法における補強用の鉄筋ユニットの取り付け構造
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6644974
(24)【登録日】2020年1月14日
(45)【発行日】2020年2月12日
(54)【発明の名称】コンクリート構造物の補修方法および同補修方法における補強用の鉄筋ユニットの取り付け構造
(51)【国際特許分類】
   E04G 23/02 20060101AFI20200130BHJP
   E04G 21/12 20060101ALI20200130BHJP
   E04C 5/16 20060101ALI20200130BHJP
   E01D 22/00 20060101ALI20200130BHJP
   E21D 11/10 20060101ALI20200130BHJP
【FI】
   E04G23/02 E
   E04G21/12 105A
   E04G21/12 105D
   E04C5/16
   E01D22/00 A
   E21D11/10 Z
【請求項の数】2
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2016-247609(P2016-247609)
(22)【出願日】2016年12月21日
(65)【公開番号】特開2018-100548(P2018-100548A)
(43)【公開日】2018年6月28日
【審査請求日】2018年2月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】514246277
【氏名又は名称】株式会社岬産業
(73)【特許権者】
【識別番号】513192742
【氏名又は名称】建ロボテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092875
【弁理士】
【氏名又は名称】白川 孝治
(72)【発明者】
【氏名】眞部 達也
【審査官】 兼丸 弘道
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−333900(JP,A)
【文献】 特開2017−106273(JP,A)
【文献】 特開2010−116737(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 23/02
E04G 21/12
E04C 5/16
E01D 22/00
E21D 11/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
補修すべきコンクリート壁の斫り面に補強用の鉄筋ユニットを係合支持する複数本のアンカー部材を埋設するとともに、該補強用の鉄筋ユニットを係合支持する複数本のアンカー部材に対して補強用の鉄筋ユニットの係止機能を持った補強用鉄筋ユニット係止部材を螺合可能とし、上記複数本のアンカー部材に対して上記補強用の鉄筋ユニットを係合して仮支持させた後に、上記補強用鉄筋ユニット係止部材を螺合固定し、該螺合固定された補強用鉄筋ユニット係止部材により、上記コンクリート壁の斫り面から前側の所定の奥行き寸法離れた位置に上記補強用の鉄筋ユニットを係止し、その後、所定のモルタル吹き付け手段によりモルタルを吹き付けて新たなモルタル層を形成するようにしてなるコンクリート構造物の補修方法であって、 上記アンカー部材の手前側の端部には上記所定の奥行き寸法に対応した長さを有するナット溝が設けられているとともに、上記補強用鉄筋ユニット係止部材は、上記アンカー部材の手前側の端部のナット溝に螺合する上記所定の奥行き寸法に対応した長さを有するナット部と該ナット部の手前の端部に直交状態で設けられた回転操作可能な補強用鉄筋ユニット係止片とからなり、上記アンカー部材の手前側の端部のナット溝に上記ナット部を係合させた後、上記補強用鉄筋ユニット係止片を回転させて上記ナット部の先端が上記コンクリート壁の斫り面に当接する上記ナット溝の最終位置まで螺合固定し、該螺合固定状態において上記補強用鉄筋ユニット係止片により上記補強用の鉄筋ユニットを係止することにより、上記コンクリート壁の斫り面から前側の所定の奥行き寸法離れた位置に上記補強用の鉄筋ユニットを位置させるようにしたことを特徴とするコンクリート構造物の補修方法。
【請求項2】
補修すべきコンクリート壁の斫り面に埋設固定され、補強用の鉄筋ユニットを係合支持する複数本のアンカー部材と、該複数本のアンカー部材に対して係合支持される補強用の鉄筋ユニットと、上記複数本のアンカー部材に対して螺合固定されて、上記補強用の鉄筋ユニットを係止する補強用鉄筋ユニット係止部材とを備え、上記複数本のアンカー部材に対して上記補強用の鉄筋ユニットを係合して仮支持させた後に、上記複数本のアンカー部材に上記補強用鉄筋ユニット係止部材を螺合固定し、該螺合固定された上記補強用鉄筋ユニット係止部材により、上記コンクリート壁の斫り面から前側の所定の奥行き寸法離れた位置に上記補強用の鉄筋ユニットを係止し、その後、所定のモルタル吹き付け手段によりモルタルを吹き付けて新たなモルタル層を形成するようにしてなるコンクリート構造物の補修方法における補強用の鉄筋ユニットの取り付け構造であって、 上記アンカー部材の手前側の端部には上記所定の奥行き寸法に対応した長さを有するナット溝が設けられているとともに、上記補強用鉄筋ユニット係止部材は、上記アンカー部材の手前側の端部のナット溝に螺合する上記所定の奥行き寸法に対応した長さを有するナット部と該ナット部の手前側の端部に直交状態で設けられた回転操作可能な補強用鉄筋ユニット係止片とからなり、上記アンカー部材の手前側の端部のナット溝に上記ナット部を係合させた後、上記補強用鉄筋ユニット係止片を回転させて上記ナット部の先端が上記コンクリート壁の斫り面に当接する上記ナット溝の最終位置まで螺合固定し、該螺合固定状態において上記補強用鉄筋ユニット係止片により上記補強用の鉄筋ユニットを係止することにより、上記コンクリート壁の斫り面から前側の所定の奥行き寸法離れた位置に上記補強用の鉄筋ユニットを位置させるようになっていることを特徴とするコンクリート構造物の補修方法における補強用の鉄筋ユニットの取り付け構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、コンクリート構造物の補修方法および同補修方法における補強用の鉄筋ユニットの取り付け構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
昨今、トンネルや橋梁、河川等多くのコンクリート構造物(インフラ施設)の経年劣化、安全性の低下が問題となっており、その対策が求められている。これらコンクリート構造壁の劣化度合は、単なる耐用年数の経過だけでなく、設置環境や元々の施工品質にも左右される。したがって、その劣化度合いは一様ではなく、一定の耐用年数が経過したからと言って必ずしも再建造する必要があるとは限らず、逆に一定の耐用年数が経過していないにも拘わらず、劣化度合いが大きく、再建造する必要がある場合もある。
【0003】
これらコンクリート構造物の安全性向上策として、最も確実なのは一定の耐用年数が経過したものを全て再建造することである。しかし、上記のように実際の構造物の劣化度合いは一様ではないし、耐用年数を超えるコンクリート構造物は全国の至る所にあり、その数は膨大である。このような事情を考えると、単純に耐用年数の経過を基準として再建造するのは膨大なコストを必要とすることはもちろん、劣化度合いが低く、いまだ十分に耐久性がある構造物を無駄にしてしまうことになる。
【0004】
そこで、最近ではコンクリート構造物の劣化度合いを診断するコンクリート診断士なる資格制度も創設されており、上記のようなコンクリート構造物の具体的な劣化度合を診断し、実際の劣化度合いに応じて、補修できるものは可能な限り補修するようにして、無駄な再建造を回避するとともに、早期の安全性確保を図る対策が実施されつつある。
【0005】
コンクリート構造物には、上記のように橋梁、トンネル、河川など各種のインフラ施設のものがあり、その対象によって種々の構造のものがあるが、共通する基本的な特徴としては、中心部に骨材としての鉄筋(既設鉄筋)が埋設されており、その前後を所定の厚さのコンクリート壁が覆うことにより壁状に構成されていることである。そして、上記鉄筋は、主筋および背筋を結束線等を用いて格子状に結束して構成されている。
【0006】
そこで、当該コンクリート壁の外層部側の劣化層部分を背筋部分まで斫り(はつり)、同斫り面部分に補強用の鉄筋を係止するための複数本のアンカー部材を打ち込み、該アンカー部材の後端部(手前側端部)に対して新たな補強用の鉄筋ユニットを係止し、その上に上記劣化層に代わる新たなモルタル層、すなわち外層部を形成することにより、再建造に近いコンクリート壁状態に復元する。
【0007】
この場合、補強用の鉄筋ユニットは、一般に主筋および背筋の交差部分を結束線を用いて格子状に結束したものが用いられており、上記アンカー部材の後端部(手前側端部)への補強用の鉄筋ユニットの取り付けは、同格子状の補強用の鉄筋ユニットの主筋又は背筋部分を上記アンカー部材の後端部分(手前側端部部分)に結束線で結束するか、または溶接することによりなされていた(補強用の鉄筋ユニットの一例として、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平10−178871号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
以上のように、従来のコンクリート構造物の補修方法および補修構造の場合、劣化層を除去したコンクリート壁に対する補強用の鉄筋ユニットの取り付けは、その斫り面に打ち込まれた複数本のストレートなアンカー部材の後端部分(手前側端部部分)に対して主筋または背筋部分を結束線で結束するか、又は溶接することが必要であり、斫り面におけるアンカー部材を介した補強用の鉄筋ユニットの取り付けには相当な手間がかかっていた。
【0010】
すなわち、従来の補修方法および補修構造の場合、複数本の各アンカー部材と補強用の鉄筋ユニットの鉄筋部分が常に正確にクロスするとは限らず、相互に離間して、溶接が困難な場合や結束しにくいケースが多かった。そのため、アンカー部材の打ち直しも必要になっていた。
【0011】
また、一応相互にクロスする状態にあったとしても、アンカー部材自体に鉄筋の係合部がないため、補強用の鉄筋ユニットの鉄筋がアンカー部材の軸方向に任意にスライドするので、位置決めが難しく、正確な結束作業や溶接作業が容易でなかった。
【0012】
さらに、補強用の鉄筋ユニットを修復現場で格子状の鉄筋ユニットに構成するケースでは、鉄筋単体からの鉄筋ユニットの結束作業が必要となるので、作業は一層煩雑なものとなっていた。
【0013】
また、古いコンクリート壁の斫り面に新たなモルタル層を接合するには相当に高い接合力が必要であり、単にモルタル層を吹き付けていくだけでは十分ではない。そのため、上記斫り面には一般に接着材よりなるプライマリー層が形成され、その上で新たなモルタル層が形成されるようになっている。
【0014】
ところが、このプライマリー層は、時間の経過によって乾き、接合性能が低下する。したがって、補強用の鉄筋ユニット係止前にプライマリー層を形成するようなケースでは、よりアンカー部材に対する補強用の鉄筋ユニット係止作業の迅速性、作業性の良さが求められる。
【0015】
本願発明は、このような従来の課題を解決するためになされたものであり、補強用の鉄筋ユニットを係合支持する複数本のアンカー部材に対して補強用の鉄筋ユニットの係止機能を持った補強用鉄筋ユニット係止部材を螺合可能とし、複数本のアンカー部材に補強用の鉄筋ユニットを係合させた後に、同補強用鉄筋ユニット係止部材により所望の位置に係止できるようにし、複数本のアンカー部材の各々に対する補強用の鉄筋ユニットの結束作業または溶接作業を容易にして、大きく作業効率を向上させたコンクリート構造物の補修方法及び同補修方法における補強用の鉄筋ユニットの取り付け構造を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本願発明は、上記の課題を解決するために、次のような課題解決手段を備えて構成されている。
【0017】
(1)請求項1の発明の課題解決手段
この発明の課題解決手段におけるコンクリート構造物の補修方法は、補修すべきコンクリート壁の斫り面に補強用の鉄筋ユニットを係合支持する複数本のアンカー部材を埋設するとともに、該補強用の鉄筋ユニットを係合支持する複数本のアンカー部材に対して補強用の鉄筋ユニットの係止機能を持った補強用鉄筋ユニット係止部材を螺合可能とし、上記複数本のアンカー部材に対して上記補強用の鉄筋ユニットを係合して仮支持させた後に、上記補強用鉄筋ユニット係止部材を螺合固定し、該螺合固定された補強用鉄筋ユニット係止部材により、上記コンクリート壁の斫り面から前側の所定の奥行き寸法離れた位置に上記補強用の鉄筋ユニットを係止し、その後、所定のモルタル吹き付け手段によりモルタルを吹き付けて新たなモルタル層を形成するようにしてなるコンクリート構造物の補修方法であって、 上記アンカー部材の手前側の端部には上記所定の奥行き寸法に対応した長さを有するナット溝が設けられているとともに、上記補強用鉄筋ユニット係止部材は、上記アンカー部材の手前側の端部のナット溝に螺合する上記所定の奥行き寸法に対応した長さを有するナット部と該ナット部の手前の端部に直交状態で設けられた回転操作可能な補強用鉄筋ユニット係止片とからなり、上記アンカー部材の手前側の端部のナット溝に上記ナット部を係合させた後、上記補強用鉄筋ユニット係止片を回転させて上記ナット部の先端が上記コンクリート壁の斫り面に当接する上記ナット溝の最終位置まで螺合固定し、該螺合固定状態において上記補強用鉄筋ユニット係止片により上記補強用の鉄筋ユニットを係止することにより、上記コンクリート壁の斫り面から前側の所定の奥行き寸法離れた位置に上記補強用の鉄筋ユニットを位置させるようにしたことを特徴としている。
【0018】
この発明の課題解決手段の構成では、コンクリート構造物の補修に用いられる補強用の鉄筋ユニットを補修すべきコンクリート壁の斫り面との間に新たなモルタル層を形成するために必要な所定の奥行き寸法をおいて取り付けるに際し、まず当該コンクリート壁の斫り面に複数本のアンカー部材を埋設固定し、該埋設固定された複数本のアンカー部材に対して補強用の鉄筋ユニットをアンカー部材の軸方向に摺動可能に係合する。
【0019】
次に、同補強用の鉄筋ユニットを軸方向に摺動可能に係合した複数本のアンカー部材の手前側端部に対して同補強用の鉄筋ユニットの係止機能を持った補強用鉄筋ユニット係止部材が螺合固定されて補強用の鉄筋ユニットが係止されるようになっている。
【0020】
したがって、上記複数本のアンカー部材に対して先ず補強用の鉄筋ユニットを係合させて軸方向に摺動可能な状態で仮支持する。その後、同複数本のアンカー部材の手前側端部に補強用鉄筋ユニット係止部材を螺合固定して補強用の鉄筋ユニットを係止可能とする。
【0021】
その上で、例えば上記コンクリート壁の斫り面側に寄せて仮支持させてあった上記補強用の鉄筋ユニットを上記アンカー部材の手前側部方向に引き寄せるなどして、最終的に上記コンクリート壁の斫り面から手前側の所定の奥行き寸法を置いた(間隔をあけた)所定の位置に係止する。すると、同係止状態において、上記補強用の鉄筋ユニットの鉄筋と各アンカー部材の補強用鉄筋ユニット係止部材とが同一平面方向において、確実にクロスした状態で位置決めされる。
【0022】
そして、同状態において、上記補強用の鉄筋ユニットの鉄筋と各アンカー部材の補強用鉄筋ユニット係止部材とが確実に結束又は溶接される。そして、その後、同部分に所定のモルタル吹き付け手段によりモルタルを吹き付けて新たなモルタル層を形成することにより、上記確実にアンカー部材に連結された強度の高い補強用の鉄筋ユニットで補強された新たな外層部を復元する。
【0023】
この結果、同構成によれば、補強用の鉄筋ユニットの複数本のアンカー部材各々に対する結束作業や溶接作業が容易、かつ確実になり、可及的に作業効率が向上するとともに、補強強度が高く、信頼性のあるコンクリート構造物の補修構造を実現することができる。
【0024】
従来の補修方法の場合、すでに述べたように、斫り面に打ち込まれた複数本のストレートなアンカー部材各々の手前側端部分に対して、補強用の鉄筋ユニットの主筋または背筋部分をそれぞれ結束線で結束するか、又は溶接するようになっていた。しかし、同構成の場合、各アンカー部材と補強用の鉄筋ユニットの鉄筋部分が常に正確にクロスするとは限らず、相互に離間して、溶接が困難な場合や結束しにくいケースが多かった。そのため、アンカー部材の打ち直しも必要になっていた。
【0025】
また、一応相互にクロスする状態にあったとしても、アンカー部材自体に鉄筋の係合部がないため、補強用の鉄筋ユニットの鉄筋がアンカー部材の軸方向に任意にスライドするので、位置決めが難しく、正確な結束作業や溶接作業が容易でなかった。
【0026】
ところが、この発明の課題解決手段の構成では、上記のように、複数本のアンカー部材の手前側端部に補強用の鉄筋ユニットの係止機能を持った補強用鉄筋ユニット係止部材が設けられており、同係止部材によって確実に補強用の鉄筋ユニットの鉄筋部分を係止するので、アンカー部材側の係止部材と補強用の鉄筋ユニットの鉄筋とが正確に位置決めされた状態で、確実にクロスするようになるので、結束は勿論、溶接作業も著しく容易になり、確実かつ強度の高い連結を可能とすることができる。その結果、作業効率が向上することは勿論、補強強度そのものも大きく向上する。
【0027】
しかも、その場合において、上記アンカー部材の手前側端部には上記所定の奥行き寸法に対応した長さを有するナット溝が設けられているとともに、上記補強用鉄筋ユニット係止部材は、上記アンカー部材の手前側端部のナット溝に螺合する上記所定の奥行き寸法に対応した長さを有するナット部と該ナット部の手前側に直交状態で設けられた回転操作可能な補強用鉄筋ユニット係止片とからなり、上記アンカー部材の手前側端部のナット溝に上記ナット部を係合させた後、上記補強用鉄筋ユニット係止片を回転させて上記ナット部の先端が上記コンクリート壁の斫り面に当接する上記ナット溝の最終位置まで螺合固定し、該螺合固定状態において上記補強用鉄筋ユニット係止片により上記補強用の鉄筋ユニットを係止することにより、上記コンクリート壁の斫り面から前側の所定の奥行き寸法離れた位置に確実に上記補強用の鉄筋ユニットを位置させるようになっている。
【0028】
したがって、このような構成によれば、上記アンカー部材の手前側端部のナット溝に対して、上記補強用鉄筋ユニット係止部材のナット部を係合させた後、その補強用鉄筋ユニット係止片を回転させることにより上記補強用の鉄筋ユニットの所定の係止位置まで簡単に螺合させてゆくことができる。そのため、補強用鉄筋ユニット係止部材のアンカー部材に対する螺合固定作業自体も容易になる。
【0029】
この場合、上記補強用鉄筋ユニット係止部材の補強用鉄筋ユニット係止片は、必要に応じ、左右の片の長さが異なるものに構成することができる。そのようにすると、上記ナット部を回転操作する時に、回転させる方向に遠心力を生じさせることができ、フリーな回転を生じさせることができ、アンカー部材後端部へのナット部の螺合がより容易になる。
【0030】
(2)請求項2の発明の課題解決手段
この発明の課題解決手段におけるコンクリート構造物の補修方法における補強用の鉄筋ユニットの取り付け構造は、補修すべきコンクリート壁の斫り面に埋設固定され、補強用の鉄筋ユニットを係合支持する複数本のアンカー部材と、該複数本のアンカー部材に対して係合支持される補強用の鉄筋ユニットと、上記複数本のアンカー部材に対して螺合固定されて、上記補強用の鉄筋ユニットを係止する補強用鉄筋ユニット係止部材とを備え、上記複数本のアンカー部材に対して上記補強用の鉄筋ユニットを係合して仮支持させた後に、上記複数本のアンカー部材に上記補強用鉄筋ユニット係止部材を螺合固定し、該螺合固定された上記補強用鉄筋ユニット係止部材により、上記コンクリート壁の斫り面から前側の所定の奥行き寸法離れた位置に上記補強用の鉄筋ユニットを係止し、その後、所定のモルタル吹き付け手段によりモルタルを吹き付けて新たなモルタル層を形成するようにしてなるコンクリート構造物の補修方法における補強用の鉄筋ユニットの取り付け構造であって、 上記アンカー部材の手前側の端部には上記所定の奥行き寸法に対応した長さを有するナット溝が設けられているとともに、上記補強用鉄筋ユニット係止部材は、上記アンカー部材の手前側の端部のナット溝に螺合する上記所定の奥行き寸法に対応した長さを有するナット部と該ナット部の手前側の端部に直交状態で設けられた回転操作可能な補強用鉄筋ユニット係止片とからなり、上記アンカー部材の手前側の端部のナット溝に上記ナット部を係合させた後、上記補強用鉄筋ユニット係止片を回転させて上記ナット部の先端が上記コンクリート壁の斫り面に当接する上記ナット溝の最終位置まで螺合固定し、該螺合固定状態において上記補強用鉄筋ユニット係止片により上記補強用の鉄筋ユニットを係止することにより、上記コンクリート壁の斫り面から前側の所定の奥行き寸法離れた位置に上記補強用の鉄筋ユニットを位置させるようになっていることを特徴としている。
【0031】
この発明の課題解決手段の構成では、コンクリート構造物の補修方法に用いられる補強用の鉄筋ユニットを補修すべきコンクリート壁の斫り面との間に新たなモルタル層を形成するために必要な所定の奥行き寸法をおいて取り付ける補強用の鉄筋ユニットの取り付け構造に関し、補修すべきコンクリート壁の斫り面に埋設固定された複数本のアンカー部材に対して補強用の鉄筋ユニットが任意に係合支持されるようになっているとともに、さらに補強用の鉄筋ユニットの係止機能を持った補強用鉄筋ユニット係止部材が任意に螺合固定されるようになっている。
【0032】
したがって、上記複数本のアンカー部材に対して先ず補強用の鉄筋ユニットを軸方向に摺動可能に係合させることによって仮支持することができる。そして、その後、同複数本のアンカー部材に対して、さらに補強用鉄筋ユニット係止部材を螺合固定し、軸方向に摺動可能に係合されて仮支持されている補強用の鉄筋ユニットを手前側に引き寄せるなどして、最終的に補修すべきコンクリート壁の斫り面との間の新たなモルタル層を形成するために必要な所定の奥行き寸法位置に正確に係止することができる。
【0033】
しかも、同係止された状態において、上記補強用の鉄筋ユニットの鉄筋と各アンカー部材側の補強用鉄筋ユニット係止部材とが同一平面方向において、確実にクロスした状態となる。そして、そのような状態において、上記補強用の鉄筋ユニットの鉄筋と各アンカー部材側の補強用鉄筋ユニット係止部材とが確実に結束又は溶接される。
【0034】
その結果、上記複数本のアンカー部材に対して新たなモルタル骨材としての補強用の鉄筋ユニットを取り付けるに際して、従来のような複数本のアンカー部材に対する鉄筋の結束作業や溶接作業が困難になるケースが確実に解消され、補修効率が大きく向上し、また補強強度がより有効に向上する。
【0035】
そして、その後、同部分に所定のモルタル吹き付け手段によりモルタルを吹き付けて新たなモルタル層を形成することにより、上記確実にアンカー部材に連結された強度の高い補強用の鉄筋ユニットで補強された新たな外層部を復元することができる。
【0036】
この結果、同構成によれば、補強用の鉄筋ユニットの複数本のアンカー部材各々に対する結束作業や溶接作業が容易、かつ確実になり、可及的に作業効率が向上するとともに、補強強度が高く、信頼性のあるコンクリート構造物の補修構造を実現することができる。
【0037】
従来の補修方法の場合、すでに述べたように、斫り面に打ち込まれた複数本のストレートなアンカー部材各々の手前側部分に対して、補強用の鉄筋ユニットの主筋または背筋部分をそれぞれ結束線で結束するか、又は溶接するようになっていた。しかし、同構成の場合、各アンカー部材と補強用の鉄筋ユニットの鉄筋部分が常に正確にクロスするとは限らず、相互に離間して、溶接が困難な場合や結束しにくいケースが多かった。そのため、アンカー部材の打ち直しも必要になっていた。
【0038】
また、一応相互にクロスする状態にあったとしても、アンカー部材自体に鉄筋の係合部がないため、補強用の鉄筋ユニットの鉄筋がアンカー部材の軸方向に任意にスライドするので、位置決めが難しく、正確な結束作業や溶接作業が容易でなかった。
【0039】
ところが、この発明の課題解決手段の構成では、上記のように、複数本のアンカー部材の手前側端部に補強用の鉄筋ユニットの係止機能を持った補強用鉄筋ユニット係止部材が設けられており、同係止部材によって確実に補強用の鉄筋ユニットの鉄筋部分を係止するので、アンカー部材側の係止部材と補強用の鉄筋ユニットの鉄筋とが正確に位置決めされた状態で、確実にクロスするようになるので、結束は勿論、溶接作業も著しく容易になり、確実かつ強度の高い連結を可能とすることができる。その結果、作業効率が向上することは勿論、補強強度そのものも大きく向上する。
【0040】
このため、たとえば上記補強用の鉄筋ユニットを係止する前に補修すべきコンクリート壁の斫り面と新たなモルタル層との接合力を高めるためのプライマリー層を形成する補修方法を採用した場合にも、迅速かつ有効に対応することができる。
【0041】
しかも、この発明の課題解決手段の構成では、その場合において、上記アンカー部材の手前側端部には上記コンクリート壁の斫り面から前側の所定の奥行き寸法離れた位置に上記補強用の鉄筋ユニットを正確に位置させるために同所定の奥行き寸法に対応した長さを有するナット溝が設けられているとともに、上記補強用鉄筋ユニット係止部材は、上記アンカー部材の手前側端部のナット溝に螺合する同所定の奥行き寸法に対応した長さを有するナット部と該ナット部の手前側に直交状態で設けられた回転操作可能な補強用鉄筋ユニット係止片とを備えて構成されており、上記アンカー部材の手前側端部のナット溝に上記ナット部を係合させた後、上記補強用鉄筋ユニット係止片を回転させて上記ナット部の先端が上記コンクリート壁の斫り面に当接する上記ナット溝の最終位置まで螺合固定し、該螺合固定状態において上記補強用鉄筋ユニット係止片により上記補強用の鉄筋ユニットを係止することにより、上記コンクリート壁の斫り面から前側の所定の奥行き寸法離れた位置に正確に上記補強用の鉄筋ユニットを位置させるようになっている。
【0042】
このような構成によれば、上記アンカー部材の手前側端部のナット溝に対して、上記補強用鉄筋ユニット係止部材のナット部を係合させた後、その補強用鉄筋ユニット係止片を回転させることにより、上記補強用の鉄筋ユニットの所定の係止位置まで簡単に螺合させてゆくことができる。したがって、補強用鉄筋ユニット係止部材のアンカー部材に対する螺合固定作業自体も容易になる。
【0043】
この場合、上記補強用鉄筋ユニット係止部材の補強用鉄筋ユニット係止片は、必要に応じ、左右の片の長さが異なるものに構成することができる。そのようにすると、上記ナット部を回転操作する時に、回転させる方向に遠心力を生じさせることができ、フリーな回転を生じさせることができ、アンカー部材後端部へのナット部の螺合がより容易になる。
【発明の効果】
【0044】
以上の結果、本願発明の各課題解決手段によれば、補修すべきコンクリート壁の斫り面に対して所定の間隔をあけて補強用の鉄筋ユニットを取り付けるに際し、従来のような複数本のアンカー部材に対する結束作業や溶接作業が困難になるケースを解消して、可及的に補修時の作業効率を向上させ、また補強強度をも有効に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
図1】本願発明の実施の形態において、補修の対象とするコンクリート構造物の構成の一例を示す断面図である。
図2図1の構成のコンクリート構造物の劣化層(外層部)部分を斫り取った状態における構成を示す断面図である。
図3図2の状態の構成のコンクリート構造物の斫り面に所定の奥行き距離をおいて補強用の鉄筋ユニットを係止するための複数本のアンカー部材を設置した状態を示す断面図である。
図4図3の状態にアンカー部材を設置する際の第1の設置工程を示す要部の拡大断面図である。
図5図3の状態にアンカー部材を設置する際の上記第1の設置工程に続く第2の設置工程を示す要部の拡大断面図である。
図6図3図5で使用されているアンカー部材の外部構成を示す外観斜視図である。
図7図3の状態における複数本のアンカー部材に対して補強用の鉄筋ユニットを軸方向に摺動可能に係合し、一旦コンクリート壁の斫り面側に押し付けて仮支持した状態を示す断面図である。
図8図7で使用されている補強用の鉄筋ユニットの構成の一例を示す斫り面側(被係合面側)から見た斜視図である。
図9図8の構成の補強用の鉄筋ユニットを図7の状態に係合した時のアンカー部材ナット溝部分と補強用の鉄筋ユニットの背筋部分との位置関係(離間距離aの設置)を示す要部の拡大断面図である。
図10図9に示すアンカー部材と補強用の鉄筋ユニットの背筋との位置関係において、設置されたアンカー部材のナット溝部分に補強用鉄筋ユニット係止部材のナット部を螺合させる場合の螺合開始状態における断面図である。
図11図10の状態における要部の拡大断面図である。
図12図10図11のようにしてアンカー部材に螺合固定される補強用鉄筋ユニット係係止部材の構成を示す斜視図である。
図13図12の補強用鉄筋ユニット係止部材の構成を示す平面図である。
図14図12の補強用鉄筋ユニット係止部材のナット部と係止片各々の構成を示す一部(ナット部)切欠正面図である。
図15図12図14の補強用鉄筋ユニット係止部材を図3のように設置されたアンカー部材に螺合固定した時の要部の螺合状態を示す断面図である。
図16図12図14の補強用鉄筋ユニット係止部材を図3のように設置された各アンカー部材に螺合操作している螺合途中の状態を示す断面図である。
図17図16の状態における要部の拡大断面図である。
図18図12図14の補強用鉄筋ユニット係止部材を図3のように設置された各アンカー部材に螺合固定した状態(図15の状態に対応)を示す断面図である。
図19図18の状態における要部の拡大断面図である。
図20図12図14の補強用鉄筋ユニット係止部材を図3のように設置された各アンカー部材に螺合固定した後において、上記斫り面側に押し付けられた図18および図19の状態にある補強用の鉄筋ユニットを補強用鉄筋ユニット係止部材のナット部の長さ(図15の寸法cを参照)に応じて形成された距離d(図19参照)だけ外層側に寄せて斫り面との間に有効なモルタル充填スペースSを形成した最終係止状態の構成を示す断面図である。
図21図20の状態における要部の拡大断面図である。
図22図20の状態における補強用の鉄筋ユニットと補強用鉄筋ユニット係止部材との相互の係止関係を示すスケルトン状態(コンクリート壁のない状態)のコンクリート壁側から見た斜視図である。
図23図20のように補強用の鉄筋ユニットがアンカー部材の手前端側(コンクリート壁外層側)の適正な位置にセットされ、さらに斫り面にモルタルとの接合機能の高いプライマー層(接着材層)が形成された状態を示す断面図である。
図24図23の状態において、さらに新たなモルタルが吹き付けられ、補強用の鉄筋ユニットの前後を包み込む状態で元の外層部の厚さに新たなモルタル層が形成された状態を示す断面図である。
図25図24の状態から、さらにモルタル層の外面に仕上げ層が形成された補修完了状態の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
図1図25は、本願発明の実施の形態にかかるコンクリート構造物の補修方法および同補修方法における補強用の鉄筋ユニットの取り付け構造を示している。
【0047】
以下、同図1図25を参照して、本願発明の実施の形態にかかるコンクリート構造物の補修方法および同補修方法における補強用の鉄筋ユニットの取り付け構造について、詳細に説明してゆく。
【0048】
<補修前のコンクリート構造物の構造>
まず図1には、この実施の形態において補修の対象となる所定のレベル以上に外層部3b側が劣化したコンクリート構造物1の構造の一例が示されている。
【0049】
このコンクリート構造物1には、たとえば橋梁、トンネル、河川などの各種のインフラ施設のものがあり、その対象によって種々の構造のものがあるが、それらの各々に共通する基本的な特徴としては、図示のように、中心部に骨材としての鉄筋(既設鉄筋)2が埋設されており、その前後を所定の厚さのコンクリート壁3が覆うことにより壁状に構成されていることである。上記鉄筋(既設鉄筋)2は、複数本の主筋2a及び背筋2bを相互に格子状に結束して構成されている。
【0050】
上記コンクリート壁3は、当然ながら一定年数以上使用されると、その外層部3b側から内層部3a側に向けて次第に劣化が始まり、そのまま放置しておくと、やがては内層部3a側への水分の浸潤を招き、さらには鉄筋2が腐食することになる。そして、その腐食の程度が大きく、全体に亘るようになると、もはや補修は不可能であり、再建造が必要になってしまう。
【0051】
<従来の補修方法および同補修方法における補強用の鉄筋ユニットの取り付け構造>
そこで、従来から、このようなコンクリート構造物1の定期的な劣化診断を行い、上記外層部3b側の劣化層が鉄筋2までに至らない所定の劣化レベルの段階で、当該劣化層部分を鉄筋2の背筋2b付近まで斫り、同部分に補強用の鉄筋ユニット係止用のストレートなアンカー部材を打ち込み、該アンカー部材を利用して補強用の鉄筋ユニットを取り付け、その上に上記劣化層に代わる新たなモルタルを層を形成することにより、元のコンクリート壁状態に復元する補修方法が採用されていた。
【0052】
この場合、上記補強用の鉄筋ユニットとしては、一般に複数本の主筋および背筋の交差部分を結束線を用いて格子状に結束したものが用いられており、同格子状の補強用の鉄筋ユニットの主筋又は背筋部分を上記アンカー部材の手前側部分に結束線を用いて結束するか、または溶接することによりアンカー部材に取り付ける補修構造が採用されていた。
【0053】
<従来の補修方法および補修構造における問題点>
以上のように、上記従来の補修方法および補修構造の場合、劣化層を除去したコンクリート壁3に対する補強用の鉄筋ユニットの設置は、その斫り面に打ち込まれた複数本のストレートなアンカー部材に対して結束線で結束するか、または溶接することが必要であり、補修面に対する補強用の鉄筋ユニットの組み付けには相当な手間がかかっていた。
【0054】
すなわち、従来の補修方法および補修構造の場合、複数本の各アンカー部材と補強用の鉄筋ユニットの鉄筋部分が常に正確にクロスするとは限らず、相互に離間して、溶接が困難な場合や結束しにくいケースが多かった。そのため、アンカー部材の打ち直しも必要になっていた。
【0055】
また、一応相互にクロスする状態にあったとしても、アンカー部材自体に鉄筋の係合部がないため、補強用の鉄筋ユニットの鉄筋がアンカー部材の軸方向に任意にスライドするので、位置決めが難しく、正確な結束作業や溶接作業が容易でなかった。
【0056】
さらに、補強用の鉄筋ユニットを修復現場で格子状の鉄筋ユニットに構成するケースでは、鉄筋単体からの鉄筋ユニットの結束作業が必要となるので、作業は一層煩雑なものとなっていた。
【0057】
また、古いコンクリート壁の斫り面に新たなモルタル層を接合するには相当に高い接合力が必要であり、単にモルタル層を吹き付けていくだけでは十分ではない。そのため、上記斫り面には一般に接着材よりなるプライマリー層が形成され、その上で新たなモルタル層が形成されるようになっている。
【0058】
ところが、このプライマリー層は、時間の経過によって乾き、接合性能が低下する。したがって、補強用の鉄筋ユニットを係止する前にプライマリー層を形成するようなケースでは、よりアンカー部材に対する補強用の鉄筋ユニット係止作業の迅速性、作業性の良さが求められる。
【0059】
また、補強用の鉄筋ユニットとコンクリート壁側の斫り面との間隔は、強度面から所定値以上の距離が必要であり、補強用の鉄筋ユニットは、全体に亘って斫り面から所定の距離を置いた所定の奥行き位置に正確に取り付けられることが望ましい。
【0060】
しかるに、上記ストレートなアンカー部材の手前側端部に対して結束線で結束するか、または溶接する構成の場合、軸方向にスライドしやすいこともあり、位置決めが困難で、正確な奥行き距離を置いて取り付けるのが難しい。
【0061】
本願発明の実施の形態に係るコンクリート構造物の補修方法および同補修方法における補強用の鉄筋ユニットの取り付け構造は、このような問題を解決するためになされており、上記アンカー部材に補強用の鉄筋ユニットの係止機能を持った補強用鉄筋ユニット係止部材を任意に螺合可能とし、上記アンカー部材に対して補強用の鉄筋ユニットを係合させた後に、最終的に補強用鉄筋ユニット係止部材で適正な位置に係止固定できるようにすることによって、アンカー部材に対する結束作業や溶接作業を著しく、容易かつ確実なものとしている。
【0062】
<本願発明の実施の形態に係るコンクリート構造物の補修方法および同補修方法における補強用の鉄筋ユニットの取り付け構造について>
まず、添付図面最後の図25は、本願発明の実施の形態に係るコンクリート構造物の補修方法により劣化部の補修を行った側壁タイプのコンクリート構造物1の断面構造を示しており、同構造において、本願発明の実施の形態に係る補強用の鉄筋ユニットの取り付け構造が採用されている。
【0063】
このコンクリート構造物1には、すでに述べたように、その中心部に位置して骨材としての鉄筋(既設鉄筋)2が埋設されており、その前後を所定の厚さのコンクリート壁3が覆った側壁構造のものに形成されている。鉄筋2は、上下方向に延びる複数本の主筋2a,2a・・と左右方向に延びる背筋2b,2b・・の交差部を相互に結束線(図示省略)で結束することにより全体として格子状に構成されている。
【0064】
このコンクリート構造物1のコンクリート壁3も、元々は、例えば図1に示すように、その外層部3b側が所定の深さ以上に劣化していたものである。ここでは、一例として、同図1に示すように、コンクリート壁3の外層部3bのほぼ全域(鉄筋2の背筋2b近くまで)が劣化していたものと仮定する。
【0065】
したがって、補修(修復)に当たっては、当該コンクリート壁3は、例えば図2に示すように、その外層部3b部分の殆どが斫り取られ、同斫り面3a´部分に、例えば図3図5に示すように複数本のアンカー部材4,4・・(図6参照)を埋設固定し、該複数本のアンカー部材4,4・・および該アンカー部材4,4・・に螺合連結される補強用鉄筋ユニット係止部材8,8・・を介して、例えば図7図9図10図11図16図23に示すように新たな補強用の鉄筋ユニット6(図8参照)が取り付けられ、該補強用の鉄筋ユニット6を新たな骨材として、例えば図24図25に示すように再び元の外層部3bの厚さまで新たなモルタル層が形成され、このモルタル層が当該修復後のコンクリート壁3の新たな外層部3bを形成している。
【0066】
上記新たなモルタル層を形成するに際しては、例えば図23に示すように、上記アンカー部材4,4・・および補強用鉄筋ユニット係止部材8,8・・を介して補強用の鉄筋ユニット6が取り付けられた斫り面3a´にモルタル接着機能の高い接着材よりなるプラマリー層9を形成し、このプライマリー層9を介して、例えば図24に示すように新たなモルタル層が形成される。
【0067】
そして、それにより、新たに形成されたモルタル層、すなわち新たなコンクリート壁である外層部3bが確実、かつ強固に内層部3aと一体化した形で形成されている。
【0068】
また、同モルタル層、すなわち当該コンクリート壁外層部3bの外周面には、さらに図25に示すように最終的な保護層としての仕上げ層10が形成されている。
【0069】
以下、このようなコンクリート壁3の補修方法および同補修方法で用いられている補強用の鉄筋ユニットの取り付け構造について、図1図25を参照して具体的に説明する。
【0070】
まず、補修対象となるコンクリート構造物1は、上述した図1のものであり、その劣化した外層部3b部分が図2のように斫り取られる。そして、その斫り面3a´部分に、例えば図3図5に示すように、取り付けるべき補強用の鉄筋ユニット6の全体寸法、格子寸法に応じて予めマッピングされた所定の位置関係で複数本のアンカー部材4,4・・が埋設固定される。
【0071】
該複数本のアンカー部材4,4・・には、例えば図4図6に示すような、芯棒挿入孔を有する筒状のアンカー部材本体4aの手前側端部側外周にナット溝4bを備えた芯棒打ち込み式のものが採用されており、コンクリート壁3内に打ち込まれるアンカー部材本体4aの先端部4d側には、90度間隔で同先端部4dを4分割する所定の深さのスリット4cが形成されている。また、アンカー部材本体4aの手前側端部には、所定の長さc図15参照)のナット溝4bが設けられている。
【0072】
アンカー部材本体4a内の芯棒挿入孔は、上記スリット4cの上端部までしかなく、芯棒5は芯棒挿入孔より上記スリット部4c分だけ長く形成されている。また、その本体部5aの先端の径は先細となっており、後端側には打ち込み用の大径の頭部5bが設けられている。
【0073】
したがって、まず図4に示すように、上記コンクリート壁3(内層部3a)の必要なアンカー部材打ちこみ部にドリル等で打ち込み孔をあけ、上記アンカー部材4をそのナット溝4bの先端付近まで挿入する。その後、図5に示すように、上記芯棒5の頭部5bを矢印方向に打ち込むと、アンカー部材本体4aの上記4分割された先端部4dの各々が4方に拡がって、アンカー部材本体4aがコンクリート壁3内に確実に埋設固定されることになる(図3の状態を参照)。
【0074】
次に、上記コンクリート壁3に固定された上記複数本のアンカー部材本体4aに対して、例えば図8に示す格子状の補強用の鉄筋ユニット6が、例えば図7および図9のように係合される。この係合は、作業者(又は補助者)が当該補強用の鉄筋ユニット6の主筋6a,6a・・部分が上述したコンクリート壁3の斫り面(既設鉄筋2の背筋2b)3a´に当接するように押し付けるとともに、その左右方向に延びる背筋6b,6b・・とアンカー部材4(そのナット溝4b部分)とが、次に述べる補強用鉄筋ユニット係止部材8のナット部8bの板厚b(図11参照)よりも少し大きい間隔aを空けた状態で保持させ、同保持状態において、アンカー部材4のナット溝4bに対して、例えば図10および図11に示すように、補強用鉄筋ユニット係止部材8のナット部8b部分を螺合する。
【0075】
すなわち、上記アンカー部材4,4・・を利用して上記補強用の鉄筋ユニット6を取り付けるに際しては、例えば図12図15に示すような、所定の長さc(図15参照)のナット部8bを備えて上記アンカー部材4,4・・の後端部側の所定の長さc(図15参照)のナット溝4b部分に容易に螺合固定されるようになっているとともに、該ナット部8b上端の側部に左右両側で長さが異なる所定の長さの鉄筋構造の係止片(補強用鉄筋ユニット係止片)8aをT字形に溶着一体化していて、該係止片8aにより上記アンカー部材4,4・・の先端側に寄せて仮支持させている上記補強用の鉄筋ユニット6の背筋6b,6b・・部分を最終的に手前側に戻して上記コンクリート壁3の斫り面3a´との間に所定の奥行き寸法eを保った適正な位置に係止する補強用鉄筋ユニット係止部材8が用いられ、該補強用鉄筋ユニット係止部材8によって、結束線による結束や溶接による溶着を行うことなく、容易、かつ確実に上記補強用の鉄筋ユニット6を上記アンカー部材4,4・・の手前側所定の位置に仮係止することができるようになっている(図20図21参照)。
【0076】
この仮係止状態では、上記補強用の鉄筋ユニット6の背筋6b部分が上記アンカー部材4,4・・に螺合されたナット部8bで下方に係止されるとともに、同補強用の鉄筋ユニット6の主筋6a部分が同ナット部8bの手前側に設けられている係止片8aで前方に確実に係止される(図20図22の状態を参照)。そして、この仮係止状態において、上記のように相互に確実に係止されている係止片8aの両端と補強用の鉄筋ユニット6の左右主筋6a,6aとのクロス部を結束線で結束するか、溶接により溶着することにより一体に連結する。この場合、必要があれば相互にクロスしているナット部8bと背筋6b,6b・・部分を結束又は溶着することもできる。
【0077】
このように、当該補強用鉄筋ユニットの補修面への取り付け方法および取り付け構造では、アンカー部材4,4・・側補強用鉄筋ユニット係止部材8の係止片8aの両端と補強用の鉄筋ユニット6の左右の主筋6a,6aとが常に確実に位置決めされた状態でクロスするようになり、従来のアンカー部材との連結のような結束不能、溶着不能の問題が全く生じることなく、各アンカー部材4,4・・部分共に確実に一体に連結されて一体化される。
【0078】
したがって、補強用の鉄筋ユニット6部分の強度が向上し、補修部の強度も向上することになる。そして、結束、溶着作業も著しく容易、かつ確実になる。特に、この実施の形態の場合、1本のアンカー部材4に対して補強用の鉄筋ユニット6の鉄筋を2か所(2本)で連結することができるので、連結強度がより大きく向上する。また、両者のクロス状態が同一平面方向で実現されるので、従来のような3次元方向でのクロス状態の場合に比べて、結束、溶着作業も遥かに容易になる。
【0079】
上記補強用鉄筋ユニット係止部材8のナット部8bの長さcおよび上記アンカー部材4のナット溝4bの長さcは、例えばこの実施の形態の場合、図15の構成から明らかなように、相互に対応した長さのものとなっており、その寸法は上記鉄筋ユニット6の主筋6a、背筋6b、係止片8a各々の直径(それぞれ等しい径のものとなっている)を合わせた寸法のものとなっている。
【0080】
これにより、上記のように補強用の鉄筋ユニット6を、例えば図7図9図11に示すように、最初は作業者(または補助者)がコンクリート壁3の斫り面3a´側に手などで押し付けた状態に維持しておくことにより、上記補強用鉄筋ユニット係止部材8の係止片8aをそのナット部8bが上記アンカー部材4のナット溝4b部分に完全に螺合され、その先端が上記コンクリート壁3の斫り面3a´に当接する最終位置まで自由に回動させることができるとともに、同螺合終了後、上記係止片8aが上記補強用の鉄筋ユニット6の背筋6b,6b・・と平行になる状態(図22参照)に位置させておいて、上記斫り面3a´側にある補強用の鉄筋ユニット6を外層部側係止片8aによる係止位置に空いている距離d(図19参照)だけ手前側に戻して主筋6a,6a・・部分を係止し、それによりコンクリート壁3の斫り面3a´と補強用の鉄筋ユニット6との間に有効な所定奥行き寸法eのモルタル充填スペースSを形成することができるようにしている(図20図21図22参照)。
【0081】
すなわち、上記補強用の鉄筋ユニット6が斫り面3a´側に押し付けられた状態(位置決め係止前の状態)では、その主筋6aが上記アンカー部材4のナット溝4bの先端側に、背筋6bが同ナット溝4bの中間にあり、ナット溝4bの手前側では、主筋6aまたは背筋6bの直径分のスペースdが空いている。したがって、上記係止片8aは、上記ナット8bの先端が斫り面3a´に当接し、上記ナット8bが上記ナット溝4b部分に完全に螺合する図18および図19の状態まで、背筋6bに当たることなく自由に鉄筋面方向に自由に回動操作することができる。そして、この状態では、未だ補強用の鉄筋ユニット6は、斫り面3a´側(既設鉄筋2側)に押し付けられており、図19に示すように、主筋6aと係止片8aとの間には主筋6aまたは背筋6bの直径分の寸法dのスペースが空いている。
【0082】
そこで、次に同寸法dのスペースを利用して、上記補強用の鉄筋ユニット6の主筋6a部分を図21中の矢印に示すように手前側にスライドさせ、上記補強用鉄筋ユニット係止部材8の係止片8aで同主筋6a部分を係止する(手前側方向に係止する)。この時、上記補強用の鉄筋ユニット6の背筋6b部分は、上記鉄筋ユニット支持部材8の係止片8aと奥行き方向手前側の同一位置に位地して上下に平行に配置されることになり、上記鉄筋ユニット支持部材8の係止片8aが上記補強用の鉄筋ユニット6の一部(背筋)を構成する形で、上記補強用の鉄筋ユニット6が所望の位置(斫り面3a´部分から前側に所定奥行き寸法e以上離れた位置)に適正に設置されることになり、同所定奥行き寸法eの有効なモルタル充填スペースSを形成するわけである(位置決め係止後、結束又は溶着した状態で)。
【0083】
これにより同モルタル充填スペースS部分におけるコンクリート壁内層部3a側との結合力および鉄筋2、補強用の鉄筋ユニット6との硬化後の十分な結合力が実現される。
【0084】
なお、上記奥行き寸法eは、少なくとも10mm程度、或は、それ以上が好ましい。この実施の形態の場合、主筋6aの直径10mm分に対応したものとしている。この奥行き寸法eは、上述したナット部8bの長さcおよびナット溝4bの長さcによって任意に設定することができる。したがって、この奥行き寸法eを大きくしようと思えば、上記ナット部8bおよびナット溝cの長さを長くすればよい。
【0085】
また、上記係止片8aの上記ナット部8bの中心O−O´を基準とする左右の長さLとRの関係は、例えば図14に示すようにL<R(L>Rでも可)となっており、係止片8aの長片R(又はL)側を、図13中の矢印で示すように、ナット8bの中心軸O−O´を中心として指先で回転させた時に有効に遠心力が作用して自然にナット部8bの回転力が生じるように考慮されている。この結果、上記アンカー部材4の比較的ストロークの長いナット溝4bに対するナット部8bの同じくストロークの長いナット溝(内側溝)を楽に螺合することができる。
【0086】
また、上記補強用の鉄筋ユニット6は、例えば図8に示すように、上下方向に延びる複数本の主筋6a,6a・・と左右方向に延びる複数本の背筋6b,6b・・の交差部を相互に所望の結束線6c,6c・・で結束することにより、全体として所望の大きさの格子状のものに構成されている。この結束線は、全く伸縮性のない金属線でも良いが、ある程度伸縮性のある特殊な金属線又は所望の金属線と強度の高い弾性部材とを組み合わせて伸縮性を持たせたものでも良い。
【0087】
また、上記補強用の鉄筋ユニット6は、上下方向に延びる複数本の主筋6a,6a・・および左右方向に延びる複数本の背筋6b,6b・・をそれぞれ鉄筋状態のまま現場に搬送して、現場で格子状に結束するようにしても良いが、予め工場等で図8のような格子状に結束してユニット化したものを現場に搬送して使用するようにしても良い。後者のように、予めユニット化したものを使用するようにすると、現場ではアンカー部材4,4・・に係合しさえすれば良いので、アンカー部材4,4・・対する取り付け作業が一段と容易になり、補修作業の作業効率が大きく向上する。
【0088】
さらに、その場合において、上記工場等での格子状の鉄筋ユニット形成作業に関し、上記結束線として、ある程度伸縮性のある特殊な金属線、又は所望の金属線と強度の高い弾性部材とを組み合わせて伸縮性を持たせたものを使用して結束するようにすると、完成した鉄筋ユニットを小さく変形させることができるので、現場への搬送も楽になる。
【0089】
また、この実施の形態の場合、上記のように補修すべきコンクリート壁3の斫り面3a´との間に必要な奥行きe(有効なモルタル充填スペースS)を設定した状態で補強用の鉄筋ユニット6が係止されると(図20図22参照)、続いて新たなモルタル層(新たな外層部3b)が形成されるが、この新たなモルタル層の形成に当たっては、上記劣化した外層部を斫り取った斫り面3a´との接合性を良好にするために、例えば図23に示すように、まず当該斫り面3a´に接着材よりなるプライマリー層9を形成し、該プライマリー層9を介して、例えば図24に示すように、上記補強用鉄筋ユニット6の前後に新たなモルタル層を形成する構成が採用されている。
【0090】
この場合、上記プライマリー層9は、上記図3のアンカー部材4,4・・を埋設した段階で形成することも可能である。しかし、このプライマリー層9の形成に使用される接着剤は接着力の大きいものほど速乾性であり、乾きが早い。したがって、プライマリー層9を形成してから補強用の鉄筋ユニット6を取り付けていたのでは、折角の接着力が低下してしまう。
【0091】
そこで、この実施の形態では、例えば図20図22のように、上記補強用の鉄筋ユニット6の取り付けが完了した状態で、同補強用の鉄筋ユニット6の影響を受けない吹き付け手段により図23のようにプライマリー層9を形成する方法および構成が採用されている。このようにすると、プライマリー層9が形成されると、時間を置かずに続けてモルタル層を形成することができるので、その接合力を低下させずに済む。
【0092】
また、この実施の形態の場合、上記新たなモルタル層の形成にも、例えばモルタルを吹き付ける方法および構成が採用されており、補強用の鉄筋ユニット6の手前側および背後側に確実にモルタルが充填されるようになっている。
【0093】
そして、このようにして形成された新たなモルタル層(新たな外層部3b)の外周面には、さらに仕上げ層10が形成されて、最終的に新たなコンクリート壁3の外層部3bが形成される。これによって最終的な補修作業が完了する。
【0094】
この新たな外層部3bは、上記既設鉄筋2に近接する形で上記プライマリー層9を介し、上記内層部3a側の劣化していないコンクリート壁3に強固に接合一体化されるとともに、同コンクリート壁3に埋設固定された上記複数本のアンカー部材9,9・・に補強用鉄筋ユニット係止部材8,8・・を介して強固に連結支持されている上記格子構造の補強用の鉄筋ユニット6により確実に補強されている。
【0095】
したがって、この実施の形態の場合、上記のように補強用の鉄筋ユニット6が、上記複数本のアンカー部材4,4・・に螺合状態で連結される補強用鉄筋ユニット係止部材8,8・・により係止連結されるようになっていて、その設置作業が極めて容易であり、必要な設置位置に確実かつ強固な構造体の形で設置されるだけでなく、修復された新たな外層部3b側コンクリートの内層部3a側コンクリートとの一体性が高く、補修されたコンクリート壁3自体の強度、耐久性も有効に向上する。
【0096】
すなわち、この実施の形態の構成によれば、複数本のアンカー部材に対する結束作業や溶接作業が、著しく容易、かつ確実になり、可及的に作業効率が向上するとともに、補強強度が高く、信頼性のあるコンクリート構造物の補修方法および補修構造を実現することができる。
【0097】
たとえば、従来の補修方法および補修構造の場合、斫り面に打ち込まれた複数本のストレートなアンカー部材の手前側部分に対して、補強用の鉄筋ユニットの主筋または背筋部分を結束線で結束するか、又は溶接するようになっている。そのため、アンカー部材と補強用の鉄筋ユニットの鉄筋部分が常に正確にクロスするとは限らず、相互に離間して、溶接が困難な場合や結束しにくいケースが多かった。そのため、アンカー部材の打ち直しも必要になっていた。
【0098】
また、一応相互にクロスする状態にあったとしても、アンカー部材自体に鉄筋の係合部がないため、補強用の鉄筋ユニットの鉄筋がアンカー部材の軸方向に任意にスライドするので、位置決めが難しく、正確な結束作業や溶接作業が容易でなかった。
【0099】
ところが、この実施の形態の構成では、上記のように、複数本のアンカー軸の手前側端部に補強用の鉄筋ユニットの係止機能を持った補強用鉄筋ユニット係止部材が設けられており、同係止部材によって確実に補強用の鉄筋ユニットの鉄筋部分を位置決め係止することができるので、アンカー部材側の係止部材と補強用の鉄筋ユニットの鉄筋とが正確に位置決めされた状態で、常に確実にクロスするようになる。そして、その状態で両者が確実、かつ強固に連結一体化される。
【0100】
したがって、結束作業は勿論、溶接作業も著しく容易になり、しかも確実かつ強度の高い連結を可能とすることができる。その結果、作業効率が大きく向上することは勿論、補修部における補強強度そのものも大きく向上させることができる。
【0101】
<その他の実施の形態>
以上の説明では、補修対象となるコンクリート壁3の一例として、側壁タイプのものを例示して説明したが、これはトンネルや橋梁などの天井壁タイプのものであっても良いことは言うまでもない。
【0102】
天井壁タイプのコンクリート壁の場合、アンカー部材4,4・・に補強用の鉄筋ユニット6を係合した後、補強用鉄筋ユニット係止部材8を螺合固定するまで作業者が支持して置く手間がかかるが、補強用鉄筋ユニット係止部材8を螺合固定した後は,重力で距離dだけ下降してそのまま自動的に係止されるので係止は容易である。
【0103】
また、以上の説明では、補強用鉄筋ユニット係止部材8のナット部8bは、一例として六角ナット筒形状のもので表現したが、これは円筒体構造のナット部材であっても全く同様の機能を得ることができる。
【0104】
また、補強用鉄筋ユニット係止部材8の係止片8aは、その両片LとRの長さが、螺合固定用のナット部4bの位置を基準として、少なくとも補強用鉄筋ユニット6の隣り合う主筋6a,6a・・にそれぞれ有効に係合する長さのものに形成したが、係止機能だけに注目すれば両側ではなく、いずれか一方側だけが係合する構成でも構わない。
【0105】
また、その場合、回動操作さえできて、係合さえすればよいので、上述のような棒状鉄筋構造のものに限らず、円形やC字形のものでも良い。
【符号の説明】
【0106】
1はコンクリート構造物
2は鉄筋(既設鉄筋)
3はコンクリート壁
3aは内層部
3a´は斫り面
3bは外層部
4はアンカー部材
4bはナット溝
6は補強用の鉄筋ユニット
6aは主筋
6bは背筋
8は補強用鉄筋ユニット係止部材
8aは係止片
8bはナット部
9はプライマリー層
10は仕上げ層
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